説明

電池パック

【課題】 少ない本数の乾電池によって充電可能な電池パックを提供する。
【解決手段】 電池パック1は、二次電池2aからなる電池組2と、乾電池5が着脱自在に電気的に装着される乾電池装着部6と、乾電池装着部と電池組との間に形成され且つ充電装置との間に形成される電流路とは異なる充電電流路7と、乾電池5から電池組2への充電を制御する制御部8と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池からなる電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、二次電池からなる電池パックは、専用の充電装置に接続することにより充電が行われている。また、充電装置の電源設備が無い場合に備えて、電池パックを、二次電池よりもエネルギー密度が高い乾電池(一次電池)を利用して充電することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−78465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、電池パックの充電に専用の充電装置を必要とする場合、電池パックの充電が必要となったときに、ユーザーが充電装置を携帯していなかったり、充電装置の電源設備が周辺に無いときは、電池パックをその場で充電することができないことになる。また、乾電池を用いて電池パックを充電する場合、電池パックの用途が電動工具向けであって内部の電池組の充電電圧が高い場合は、相当数の乾電池を用いる必要があり、電池パックの大型化を招いていた。また、多くの乾電池を用意することは、ユーザーの経済的負担の増大を招くことにもなっていた。
【0005】
本発明の目的は、入手が容易な乾電池を利用すると共に少ない本数の乾電池によって充電可能な電池パックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1記載の電池パックは、電動工具及び充電装置の一方に着脱自在に装着され、前記電動工具に接続されるときは前記電動工具に電力を供給すると共に前記充電装置に接続されるときは前記充電装置により充電される電池パックであって、複数の二次電池を接続してなる電池組と、前記充電装置と電気的に接続される充電端子と、前記電池組と前記充電端子との間に形成される第1の充電電流路と、乾電池が着脱自在に電気的に装着される乾電池装着部と、前記乾電池装着部と前記電池組との間に形成される第2の充電電流路と、前記乾電池から前記第2の充電電流路を経由した前記電池組への充電を制御する制御部と、を有することを特徴とする。
【0007】
電池パックは、充電装置が充電端子に接続されると、第1の充電電流路を介して電池組が充電される。一方、充電装置が充電端子に接続されずに乾電池が乾電池装着部に装着されているときは、制御部の制御により、乾電池から第2の充電電流路を経由して電池組への充電が行われる。電池組を乾電池からの電力で充電するときは、第2の充電電流路を使い、充電装置と電気的に接続される第1の充電電流路を使わないので、乾電池の出力電圧が、充電装置からの出力電圧とは異なる場合であっても、乾電池を用いて電池組を充電することができる。
【0008】
請求項2記載の電池パックは、請求項1記載の電池パックであって、前記制御部は、手動によりオンとなり前記第2の充電電流路を閉じる第1のスイッチ手段を有することを特徴とする。この構成により、乾電池装着部に装着された乾電池の無用な放電を防止することができる。
【0009】
請求項3記載の電池パックは、請求項2に記載の電池パックであって、前記制御部は、電力供給により動作するマイコンと、前記マイコンに電力を供給する電源回路と、を有し、前記第1のスイッチ手段がオンになると前記電源回路から前記マイコンへ電力が供給されることを特徴とする。この構成により、乾電池によって電池組を充電するときにのみ、電源回路からマイコンに電力を供給してマイコンを動作させることができるので、電池パックの内部において無用な電力の消費を抑制することができる。
【0010】
請求項4記載の電池パックは、請求項3記載の電池パックであって、前記第1のスイッチ手段は、前記乾電池から前記電源回路への電流路を開閉する第2のスイッチ手段と、前記電池組から前記電源回路への電流路を開閉する第3のスイッチ手段と、を有し、前記マイコンは、前記電源回路への入力電圧に応じて前記第2のスイッチ手段及び前記第3のスイッチ手段を制御することを特徴とする。この構成により、マイコンは、乾電池の出力電圧が低下したときには、電池組から電力が供給されるので、その動作を継続させることができる。
【0011】
請求項5記載の電池パックは、請求項1から4までのいずれか一に記載の電池パックであって、前記制御部は、前記乾電池の出力電圧を検出する電圧検出回路を有し、前記出力電圧が所定電圧以下になったときに、前記乾電池から前記電池組への充電を停止させることを特徴とする。この構成により、乾電池の出力電圧が充電に適さないものとなったときに充電を停止することにより、無駄な電力の消費を防ぐことができる。
【0012】
請求項6記載の電池パックは、請求項1から5のいずれか一に記載の電池パックであって、前記制御部は、前記乾電池の容量及び前記電池組の状態の少なくとも1つを表示する表示回路を有することを特徴とする。この構成により、乾電池の容量及び電池組の状態を視覚的に確認することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、乾電池の出力電圧が充電装置の出力電圧とは異なる場合であっても、例えば市販の乾電池を用いて電池パックを充電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による電池パックの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明による電池パックの回路図を示す。
【図3】本発明による電池パックを充電する動作を示すフローチャート(前半部分)である。
【図4】本発明による電池パックを充電する動作を示すフローチャート(後半部分)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
【0016】
図1に、本発明の実施形態である電池パック1を示す。電池パック1は、複数の電池セル2aを接続してなる電池組2と、充電装置100と電気的に接続される一対の充電端子3と、充電端子3と電池組2との間に形成される第1の充電電流路としての充電装置用電流路4と、乾電池5が着脱自在に電気的に装着される乾電池装着部6と、乾電池装着部6に装着された乾電池5と電池組2との間に形成される第2の充電電流路としての乾電池用電流路7と、乾電池5から電池組2への充電を制御する制御部8と、を有する。本実施の形態においては、電池組2は、電池セル2aとしての定格電圧3.6V/セルのリチウムイオン電池セルの4つを直列に接続して構成される。乾電池5は、初期電圧1.6Vのアルカリ乾電池の4つを直列に接続したものが用いられる。また、第2の電流路7は、図2に示すように、乾電池5の正極側から電池組2の正極側に延在する高電位ラインXと、乾電池5の負極側から電池組2の負極側に延在して高電位ラインXに比較して低電位となる低電位ラインYと、からなる。
【0017】
電池パック1は、充電端子3に電動工具(図示せぬ)が接続されると、電池組2から電動工具に向けて電力を供給することができる。一方、電池パック1は、充電端子3に充電装置100が接続されると、電池組2が充電装置100から第1の電流路4を介して充電される。また、電池組2は、乾電池装着部6に装着された乾電池5からも充電される。
【0018】
次に、制御部8の具体的な回路構成を、図2を参照して説明する。制御部8は、乾電池5の出力電圧を充電電圧に変換する電圧変換回路10と、第1の電流路7を開閉する第1のスイッチ回路11と、マイクロコンピュータ(マイコン)12と、マイコン12に電力を供給する電源回路13と、を有する。さらに、制御部8は、乾電池5の出力電圧を検出する乾電池電圧検出回路14と、電池組2の充電電圧を検出する電池組電圧検出回路15と、乾電池5から電源回路13への電流路を開閉する第2のスイッチ回路16と、電池組2から電源回路13への電流路を開閉する第3のスイッチ回路17と、電池組2と電池組電圧検出回路15との間に形成される電流路を開閉するための第4のスイッチ回路18と、手動により押下されるとオフからオンに切り替わるトリガスイッチ19と、を有する。
【0019】
また、マイコン12には、充電装置100の接続の有無を判別する充電装置接続判別手段20と、電池組2の温度を検出する第1のサーミスタ21と、表示回路24と、電池組2の保護回路28とが接続されている。第1の電流路7を流れる電流を検出するために、制御部8は、第1の電流路7に挿入された検出抵抗25と、検出抵抗25を流れる電流を検出する電流検出回路26と、電流検出回路26の出力を電圧変換回路10へとフィードバックするためのフィードバック回路27と、を有する。なお、電池組2の温度を充電装置100に通知するために、第1のサーミスタ21とは別に、第2のサーミスタ22が電池パック1に設けられている。
【0020】
電圧変換回路10は、少ない本数の乾電池5から得られる出力電圧を電池組2の充電電圧用に昇圧するための昇圧回路からなる。電圧変換回路10は、昇圧のためのスイッチング制御をおこなうPWM制御回路10aと、昇圧用コイル10bと、PWM制御回路10aのPWM信号によってスイッチング動作するMOSFET10cと、平滑用ダイオード10dと、平滑用コンデンサ10eとで構成される。昇圧用コイル10bは、高電位ラインXに挿入される。MOSFET10cは、ソースが低電位ラインYに接続され、ドレインが高電位ラインXに接続され、ゲートには、PWM制御回路10aのPWM信号が入力されるように接続されている。電流変換回路10は、乾電池5から電池組2を充電する場合に、乾電池5の出力電圧を昇圧して電池組2に電力を供給する。
【0021】
第1のスイッチ回路11は、MOSFET11aと、MOSFET11bとからなり、乾電池5と電池組2とを接続する第1の電流路7を開閉する。MOSFET11aは、ソース・ドレイン間が高電位ラインXに挿入されるように接続され、ゲートが抵抗を介してソース側に接続されている。MOSFET11bは、ソースが低電位ラインYに接続され、ドレインが抵抗を介してMOSFET11aのゲートに接続され、ゲートが抵抗を介してソース側に接続されている。マイコン12の出力信号によってMOSFET11bがターンオンすると、MOSFET11aがターンオンして、第2の電流路7は閉じて乾電池5から電池組2に向けて電流が流れる。一方、MOSFET14bがターンオフすると、MOSFET14aがターンオフして、第2の電流路7は開かれ、乾電池5から電池組2に向けて流れる電流は遮断される。従って、第1のスイッチ回路11のオン・オフにより、電池組2の充電の開始または停止を切り替えることができる。
【0022】
マイコン12は、乾電池5及び電池組2の状態を監視して、電池組2の充電を制御する。このため、マイコン12には、乾電池電圧検出回路14からの乾電池電圧検出信号と、電池組電圧検出回路15からの電池組電圧検出信号と、充電装置接続判別手段20からの充電装置接続信号と、第1のサーミスタ21からの電池組温度検出信号と、電流検出回路26からの電流検出信号と、保護回路28からの過充電信号とが入力される。そして、マイコン12は、入力された各信号の状態に基づいて、第1乃至第4のスイッチ回路11、16、17、18と表示回路24とを制御する信号を出力する。
【0023】
電源回路13は、定電圧IC13aと、発振防止用コンデンサ13b、13cと、逆流阻止用ダイオード13e、13fとで構成される。乾電池5又は電池組2から入力された電圧は、定電圧IC13aによって所定電圧に変換され、マイコン12の駆動電力Vcc(例えば5V)としてマイコン12に供給される。
【0024】
乾電池電圧検出回路14は、抵抗分圧回路からなり、乾電池5の出力電圧を検出してマイコン12に向けて出力する。
【0025】
電池組電圧検出回路15は、抵抗分圧回路からなり、電池組2の電池電圧を検出し、マイコン12とフィードバック回路27とに向けてそれぞれ出力する。
【0026】
第2のスイッチ回路16は、第2のスイッチ手段として、MOSFET16aとMOSFET16bとで構成され、乾電池5と電源回路13とを接続する第3の電流路を開閉する。MOSFET16aは、ソースがダイオードを介して乾電池5の正極側に接続され、ドレインが電源回路13に接続され、ゲートが抵抗を介してソース側に接続される。MOSFET16bは、ソースが低電位ラインYに接続され、ドレインが抵抗を介してMOSFET16aのゲートに接続され、ゲートが抵抗を介してソース側に接続されている。マイコン12の出力信号によってMOSFET16bがターンオンすると、MOSFET16aがターンオンし、電流路は閉じて電流が乾電池5から電源回路13に向けて流れる。一方、MOSFET16bがターンオフすると、MOSFET16aはターンオフして第3の電流路が開き、第3の電流路を流れる電流は遮断される。従って、第2のスイッチ回路16のオン・オフにより、乾電池5から電源回路13への給電・給電停止を切り替えることができる。
【0027】
第3のスイッチ回路17は、第3のスイッチ手段として、MOSFET17aとMOSFET17bとで構成され、電池組2と電源回路13とを接続する第4の電流路を開閉する。MOSFET17aは、ソースが電池組2の正極側に接続され、ドレインが電源回路13に接続され、ゲートが抵抗を介してソース側に接続されている。MOSFET17bは、ソースが低電位ラインYに接続され、ドレインが抵抗を介してMOSFET17aのゲートに接続され、ゲートがマイコン12に接続されると共に抵抗を介して低電位ラインYに接続されている。マイコン12の出力信号によってMOSFET17bがターンオンすると、MOSFET17aはターンオンし、電流路は閉じて電流が電池組2から電源回路13に向けて流れる。一方、MOSFET17bがターンオフすると、MOSFET17aはターンオフして第4の電流路は開放され、第4の電流路を流れる電流は遮断される。第3のスイッチ回路17のオン・オフにより、電池組2から電源回路13への給電・給電停止を切り替えることができる。
【0028】
第4のスイッチ回路18は、MOSFET18aとMOSFET18bで構成され、電池組2と電池組電圧検出回路15とを接続する第5の電流路を開閉する。MOSFET18aは、ソース・ドレイン間が電池組2の正極側と電池組電圧検出回路15との間の電流路を構成するように挿入され、ゲートが抵抗を介してソース側に接続されている。MOSFET18bは、ソースが低電位ラインYに接続され、ドレインが抵抗を介してMOSFET18aのゲートに接続され、ゲートがマイコン12に接続されると共に抵抗を介してソース側に接続されている。マイコン12の出力信号によってMOSFET18bがターンオンすると、MOSFET18aはターンオンし、電池組2から電池組電圧検出回路15への電流路は閉じて電流が流れる。一方、MOSFET18bがターンオフすると、MOSFET18aはターンオフして第5の電流路が開放され、第5の電流路を流れる電流は遮断される。このように、第4のスイッチ回路18のオン・オフにより、電池組電圧検出回路15の起動のオン・オフを切り替えることができる。
【0029】
トリガスイッチ19は、第1のスイッチ手段として、一対の接点からなり、一方の接点がダイオードを介して乾電池5に接続され、他方の接点が電力回路13に接続され、ユーザーにより押下されているときのみ、一対の接点間が閉じるスイッチである。さらに、トリガスイッチ19は、MOSFET16aのソース・ドレイン間と並列に接続されている。従って、トリガスイッチ19が押下されて接点が閉じると、乾電池5の電力が電源回路13を介してマイコン12に供給されるので、マイコン12を起動できる。すなわち、トリガスイッチ19を操作することによって、乾電池5から電池組2への給電を開始させることができる。
【0030】
充電装置接続判別手段20は、充電装置接続判別用端子20aと充電装置接続判別用抵抗20bで構成される。充電装置100が電池パック1に接続されると、充電装置接続判別用抵抗20bに充電装置100から出力される所定の電圧が印加されるので、マイコン12は、充電装置接続判別用抵抗20bの両端に印加される電圧を検出することにより、充電装置100の接続の有無を判別する。
【0031】
第1のサーミスタ21は、電池組2の温度に応じて両端の電圧が変化する測温素子であり、電池組2の温度をマイコン12に入力する。
【0032】
第2のサーミスタ22は、電池組2の温度に応じて両端の電圧が変化する測温素子であり、温度検出用端子22aを介して、電池組2の温度を充電装置100に伝える。
【0033】
表示回路24は、LED24aとLED24bとからなり、マイコン12からの制御信号によって、点灯の状態を切り替えて、乾電池5の残容量や制御部8の動作状態をユーザーに知らせる。具体的に、残容量表示については、乾電池5の出力電圧が4.8V以上の場合、LED24a、24bの双方を点灯させて、乾電池5の残容量が半分以上であることをユーザーに知らせる。乾電池電圧が4.0V以上4.8V未満の場合、LED24aを消灯しつつもLED24bを点灯させ、乾電池5の残容量が半分に満たないことをユーザーに知らせる。乾電池電圧が4.0V未満の場合、LED24a、24bの双方を消灯させ、乾電池5の残容量が不十分であり、充電をおこなえないことをユーザーに知らせる。
【0034】
また、制御部8の動作状態の表示については、充電中の場合、前述した残容量表示で点灯しているLEDを断続的な点灯状態、すなわち点滅状態にする。乾電池5の残容量が十分に残っていても、乾電池5または電池組2の温度が所定値以上の場合、前述した残容量表示で点灯しているLEDを点滅状態にし、電池が高温状態のため充電を開始しない充電保留中であることをユーザーに知らせる。例えば、充電中では、残容量に応じて、4.0V〜4.8Vの場合であれば一方のLEDのみを点滅させ、4.8Vを上回る場合では両方のLEDを同時に点滅させ、4.0V未満の場合は他方のLEDのみを点滅させる。高温状態では、残容量に関係なく2つのLEDを交互に点滅させ、常温に戻ったら、上記の要領で点滅させてもよい。或いは、LEDの一方を残容量用、他方を充電状態用にし、点灯、点滅、消灯を切り替えるようにすることもできる。
【0035】
電流検出回路26は、第2の電流路7を流れる電流、すなわち検出抵抗25を流れる電流を検出して、マイコン12とフィードバック回路27とに向けて出力する。
【0036】
フィードバック回路27は、第2の電流路7を流れる電流が所定の電流値を越えないように、定電流フィードバック信号を電圧変換回路10に出力すると共に、電池組2の充電電圧が所定電圧値を超えないように、定電圧フィードバック信号を電圧変換回路10に出力する。
【0037】
保護回路28は、汎用のリチウムイオン電池用保護IC(図示せず)を使用した回路であって、電池組2の各電池セル2aのセル電圧を監視し、電池セル2aのいずれか1つでも過充電となった場合に、過充電信号をマイコン12と過充電信号出力端子28aとに出力する。なお、過充電信号出力端子28aは、電池パック1に充電装置100が接続されている場合に、電池セル2aの過充電を充電装置100に通知するために設けられている。なお、電池パック1が電動工具に接続された場合、保護回路28は、電池セル2aのいずれか1つの電圧が所定の電圧(過放電電圧)以下に低下した場合には、電動工具側に過放電信号を出力するように構成されている。
【0038】
次に、電池パック1の充電について、図3及び図4のフローチャートを参照しながら説明する。電池パック1は、充電装置100に接続されず、且つマイコン12への電力供給が開始される前は、第2から第5までの電流路のいずれもが、対応するスイッチ回路11、16、17、18によって開かれており、電池組2から電池パック1内のいずれの部材にも電流が流れないようになっている。
【0039】
まず、乾電池5を乾電池装着部6に装着する(S100)。次に、トリガスイッチ19が押下されると(S101)、トリガスイッチ19を介して乾電池5から電源回路13への給電が開始されて電源回路13が起動し、マイコン12が動作を開始する(S103)。マイコン12は、動作を開始すると直ちに初期設定をおこなう(S104)。
【0040】
初期設定において、マイコン12は、第1のスイッチ回路11の開放状態を維持して第2の電流路7を開放状態とし(S104a)、乾電池5から電池組2への充電を開始しない。次に、マイコン12は、信号を出力して第2のスイッチ回路16を閉じて第3の電流路を閉じることにより(S104b)、トリガスイッチ19の操作を止めてトリガスイッチ19がオフとなった後も、乾電池5から電源回路13への電力供給が維持されるようにする。また、第3の電流路が閉じることにより、乾電池電圧検出回路14は、乾電池5の出力電圧の検出を開始する。
【0041】
次に、マイコン12は、信号を出力して第3のスイッチ回路17を閉じて第4の電流路を閉じるので(S104c)、電池組2の電力が電源回路13に供給されるようになる。乾電池5と電池組2の双方から電源回路13に電力供給できるようにしておくことにより、乾電池5の出力電圧が急激に低下してもマイコン12の駆動を継続することができる。なお、どちらか一方の電流路を閉じて、電圧状態に応じて他方の電流路に切り替えるようにしても良い。次に、第4のスイッチ回路18を閉じて第5の電流路を閉じ(S104d)、二次電池電圧検出回路15が電池組2の充電電圧を検出できるようにする。
【0042】
次に、マイコン12は、乾電池電圧検出回路14からの出力に基づいて、乾電池5の出力電圧が充電に必要な所定の電圧値4.0V以上であるか否かを判定する(S105)。出力電圧が4.0V未満であった場合(S105:NO)、マイコン12の動作を停止するためにステップS106へ進む。なお、充電に必要な電圧値とは、乾電池5の出力電圧を入力電圧とする電圧変換回路10の出力電圧を、電池組2の充電電圧に変換することのできる電圧値をいう。
【0043】
ステップS106において、マイコン12は、第2のスイッチ回路16を開放し(S106a)、次に、第3のスイッチ回路17を開放する(S106b)。この動作により、電源回路13への電力供給が断たれ、マイコン12は動作を停止する。マイコン12の停止により、マイコン12による各スイッチ回路へ出力信号の出力が停止するので、電池パック1内部の全てのスイッチ回路が開かれて電流が流れず、電池パック1内部の電力消費が抑制される。
【0044】
ステップS105において、出力電圧が4.0V以上の場合(S105:YES)、マイコン12は、表示回路24において乾電池5の出力電圧に対応した残容量を表示すると共に(S107)、点灯状態を維持することで充電が行われていないことを表示する(S108)。
【0045】
次に、マイコン12は、電池組2の充電電圧が正常範囲にあるか否かを判定する(S109)、電池組2の充電電圧が正常範囲にない場合(S109:NO)、マイコン12の動作を停止するためにステップS106へ進む。一方、電池組2の充電電圧が正常範囲にある場合(S109:YES)、次のステップS110へ進む。
【0046】
次に、マイコン12は、保護回路28から過充電信号が出力されているか否かを判定する(S110)。過充電信号が出力されていた場合(S110:YES)、マイコン12の動作を停止するためにステップS106へ進む。ステップS110において、過充電信号が出力されていない場合(S110:NO)、次のステップS111へ進む。
【0047】
次に、マイコン12は、充電装置100が電池パック1に接続されているか否かを判定する(S111)。充電装置100が接続されている場合(S111:YES)、マイコン12の動作を停止するためにステップS106へ進む。充電装置100が接続されている場合には、充電装置100に内蔵された充電回路により充電を行うため、乾電池5によって電池組2を充電する必要がないので、乾電池5の余計な電力消費を防止するために、マイコン12の動作を止めることができる。
【0048】
また、充電装置用の電流路(第1の電流路4)と乾電池用の電流路(第2の電流路7)とを別々に設けたため、制御部8の回路構成を乾電池の仕様に合わせれば良いため、制御部8を安価な回路部品で構成することができる。2つの充電路を共通にしてしまうと、一般に、乾電池の充電電流よりも充電装置100の充電電流の方が多いため、充電装置100の充電電流に合わせて制御部8の回路部品を決定する必要があり、制御部8のために高価な部品を使用しなければならない。しかし、本実施の形態では、充電装置用の電流路と乾電池用の電流路とを別々に設けたため、本発明の制御部は安価な回路部品で構成することができる。一方、ステップS111において、充電装置100が接続されていない場合(S111:NO)、次のステップS113へ進む。
【0049】
ステップS113にて、マイコン12は、電池組2の温度が50℃以下であるか判定する。電池組2の温度が50℃以下ではなかった場合(S113:NO)、ステップS114へ進む。
【0050】
ステップS114において、マイコン12は、初めてステップS114に進んでから再びステップ114に戻るループのループ回数をカウントすることによって、トリガスイッチ19の押下から一定時間経過しているか否かを判定する(S114)。一定時間経過していないと判定した場合は(S114:NO)、ステップS105に戻る。一定時間経過したと判定した場合(S114:YES)、マイコン12の動作を停止するためにステップS106へ進む。
【0051】
ステップS113において、電池組2の温度が50℃以下であった場合(S113:YES)、次のステップS115へ進む。
【0052】
ステップS113及びS114によって、電池組2の温度が50℃を超える高温状態の場合、マイコン12は、電池組2の充電の保留を維持する。このとき、マイコン12が駆動しているので、待機電力として乾電池5と電池組2の電力が少しずつ消費される。そこで、電池組2の高温状態が一定時間以上継続した場合、マイコン12の動作を停止させて、余計な電力消費を抑制している。
【0053】
ステップS115において、マイコン12は、第1のスイッチ回路11を閉じて第2の電流路7を閉じることによって、電圧変換回路10を起動させて、電池組2の充電を開始する。
【0054】
次に、マイコン12は、表示回路24によって乾電池5の電圧に対応した残容量を表示し(S116)、点灯しているLEDを点滅させることによって充電中であることを表示する(S117)。
【0055】
次に、マイコン12は、電池組2に流れる充電電流は正常範囲にあるか否か(S118)、電池組2の充電電圧は正常範囲にあるか否か(S119)、保護回路28より過充電信号は出力されているか否か(S120)、電池組2の温度は55℃以下か否か(S122)、充電装置100が接続されたか否か(S123)、を順次判定する。これらのステップにおいて、充電電流が正常範囲を外れたと判定された場合(S118:NO)、電池組2の充電電圧が正常範囲を外れたと判定された場合(S119:NO)、保護回路28より過充電信号が出力されたと判定された場合(S120:YES)、電池組2の温度は55℃以下でないと判定された場合(S122:NO)、充電装置100が接続されたと判定された場合(S123:YES)、電池組2の充電を終了するために、ステップS106へ進み、マイコン12の動作を停止する。なお、ステップ123にて、充電装置100が接続されたと判定された場合には、充電装置100による充電を行う。一方、ステップS123にて、充電装置100が接続されていないと判定された場合(S123:NO)、ステップS124へと進み、電池組2の充電を継続する。
【0056】
ステップS124において、マイコン12は、乾電池5の電圧が4.0V以下に低下したか否かを判定する(S124)。4.0V以下であった場合(S124:YES)、充電を終了するために、ステップS106へ進み、マイコン12の動作を停止する。4.0V以下ではなかった場合(S124:NO)、次のステップS125へ進む。
【0057】
ステップS125において、マイコン12は、電池組2の充電電圧が満充電電圧である16.7Vまで到達したか否かを判定する(S125)。電池組2の電圧が16.7Vまで到達した場合(S125:YES)、充電を終了するために、ステップS106へ進み、マイコン12の動作を停止する。電池組2の充電電圧が16.7Vに到達していない場合(S125:NO)、ステップS116へ戻り、電池組2の充電を継続する。
【0058】
上記のステップS116〜S125を繰り返すことによって、電池組2の充電電圧が満充電電圧に到達するので、この満充電をマイコン12が検出することによって、ステップS106にて、マイコン12は動作を停止する。
【0059】
電池パック1の上記構成によれば、充電装置による充電のみならず、容易に入手できる乾電池5を利用して充電できる。
【0060】
また、乾電池5によって得られる電圧が、電池組2の充電電圧と異なる場合であっても、電池パック1を充電することができる。すなわち、乾電池の個数が少ない場合であっても、電池パック1を充電できる。従って、電池パック1を、充電装置などの電源設備を必要とせずに充電することができる。
【0061】
さらに、第1のスイッチ回路を備えているので、乾電池を装着したからといって直ちに電池組2の充電が開始されるわけではないので、トリガスイッチ19の操作により、必要に応じたタイミングで電池組2を充電することができる。
【0062】
また、乾電池5から電池組2への充電を制御する制御部8のマイコン12には、スイッチ回路により実際に充電を行うときにのみ給電されるようになっている。従って、待機電力などの電池組2の充電に用いられない電力の消費を抑制することができる。
【0063】
さらに、制御部8のマイコン12は、乾電池5或いは電池組2のいずれからも給電されるように構成されている。従って、乾電池5からの出力電圧が急速に低下した場合であっても電池組2からの給電によって、マイコン12は安定してその駆動を継続することができる。また、マイコン12への給電は、乾電池5a或いは電池組2のいずれとするかを、手動或いは自動で切り替わるように構成することもできる。手動で切り替える場合は、電源回路13のダイオード13e,13fを手動で切替可能なスイッチで構成することもできる。自動で切り替える場合は、ダイオード13e,13fをそれぞれスイッチで構成し、乾電池電圧検出回路14と電池組電圧検出回路15とからの出力に応じて、マイコン12が当該スイッチを切り替えるようにしても良い。
【0064】
また、乾電池5の出力電圧を検出することによって、乾電池5の出力電圧が、例えば電池組2を充電できないほどの低い電圧値に低下した場合に、電池組2の充電を停止することができる。従って、電池パック1の内部で無駄な電力消費をしないので、省エネルギを達成できる。
【0065】
さらに、乾電池5の状態や、電池組2の充電の有無を表示回路24によって視覚的に確認することができ、ユーザは電池パック1の状態を容易に把握することができる。
【0066】
なお、上記実施の形態において、電池組2として、4つのリチウムイオン電池セル2aを直列に接続したものを用いたが、電池セルとしては、二次電池セルであれば適宜の種類の二次電池セルを用いることができ、直列接続する個数も4つに限定されなし、並列接続しても良い。また、二次電池ではなく電気二重層キャパシタでも良い。
【0067】
また、乾電池5として、アルカリ乾電池に限らず、適宜の種類の一次電池を用いることができ、直列接続する乾電池の個数も4つに限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の電池パックは、二次電池を利用して充電装置或いは乾電池によって充電可能な適宜の電池パックに利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 電池パック
2 電池組
3 充電端子
4 第1の充電電流路
5 乾電池装着部
7 第2の充電電流路
8 制御部
100 充電装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動工具及び充電装置の一方に着脱自在に装着され、前記電動工具に接続されるときは前記電動工具に電力を供給すると共に前記充電装置に接続されるときは前記充電装置により充電される電池パックであって、
複数の二次電池を接続してなる電池組と、
前記充電装置と電気的に接続される充電端子と、
前記電池組と前記充電端子との間に形成される第1の充電電流路と、
乾電池が着脱自在に電気的に装着される乾電池装着部と、
前記乾電池装着部と前記電池組との間に形成される第2の充電電流路と、
前記乾電池から前記第2の充電電流路を経由した前記電池組への充電を制御する制御部と、
を有することを特徴とする電池パック。
【請求項2】
前記制御部は、
手動によりオンとなり前記第2の充電電流路を閉じる第1のスイッチ手段を有することを特徴とする請求項1記載の電池パック。
【請求項3】
前記制御部は、
電力供給により動作するマイコンと、
前記マイコンに電力を供給する電源回路と、
を有し、
前記第1のスイッチ手段がオンになると前記電源回路から前記マイコンへ電力が供給されることを特徴とする請求項2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記第1のスイッチ手段は、
前記乾電池から前記電源回路への電流路を開閉する第2のスイッチ手段と、
前記電池組から前記電源回路への電流路を開閉する第3のスイッチ手段と、
を有し、
前記マイコンは、前記電源回路への入力電圧に応じて前記第2のスイッチ手段及び前記第3のスイッチ手段を制御することを特徴とする請求項3記載の電池パック。
【請求項5】
前記制御部は、前記乾電池の出力電圧を検出する電圧検出回路を有し、前記出力電圧が所定電圧以下になったときに、前記乾電池から前記電池組への充電を停止させることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一に記載の電池パック。
【請求項6】
前記制御部は、
前記乾電池の容量及び前記電池組の状態の少なくとも1つを表示する表示回路を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一に記載の電池パック。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−119109(P2012−119109A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265986(P2010−265986)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】