説明

電波受信装置および電波修正時計

【課題】電波復調段において信号損失が少なく高精度で、製造過程において周波数選択度Qの微調整の必要がなく、搭載機器の材質に左右されない、高感度な電波受信装置および電波修正時計を提供する。
【解決手段】電波受信装置10は、パルス発生部1と、MI素子20と集磁部21とを備え外部電波を磁界の変化として検出し電気的に応答するアンテナ部2と、アンテナ部2の出力を増幅する増幅部30と、アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換部31と、所望の周波数成分を取り出すデジタルフィルタ部3とを有する。電波受信装置10の後段には、デジタルフィルタ部3の出力に基づいて腕時計5の長針5Aと短針5Bを制御するための時計機能部9が設置される。時計機能部9は、デジタル信号を時刻情報に応じた出力信号に変換処理する信号処理部4と、出力信号に基づいて長針5A、短針5Bを駆動する針駆動部8とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗素子とデジタルフィルタ回路とで構成される、電波受信装置および電波修正時計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、電波時計用の電波受信機が知られている。電波時計の電波には40kHzと60kHzの長波標準電波があり、それぞれ1HzのAM変調がかけられている。そのAM変調波を復調することで日本標準時の時刻情報を得ることができる。AM変調波を復調するための受信機として、腕時計等にも搭載可能な小型の電波時計受信用LSI(Large−Scale Integrated circuit)がある(例えば非特許文献1)。
【0003】
この電波時計受信用LSIは、電波信号を整流した後、積分する方式をとっており、コイル式のアンテナと、受信電波増幅用の増幅部と、所望の周波数の信号のみを取り出す水晶フィルタと、信号整流用の整流部と、信号を積分する積分部を有する。
【0004】
この電波時計用LSIは、オートゲインコントロール機能を有し、幅広い電圧ダイナミックレンジを有する。また、消費電力50μA、最小入力感度1μVrmsであり、高感度かつ低消費電力を実現している。
【非特許文献1】木下雅貴、「電波時計受信用LSI」、マイクロメカトロニクス、日本、社団法人日本時計学会、1999年5月、第43巻 第4号、P63−69
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の電波時計用LSIによると、回路はすべてアナログ回路によって構成されているため、水晶フィルタ等において信号損失が生じ、また、装置内の各部品において物性上の温度特性や経年変化が生じるという問題がある。また、装置に用いるアンテナはコイル式であり、装置全体のLCRの関係において周波数選択度Qを決定するため、装置製造の際はQの微調整を必要とする。また、コイル式アンテナは金属近傍で著しく感度を低下させるため、搭載する電子機器に使用する材質に制約が生じる。
【0006】
従って、本発明の目的は、電波復調段において信号損失が少なく高精度で、製造過程において周波数選択度Qの微調整の必要がなく、搭載機器の材質に左右されない、高感度な電波受信装置および電波修正時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するため、標準時刻電波による外部磁界を検出するMI(Magneto−Impedance)素子からなる磁気検出部と、前記MI素子が前記外部磁界に反応する方向に沿って、前記MI素子の両端に近接して対称構造にて設置され、前記外部磁界について一定以下の周波数成分を集磁する性質を有する高透磁率材料からなる集磁部とを有するアンテナ部と、前記外部磁界に基づいて生じる前記アンテナ部の電気的応答から所望の帯域の周波数成分を取り出すデジタルバンドパスフィルタと、AC信号をDC信号へと変換する整流部と、所望の周波数以上の信号をカットするデジタルローパスフィルタと、信号の波形を整形する波形整形部とを含み、所望の周波数成分を取り出すデジタルフィルタ部と、前記デジタルフィルタ部から出力されるデジタル信号を時刻情報に応じた出力信号に変換処理する信号処理部とを含む電波受信装置を提供する。
【0008】
このような構成によれば、高透磁率材料の集磁効果により、MI素子単体の場合に比べ装置が高感度になる。また、高透磁率材料が一定以上の周波数成分に対し不感となるため、受信電波に高周波成分が含まれず、デジタルフィルタにおいてアンチエイリアシングの必要がなくなる。また、コイル式アンテナに換えてMI素子を使用したことにより、製造の際にアンテナが持つ周波数選択度Qの微調整の必要がなくなると同時に、コイル式アンテナでは著しく感度が低下する金属近傍等での受信が可能になる。また、受信電波の処理にデジタル回路を用いたことにより、信号の損失や装置自体の劣化等を抑えることができる。また、電波修正時計等への搭載に適した信号を出力することが可能となる。
【0009】
また、本発明は上記目的を達成するため、標準時刻電波による外部磁界を検出するMI(Magneto−Impedance)素子からなる磁気検出部と、前記MI素子が前記外部磁界に反応する方向に沿って、前記MI素子の両端に近接して対称構造にて設置され、前記外部磁界について一定以下の周波数成分を集磁する性質を有する高透磁率材料からなる集磁部とを有するアンテナ部と、前記外部磁界に基づいて生じる前記アンテナ部の電気的応答から所望の帯域の周波数成分を取り出すデジタルバンドパスフィルタと、AC信号をDC信号へと変換する整流部と、所望の周波数以上の信号をカットするデジタルローパスフィルタと、信号の波形を整形する波形整形部とを含み、所望の周波数成分を取り出すデジタルフィルタ部と、前記デジタルフィルタ部から出力されるデジタル信号を時刻情報に応じた出力信号に変換処理する信号処理部と、前記信号処理部の出力信号に基づいて長針、短針を駆動する針駆動部とを含む電波修正時計を提供する。
【0010】
このような構成によれば、高感度で、製造の際に周波数選択度Qの微調整を省略でき、金属ケースの使用が可能で、信号処理段での損失を回避できるため微弱な電波に対応でき、装置の経年変化を防止できるため長寿命な電波受信装置および電波修正時計を構成することが可能となる。
【0011】
また、高透磁率材料は、外部磁界について100kHz以下の周波数成分を集磁する性質を有するコバルトアモルファスを用いて構成してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電波復調段において信号損失なく高精度で、製造過程において周波数選択度Qの微調整の必要がなく、搭載機器の材質に左右されない、高感度な電波受信装置および電波修正時計を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の電波受信装置の実施の形態を図面を参考にして詳細に説明する。
【0014】
〔第1の実施の形態〕
図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に関する電波受信装置の概略構成図である。図1(b)は、図1(a)におけるデジタルフィルタ部の詳細図である。
【0015】
(電波受信装置の構成)
この電波受信装置10は、パルス電圧を発生するパルス発生部1と、MI素子20と集磁部21とを備え外部電波を磁界の変化として検出し電気的に応答するアンテナ部2と、アンテナ部2の出力を増幅する増幅部30と、増幅されたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換部31と、A/D変換部31の出力から所望の周波数成分を取り出すデジタルフィルタ部3と、デジタルフィルタ部3の出力を電波受信装置10を搭載する電子機器に対応した所望の出力に変換する信号処理部4とを有する。
【0016】
デジタルフィルタ部3は、40kHzおよび60kHzのキャリアを分別するデジタルバンドパスフィルタ32と、AC信号をDC信号へと変換するデジタルの整流部33と、1HzのAM変調信号を取り出すデジタルローパスフィルタ34と、矩形波のパルスを取り出すデジタルの波形整形部35とで構成される。
【0017】
なお、デジタルバンドパスフィルタ32とデジタルローパスフィルタ34は、FIR(Finite Impulse Response)フィルタもしくはIIR(Infinite Impulse Response)フィルタ形式により構成される。
【0018】
(アンテナ部の構成)
図2は本発明の第1の実施の形態に係るアンテナ部の構成を示す平面図である。
【0019】
アンテナ部2は、外部磁界に対しインピーダンス変化として電気的に応答するMI素子20と、コバルトアモルファスリボンを用いて構成され、MI素子20の両端に設けることにより外部磁界を集磁する効果を有する集磁部21と、MI素子20と集磁部21の基台となるSi基板22と、MI素子20と集磁部21とSi基板22とを封止固定するための封止樹脂23とを有する。なお、封止樹脂23は必ずしも透明である必要はないが、内部構造を説明するため、透明なものを使用する。
【0020】
図3(a)は本発明の第1の実施の形態に係るアンテナ部の詳細を示す平面図である。図3(b)は図3(a)のA−A部における断面図である。
【0021】
図3(a)と(b)に示すように、MI素子20は、Si基板22の表面上につづら折れ状にパターン形成された高透磁率磁性膜200と、高透磁率磁性膜200を外部と電気的に接続するため、また高透磁率磁性膜200どうしを電気的に接続するためのアルミニウム(Al)からなる電極201とを有する。また、MI素子20と集磁部21はSiOによるパッシベーション膜202により電気的に絶縁されている。
【0022】
MI素子20は、高透磁率磁性膜200と集磁部21の間隔D1が2.0mm以下となるように両者を設置している。また、高透磁率磁性膜200と集磁部21の厚み方向の中心軸ずれD2が0mmとなるようにSi基板22に段部を形成している。
【0023】
また、高透磁率磁性膜200は約1μmの厚みを有する。集磁部21は、長さ12.5mm、幅1.2mm、厚さ20μmの形状のものを使用する。パッシベーション膜202は約0.5μmの厚さを有する。
【0024】
(電波受信装置の動作)
以下に、本発明の実施の形態における電波受信装置の動作を図1から図4を参照しつつ説明する。
【0025】
アンテナ部21において、MI素子20の両端に設けられた集磁部21は、集磁部21の外側の一端から外側の他端にかけてMI素子20を貫くように磁束を集磁する。MI素子20は長手方向にて集磁された磁束に反応し、インピーダンスが変化する。アンテナ部21は、電磁波である電波に関しても同様に反応し、インピーダンスが変化する。
【0026】
図4は、本発明の第1の実施の形態に係る集磁部の材質による特性を示すグラフである。
【0027】
集磁部21は、コバルトアモルファスを使用する場合、100kHz以上の周波数の電波に対し著しく透磁率が低下する。その結果、MI素子20を貫く磁束密度が減少し、見かけ上アンテナ部2は100kHz以上の電波に対し不感となる。
【0028】
パルス発生部1の出力は、上記のアンテナ部21のインピーダンス変化に基づき変化し、増幅部30とA/D変換部31で処理された後、デジタルフィルタ部3へと入力される。デジタルフィルタ部3は、所望の帯域の周波数信号のみを信号処理部4へと出力する。
【0029】
(第1の実施の形態の効果)
上記した実施の形態によると、集磁部21に用いたコバルトアモルファスの特性により100kHz以上の周波数を持つ電波に対し不感となり、信号減衰のないローパスフィルタとして使用できるため、デジタルフィルタ部3において高周波電波に対するアンチエイリアシングを行う必要がなくなり、デジタルフィルタ部3の簡略化、また消費電力の減少が望め、優れた構成であると言える。また、集磁部21を持たない代わりにアンテナ部2の後段にローパスフィルタを用いた場合と異なり、パルス発生部1からアンテナ部2へ入力する信号に高周波またはパルス矩形波を使用することが可能になり、高周波またはパルス矩形波を使用した信号処理の結果、電波受信装置10を高感度に構成することが可能になる。また、コバルトアモルファスの集磁効果により、アンテナ部2全体としての感度が向上する。
【0030】
また、集磁部21に柔軟に変形できるコバルトアモルファスのリボンを用いたことにより、搭載機器のケース形状に合わせることが可能となり、搭載方法の制約が減少し、小型の電子機器にも搭載可能となる。また、コバルトアモルファスは、100kHz以下においては周波数選択度Qを持たずフラットな周波数特性を有するため、金属近傍でのQの変化等の影響を考慮する必要がなく、金属ケースを使用した電子機器等に搭載することが可能になる。
【0031】
また、信号処理のフィルタとしてデジタルフィルタ部3を用いたことにより、フィルタリングに伴う信号の損失がなくなる。また、整流部33において整流の際のVを0とできる。また、デジタルフィルタ部3は、温度特性がなく、経年変化も生じないため、安定した動作が保証することができる。また、デジタルフィルタ部3は、ソフト上で周波数選択度Qを制御するため、精度の良いフィルタリングを実現可能にし、チューニングも可能となる。このため、後段の信号処理部4において、温度特性や経年変化の影響を受けていない精度の良い信号を用いて信号処理が行える。
【0032】
なお、アンテナ部2は集磁部21にフェライトを使用して構成しても良い。図4に示すように、フェライトは1MHz以下において周波数選択度Qを持たずフラットな周波数特性を有するため、コバルトアモルファスに対しより広い範囲の周波数帯域で電波受信が可能となる。また、本実施の形態では特に40kHzおよび60kHzの電波受信について記載したが、フェライトを使用しデジタルフィルタのフィルタリングを調整することにより、所望の周波数の外部磁場を検出することが可能である。例えば、250kHzの電波を使用するRFIDタグの受信機や、125kHzおよび315kHzの電波を使用する自動車等のキーレスエントリーシステムの受信機、また周波数1MHz以下の電波を受信するAM受信機として使用可能である。
【0033】
〔第2の実施の形態〕
【0034】
図5は、本発明の第2の実施の形態に係る腕時計型の電波修正時計を示し、図5(a)は、外部構成を示す平面図、図5(b)は、内部構成を示す平面図である。なお、以下の説明において、第1の実施の形態と同一の構成および機能を有する部分については共通の符号を付している。
【0035】
(腕時計の構成)
図5(a)に示すように、腕時計5は、時刻を分単位で示す長針5Aと、時刻を時間単位で示す短針5Bと、時刻を刻印してある文字盤5Cと、各部品を収納する腕時計ケース6と、時刻を手動にて調整する調整部7とを有する。
【0036】
図5(b)は文字盤5Cを取り外した内部構成図であり、同図が示すように、腕時計5は内部に、パルス発生部1と、アンテナ部2と、増幅部30と、A/D変換部31と、デジタルフィルタ部3とを含む電波受信装置10と、信号処理部4と、長針5Aと短針5Bを制御する針駆動部8とを含む時計機能部9を有する。アンテナ部2は、MI素子20と、腕時計ケース6に合わせて変形されたコバルトアモルファスからなる集磁部21とを有する。
【0037】
図6(a)は、本発明の第2の実施の形態に関する腕時計型の電波修正時計の概略構成図である。図6(b)は、図6(a)における時計機能部の詳細図である。
【0038】
図6(a)に示すように、電波受信装置10は、パルス電圧を発生するパルス発生部1と、MI素子20と集磁部21とを備え外部電波を磁界の変化として検出し電気的に応答するアンテナ部2と、アンテナ部2の出力を増幅する増幅部30と、増幅されたアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換部31と、A/D変換部31の出力から所望の周波数成分を取り出すデジタルフィルタ部3とを有する。電波受信装置10の後段には、デジタルフィルタ部3の出力に基づいて腕時計5の長針5Aと短針5Bを制御するための時計機能部9が設置される。
【0039】
図6の(b)に示すように、時計機能部9は、デジタルフィルタ部3から出力される標準電波に応じたデジタル信号を時刻情報に応じた出力信号に変換処理する信号処理部4と、信号処理部4の出力信号に基づいて長針5A、短針5Bを駆動する針駆動部8とを有する。
【0040】
(腕時計の動作)
以下に、本発明の第2の実施の形態における腕時計型の電波修正時計の動作を図5から図6を参照しつつ説明する。
【0041】
アンテナ部21において、MI素子20の両端に設けられた集磁部21は、集磁部21の外側の一端から外側の他端にかけてMI素子20を貫くように磁束を集磁する。MI素子20は長手方向にて集磁された磁束に反応し、インピーダンスが変化する。アンテナ部21は、電波時計用の標準電波である40kHzと60kHzの電磁波に関しても同様に反応し、インピーダンスが変化する。
【0042】
集磁部21は、コバルトアモルファスを使用しているため、100kHz以上の周波数の電波に対し著しく透磁率が低下する。その結果、MI素子20を貫く磁束密度が減少し、見かけ上アンテナ部2は100kHz以上の電波に対し不感となる。
【0043】
パルス発生部1の出力は、上記のアンテナ部21のインピーダンス変化に基づき変化し、デジタルフィルタ部3へと入力される。デジタルフィルタ部3は、40kHzと60kHzの周波数のキャリアを分別し、1HzのAM変調信号を復調して取り出し、時計機能部9へと出力する。時計機能部9の信号処理部4は、デジタルフィルタ部3からの入力を針駆動部8に対応した信号へと変換し出力する。針駆動部8は、信号処理部4の出力に従い、長針5Aと短針5Bを文字盤5C上の正確な時刻位置へと駆動し、時刻表示を修正する。
【0044】
(第2の実施の形態の効果)
上記した第2の実施の形態によると、集磁部21に用いたコバルトアモルファスの特性により100kHz以上の周波数を持つ電波に対し不感となり、信号減衰のないローパスフィルタとして使用できるため、デジタルフィルタ部3において高周波電波に対するアンチエイリアシングを行う必要がなくなり、デジタルフィルタ部3の簡略化、また消費電力の減少が望め、優れた構成であると言える。また、100kHz以上をカットするフィルタリングは、40kHzと60kHzの周波数を使用している日本標準時の標準電波に適したフィルタリングであるとも言える。
【0045】
また、集磁部21を持たない代わりにアンテナ部2の後段にローパスフィルタを用いた場合と異なり、パルス発生部1からアンテナ部2へ入力する信号にパルス矩形波を使用することが可能になり、パルス矩形波を使用した信号処理の結果、電波受信装置10を高感度に構成することが可能になる。また、高周波発生装置を用いずに構成したことにより、大がかりな部品を使用することなく電波受信装置10を構成することができるため、腕時計5の設計の制約が減少する。
【0046】
また、コバルトアモルファスの集磁効果により、MI素子20と集磁部21の間隔が30μm、厚み方向の軸ずれが0mmの場合、集磁部21を設置しない場合に比べて、アンテナ部2全体としての感度が約2倍に向上するため、より広範囲において腕時計5は時間情報を受信することができる。
【0047】
また、集磁部21に柔軟に変形できるコバルトアモルファスのリボンを用いたことにより、腕時計ケース6に形状を合わせて設置することが可能となるため、腕時計5の設計の制約が減少する。また、コバルトアモルファスは、100kHz以下においては周波数選択度Qを持たずフラットな周波数特性を有するため、金属近傍でのQの変化等の影響を考慮する必要がなく、腕時計ケース6として金属ケース等を使用することが可能になり、材料選択に制限がなくなる。また、電波受信装置10を設置した後に周波数選択度Qの微調整の必要がないため、製造時に工程を簡略化することができ生産性が向上する。
【0048】
なお、本実施の形態では特に40kHzおよび60kHzの電波受信について記載したが、デジタルフィルタのフィルタリングを調整することによりDC磁場および低周波の磁場を検出することも可能である。例えば、定磁場を検出する方位計等の機器や、地中の金属探知機等、また人体の間接の動きや心臓の鼓動等の数Hzの動きに基づいた電波および磁場を検出する測定器にも応用が可能である。以上の応用についても同等のスケールにて装置が構成可能であり、腕時計等の小型の電子機器に搭載することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】(a)は、本発明の第1の実施の形態に関する電波受信装置の概略構成図である。(b)は、図1(a)におけるデジタルフィルタ部の詳細図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るアンテナ部の構成を示す平面図である。
【図3】(a)は本発明の第1の実施の形態に係るアンテナ部の詳細を示す平面図である。(b)は図3(a)のA−A部における断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る集磁部の材質による特性を示すグラフである。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る腕時計型の電波修正時計を示し、(a)は、外部構成を示す平面図、(b)は、内部構成を示す平面図である。
【図6】(a)は、本発明の第2の実施の形態に関する腕時計型の電波修正時計の概略構成図である。(b)は、図6(a)における時計機能部の詳細図である。
【符号の説明】
【0050】
1…パルス発生部、2…アンテナ部、3…デジタルフィルタ部、4…信号処理部、5A…長針、5B…短針、5C…文字盤、5…腕時計、6…腕時計ケース、7…調整部、8…針駆動部、9…時計機能部、10…電波受信装置、20…MI素子、21…アンテナ部、21…集磁部、22…Si基板、23…封止樹脂、30…増幅部、31…A/D変換部、32…バンドパスフィルタ、33…整流部、34…ローパスフィルタ、35…波形整形部、200…高透磁率磁性膜、201…電極、202…パッシベーション膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標準時刻電波による外部磁界を検出するMI(Magneto−Impedance)素子からなる磁気検出部と、前記MI素子が前記外部磁界に反応する方向に沿って、前記MI素子の両端に近接して対称構造にて設置され、前記外部磁界について一定以下の周波数成分を集磁する性質を有する高透磁率材料からなる集磁部とを有するアンテナ部と、
前記外部磁界に基づいて生じる前記アンテナ部の電気的応答から所望の帯域の周波数成分を取り出すデジタルバンドパスフィルタと、AC信号をDC信号へと変換する整流部と、所望の周波数以上の信号をカットするデジタルローパスフィルタと、信号の波形を整形する波形整形部とを含み、所望の周波数成分を取り出すデジタルフィルタ部と、
前記デジタルフィルタ部から出力されるデジタル信号を時刻情報に応じた出力信号に変換処理する信号処理部とを含むことを特徴とする電波受信装置。
【請求項2】
前記高透磁率材料は、前記外部磁界について100kHz以下の周波数成分を集磁する性質を有するコバルトアモルファスからなることを特徴とする請求項1に記載の電波受信装置。
【請求項3】
標準時刻電波による外部磁界を検出するMI(Magneto−Impedance)素子からなる磁気検出部と、前記MI素子が前記外部磁界に反応する方向に沿って、前記MI素子の両端に近接して対称構造にて設置され、前記外部磁界について一定以下の周波数成分を集磁する性質を有する高透磁率材料からなる集磁部とを有するアンテナ部と、
前記外部磁界に基づいて生じる前記アンテナ部の電気的応答から所望の帯域の周波数成分を取り出すデジタルバンドパスフィルタと、AC信号をDC信号へと変換する整流部と、所望の周波数以上の信号をカットするデジタルローパスフィルタと、信号の波形を整形する波形整形部とを含み、所望の周波数成分を取り出すデジタルフィルタ部と、
前記デジタルフィルタ部から出力されるデジタル信号を時刻情報に応じた出力信号に変換処理する信号処理部と、前記信号処理部の出力信号に基づいて長針、短針を駆動する針駆動部とを含むことを特徴とする電波修正時計。
【請求項4】
前記高透磁率材料は、前記外部磁界について100kHz以下の周波数成分を集磁する性質を有するコバルトアモルファスからなることを特徴とする請求項3に記載の電波修正時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−139473(P2007−139473A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−330726(P2005−330726)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】