説明

電池用梱包体

【課題】電池を搬送する際に衝撃が加わっても、電池の移動を防止できるような構成の梱包体を得る。
【解決手段】電池用梱包体(1)は、厚み方向に膨出した膨出部(2a)を有する平板状の電池(2)を該膨出部(2a)側から覆う平板状の本体部(10)を有する。該本体部(10)に、電池(2)の膨出部(2a)が内方に位置付けられるような開口部(11)を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池を搬送する際に用いられる電池用梱包体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電池を搬送する際に該電池を保護するために用いられる電池用梱包体が知られている。このような電池用梱包体では、例えば特許文献1に開示されるように、電池を収納する収容箱と、電池と電池との間に配置される仕切り板とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−9825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電池が薄い平板状の場合には、搬送中に収容箱に強い衝撃が加わると、該収容箱内に仕切り板やスペーサ等を入れても、収容箱内で電池が移動する可能性がある。そうすると、電池の一部が強い衝撃を直接、受けて、変形する可能性もある。
【0005】
本発明の目的は、電池を搬送する際に衝撃が加わっても、電池の移動を防止できるような構成の梱包体を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態にかかる電池用梱包体は、厚み方向に膨出した膨出部を有する平板状の電池を該膨出部側から覆う平板状の本体部を有し、該本体部には、前記電池の膨出部が内方に位置付けられるような開口部が形成されている(第1の構成)。
【0007】
この構成により、厚み方向に膨出した膨出部を有する平板状の電池は、該膨出部が平板状の本体部の開口部内に位置付けられるため、電池の膨出部が本体部の開口部の周縁部分に引っ掛かる。すなわち、電池は、電池用梱包体の本体部における開口部の周縁部分で保持されるため、搬送中に電池用梱包体が強い衝撃を受けても、電池用梱包体に対して電池がずれるのを防止できる。したがって、搬送中に電池が変形するのを防止できる。
【0008】
前記第1の構成において、前記電池の外周縁部に係合可能に構成されていて、且つ、該電池を前記本体部に対して保持する保持部をさらに有するのが好ましい(第2の構成)。
【0009】
これにより、本体部の開口部の周縁部分以外でも、電池を該本体部に保持することができる。したがって、搬送中に電池用梱包体に強い衝撃が加わった場合でも、電池が本体部からずれて直接、衝撃を受けるのを防止できる。
【0010】
前記第2の構成において、前記電池を前記本体部との間で挟み込む平板部をさらに有し、前記保持部は、前記本体部及び前記平板部の少なくとも一方に設けられているのが好ましい(第3の構成)。
【0011】
こうすることで、平板状の電池の両面を梱包体で挟み込むことができるため、該電池の両面を保護することができる。しかも、本体部及び平板部の少なくとも一方に保持部を設けることで、電池が本体部や平板部に対してずれるのを防止できる。なお、平板部に保持部を設けた場合には、該保持部の強度が本体部の開口部の影響を受けないため、該保持部によって電池をより確実に保持できる。
【0012】
前記第2または第3の構成において、前記電池は、互いに離間した位置から電池外方へ同じ方向に向かって延びる複数の外部端子を有し、前記保持部は、前記電池を前記複数の外部端子同士の間の位置で保持するように設けられているのが好ましい(第4の構成)。
【0013】
これにより、電池の搬送中に電池用梱包体に衝撃が加わっても、変形しやすい外部端子に直接、衝撃が加わるのを防止できる。すなわち、複数の外部端子同士の間で電池を保持するように保持部を設けることで、該外部端子が電池用梱包体の外方へ移動するのをより確実に防止することができる。これにより、電池の搬送中に電池用梱包体に加わる衝撃によって外部端子が変形するのをより確実に防止できる。
【0014】
前記第1から第3の構成のうちいずれか一つにおいて、前記本体部には、外周側から前記開口部に向かって延びる切り欠き部が形成されていて、前記切り欠き部に係合する柱状部材をさらに有するのが好ましい(第5の構成)。
【0015】
こうすることで、本体部の切り欠き部に係合された柱状部材によって、該切り欠き部が形成されている方向への電池の移動が抑制される。したがって、電池の搬送中に電池用梱包体に衝撃が加わった場合でも、切り欠き部内の柱状部材によって電池の移動が抑制されて該電池に直接、衝撃が加わるのを防止できる。
【0016】
前記第5の構成において、前記電池は、互いに離間した位置から電池外方へ同じ方向に向かって延びる複数の外部端子を有し、前記切り欠き部は、前記本体部における前記複数の外部端子同士の間に対応する位置に形成されているのが好ましい(第6の構成)。
【0017】
これにより、電池の搬送中に電池用梱包体に衝撃が加わっても、電池の外部端子が電池用梱包体の外方へ移動するのを抑制することができる。したがって、上述の構成により、電池の外部端子が直接、衝撃を受けて変形を生じるのを防止できる。
【0018】
前記第5または第6の構成において、前記電池を前記本体部との間で挟み込む平板部をさらに有し、該平板部にも、前記電池を前記本体部との間で挟み込んだ状態で、前記柱状部材が係合可能な平板切り欠き部が形成されているのが好ましい(第7の構成)。
【0019】
これにより、本体部との間で電池を挟み込むように平板部を設けた構成においても、柱状部材によって電池用梱包体内での電池の移動を防止できる。
【0020】
前記第1の構成において、前記電池を前記本体部との間で挟み込む平板部をさらに有するのが好ましい(第8の構成)。これにより、電池の両面を保護することができる。特に、前記平板部は、その端部で前記本体部と接続されているのが好ましい(第9の構成)。こうすることで、電池に対して本体部及び平板部を容易に配置することができる。すなわち、電池を電池用梱包体によって梱包する際の作業性の向上を図れる。
【0021】
前記第1から第9の構成のいずれか一つにおいて、前記本体部の厚みは、前記電池の膨出部の膨出高さよりも大きいのが好ましい(第10の構成)。これにより、本体部の開口部の周縁部分によって電池の膨出部をより確実に保持できる。したがって、上述の構成により、電池の搬送中に電池用梱包体に衝撃が加わった場合でも、本体部に対して電池が移動するのをより確実に防止できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一実施形態にかかる電池用梱包体によれば、平板状の電池を覆う平板状の本体部に、該電池の膨出部が位置付けられるような開口部を設けた。これにより、電池の搬送中に電池用梱包体に衝撃が加わった場合でも、本体部の開口部の周縁部分によって電池を保持することができ、該電池に直接、衝撃が加わるのを防止できる。特に、本体部の厚みを、電池の膨出部の膨出高さよりも大きくすることで、該本体部の開口部の周縁部分で電池をより確実に保持できる。
【0023】
また、保持部によって電池を本体部に対して保持したり、本体部に切り欠き部を設けて該切り欠き部に柱状部材を係合させたりすることにより、電池用梱包体内での電池の移動をより確実に抑制することができる。しかも、これらの保持部や切り欠き部を複数の外部端子同士の間に形成することで、電池の搬送中に電池用梱包体に対して外部端子が移動して変形するのを防止できる。
【0024】
さらに、本体部との間で電池を挟み込む平板部を設けることで、電池の両面を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、実施形態1にかかる電池用梱包体で電池を梱包した状態を示す斜視図である。
【図2】図2は、実施形態1にかかる電池用梱包体の概略構成を示す斜視図である。
【図3】図3は、電池の概略構成を示す斜視図である。
【図4】図4は、図3におけるIV−IV線断面図である。
【図5】図5は、電池用梱包体に電池を配置した状態を示す斜視図である。
【図6】図6は、図1におけるVI-VI線断面図である。
【図7】図7は、実施形態2にかかる電池用梱包体で電池を梱包した状態を示す斜視図である。
【図8】図8は、実施形態2にかかる電池用梱包体の概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。なお、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0027】
[実施形態1]
図1は、本発明の一実施形態である電池用梱包体1の概略構成を示す図である。この電池用梱包体1は、平板状の電池2を搬送する際に、該電池2を梱包するために用いられる。電池用梱包体1は、図1に示すように、平板状の電池2を間に挟み込むように、板状の部材を2つに折り曲げることにより形成されている。
【0028】
詳しくは、電池用梱包体1は、板状部材を2つに折り曲げることによって形成される本体部10及び平板部20を有している。これらの本体部10及び平板部20は、ほぼ同じ大きさの略長方形状に形成されている。これらの本体部10と平板部20との間に、平板状の電池2が挟みこまれる。これらの本体部10及び平板部20は、両者の間に平板状の電池2を挟み込んだ状態で該電池2を覆うような面積を有している。また、電池用梱包体1は、例えばダンボールなどの平板状の緩衝材によって構成される。
【0029】
電池用梱包体1は、本体部10及び平板部20の各厚みが同等で、且つ、それらの厚みtが後述するように電池2の膨出部2aの膨出高さTよりも厚く形成されている(図6参照)。
【0030】
本体部10には、矩形状の開口部11が形成されている。この開口部11は、電池2の後述する膨出部2aが位置付けられるような大きさに形成されている。これにより、上述のように、平板状の電池2を電池用梱包体1の本体部10と平板部20との間に挟み込んだ状態で、該電池2の膨出部2aは本体部10の開口部11内に位置付けられる(図1参照)。なお、この開口部11は、図1に示すように、内部に電池2の膨出部2aが位置付けられた状態で、該電池2が本体部10及び平板部20の外にはみ出ないような位置に設けられている。すなわち、開口部11は、図3に示す電池2の形状に対応して、略長方形状の本体部10の長手方向の一端部側に偏って設けられている。
【0031】
平板部20には、該平板部20と本体部10との間に電池2を挟み込んだ状態で、電池2の外周部分で且つ該電池2の後述する正極外部端子37と負極外部端子38との間に、平板部20の載置面20aに直交する方向から見て略矩形状の保持部21が形成されている。この保持部21は、平板部20に切り込みを入れて、該切り込みによって囲まれた平板部20の一部を本体部10側に折り曲げることにより形成される。この保持部21は、平板部20と本体部10との間に電池2を挟み込んだ状態で該電池2が正極外部端子37及び負極外部端子38側へ移動するのを防止するように、該電池2側の部分が本体部10側に折り曲げられている。すなわち、保持部21は、平板部20の長手方向の両端部のうち、平板部20上に本体部10を重ねた状態で本体部10の開口部11が位置しない他端部側に設けられている。また、保持部21は、平板部20の長手方向の他端に近い部分のみが該平板部20と接続されるように、平板部20に略C字状に設けられた切れ込みによって形成される。上述のように平板部20に保持部21を形成することにより、該平板部20には、穴部22が形成される。
【0032】
なお、上述のような保持部21を、略長方形状の電池2の他の辺に対して設けてもよいし、電池2の4辺に対してそれぞれ設けてもよい。また、保持部21を本体部10に形成してもよい。保持部の形状や寸法は、電池2の形状や作業性等を考慮して適宜決定される。
【0033】
次に、図3及び図4を用いて電池2の構成について簡単に説明する。電池2は、シート状の正極32及び負極33がセパレータ34を間に挟んで交互に積層された積層体31と、該積層体31を覆うラミネートフィルム外装体36と、積層体31の正極32及び負極33にそれぞれ接続される正極外部端子37及び負極外部端子38(外部端子)と、を備えている。すなわち、電池2は、電極体としての積層体31を、ラミネートフィルム外装体36によって覆った平板状のラミネート型電池である。
【0034】
正極32は、金属箔上に、正極合剤を含有したペーストを塗布することにより形成される。各正極32は、正極リード35によって正極外部端子37に接続されている。
【0035】
負極33は、金属箔上に、負極合剤を含有したペーストを塗布することにより形成される。特に図示しないが、各負極33も、正極32と同様、負極リードによって負極外部端子38に接続されている。すなわち、図4には、正極32を正極リード35によって正極外部端子37に接続する構成が示されているが、同様に、負極33も負極リードによって負極外部端子38に接続されている。
【0036】
正極外部端子37は、図4に示すように、1枚の金属板からなる。この正極外部端子37の厚みは、略0.1mm〜0.3mmが好ましい。なお、正極外部端子37の表面には、異種金属のメッキや、後述する接着層37aとの接着性向上のために各種表面コーティングが施されていてもよい。また、負極外部端子38も、正極外部端子37と同様の構成を有する。これらの正極外部端子37及び負極外部端子38は、その一端側が、ラミネートフィルム外装体36によって挟み込まれて該ラミネートフィルム外装体36と一体化される一方、他端側が電池2の外方に向かって突出している。すなわち、これらの正極外部端子37及び負極外部端子38は、互いに離間した位置で、電池2の外方へ同じ方向に向かって突出している。
【0037】
セパレータ34は、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリエチレンとポリプロピレンとの融合体、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなどによって構成された多孔質フィルム、または、セルロースなどからなる不織布によって形成される。なお、セパレータ34は、その透気度がJIS P 8117に規定の方法により測定されるガーレー値で600(s/100ml)以下、厚みが5μmから50μm、空孔率が30%以上で且つ80%以下であるのが好ましい。特に、透気度が300(s/100ml)以下、厚みが30μm以下、空孔率が30%以上で且つ70%以下がより好ましい。
【0038】
ラミネートフィルム外装体36は、アルミニウム製の金属箔の一面側がナイロンで覆われ、且つ、他面側がポリプロピレンで覆われた材料からなる。すなわち、ラミネートフィルム外装体36は、アルミニウムをナイロン及びポリプロピレンでラミネートした材料からなる。これにより、ラミネートフィルム外装体36は、ラミネートフィルム外装体36同士を重ね合わせた状態で加熱しながら圧力を加えることによって、互いに接着される。なお、金属箔は、アルミニウムに限らず、他の金属材料によって形成してもよい。
【0039】
本実施形態のラミネートフィルム外装体36は、長方形状に形成されている。このラミネートフィルム外装体36によって積層体31を包み込んだ状態で、該ラミネートフィルム外装体36の外周側同士を接着することにより、図3の構成の電池2が得られる。このラミネートフィルム外装体36の外周側同士の接着部分により、電池2のシール部2bが形成される。すなわち、シール部2bは、ラミネートフィルム外装体36が積層体31を覆うことにより形成される膨出部2aの三方に形成される。
【0040】
ここで、ラミネートフィルム外装体36と、その外方に一部が突出する正極外部端子37及び負極外部端子38との間には、それぞれ接着層37a,38aが設けられている。これらの接着層37a,38aを設けることにより、ラミネートフィルム外装体36と正極外部端子37及び負極外部端子38とをそれぞれ強固に接着することができる。
【0041】
上述のような構成を有する電池2では、図4に示すように、膨出部2aの正極外部端子37及び負極外部端子38側に、他の部分に比べて緩やかな斜面2cが形成される。これは、積層体31の正極外部端子37及び負極外部端子38側では、正極32及び負極33に対してセパレータ34が突出しているとともに、正極リード35や負極リード(図示省略)が配置されているため、ラミネートフィルム外装体36が積層体31の側面に沿うことなく斜めになるからである。電池2がこのような斜面2cを有するため、該電池2を本体部10と平板部20との間に挟みこんだ場合に、該電池2は正極外部端子37及び負極外部端子38側に移動しやすくなる。すなわち、電池2を、本体部10の開口部11内に膨出部2aが位置付けられるように配置した場合、該電池2の正極外部端子37及び負極外部端子38側に形成された斜面2cによって、電池2の膨出部2aが本体部10の開口部11の周縁部分に引っ掛かりにくくなる。これにより、電池2の搬送時に電池用梱包体1が衝撃を受けると、該電池2は膨出部2aの正極外部端子37及び負極外部端子38側が本体部10と平板部20との間に入り込みやすくなる。
【0042】
これに対して、本実施形態の場合、電池用梱包体1の平板部20の載置面20a上に電池2を載置する際に、図5に示すように、平板部20の保持部21を電池2における正極外部端子37と負極外部端子38との間のシール部2bに係合させることができる。これにより、電池2を梱包した状態の電池用梱包体1に衝撃が加わっても、該電池2は正極外部端子37及び負極外部端子38が平板部20から突出する方向(図5の上方)に移動するのを係合部21によって防止できる。したがって、電池2の搬送時に、電池用梱包体1内で該電池2が移動して正極外部端子37及び負極外部端子38が損傷を受けるのを防止できる。
【0043】
そして、電池2は、図1のように電池用梱包体1によって覆われた状態で、図示しない搬送用の梱包箱内に収納される。このとき、電池用梱包体1の本体部10と平板部20とが離間しないように、該本体部10と平板部20とをテープ等によって固定するのが好ましい。電池用梱包体1によって梱包された電池2は、厚み方向に並べられた状態で梱包箱内に収納される。
【0044】
ここで、既述したように、電池用梱包体1は、電池2の膨出部2aの膨出高さTよりも大きい厚みtを有している(図6参照)。これにより、本体部10の開口部11内に位置付けられる電池2の膨出部2aは、該本体部10の内方に位置して該本体部10の外表面から突出しない。よって、電池2の膨出部2aが他の平板状の部材と接触して擦れたり直接衝撃を受けたりするのを防止できる。なお、膨出部2aの膨出高さTは、電池2のシール部2bから膨出部2aの膨出側端面までの高さである。
【0045】
特に、本体部10の厚みは、1.3T以上で且つ2T以下が好ましい。この範囲であれば、電池2の膨出部2aが本体部10から突出するのをより確実に防止しつつ、電池用梱包体1の厚みが厚くなり過ぎるのを防止できる。すなわち、電池用梱包体1の厚みが厚くなりすぎると、ダンボールの場合には内部の空洞部分が大きくなって電池2の膨出部2aと係合する開口部11の周縁部分の強度が低下するとともに、梱包箱内に収納できる電池2の数が少なくなるため、電池2を効率良く搬送することができない。これに対して、本体部10の厚みを上述の範囲にすることで、電池2の膨出部2aを、開口部11の周縁部分により確実に係合させることができるとともに、梱包箱内に多くの電池2を収納することが可能となる。
【0046】
(落下試験)
本実施形態のように、電池用梱包体に電池2の膨出部2aが係合する開口部11を設けた効果を確認するために、複数の電池を梱包箱内に収容して以下のような六面落下試験を行った。なお、この六面落下試験では、梱包箱の六面にそれぞれ衝撃が加わるように、該梱包箱の下側に位置する面を変えて90cmの高さから硬質の木板上に梱包箱を6度、落下させる。
【0047】
六面落下試験に用いる実施例1、2、及び、比較例1、2として、次のような構成の箱を用意した。
【0048】
実施例1として、電池2を、本体部10のみを有する梱包体によって梱包した。すなわち、電池2に対して、膨出部2aを開口部11内に位置付けるように、本体部10のみからなる梱包体を取り付けた。このように梱包された電池2を梱包箱内に厚み方向に25個、並べて詰めた。なお、この実施例1における電池2の重量は1個あたり約200gであった。
【0049】
実施例2として、電池2を、本体部10のみを有する2つの梱包体の間に挟み込んだ。この実施例2でも、梱包体を間に挟みながら、電池2を梱包箱内に厚み方向に25個、並べて詰めた。なお、この実施例2における電池2の重量は1個あたり約300gであった。
【0050】
比較例1として、電池2と電池2との間に、開口部11が形成されていない平板状の梱包体を挿入した。そして、梱包箱内に、梱包体を間に挟みながら、電池2を厚み方向に25個、並べて詰めた。なお、この比較例1における電池2の重量は1個あたり約200gであった。
【0051】
比較例2として、電池2と電池2との間には何も挿入せずに、梱包箱内に25個の電池2を厚み方向に並べて詰めた。なお、この比較例2における電池2の重量は1個あたり200gであった。
【0052】
なお、いずれの実施例及び比較例でも、梱包体及び梱包箱をダンボールによって形成した。
【0053】
試験結果を表1に示す。この表1は、上述のような六面落下試験を行った後、電池2に折損や損傷等が発生した数を示す。
【表1】

【0054】
表1から分かるように、電池2と電池2との間に梱包体を挿入しない場合(比較例2)や、梱包体に開口部11が形成されていない場合(比較例1)には、多くの電池2が損傷を受ける。これに対し、梱包体に開口部11を設けて、該開口部11に電池2の膨出部2aを係合させることにより、損傷を受ける電池2の数がゼロになる。これにより、梱包体に開口部11を設けることで、電池2の搬送時に梱包体が衝撃を受けた場合でも、該電池2は梱包体に対して移動しにくくなることが分かる。したがって、梱包体に開口部11を設けることにより、電池2が直接、衝撃を受けるのを防止できる。
【0055】
(実施形態1の効果)
本実施形態では、電池用梱包体1の平板状の本体部10に、平板状の電池2の膨出部2aに対応して開口部11を設ける。これにより、本体部10によって電池2の膨出部2a側を覆った場合に、該膨出部2aが開口部11内に位置付けられる。したがって、電池2の膨出部2aが電池用梱包体1の本体部10の開口部11に係合するため、該電池2の搬送時に電池用梱包体1に衝撃が加わっても、該電池2が移動するのを防止できる。よって、電池2の搬送時に、該電池2が損傷を受けるのを防止できる。
【0056】
また、電池用梱包体1は、電池2を両面から挟み込むように本体部10及び平板部20を備えているため、電池2の両面を保護することができる。しかも、本体部10及び平板部20は1枚の板部材を折り曲げることにより形成されるため、電池用梱包体1を容易に形成できるとともに、本体部10と平板部20との間に電池2を容易に挟みこむことができる。
【0057】
さらに、本実施形態では、平板部20に、電池2を保持するための保持部21が形成されているため、電池2の搬送時に電池用梱包体1に強い衝撃が加わっても該電池2が電池用梱包体1に対して移動するのをより確実に防止できる。しかも、保持部21は、平板部20の載置面20a上に電池2を配置した状態で、該電池2の正極外部端子37と負極外部端子38との間で該電池2のシール部2bを保持するように設けられているため、正極外部端子37及び負極外部端子38が平板部20からはみ出すのをより確実に防止できる。したがって、電池2の搬送時に電池用梱包体1が衝撃を受けた場合でも、正極外部端子37及び負極外部端子38が損傷を受けるのをより確実に防止できる。
【0058】
[実施形態2]
図7及び図8に、実施形態2にかかる電池用梱包体41の概略構成を示す。この実施形態2の構成は、保持部の代わりに切り欠き部52,61を設けて該切り欠き部52,61内に柱状部材70を配置した点で実施形態1とは異なる。この実施形態2において、実施形態1の構成と同一の部分には同一の符号を付し、以下で異なる部分についてのみ説明する。
【0059】
図7及び図8に示すように、実施形態1と同様、電池用梱包体41は、板状の部材を2つに折り曲げてなる。すなわち、電池用梱包体41は、略矩形状の開口部51を有する本体部50と、平板部60とを有する。これらの本体部50と平板部60との間には、開口部51内に電池2の膨出部2aが位置付けられるように電池2が配置される。
【0060】
本体部50及び平板部60には、両者間に電池2が挟み込まれた状態で該電池2の正極外部端子37と負極外部端子38との間に位置するように、切り欠き部52,61がそれぞれ設けられている。これらの切り欠き部52,61は、略矩形状に形成されている。
【0061】
図7に示すように、電池用梱包体41の本体部50と平板部60との間に電池2を挟み込んだ状態で、該本体部50の切り欠き部52と平板部60の切り欠き部61(平板切り欠き部)とによって形成される凹部42内には、断面略矩形状の柱状部材70が配置される。すなわち、凹部42内に、電池用梱包体41に対してその厚み方向に延びるように柱状部材70が配置される。これにより、電池2が電池用梱包体41に対して移動するのを抑制することができる。
【0062】
柱状部材70は、例えば、ダンボールを中空の断面略矩形状に変形させることによって形成される。また、柱状部材70は、厚み方向に並べられた複数の電池用梱包体41の凹部42内に配置可能な所定の長さに形成されている。したがって、複数の電池2をそれぞれ電池用梱包体41で梱包して、それらを厚み方向に並べた状態で柱状部材70によって繋げることができる。なお、柱状部材70は、ダンボールを断面矩形状に変形させたものに限らず、他の材質であってもよいし、中実の断面矩形状に形成したものであってもよい。
【0063】
(実施形態2の効果)
本実施形態では、電池用梱包体41の本体部50及び平板部60に、両者間に電池2が挟み込まれた状態で該電池2の正極外部端子37と負極外部端子38との間に位置するように、それぞれ切り欠き部52,61を形成した。そして、これらの切り欠き部52,61によって構成される凹部42内に柱状部材70を配置した。これにより、電池用梱包体41に対して電池2が正極外部端子37及び負極外部端子38側に移動するのを防止することができる。したがって、電池2の搬送時に電池用梱包体1に衝撃が加わった場合でも、電池2の正極外部端子37及び負極外部端子38が損傷を受けるのをより確実に防止できる。
【0064】
(その他の実施形態)
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0065】
前記各実施形態では、電池用梱包体1,41は本体部10,50と平板部20,60とを備えている。しかしながら、本体部10,50のみによって梱包体を構成してもよい。この場合には、電池2を本体部10,50のみからなる梱包体によって挟み込むのが好ましい。また、本体部10,50と平板部20,60とを別部材によって構成してもよい。
【0066】
前記各実施形態では、電池用梱包体1,41に、保持部21や切り欠き部52,61を形成している。しかしながら、保持部や切り欠き部を設けずに、開口部11,51のみを設けてもよい。特に、電池2の重量が軽い場合には、開口部11,51の周縁部分に電池2の膨出部2aを係合させるだけで、該電池2の移動を防止することができる。
【0067】
前記各実施形態では、電池2を主に一面側にのみ膨出部2aを有する構成としている。しかしながら、電池を両面に膨出部を有する構成としてもよい。この場合にも、前記各実施形態の構成を有する電池用梱包体1,41によって電池を梱包することにより、電池の搬送時に電池用梱包体1,41に衝撃が加わっても該電池が損傷を受けるのを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明による電池用梱包体は、平板状の電池の搬送時等に該電池を梱包するための梱包体として利用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1、41 電池用梱包体
2 電池
2a 膨出部
2b シール部
2c 斜面
10、50 本体部
11、51 開口部
20、60 平板部
20a 載置面
21 保持部
31 積層体
36 ラミネートフィルム外装体
37 正極外部端子(外部端子)
38 負極外部端子(外部端子)
42 凹部
52 切り欠き部
61 切り欠き部(平板切り欠き部)
70 柱状部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に膨出した膨出部を有する平板状の電池を該膨出部側から覆う平板状の本体部を有し、
前記本体部には、前記電池の膨出部が内方に位置付けられるような開口部が形成されている、電池用梱包体。
【請求項2】
請求項1に記載の電池用梱包体において、
前記電池の外周縁部に係合可能に構成されていて、且つ、該電池を前記本体部に対して保持する保持部をさらに有する、電池用梱包体。
【請求項3】
請求項2に記載の電池用梱包体において、
前記電池を前記本体部との間で挟み込む平板部をさらに有し、
前記保持部は、前記本体部及び前記平板部の少なくとも一方に設けられている、電池用梱包体。
【請求項4】
請求項2または3に記載の電池用梱包体において、
前記電池は、互いに離間した位置から電池外方へ同じ方向に向かって延びる複数の外部端子を有し、
前記保持部は、前記電池を前記複数の外部端子同士の間の位置で保持するように設けられている、電池用梱包体。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一つに記載の電池用梱包体において、
前記本体部には、外周側から前記開口部に向かって延びる切り欠き部が形成されていて、
前記切り欠き部に係合する柱状部材をさらに有する、電池用梱包体。
【請求項6】
請求項5に記載の電池用梱包体において、
前記電池は、互いに離間した位置から電池外方へ同じ方向に向かって延びる複数の外部端子を有し、
前記切り欠き部は、前記本体部における前記複数の外部端子同士の間に対応する位置に形成されている、電池用梱包体。
【請求項7】
請求項5または6に記載の電池用梱包体において、
前記電池を前記本体部との間で挟み込む平板部をさらに有し、
前記平板部にも、前記電池を前記本体部との間で挟み込んだ状態で、前記柱状部材が係合可能な平板切り欠き部が形成されている、電池用梱包体。
【請求項8】
請求項1に記載の電池用梱包体において、
前記電池を前記本体部との間で挟み込む平板部をさらに有する、電池用梱包体。
【請求項9】
請求項8に記載の電池用梱包体において、
前記平板部は、その端部で前記本体部と接続されている、電池用梱包体。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一つに記載の電池用梱包体において、
前記本体部の厚みは、前記電池の膨出部の膨出高さよりも大きい、電池用梱包体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−246131(P2011−246131A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117661(P2010−117661)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(511084555)日立マクセルエナジー株式会社 (212)
【Fターム(参考)】