説明

電気部品物理的保護の方法及び装置

【課題】熱に弱い部品を高温、衝突、及び湿気から保護するための格納容器を提供する。
【解決手段】高温、衝突、及び湿気から保護するための格納容器100は、熱に弱い部品121を収納するために構成される内部空洞104を囲む外部ハウジング102と、内部空洞を格納容器に対いて外部である環境から密閉するように対になって結合するために構成されるカバー108と、からなり、ハウジング及びカバーの少なくとも一つはセラミック素材で形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、電子部品の保護格納容器に関するものであり、より具体的には、車両衝突の影響からデータ記録機器を保護するための方法及び装置に関する。
【0002】
少なくともいくつかの既知のフライトデータレコーダ(FDR)のための衝突保護メモリ(crash-protected memory: CPM)外装は、侵入及び車両衝突などのような衝突事故の最中に断熱及びメモリアセンブリの保護を提供するために例えば、スチール、チタニウム、及び合金などの金属化合物を使用する。但し外装はこれらに限定されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許7318170号
【特許文献2】米国特許7145430号
【特許文献3】米国特許6667076号
【特許文献4】米国特許5907125号
【特許文献5】米国特許5334799号
【特許文献6】米国特許5115912号
【特許文献7】米国特許4443656号
【特許文献8】米国特許公開第2008−0185173号
【特許文献9】米国特許公開第2007−0291440号
【特許文献10】米国特許公開第2007−0236859号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、通常金属は比較的重く、またその比較的高い熱伝導性のため火災時において限られた保護しか提供できない。更に、金属組成物は、固体CPMに一般的に見受けられる断熱物質の熱膨張係数と大幅に異なる熱膨張係数を有する。大幅に異なる熱膨張係数を金属外装格納容器と断熱物質との間で有しているので、火事の際、その格納容器と断熱物質との間に隙間を引き起こす場合がある。そのような隙間は、CPM外装のメモリ部品を保護する断熱物質能力を妨げるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの実施形態において、熱に弱い部品を高温、機械的衝突、及び湿気から守る格納容器は、その中の熱に弱い部品を収納するために構成された内部空洞を囲む外部ハウジングと、内部空洞が格納容器に対して外部である環境から密閉されるように外部ハウジングと対になるようにかみあうように構成されるカバーと、を含む。外部ハウジング及びカバーの少なくとも一つは、セラミック素材で形成される。
【0006】
その他の実施形態において、部品を衝突から保護する方法は、部品を収納するために構成される空洞を含むハウジングを第一セラミック素材で形成する工程と、内部空洞がセラミック素材で密閉されるように、外部ハウジングと対になりかみあうように構成されるカバーを第二セラミック素材で形成する工程と、空洞内部に部品を配置する工程と、ハウジングとカバーとの一対の噛み合わせがハウジングとカバーに対して外部である環境から内部空洞を密閉するために、ハウジングとカバーとを接合する工程と、を含む。
【0007】
更に他の実施形態では、車両用の耐衝突格納容器は、空洞を有するセラミックハウジングを含み、そのハウジングは空洞を少なくとも部分的に囲むシールエッジを含む。格納容器は更に、シールエッジに補足的なエッジを含むセラミックカバーを含み、ハウジングとカバーとが結合されると空洞に囲まれた耐火格納容器を形成する。
図1及び図2は、本明細書に説明される方法及び装置の代表的な実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の代表的な実施形態に従った耐衝突格納容器の概略図である。
【図2】本発明の実施形態に従った衝突からの部品の保護方法の代表的な方法の図表である。
【符号の説明】
【0009】
100 格納容器
102 外部ハウジング
104 内部空洞
106 セラミックカバー
108 カバー
110 エッジ
112 断熱層
114 内側表面
116 電気コネクタ
118 電源ターミナル
120 データターミナル
121 部品
122,124,126 層
【発明を実施するための形態】
【0010】
後述の詳細な説明は、一例として本発明の実施形態を描写したものであり、制限するものではない。本発明は、産業用、工業用及び居住用用途での厳しい環境から部品を保護する方法と装置に対する一般的な活用を有すると考えられる。
【0011】
本明細書で使用されるように、単数形及び“一つの”という単語で説明される要素又は工程は、明白に説明されない限り、複数の要素又は工程を含むものではないと理解されるべきである。更に、本発明の“一つの実施形態”への言及は、説明される特徴も取り入れる更なる実施形態の存在を排除すると理解されるよう意図されるものではない。
【0012】
図1は、本発明の代表的な実施形態に従った耐衝突格納容器100の概略図である。代表的な実施形態において、格納容器100は車両に搭載されるように構成され、またこれに限定されないが、例えばフライトデータレコーダのような固体メモリなどの部品を保護するために構成される。格納容器100は激しい火災及び衝突の対象となる可能性がある、例えば航空機又は宇宙船などの乗物において格納容器100は使用される見込みがある。格納容器100は、空洞104を形成するセラミックハウジング102を有する。ハウジング102は、少なくとも部分的に空洞104を囲むシールエッジ106を含む。格納容器100は、シールエッジ106に補足的なエッジ110を含むセラミックカバー108を更に含む。ハウジング102及びカバー208が接合されると、空洞104を囲う耐火格納容器を形成する。
【0013】
格納容器100は更に、空洞104を囲い且つハウジング102及びカバー108の内表面114に隣接する断熱層112を含む。代表的な実施形態において、断熱層112の熱膨張係数はハウジング102及びカバー108の少なくとも一つの熱膨張係数にほぼ等しくなるように選択される。一般的に、ハウジング102及びカバー108は、ほぼ等しい熱膨張係数を有する同様の素材で形成される。別の実施形態においては、ハウジング102及びカバー108は異なる熱膨張係数を有する素材で形成される。ハウジング102、カバー108、及び断熱層112の熱膨張差は、ハウジング102、カバー108、及び断熱層112の間に隙間をもたらす場合がある。他の実施形態において、ハウジング102及び/又はカバー108と断熱層112との間の隙間が望ましいため、断熱層112は、ハウジング102及び/又はカバー108から間隔をあけて配置されている。
【0014】
代表的な実施形態において、ハウジング102及び/又はカバー108は炭化ホウ素マトリックスで形成される。炭化ホウ素セラミックは、ハウジング102及び/又はカバー108を形成するために鋳造され、形成処理中に様々な量の結合剤を含む。更に、炭化ホウ素は形成及び硬化されるハウジング102及び/又はカバー108の脆弱性を補うために又は破壊靱性を増強するために、可塑剤と混合されてもよい。様々な他の実施形態において、炭化ホウ素はハウジング102及び/又はカバー108内に入れられるセラミックファイバーを形成するために溶解され回転される。他の実施形態において、セラミック素材は複数の層122、124及び126により形成される。様々な実施形態において、層122、124及び126は、加工できるシートを形成するために形成及び/又は互いに接着された様々な物質からなり、又一つの層が他の層に収まり又他の層に収まるように、入れ子形状に形成されてもよい。様々な入れ子形状はハウジング102及び/又はカバー108を形成するためにその後接合又は結合されてもよい。例えば、複数の層122、124及び126の一つの層は金属からなり、もう一つの層は第一組成を有する第一セラミック素材からなり、もう一つの層は第二組成を有する第二セラミック素材からなってもよい。層122、124及び126の順序は、格納容器100が配置されるであろう車両のタイプなどのような、格納容器100の予想される働きに基づいて選択される。層122、124及び126の順序は、所望の耐侵入性のレベル又は予想される火炎温度及び露出の持続に基づいて選択されてもよい。
【0015】
格納容器100は、空洞104とハウジング102及びカバー108に対して外部である環境との間の密閉が維持されるように、格納容器100を空洞104までハウジング102及び/又はカバー108を介して貫通する電気コネクタ116を更に含む。電気コネクタ116は、空洞104内部に配置される部品121に電源及びデータ信号をそれぞれ電通するために構成される電源ターミナル118及びデータターミナル120を含む。代表的な実施形態において、部品121はデータレコーダのメモリである。様々な他の実施形態では、部品121は、例えばプロセッサ又は熱、衝突及び/又は湿気に強い物のようなその他の電子部品を含んでもよい。
【0016】
様々な実施形態において、セラミック格納容器100の厚さは同等の金属格納容器の厚さより厚い。しかしながら、セラミック素材は金属の重量より約70%軽いため、セラミック素材を利用することで全体の重量の軽量化が実現される。更に、セラミック素材は金属より低い熱伝導性を示すため、格納容器を形成する金属に更なる断熱処理を施すことが利点になる。
【0017】
図2は、本発明の実施形態に従った部品を衝突から保護する方法の代表的な方法200の図表である。代表的な実施形態において、方法200は、部品を収納するために構成される空洞を含むハウジングを第一セラミック素材で形成する工程202と、内部空洞が格納容器の外部環境から密閉されるように、外部ハウジングと対になりかみあうように構成されるカバーを第二セラミック素材で形成する工程204と、を含む。方法200は、空洞内部に部品を配置する工程206と、ハウジングとカバーとの一対の噛み合わせがハウジングとカバーに対して外部である環境から内部空洞を密閉するために、ハウジングとカバーを接合する工程208と、を更に含む。
【0018】
本明細書に使用されるプロセッサという表現は、セントラルプロセスユニット、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、縮小命令セット回路(RISC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、ロジック回路、及びその他の回路又は本明細書に説明される機能を実行可能なプロセッサを言及する。
【0019】
本明細書に使用されるように、メモリという表現は、RAMメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、及び不揮発性RAM(NVRAM)メモリを含んでもよい。上述のメモリの種類は代表的なものであり、格納容器100内部に使用できるメモリのタイプを制限するものではない。
【0020】
部品を衝突から保護するための方法及び装置の上述される実施形態は、費用効果があり、熱に弱い部品を高熱、衝突及び湿気から守るための確実な方法を提供する。より具体的には、本明細書に説明される方法及び装置は、例えば部品を衝突から保護する格納容器の重量を減らすことを容易にする。更に、上述の方法及び装置は、部品に損傷を与える機械的衝突、火災、及び/又は湿気などの悪環境において衝突の最中及び後に周囲環境から部品を隔離することを容易にする。その結果、本明細書で説明される方法及び装置は、費用効果がありかつ確実な方法で、熱に弱い部品を高温、衝突及び湿気から保護することを容易にする。
【0021】
開示が様々な特定の実施形態により説明されてきたが、その開示は特許請求の範囲の精神と領域内で変更され試行されるであろうことが認識されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱に弱い部品を高温、衝突、及び湿気から保護するための格納容器(100)であって、
熱に弱い部品(121)を収納するために構成される内部空洞(104)を囲む外部ハウジング(102)と、
前記内部空洞が前記格納容器に対して外部である環境から密閉されるように外部ハウジングと対になるようにかみあうように構成されるカバー(108)と、を備え、
前記外部ハウジング及び前記カバーの少なくとも一つがセラミック素材から形成されている格納容器(100)。
【請求項2】
前記セラミック素材は炭化ホウ素マトリックスからなる請求項1に記載の格納容器(100)。
【請求項3】
前記セラミック素材はファイバー状の炭化ホウ素からなる請求項1に記載の格納容器(100)。
【請求項4】
前記外部ハウジング(102)はセラミック素材の鋳造物である請求項1に記載の格納容器(100)。
【請求項5】
前記セラミック素材は、複数の層(122、124、126)から形成される請求項1に記載の格納容器(100)。
【請求項6】
前記複数の層(122、124、126)は少なくとも一つの金属層からなる請求項5に記載の格納容器(100)。
【請求項7】
前記内部空洞(104)を囲む断熱層(112)を更に備え、前記断熱層は、前記セラミック素材の熱膨張係数とほぼ同等な熱膨張係数を有する素材を有する請求項1に記載の格納容器(100)。
【請求項8】
前記ハウジング(102)及び前記カバー(108)の少なくとも一つを通る開口と、
電力及び電気信号の少なくとも一つを前記ハウジング及び前記カバーの少なくとも一つを介して伝導するために構成され、前記空洞(104)と前記格納容器に対して外部である環境との間の密閉を維持するように前記開口を覆う電気コネクタ(116)と、を更に備える請求項1に記載の格納容器(100)。
【請求項9】
空洞(104)を形成し、前記空洞を部分的に囲むシールエッジを含むセラミックハウジング(102)と、
シールエッジに補足的なエッジ(110)を含むセラミックカバー(108)と、を備え、
前記ハウジングと前記カバーとが結合されると前記空洞に囲まれた耐火格納容器を形成する車両用の耐衝突格納容器(100)。
【請求項10】
前記空洞(104)を囲み、前記ハウジング(102)及び前記カバー(108)の内側表面(114)に隣接した断熱層(112)を更に備える請求項9に記載の格納容器(100)。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−42804(P2010−42804A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177153(P2009−177153)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(506388923)ジーイー・アビエイション・システムズ・エルエルシー (46)
【Fターム(参考)】