説明

電池パック

【課題】少ない部品点数で電池素子の膨張を抑制するとともに、外部に対する断熱性を高めることができる電池パックの提供にある。
【解決手段】正極と、負極と、正極と負極の間に設けられるセパレータと、を備える電池素子11が設けられ、電池素子11の周囲を覆う樹脂が備えられる電池パック10であって、樹脂は、電池素子11の膨張を抑制する正極もしくは負極からセパレータへの加圧力を付加する第1の樹脂21と、第1の樹脂21よりも発泡密度の高い第2の樹脂22を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電池パックに関し、特に、電池素子の周囲を覆う樹脂を備えた電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
電池パックの従来技術としては、例えば、特許文献1に開示された電池モジュールが知られている。
特許文献1に開示された電池モジュールは、平板状の二次電池とエンドプレートを積層し、その積層体に対して厚さ方向に反復的に荷重を掛け、その後その積層体を拘束することにより製造される。
この電池モジュールでは積層体を拘束するための部材としてのテンションプレートが用いられている。
この電池モジュールによれば、時間経過や使用による荷重抜けが防止され、電池モジュールは長期間にわたって安定した性能を有するとしている。
【0003】
ところで、電池モジュールの中には、所定の温度域で使用すると寿命が延びる電池モジュールが存在する。
従って、この種の電池モジュールでは、電池モジュールの外部との断熱性を高める断熱部材により電池モジュールを覆うことが好ましく、特に温度変化の大きい環境において使用が予定される電池モジュールの場合では、この断熱部材を必要とする。
例えば、特許文献1に開示された電池モジュールが外部との断熱性を高める必要がある場合、積層体を拘束するテンションプレートのほかに断熱性を高める断熱部材を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−339929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の電池モジュールに対して荷重抜けの防止や外部との断熱性を向上させようとすると、テンションプレートや断熱部材等の部材が必要となり、電池モジュールの部品点数が増大するという問題点がある。
その結果、例えば、電池モジュールの軽量化が阻害されたり、電池モジュールの製作コストが嵩んだりする。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、少ない部品点数で電池素子の膨張を抑制するとともに、外部に対する断熱性を高めることができる電池パックの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、正極と、負極と、前記正極と前記負極の間に設けられるセパレータと、を備える電池素子が設けられ、前記電池素子の周囲を覆う樹脂が備えられる電池パックであって、前記樹脂は、前記電池素子の膨張を抑制する前記正極もしくは前記負極から前記セパレータへの加圧力を付加する第1の樹脂と、前記第1の樹脂よりも発泡密度の高い第2の樹脂を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、第1の樹脂と第2の樹脂は、電池素子における外部との断熱性を確保する。
また、第1の樹脂は電池素子の正極もしくは負極からセパレータへ加圧し、電池素子の膨張を抑制する。
従って、本発明は、少ない部品点数で電池素子の膨張を抑制するとともに、外部に対する断熱性を高めることができる電池パックを提供できる。
【0009】
また、本発明では、上記の電池パックにおいて、複数の前記電池素子が、前記第1の樹脂の加圧方向に配列されてもよい。
【0010】
この場合、複数の電池素子が配列される電池パックであっても、第1の樹脂が各電池素子の膨張を抑制するとともに、第1の樹脂および第2の樹脂により電池素子の外部との断熱性を高めることができる。
【0011】
また、本発明では、上記の電池パックにおいて、前記第1の樹脂が前記電池素子の両側から加圧力を付加してもよい。
【0012】
この場合、電池素子は第1の樹脂により両側から加圧されるから、各電池素子の膨張をより確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、少ない部品点数で電池素子の膨張を抑制するとともに、外部に対する断熱性を高めることができる電池パックを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電池パックの横断面図である。
【図2】電池モジュールおよび電池素子の構造を示す斜視図である。
【図3】第1の実施形態の変形例に係る電池パックの横断面図である。
【図4】第2の実施形態に係る電池パックの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1の実施形態)
以下、第1の実施形態に係る電池パックを図面に基づいて説明する。
図1に示す電池パック10は、複数の電池素子11と、電池素子11を収容するケース13と、ケース13内において複数の電池素子11の周囲を覆うように設けられる第1の樹脂21および第2の樹脂22を備えている。
【0016】
電池素子11は、図2に示すように、正極31と、負極32と、正極31と負極32の間に設けられるセパレータ33と、を備えている。
本実施形態の電池素子11は、二次電池としてのリチウム電池を構成する要素であり、例えば、次のように製造される。
正極31、セパレータ33、負極32の順に積層された積層体を巻回し、扁平状に成形することにより巻回電極体を得る。
次に、巻回電極体を箱型ケースやラミネートフィルム等の外装体34に収容した後、非水電解液を注入し、外装体34の口を封止することにより薄型の電池素子11を得る。
なお、図2では、電池素子11の構造説明のために、一部の電池素子11について外装体34内の巻回電極体の端部を示すほか、巻回電極体の一部を拡大して正極31、負極32およびセパレータ33を示す。
本実施形態では、複数の電池素子11により電池モジュールGが構成されており、電池モジュールGにおける各電池素子11は電池素子11において最大面積を持つ平坦面12を互いに対向するように配列されている。
【0017】
ケース13は直方体の箱であり、金属製でも樹脂製であってもよい。
図1に示すように、横断面形状が矩形となるケース13の側板は、互いに対向する一対の第1側板部14と、第1側板部14と直角の面となる第2側板部15とから構成されている。
ケース13内の空間は複数の仕切板17により分割され、複数の部屋がケース13内に形成されている。
図1に示すように、ケース13において仕切板17の間に形成される空間は電池収容室18であり、電池収容室18には電池モジュールGおよび第1の樹脂21が収容されている。
一方の第1側板部14と仕切板17との間の空間と、他方の第1側板部14と仕切板17との間の空間は樹脂室19であり、樹脂室19には第2の樹脂22が充填されている。
従って、本実施形態のケース13は2つの樹脂室19の間に電池収容室18を設けた構造である。
【0018】
電池収容室18には、電池モジュールGおよび第1の樹脂21が収容されるが、電池モジュールGは、図示されない支持部材より電池収容室18の中央に支持されている。
電池収容室18における電池モジュールGの電池素子11は第2側板部15に向かう方向(図1において左右方向)に配列されている。
電池収容室18には、電池素子11のほかに第1の樹脂21が収容されており、第1の樹脂21は発泡性樹脂である。
第1の樹脂21は具体的にはウレタン樹脂であり、ウレタン樹脂は主原料である2液を混合することにより発泡・形成される。
【0019】
第1の樹脂21は、電池素子11の配列方向における第2側板部15と電池素子11との間に介在されている。
第1の樹脂21は、電池収容室18内において発泡・形成され、発泡時のみかけの体積膨張により電池素子11の正極31もしくは負極32からセパレータ33へ加圧する加圧力を生じる。
本実施形態では第1の樹脂21と電池素子11との間に面圧板23が介在されており、 このため、電池素子11は配列方向において面圧板23を通じて常に第1の樹脂21からの均一な加圧力を受ける。
従って、電池モジュールGの電池素子11は第1の樹脂21の加圧方向に配列されている。
電池素子11において正極31もしくは負極32からセパレータ33への加圧力が存在することにより、配列方向(平坦面12と直角方向)への電池素子11の膨張を抑制する。
【0020】
第1の樹脂21は、電池素子11に加圧力を付加する機能のほか、断熱性を有する断熱材としての機能を合わせ持つ。
従って、第1の樹脂21は、電池素子11を加圧することができる発泡密度により発泡・形成されている。
第1の樹脂21の発泡密度は、主原料である2液の混合比を調節することにより変更可能である。
【0021】
樹脂室19に充填されている第2の樹脂22は発泡性樹脂であり、第1の樹脂21と同じウレタン樹脂であるが、第1の樹脂21よりも発泡密度の大きいウレタン樹脂である。
本実施形態では、樹脂室19に主原料2液を投入して混合して、第2の樹脂22が樹脂室19全体に行き渡るように充填されている。
第2の樹脂22は、第1の樹脂21のように電池素子11を加圧する必要がなく、断熱材として十分な断熱性を持つような発泡密度を有している。
【0022】
電池収容室18において電池モジュールGと仕切板17との間には、電池モジュールG、仕切板17、第2の樹脂21により区画される空隙部Sが形成されている。
この空隙部Sは電池素子11を冷却するための冷却媒体を通すための空間であり、図示されない冷却媒体の配管と接続されている。
【0023】
本実施形態では、ケース13内において第1の樹脂21および第2の樹脂22が電池素子11の周囲を覆うように設けられており、第1の樹脂21および第2の樹脂22は電池モジュールGと外部との断熱を図っている。
従って、電池パック10は、電池素子11の放電または充電の際に外部における温度変化の影響を受けることはない。
また、電池素子11が放電時または充電時に発熱しても、空隙部Sを通る冷却媒体により冷却され、電池素子11の温度を、寿命を延ばすために好適な所定の温度以下に保つことができる。
さらに、第2の樹脂21は、電池モジュールGに対して配列方向へ加圧力を付加することで、電池素子11の正極31もしくは負極32からセパレータ33への加圧により電池素子11の膨張が抑制される。
【0024】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
(1)第1の樹脂21と第2の樹脂22は、電池モジュールGと外部との断熱性を確保する。また、第1の樹脂21は各電池素子11の正極31もしくは負極32からセパレータ33へ加圧し、各電池素子11の配列方向への膨張を抑制する。従って、電池パック10は、少ない部品点数で電池素子11の膨張を抑制するとともに、外部に対する断熱性を高めることができる。
(2)ケース13内において第1の樹脂21を発泡・形成するため、第1の樹脂21は電池素子11の正極31もしくは負極32からセパレータ33へ加圧する加圧力を得ることができる。第1の樹脂21は断熱材としての機能のほかに電池素子11の膨張を抑制する機能を持たせることができる。従って、従来のように電池素子の膨張を抑制するための専用部品は不要である。
【0025】
(3)第1の樹脂21が電池収容室18において電池モジュールGを加圧するため、電池モジュールGの電池収容室18における配列方向における位置が固定される。このため、電池モジュールGをケース13内に固定する際、電池素子11の配列方向の位置ずれ防止の手段を省略することができる。
(4)電池収容室18に電池モジュールGの周囲に空隙部Sが形成されるため、空隙部Sに冷却媒体を通して電池モジュールGを効率的に冷却することが可能である。これにより、外部との断熱を図った上で、電池素子11に対する高精度の温度管理も可能となる。
(5)第2の樹脂22は断熱材としての機能のほかに電池素子11の膨張を抑制する機能を持たせることができるため、電池パック10の小型化や軽量化を図ることが可能である。
【0026】
(変形例)
次に、第1の実施形態の変形例に係る電池パック40を説明する。
図3に示す第1の実施形態の変形例は、複数の電池モジュールGを有する電池パック40の例である。
ケース43の構造以外は第1の実施形態と同一であるため、同一の要素については共通の符号を用いる。
【0027】
電池パック40のケース43は直方体の箱であり、図3に示すように、横断面形状が矩形となるケース43の側板は、互いに対向する一対の第1側板部44と、第1側板部44と直角の面となる第2側板部45とから構成されている。
ケース43内の空間は複数の仕切板47により、3つの電池収容室48と2つの樹脂室49とに区画されている。
電池収容室48は、第2の樹脂22が充填された樹脂室49の間の空間を複数の仕切板47により3分割されることにより形成されている。
各電池収容室48には電池モジュールGが収容されているほか、第1の樹脂21および冷却媒体を通す空隙部Sが設けられている。
電池モジュールG、第1の樹脂21および空隙部Sの位置関係は各電池収容室48とも互いに同一である。
変形例に係る電池パック40は、電池モジュールGが複数となっても第1の実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0028】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る電池パックについて説明する。
第1の実施形態と共通の要素については、第1の実施形態の説明を援用して共通の符号を用いる。
【0029】
ケース53は直方体の箱であり、図4に示すように、ケース53の側板は、互いに対向する一対の第1側板部54と第2側板部55とから構成されている。
ケース53内の空間は複数の仕切板57により、電池収容室58と樹脂室59とに区画されている。
電池収容室58には電池モジュールGおよび第1の樹脂21が収容されている。
本実施形態では、ケース53内の電池モジュールGの配列方向における一端(図4における電池モジュールGの右側端)にのみ第1の樹脂21が設けられる。
電池モジュールGの配列方向における他端(図4における電池モジュールGの左側端)はケース53に設けた規制板51に固定されている。
樹脂室59には第2の樹脂22が充填されている。
【0030】
規制板51と第2側板部55との間の空間は空気のみの部屋としてもよく、冷却媒体を通す空隙部Sと連通させてもよい。
あるいは、規制板51と第2側板部55との間の空間に第2の樹脂22を充填するようにしてもよい。
第1の樹脂21を設けない側の第2側板部55が電池パック50の設置先において所定の温度域に保たれる等、設置先が電池パック50の一部(電池モジュールGの他端側)の断熱の必要がない場合、電池モジュールGの他端を第2側板部55に当接させてもよい。
【0031】
第1の樹脂21は、電池モジュールGに対して電池モジュールGの一端から発泡・形成時に生じる加圧力を付加するが、電池モジュールGの他端は加圧力を受けて規制板51に押し付けられる。
このため、第1の実施形態と同様に、電池モジュールGにおいて配列方向へ加圧力を付加することで、電池素子11の正極31もしくは負極32からセパレータ33へ加圧により電池素子11の膨張が抑制される。
【0032】
本実施形態によれば、電池モジュールGの一端のみに第1の樹脂21を設けるだけであっても、電池モジュールGにおける電池素子11の膨張を防止することができ、例えば、電池モジュールGの他端側の断熱を考慮する必要がない電池パック50に適用することができる。
なお、本実施形態は電池パック50を、第1の実施形態の変形例と同様に、複数の電池収容室18を有するケースに適用することも可能である。
【0033】
上記の実施形態は、本発明の一実施形態を示すものであり、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、下記のように発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能である。
○ 上記の実施形態(変形例を含む)では、複数の電池素子から構成される電池モジュールを例示したが、本発明は複数の電池素子だけでなく単一の電池素子に対しても適用可能である。この場合、電池素子の両側の平坦面から加圧力が作用するように第1の樹脂を設ければよい。
○ 上記の実施形態(変形例を含む)では、第1の樹脂としてウレタン樹脂を用いたが、ウレタン樹脂に限定されない。第1の樹脂は、断熱機能、発泡性および発泡後の樹脂の強度がウレタン樹脂と同等の樹脂であってもよい。
○ 上記の実施形態(変形例を含む)では、電池素子同士を直接当接して配列した電池モジュールとしたが、電池モジュールにおける電池素子間に介在物を設けるようにしてもよい。例えば、電池素子の外装体がラミネートフィルムの場合には、電池素子間に位置ずれ防止のための枠体、あるいは、電池素子への均一な加圧を図るための板状の部材を介在させてもよい。
○ 上記の実施形態(変形例を含む)では、第1の樹脂と電池素子との間に面圧板を介在させたが、第1の樹脂が電池素子に直接接触する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0034】
10、40、50 電池パック
11 電池素子
12 平坦面
13、43、53 ケース
14、44、45 第1側板部
15、45、55 第2側板部
17、47、57 仕切板
18、48、58 電池収容室
19、49、59 樹脂室
21 第1の樹脂
22 第2の樹脂
23 面圧板
31 正極
32 負極
33 セパレータ
34 外装体
51 規制板
G 電池モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、前記正極と前記負極の間に設けられるセパレータと、を備える電池素子が設けられ、前記電池素子の周囲を覆う樹脂が備えられる電池パックであって、
前記樹脂は、
前記電池素子の膨張を抑制する前記正極もしくは前記負極から前記セパレータへの加圧力を付加する第1の樹脂と、
前記第1の樹脂よりも発泡密度の高い第2の樹脂を備えることを特徴とする電池パック。
【請求項2】
複数の前記電池素子が、前記第1の樹脂の加圧方向に配列されることを特徴とする請求項1記載の電池パック。
【請求項3】
前記第1の樹脂が前記電池素子の両側から加圧力を付加することを特徴とする請求項1又2記載の電池パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−26090(P2013−26090A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161422(P2011−161422)
【出願日】平成23年7月23日(2011.7.23)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】