説明

電池の分解方法、及びその装置

【課題】電池の内部短絡安全性評価を行うためには、充電された電池の外装体を切断して内部の正極、負極、絶縁層を損傷なく取り出す必要がある。従来は手作業にて電池の外装体を切り開き内部の電極群を取り出すことが通例であった。この方法で解体するためには、作業者の熟練を要し、また分解時に正負極間を誤って短絡させてしまうと、電池が発煙、発火を起こすため、安全性に問題があった。
【解決手段】正極板と負極板と、正負極板を電気的に絶縁する絶縁層とを捲回、または積層した電極群4と、電解液と、これらを内包する外装体1と、電極群4と外装体1とを電気的に接続する正極集電板5c、負極集電板6cとを含む電池の分解方法であって、外装体を切削工具にて分割し、電極群に傷を発生させず、安全に、精度良く取り出すことを可能とした電池の分解方法と、その装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池を安全に、且つ、精度良く分解するための方法と、それを可能にする装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二次電池の中でもリチウム二次電池は、小型で高エネルギー密度を有することから、主にポータブル機器用の電源や、高容量、高出力を必要とされる電気自動車用の電源として利用されている。特に近年は注目を浴びており、各国でリチウム二次電池の開発が盛んに行われ、より安全で高容量の電池の実現が急務となっている。
【0003】
リチウム二次電池は、正極と負極との間に、それぞれの極板を電気的に絶縁し、さらに電解液を保持する役目をもつ絶縁層がある。リチウム二次電池を極度な高温環境に長時間保持した場合、該絶縁層は収縮しやすいため、正極と負極とが物理的に接触して内部短絡が発生したり、正極、負極、絶縁層の表面に付着した導体粉により、絶縁層が破れ正極、負極間が電気的に導通を起こし内部短絡が発生したりする傾向があった。
【0004】
特に近年、リチウム二次電池の高容量化に伴う絶縁層の薄肉化の傾向と相まって、内部短絡の課題はより一層重大なものになりつつある。一旦内部短絡が発生すると、短絡電流に伴うジュール熱によって短絡部はさらに拡大し、電池が加熱し破壊に至る場合もあり得る。そこで、電池に内部短絡が生じた場合でも、その安全性を確保することが非常に重要であり、電池の内部短絡時の安全性を高める技術について、従来から盛んに開発が進められている。例えば、極板上にイオン透過性のセラミック粒子とバインダーからなる絶縁層を印刷する技術などが提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
一方、内部短絡を生じた際の安全性を確保するためには、内部短絡が発生した際の電池の安全性を正しく評価することが非常に重要である。
【0006】
従来より、リチウム二次電池などの電池の安全性評価方法として、図10に示すように電池の内部短絡安全性評価方法がある(特許文献2参照)。
【0007】
この方法は、以下の工程を通じて、電池が発煙、発火状態にならないことを評価基準として安全な電池の判定を行ってきている。
(1)リチウム二次電池の外装体を分割工具(セラミックニッパー等)により分解する工程。
(2)電極群4を取り出して展開する工程。
(3)正極板5と負極板6の対向する箇所に金属異物9を故意に混入させる工程。
(4)再度、構成(捲き込み)した後に、金属異物9を混入させた箇所を、加圧子により加圧し、強制的に内部短絡状態を起こす工程。
【0008】
この試験を実施するためには、図1に示すように電池の外装体を切り開き内部の電極群を取り出す方法が一般的であった。
【0009】
一般的に前記電池の外装体は、アルミニウム、軟鋼等でできており、前記外装体自体が負極側になるよう構成されている。そのため、正極と負極との短絡をさせず、電池機能を破壊せず切断する方法としては不導体切断工具(セラミックニッパー等)を用いて外装体を切り開いていく方法にて解体するのが通例であった。
【0010】
図1は、従来の電池分解方法を示した図である。
【0011】
従来の分解手順としては、まず図1(a)に示すように、絶縁チューブ10(塩化ビニリデンフィルム)をカッター103にて切り目を設ける。次に図1(b)に示すように、絶縁用チューブ10の端をめくり、外装体より剥がし取る。次に、図1(c)に示すように、不導体切断工具110(セラミックニッパー等)にて外装体1の正極側のカシメ部の端を切り起こす。この作業を360度全周行う。
【0012】
そして、図1(d)及び図1(e)に示すように、切り起こした端部を前記不導体切断工具107にて挟み、外装体1をらせん状に剥いていく。この作業を電池の約2/3まで行い、図1(f)に示すように、電極群4を切り開かれた前記外装体1から抜き取る。最後に、図1(g)に示すように、キャップ2を持ち上げ正極集電板5cのキャップ2に近い側を、ハサミ106等を用いて切断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平10−106530号公報
【特許文献2】国際公開第2008/132837号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、この方法で解体するためには、作業者の熟練を要し、また分解時に正負極間を誤って短絡させてしまうと、電池が発煙、発火を起こすため、安全性に問題があった。
【0015】
そこで、本発明は、上記従来の課題を解決するもので、電池を安全に、且つ、精度良く分解するための方法とその分解装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明は、電池を分割する手順として、最初に、外装体の電極群の無い箇所、捲回タイプ(円筒型)電池の場合は、両端部(正極側溝部または負極側底部)の角部のRジリ部に、スクイ角15〜35度を有した切削工具を用いて、板厚方向に一気に切り込みことで、切屑を前記外装体に対してして外側方向に出し、且つ切屑が分断されず繋がって出るような切削速度を維持して切削する工程と、
前記外装体の両端部を切除した後に、前記外装体の中心軸線に沿って、前記外装体の側面の板厚部をスクイ角15〜35度を有した切削工具にて一気に切り込むことで、切屑を前記外装体に対して外側方向に出し、且つ、切屑が分断されず繋がって出るような切削速度を維持して切削する工程と、を有し、前記切削工具が外装体の外形に沿って動く構造とすることを特徴とする。
【0017】
これにより、切削時の切り込み量を一定にし、切削時に発生する切屑や、金属バリが外方向に形成できる。上記方法にて電池を分解することで、前記外装体の切屑やバリによる電極群の損傷を防止することができ、発火、発煙のない安全な電池分解が実現する。
【0018】
なおかつ、分解方法を実施可能にするために、電池完成品を把持できる爪と、爪を開閉するための駆動部(チャック等)と、駆動部を保持し、駆動部を切削方向に360度自由に回転可能な回転軸と、回転軸を精度良く回転できる軸受けを収納したハウジングと、前記回転軸に回転力を与えるための回転駆動部(ハンドル又は、歯車、プーリ等)と、電池完成品の切削する際に切断部を覆うためのカバーと、カバーを前記電池完成品の切削部に装着することのできる移動ステージと、さらに、前記電池完成品を切削するための切削工具と、前記切削工具を前記電池完成品の切削部に位置決めし、切削時の前記切削工具の切削量を調整できるXYテーブルと、を有する装置であることを特徴とする。
【0019】
更に、電池完成品を固定する電池ホルダーと、電池ホルダーに固定し前記電池完成品を把持する方向に可動するYテーブルと、Yテーブルを動かすための駆動部(開閉チャック等)と、電池完成品を電池軸方向に切削する切削工具と、切削工具を保持し、前記電池完成品の外形に沿って動く際に、外形面に対して鉛直方向に動作可能な切断ガイドブロックと、ガイドブロックを保持し前記電池完成品の電池軸方向に動作可能なXスライドテーブルと、Xスライドテーブルを前後させる駆動部(エアーシリンダー等)とを有する装置であることを特徴とする。
【0020】
このような装置構成により、電池の前記外装体を切除する際に発生する切粉の発生を少なくし、金属切断部のバリの方向を電極群と反対方向に形成することが可能となり、前記電極群を損傷無く安全に前記外装体から取り出すことができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明の電池の分解方法、及びその装置によれば、電池を安全に、且つ、精度良く分解が可能で、電極群の損傷を発生させないため、電池の内部短絡安全性評価方法を実施する際の安全性を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来の電池分解方法を示す図
【図2】本発明の実施の形態1における電池の構造図
【図3】本発明の実施の形態1における電池分解方法の手順図
【図4】本発明の実施の形態1における電池分解方法の端面切断方法詳細図
【図5】本発明の実施の形態1における電池分解方法の側面切断方法詳細図
【図6】本発明の実施の形態1における電池分解方法の側面切断方法詳細図
【図7】本発明の実施の形態1における電池分解を可能とする装置の構成図
【図8】本発明の実施の形態1における電池分解を可能とする装置の構成図
【図9】本発明の実施の形態1における電池分解を可能とする装置の分解フロー図
【図10】従来の電池安全性試験方法での異物混入方法図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
(実施の形態)
図2(a)は分解される電池の構造図である。
【0025】
同図において、5は正極板であり、正極合剤ペーストをアルミニウム箔の両面に塗布した後、乾燥させ、圧延ロールで圧延して作られる。5cは正極板5に電気的に導通するよう接合された正極集電板である。6は負極板であり負極合剤ペーストを銅箔の両面に塗布した後、乾燥させ、圧延ロールで圧延して作られる。6cは負極板6に電気的に導通するよう接合された負極集電板である。
【0026】
また、7は絶縁層で正極板5と負極板6とを電気的には絶縁し、イオン交換のための電解液を内部の気泡部に溜めることが可能な構造で形成される。
【0027】
図2(b)は本発明の実施の形態における電池の捲込み方法を示す斜視図である。
【0028】
4は正極板5と負極板6と絶縁層7を重ね合わせ密着した状態にて捲回されて製作された電極群である。
【0029】
この電極群4は、重ね合わせた後に捲回するか、切断後に多層に積層することで電池容量を増やす構成となっている(図2(b)は捲回した場合の例)。捲回にて製作の場合は、負極板6の端末部15はテープ14にて巻き付け固定される。
【0030】
この捲回もしくは積層された電極群4は、図2に示すように外装体1(ケース)の外装体に収納される。この外装体1は、円筒型または楕円、多角型で片側のみ開口が設けられており、塞がった底面にて負極集電板6cと電気的に導通するよう接合されている。8aは、負極板6と正極集電板5cの短絡を防止するための上部絶縁板であり、8bは、正極板5が負極集電板6cと、外装体1との短絡を防止している下部絶縁板である。正極集電板5cは、キャップ2と電気的に導通するよう接合されており、キャップ2はガスケット3を介して外装体1に固定されている。
【0031】
なお、キャップ2は外装体1に形成された上溝部11と、外装体1の端部を絞りこむことによりガスケット3と共に機械的に外装体1に保持されている。また、キャップ2には内部短絡などの異常時に内部圧力上昇による外装体1の破裂を防止するための安全弁をそなえている。ガスケット3は、キャップ2と外装体1との機密性を持たせるため弾性体にて製作されている。
【0032】
10は絶縁チューブであり、負極となる外装体1の両端面部のみを露出させた状態で包み込むよう収縮固定されており、正負極の短絡を防止するとともに、外装体1を保護している。12は外装体1に設けられた溝角部であり、13は外装体1の外装体底面角部を示す。20は上記構成にて製作された電池完成品を示す。
【0033】
図3は、本発明の実施の形態1における電池の分解方法の手順図である。
【0034】
電池完成品20の内部短絡安全性評価のために、効率よく分解し極板内部に金属異物9を混入させるための流れを表した図である。
【0035】
まず、図3(a)は、従来の電池の分解方法と同様で、電池完成品20の外装体1に巻き付けられた絶縁チューブ10(塩化ビニリデンフィルム等)をカッター103にて切れ目を設け、絶縁用チューブ10の端をつかみ、外装体1より剥がし取る。
【0036】
次に、図3(b)に示すように、外装体1の正極側の溝角部12を切削工具A101を用いて切除する。次に、外装体1の外装体底面角部13を切削工具A101にて外装体1より切り離す。その後、正極集電板5cと負極集電板6cは電極群4側が長く残るように切断工具(ハサミ等)106にて切断する。これは、短絡試験時の電圧測定時にこれらを使用するためである。
【0037】
次いで、図3(c)に示すように、筒状に切断済外装体21を、切削工具B102にて電池長手方向に切れ目を設け、外装体1を2分割、または、外装体1を広げることで、電極群4を筒状に切断済外装体21より抜き取ることができる。図3(d)は、前述の方法で取り出した電極群4を展開して金属異物9を巻き込む方法である。
【0038】
図4(a)〜(d)は、本発明の実施の形態1における電池分解方法であって端部切除の詳細図である。
【0039】
まず、外装体1の端部切除の際は、切削工具A101を用いて行う。
【0040】
円筒型外装体の場合は電池完成品20を回転させながら、切削工具A101を外装体1に徐々に押し当てて外装体の一部を貫くまで送り込む、その段階で切削工具A101の送り込みを停止し、外装体1のみを回転させ、外装体1の肉を完全に360度切り取る。切削工具A101にて切り込む位置は、正極側では溝角部12のRジリ部17の位置が最も電極群の破損を発生させにくいことが実験にて証明されており、負極側では外装体底面角部13が最も良く、切り取り時のバリも外装体の外方向に形成されやすいことがわかっている。
【0041】
特に、切削工具A101の長手方向の切り込み位置は外装体の角部のRジリ16に切削工具A101の左端が当接するよう位置決めするのが望ましい。
【0042】
切り込み量は、通常、外装体の板厚以上であれば切断可能であるが、外装体の撓み変形を考慮すると板厚に加え0.1〜0.2mmオーバーラップすることが最も適している。
【0043】
これに用いる切削工具A101には、切り込み量の安定化のため、外装体1の外周に当たった段階で、それ以上切削工具A101が電池内部に入り込まないための当たり104を設けてもよく、この当たり104を設けることで、切削工具A101にて電極群4が傷つくことを防止することができる。この段差は切り込み量に合わせて設定する。
【0044】
また、切削工具のスクイ角A108は、通常の旋盤加工などで使用する工具のものとは異なり、15度〜35度が好ましい。これは切削時の切り粉の散乱を防止できるとともに、ケース肉の破断時に発生するバリが、ケース内側方向(電極群方向)に、入りにくくする効果がある。
【0045】
また、外装体1の回転速度と切削工具A101の切り込み量の関係は、切削工具A101の先端部と外装体1の切削面との間が大きく滑らない程度の回転速度と切り込み量にすることが望ましい。例えば、回転速度が速く切り込み量が少ない場合には、切削工具A101の磨耗が発生すると共に、切屑が飛散し、これにより分解時の正負極短絡を引き起こす可能性がある。また、回転速度が遅く、切り込み量が大きい場合は外装体1が変形し、電極群側に沈み込み、スムーズに切断できないことがある。
【0046】
最も切削工具A101が滑らずに外装体1の肉部に切り込んでいける速度で切断することが、切断品質に重要な要素となる。
【0047】
現段階では切削速度:10〜30mm/sで送り量は、0.05〜0.1mm/s程度が最も良いことが実験にて判明してきている。
【0048】
次に、図5(a)〜(e)および図6(a)〜(c)に示すように、筒状に切断済外装体21を、縦方向に分割する方法について詳細説明する。
【0049】
切削溝形成方法としては、図5(a)及び図5(c)に示すように、外装体1の肉に切れ目30を形成し一気に切り開く方法と、図5(b),図5(d)及び図5(e)のように、ケース肉を一部残して凹み溝31を2本形成し、外装体1のせん断強度を弱くする。その後、ケース溝端部32を把持工具(プライヤー等)33で挟み溝に沿って削ぎ取る方法がある。後の方法であれば、切削工具にて電極群に傷をつける可能性がなく高品質な分解が可能となり、把持工具33を用いて剥ぎ取った後も、図5(e)に示すように、バリは電極群方向に入ることがなく安全な分解が可能となる。
【0050】
但し、ケースの厚みが薄い場合は、凹み溝を形成する際にケース撓みが発生し、均一な溝の形成ができないこともある。よって、ケース厚みが薄い場合(0.2mm以下)の場合は、一気に切り開く、図5(a)及び図5(b)の方が精度良く溝30を形成することができる。
【0051】
次に、図5(a)及び図5(b)に示す凹み溝30,31を形成する方法を図6にて説明する。
【0052】
まず、図6(a)のように、回転切削工具107を用いる場合(横型フライス、縦型フライス方式等)では、切削工具107の回転により凹み溝31を形成することが可能であり送り速度は遅くても外装体1の撓みは発生しにくい。但し、回転切削工具107を使用する場合は、切屑が大量に発生し、正負極の短絡の要因となる可能性があるため、切屑の飛散防止機能を別途考慮する必要がある。
【0053】
また、回転切削工具107の回転方向は、この送り方向と同じ方向にて切削(アップカット切削)する方が、外装体1の肉を外方向に引き剥がす力となり、バリ34が外方向に向くため、電極群4にダメージを与えることがない。
【0054】
また、図6(c)に示すように、均一な深さの溝を形成するため回転切削工具107に当り111を設ける。この当り111を設けることで回転切削工具107の削り込み過ぎを防止することができ、より安全な切削を行うことができる。
【0055】
次に、図6(b)に示すように、切削工具B102を使用する方式(形削り方式)にて行う場合は、切削速度を高速で行うことで外装体1(ケース)の撓みが起こりにくくなり均一な凹み溝30を形成することができる。
【0056】
図6(d)に示すように、これに使用する切削工具B102のスクイ角109は、切削工具A101と同様15度〜35度の間が切削時の切り粉の散乱を防止できるとともに、ケース肉の破断時に発生するバリ34が外装体の外側方向に向けることができ、電極群を短絡させにくいことが実験にて証明されている。
【0057】
また、切削工具B102の送り速度は、溝30を形成するためには、低速でも高速でも支障なく形成可能である(但し、100mm/s以上は切削精度が悪化し、切削工具破損になる可能性があるため、それ以下の送り速度であることが好ましい。)。
【0058】
この場合も、回転切削工具107と同様、均一な深さの溝を形成するため、切削工具B102に当り111を設ける。この当り111を設けることで切削工具B102の削り込み過ぎを防止することができ、より安全な切削を行うことができる。
【0059】
以上のように、本電池分解方法にて電池を分解することにより、外装体1の切断時の切り粉の発生を低減し、切断部のバリ34による電極群への傷、変形などのダメージを与えることなく外装体1より取り出し金属異物を混入させることが可能となり、特許文献2(図10)に示す電池の内部短絡試験を行うための試料を、早く、精度よく、安全に製作することができる。
【0060】
図7(a)〜図7(c)は、本発明の実施の形態における電池分解を可能とする装置の構成図であり、電池の端部を切除するための機構を設けた装置の実施例である。
【0061】
まず、電池完成品20を円周方向より爪301にて把持する。爪301は4つ爪で構成しているが、2つ以上で、電池完成品20の外装体1を変形させることなく把持できる形状であればこれに限らない。この爪301は開閉するための駆動部であるチャック302に固定されており、チャック302は高圧エアーにて爪301を開閉できる機構となっている。なお、本実施の形態では、この爪301を開閉する方法は高圧エアー以外に電動開閉機構、手動式開閉機構であっても良い。
【0062】
チャック302は回転軸303に固定されており、回転軸303はハウジング304に組み込まれた軸受けにより回転が可能である。回転軸303には回転力を与えるためのハンドル305が固定されており、このハンドル305に力を加えることにより、回転軸303が回転する。
【0063】
本実施の形態では、回転の駆動方法については、ハンドル305に変えて歯車、プーリなどを取り付け、これを、モーター等にて回転させても良い。更に、電池完成品20を切断するための切削工具A101は、XYテーブル306に取り付けられたホルダー307に固定されており、このXYテーブル306を動かすことで、切削工具A101を電池完成品20の切断する箇所に的確に押し当て、切断を精度良く行うことができる。このXYテーブル306は電池完成品20の軸方向(X方向)と円周方向(Y方向)に動くように構成されている。本実施の形態は、手動式のXYテーブルであるが、電動式を用いても良い。
【0064】
また、電池完成品20を切断する際の切屑により電池の正負極が短絡するのを防止するための極板カバー308が設けられており、電池完成品20を爪301に把持した後、極板カバー308を電池完成品20の正負極端部309に押し当て、真空吸引にて正負極端部309を保持すると共に、正負極端部を覆い隠すことで、切断時に発生する切屑による短絡を防止している。
【0065】
この極板カバー308は、正極側用と負極側用とがあり、切換ステージ310にて随時切換を行うことができる。また、この切換ステージ310は極板カバー308を正負極部309に密着させるための移動ステージ311に固定されている。
【0066】
この装置にて円筒型電池の端部を切除する場合は、電池完成品20をハンドル305にて回転させながら、XYテーブル306を動かせ切削工具A101を、外装体1に徐々に押し当てて外装体1の一部を貫くまで送り込む、外装体1の一部を切削工具A101で貫通できれば、その段階で切削工具A101の送り込みを停止し、ハンドル305を外装体の肉が完全に切り取られるまで回転する。
【0067】
図7(c)に示すように、本実施例に用いる切削工具A101には切り込み量の安定化のため、外装体1の外形に当たった段階で、それ以上、切削工具A101が電池完成品20の内部に入り込まないための当たり104を設けた構造となっている。
【0068】
図8(a)〜(c)は、本発明の実施の形態における電池分解を可能とする装置の構成図であり、筒状に切断済外装体21を切削工具B102にて、電池を長手方向に分割する機構を設けた装置の実施例である。
【0069】
まず、筒状に切断済外装体21を電池ホルダー401にて把持する。この際、正極側を切削工具B102側に向けておくほうが安全上好ましい。仮に、反対側に正極を向けて把持した場合、外装体1が負極と直接接触している(外装体面が負極の)電池もあるため、電池ホルダー401が負極側となり、装置全体が負極に落ちていることになる。その状況で正極集電板5cが設備と接触すると、電池が短絡し破壊状態になるため、短絡しにくい切削工具B102側に向けている方が、好ましいということである。
【0070】
この電池ホルダー401は、2個設けられており、固定ブラケット402を介して、Yスライドテーブル405の可動側に固定されており、ブラケット402は更にブラケット403を介してチャック404に連結されている。
【0071】
このチャック404の開閉動作にて電池ホルダー401は開閉され、筒状に切断済外装体21を所定の位置(切削工具B102にて切断可能な位置)で把持する機構になっている。本実施の形態では、チャック404は高圧エアー駆動であるが、油圧式、電動式、手動による駆動方式であっても良い。
【0072】
図8(c)に示すように、切削工具B102の切れ刃部は、筒状に切断済外装体21の中心軸線上で外装体1の内壁22よりも電池中心に近い位置に配置されており、切断ガイドブロック406に固定されている。この切断ガイドブロック406は、圧縮バネ407を介してプレート408に固定されている。このプレート408は、Xスライドテーブル409の可動側に固定され、Xスライドテーブル409はブラケット410を介してエアーシリンダー411に連結されている。
【0073】
このエアーシリンダー411のピストン部が動くことにより、切削工具B102が、矢印方向に動く構造となっている。本実施の形態では、エアーシリンダー411にて切削工具B102を駆動しているが、油圧式、電動式、手動式の駆動方式にて切削工具B102を動かす構造であっても良い。
【0074】
この装置にて、筒状に切断済外装体21を分割する動きは図9(a)〜(d)に示す動作フローとなる。なお、図9は、図8(c)におけるB部の部分詳細図である。
【0075】
まず、筒状に切断済外装体21をホルダー401にて把持する。次に、図9(a)に示すように、エアーシリンダー411を前進させると、切断ガイドブロック406の一段目カム部412に筒状に切断済外装体21の外装体1の端部23が接触する。
【0076】
この際、図9(b)に示すように、切断ガイドブロック406は下方向の力を受け、外装体1の外周部24に1段目カム部412が沿いながらガイドブロック406が下降すると共に前進する。この動作により、切削工具B102の先端部が外装体1の端部22に当接すると同時に、先端部は端部22を切り下げながら前進し、図9(c)に示すように、2段目カム部413にて、さらに大きく先端部は外装体1の外壁部24に対して押し下げられることになる。この下降動作により、切削工具B102が電極群4から引き離される。
【0077】
この後に、図9(d)に示すように、切削工具B102はさらに前進し外装体1の全長にわたって切断を行うことになる。
【0078】
この切断ガイドブロック406に設けられた1段目カム部412と2段目カム部413と圧縮バネ407にて構成された上下機構によって、先端部が電極群4の最外層に接触することなく(傷をつけることなく)外装体1のみを切り開くことが可能となる。
【0079】
また、切削工具B102の刃の先端部のスクイ角B109は15°〜35°の範囲にて設定することにより、切り屑が途切れることなく外部に排出され、切断後のバリ等も外側方向に形成されるため、電極群方向に突き刺さって内部短絡を起こすという問題も発生させない。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上のように、本発明の電池の分解方法、及びその装置によれば、電池を安全に、且つ、精度良く分解が可能で、内部短絡試験の信頼性を向上することが可能となる。よって、ノートブックタイプのパソコンや、携帯電話、電気自動車、バックアップ電源などに使用される、二次電池の信頼性評価(電池内部解析、内部短絡試験)の際の作業性、安全性の向上が実現する。更に、電池の極板材料等の再生、再利用する際の分解を、容易に安全に行うことが可能となり材料の再利用による、資源の有効活用が実現できる。
【符号の説明】
【0081】
1 外装体
4 電極群
5c 正極集電板
6c 負極集電板
9 金属異物
10 絶縁用チューブ
12 溝角部
13 外装体底面角部
14 テープ
20 電池完成品
21 筒状に切断済外装体
101 切削工具A
102 切削工具B
103 カッター
105 ポリイミドシート
106 切断工具(ハサミ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板と負極板と、正負極板を電気的に絶縁する絶縁層とを捲回、または積層した電極群と、電解液と、これらを内包する外装体と、電極群と外装体とを電気的に接続する集電端子とを含む電池の分解方法であって、
前記外装体の電極群の無い箇所に、スクイ角15〜35度を有した切削工具を用いて板厚方向に切り込み、
切屑を前記外装体に対してして外側方向に出し、切屑が繋がって出る切削速度を維持して切削し、前記外装体の両端部を切除した後に、前記外装体の中心軸線に沿って、前記外装体の側面の板厚部をスクイ角15〜35度を有した切削工具にて切り込み、
切屑を前記外装体に対して外側方向に出し、切屑が繋がって出る切削速度を維持して切削し、前記切削工具を外装体の外形に沿って動かすこと、
を特徴とする電池の分解方法。
【請求項2】
前記電池は、捲回タイプの円筒型電池であり、
前記外装体の電極群の無い箇所は、捲回タイプの円筒型電池両端部の角部のRジリ部である、請求項1記載の電池の分解方法。
【請求項3】
電池を把持可能な爪と、
前記爪を開閉するための駆動部と、
前記駆動部を保持し、前記駆動部を切削方向に360度以上に回転できる回転軸と、
前記回転軸を回転できる軸受けを収納したハウジングと、
前記回転軸に回転力を与えるための回転駆動部と、
電池完成品の切削する際に切断部を覆うカバーと、
前記カバーを前記電池完成品の切削部に装着することのできる移動ステージと、
前記電池完成品を切削するための切削工具と、
前記切削工具を前記電池完成品の切削部に位置決めし、切削時の前記切削工具の切削量を調整できるXYテーブルと、
を備えたことを特徴とする電池の分解装置。
【請求項4】
電池を固定する電池ホルダーと、
前記電池ホルダーに固定し電池完成品を把持する方向に可動するYテーブルと、
前記Yテーブルを動かすための駆動部と、
前記電池を電池軸方向に切削する切削工具と、
前記切削工具を保持し、前記電池の外形に沿って動く際に、外形面に対して鉛直方向に動作可能な切断ガイドブロックと、
前記ガイドブロックを保持し前記電池完成品の電池軸方向に動作可能なXスライドテーブルと、
前記Xスライドテーブルを前後させる駆動部と、
を備えたことを特徴とする電池の分解装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−45540(P2013−45540A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181241(P2011−181241)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】