説明

電気自動車用急速充電器の劣化検出装置

【課題】提供する。
【解決手段】急速充電器1から導出された充電ケーブル3と、バッテリ装置2に接続された充電ケーブル4とをコネクタ5を介して接続する充電装置において、前記急速充電器1から導出された充電ケーブル3の電圧を測定する第1の電圧計6と、前記バッテリ装置2に接続される充電ケーブル4の端末の電圧を測定する第2の電圧計7とを有し、第1の電圧計6の測定電圧から第2の電圧計7の測定電圧を引いた電圧差が正常値より大きい値の第1の閾値を設け、また、この第1の閾値より大きく、前記充電ケーブル及びコネクタが焼損する恐れのある電圧差の値を第2の閾値とし、前記計測した電圧差が第1の閾値より大きく、前記第2の閾値未満の場合は、マイナーアラームとして充電を継続しつつ警報すると共に、前記電圧差が第2の閾値以上の場合は、当該充電を停止する手段を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気自動車用急速充電器の劣化検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車用急速充電器は高電圧、高電流で電気自動車に搭載されているバッテリ装置に充電する。急速充電器は充電ケーブルの使用頻度が高くなるとケーブルのインピーダンス増加、コネクタ接続部の接触抵抗が増加することが考えられ、異常発熱で充電ケーブルの焼損、人体への影響が考えられる。例えば、400V、100A、(40KW)で充電される場合、接触抵抗が10mΩ増加したとしても100Wにもなる。
【0003】
従来、バッテリの劣化検出、劣化判定、劣化診断等の方法や装置、また、ケーブルの絶縁劣化検出装置等の個々の部分の劣化検出装置はある。
【0004】
【特許文献1】特開2000−329834号公報
【特許文献2】特開2003−214248号公報
【特許文献3】特開2000−147052号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、急速充電器からバッテリ装置までの充電装置の劣化検出や診断等の装置はない。従って、これらの劣化による充電ケーブルの焼損を防ぐ対策や作業の安全性の向上が要求されている。
【0006】
この発明はこのような従来技術を考慮したものであって、事前に充電器からバッテリへの、コネクタを含む充電ケーブルのインピーダンスの増加等を検出し、アラームを発し、異常時には充電を止めて人体保護及び機器の焼損を防止する劣化検出装置を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、請求項1の発明は、電気自動車に搭載されているバッテリ装置に短時間で充電する急速充電器であって、前記急速充電器から導出された充電ケーブルと、バッテリ装置に接続された充電ケーブルとをコネクタを介して接続する充電装置において、前記急速充電器の出力電圧を測定する第1の電圧測定手段と、前記バッテリ装置の入力電圧を測定する第2の電圧測定手段とを有し、第1の電圧測定手段の測定電圧から第2の電圧測定手段の測定電圧を引いた電圧差が正常値より大きい値の第1の閾値を設け、また、この第1の閾値より大きく、前記充電ケーブル及びコネクタが焼損する恐れのある電圧差の値を第2の閾値とし、前記計測した電圧差が第1の閾値より大きく、前記第2の閾値未満の場合は、マイナーアラームとして充電を継続しつつ警報すると共に、前記電圧差が第2の閾値以上の場合は、当該充電を停止する手段を設けた、電気自動車用急速充電器劣化検出装置とした。
【0008】
また、請求項2の発明は、電気自動車に搭載されているバッテリ装置に短時間で充電する急速充電器であって、前記急速充電器から導出された充電ケーブルと、バッテリ装置に接続された充電ケーブルとをコネクタを介して接続する充電装置において、前記急速充電器の出力電圧を測定する第1の電圧測定手段と、前記バッテリ装置の入力電圧を測定する第2の電圧測定手段とを有し、第1の電圧測定手段の測定電圧から第2の電圧測定手段の測定電圧を引いた電圧差に前記充電ケーブルに設けた電流測定手段の測定電流値を乗じた電力値が正常値より大きい値の第1の閾値を設け、また、この第1の閾値より大きく、前記充電ケーブル及びコネクタが焼損する恐れのある電力値を第2の閾値と、前記計測した電力値が第1の閾値より大きく、前記第2の閾値未満の場合は、マイナーアラームとして充電を継続しつつ警報すると共に、前記電力値が前記第2の閾値以上の場合は、当該充電を停止する手段を設けた、電気自動車用急速充電器劣化検出装置とした。
【0009】
また、請求項3の発明は、電気自動車に搭載されているバッテリ装置に短時間で充電する急速充電器であって、前記急速充電器から導出された充電ケーブルと、バッテリ装置に接続された充電ケーブルとをコネクタを介して接続する充電装置において、前記急速充電器から導出された充電ケーブルの温度を測定する第1の温度センサと、前記コネクタの温度を測定する第2の温度センサと、前記バッテリ装置に接続された充電ケーブルの温度を測定する第3の温度センサとを有し、測定した温度が正常値より大きい値の第1の閾値を設け、また、前記第1の閾値より大きく、前記充電ケーブル及びコネクタが焼損する恐れのある温度を第2の閾値とし、前記いずれかの温度センサの測定温度値が第1の閾値より大きく、前記第2の閾値未満の場合は、マイナーアラームとして充電を継続しつつ警報すると共に、前記いずれかの測定温度値が前記第2の閾値以上の場合は、当該充電を停止する手段を設けた、自動車用急速充電器劣化検出装置とした。
【0010】
また、請求項4の発明は、前記請求項1〜3の装置の少なくとも2つを用い、前記双方の装置の計測値が第1の閾値より大きく、前記第2の閾値未満の場合は、マイナーアラームとして充電を継続しつつ警報すると共に、前記双方の装置の計測値が前記第2の閾値以上の場合は、当該充電を停止する手段を設けたことを特徴とする、電気自動車用急速充電器劣化検出装置とした。
【発明の効果】
【0011】
請求項1〜4の発明では、第1の閾値と第2の閾値を設け、計算値又は測定値が第1の閾値から前記充電ケーブルやコネクタが損傷する第2の閾値未満までの場合は、マイナーアラームとして充電を継続しつつ警報すると共に、前記双方の装置の計算値又は測定値が前記充電ケーブル及びコネクタが焼損する第2の閾値以上の場合は、メジャーアラームとして当該充電を停止すると共に警報する構成としたため、当該充電の作業者は、マイナーアラームの警報を受けて、充電ケーブル等の劣化を確認するため、これによって充電ケーブル等の取替時期を早める等の措置を講ずることができる。また、メジャーアラームの場合は直ちに充電作業を停止して、充電ケーブル等を取替、ケーブルの焼損事故を未然に防ぐことが出来る。
【0012】
また、請求項1の発明によれば、急速充電器から電気自動車のバッテリまでの充電ケーブルやコネクタの劣化を、電圧降下分で検出するため、検出を確実かつ的確に行うことが出来る。また、請求項2の発明によれば、急速充電器から電気自動車のバッテリまでの充電ケーブルやコネクタの劣化を、電圧、電流積の電力算出方式で検出するため、検出をより確実かつ的確に行うことが出来る。また、請求項3の発明によれば、急速充電器から電気自動車のバッテリまでの充電ケーブルやコネクタの劣化をこれらの温度を測定することで検出するため、検出を確実かつ的確にすることが出来る。また、請求項4の発明によれば、前記請求項1〜3の少なくとも2つの装置を用い、2つの装置の測定値又は計算値により検出するため、検出がより確実で信頼性の高いものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明は、電気自動車に搭載されているバッテリ装置に短時間で充電する急速充電器であって、前記急速充電器から導出された充電ケーブルと、バッテリ装置に接続された充電ケーブルとをコネクタを介して接続する充電装置において、前記急速充電器から導出された充電ケーブルや前記バッテリ装置に接続される充電ケーブルや前記コネクタの電圧、電流、温度を測定し、これらの測定値から求めた計測値の正常値より大きい値を第1の閾値とし、また、この第1の閾値より大きく、前記充電ケーブル及びコネクタが焼損する恐れのある値を第2の閾値として予め定め、前記計測値が第1の閾値以上であって、第2の閾値未満の場合は、マイナーアラームとして充電を継続しつつ警報すると共に、前記計測値が第2の閾値以上の場合は、当該充電を停止する手段を設けた、電気自動車用急速充電器劣化検出装置とし、これにより前記充電ケーブル等の劣化による事故を未然に防ぐものである。
【実施例1】
【0014】
以下、この発明の実施例1を図に基づいて説明する。図1はこの発明の構成を示すもので、急速充電器1を電気自動車に搭載されているバッテリ装置2に接続して充電する場合、前記急速充電器1から導出された充電ケーブル3と、バッテリ装置に接続された充電ケーブル4とをコネクタ5を介して接続する充電装置において、前記急速充電器1から導出された充電ケーブル3の電圧を測定する第1の電圧計6と、前記バッテリ装置2に接続される充電ケーブル4の端末の電圧を測定する第2の電圧計7とを設ける。そして、第1の電圧計6の測定電圧から第2の電圧計7の測定電圧を引いた電圧差デルタVが、正常値より大きい値を第1の閾値とし、前記充電ケーブル3又は4及びコネクタ5が焼損する恐れのある電圧差デルタVを第2の閾値と予め定める。
【0015】
そして、前記第1の電圧計6の測定電圧から第2の電圧計の測定電圧を減じて電圧差デルタVを算出する算出手段8を設け、また、前記算出された電圧差デルタVが第1の閾値以上か以下か、また、第2の閾値以上か以下かを比較する比較手段9を設け、当該比較手段9において前記電圧差デルタVが第1の閾値以上であって第2の閾値未満の場合は、マイナーアラームとして充電を継続しつつその旨を警報する警報手段10を設け、前記電圧差デルタVが前記第2の閾値以上の場合は、当該充電を自動的に停止し、かつ当該充電停止を表示する充電停止手段11を設けた。なお、前記マイナーアラームの警報は、音、光、これらの組み合わせ等適宜のものでよい。
【実施例2】
【0016】
図2は、この発明の実施例2の構成を示す。この実施例2は、前記実施例1の構成に加え、充電ケーブル3に電流計12を設け、第1の電圧計6の測定電圧から第2の電圧計7の測定電圧を引いた電圧差デルタVに、前記電流計12の測定電流を乗じて電力を算出する算出手段13を設ける。そして、算出された電力値が正常値より大きい値を第1の閾値とし、当該第1の閾値より大きい値であって前記充電ケーブル3又は4及びコネクタ5が焼損する恐れのある電力値を第2の閾値と予め定める。また、前記算出された電力値が第1の閾値以上か以下か、また、第2の閾値以上か以下かを比較する比較手段14を設け、当該比較手段14において前記算出電力値が第1の閾値以上でありかつ第2の閾値未満の場合は、マイナーアラームとして充電を継続しつつその旨を警報する警報手段15を設け、前記電力値が前記第2の閾値以上の場合は、当該充電を停止し、かつ当該充電停止を表示する充電停止手段16を設けた。
【0017】
なお、上記実施例1及び実施例2では、第1の電圧計6により充電ケーブル3の電圧を測定しているが、当該第1の電圧計6は急速充電器1の出力端子の電圧を測定しても同様である。要は、第1の電圧計6により、前記急速充電器1の出力電圧を測定するものであれば良い。また、第2の電圧計7により充電ケーブル4の電圧を測定しているが、当該第2の電圧計7はバッテリ装置2の入力端子の電圧を測定しても同様である。要は、第2の電圧計7によりバッテリ装置2の入力電圧を測定するものであれば良い。
【実施例3】
【0018】
図3は、この発明の実施例3の構成を示す。この実施例3は、充電ケーブル3、コネクタ5及び充電ケーブル4にそれぞれ順に温度センサ17、18、19を設ける。そして、温度センサ17,18、19の測定温度が、正常値より大きい値を第1の閾値とし、前記充電ケーブル3又は4及びコネクタ5が焼損する恐れのある温度を第2の閾値と予め定める。また、前記各温度センサ17、18、19のいずれかの測定温度が第1の閾値以上か以下か、また、第2の閾値以上か以下かを比較する比較手段20を設け、当該比較手段20において前記いずれかの測定温度が第1の閾値以上でありかつ第2の閾値未満の場合は、マイナーアラームとして充電を継続しつつその旨を警報する手段21を設け、前記いずれかの測定温度が前記第2の閾値以上の場合は、当該充電を停止し、かつ当該充電停止を表示する手段22を設けた。
【0019】
また、前記実施例1〜3の装置を複数設け、これらの複数の装置の計測値の一つ又は複数が、第1の閾値から第2の閾値までの間のものであれば、マイナーアラームを発し、第2の閾値以上であればメジャーアラームとして充電を停止し、当該停止を表示する構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施例1の概略構成図である。
【図2】この発明の実施例2の概略構成図である。
【図3】この発明の実施例3の概略構成図である。
【符号の説明】
【0021】
1 急速充電器 2 バッテリ装置
3 充電ケーブル 4 充電ケーブル
5 コネクタ 6 第1の電圧計
7 第2の電圧計 8 算出手段
9 比較手段 10 警報手段
11 充電停止手段 12 電流計
13 算出手段 14 比較手段
15 警報手段 16 充電停止手段
17 温度センサ 18 温度センサ
19 温度センサ 20 比較手段
21 警報手段 22 充電停止手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車に搭載されているバッテリ装置に短時間で充電する急速充電器であって、前記急速充電器から導出された充電ケーブルと、バッテリ装置に接続された充電ケーブルとをコネクタを介して接続する充電装置において、
前記急速充電器の出力電圧を測定する第1の電圧測定手段と、前記バッテリ装置の入力電圧を測定する第2の電圧測定手段とを有し、
第1の電圧測定手段の測定電圧から第2の電圧測定手段の測定電圧を引いた電圧差が正常値より大きい値の第1の閾値を設け、また、この第1の閾値より大きく、前記充電ケーブル及びコネクタが焼損する恐れのある電圧差の値を第2の閾値とし、前記計測した電圧差が第1の閾値より大きく、前記第2の閾値未満の場合は、マイナーアラームとして充電を継続しつつ警報すると共に、前記電圧差が第2の閾値以上の場合は、当該充電を停止する手段を設けたことを特徴とする、電気自動車用急速充電器劣化検出装置。
【請求項2】
電気自動車に搭載されているバッテリ装置に短時間で充電する急速充電器であって、前記急速充電器から導出された充電ケーブルと、バッテリ装置に接続された充電ケーブルとをコネクタを介して接続する充電装置において、
前記急速充電器の出力電圧を測定する第1の電圧測定手段と、前記バッテリ装置の入力電圧を測定する第2の電圧測定手段とを有し、
第1の電圧測定手段の測定電圧から第2の電圧測定手段の測定電圧を引いた電圧差に前記充電ケーブルに設けた電流計の測定電流値を乗じた電力値が正常値より大きい値の第1の閾値を設け、また、この第1の閾値より大きく、前記充電ケーブル及びコネクタが焼損する恐れのある電力値を第2の閾値と、前記計測した電力値が第1の閾値より大きく、前記第2の閾値未満の場合は、マイナーアラームとして充電を継続しつつ警報すると共に、前記電力値が前記第2の閾値以上の場合は、当該充電を停止する手段を設けたことを特徴とする、電気自動車用急速充電器劣化検出装置。
【請求項3】
電気自動車に搭載されているバッテリ装置に短時間で充電する急速充電器であって、前記急速充電器から導出された充電ケーブルと、バッテリ装置に接続された充電ケーブルとをコネクタを介して接続する充電装置において、
前記急速充電器から導出された充電ケーブルの温度を測定する第1の温度センサと、前記コネクタの温度を測定する第2の温度センサと、前記バッテリ装置に接続された充電ケーブルの温度を測定する第3の温度センサとを有し、
測定した温度が正常値より大きい値の第1の閾値を設け、また、前記第1の閾値より大きく、前記充電ケーブル及びコネクタが焼損する恐れのある温度を第2の閾値とし、
前記いずれかの温度センサの測定温度値が第1の閾値より大きく、前記第2の閾値未満の場合は、マイナーアラームとして充電を継続しつつ警報すると共に、前記いずれかの測定温度値が前記第2の閾値以上の場合は、当該充電を停止する手段を設けたことを特徴とする、電気自動車用急速充電器劣化検出装置。
【請求項4】
前記請求項1〜3の装置の少なくとも2つを用い、前記双方の装置の計測値が第1の閾値より大きく、前記第2の閾値未満の場合は、マイナーアラームとして充電を継続しつつ警報すると共に、前記双方の装置の計測値が前記第2の閾値以上の場合は、当該充電を停止する手段を設けたことを特徴とする、電気自動車用急速充電器劣化検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−15581(P2011−15581A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159236(P2009−159236)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000144108)株式会社三英社製作所 (35)
【Fターム(参考)】