説明

電池

【課題】電池反応に影響を与えずに過充電時に電極体への電流の印加を遮断することができる電池を提供する。
【解決手段】本発明の一形態に係る電池は、正極及び負極を有する電極体と、電極体が収容されるケース2と、電極体に電気的に接続される外部端子3と、電流遮断機構5と、を備え、電流遮断機構5は、ケース2内に形成される密閉部51と、密閉部51に収容され、電極体に電気的に接続される発熱部53と、密閉部51に収容され、発熱部53の発熱によって気化又は気体が放出される気体発生媒体52と、外部端子3及び電極体に直列に電気的に接続され、密閉部51内の圧力が上昇すると、弁機構542が作動して外部端子3と電極体との電気的接続を断つ電流遮断部54と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池に関し、特に過充電時に電極体への電流の印加を遮断する電流遮断機構を備える電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池その他の二次電池(蓄電池)は、車両搭載用電源、或いはパソコン及び携帯端末の電源として重要性が高まっている。二次電池は、例えば電極体及び電解質を収容したケースが密閉された構成とされている。
【0003】
このような電池は、過充電時に電極体への電流の印加を良好に遮断することができる機構を備えていることが好ましい。例えば、特許文献1の電池は、電解質にガス発生添加剤を添加している。ケース内の温度が上昇すると当該ケース内にガスが放出され、ケース内の圧力が上昇する。それに伴い、電流遮断機構が作動して電極体への電流の印加を遮断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−257479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の電池は、ガス発生添加剤を電解質に添加するので、電極体等への副反応を起こして電池反応に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、このような問題を解決するためになされたものであり、電池反応に影響を与えずに過充電時に電極体への電流の印加を遮断することができる、電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る電池は、正極及び負極を有する電極体と、前記電極体が収容されるケースと、前記電極体に電気的に接続される外部端子と、電流遮断機構と、を備え、前記電流遮断機構は、前記ケース内に形成される密閉部と、前記密閉部に収容され、前記電極体に電気的に接続される発熱部と、前記密閉部に収容され、前記発熱部の発熱によって気化又は気体が放出される気体発生媒体と、前記外部端子及び前記電極体に直列に電気的に接続され、前記密閉部内の圧力が上昇すると、弁機構が作動して前記外部端子と前記電極体との電気的接続を断つ電流遮断部と、を備える。
【0008】
上記電池において、前記発熱部は、前記電極体と並列に電気的に接続され、且つ前記発熱部の一方の端子は、前記電流遮断部と前記電極体との間に電気的に接続されていること、が好ましい。
【0009】
上記電池において、前記電流遮断部は、前記電極体に直列に電気的に接続され、前記気体発生媒体の通路及び前記通路に連通する連通孔を有する接続端子と、前記外部端子が電気的に接続され、前記連通孔を開閉する弁を有する弁機構と、を備え、前記弁は、前記密閉部内の圧力が上昇する前の状態では前記連通孔を閉じて前記接続端子と電気的に接続し、前記密閉部内の圧力が上昇すると前記連通孔を開いて前記接続端子との電気的接続を断つこと、が好ましい。
【0010】
上記電池において、前記発熱部は、前記電極体の通常使用上限電圧より高電位で作動する、ツェナーダイオードを備えること、が好ましい。
【0011】
上記電池において、前記気体発生媒体は、水、二酸化炭素、水素の少なくとも一つを吸着可能な、活性炭、シリカゲル、アルミナ、ゼオライト、吸収性ポリマーのいずれかであること、が好ましい。
【0012】
上記電池において、前記気体発生媒体は、水、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、シメチルカーボネートのいずれかであること、が好ましい。
【発明の効果】
【0013】
以上、説明したように、本発明によると、電池反応に影響を与えずに過充電時に電極体への電流の印加を遮断することができる、電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る電池を示す模式図である。
【図2】図1のII−II矢視断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る電池における、通常時の電流遮断機構を示す模式図である。
【図4】電流遮断機構の密閉部を説明するための図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る電池の回路図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る電池における、発熱部の作動時を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る電池における、異常時の電流遮断機構を示す模式図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る電池における、発熱部及び電流遮断機構の作動時を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面を参照しながら説明する。但し、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0016】
本実施の形態の電池は、図1乃至3に示すように、電極体1、ケース2、正極外部端子3、負極外部端子4、電流遮断機構5を備えている。
【0017】
電極体1は、図2に示すように、図示を省略した電解質と共にケース2内に収容されている。電極体1としては、一般的な密閉型電池と同様の電極体を用いることができる。つまり、電極体1は、図示は省略するが、正極シート、負極シート、セパレータを備えている。
【0018】
詳細には、正極シートと負極シートとがセパレータと共に積層された状態で捲回されている。具体的に云うと、正極シートにおける集電箔に正極活物質が塗布された塗工部と負極シートにおける集電箔に負極活物質が塗布された塗工部とセパレータとが密に捲回されたコア部分から、正極シートの未塗工部及び負極シートの未塗工部がはみ出している。正極シートの未塗工部に正極外部端子3が電気的に接続されている。負極シートの未塗工部に負極外部端子4が電気的に接続されている。
【0019】
ケース2には、電極体1及び電解質、電流遮断機構5が収容されている。ケース2は、密閉構造とされている。ケース2の上面からは、正極外部端子3及び負極外部端子4がそれぞれ突出している。ちなみに、ケース2には、電解質を注入する注入口が形成されている。注入口は、蓋部材21によって開閉可能とされている。
【0020】
正極外部端子3は、正極シートの未塗工部に電気的に接続されている。また、負極外部端子4は、負極シートの未塗工部に電気的に接続されている。
【0021】
電流遮断機構5は、図3に示すように、ケース2内に収容されている。電流遮断機構5は、密閉部51、気体発生媒体52、発熱部53、電流遮断部54を備えている。
【0022】
密閉部51は、ケース2内の一部分を密閉する。本実施の形態の密閉部51は、正極外部端子3の直下部分に形成されている。密閉部51は、カバー部材511と遮蔽壁512と電流遮断部54とで密閉空間を形成している。
【0023】
カバー部材511は、上面が開放されている箱形状に形成されている。詳細には、カバー部材511は、第1の部屋511a、第2の部屋511bを備えている。第1の部屋511aと第2の部屋511bとは、仕切り壁511cによって仕切られており、上部で相互に連通している。第1の部屋511aには、気体発生媒体52及び発熱部53が収容されている。一方、第2の部屋511bには、電流遮断部54の接続端子541が収容されている。
【0024】
このようなカバー部材511の四側部の上端部は、ケース2の内側面における上面に連結されている。本実施の形態のカバー部材511は、図4に示すように、電流遮断部54の接続端子541と略等しい奥行寸法(前後方向の幅寸法)L1に形成されている。そして、カバー部材511の右側部、前側部及び後側部の上端部は、ケース2の内側面における上面に連結されている。
【0025】
ここで、カバー部材511の前側部及び後側部は、図4に破線で示すように、L字形状に形成されている。カバー部材511の前側部における左右方向に突出する部分は、電流遮断部54の接続端子541の前側部を覆っている。また、カバー部材511の後側部における左右方向に突出する部分は、電流遮断部54の接続端子541の後側部を覆っている。
【0026】
カバー部材511の左側部は、電流遮断部54の接続端子541と略等しい高さ(上下方向の高さ)H1に形成されている。カバー部材511の左側部は、電流遮断部54の接続端子541の左側部を覆っている。
【0027】
遮蔽壁512は、電流遮断部54の接続端子541の右側部とケース2の上面との隙間を塞ぐ。詳細には、遮蔽壁512の前側部は、ケース2の内側面における前側面に連結されている。遮蔽壁512の後側部は、ケース2の内側面における後側面に連結されている。遮蔽壁512の上端部は、ケース2の内側面における上面に連結されている。遮蔽壁512の下端部は、電流遮断部54の接続端子541に連結されている。
その結果、カバー部材511と遮蔽壁512とで電流遮断部54の接続端子541を覆っている。
【0028】
気体発生媒体52は、発熱部53の発熱によって気化又は気体を放出する。例えば、気体発生媒体52としては、水、二酸化炭素、水素等の熱によって気化する媒体を吸着可能な活性炭、シリカゲル、アルミナ、ゼオライト、吸収性ポリマー等を用いることができる。または、気体発生媒体52としては、水、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、シメチルカーボネート等の熱によって気化する媒体を用いることができる。この気体発生媒体52は、図3に示すように、カバー部材511の第1の部屋511aに収容されている。ちなみに、気体発生媒体52は、ケース2に形成された挿入口22から挿入される。挿入口22は、気体発生媒体52の挿入後に、図示を省略した蓋部材で塞がれる。
【0029】
発熱部53は、電極体1が過充電状態となった際に発熱し、気体発生媒体52を気化又は気体発生媒体52から気体を放出させる。本実施の形態の発熱部53は、ツェナーダイオード(定電圧ダイオード)を備えている。この発熱部53は、電極体1の通常使用上限電圧(即ち、降伏電圧)より高電位で作動する。つまり、電極体1が過電流となり、電極体1の通常使用上限電圧より高い電圧が発熱部53に印加されると、発熱部53は作動する。
【0030】
発熱部53は、図3乃至5に示すように、電極体1と並列に電気的に接続されている。発熱部53の負極端子は、負極外部端子4に電気的に接続されている。発熱部53の正極端子は、電流遮断部54を介して正極外部端子3に電気的に接続されている。ここで、発熱部53の正極端子は、図5に示すように、電流遮断部54と電極体1の正極端子との間に電気的に接続されている。これにより、電極体1の状態に基づいて発熱部53を作動させることができる。
【0031】
電流遮断部54は、接続端子541、弁機構542を備えている。電流遮断部54は、密閉部51内の圧力が上昇すると、弁機構542が作動して外部端子と電極体1との電気的接続を断つ。
【0032】
詳細には、電流遮断部54は、図3乃至5に示すように、電極体1と直列に電気的に接続されている。本実施の形態の電流遮断部54の接続端子541は、左右方向から見ると、コの字形状に形成されている。つまり、接続端子541には、気体発生媒体52が気化したことにより発生した気体、又は気体発生媒体52から放出された気体が通る通路541aが形成されている。ちなみに、本実施の形態の接続端子541は、前後方向に延在する下側の部分に左右方向に延在する接続端子543が一体的に接続されているが、省略しても良い。
【0033】
接続端子541は、導電部材から成る。接続端子541の一端部は、正極外部端子3に電気的に接続されている。接続端子541の他端部は、発熱部53の正極端子に電気的に接続されている。また、接続端子541の他端部は、電極体1の正極端子に電気的に接続されている。
【0034】
接続端子541における前後方向に延在する上側の部分には、連通孔541bが形成されている。この連通孔541bは、弁機構542によって開閉可能とされている。
【0035】
弁機構542としては、一般的な弁を有する電流遮断弁を用いることができる。つまり、弁機構542は、図3に示すように、蓋体542a、弁542bを備えている。蓋体542a及び弁542bは、導電部材から成る。蓋体542aは、内部に弁542bの稼働空間を備えている。蓋体542aには、正極外部端子3が電気的に接続されている。蓋体542aの下部には、弁542bの外周縁部が電気的に接続されている。
【0036】
弁542bは、通常時は接続端子541の連通孔541bを閉じ、密閉部51内の圧力が上昇すると接続端子541の連通孔541bを開く。本実施の形態の弁542bは、中央部分に下方に突出する凸部542b1を備えている。この凸部542b1で接続端子541の連通孔541bが閉じられる。ちなみに、通常時において、当該凸部542b1以外の部分が接続端子541に接触しないように、蓋体542a及び弁542bと接続端子541との間には、絶縁部材544が配置される。
【0037】
このような構成の電池は、通常の充電時には、接続端子541と弁機構542の弁542bとが電気的に接続された状態であり、電極体1に充電が実施される。一方、過充電となると、図6に示すように、発熱部53が発熱する。それに伴い、気体発生媒体52が発熱部53によって熱せられ、気体発生媒体52が気化、又は気体発生媒体52から気体が放出され、密閉部51内の圧力が上昇する。このとき、密閉部51内の圧力の上昇は、接続端子541の通路541a及び連通孔541bを介して弁機構542の弁542bに伝達される。これにより、弁542bは、図7に示すように、上方に押し上げられ、接続端子541との電気的接続が断たれる。つまり、図8に示すように、電流遮断機構5が作動して電極体1と正極外部端子3との電気的接続が遮断される。このように密閉部51内に気体発生媒体52を収容し、密閉部51内で気体発生媒体52を気化、又は気体発生媒体52から気体を放出して当該密閉部51内の圧力を上昇させて、電流遮断機構5を作動させるので、電解質に影響を与えることがない。
【0038】
しかも、本実施の形態の発熱部53は、ダイオードを用いたので、電流遮断部54が作動して電流が遮断されても、電極体1が過充電状態の高電位であれば当該発熱部53を介して電流が流れ、過充電状態を緩和することができる。
【0039】
以上、本発明に係る電池の実施の形態を説明したが、上記に限らず、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、変更することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 電極体
2 ケース、21 蓋部材
3 正極外部端子
4 負極外部端子
5 電流遮断機構
51 密閉部
52 気体発生媒体
53 発熱部
54 電流遮断部
511 カバー部材、511a 第1の部屋、511b 第2の部屋、511c 仕切り壁
512 遮蔽壁
541 接続端子、541a 通路、541b 連通孔
542 弁機構、542a 蓋体、542b 弁、542b1 凸部
543 接続端子
544 絶縁部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極及び負極を有する電極体と、
前記電極体が収容されるケースと、
前記電極体に電気的に接続される外部端子と、
電流遮断機構と、
を備え、
前記電流遮断機構は、
前記ケース内に形成される密閉部と、
前記密閉部に収容され、前記電極体に電気的に接続される発熱部と、
前記密閉部に収容され、前記発熱部の発熱によって気化又は気体が放出される気体発生媒体と、
前記外部端子及び前記電極体に直列に電気的に接続され、前記密閉部内の圧力が上昇すると、弁機構が作動して前記外部端子と前記電極体との電気的接続を断つ電流遮断部と、
を備える電池。
【請求項2】
前記発熱部は、前記電極体と並列に電気的に接続され、且つ前記発熱部の一方の端子は、前記電流遮断部と前記電極体との間に電気的に接続されている請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記電流遮断部は、
前記電極体に直列に電気的に接続され、前記気体発生媒体の通路及び前記通路に連通する連通孔を有する接続端子と、
前記外部端子が電気的に接続され、前記連通孔を開閉する弁を有する弁機構と、
を備え、
前記弁は、前記密閉部内の圧力が上昇する前の状態では前記連通孔を閉じて前記接続端子と電気的に接続し、前記密閉部内の圧力が上昇すると前記連通孔を開いて前記接続端子との電気的接続を断つ請求項1又は2に記載の電池。
【請求項4】
前記発熱部は、前記電極体の通常使用上限電圧より高電位で作動する、ツェナーダイオードを備える請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電池。
【請求項5】
前記気体発生媒体は、水、二酸化炭素、水素の少なくとも一つを吸着可能な、活性炭、シリカゲル、アルミナ、ゼオライト、吸収性ポリマーのいずれかである請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電池。
【請求項6】
前記気体発生媒体は、水、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、シメチルカーボネートのいずれかである請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電池。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−114925(P2013−114925A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260541(P2011−260541)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】