説明

電気自動車充電装置を備えた機械式立体駐車場およびその充電方法

【課題】櫛歯式の機械式立体駐車場も含めた各種の機械式立体駐車場に適用可能でかつ安価な電気自動車充電装置を備えた機械式立体駐車場およびその充電方法を提供する。
【解決手段】端部に電気自動車1の充電口2に接続可能なコネクタ3を有する充電ケーブル4が充電装置6に接続された状態で駐車室12に設置され、前記コネクタ3が駐車室12に格納された電気自動車1の充電口2の位置まで移動して接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは機械式立体駐車場に関し、特に、電気自動車充電装置を備えた機械式立体駐車場に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、地球温暖化に対する世界的な取り組みが進められている。原因の一つとされる炭酸ガス排出量の削減のため、CO排出量の1/4を占める運輸関連では、これまでのガソリン車、ディーゼル車に変わって、CO排出量が少ないエコカーの開発を進めている。
【0003】
中でも、走行中にCOを排出しない電気自動車が注目を浴びている。電気自動車はこれまでの自動車のガソリンエンジンに変わって、蓄電池と電気モータを搭載し、これを駆動源として走行するものである。
【0004】
ここで言う電気自動車とは、蓄電池と電動モータを搭載し、蓄電池に蓄えた電力により電動モータを駆動させ走行するタイプの自動車を指しており、電動モータのみを搭載したいわゆる電気自動車、ガソリンやディーゼルエンジンと電動モータを併用するいわゆるプラグインハイブリッド自動車などを含んでいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の電気自動車が社会的に普及するためには現在、多くの課題があると言われている。そのうち、価格と並ぶ大きな課題が充電インフラの整備である。
【0006】
これは蓄電池の仕様制約により、電気自動車の一充電後の走行距離が限られているため、充電がたびたび必要となることを意味している。
【0007】
このため、電力会社や電気自動車メーカーでは電気自動車の充電装置の設置計画を進めている。設置場所として第一に挙げられるのが駐車場である。駐車場の形態は自走式、機械式、地上、地下、平置き、立体など多岐にわたっている。中でも空間有効利用の観点から、都心部で設置数が増加する機械式立体駐車場への電気自動車充電装置の設置については、特許文献1に記載された技術が挙げられる。なお、以下では、単に「立体駐車場」は「機械式立体駐車場」を意味している。
【0008】
特許文献1はパレット式の立体駐車場に関する技術であり、パレットに充電用接点を設け、パレット上の充電ケーブルを自動車に接続した後、パレットが駐車室に移動、その際駐車室に設置された給電用接点とパレットの充電用接点が接続して充電するものである。
【0009】
しかし、特許文献1記載の技術には以下のような問題がある。
【0010】
まず、その適用先はパレット式の立体駐車場に限られており、パレットを用いない、例えば、櫛歯式の立体駐車場に対しては適用できない。櫛歯式立体駐車場は自動車を駐車室まで移動させるリフトと、駐車室に設置されたトレイがそれぞれ櫛歯になっており、リフトで駐車室の階まで運ばれた自動車はトレイと櫛歯機構を利用して、リフトからトレイに移し変えられる構造であるためである(例えば、特許文献2参照)。
【0011】
また、既設駐車場に電気自動車の充電装置を付加する場合の工事が大掛かりになるといった問題もある。
【0012】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、櫛歯式の機械式立体駐車場も含めた各種の機械式立体駐車場に適用可能でかつ安価な電気自動車充電装置を備えた機械式立体駐車場およびその充電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有する。
【0014】
[1]電気自動車充電装置を備えた機械式立体駐車場であって、電気自動車の充電装置と、端部に電気自動車の充電口に接続可能なコネクタを有して前記充電装置に接続された状態で駐車室に設置された充電ケーブルと、駐車室に格納された電気自動車の充電口の位置を特定する手段と、前記コネクタを駐車室に格納された電気自動車の充電口の位置まで移動して接続する手段とを備えていることを特徴とする電気自動車充電装置を備えた機械式立体駐車場。
【0015】
[2]電気自動車充電装置を備えた機械式立体駐車場における電気自動車の充電方法であって、端部に電気自動車の充電口に接続可能なコネクタを有する充電ケーブルが充電装置に接続された状態で駐車室に設置され、前記コネクタが駐車室に格納された電気自動車の充電口の位置まで移動して接続することを特徴とする電気自動車充電装置を備えた機械式立体駐車場における電気自動車充電方法。
【0016】
[3]カメラで得られた電気自動車の画像情報から充電口の位置を特定することを特徴とする前記[2]に記載の電気自動車充電装置を備えた機械式立体駐車場における電気自動車充電方法。
【0017】
[4]電気自動車の3次元走査を行って充電口の位置を特定することを特徴とする前記[2]に記載の電気自動車充電装置を備えた機械式立体駐車場における電気自動車充電方法。
【0018】
[5]電気自動車の車種情報を入力し、前記情報から充電口の位置を特定することを特徴とする前記[2]に記載の電気自動車充電装置を備えた機械式立体駐車場における電気自動車充電方法。
【0019】
[6]充電口の位置を特定するための信号を発信する機能を有する充電アダプタを電気自動車の充電口に接続し、前記位置信号を取得して充電口の位置を特定することを特徴とする前記[2]に記載の電気自動車充電装置を備えた機械式立体駐車場における電気自動車充電方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、櫛歯式の機械式立体駐車場も含めた各種の機械式立体駐車場に適用可能でかつ安価な電気自動車充電装置を備えた機械式立体駐車場およびその充電方法を提供することが可能となり、充電インフラ整備による電気自動車の普及効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態1における機器接続図である。
【図2】本発明の実施形態1における立体駐車場の全体図である。
【図3】本発明の実施形態2における機器接続図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0023】
[実施形態1]
図1は本発明の実施形態1における機器接続状態を表す。
【0024】
図1に示すように、電気自動車1の充電口2に、電気自動車1の充電口2に接続可能なコネクタ3を持つ充電ケーブル4を接続して充電を行う。
【0025】
充電ケーブル4には充電口2を検知するためのセンサ5が搭載されている。また、充電ケーブル4は充電装置6に接続されている。そして、充電ケーブル4は多節のリンク機構から構成されており、コネクタ3に隣り合うリンク部のみスライド機構が付いている。
【0026】
これによって、センサ5で得られた充電口2の位置情報を元に駐車室12内でリンク機構により多節で任意に折れ曲がることで電気自動車1の充電口2に近接し、充電口2の近傍にてコネクタ3に隣り合うリンク部のスライド機構により、コネクタ3と充電口2が接続する。この機構により、駐車室12の空間内任意の方向に移動が可能となる。
【0027】
図2はこの実施形態1を適用した立体駐車場11の全体図である。なお、ここでは、櫛歯式立体駐車場へ適用した場合を示している。
【0028】
図2に示すように、この立体駐車場11は、自動車(電気自動車1および普通自動車)を格納する駐車室12を複数備え、入出庫口20から駐車室12の高さまで鉛直方向に自動車を運ぶリフト13と、リフト13が移動するリフト移動経路14と、駐車室12からリフト移動経路14へと水平方向に移動するトレイ15と、充電装置6A、6Bと、電源ケーブル17等から構成されている。
【0029】
そして、各駐車室12にはコントロールボックス18が取り付けられており、そのコントロールボックス18には充電装置6A、6Bから電源ケーブル17が接続される。また、充電ケーブル4も同様にコントロールボックス18に接続されている。
【0030】
コントロールボックス18にはセンサ5の情報を演算するための制御装置(図示せず)が内蔵されていて、センサ5で得られた情報から充電口2の位置を計算し、充電ケーブル4へ移動信号を送る。
【0031】
充電口2の位置情報を得るための手段としては、センサ5としてカメラを搭載し、カメラから得られた画像情報から充電口2の位置を特定する方法が挙げられる。
【0032】
または、センサ5として距離センサを用いることが可能である。
【0033】
あるいは、入庫口にて3次元スキャナを用いて、電気自動車1の形状を認識し、得られた情報から充電口2の位置を得ることも可能である。
【0034】
あるいは、位置信号を発信するアダプタを充電口2に取り付け、アダプタから位置信号を発信し、その信号を元に充電口2の位置を特定することも可能である。アダプタは、信号を発信する電力を、接続した電気自動車1の充電口2を経由して蓄電池から得る。
【0035】
あるいは、入庫時に操作パネルに、電気自動車1の車種情報を入力して、あらかじめ与えておいた充電口2の位置情報から充電口2の位置を特定することも可能である。
【0036】
なお、この実施形態1では、2台の充電装置6A、6Bが立体駐車場の1Fに配置され、その充電装置6A、6Bから充電用の電源ケーブル17が各駐車室12に配線されているが、1台の充電装置6ですべての駐車室12に電源ケーブル17を配線することも可能であるし、駐車室12の列数に合わせて複数台の充電装置6を設置することも可能である。
【0037】
また、この実施形態1では、充電装置6A、6Bを新たに設けるようにしているが、既存の立体駐車場へ適用する場合、既存の電源盤に改造を加え、共用とすることも可能である。
【0038】
そして、この実施形態1では、櫛歯式の立体駐車場に適用した場合を示したが、パレット式の立体駐車場などの各種の立体駐車場に適用可能である。また、新設する立体駐車場への適用はもちろんのこと、既設の駐車場に後から取り付けることも可能である。
【0039】
[実施形態2]
本発明の実施形態2を述べる。
【0040】
この実施形態2の基本的な構成は上記の実施形態1と同様であるが、実施形態1との違いは、この実施形態2では、充電ケーブル4を移動させるための充電ケーブル移動機構を備えている点である。
【0041】
図3にこの実施形態2における機器接続状態を表す。充電ケーブル4を移動させるための充電ケーブル移動機構7として、駐車室12の天井に設置されたレール9に、レール9に沿って移動する移動体8が取り付けられている。そして、移動体8には充電ケーブル4が接続される。レール9は複数本配置することで、駐車室12における平面の任意の位置に移動可能である。
【0042】
なお、ここでは、充電ケーブル4は充電ケーブル4A〜4D及びコネクタ5から構成される。充電ケーブル4A、4B、4Cは順に径が細くなっており、充電ケーブル4Cは充電ケーブル4B内に、充電ケーブル4Bは充電ケーブル4A内に収納される構造になっている。充電ケーブル4Dは充電ケーブル4Cに取り付けられており、充電ケーブル4Cに対して矢印の方向に回転する。充電ケーブル4Dにはコネクタ5が接続されており、コネクタ5は充電ケーブル4Dに対して、伸縮方向に移動する。またコネクタ5には充電口2の位置を特定するためのセンサ3が取り付けられている。
【0043】
これによって、電気自動車1が駐車室に入ってくると、電気自動車1の充電口2の位置情報を元に、レール9に添って移動体8が移動する。移動体8が停止して、図3に示す状態になる。この状態から、センサ3の情報により、コネクタ5の位置の調整を行った後、コネクタ5が充電口2に近づくように伸びて、接続する。
【0044】
そして、充電アダプタ4が充電口2に接続された後、安全確認が行われ、異常がないことが確認されたら、充電を開始する。これにより、駐車室12に格納されている間、電気自動車1が充電されることになる。実施形態1、2における充電方法は、急速充電であっても、普通充電であってもどちらでも構わない。一般的な急速充電では最大出力電圧は直流500V、最大出力電流は125Aであり、普通充電では電圧は交流100Vまたは200Vで、最大出力電流は15Aである。
【0045】
ちなみに、この実施形態2では、櫛歯式の立体駐車場に適用した場合を示したが、パレット式の立体駐車場などの各種の立体駐車場に適用可能である。また、新設する立体駐車場への適用はもちろんのこと、既設の駐車場に後から取り付けることも可能である。
【0046】
また、実施形態1、2においては車両の右側側面に充電口がある場合の例を示しているが、この位置に限ったものでなく、充電口の位置が車両前方、左側側面である場合でも対応可能である。
【符号の説明】
【0047】
1:電気自動車
2:充電口
3:コネクタ
4:充電ケーブル
4A:充電ケーブル
4B:充電ケーブル
4C:充電ケーブル
4D:充電ケーブル
5:センサ
6:充電装置
6A:充電装置
6B:充電装置
7:充電ケーブル移動機構
8:移動体
9:レール
11:立体駐車場
12:駐車室
13:リフト
14:リフト移動経路
15:トレイ
17:電源ケーブル
18:コントロールボックス
20:入出庫口
【先行技術文献】
【特許文献】
【0048】
【特許文献1】特開平10−030354号公報
【特許文献2】特開平04−250277号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車充電装置を備えた機械式立体駐車場であって、電気自動車の充電装置と、端部に電気自動車の充電口に接続可能なコネクタを有して前記充電装置に接続された状態で駐車室に設置された充電ケーブルと、駐車室に格納された電気自動車の充電口の位置を特定する手段と、前記コネクタを駐車室に格納された電気自動車の充電口の位置まで移動して接続する手段とを備えていることを特徴とする電気自動車充電装置を備えた機械式立体駐車場。
【請求項2】
電気自動車充電装置を備えた機械式立体駐車場における電気自動車の充電方法であって、端部に電気自動車の充電口に接続可能なコネクタを有する充電ケーブルが充電装置に接続された状態で駐車室に設置され、前記コネクタが駐車室に格納された電気自動車の充電口の位置まで移動して接続することを特徴とする電気自動車充電装置を備えた機械式立体駐車場における電気自動車充電方法。
【請求項3】
カメラで得られた電気自動車の画像情報から充電口の位置を特定することを特徴とする請求項2に記載の電気自動車充電装置を備えた機械式立体駐車場における電気自動車充電方法。
【請求項4】
電気自動車の3次元走査を行って充電口の位置を特定することを特徴とする請求項2に記載の電気自動車充電装置を備えた機械式立体駐車場における電気自動車充電方法。
【請求項5】
電気自動車の車種情報を入力し、前記情報から充電口の位置を特定することを特徴とする請求項2に記載の電気自動車充電装置を備えた機械式立体駐車場における電気自動車充電方法。
【請求項6】
充電口の位置を特定するための信号を発信する機能を有する充電アダプタを電気自動車の充電口に接続し、前記位置信号を取得して充電口の位置を特定することを特徴とする請求項2に記載の電気自動車充電装置を備えた機械式立体駐車場における電気自動車充電方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−117156(P2011−117156A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274134(P2009−274134)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000004123)JFEエンジニアリング株式会社 (1,044)
【Fターム(参考)】