説明

電池パック内での使用のための能動的熱暴走緩和システム

【課題】熱暴走を受ける単一セルの影響を緩和し、それによって電池パック内の隣接セルへの熱暴走事象の伝播を防止する、能動的熱暴走緩和システムを提供すること。
【解決手段】提供されるシステムは、電池パック(100)内のセル(101)に近接する少なくとも1つの流体含有導管(107)を含む。導管は、セルのサブセットに近接する複数の割れ目点を含み、ここで各割れ目点は、導管の融解温度よりも低いプリセット温度で割れ目を形成するように構成される。いったん割れ目が形成されると、導管内に含まれる流体は、割れ目を通って排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、電池(バッテリー)に関し、さらに詳細には、電池パック内の熱暴走の影響を緩和するための手段に関する。
【背景技術】
【0002】
電池は大きく、一次電池および二次電池に分類できる。使い捨て電池ともまた呼ばれる一次電池は、使い果たすまで使用することを意図され、その後それらは、単に1つまたは複数の新しい電池と交換されるだけである。より一般的には充電式電池と呼ばれる二次電池は、繰り返し再充電し、再利用することができ、従って使い捨て電池と比較して経済的、環境的および使いやすさの面において利益を与える。
【0003】
充電式電池は、使い捨て電池に優るいくつかの利点を与えるが、この種類の電池は、その欠点がないわけではない。一般に、充電式電池に関連する不都合の大部分は、これらの化学が一次セルで使用されるそれらよりも安定性が低い傾向があるので、用いられる電池化学に起因する。これらの比較的不安定な化学に起因して、二次セルはしばしば、製造中に特別な取扱いを必要とする。加えて、リチウムイオンセルなどの二次セルは、一次セルよりも熱暴走しやすい傾向があり、熱暴走は、取り出すことができるよりも多くの熱が生成されている点まで内部反応速度が増加するとき発生し、反応速度および熱生成の両方のさらなる増加をもたらす。最終的には、生成される熱量は、電池ならびに電池に近接する材料の燃焼を生じさせるのに十分な大きさとなる。熱暴走は、セル内の短絡、不適切なセル使用、物理的誤用、製造欠陥、または極端な外部温度へのセルの暴露によって開始されることがある。
【0004】
熱暴走事象中には、大量の熱エネルギーが、急速に放出され、セル全体を900℃以上の温度にまで加熱する。熱暴走を受けるセルの温度上昇に起因して、電池パック内の隣接セルの温度もまた、上昇することになる。もしこれらの隣接セルの温度が、妨げられずに上昇させておかれると、それらもまた、熱暴走の状態に入り、単一セル内での熱暴走の開始が電池パック全体にわたって伝播するカスケード効果をもたらす可能性がある。結果として、熱暴走の規模および関連する熱エネルギーの放出に起因して、電池パックからの電力は、中断され、電池パックを用いるシステムは、広範囲の付随的な損傷を負う可能性がより高くなる。
【0005】
熱暴走のリスクを低減するために、または熱暴走の伝播のリスクを低減するために、多数の手法が、用いられてきた。例えば、電池端子を絶縁し、特別に設計された電池保管容器を使用することによって、保管および/または取扱い中の短絡のリスクが、低減できる。別の手法は、新しいセル化学を開発する、および/または、既存のセル化学を変更することである。同時係属の米国特許出願第12/504712号、第12/460372号、第12/460342号、第12/460423号および第12/460346号で開示される、さらに別の手法は、セルレベルで追加の遮蔽を提供することであり、このようにして熱暴走を受けるセルから隣接セルへの熱エネルギーの流れを抑制する。同時係属の米国特許出願第12/545146号で開示される、なおさらに別の手法は、熱暴走を受ける電池の位置を電池パック内の所定の場所に維持するためにスペーサーアセンブリを使用することであり、それによって隣接セルへの熱的影響を最小限にするのに役立つ。
【0006】
従って、必要とされるものは、電池パック内のセルの熱的振る舞いを監視し、いったん熱暴走が検出されると、初期熱暴走事象が電池パック内の隣接セルに伝播するのを防止する企てでこの事象の影響を緩和するシステムである。本発明は、そのようなシステムを提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願第12/504712号
【特許文献2】米国特許出願第12/460372号
【特許文献3】米国特許出願第12/460342号
【特許文献4】米国特許出願第12/460423号
【特許文献5】米国特許出願第12/460346号
【特許文献6】米国特許出願第12/545146号
【特許文献7】米国特許出願第11/818838号
【特許文献8】米国特許出願第11/779678号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
熱暴走を受ける単一セルの影響を緩和し、それによって熱暴走事象が電池パック内の隣接セルに伝播するのを防止する能動的熱暴走緩和システムが、提供される。結果として、電池パック損傷ならびに付随的な損傷および人的危害が、最小限にされる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
提供される熱暴走緩和システムは、電池パック筐体と、筐体内に含まれる複数のセルと、複数のセルの少なくともサブセットに近接する少なくとも1つの流体含有導管とで構成される。導管は、セルのサブセットに近接する複数の割れ目点を含み、ここで各割れ目点は、導管の融解温度よりも低いプリセット温度で割れ目を形成するように構成される。いったん割れ目が形成されると、導管内に含まれる流体は、割れ目を通って排出される。プリセット温度は、熱暴走事象または熱暴走事象への前兆に対応する。割れ目点は、薄くされた導管壁領域で構成されてもよく、別法として、導管開口および開口内のプラグで構成され、プラグは、プリセット温度に対応する融解温度を有してもよく、別法として、導管開口および開口内のプラグで構成され、ここで第2の材料の層は、プラグと導管開口との間に挿入され、ここで第2の材料は、プリセット温度に対応する融解温度を有してもよい。導管内の流体は、液体、ガス、または膨張性難燃フォームで構成されてもよい。
【0010】
少なくとも一実施形態では、熱暴走緩和システムの導管は、流体ポンプに連結される。導管はまた、流体リザーバーに連結されてもよい。流体ポンプは、所定の周波数で流体ポンプを周期的にオン/オフさせるシステム制御装置に連結されてもよい。流体ポンプは、流体レベル検出器にもまた連結されるシステム制御装置に連結されてもよく、そこではシステム制御装置は、流体レベルがプリセットレベルより下に落ちると、流体ポンプ運転を終わらせる。流体ポンプは、導管に連結される少なくとも1つの圧力検出器にもまた連結されるシステム制御装置に連結されてもよく、そこではシステム制御装置は、監視圧力がプリセットレベルより下に落ちると、流体ポンプを始動させる。流体ポンプは、少なくとも1つの温度検出器にもまた連結されるシステム制御装置に連結されてもよく、そこではシステム制御装置は、監視温度がプリセットレベルより上に上昇すると、流体ポンプを始動させる。
【0011】
少なくとも一実施形態では、導管は、ガスのソース、例えば加圧ガスボンベに連結される。システムはさらに、導管に連結される少なくとも1つの圧力検出器と、導管に連結され、ガスソースと複数の割れ目点との間に挿入されるガス弁と、監視圧力がプリセットレベルより下に落ちると、ガス弁を開くシステム制御装置とを備えてもよい。システムはさらに、少なくとも1つの温度検出器と、導管に連結され、ガスソースと複数の割れ目点との間に挿入されるガス弁と、監視温度がプリセットレベルより上に上昇すると、ガス弁を開くシステム制御装置とを備えてもよい。
【0012】
少なくとも一実施形態では、能動的電池冷却システムは、電池パック内の複数のセルと熱的に連通している。
【0013】
本発明の特質および利点のさらなる理解は、本明細書の残りの部分および図面を参照することによって実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による熱暴走緩和システムを利用する電池パックを概略的に例示する図である。
【図2】熱暴走緩和システムが流体ポンプおよび流体リザーバーに連結される図1の電池パックを例示する図である。
【図3】システム制御装置の追加をともなう、図2で示される実施形態を例示する図である。
【図4】圧力検出器および温度検出器の追加をともなう、図3で示される実施形態を例示する図である。
【図5】熱暴走緩和システムがガスソースに連結される本発明の実施形態を例示する図である。
【図6】システム制御装置および流量弁の追加をともなう、図5で示される実施形態を例示する図である。
【図7】図6で示される実施形態の変更形態を例示する図である。
【図8】電池冷却システムの追加をともなう、図2で示される実施形態を例示する図である。
【図9】本発明の熱暴走緩和システムとともに使用するための導管の一部分の横断面図である。
【図10】割れ目点を構成する薄くされた壁領域を含む、図9で示される導管の一部分の外面図を提供する図である。
【図11】割れ目点にプラグを使用する導管の一部分の横断面図である。
【図12】熱暴走事象中にプラグが強制的に外に出された状態の、図11で示される導管の説明図である。
【図13】割れ目プラグを形成する被膜を備える導管の一部分の横断面図である。
【図14】割れ目点開口およびプラグを分離する低融解点層を備える導管の一部分の横断面図である。
【図15】多数の割れ目点を備える単一導管の使用を例示する図である。
【図16】その周囲に位置する多数の割れ目点を利用する、位置トレランス導管を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の本文では、術語「電池」、「セル」、および「電池セル」は、交換可能に使用されてもよく、リチウムイオン(例えば、リン酸鉄リチウム、コバルト酸リチウム、他のリチウム金属酸化物、その他)、リチウムイオンポリマー、ニッケル金属水素化物、ニッケルカドミウム、ニッケル水素、ニッケル亜鉛、銀亜鉛、または他の電池の種類/構成を含むが、限定はされない、さまざまな異なるセル化学および構成のいずれかを参照してもよい。本明細書で使用されるような術語「電池パック」は、単一ピースまたは複数ピースの筐体内に含まれる多数の個別電池を参照し、個別電池は、特定の応用のための所望の電圧および容量を達成するために電気的に相互接続される。複数の図面上において使用される同一の要素記号は、同一の構成要素を、または等しい機能性からなる構成要素を指すことを、理解されたい。加えて、添付の図は、本発明の範囲を例示するだけで、限定しないことを意図されており、一定の縮尺であると考えるべきではない。従って、すべての電池要素および/または電池パック要素が、説明図で示されるわけではない。
【0016】
図1は、本発明による熱暴走緩和システムを利用する電池パック100を概略的に例示する。以下で概略が説明される問題ならびに本発明によって与えられる解決策は、円筒形電池および異なるフォームファクター、例えば袋状セル、長方形セル、その他を利用する電池の両方に等しく適用可能であることが理解されるべきであるが、電池パック100内の電池101は、例えば18650フォームファクターを利用する円筒形状を有するように示される。電池パック100は、数十のセルを含むが、電池パックは、2、3個のセルのように少数のセル、またはハイブリッド式および全電気式自動車で使用される電池パックでのように数百もしくは数千のセルのように多数のセルを含んでもよいこともまた、理解されよう。典型的には電池パック100は、セルを適所に保持するために、例示されるブラケット103などの、1つまたは複数のブラケットを使用する。ブラケットは、電池パック筐体105と一体される、またはそれの内部構成要素だけであってもよい。
【0017】
いろいろな異なる誤用動作/充電条件および/または製造欠陥は、電池パック100内の電池などの電池が熱暴走に入る原因となることもあり、ここで内部生成される熱量は、効果的に取り出すことができる熱量よりも大きい。結果として、大量の熱エネルギーが、急速に放出され、セル全体を900℃以上の温度にまで加熱し、温度が1500℃を越えることもある局所ホットスポットの形成を引き起こす。このエネルギー放出に付随するのは、ガスの放出であり、セル内のガス圧力が増加する原因となる。
【0018】
熱暴走の影響に対抗するために、多くの従来セルは、キャップアセンブリ内に通気要素を含む。通気要素の目的は、熱暴走事象中に生成されるガスを、いくらかは制御された方法で、放出することであり、それによってセルの内部ガス圧力がその所定の動作範囲を超えることを防止する。セルの通気要素は、過剰な内部圧力を防止できるが、この要素は、熱暴走事象の熱的態様にはほとんど効果がない可能性がある。
【0019】
いったんセルが熱暴走を受け始めると、この事象中に生成される熱エネルギーは、隣接セルをそれらの臨界温度よりも高く加熱することもあり、それらが熱暴走に入る原因となる。これらのセルは次に、追加のセルを、それらが熱暴走に入る原因となるのに十分な温度に加熱することもある。それ故に熱暴走を受ける単一セルの発生は、電池パック全体にわたって広がり得るカスケード反応を開始する可能性がある。結果として、電池パックが電気自動車または同様の応用で使用されると仮定すると、自動車の運転手および乗客に近接した比較的小さな領域に制限されることもある大量の熱が、生成される。従って、できるだけ早く熱暴走事象を封じ込めるための対策が取られ、それ故に初期事象の伝播を防止し、電池パックおよびその周囲へのその影響を緩和することは、重大である。
【0020】
本発明によれば、導管107は、電池パック内のセルの各々に近接近して位置決めされる。以下でさらに述べられるように、導管107は、流体、例えば液体またはガスで満たされる。セルがプリセット温度を越え、それによって熱暴走の開始または存在を示すと(選択されたプリセット温度に応じて)、割れ目は、過熱セルに近接近する導管107の領域内に形成される。導管107内に含まれるガスまたは液体は次いで、割れ目を通って過熱セル上に排出され、それによって、影響を受けたセルを冷却しならびに近隣セルの温度を安定化するのに役立つ。
【0021】
少なくとも一実施形態では、図2で例示されるように、導管107は、液体で満たされ、ポンプ201に連結される。好ましくは、システムはまた、流体リザーバー203を含み、流体リザーバー203は、流体の温度が正常動作中に変化し、流体が正常な膨張および収縮サイクルを受ける原因となるとき、システム内に十分な流体があることを確実にする。加えて、流体リザーバー203は、熱暴走事象中に、それらの割れ目点に隣接する電池を、熱暴走中の最大予想温度から電池の正常動作温度にまで、または、それより下に冷却するように、十分な時間1つまたは複数の割れ目点を通って送り込むのに十分な大量の流体があることを確実にする大きさである。例えば、流体リザーバーは、好ましくは流体が少なくとも10秒間、より好ましくは少なくとも1分間、さらにより好ましくは少なくとも10分間、なおさらにより好ましくは少なくとも15分間割れ目を通って送り込まれることを可能にする大きさである。
【0022】
図3は、システム200の変更形態を例示する。図示されるように、システム300では、ポンプ201は、システム制御装置301に連結される。システム制御装置の使用は、本発明の熱暴走緩和システムがより効果的な仕方で動かされることを可能にする。例えば、一構成では、ポンプ201を連続的に、または電池パックが連結されるシステム(例えば、ハイブリッド式または全電気式自動車)が動作している間連続的に運転する代わりに、システム制御装置301が、所定の周期周波数でポンプ201を周期的にオンおよびオフするために使用される。ポンプ201を周期的に運転することは、導管107内の流体の温度を平均するのに役立ち、このようにして高温の局所領域の発達を防止し、その上ポンプ使用を最小限にし、システム効率を改善する。別の構成では、システム制御装置301は、流体レベル検出器303に連結され、流体レベル検出器303は、図示されるようにリザーバー203内に、または導管107の一部分(図示されず)内に埋め込まれる。流体レベル検出器303によって監視されるような流体レベルが、プリセットレベルよりも下に落ちると、システム制御装置301は、ポンプ201の運転を停止する。いったん流体レベルがプリセットレベルよりも下に降下するとポンプの運転を停止することによって、ポンプ損傷は、完全に排除されないとしても最小限にはできる。
【0023】
もしポンプ201が、連続運転でよりもむしろ周期的に運転されるならば、好ましくは、導管107内で割れ目が発生するとすぐに、ポンプ201が直ちに割れ目を通って熱いセル上に流体を送り込み始めることを確実にするための手段が、システムに含まれる。従って、本発明の少なくとも好ましい一実施形態では、図4で例示されるように、システム制御装置301は、1つもしくは複数の圧力検出器401か、または1つもしくは複数の温度検出器403、または両方に連結される。システム制御装置301が、圧力検出器401を使用して流体圧力の降下か、または温度検出器403を使用して温度の大きな上昇を観測することによって、導管107内で割れ目が発生したことを決定すると、次いでそれは、ポンプ201を始動させる。典型的には、熱暴走事象の発生がすぐに評価されることを可能にするために、多数の温度検出器403が、必要とされ、電池パック全体にわたって分散される。温度検出器403は、導管107内に、導管107に近接して、または単に電池パック100内のセルに近接して置かれてもよい。もしシステム400が圧力検出器を使用するならば、典型的には、多数の圧力検出器401が、導管107の全体にわたって置かれ、その数は、導管107の長さおよび内径に依存し、このようにして導管割れ目の迅速な検出を可能にする。例示される実施形態では、5個の圧力検出器401および15個の温度検出器403が、示される。
【0024】
先に述べられたように、本発明は、熱暴走を受けるセルを冷却し、その影響を緩和するために、ガスかまたは液体を使用することができる。図5で例示される実施形態では、導管107は、適切なガス、例えば好ましくは比較的高い熱容量を有する難燃剤のソース501に連結され、このようにしてそれが、熱暴走を受けるセルによって生成される熱エネルギーのいくらかを吸収することを可能にする。好ましくはこの実施形態では、ソース501は、選択されたガスの加圧ボンベである。システムは加圧下にあるので、割れ目が発生すると、ボンベ501からのガスは、割れ目を通って自動的に排出される。
【0025】
図6で示されるシステム500の変更形態では、システムは、低圧、すなわち周囲圧力のすぐ上ではあるが、加圧下に保たれる。システム制御装置が、検出器または複数の検出器401によって監視されるような導管内の圧力の急激な変化によって、導管107内で割れ目が発生したことを決定すると、次いで弁601は、開かれる。弁601を開くことは、高圧ガスソース501を導管107に連結する。システム600は、システム500に優るいくつかの利点を与える。第1に、ガスソース501と導管107との間に弁601を含むことによって、導管107およびそれに含まれる割れ目手段を含むシステムは、はるかに低い圧力をいつも受ける。結果として、システム故障、例えばシステム漏えいのリスク、ならびに早過ぎる割れ目のリスクは、実質的に低減される。第2に、検出器401によってシステム圧力を監視することによって、システム制御装置301は、緩やかな漏えいに起因する圧力の低減を、熱暴走事象から生じる導管割れ目に起因するものに対して区別することができる。システム600はまた、弁601を開けるべき時を決定するために、温度検出器、例えば温度検出器403を使用してもよいことが理解されよう(システム600では図示されず)。
【0026】
システム500および600の小さな変更形態では、難燃ガスは、空気および/または熱に排出および暴露されると、膨張性難燃フォームを形成する難燃エアロゾルと交換される。好ましくは、膨張性難燃フォームは、急速に固まり、生物学的に不活性である。例となる実施形態では、難燃エアロゾルは、膨張材料、例えば膨張性黒鉛の化学に基づくものである。
【0027】
先に述べられた実施形態では、システム制御装置301は、システムのさまざまな態様(例えば、電池温度、導管圧力、リザーバー流体レベル、その他)を監視する、ならびにポンプ201またはボンベ501の出量を制御することによってシステム排出量を制御するために使用される。システム制御装置301はまた、熱暴走事象へのシステムの応答の他の態様を制御するために使用されてもよいことが、理解されるべきである。例えば、図7で例示されるシステム700では、システム制御装置301は、検出された電池熱暴走事象の可視的もしくは可聴的表示器、または両方を提供する警告表示器701に連結される。警告表示器701は、初期事象検出のとき、および/またはポンプ201の運転のとき、および/または弁601の開くときに始動されてもよい。電気自動車での例となる実施形態では、表示器701は、ダッシュボードの計器群内に取り付けられた表示灯および/または自動車のオーディオシステムに連結された、もしくはそれから分離した音波発生装置であってもよい。システム制御装置301はまた、例えば熱暴走事象を経験した電池パックのモジュールとの電気的接続を切ることによる、または電池パックに設置された負荷を変更することによる、電池パックの動作を変更するための手段703に連結されてもよい。システム制御装置301はまた、熱暴走事象および/または熱暴走緩和システムの動作をエンドユーザーおよび/またはサービス提供者(例えば、電気自動車の販売特約店)および/または救急サービス提供者(例えば、けん引/修理サービス/消防署)に報告する搭載通信システム705に連結されてもよい。例となる自動車通信システムは、同時係属の2007年6月15日に出願された米国特許出願第11/818838号および2007年7月18日に出願された米国特許出願第11/779678号で与えられ、それらの開示は、任意のおよびすべての目的のために本明細書に組み込まれる。警告表示器701、電池パック変更手段703、および/または通信システム705は、本発明の先に開示された実施形態のいずれかでのシステム制御装置に連結されてもよいことが理解されるべきである。
【0028】
本発明のある実施形態では、熱暴走緩和システムおよび電池冷却システムは、同じ導管、熱伝達流体、および冷却液ポンプを利用する。従って、上で述べられたすべての熱暴走緩和システムが、そのような二元的能力の役割での使用に適しているわけではないことが理解されよう。例えば、図5〜7で示されるそれらなどのガスまたは膨張性難燃フォームのボンベを使用する実施形態は、これらの実施形態が、冷却流体を循環させず、熱暴走事象が発生するとき動作するだけであるように構成されてもよいので、明らかに不適切である。同様に、ポンプ201が熱暴走事象中に運転されるだけである実施形態は、電池冷却システムの要件を満たさないことになる。従って、もし熱暴走緩和システムがまた、電池冷却システムの機能も果たしているならば、そのとき好ましくは、図2または3で示されるなどの実施形態が、使用される。そのような実施形態では、ポンプ201は、電池冷却システムの要件に従って動作する。
【0029】
本発明のある実施形態では、熱暴走緩和システムは、分離した独立の電池冷却システムと併せて使用される。先に述べられた緩和システムのいずれかが、分離した電池冷却システムと併せて使用されてもよいが、システム800(図8)では、熱暴走緩和システムは、システム200に基づいている。この実施形態での電池冷却システムは、冷却液導管801、冷却液ポンプ803、および冷却液リザーバー805を含む。
【0030】
本発明の熱暴走緩和システムの導管107は、電池パック内の特定のおよび/または単一の位置に制限されない。それどころか、導管107は好ましくは、流体、液体またはガスが、熱暴走事象中に導管から排出されるとき、最適な緩和性能を達成するようにセルに対して位置決めされる。従って、導管107は好ましくは、セルがホットスポットを破裂させる、および/または、発達させる可能性の最も高い場所に隣接して置かれる。従って、もしセルが、セルキャップ表面に位置する通気孔を有するならば、好ましくは、導管107は、各セルのセルキャップ表面に隣接して位置決めされる。別法として、最適位置は、セルの側面に隣接してもよい。加えて、導管107は、流体の初期排出後に流体がセルの側面を下の方に流れるので、特に影響を受けたセルのより多くを流体に覆わせるように重力を使用して、流体排出中に重力をうまく利用するように位置決めされることが好ましい。従って、少なくとも一実施形態では、導管107は、セルの上部に、またはセルの上側部分近くに位置決めされ、ここで「上部」および「上側部分」は、この場合使用中のセルの予想位置によって規定される。
【0031】
図1〜8で例示される実施形態では、単一導管107が、各セル101に隣接して位置決めされて示される。しかしながら、本発明の熱暴走緩和システムは、セル/セル表面に近接して2つ以上の導管を設置するために多数の導管を使用してもよいことが理解されるべきである。複数導管手法は典型的には、大面積セル、例えば大面積袋状セルを利用する電池パックにとって好ましい。少なくとも一実施形態では、導管107は、非円筒形状であり、例えば長方形横断面を有し、それ故に単一導管が各セルの近くに多数の割れ目点を位置決めすることを可能にする。
【0032】
本発明者らは、さまざまな異なる技術が、導管107内に割れ目点を作るために使用できると想像する。割れ目点は、熱暴走事象中の排出流体の最適配置を達成するために使用される。一実施形態では、割れ目点は、所望の場所で導管壁の領域を薄くすることによって導管内に形成される。図9および10は、割れ目点901が導管壁903を薄くすることによって作られた導管107の一部分の横断面図および外面図をそれぞれ提供する。図10で示されるように、好ましくは、割れ目点901において導管107内に形成されたへこみまたはくぼみは、楕円形または円形の形状を有する。
【0033】
図11で示される代替手法では、導管107内の割れ目点1101は、導管内の開口1103をプラグ1105で詰めることによって作られる。プラグ1105は、導管107よりも低い融解点を持つ材料で形成される。割れ目点1101に隣接する電池が、熱暴走事象中に熱くなると、プラグ1105は、導管107が影響を受ける前に融解し始める。そのとき、図12で示されるように、導管107内の流体(液体またはガス)の圧力は、プラグ1105が導管開口1103から排除される原因となり、それによって導管107内の流体が開口1103を通って排出されることを可能にする。
【0034】
少なくとも一実施形態では、図13で示されるように、プラグ1301は、最初に導管107内に開口1303を作り、次いで導管107よりも低い融解温度を有する材料1305で導管107を少なくとも部分的に被覆することによって形成される。材料1305はまた、図示されるように導管107の外側表面を被覆してもよい。好ましくは、材料1305は、例えば被覆ステップ中に導管107内に柱のような構造体を置き、それによって材料1305が開口1303を通って導管107内に入ることを防止することによって、導管107の内側表面を被覆することを防止される。別法として、被覆中に開口1303を通って入るどんな材料1305も、例えば電池パック内でのその使用より前に導管107を通って穿孔具および/または掃除具を走らせることによって、被覆ステップ後に除去されてもよい。
【0035】
代替割れ目プラグ構成では、図14で示されるように、導管107内の割れ目点は、導管内の開口を第2の材料のプラグ1401で詰めることによって作られる。プラグ1401の外縁の周りにあるもの、および、導管開口からプラグ1401を分離しているものは、第3の材料層1403である。プラグ1401は、導管107を構成する材料と同じ材料、または異なる材料で形成されてもよい。材料層1403は、導管107かまたはプラグ1401よりも低い融解点を持つ材料で形成される。層1403のより低い融解温度に起因して、熱暴走事象中に、それは、プラグ1401かまたは導管107の前に融解し始める。結果として、プラグ1401は、熱暴走中に、典型的にはそれが融解する前に、すぐに排除される。
【0036】
図示されないが、スプリングまたは同様の機構が、割れ目プラグに連結されてもよく、それによって熱暴走事象中にその排除を促進することが理解されよう。
【0037】
導管が隣接セル列間に位置するそれらの実施形態では、セルの上部に位置するのとは反対に、導管は、導管のどちらの側にも割れ目点を含むことができることが理解されるべきである。例えば、図15で示されるように、セル101間の導管107は、導管のどちらの側にも位置する割れ目点901を含む。導管107の多数の側面上での割れ目点の配置は、任意の種類の割れ目点/プラグ、例えば割れ目点901またはプラグ1105、1301および1401とともに使用されてもよい。加えて、本発明の少なくとも一実施形態では、導管配置のその性能への影響を最小限にするのに十分な割れ目点/プラグが、導管107内に含まれる。例えば、図16では、導管107は、その周囲を取り囲む多くの割れ目点1601を含み、それによってセル位置に対するそれの位置感度をより低くする。
【0038】
当業者によって理解されるように、本発明は、それの精神または本質的特徴から逸脱することなく他の特定の形態で具体化されてもよい。従って、本明細書の開示および説明は、次の特許請求の範囲で説明される本発明の範囲の例示であり、限定しないことが意図される。
【符号の説明】
【0039】
100 電池パック
101 電池、セル
103 ブラケット
105 電池パック筐体
107 導管
200 システム
201 ポンプ
203 流体リザーバー
300 システム
301 システム制御装置
303 流体レベル検出器
400 システム
401 圧力検出器
403 温度検出器
500 システム
501 ソース、ボンベ
600 システム
601 弁
700 システム
701 警告表示器
703 電池パック変更手段
705 通信システム
800 システム
801 冷却液導管
803 冷却液ポンプ
805 冷却液リザーバー
901 割れ目点
903 導管壁
1101 割れ目点
1103 開口
1105 プラグ
1301 プラグ
1303 開口
1305 被覆材料
1401 プラグ
1403 第3の材料層
1601 割れ目点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池パック筐体と、
前記電池パック筐体内に含まれる複数のセルと、
前記複数のセルの少なくともサブセットに近接する少なくとも1つの導管であって、前記少なくとも1つの導管は、第1の融解温度を持つ材料で構成される、少なくとも1つの導管と、
前記少なくとも1つの導管内に含まれる流体と、
前記少なくとも1つの導管内の複数の割れ目点とを備え、前記複数の割れ目点は、前記複数のセルの前記サブセットに近接し、前記複数の割れ目点の各々は、プリセット温度で割れ目を形成するように構成され、前記プリセット温度は、前記第1の融解温度よりも低く、前記流体の一部分は、前記割れ目が前記プリセット温度で形成されると、前記割れ目を通って排出される、熱暴走緩和システム。
【請求項2】
前記プリセット温度は、熱暴走事象に対応する、請求項1に記載の熱暴走緩和システム。
【請求項3】
前記プリセット温度は、熱暴走事象への前兆に対応する、請求項1に記載の熱暴走緩和システム。
【請求項4】
前記複数の割れ目点の各々は、薄くされた導管壁の領域を備える、請求項1に記載の熱暴走緩和システム。
【請求項5】
前記複数の割れ目点の各々は、導管開口および前記導管開口内のプラグを備え、前記プラグは、前記プリセット温度に対応する融解温度を有する、請求項1に記載の熱暴走緩和システム。
【請求項6】
前記複数の割れ目点の各々は、導管開口、前記導管開口内のプラグ、および前記導管開口と前記プラグの外側表面との間に挿入される第2の材料の層を備え、前記第2の材料は、前記プリセット温度に対応する融解温度を有する、請求項1に記載の熱暴走緩和システム。
【請求項7】
前記プラグは、前記第2の材料よりも大きな融解温度を有する、請求項6に記載の熱暴走緩和システム。
【請求項8】
前記流体は、液体およびガスから成る群から選択される、請求項1に記載の熱暴走緩和システム。
【請求項9】
前記少なくとも1つの導管に連結される流体リザーバーと、
前記少なくとも1つの導管に連結される流体ポンプと、
流体レベル検出器と、
前記流体レベル検出器および前記流体ポンプに連結されるシステム制御装置とをさらに備え、前記システム制御装置は、前記流体レベルがプリセットレベルより下に落ちると、前記流体ポンプの運転を終わらせる、請求項1に記載の熱暴走緩和システム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの導管に連結される流体リザーバーと、
前記少なくとも1つの導管に連結される流体ポンプと、
前記導管に連結される少なくとも1つの圧力検出器と、
前記流体ポンプにおよび前記少なくとも1つの圧力検出器に連結されるシステム制御装置とをさらに備え、前記システム制御装置は、前記少なくとも1つの圧力検出器によって監視される圧力がプリセット圧力レベルより下に落ちると、前記流体ポンプを始動させる、請求項1に記載の熱暴走緩和システム。
【請求項11】
前記少なくとも1つの導管に連結される流体リザーバーと、
前記少なくとも1つの導管に連結される流体ポンプと、
前記複数のセルの前記サブセットに近接する少なくとも1つの温度検出器と、
前記流体ポンプにおよび前記少なくとも1つの温度検出器に連結されるシステム制御装置とをさらに備え、前記システム制御装置は、前記少なくとも1つの温度検出器によって監視される温度が所定の温度よりも上に上昇すると、前記流体ポンプを始動させる、請求項1に記載の熱暴走緩和システム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの導管に連結されるガスのソースであって、前記流体は、前記ガスで構成される、ガスのソースと、
前記導管に連結される少なくとも1つの圧力検出器と、
前記導管に連結され、前記ガスソースと前記複数の割れ目点との間に挿入されるガス弁と、
前記少なくとも1つの圧力検出器におよび前記ガス弁に連結されるシステム制御装置とをさらに備え、前記システム制御装置は、前記少なくとも1つの圧力検出器によって監視される圧力がプリセット圧力レベルより下に落ちると、前記ガス弁を開く、請求項1に記載の熱暴走緩和システム。
【請求項13】
前記少なくとも1つの導管に連結されるガスのソースであって、前記流体は、前記ガスで構成される、ガスのソースと、
前記複数のセルの前記サブセットに近接する少なくとも1つの温度検出器と、
前記導管に連結され、前記ガスソースと前記複数の割れ目点との間に挿入されるガス弁と、
前記少なくとも1つの温度検出器におよび前記ガス弁に連結されるシステム制御装置とをさらに備え、前記システム制御装置は、前記少なくとも1つの温度検出器によって監視される温度が所定の温度より上に上昇すると、前記ガス弁を開く、請求項1に記載の熱暴走緩和システム。
【請求項14】
前記流体は、膨張性難燃フォームで構成される、請求項1に記載の熱暴走緩和システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−60755(P2011−60755A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188259(P2010−188259)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(509316442)テスラ・モーターズ・インコーポレーテッド (23)
【Fターム(参考)】