電池起電流分布測定装置及び電池起電流分布測定方法
【課題】 電池の表面全体から得られる起電力における部分起電流を正確に再現し得る電池起電流分布測定装置及び電池起電流分布測定方法を提供する。
【解決手段】 燃料電池起電流分布測定装置40は、燃料極側セパレータ3の表面に接触して散在配置される複数のプローブピン35と、1個配設される基準プローブピン35aと、複数のプローブピン35と基準プローブピン35aとの間の各電位を検出する電位分布測定部44と、燃料電池10の起電力を取り出すべく、プローブピン35、基準プローブピン35a及び電位分布測定部44とは異なるルートで出力された燃料極側引き出し線3b及び空気極側引き出し線6aと、電位分布測定部44による複数のプローブピン35と基準プローブピン35aとの間の各電位に基づいて燃料極側セパレータ3の表面における起電流分布を演算するパソコン42とを備える。
【解決手段】 燃料電池起電流分布測定装置40は、燃料極側セパレータ3の表面に接触して散在配置される複数のプローブピン35と、1個配設される基準プローブピン35aと、複数のプローブピン35と基準プローブピン35aとの間の各電位を検出する電位分布測定部44と、燃料電池10の起電力を取り出すべく、プローブピン35、基準プローブピン35a及び電位分布測定部44とは異なるルートで出力された燃料極側引き出し線3b及び空気極側引き出し線6aと、電位分布測定部44による複数のプローブピン35と基準プローブピン35aとの間の各電位に基づいて燃料極側セパレータ3の表面における起電流分布を演算するパソコン42とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の電極を有する例えば燃料電池の電極相当面の表面における起電流の分布を求める電池起電流分布測定装置及び電池起電流分布測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスの電気化学的反応を利用して、化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する燃料電池は、カルノー効率の制約を受けないため発電効率が高く、排出されるガスがクリーンで環境に対する影響が極めて少ないことから、近年、発電用、低公害の自動車用電源等、種々の用途が期待されている。燃料電池は、その電解質により分類することができ、例えば、リン酸型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池、固体電解質型燃料電池、固体高分子型燃料電池等が知られている。
【0003】
一般に、燃料電池は、図12に示すように、電解質101とその両側に設けられた一対の電極(燃料極102・酸化剤極103)とを有する電極−電解質構造体を発電単位として、燃料極102に水素や炭化水素等の燃料ガスを供給し、酸化剤極103に酸素や空気等の酸化剤ガスを供給して、ガスと電解質101と電極(燃料極102・酸化剤極103)との3相界面において電気化学的な反応を進行させることにより電気を取り出すものである。
【0004】
燃料電池では、電極−電解質構造体の全体で均一に電極反応が進行することが重要となる。しかし、電極−電解質構造体の場所によって電解質中の水分量や電解質の劣化の程度、また、燃料ガス中の水素濃度や空気中の酸素濃度等が異なることにより、電極−電解質構造体の全体で電極反応が均一に進行しない場合がある。つまり、電極−電解質構造体の部分毎で電極反応の程度に差が生じる場合がある。したがって、この電極−電解質構造体の部分毎における電極反応の程度を把握することにより、電解質や電極触媒等の構成部材の最適化や燃料ガスや酸化剤ガスの加湿量等の最適化を図ることが可能となり、さらに、電極−電解質構造体の劣化原因や劣化の進行具合等を知ることができる。そのため、電極−電解質構造体における電極反応の分布を調査する必要がある。
【0005】
ここで、従来の電極−電解質構造体における電極反応の分布を調査する方法は、2種類に大別される。第1の方法は、特定の試験体を使用し電流センサにより電極−電解質構造体における区画された特定領域の起電力を測定するものであり、第2の方法は、電極−電解質構造体の表面に表面ピンを接触又は非接触とした状態で、電流センサにより電極−電解質構造体の発電状態を測定するものである。
【0006】
第1の方法には、例えば特許文献1に開示されたものがあり、この特許文献1に記載された電極反応分布測定システム及び電極反応分布測定方法では、一方の電極側を所定の領域に区分けし、その所定の領域毎の反応電流を測定する方法が示されている。
【0007】
詳細には、図13に示すように、燃料電池200における電極−電解質構造体210は、電解質201と、その両側に設けられた一対の電極202・203と、さらにその両側に設けられた集電体204・205とからなっている。
【0008】
そして、一方の集電体204は、絶縁体からなる仕切り206によって格子状の領域に区分けされており、この区分けされた各集電体204は、半田付け211によりリード線212に接続され、電流測定装置240に接続されている。また、図13に示す他方の集電体205は銅板231を介して上記電流測定装置240に接続されている。
【0009】
上記電圧測定装置240は、電極−電解質構造体210の全電流又は端子間電圧を制御する1つの負荷装置241と、抵抗装置242と、該電極−電解質構造体210の複数の部分領域の各々における反応電流を測定する電流測定装置243とを含む構成となっている。
【0010】
一方、第2の方法は、例えば、図14に示すように、燃料電池300の表面に複数の検出ピン301を接触した状態で、電流センサ310により燃料電池300の起電力の分布を測定するものである。
【0011】
すなわち、電流センサ310は、各検出ピン301に直列に接続された電流計311を有しており、各電流計311の出力は束ねられて1本の取出線302を通して出力される。したがって、燃料電池300の全体の起電力Vは、上記取出線302と燃料電池300の下端からの取出線303との電位差として取り出される。また、各電流計311の値を測定することにより、燃料電池300の平面の起電力分布を測定することができる。
【特許文献1】特開2003−77515号公報(2003年3月14日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来の特許文献1に示す第1の方法では、仕切り206によって、集電体204を区分けしており、実際の燃料電池200の構造とは異なるので、燃料電池200の電極202全体から得られる起電力の内の部分起電力を正確に再現していない。したがって、この測定方法では、実際の燃料電池200の起電力の分布を測定することができないという問題点を有している。
【0013】
また、上記従来の図14に示す第2の方法では、燃料電池300の表面に複数の検出ピン301を接触させているので、接触抵抗の不確定性による測定誤差を含むという問題点を有している。すなわち、検出ピン301毎に接触力、接触面積、及び表面状態等が異なるので、必然的に検出ピン301毎に接触抵抗が異なる。
【0014】
また、検出ピン301と電流センサ310とからなる測定回路が電池発電回路に含まれているので、検出ピン301と電流センサ310とのインピーダンスが、発電特性に影響がでるという問題点を有している。すなわち、検出ピン301及び電流センサ310が電池発電回路に直列に接続されているので、発電による起電力が検出ピン301及び電流センサ310のインピーダンスによる電圧低減を受ける。そして、この検出ピン301及び電流センサ310のインピーダンスは、検出ピン301及び電流センサ310毎に異なるので、真のその点の起電力を測定することができないことになる。
【0015】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、電池の表面全体から得られる起電力における部分起電流を正確に再現し得る電池起電流分布測定装置及び電池起電流分布測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の電池起電流分布測定装置は、上記課題を解決するために、一対の電極を有する電池の電極相当面の表面における起電流の分布を求める電池起電流分布測定装置において、上記一対の電極のうちの一方の電極における電極相当面の表面に接触して散在配置される複数の各点電位検知ピンと、上記一方の電極における電極相当面の表面に接触して1個配設される基準電位検知ピンと、上記複数の各点電位検知ピンと基準電位検知ピンとの間の各電位を検出する電位検出手段と、上記電池の起電力を取り出すべく、上記各点電位検知ピン、基準電位取り出し手段及び電位検出手段とは異なるルートで出力された起電力取り出し配線と、上記電位検出手段による複数の各点電位検知ピンと基準電位検知ピンとの間の各電位に基づいて、上記電池の電極相当面の表面における起電流分布を演算する起電流分布演算手段とが設けられていることを特徴としている。
【0017】
また、本発明の電池起電流分布測定方法は、上記課題を解決するために、一対の電極を有する電池の電極相当面の表面における起電流の分布を求める電池起電流分布測定方法において、上記一対の電極のうちの一方の電極における電極相当面の表面に複数の各点電位検知ピンを接触して散在配置させる各点電位検知ピン配置工程と、上記各点電位検知ピンとは別に上記電極相当面の表面に1個の基準電位検知ピンを配設する基準電位検知ピン配設工程と、上記複数の各点電位検知ピンと基準電位検知ピンとの間の各電位を検出するピン間電位検出工程と、上記各点電位検知ピン、基準電位検知ピン及び電位検出手段とは異なるルートで上記電池の起電力を取り出す起電力取り出し工程と、上記複数の各点電位検知ピンと基準電位検知ピンとの間の各電位に基づいて、上記電池の電極相当面の表面における起電流分布を演算する起電流分布演算工程とを含むことを特徴としている。
【0018】
上記の発明によれば、電池の起電力は、各点電位検知ピン、基準電位検知ピン及び電位検出手段とは異なるルートで取り出される。したがって、起電流分布を求めるに際して、各点電位検知ピン、基準電位検知ピン及び電位検出手段におけるインピーダンスが電池の起電力の取り出しに影響することがなく、電池の起電力の出力を減じることはない。
【0019】
また、電位検出手段は、複数の各点電位検知ピンと基準電位検知ピンとの間の各電位を検出する。したがって、各点の電位を基準電位検知ピンを基準にして測定するので、各点電位検知ピン毎の接触抵抗の影響が無視できる。すなわち、電位測定によれば、測定部の入力インピーダンスは高いが(通常、メガオーム以上)、接触抵抗(インピーダンスの一部である)は低い(ミリオームレベル)ためである。
【0020】
この結果、電池の表面全体から得られる起電力における部分起電流を正確に再現し得る電池起電流分布測定装置及び電池起電流分布測定方法を提供することができる。
【0021】
また、本発明の電池起電流分布測定装置では、前記起電流分布演算手段は、前記電位検出手段による複数の各点電位検知ピンと基準電位検知ピンとの間の各電位と、上記電極相当面の表面における各点電位検知ピンの接触位置の間の各抵抗とにより上記電池の電極相当面の表面における起電流分布を演算することが好ましい。
【0022】
これにより、起電流分布演算手段は、具体的に、電池の電極相当面の表面における起電流分布を演算することができる。
【0023】
また、本発明の電池起電流分布測定装置では、前記電極相当面の表面における各点電位検知ピンは、マトリクス状に等間隔で配されていることが好ましい。
【0024】
これにより、各点電位検知ピンがマトリクス状に等間隔に配されるので、各点電位検知ピンの間の距離が等しくなり、抵抗が等しくなり、演算が容易となる。
【0025】
また、本発明の電池起電流分布測定装置では、前記電位検出手段は、前記電極相当面に設けられた各点電位検知ピン及び基準電位検知ピンにより、電極相当面に流す電流から電極表面で発生する電流場を検出する。
【0026】
これにより、各点電位検知ピン及び基準電位検知ピンを電極相当面に設けることより、電極相当面に流す電流から電極表面で発生する電流場を検出することによって、電位を容易に検出することができる。
【0027】
また、本発明の電池起電流分布測定装置では、前記電池は燃料電池であり、かつ前記電極相当面は一方の電極におけるセパレータであることが好ましい。
【0028】
これにより、燃料電池の電極全体から得られる起電力における部分起電流を正確に再現し得る燃料電池起電流分布測定装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の電池起電流分布測定装置は、以上のように、一対の電極を有する電池の電極相当面の表面における起電流の分布を求める電池起電流分布測定装置において、上記一対の電極のうちの一方の電極における電極相当面の表面に接触して散在配置される複数の各点電位検知ピンと、上記一方の電極における電極相当面の表面に接触して1個配設される基準電位検知ピンと、上記複数の各点電位検知ピンと基準電位検知ピンとの間の各電位を検出する電位検出手段と、上記電池の起電力を取り出すべく、上記各点電位検知ピン、基準電位取り出し手段及び電位検出手段とは異なるルートで出力された起電力取り出し配線と、上記電位検出手段による複数の各点電位検知ピンと基準電位検知ピンとの間の各電位に基づいて、上記電池の電極相当面の表面における起電流分布を演算する起電流分布演算手段とが設けられているものである。
【0030】
また、本発明の電池起電流分布測定方法は、以上のように、一対の電極のうちの一方の電極における電極相当面の表面に複数の各点電位検知ピンを接触して散在配置させる各点電位検知ピン配置工程と、上記各点電位検知ピンとは別に上記電極相当面の表面に1個の基準電位検知ピンを配設する基準電位検知ピン配設工程と、上記複数の各点電位検知ピンと基準電位検知ピンとの間の各電位を検出するピン間電位検出工程と、上記各点電位検知ピン、基準電位検知ピン及び電位検出手段とは異なるルートで上記電池の起電力を取り出す起電力取り出し工程と、上記複数の各点電位検知ピンと基準電位検知ピンとの間の各電位に基づいて、上記電池の電極相当面の表面における起電流分布を演算する起電流分布演算工程とを含む方法である。
【0031】
それゆえ、電池の起電力は、各点電位検知ピン、基準電位検知ピン及び電位検出手段とは異なるルートで取り出されるので、起電流分布を求めるに際して、各点電位検知ピン、基準電位検知ピン及び電位検出手段におけるインピーダンスが電池の起電力の取り出しに影響することがなく、電池の起電力の出力を減じることはない。
【0032】
また、各点の電位を、基準電位検知ピンを基準にして測定するので、測定部の入力インピーダンスに比べて各点電位検知ピン毎の接触抵抗の影響が無視できる。
【0033】
この結果、電池の表面全体から得られる起電力における部分起電流を正確に再現し得る電池起電流分布測定装置及び電池起電流分布測定方法を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の一実施形態について図1ないし図5に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施の形態の電池起電流分布測定装置及び電池起電流分布測定方法は、例えば水素型燃料電池の電極面における起電力分布測定について説明しているが、必ずしもこれに限らず、直接メタノール型電池(DMFC)その他の燃料電池、又は他の電池に適用できる。
【0035】
本実施の形態の電池起電流分布測定装置としての燃料電池起電流分布測定装置40にて表面の起電力分布が測定される電池としての燃料電池10は、図2に示すように、イオン導電体となる電解質1と、一対の電極としての燃料極2と、電極相当面としての燃料極側セパレータ3と、一対の電極としての空気極4と、空気極側セパレータ5と、集電板6とを有している。
【0036】
上記燃料極2は、詳細には、図3(a)(b)に示すように、例えば炭素(C)電極2aと、白金(Pt)からなる触媒2bとからなっている。なお、空気極4も同様の構成を有している。
【0037】
上記燃料極側セパレータ3及び空気極側セパレータ5は、図3(a)に示すように、カーボンからなり、縦縞溝及び横縞溝をそれぞれ有している。燃料極側セパレータ3の縦縞溝の内部には、例えば、水素(H2)ガス等の燃料ガスが供給されるようになっている一方、空気極側セパレータ5の横縞溝の内部には、例えば、酸素(O2)又は空気等の酸化剤ガスが供給されるようになっている。
【0038】
また、図2に示すように、上記空気極側セパレータ5の外側表面には、この空気極側セパレータ5に接触する銅(Cu)からなる集電板6が設けられており、この集電板6が空気極4の外部取り出し用電極となっている。
【0039】
上記燃料電池10は、下側締め付けプレート21にシリコンシート22及びラバーヒータ23を介して載置されている。上記下側締め付けプレート21の内部には、上記酸素(O2)又は空気等の酸化剤ガスを供給する空気供給路24が形成されている。
【0040】
一方、燃料極側セパレータ3の上側には上側締め付けプレート26が設けられており、この上側締め付けプレート26の内部には、上記水素(H2)ガス等の燃料ガスを供給する燃料ガス供給路28が形成されている。
【0041】
また、上側締め付けプレート26の内部には、複数の貫通孔26aが穿設されている。各貫通孔26aには、各点電位検知ピンとしてのプローブピン(Probe)35が貫通されていると共に、プローブピン35は燃料極側セパレータ3に接触されている。本実施の形態では、燃料極側セパレータ3には、従来のような仕切り等による区切りを設けていない。その結果、上記プローブピン35は、燃料極側セパレータ3の外側表面において区画されないで接触されることになる。
【0042】
また、本実施の形態では、上記プローブピン35は、図示しないバネによって、このプローブピン35が上記燃料極側セパレータ3に当接するときには、該燃料極側セパレータ3に対して押圧状態に当接できるようになっている。
【0043】
なお、例えば6mmピッチで燃料極側セパレータ3にプローブピン35を当接させれば、燃料極側セパレータ3を絶縁物で区画しなくても、十分に隣接領域との間に電流の違いが見出せることを実験により検証できたことにより、燃料極側セパレータ3を絶縁物で区画しないものとなっている。
【0044】
次に、本実施の形態の電位分布測定部44について、図1に基づいて詳細に説明する。
【0045】
本実施の形態の電位分布測定部44は、図1に示すように、燃料極側セパレータ3の表面に接触する各プローブピン35に接続されたリード線36が各増幅器44aに接続されてなっている。また、本実施の形態では、上記燃料極側セパレータ3の表面の端部に当接する基準プローブピン35aが設けられており、上記各プローブピン35と基準プローブピン35aとの間の電位Vn,mを測定するものとなっている。
【0046】
さらに、本実施の形態では、燃料極側セパレータ3に接続された電流引出部3aが設けられている。したがって、燃料電池10にて発生した起電力は、燃料極側セパレータ3側の集電板として機能する電流引出部3aからの燃料極側引き出し線3bと、空気極側セパレータ5側の集電板6を介する空気極側引き出し線6aとから取り出される。
【0047】
したがって、本実施の形態では、燃料電池10にて発生した起電力が、表面電位測定のための増幅器44a及び図示しない電圧計を有する電位分布測定部44を介さずに直接取り出される。つまり、プローブピン35と電位分布測定部44とからなる測定回路が電池発電回路に含まれないので、プローブピン35及び電位分布測定部44に関するインピーダンスは、発電特性に影響しないものとなっている。
【0048】
ここで、上記構成の電位分布測定部44による燃料電池10の表面電位の測定原理について説明する。
【0049】
まず、本実施の形態では、各プローブピン35は、燃料極側セパレータ3の平面においてマトリクスを形成するようにして燃料極側セパレータ3の表面に接触している。そして、燃料極側セパレータ3の上記プローブピン35が接触する表面各点と基準プローブピン35aが接触する燃料極側セパレータ3の表面の端部との間の電位をそれぞれ求める。そして、上記プローブピン35と基準プローブピン35aとの間の電位を求めることにより、燃料極側セパレータ3の上記プローブピン35が接触する表面各点の電位を演算により求めることができる。なお、このような測定を行うことにより、各プローブピン35における接触抵抗の影響が無視できる。その理由は、電位測定によれば、電位分布測定部44の入力インピーダンスは高いが(通常、メガオーム以上)、接触抵抗(インピーダンスの一部である)は低い(ミリオームレベル)ためである。
【0050】
上記プローブピン35と基準プローブピン35aとの間の電位を求めた後の演算の方法は、以下の式に基づく。すなわち、各点の電位とその点の電流密度との関係は、測定電位をφ、測定長さをl、比抵抗をρ、及び電流密度をjとすると、
δφ/δl=ρ・j ………式(1)
にて表される。
【0051】
具体例を用いて説明する。例えば、図4に示すように、今、マトリクス状に配された各点P1〜P5のプローブピン35と基準プローブピン35aとの間の電位をV1〜V5とする。このとき、点P1とP5との間の電流密度jX1、点P2とP5との間の電流密度jY1、点P5とP3との間の電流密度jX2、点P5とP4との間の電流密度jY2は、それぞれ、式(1)により、
(V1−V5)/d=ρ・jX1
(V2−V5)/d=ρ・jY1
(V5−V3)/d=ρ・jX2
(V5−V4)/d=ρ・jY2
と表される。なお、上記比抵抗ρは、燃料極側セパレータ3の各点P1〜P5の間の比抵抗を示すものであり、各点P1〜P5の間の測定長さlである距離dが均一であれば、予め実測した定数を使用することができる。
【0052】
これにより、各点P1〜P5におけるX方向及びY方向の電流密度jX1、電流密度jX2、電流密度jY1、及び電流密度jY2が求まる。
【0053】
その結果、各点Pnにおける電流の方向は、図5に示すように、電流密度jXと電流密度jYとの間の角度をθとすると、
tan θ=jY/jX
で表される。また、各点Pnにおける電流の大きさは、
((jX)2+(jY)2)0.5
で表される。
【0054】
一方、燃料電池10の点P5における起電流の大きさは、点P5におけるZ方向(高さ方向)の電流密度jZ、として示され、その大きさは、
jZ=(jX2−jX1+jY2−jY1)×h/d
により求めることができる。ただし、hは燃料極側セパレータ3の厚さである。
【0055】
ところで、上記燃料極側セパレータ3における表面電位の分布の演算結果は、点P5に対する各点P1〜P5の電位を示すものである。したがって、任意の点Pnの電流も同様の演算を行なうことによって求めることができる。
【0056】
この結果、任意の点Pnに対する燃料極側セパレータ3の各点における電流分布を求めることができる。
【0057】
このように、本実施の形態の燃料電池起電流分布測定装置40及び燃料電池起電流分布測定方法では、燃料電池10の起電力は、プローブピン35、基準プローブピン35a及び電位分布測定部44とは異なるルートで取り出される。したがって、起電流分布を求めるに際して、プローブピン35、基準プローブピン35a及び電位分布測定部44におけるインピーダンスが燃料電池10の起電力の取り出しに影響することがなく、燃料電池10の起電力の出力を減じることはない。
【0058】
また、電位分布測定部44は、複数のプローブピン35と基準プローブピン35aとの間の各電位を検出する。したがって、各点の電位を基準プローブピン35aを基準にして測定するので、電位分布測定部44の入力インピーダンスに比べてプローブピン35毎の接触抵抗の影響が無視できる。
【0059】
この結果、燃料電池10の電極全体から得られる起電力における部分起電流を正確に再現し得る燃料電池起電流分布測定装置40及び電池起電流分布測定方法を提供することができる。
【0060】
また、本実施の形態では、パソコン42は、電位分布測定部44による複数のプローブピン35と基準プローブピン35aとの間の各電位と、燃料極側セパレータ3の表面におけるプローブピン35の接触又は非接触位置の間の各抵抗とにより燃料電池10の燃料極側セパレータ3の表面における起電流分布を演算する。これにより、具体的に、燃料電池10の燃料極側セパレータ3の表面における起電流分布を演算することができる。
【0061】
また、本実施の形態では、燃料極側セパレータ3の表面におけるプローブピン35は、マトリクス状に等間隔で配されていることが好ましい。
【0062】
これにより、プローブピン35がマトリクス状に等間隔に配されるので、各プローブピン35の間の距離が等しくなり、抵抗が等しくなり、演算が容易となる。
【0063】
また、本実施の形態の燃料電池起電流分布測定装置40では、電位分布測定部44は、燃料極側セパレータ3に設けられたプローブピン35及び基準プローブピン35aにより、燃料極側セパレータ3に流す電流から電極表面で発生する電流場を検出する。
【0064】
これにより、プローブピン35及び基準プローブピン35aを燃料極側セパレータ3に設けることより、燃料極側セパレータ3に流す電流から電極表面で発生する電流場を検出することによって、電位を容易に検出することができる。
【0065】
また、本実施の形態の燃料電池起電流分布測定装置40では、電池は燃料電池10であり、かつ電極相当面は一方の電極における燃料極側セパレータ3である。
【0066】
これにより、燃料電池10の表面全体から得られる起電力における部分起電流を正確に再現し得る燃料電池起電流分布測定装置40を提供することができる。
【実施例】
【0067】
上記の燃料電池起電流分布測定装置40にて、燃料電池10の表面起電流の分布が測定できることを確認すべく、2種類の実験装置を用いて実験を行なったので、以下に示す。
〔実施例1〕
図6(a)(b)に示すように、燃料極側セパレータ3を想定したカーボン板51の表面に金メッキ層52を施した試験板53の下側に定電流ピン54を格子状に9点当接させると共に、試験板53の上側ではその定電流ピン54における平面上の位置と同じ位置に検出ピン55を接触させたものを第1の実験装置50とした。
【0068】
上記定電流ピン54には、図6(b)に示すように、燃料電池10の起電力の分布を想定して、マルチチャネル定電流源56から一定電流が与えられるようにしていると共に、各定電流ピン54にはスイッチSWをそれぞれ設けて、各定電流ピン54への一定電流の供給をオンオフ制御できるようにしている。一定電流としては、例えば100mAであり、各定電流ピン54にこの例えば100mAを供給できるようにした。
【0069】
一方、検出ピン55の出力は、増幅/AD変換器57を介してパーソナルコンピュータ58に伝送し、パーソナルコンピュータ58にて演算をして、燃料電池10の起電力の分布を表示できるようにした。
【0070】
その結果、図7(a)〜(j)に示す表面電流の電流方向及び大きさの分布図を得ることができた。すなわち、この分布図は、実施の形態における図7に示す電流密度jXと電流密度jYとの間の角度をθとして求めた各点における表面電流の電流方向を矢印で示し、かつ電流の大きさをブロックの高さにて示したものからなっている。
【0071】
ここで、図7(a)は全ての定電流ピン54へ一定電流を供給した場合の試験板53の表面電流の電流方向及び電流の大きさの分布図である。なお、図7(a)〜(j)に示す範囲は、図6に示す結果表示ゾーン及び通電ゾーンに対応している。また、図7(b)〜(d)は、図6に示す試験板53の平面の座標(2,B)、座標(2,D)、座標(2,F)の定電流ピン54へのスイッチSWをオフした場合の試験板53の表面電流の電流方向及び電流の大きさの分布図である。同様に、図7(e)〜(g)は、図6に示す試験板53の平面の座標(4,B)、座標(4,D)、座標(4,F)の定電流ピン54へのスイッチSWをオフした場合の試験板53の表面電流の電流方向及び電流の大きさの分布図であり、図7(h)〜(j)は、図6に示す試験板53の平面の座標(6,B)、座標(6,D)、座標(6,F)の定電流ピン54へのスイッチSWをオフした場合の試験板53の表面電流の電流方向及び電流の大きさの分布図である。
【0072】
本実施例1では、図6に示すように、試験板53の表面の電流取り出し端子53aを、同図において右上としている。このため、図7(a)〜(j)に示す表面電流の電流方向及び電流の大きさの分布図においては矢印にて示すように、全て右上に向かって電流が流れると共に、その大きさが立体的な棒グラフにて示すように全て右上の座標が最も大きい値となっていることが分かる。
【0073】
一方、起電流値分布図は、図8(a)〜(j)にて示される。この起電流値分布図は、実施の形態における
jZ=(jX2−jX1+jY2−jY1)×h/d
により求めたものである。
【0074】
ここで、図8(a)は全ての定電流ピン54へ一定電流を供給した場合の試験板53の表面の起電流値分布図である。なお、図8(a)〜(j)に示す範囲は、図6に示す結果表示ゾーン及び通電ゾーンに対応している。また、図8(b)〜(d)は、図6に示す試験板53の平面の座標(2,B)、座標(2,D)、座標(2,F)の定電流ピン54へのスイッチSWをオフした場合の試験板53の表面の起電流値分布図である。同様に、図8(e)〜(g)は、図6に示す試験板53の平面の座標(4,B)、座標(4,D)、座標(4,F)の定電流ピン54へのスイッチSWをオフした場合の試験板53の表面の起電流値分布図であり、図8(h)〜(j)は、図6に示す試験板53の平面の座標(6,B)、座標(6,D)、座標(6,F)の定電流ピン54へのスイッチSWをオフした場合の試験板53の表面の起電流値分布図である。
【0075】
図8(a)〜(j)に示すように、図8(a)において全ての定電流ピン54へ一定電流を供給した場合の試験板53の表面の起電流値分布図に対して、図8(b)〜(j)では、試験板53の表面において、定電流がオフされた各座標を反映した起電流値分布図となっていることがわかる。
〔実施例2〕
次に、図9(a)(b)に示すように、上記第1の実験装置50において、定電流ピン54の位置を検出ピン55における平面上の位置とを異ならせて定電流ピン64とした第2の実験装置60を用いて、同様にして、図10(a)〜(j)に示す表面電流の電流方向及び大きさの分布図を得ることができた。
【0076】
この分布図は、実施の形態における図5に示す電流密度jXと電流密度jYとの間の角度をθとして求めた各点における表面電流の電流方向を矢印で示し、かつ電流の大きさをブロックの高さにて示したものからなっている。
【0077】
なお、図10(a)〜(j)に示す範囲は、図9に示す結果表示ゾーンに対応している。また、図10(b)〜(d)は、図9に示す試験板53の平面の座標(1,A)、座標(1,C)、座標(1,E)の定電流ピン64へのスイッチSWをオフした場合の試験板53の表面電流の電流方向及び大きさの分布図である。同様に、図10(e)〜(g)は、図9に示す試験板53の平面の座標(3,A)、座標(3,C)、座標(3,E)の定電流ピン64へのスイッチSWをオフした場合の試験板53の表面電流の電流方向及び大きさの分布図であり、図10(h)〜(j)は、図9に示す試験板53の平面の座標(5,A)、座標(5,C)、座標(5,E)の定電流ピン64へのスイッチSWをオフした場合の試験板53の表面電流の電流方向及び大きさの分布図である。
【0078】
本実施例2では、図9に示すように、試験板53の表面の電流取り出し端子53aを、同図において右上としている。このため、図10(a)〜(j)に示す表面電流の電流方向及び電流の大きさの分布図においては矢印にて示すように、全て右上に向かって電流が流れると共に、その大きさが立体的な棒グラフにて示すように全て右上の座標が最も大きい値となっていることが分かる。
【0079】
一方、起電流値分布図は、図11(a)〜(j)にて示される。この起電流値分布図は、実施の形態における
jZ=(jX2−jX1+jY2−jY1)×h/d
により求めたものである。
【0080】
図11(a)〜(j)に示すように、図11(a)において全ての定電流ピン64へ一定電流を供給した場合の試験板53の起電流値分布図に対して、図11(b)〜(j)では、試験板53の表面において、定電流がオフされた各座標を反映した起電流値分布図となっていることがわかる。
【0081】
また、実施例1及び実施例2のいずれにおいても、問題なく試験板53の表面電流の電流方向及び大きさの分布図並びに起電流値分布図を得ることができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、一対の電極を有する例えば燃料電池の電極相当面の表面における起電流の分布を求める電池起電流分布測定装置及び電池起電流分布測定方法に関する。したがって、例えば、水素型燃料電池、直接メタノール型電池(DMFC)若しくはその他の燃料電池のセパレータにおける起電流分布測定に適用できる。また、その他の例えば光電池等の広い電極を有する電池の電極相当面の起電流分布測定に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明における電池起電流分布測定装置及び電池起電流分布測定方法の実施の一形態を示す要部斜視図である。
【図2】上記電池起電流分布測定装置における燃料電池の支持状態を示す断面図である。
【図3】(a)は上記燃料電池の構成を示す分解斜視図であり、(b)は上記燃料電池の燃料極の構成を詳細に示す要部斜視図である。
【図4】上記電池起電流分布測定装置の演算方法を示す説明図である。
【図5】上記電池起電流分布測定装置の演算方法を示すものであり、電流密度jXと電流密度jYとが判明したときの各点Pnにおける電流の方向を求めるための模式図である。
【図6】(a)は上記電池起電流分布測定装置の第1の実験装置の構成を示す断面図であり、(b)は上記第1の実験装置の構成を示すブロック図である。
【図7】(a)〜(j)は上記第1の実験装置にて得られる試験板の表面各所における起電流の方向及び大きさを示す分布図である。
【図8】(a)〜(j)は上記第1の実験装置にて得られる試験板の表面各所における起電流値を示す分布図である。
【図9】(a)は上記電池起電流分布測定装置の第2の実験装置の構成を示す断面図であり、(b)は上記第2の実験装置の構成を示すブロック図である。
【図10】(a)〜(j)は上記第2の実験装置にて得られる試験板の表面各所における起電流の方向及び大きさを示す分布図である。
【図11】(a)〜(j)は上記第2の実験装置にて得られる試験板の表面各所における起電流値を示す分布図である。
【図12】燃料電池の基本構成を示す模式図である。
【図13】従来の電池起電流分布測定装置を示す断面図である。
【図14】従来の他の燃料電池起電流分布測定装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0084】
1 電解質
2 燃料極(電極)
3 燃料極側セパレータ(電極相当面)
3a 電流引出部
3b 燃料極側引き出し線(起電力取り出し配線)
4 空気極(電極)
5 空気極側セパレータ
6 集電板
6a 空気極側引き出し線(起電力取り出し配線)
10 燃料電池(電池)
35 プローブピン(各点電位検知ピン)
35a 基準プローブピン(基準電位取り出し手段、基準電位検知ピン)
40 燃料電池起電流分布測定装置
42 パソコン(起電流分布演算手段)
44 電位分布測定部(電位検出手段)
45 温度計
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の電極を有する例えば燃料電池の電極相当面の表面における起電流の分布を求める電池起電流分布測定装置及び電池起電流分布測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスの電気化学的反応を利用して、化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する燃料電池は、カルノー効率の制約を受けないため発電効率が高く、排出されるガスがクリーンで環境に対する影響が極めて少ないことから、近年、発電用、低公害の自動車用電源等、種々の用途が期待されている。燃料電池は、その電解質により分類することができ、例えば、リン酸型燃料電池、溶融炭酸塩型燃料電池、固体電解質型燃料電池、固体高分子型燃料電池等が知られている。
【0003】
一般に、燃料電池は、図12に示すように、電解質101とその両側に設けられた一対の電極(燃料極102・酸化剤極103)とを有する電極−電解質構造体を発電単位として、燃料極102に水素や炭化水素等の燃料ガスを供給し、酸化剤極103に酸素や空気等の酸化剤ガスを供給して、ガスと電解質101と電極(燃料極102・酸化剤極103)との3相界面において電気化学的な反応を進行させることにより電気を取り出すものである。
【0004】
燃料電池では、電極−電解質構造体の全体で均一に電極反応が進行することが重要となる。しかし、電極−電解質構造体の場所によって電解質中の水分量や電解質の劣化の程度、また、燃料ガス中の水素濃度や空気中の酸素濃度等が異なることにより、電極−電解質構造体の全体で電極反応が均一に進行しない場合がある。つまり、電極−電解質構造体の部分毎で電極反応の程度に差が生じる場合がある。したがって、この電極−電解質構造体の部分毎における電極反応の程度を把握することにより、電解質や電極触媒等の構成部材の最適化や燃料ガスや酸化剤ガスの加湿量等の最適化を図ることが可能となり、さらに、電極−電解質構造体の劣化原因や劣化の進行具合等を知ることができる。そのため、電極−電解質構造体における電極反応の分布を調査する必要がある。
【0005】
ここで、従来の電極−電解質構造体における電極反応の分布を調査する方法は、2種類に大別される。第1の方法は、特定の試験体を使用し電流センサにより電極−電解質構造体における区画された特定領域の起電力を測定するものであり、第2の方法は、電極−電解質構造体の表面に表面ピンを接触又は非接触とした状態で、電流センサにより電極−電解質構造体の発電状態を測定するものである。
【0006】
第1の方法には、例えば特許文献1に開示されたものがあり、この特許文献1に記載された電極反応分布測定システム及び電極反応分布測定方法では、一方の電極側を所定の領域に区分けし、その所定の領域毎の反応電流を測定する方法が示されている。
【0007】
詳細には、図13に示すように、燃料電池200における電極−電解質構造体210は、電解質201と、その両側に設けられた一対の電極202・203と、さらにその両側に設けられた集電体204・205とからなっている。
【0008】
そして、一方の集電体204は、絶縁体からなる仕切り206によって格子状の領域に区分けされており、この区分けされた各集電体204は、半田付け211によりリード線212に接続され、電流測定装置240に接続されている。また、図13に示す他方の集電体205は銅板231を介して上記電流測定装置240に接続されている。
【0009】
上記電圧測定装置240は、電極−電解質構造体210の全電流又は端子間電圧を制御する1つの負荷装置241と、抵抗装置242と、該電極−電解質構造体210の複数の部分領域の各々における反応電流を測定する電流測定装置243とを含む構成となっている。
【0010】
一方、第2の方法は、例えば、図14に示すように、燃料電池300の表面に複数の検出ピン301を接触した状態で、電流センサ310により燃料電池300の起電力の分布を測定するものである。
【0011】
すなわち、電流センサ310は、各検出ピン301に直列に接続された電流計311を有しており、各電流計311の出力は束ねられて1本の取出線302を通して出力される。したがって、燃料電池300の全体の起電力Vは、上記取出線302と燃料電池300の下端からの取出線303との電位差として取り出される。また、各電流計311の値を測定することにより、燃料電池300の平面の起電力分布を測定することができる。
【特許文献1】特開2003−77515号公報(2003年3月14日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来の特許文献1に示す第1の方法では、仕切り206によって、集電体204を区分けしており、実際の燃料電池200の構造とは異なるので、燃料電池200の電極202全体から得られる起電力の内の部分起電力を正確に再現していない。したがって、この測定方法では、実際の燃料電池200の起電力の分布を測定することができないという問題点を有している。
【0013】
また、上記従来の図14に示す第2の方法では、燃料電池300の表面に複数の検出ピン301を接触させているので、接触抵抗の不確定性による測定誤差を含むという問題点を有している。すなわち、検出ピン301毎に接触力、接触面積、及び表面状態等が異なるので、必然的に検出ピン301毎に接触抵抗が異なる。
【0014】
また、検出ピン301と電流センサ310とからなる測定回路が電池発電回路に含まれているので、検出ピン301と電流センサ310とのインピーダンスが、発電特性に影響がでるという問題点を有している。すなわち、検出ピン301及び電流センサ310が電池発電回路に直列に接続されているので、発電による起電力が検出ピン301及び電流センサ310のインピーダンスによる電圧低減を受ける。そして、この検出ピン301及び電流センサ310のインピーダンスは、検出ピン301及び電流センサ310毎に異なるので、真のその点の起電力を測定することができないことになる。
【0015】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、電池の表面全体から得られる起電力における部分起電流を正確に再現し得る電池起電流分布測定装置及び電池起電流分布測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の電池起電流分布測定装置は、上記課題を解決するために、一対の電極を有する電池の電極相当面の表面における起電流の分布を求める電池起電流分布測定装置において、上記一対の電極のうちの一方の電極における電極相当面の表面に接触して散在配置される複数の各点電位検知ピンと、上記一方の電極における電極相当面の表面に接触して1個配設される基準電位検知ピンと、上記複数の各点電位検知ピンと基準電位検知ピンとの間の各電位を検出する電位検出手段と、上記電池の起電力を取り出すべく、上記各点電位検知ピン、基準電位取り出し手段及び電位検出手段とは異なるルートで出力された起電力取り出し配線と、上記電位検出手段による複数の各点電位検知ピンと基準電位検知ピンとの間の各電位に基づいて、上記電池の電極相当面の表面における起電流分布を演算する起電流分布演算手段とが設けられていることを特徴としている。
【0017】
また、本発明の電池起電流分布測定方法は、上記課題を解決するために、一対の電極を有する電池の電極相当面の表面における起電流の分布を求める電池起電流分布測定方法において、上記一対の電極のうちの一方の電極における電極相当面の表面に複数の各点電位検知ピンを接触して散在配置させる各点電位検知ピン配置工程と、上記各点電位検知ピンとは別に上記電極相当面の表面に1個の基準電位検知ピンを配設する基準電位検知ピン配設工程と、上記複数の各点電位検知ピンと基準電位検知ピンとの間の各電位を検出するピン間電位検出工程と、上記各点電位検知ピン、基準電位検知ピン及び電位検出手段とは異なるルートで上記電池の起電力を取り出す起電力取り出し工程と、上記複数の各点電位検知ピンと基準電位検知ピンとの間の各電位に基づいて、上記電池の電極相当面の表面における起電流分布を演算する起電流分布演算工程とを含むことを特徴としている。
【0018】
上記の発明によれば、電池の起電力は、各点電位検知ピン、基準電位検知ピン及び電位検出手段とは異なるルートで取り出される。したがって、起電流分布を求めるに際して、各点電位検知ピン、基準電位検知ピン及び電位検出手段におけるインピーダンスが電池の起電力の取り出しに影響することがなく、電池の起電力の出力を減じることはない。
【0019】
また、電位検出手段は、複数の各点電位検知ピンと基準電位検知ピンとの間の各電位を検出する。したがって、各点の電位を基準電位検知ピンを基準にして測定するので、各点電位検知ピン毎の接触抵抗の影響が無視できる。すなわち、電位測定によれば、測定部の入力インピーダンスは高いが(通常、メガオーム以上)、接触抵抗(インピーダンスの一部である)は低い(ミリオームレベル)ためである。
【0020】
この結果、電池の表面全体から得られる起電力における部分起電流を正確に再現し得る電池起電流分布測定装置及び電池起電流分布測定方法を提供することができる。
【0021】
また、本発明の電池起電流分布測定装置では、前記起電流分布演算手段は、前記電位検出手段による複数の各点電位検知ピンと基準電位検知ピンとの間の各電位と、上記電極相当面の表面における各点電位検知ピンの接触位置の間の各抵抗とにより上記電池の電極相当面の表面における起電流分布を演算することが好ましい。
【0022】
これにより、起電流分布演算手段は、具体的に、電池の電極相当面の表面における起電流分布を演算することができる。
【0023】
また、本発明の電池起電流分布測定装置では、前記電極相当面の表面における各点電位検知ピンは、マトリクス状に等間隔で配されていることが好ましい。
【0024】
これにより、各点電位検知ピンがマトリクス状に等間隔に配されるので、各点電位検知ピンの間の距離が等しくなり、抵抗が等しくなり、演算が容易となる。
【0025】
また、本発明の電池起電流分布測定装置では、前記電位検出手段は、前記電極相当面に設けられた各点電位検知ピン及び基準電位検知ピンにより、電極相当面に流す電流から電極表面で発生する電流場を検出する。
【0026】
これにより、各点電位検知ピン及び基準電位検知ピンを電極相当面に設けることより、電極相当面に流す電流から電極表面で発生する電流場を検出することによって、電位を容易に検出することができる。
【0027】
また、本発明の電池起電流分布測定装置では、前記電池は燃料電池であり、かつ前記電極相当面は一方の電極におけるセパレータであることが好ましい。
【0028】
これにより、燃料電池の電極全体から得られる起電力における部分起電流を正確に再現し得る燃料電池起電流分布測定装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の電池起電流分布測定装置は、以上のように、一対の電極を有する電池の電極相当面の表面における起電流の分布を求める電池起電流分布測定装置において、上記一対の電極のうちの一方の電極における電極相当面の表面に接触して散在配置される複数の各点電位検知ピンと、上記一方の電極における電極相当面の表面に接触して1個配設される基準電位検知ピンと、上記複数の各点電位検知ピンと基準電位検知ピンとの間の各電位を検出する電位検出手段と、上記電池の起電力を取り出すべく、上記各点電位検知ピン、基準電位取り出し手段及び電位検出手段とは異なるルートで出力された起電力取り出し配線と、上記電位検出手段による複数の各点電位検知ピンと基準電位検知ピンとの間の各電位に基づいて、上記電池の電極相当面の表面における起電流分布を演算する起電流分布演算手段とが設けられているものである。
【0030】
また、本発明の電池起電流分布測定方法は、以上のように、一対の電極のうちの一方の電極における電極相当面の表面に複数の各点電位検知ピンを接触して散在配置させる各点電位検知ピン配置工程と、上記各点電位検知ピンとは別に上記電極相当面の表面に1個の基準電位検知ピンを配設する基準電位検知ピン配設工程と、上記複数の各点電位検知ピンと基準電位検知ピンとの間の各電位を検出するピン間電位検出工程と、上記各点電位検知ピン、基準電位検知ピン及び電位検出手段とは異なるルートで上記電池の起電力を取り出す起電力取り出し工程と、上記複数の各点電位検知ピンと基準電位検知ピンとの間の各電位に基づいて、上記電池の電極相当面の表面における起電流分布を演算する起電流分布演算工程とを含む方法である。
【0031】
それゆえ、電池の起電力は、各点電位検知ピン、基準電位検知ピン及び電位検出手段とは異なるルートで取り出されるので、起電流分布を求めるに際して、各点電位検知ピン、基準電位検知ピン及び電位検出手段におけるインピーダンスが電池の起電力の取り出しに影響することがなく、電池の起電力の出力を減じることはない。
【0032】
また、各点の電位を、基準電位検知ピンを基準にして測定するので、測定部の入力インピーダンスに比べて各点電位検知ピン毎の接触抵抗の影響が無視できる。
【0033】
この結果、電池の表面全体から得られる起電力における部分起電流を正確に再現し得る電池起電流分布測定装置及び電池起電流分布測定方法を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本発明の一実施形態について図1ないし図5に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、本実施の形態の電池起電流分布測定装置及び電池起電流分布測定方法は、例えば水素型燃料電池の電極面における起電力分布測定について説明しているが、必ずしもこれに限らず、直接メタノール型電池(DMFC)その他の燃料電池、又は他の電池に適用できる。
【0035】
本実施の形態の電池起電流分布測定装置としての燃料電池起電流分布測定装置40にて表面の起電力分布が測定される電池としての燃料電池10は、図2に示すように、イオン導電体となる電解質1と、一対の電極としての燃料極2と、電極相当面としての燃料極側セパレータ3と、一対の電極としての空気極4と、空気極側セパレータ5と、集電板6とを有している。
【0036】
上記燃料極2は、詳細には、図3(a)(b)に示すように、例えば炭素(C)電極2aと、白金(Pt)からなる触媒2bとからなっている。なお、空気極4も同様の構成を有している。
【0037】
上記燃料極側セパレータ3及び空気極側セパレータ5は、図3(a)に示すように、カーボンからなり、縦縞溝及び横縞溝をそれぞれ有している。燃料極側セパレータ3の縦縞溝の内部には、例えば、水素(H2)ガス等の燃料ガスが供給されるようになっている一方、空気極側セパレータ5の横縞溝の内部には、例えば、酸素(O2)又は空気等の酸化剤ガスが供給されるようになっている。
【0038】
また、図2に示すように、上記空気極側セパレータ5の外側表面には、この空気極側セパレータ5に接触する銅(Cu)からなる集電板6が設けられており、この集電板6が空気極4の外部取り出し用電極となっている。
【0039】
上記燃料電池10は、下側締め付けプレート21にシリコンシート22及びラバーヒータ23を介して載置されている。上記下側締め付けプレート21の内部には、上記酸素(O2)又は空気等の酸化剤ガスを供給する空気供給路24が形成されている。
【0040】
一方、燃料極側セパレータ3の上側には上側締め付けプレート26が設けられており、この上側締め付けプレート26の内部には、上記水素(H2)ガス等の燃料ガスを供給する燃料ガス供給路28が形成されている。
【0041】
また、上側締め付けプレート26の内部には、複数の貫通孔26aが穿設されている。各貫通孔26aには、各点電位検知ピンとしてのプローブピン(Probe)35が貫通されていると共に、プローブピン35は燃料極側セパレータ3に接触されている。本実施の形態では、燃料極側セパレータ3には、従来のような仕切り等による区切りを設けていない。その結果、上記プローブピン35は、燃料極側セパレータ3の外側表面において区画されないで接触されることになる。
【0042】
また、本実施の形態では、上記プローブピン35は、図示しないバネによって、このプローブピン35が上記燃料極側セパレータ3に当接するときには、該燃料極側セパレータ3に対して押圧状態に当接できるようになっている。
【0043】
なお、例えば6mmピッチで燃料極側セパレータ3にプローブピン35を当接させれば、燃料極側セパレータ3を絶縁物で区画しなくても、十分に隣接領域との間に電流の違いが見出せることを実験により検証できたことにより、燃料極側セパレータ3を絶縁物で区画しないものとなっている。
【0044】
次に、本実施の形態の電位分布測定部44について、図1に基づいて詳細に説明する。
【0045】
本実施の形態の電位分布測定部44は、図1に示すように、燃料極側セパレータ3の表面に接触する各プローブピン35に接続されたリード線36が各増幅器44aに接続されてなっている。また、本実施の形態では、上記燃料極側セパレータ3の表面の端部に当接する基準プローブピン35aが設けられており、上記各プローブピン35と基準プローブピン35aとの間の電位Vn,mを測定するものとなっている。
【0046】
さらに、本実施の形態では、燃料極側セパレータ3に接続された電流引出部3aが設けられている。したがって、燃料電池10にて発生した起電力は、燃料極側セパレータ3側の集電板として機能する電流引出部3aからの燃料極側引き出し線3bと、空気極側セパレータ5側の集電板6を介する空気極側引き出し線6aとから取り出される。
【0047】
したがって、本実施の形態では、燃料電池10にて発生した起電力が、表面電位測定のための増幅器44a及び図示しない電圧計を有する電位分布測定部44を介さずに直接取り出される。つまり、プローブピン35と電位分布測定部44とからなる測定回路が電池発電回路に含まれないので、プローブピン35及び電位分布測定部44に関するインピーダンスは、発電特性に影響しないものとなっている。
【0048】
ここで、上記構成の電位分布測定部44による燃料電池10の表面電位の測定原理について説明する。
【0049】
まず、本実施の形態では、各プローブピン35は、燃料極側セパレータ3の平面においてマトリクスを形成するようにして燃料極側セパレータ3の表面に接触している。そして、燃料極側セパレータ3の上記プローブピン35が接触する表面各点と基準プローブピン35aが接触する燃料極側セパレータ3の表面の端部との間の電位をそれぞれ求める。そして、上記プローブピン35と基準プローブピン35aとの間の電位を求めることにより、燃料極側セパレータ3の上記プローブピン35が接触する表面各点の電位を演算により求めることができる。なお、このような測定を行うことにより、各プローブピン35における接触抵抗の影響が無視できる。その理由は、電位測定によれば、電位分布測定部44の入力インピーダンスは高いが(通常、メガオーム以上)、接触抵抗(インピーダンスの一部である)は低い(ミリオームレベル)ためである。
【0050】
上記プローブピン35と基準プローブピン35aとの間の電位を求めた後の演算の方法は、以下の式に基づく。すなわち、各点の電位とその点の電流密度との関係は、測定電位をφ、測定長さをl、比抵抗をρ、及び電流密度をjとすると、
δφ/δl=ρ・j ………式(1)
にて表される。
【0051】
具体例を用いて説明する。例えば、図4に示すように、今、マトリクス状に配された各点P1〜P5のプローブピン35と基準プローブピン35aとの間の電位をV1〜V5とする。このとき、点P1とP5との間の電流密度jX1、点P2とP5との間の電流密度jY1、点P5とP3との間の電流密度jX2、点P5とP4との間の電流密度jY2は、それぞれ、式(1)により、
(V1−V5)/d=ρ・jX1
(V2−V5)/d=ρ・jY1
(V5−V3)/d=ρ・jX2
(V5−V4)/d=ρ・jY2
と表される。なお、上記比抵抗ρは、燃料極側セパレータ3の各点P1〜P5の間の比抵抗を示すものであり、各点P1〜P5の間の測定長さlである距離dが均一であれば、予め実測した定数を使用することができる。
【0052】
これにより、各点P1〜P5におけるX方向及びY方向の電流密度jX1、電流密度jX2、電流密度jY1、及び電流密度jY2が求まる。
【0053】
その結果、各点Pnにおける電流の方向は、図5に示すように、電流密度jXと電流密度jYとの間の角度をθとすると、
tan θ=jY/jX
で表される。また、各点Pnにおける電流の大きさは、
((jX)2+(jY)2)0.5
で表される。
【0054】
一方、燃料電池10の点P5における起電流の大きさは、点P5におけるZ方向(高さ方向)の電流密度jZ、として示され、その大きさは、
jZ=(jX2−jX1+jY2−jY1)×h/d
により求めることができる。ただし、hは燃料極側セパレータ3の厚さである。
【0055】
ところで、上記燃料極側セパレータ3における表面電位の分布の演算結果は、点P5に対する各点P1〜P5の電位を示すものである。したがって、任意の点Pnの電流も同様の演算を行なうことによって求めることができる。
【0056】
この結果、任意の点Pnに対する燃料極側セパレータ3の各点における電流分布を求めることができる。
【0057】
このように、本実施の形態の燃料電池起電流分布測定装置40及び燃料電池起電流分布測定方法では、燃料電池10の起電力は、プローブピン35、基準プローブピン35a及び電位分布測定部44とは異なるルートで取り出される。したがって、起電流分布を求めるに際して、プローブピン35、基準プローブピン35a及び電位分布測定部44におけるインピーダンスが燃料電池10の起電力の取り出しに影響することがなく、燃料電池10の起電力の出力を減じることはない。
【0058】
また、電位分布測定部44は、複数のプローブピン35と基準プローブピン35aとの間の各電位を検出する。したがって、各点の電位を基準プローブピン35aを基準にして測定するので、電位分布測定部44の入力インピーダンスに比べてプローブピン35毎の接触抵抗の影響が無視できる。
【0059】
この結果、燃料電池10の電極全体から得られる起電力における部分起電流を正確に再現し得る燃料電池起電流分布測定装置40及び電池起電流分布測定方法を提供することができる。
【0060】
また、本実施の形態では、パソコン42は、電位分布測定部44による複数のプローブピン35と基準プローブピン35aとの間の各電位と、燃料極側セパレータ3の表面におけるプローブピン35の接触又は非接触位置の間の各抵抗とにより燃料電池10の燃料極側セパレータ3の表面における起電流分布を演算する。これにより、具体的に、燃料電池10の燃料極側セパレータ3の表面における起電流分布を演算することができる。
【0061】
また、本実施の形態では、燃料極側セパレータ3の表面におけるプローブピン35は、マトリクス状に等間隔で配されていることが好ましい。
【0062】
これにより、プローブピン35がマトリクス状に等間隔に配されるので、各プローブピン35の間の距離が等しくなり、抵抗が等しくなり、演算が容易となる。
【0063】
また、本実施の形態の燃料電池起電流分布測定装置40では、電位分布測定部44は、燃料極側セパレータ3に設けられたプローブピン35及び基準プローブピン35aにより、燃料極側セパレータ3に流す電流から電極表面で発生する電流場を検出する。
【0064】
これにより、プローブピン35及び基準プローブピン35aを燃料極側セパレータ3に設けることより、燃料極側セパレータ3に流す電流から電極表面で発生する電流場を検出することによって、電位を容易に検出することができる。
【0065】
また、本実施の形態の燃料電池起電流分布測定装置40では、電池は燃料電池10であり、かつ電極相当面は一方の電極における燃料極側セパレータ3である。
【0066】
これにより、燃料電池10の表面全体から得られる起電力における部分起電流を正確に再現し得る燃料電池起電流分布測定装置40を提供することができる。
【実施例】
【0067】
上記の燃料電池起電流分布測定装置40にて、燃料電池10の表面起電流の分布が測定できることを確認すべく、2種類の実験装置を用いて実験を行なったので、以下に示す。
〔実施例1〕
図6(a)(b)に示すように、燃料極側セパレータ3を想定したカーボン板51の表面に金メッキ層52を施した試験板53の下側に定電流ピン54を格子状に9点当接させると共に、試験板53の上側ではその定電流ピン54における平面上の位置と同じ位置に検出ピン55を接触させたものを第1の実験装置50とした。
【0068】
上記定電流ピン54には、図6(b)に示すように、燃料電池10の起電力の分布を想定して、マルチチャネル定電流源56から一定電流が与えられるようにしていると共に、各定電流ピン54にはスイッチSWをそれぞれ設けて、各定電流ピン54への一定電流の供給をオンオフ制御できるようにしている。一定電流としては、例えば100mAであり、各定電流ピン54にこの例えば100mAを供給できるようにした。
【0069】
一方、検出ピン55の出力は、増幅/AD変換器57を介してパーソナルコンピュータ58に伝送し、パーソナルコンピュータ58にて演算をして、燃料電池10の起電力の分布を表示できるようにした。
【0070】
その結果、図7(a)〜(j)に示す表面電流の電流方向及び大きさの分布図を得ることができた。すなわち、この分布図は、実施の形態における図7に示す電流密度jXと電流密度jYとの間の角度をθとして求めた各点における表面電流の電流方向を矢印で示し、かつ電流の大きさをブロックの高さにて示したものからなっている。
【0071】
ここで、図7(a)は全ての定電流ピン54へ一定電流を供給した場合の試験板53の表面電流の電流方向及び電流の大きさの分布図である。なお、図7(a)〜(j)に示す範囲は、図6に示す結果表示ゾーン及び通電ゾーンに対応している。また、図7(b)〜(d)は、図6に示す試験板53の平面の座標(2,B)、座標(2,D)、座標(2,F)の定電流ピン54へのスイッチSWをオフした場合の試験板53の表面電流の電流方向及び電流の大きさの分布図である。同様に、図7(e)〜(g)は、図6に示す試験板53の平面の座標(4,B)、座標(4,D)、座標(4,F)の定電流ピン54へのスイッチSWをオフした場合の試験板53の表面電流の電流方向及び電流の大きさの分布図であり、図7(h)〜(j)は、図6に示す試験板53の平面の座標(6,B)、座標(6,D)、座標(6,F)の定電流ピン54へのスイッチSWをオフした場合の試験板53の表面電流の電流方向及び電流の大きさの分布図である。
【0072】
本実施例1では、図6に示すように、試験板53の表面の電流取り出し端子53aを、同図において右上としている。このため、図7(a)〜(j)に示す表面電流の電流方向及び電流の大きさの分布図においては矢印にて示すように、全て右上に向かって電流が流れると共に、その大きさが立体的な棒グラフにて示すように全て右上の座標が最も大きい値となっていることが分かる。
【0073】
一方、起電流値分布図は、図8(a)〜(j)にて示される。この起電流値分布図は、実施の形態における
jZ=(jX2−jX1+jY2−jY1)×h/d
により求めたものである。
【0074】
ここで、図8(a)は全ての定電流ピン54へ一定電流を供給した場合の試験板53の表面の起電流値分布図である。なお、図8(a)〜(j)に示す範囲は、図6に示す結果表示ゾーン及び通電ゾーンに対応している。また、図8(b)〜(d)は、図6に示す試験板53の平面の座標(2,B)、座標(2,D)、座標(2,F)の定電流ピン54へのスイッチSWをオフした場合の試験板53の表面の起電流値分布図である。同様に、図8(e)〜(g)は、図6に示す試験板53の平面の座標(4,B)、座標(4,D)、座標(4,F)の定電流ピン54へのスイッチSWをオフした場合の試験板53の表面の起電流値分布図であり、図8(h)〜(j)は、図6に示す試験板53の平面の座標(6,B)、座標(6,D)、座標(6,F)の定電流ピン54へのスイッチSWをオフした場合の試験板53の表面の起電流値分布図である。
【0075】
図8(a)〜(j)に示すように、図8(a)において全ての定電流ピン54へ一定電流を供給した場合の試験板53の表面の起電流値分布図に対して、図8(b)〜(j)では、試験板53の表面において、定電流がオフされた各座標を反映した起電流値分布図となっていることがわかる。
〔実施例2〕
次に、図9(a)(b)に示すように、上記第1の実験装置50において、定電流ピン54の位置を検出ピン55における平面上の位置とを異ならせて定電流ピン64とした第2の実験装置60を用いて、同様にして、図10(a)〜(j)に示す表面電流の電流方向及び大きさの分布図を得ることができた。
【0076】
この分布図は、実施の形態における図5に示す電流密度jXと電流密度jYとの間の角度をθとして求めた各点における表面電流の電流方向を矢印で示し、かつ電流の大きさをブロックの高さにて示したものからなっている。
【0077】
なお、図10(a)〜(j)に示す範囲は、図9に示す結果表示ゾーンに対応している。また、図10(b)〜(d)は、図9に示す試験板53の平面の座標(1,A)、座標(1,C)、座標(1,E)の定電流ピン64へのスイッチSWをオフした場合の試験板53の表面電流の電流方向及び大きさの分布図である。同様に、図10(e)〜(g)は、図9に示す試験板53の平面の座標(3,A)、座標(3,C)、座標(3,E)の定電流ピン64へのスイッチSWをオフした場合の試験板53の表面電流の電流方向及び大きさの分布図であり、図10(h)〜(j)は、図9に示す試験板53の平面の座標(5,A)、座標(5,C)、座標(5,E)の定電流ピン64へのスイッチSWをオフした場合の試験板53の表面電流の電流方向及び大きさの分布図である。
【0078】
本実施例2では、図9に示すように、試験板53の表面の電流取り出し端子53aを、同図において右上としている。このため、図10(a)〜(j)に示す表面電流の電流方向及び電流の大きさの分布図においては矢印にて示すように、全て右上に向かって電流が流れると共に、その大きさが立体的な棒グラフにて示すように全て右上の座標が最も大きい値となっていることが分かる。
【0079】
一方、起電流値分布図は、図11(a)〜(j)にて示される。この起電流値分布図は、実施の形態における
jZ=(jX2−jX1+jY2−jY1)×h/d
により求めたものである。
【0080】
図11(a)〜(j)に示すように、図11(a)において全ての定電流ピン64へ一定電流を供給した場合の試験板53の起電流値分布図に対して、図11(b)〜(j)では、試験板53の表面において、定電流がオフされた各座標を反映した起電流値分布図となっていることがわかる。
【0081】
また、実施例1及び実施例2のいずれにおいても、問題なく試験板53の表面電流の電流方向及び大きさの分布図並びに起電流値分布図を得ることができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、一対の電極を有する例えば燃料電池の電極相当面の表面における起電流の分布を求める電池起電流分布測定装置及び電池起電流分布測定方法に関する。したがって、例えば、水素型燃料電池、直接メタノール型電池(DMFC)若しくはその他の燃料電池のセパレータにおける起電流分布測定に適用できる。また、その他の例えば光電池等の広い電極を有する電池の電極相当面の起電流分布測定に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明における電池起電流分布測定装置及び電池起電流分布測定方法の実施の一形態を示す要部斜視図である。
【図2】上記電池起電流分布測定装置における燃料電池の支持状態を示す断面図である。
【図3】(a)は上記燃料電池の構成を示す分解斜視図であり、(b)は上記燃料電池の燃料極の構成を詳細に示す要部斜視図である。
【図4】上記電池起電流分布測定装置の演算方法を示す説明図である。
【図5】上記電池起電流分布測定装置の演算方法を示すものであり、電流密度jXと電流密度jYとが判明したときの各点Pnにおける電流の方向を求めるための模式図である。
【図6】(a)は上記電池起電流分布測定装置の第1の実験装置の構成を示す断面図であり、(b)は上記第1の実験装置の構成を示すブロック図である。
【図7】(a)〜(j)は上記第1の実験装置にて得られる試験板の表面各所における起電流の方向及び大きさを示す分布図である。
【図8】(a)〜(j)は上記第1の実験装置にて得られる試験板の表面各所における起電流値を示す分布図である。
【図9】(a)は上記電池起電流分布測定装置の第2の実験装置の構成を示す断面図であり、(b)は上記第2の実験装置の構成を示すブロック図である。
【図10】(a)〜(j)は上記第2の実験装置にて得られる試験板の表面各所における起電流の方向及び大きさを示す分布図である。
【図11】(a)〜(j)は上記第2の実験装置にて得られる試験板の表面各所における起電流値を示す分布図である。
【図12】燃料電池の基本構成を示す模式図である。
【図13】従来の電池起電流分布測定装置を示す断面図である。
【図14】従来の他の燃料電池起電流分布測定装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0084】
1 電解質
2 燃料極(電極)
3 燃料極側セパレータ(電極相当面)
3a 電流引出部
3b 燃料極側引き出し線(起電力取り出し配線)
4 空気極(電極)
5 空気極側セパレータ
6 集電板
6a 空気極側引き出し線(起電力取り出し配線)
10 燃料電池(電池)
35 プローブピン(各点電位検知ピン)
35a 基準プローブピン(基準電位取り出し手段、基準電位検知ピン)
40 燃料電池起電流分布測定装置
42 パソコン(起電流分布演算手段)
44 電位分布測定部(電位検出手段)
45 温度計
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電極を有する電池の電極相当面の表面における起電流の分布を求める電池起電流分布測定装置において、
上記一対の電極のうちの一方の電極における電極相当面の表面に接触して散在配置される複数の各点電位検知ピンと、
上記一方の電極における電極相当面の表面に接触して1個配設される基準電位検知ピンと、
上記複数の各点電位検知ピンと基準電位検知ピンとの間の各電位を検出する電位検出手段と、
上記電池の起電力を取り出すべく、上記各点電位検知ピン、基準電位取り出し手段及び電位検出手段とは異なるルートで出力された起電力取り出し配線と、
上記電位検出手段による複数の各点電位検知ピンと基準電位検知ピンとの間の各電位に基づいて、上記電池の電極相当面の表面における起電流分布を演算する起電流分布演算手段とが設けられていることを特徴とする電池起電流分布測定装置。
【請求項2】
前記起電流分布演算手段は、
前記電位検出手段による複数の各点電位検知ピンと基準電位検知ピンとの間の各電位と、
上記電極相当面の表面における各点電位検知ピンの接触位置の間の各抵抗とにより上記電池の電極相当面の表面における起電流分布を演算することを特徴とする請求項1記載の電池起電流分布測定装置。
【請求項3】
前記電極相当面の表面における各点電位検知ピンは、マトリクス状に等間隔で配されていることを特徴とする請求項1又は2記載の燃料電池起電力分布測定装置。
【請求項4】
前記電位検出手段は、前記電極相当面に設けられた各点電位検知ピン及び基準電位検知ピンにより、電極相当面に流す電流から電極表面で発生する電流場を検出することによって電位を検出することを特徴とする請求項1、2又は3記載の電池起電流分布測定装置。
【請求項5】
前記電池は燃料電池であり、かつ前記電極相当面は一方の電極におけるセパレータであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電池起電流分布測定装置。
【請求項6】
一対の電極を有する電池の電極相当面の表面における起電流の分布を求める電池起電流分布測定方法において、
上記一対の電極のうちの一方の電極における電極相当面の表面に複数の各点電位検知ピンを接触して散在配置させる各点電位検知ピン配置工程と、
上記各点電位検知ピンとは別に上記電極相当面の表面に1個の基準電位検知ピンを配設する基準電位検知ピン配設工程と、
上記複数の各点電位検知ピンと基準電位検知ピンとの間の各電位を検出するピン間電位検出工程と、
上記各点電位検知ピン、基準電位検知ピン及び電位検出手段とは異なるルートで上記電池の起電力を取り出す起電力取り出し工程と、
上記複数の各点電位検知ピンと基準電位検知ピンとの間の各電位に基づいて、上記電池の電極相当面の表面における起電流分布を演算する起電流分布演算工程とを含むことを特徴とする電池起電流分布測定方法。
【請求項1】
一対の電極を有する電池の電極相当面の表面における起電流の分布を求める電池起電流分布測定装置において、
上記一対の電極のうちの一方の電極における電極相当面の表面に接触して散在配置される複数の各点電位検知ピンと、
上記一方の電極における電極相当面の表面に接触して1個配設される基準電位検知ピンと、
上記複数の各点電位検知ピンと基準電位検知ピンとの間の各電位を検出する電位検出手段と、
上記電池の起電力を取り出すべく、上記各点電位検知ピン、基準電位取り出し手段及び電位検出手段とは異なるルートで出力された起電力取り出し配線と、
上記電位検出手段による複数の各点電位検知ピンと基準電位検知ピンとの間の各電位に基づいて、上記電池の電極相当面の表面における起電流分布を演算する起電流分布演算手段とが設けられていることを特徴とする電池起電流分布測定装置。
【請求項2】
前記起電流分布演算手段は、
前記電位検出手段による複数の各点電位検知ピンと基準電位検知ピンとの間の各電位と、
上記電極相当面の表面における各点電位検知ピンの接触位置の間の各抵抗とにより上記電池の電極相当面の表面における起電流分布を演算することを特徴とする請求項1記載の電池起電流分布測定装置。
【請求項3】
前記電極相当面の表面における各点電位検知ピンは、マトリクス状に等間隔で配されていることを特徴とする請求項1又は2記載の燃料電池起電力分布測定装置。
【請求項4】
前記電位検出手段は、前記電極相当面に設けられた各点電位検知ピン及び基準電位検知ピンにより、電極相当面に流す電流から電極表面で発生する電流場を検出することによって電位を検出することを特徴とする請求項1、2又は3記載の電池起電流分布測定装置。
【請求項5】
前記電池は燃料電池であり、かつ前記電極相当面は一方の電極におけるセパレータであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電池起電流分布測定装置。
【請求項6】
一対の電極を有する電池の電極相当面の表面における起電流の分布を求める電池起電流分布測定方法において、
上記一対の電極のうちの一方の電極における電極相当面の表面に複数の各点電位検知ピンを接触して散在配置させる各点電位検知ピン配置工程と、
上記各点電位検知ピンとは別に上記電極相当面の表面に1個の基準電位検知ピンを配設する基準電位検知ピン配設工程と、
上記複数の各点電位検知ピンと基準電位検知ピンとの間の各電位を検出するピン間電位検出工程と、
上記各点電位検知ピン、基準電位検知ピン及び電位検出手段とは異なるルートで上記電池の起電力を取り出す起電力取り出し工程と、
上記複数の各点電位検知ピンと基準電位検知ピンとの間の各電位に基づいて、上記電池の電極相当面の表面における起電流分布を演算する起電流分布演算工程とを含むことを特徴とする電池起電流分布測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−27022(P2007−27022A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−210969(P2005−210969)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】
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