電波発信器の位置認識装置及び位置認識システム
【課題】RFIDタグの如き電波発信器の位置を高精度で認識できる、電波発信器の位置認識装置及び位置認識システムを提供すること。
【解決手段】外部からの電波によって駆動される識別タグとの間において電波の送信及び受信を行う送信アンテナ23及び複数の受信アンテナ24a〜24dと、識別タグからの電波が所定数以上の受信アンテナ24a〜24dにて受信されたか否かに基づいて、当該位置認識装置20に対する識別タグの位置を認識する位置認識部30bとを備える。
【解決手段】外部からの電波によって駆動される識別タグとの間において電波の送信及び受信を行う送信アンテナ23及び複数の受信アンテナ24a〜24dと、識別タグからの電波が所定数以上の受信アンテナ24a〜24dにて受信されたか否かに基づいて、当該位置認識装置20に対する識別タグの位置を認識する位置認識部30bとを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDタグの如き電波発信器の位置を認識するための位置認識装置及び位置認識システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の物品にRFIDタグを添付し、このRFIDタグにて記憶された情報を電波にて取得することで、物品の位置等を管理するための物品管理システムが提案されている。例えば、特許文献1には、物品にRFIDタグを取り付け、このRFIDタグに対するデータの書き込みや読取りを行うRFID質問器等を用いて物品管理を行うシステムが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−92114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなシステムにおいては、RFIDタグからの電波を感度よく受信できるタグ読取り装置が必要となる。特に、現在国内で標準化が進められているUHF帯域の電子タグシステムでは、UHF帯の特性を活かした中距離(例えば7から10m程度)の伝送を行うことを目標としているため、タグ読取り装置にも高い出力が要求され、タグ読取り装置から送信される電波の到達範囲も広くなる。このような場合、隣接するタグ読取り装置の相互間での電波干渉が生じ易く、RFIDタグの読取りを行うことができなり、RFIDタグの位置認識を正確に行うことが困難になる可能性が懸念される。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、RFIDタグの如き電波発信器の位置を高精度で認識できる、電波発信器の位置認識装置及び位置認識システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の電波発信器の位置認識装置は、外部からの電波によって駆動される電波発信器との間において、電波の送信及び受信を行う複数の送受信手段と、前記電波発信器からの電波を受信した前記送受信手段の数に基づいて、当該位置認識装置に対する前記電波発信器の位置を認識する位置認識手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の電波発信器の位置認識装置は、請求項1に記載の電波発信器の位置認識装置において、前記複数の送受信手段は、前記電波発信器に対して電波を送信する送信手段と、前記送信手段と分離して配置されたもので、前記電波発信器から発信された電波を受信する複数の受信手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の電波発信器の位置認識装置は、請求項2に記載の電波発信器の位置認識装置において、前記複数の受信手段を、同一の平面内であって、前記送信手段を中心として等距離を隔てた位置に配置したことを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に記載の電波発信器の位置認識装置は、請求項3に記載の電波発信器の位置認識装置において、前記複数の受信手段を、前記平面内において移動させるための移動手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に記載の電波発信器の位置認識装置は、請求項4に記載の電波発信器の位置認識装置において、前記移動手段は、前記複数の受信手段を、前記送信手段を中心とする等距離の間隔を維持しつつ移動させることを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に記載の電波発信器の位置認識装置は、請求項2から5のいずれか一項に記載の電波発信器の位置認識装置において、前記送信手段は、電波を送信する送信アンテナと、前記送信アンテナの周囲空間の中で所定の送信方向以外に至る周囲空間から当該送信アンテナを覆う電波吸収体とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項7に記載の電波発信器の位置認識システムは、収納手段に配置された電波発信器の位置を認識するための位置認識システムであって、前記請求項1から6のいずれか一項に記載の電波発信器の位置認識装置と、前記収納手段において前記位置認識装置の認識範囲の周縁に対応する位置に設置された位置調整用の電波発信器とを備え、前記位置認識装置は、前記位置調整用の電波発信器からの電波を前記位置認識装置にて受信することにより当該位置調整用の電波発信器の位置を認識し、当該認識した位置調整用の電波発信器の位置に基づいて、前記収納手段に対する当該位置認識装置の位置を特定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の電波発信器の位置認識装置によれば、電波発信器からの電波が所定数以上の送受信手段にて受信されたか否かに基づいて電波発信器の位置を認識することで、単一の送受信手段による受信結果に基づいて認識を行う場合に比べて、電波発信器の位置を高精度で認識することが可能となる。
【0014】
また、請求項2に記載の電波発信器の位置認識装置によれば、送信手段と複数の受信手段を分離して配置したので、送信手段と受信手段の各々に適した出力や感度を設定することが可能となる。
【0015】
また、請求項3に記載の電波発信器の位置認識装置によれば、複数の受信手段を、同一の平面内であって等距離間隔で配置したので、送信手段の位置を中心とする同一条件で電波発信器からの電波を受信手段にて受信できるので、これら受信手段による電波発信器の受信状態を正確に対比でき、この対比結果に基づいて電波発信器の位置を高精度で認識することが可能となる。
【0016】
また、請求項4に記載の電波発信器の位置認識装置によれば、複数の受信手段を、平面内において移動させることができるので、収納手段の形状若しくは大きさや位置認識装置と収納手段の相対距離に応じて受信手段を移動させることで、受信手段の受信範囲を容易かつ正確に調整することができる。
【0017】
また、請求項5に記載の電波発信器の位置認識装置によれば、複数の受信手段を、送信手段を中心とする等距離の間隔を維持しつつ移動させることができるので、複数の受信手段による電波の受信条件を同一に維持しつつ受信手段を移動させることができ、受信手段の受信範囲を一層容易かつ正確に調整することができる。
【0018】
また、請求項6に記載の電波発信器の位置認識装置によれば、送信アンテナを覆う電波吸収体を設けたので、所望の方向に位置する電波発信器に対してのみ電波を送信することが可能となり、送信アンテナの指向性を高めて、電波発信器の位置を一層高精度で認識することが可能となる。
【0019】
また、請求項7に記載の電波発信器の位置認識装置によれば、収納手段において位置認識装置の認識範囲の周縁に対応する位置に設置された位置調整用の電波発信器を認識することで、収納手段に対する位置認識装置の配置位置を把握でき、この配置位置を容易かつ確実に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
〔実施の形態〕
以下に添付図面を参照して、この発明に係る電波発信器の位置認識装置及び位置認識システムの一実施の形態を詳細に説明する。ただし、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
(構成)
最初に、本実施の形態に係る位置認識システムの構成について説明する。図1は本実施の形態に係る位置認識システムが設置された保管エリアの平面図、図2は図1の位置認識システムを位置認識装置の背面側から見た図、図3は図2の要部拡大図、図4は図3の側面図である。この位置認識システム1は、保管エリア2に配置された複数の収納棚3と、これら複数の収納棚3の近傍に配置された位置認識装置20とを備えて構成されている。
【0022】
(構成―収納棚)
最初に、収納棚3の構成について説明する。収納棚3は、管理対象となる物品4(図3、4にのみ図示)を収納するもので、特許請求の範囲における収納手段に対応する。この収納棚3の具体的な構成な任意であるが、例えば図2に示すように、上下一対の水平状の枠板3aと左右一対の鉛直状の枠板3bとを組み合わせて形成された枠体に、複数の水平状の棚板3cを一定間隔を隔てて配置して構成されており、これら棚板3cの上面に任意の物品4を載置することができる。ここでは、このように構成された収納棚3を、鉛直状の枠板3bが隣接するように複数並設することによって、図1に示す収納列5が形成されており、2組の収納列を背中合わせに配置されることで収納レーン6が形成されている。そして、この収納レーン6が、通路7を介して複数並設されている。
【0023】
ここで、背中合わせに配置された2組の収納棚3の相互間(収納列5の相互間)には、電波通過防止体8が配置されている。この電波通過防止体8は、一方の収納列5の正面に設置された位置認識装置20から、当該一方の収納列5の収納棚3に対して送信された電波が、当該収納棚3の棚板3cの間等を通過して、他方の収納列5の収納棚3に到達してしまうことで生じる誤検知を防止するためのものである。この電波通過防止体8の具体的構成は任意であるが、電波を反射する反射体(例えば、導電率が高い金属であり、銅、アルミニウム、ニッケル等)や、電波を吸収する電波吸収体(例えば、フェライト等の磁性体粉末を樹脂に含有させて磁性損失によって電磁波減衰を図るものや、導電性物質を絶縁体に分散させて導電損失により電波減衰を図るもの)を用いた板状体を、2組の収納列5の相互間の全域に渡るように、鉛直面に沿って配置して構成することができる。なお、この電波通過防止体8は、さらに任意の位置に配置してもよく、例えば、同一の収納列5において相互に隣接する収納棚3の間に配置してもよい。
【0024】
このように構成された収納棚3に収納される各物品4には、図3に示すように、識別タグ9が一つ貼付されている。この識別タグ9は、特許請求の範囲における電波発信器に対応するもので、例えば電源非内蔵型(パッシブ型)のRFIDタグとして構成されており、位置認識装置20から送信された電波による電磁誘導によって駆動され、内部メモリに予め記憶された情報を電波送信する。この情報としては、識別タグ9を一意に識別するための識別情報(以下「タグID」)が含まれるが、さらに、当該識別タグ9が貼付された物品4の名称や属性を含めてもよい。
【0025】
また、各収納棚3の正面(通路7側の面)の四隅には、位置調整用タグ10が設けられている。この位置調整用タグ10は、特許請求の範囲における位置調整用の電波発信器に対応するもので、識別タグ9と同様に電源非内蔵型のRFIDタグとして構成されており、位置認識装置20から送信された電波による電磁誘導によって駆動され、内部メモリに予め記憶されたタグIDを電波送信する。
【0026】
(構成―位置認識装置)
次に、位置認識装置20の構成について説明する。図5は位置認識装置20の電気的構成を示すブロック図である。位置認識装置20は、識別タグ9の位置を認識することにより、当該識別タグ9が貼付されている物品4の位置を認識するものであり、概略的には、本体部21、支持体22(図3、4にのみ図示)、送信アンテナ23、及び複数の受信アンテナ24a〜24dを備えて構成されている。
【0027】
図3に示すように、本体部21は、位置認識装置20を支持する基台であり、中空状の筐体21aと、この筐体21aの底部に設けられた車輪21bを備えて構成されている。この車輪21bを用いて位置認識装置20を通路7に沿って容易に移動させることができる。
【0028】
また、本体部21には、図5に示すように、入力部25、出力部26、R/W部27、記憶部28、電源部29、及び制御部30が収容されている。
【0029】
入力部25は、位置認識装置20に情報を入力するための入力手段であり、その具体的な構成は任意であるが、例えばタッチパネルやディプスイッチを用いて構成されている。
【0030】
出力部26は、位置認識装置20から情報を出力するための出力手段であり、その具体的な構成は任意であるが、例えば液晶モニタやスピーカを用いて構成されている。ただし、これら入力部25や出力部26は、例えば有線又は無線ネットワークにて入出力を行うネットワークインターフェース等として構成してもよい。
【0031】
R/W部27は、識別タグ9や位置調整用タグ10との間における読取り及び書き込みを行うRFID用の読み書き手段である。
【0032】
記憶部28は、位置認識装置20の制御に必要な各種の情報を記憶する記憶手段であり、例えばHD(ハードディスク)やフラッシュメモリによって構成されている。特に、この記憶部28には、基本情報データベース(以下、データベースを「DB」と称する)28a、位置調整DB28b、認識基準テーブル28c、及び認識結果DB28dが任意の方法で記憶されている。
【0033】
基本情報DB28aは、図6に構成例を示すように、各識別タグ9のタグIDと、各識別タグ9が貼付された物品4の名称及び物品4の属性(例えば大きさ、重量、所有者)を対応付けて構成された情報(以下「基本情報」)を格納する基本情報格納手段である。
【0034】
位置調整DB28bは、図7に構成例を示すように、各収納棚3を特定するための情報(ここでは、各収納棚3を一意に特定するための収納棚番号)と、各収納棚3に貼付された位置調整用識別タグ10のタグID(ここでは、一つの収納棚3の四隅に異なる位置調整用識別タグ10が配置されているため、一つの収納棚番号に対して4つのタグID)を対応付けて構成された情報(以下「位置調整情報」)を格納する位置調整情報格納手段である。
【0035】
認識基準テーブル28cは、図8に構成例を示すように、タグIDを含む電波を受信した受信アンテナ24a〜24dの数と、この電波を発信した識別タグ9が認識対象とする収納棚3(以下「対象収納棚3」と称する)に配置されている確率(以下「配置確率」と称する)とを対応付けて構成されたテーブルである。
【0036】
認識結果DB28dは、図9に構成例を示すように、物品4の名称と、当該物品4の位置を特定するための情報(ここでは、収納棚3を特定するための収納棚番号)と、後述する位置認識処理で特定された配置確率及び配置確定フラグとを対応付けて構成された情報(以下「認識結果情報」)を格納する認識結果情報格納手段である。
【0037】
図5の電源部29は、位置認識装置20の各部に電力を供給するための電源手段であり、コードレス化を図ることで位置認識装置20を容易に移動させることが可能となるように、例えば電源部29は充電可能な二次電池として構成されている。ただし、コードレス化が不要な場合、電源部29は、商用電源から電力を取得する電源コードや交流/直流変換回路を用いて構成することができる。
【0038】
制御部30は、位置認識装置20の各部を制御するための制御手段であり、例えば、図示しないCPU(Central Processing Unit)及びこのCPU上で実行されるプログラム(OS及びアプリケーションプログラムを含む)によって構成されている。この制御部30は、機能概念的に、位置調整部30a、位置認識部30b、及び追加位置認識部30cを備える。これら各部の具体的機能については後述する。これら各部は、任意の記憶媒体やネットワークを介して位置認識プログラムを当該位置認識装置20にインストールすることで構成される。
【0039】
支持体22は、送信アンテナ23及び複数の受信アンテナ24a〜24dを支持するための支持手段であり、例えば、図3、4に示すように、本体部21から上方に延出された複数の金属製の支持ロッド22aと、送信アンテナ23から複数の受信アンテナ24a〜24dに至る方向に配置された複数の金属製の支持ロッド22bとを備え、これら支持ロッド22a、22bに送信アンテナ23及び複数の受信アンテナ24a〜24dが固定されている。また、支持体22は、複数の受信アンテナ24a〜24dを移動可能とする移動機構31を備えているが、この移動機構31については後述する。
【0040】
送信アンテナ23及び複数の受信アンテナ24a〜24dは、特許請求の範囲における送受信手段を構成するものであり、送信アンテナ23は特許請求の範囲における送信手段に対応し、受信アンテナ24a〜24dは特許請求の範囲における受信手段に対応する。これら送信アンテナ23と受信アンテナ24a〜24dは、相互に分離して構成されているため、送信アンテナ23及び受信アンテナ24a〜24dの機能を単一のアンテナにより得る場合に比べて、高感度の位置認識を行うことが可能となる。すなわち、送信出力は法律により上限が定められているが、受信感度は上限は規定されていないため、これら送信アンテナ23と受信アンテナ24a〜24dを分離することで、各々に適した出力や感度を設定することが可能となる。また、送信アンテナ23の出力は上限まで高めることが好ましいが、この場合には認識対象以外の識別タグ9に対しても電波が到達する可能性が高まって誤認識の原因になり得るため、送信アンテナ23については指向性を制御することが望まれる。一方、受信アンテナ24a〜24dは、受信範囲を極力広範にすることが好ましい。従って、これら送信アンテナ23と受信アンテナ24a〜24dを分離することで、各々に適した指向性制御を行うことが可能となる。
【0041】
送信アンテナ23の指向性を制御するための構造例を図10に縦断面図として示す。送信アンテナ23の周囲には、当該送信アンテナ23の周囲空間の中で、所定の送信方向(位置認識装置20の正面に至る方向)以外に至る周囲空間から当該送信アンテナ23を覆う電波吸収体23aを設けている。この電波吸収体23aは、上述した電波通過防止体8と同様に構成することができ、このように電波吸収体23aを設けることで、送信アンテナ23から送信された電波を所定の送信方向のみに送信して、誤認識の可能性を低減することが可能となる。
【0042】
次に、これら送信アンテナ23及び複数の受信アンテナ24a〜24dの配置位置について説明する。図3、4に示すように、送信アンテナ23は、本体部21の鉛直上方位置に配置されている。この送信アンテナ23の送信範囲(収納棚3の正面位置における電波の送信範囲)23bは、図3にその外縁を示すように、送信アンテナ23を中心とした円状となり、1台の収納棚3の正面形状に合致するように(収納棚3の四隅に配置された位置調整用タグ10に電波が到達する範囲であって、それ以上の上方又は側方への電波の送信が極力少なくなるように)調整されている。
【0043】
また、複数の受信アンテナ24a〜24dは、同一の平面(図3に示す平面であり、以下「受信面」と称する)内であって、位置認識装置20の正面又は背面から見た場合に、送信アンテナ23を中心として等距離を隔てた位置に配置されている。各受信アンテナ24a〜24dの受信範囲(位置認識装置20の正面位置における電波の受信範囲)24eは、図3にその外縁を示すように、受信アンテナ24a〜24dを中心とした円状となり、相互に若干重複するように、かつ、複数の受信アンテナ24a〜24dの受信範囲によって1台の収納棚3の正面形状に合致するように(収納棚3の上下左右の最外側に収納された物品4に貼付された識別タグ9からの電波が受信可能となる範囲であって、当該収納棚3に隣接する他の収納棚3に収納された物品4に貼付された識別タグ9からの電波を極力受信しない範囲となるように)調整されている。
【0044】
ここで、これら送信アンテナ23の送信範囲23bや各受信アンテナ24a〜24dの受信範囲24eの最適範囲は、収納棚3の形状若しくは大きさや位置認識装置20と収納棚3の相対距離(以下、これらの条件を「認識条件」と称する)に応じて異なり得るため、これら送信範囲23bや受信範囲24eを認識条件に応じて調整可能とすることが好ましい。送信アンテナ23の送信範囲23bについては、電波送信出力を変えることで調整可能である。一方、受信アンテナ24a〜24dの受信範囲24eは、電波受信感度を変えることで調整可能であるとも考えられるが、受信アンテナ24a〜24dを同一位置に固定したままで電波受信感度のみを変えた場合には、各受信アンテナ24a〜24dの受信範囲24eが相互に重複しなくなることで、認識対象である収納棚3の識別タグ9からの電波が受信できなくなる範囲が生じたり、各受信アンテナ24a〜24dの受信範囲24eにおける相互の重複範囲が広くなり過ぎることで、同一の識別タグ9からの電波を複数の受信アンテナ24a〜24dが受信する可能性が高くなったりするために好ましくない。
【0045】
このため本実施の形態では、受信アンテナ24a〜24dを移動可能とすることでその受信範囲24eを調整することが可能となるように、受信アンテナ24a〜24dを移動させる移動機構31が設けられている。この移動機構31の拡大図を図11に示す。この移動機構31は、特許請求の範囲における移動手段に対応するもので、各受信アンテナ24a〜24d(図11では受信アンテナ24a〜24dの図示を省略する)を、受信面内において移動させる。具体的には、移動機構31は、固定ステー31a及び固定具31bを備えて構成されている。固定ステー31aは、送信アンテナ23から複数の受信アンテナ24a〜24dに至る方向に配置された支持ロッド22bを挿通させる挿通管であり、この固定ステー31aの前面に受信アンテナ24a〜24dが固定されている。固定具31bは、固定ステー31aを支持ロッド22bに固定するための固定手段である。この構造では、固定具31bを緩めた状態で受信アンテナ24a〜24dと共に固定ステー31aを支持ロッド22bに沿って所望の位置に移動させた後、固定具31bを絞めて受信アンテナ24a〜24dと共に固定ステー31aを支持ロッド22bに固定することで、受信アンテナ24a〜24dを容易に移動可能である。
【0046】
特にこの移動機構31は、複数の受信アンテナ24a〜24dを、送信アンテナ23を中心とする等距離の間隔を維持しつつ移動可能なように構成されている。具体的には、移動機構31には、連結ロッド31c、31dと、固定ステー31e、31fが設けられている。連結ロッド31cは、鉛直方向に沿って並設された受信アンテナ24aと24bを連結し、あるいは、鉛直方向に沿って並設された受信アンテナ24cと24dを連結するもので、鉛直方向に沿って配置されている。連結ロッド31dは、水平方向に沿って並設された受信アンテナ24aと24cを連結し、あるいは、水平方向に沿って並設された受信アンテナ24bと24dを連結するもので、水平方向に沿って配置されている。固定ステー31eは連結ロッド31cを挿通させる挿通管であり、固定ステー31fは連結ロッド31dを挿通させる挿通管であって、これら固定ステー31e、31fによって連結ロッド31c、31dの配置方向を水平状又は鉛直状に維持することで、これら連結ロッド31cと連結ロッド31dを、各受信アンテナ24a〜24dの取り付け位置において相互に直交する状態に維持することができる。従って、複数の受信アンテナ24a〜24dの一部のみを支持ロッド22bに沿って移動させることができず、全ての受信アンテナ24a〜24dを同時に支持ロッド22bに沿って同一距離だけ同一方向に移動させる必要が生じ、結果として、これら複数の受信アンテナ24a〜24dを、送信アンテナ23を中心とする等距離の間隔を維持しつつ移動させることが可能となる。このため、各受信アンテナ24a〜24dの受信範囲を、適切な相対関係を維持させつつ調整することが可能となる。ただし、このように受信アンテナ24a〜24dを移動させるための構造としては、他の構造を適用してもよい。
【0047】
(処理)
次に、このように構成された位置認識システム1における処理について説明する(以下の各処理の説明ではステップを「S」と略記する)。この処理は、収納棚3に対する位置認識装置20の位置を調整するための位置調整処理、収納棚3に配置された物品4の位置を当該物品4に貼付された識別タグ9を用いて認識するための位置認識処理、位置認識処理で位置が確定できなかった物品4の位置を確定させる追加位置認識処理に大別される。
【0048】
(処理−位置調整処理)
最初に、位置調整処理について説明する。図12は位置調整処理のフローチャートである。なお、以下の説明では、使用者が位置認識装置20を直接操作する場合について説明するが、実際には、夜間の無人時間帯等において位置認識装置20を自動運転させることも可能であり、この場合には、後述する使用者との間の入出力については、予め位置認識装置20に設定しておいたり、公知の記憶装置に蓄積しておくこと等ができる。
【0049】
使用者が位置認識装置20を通路7に沿って移動させ、対象収納棚3の正面位置に配置した後、入力部25を介した任意の方法で位置調整処理を起動することで、制御部30の位置調整部30aによる位置調整処理が開始される。また、この際、使用者は、対象収納棚3の収納棚番号を入力部25を介した任意の方法で位置認識装置20に入力する。
【0050】
位置調整部30aは、送信アンテナ23から電波を送信する(SA1)。この電波が到達した各識別タグ9や各位置調整用タグ10は当該電波による電磁誘導で駆動され、自己に予め記憶されたタグIDを送信する。位置調整部30aは、これらタグIDを各受信アンテナ24a〜24dにて受信する(SA2)。次いで、位置調整部30aは、対象収納棚3の収納棚番号に対応する全ての位置調整用識別タグ10のタグID(ここでは4つのタグID。以下「対応タグID」と称する)を位置調整DB28bから取得し(SA3)、これら全ての対応タグIDが、受信アンテナ24a〜24dにて受信されたか否かを判定する(SA4)。
【0051】
そして、位置調整部30aは、全ての対応タグIDが受信された場合には(SA4、Yes)、位置認識装置20が、対象収納棚3の正面の適切な位置に配置されていると判定し、位置OKの旨を出力部26を介して出力する(SA5)。一方、位置調整部30aは、いずれか一部の対応タグIDが受信されていない場合には(SA4、No)、対象収納棚3の正面の適切な位置に配置されていないと判定し、位置NGの旨を出力部26を介して出力する(SA6)。
【0052】
またこの際、位置調整部30aは、位置認識装置20の位置調整を行う際に参考となる調整参照情報を出力してもよい。この調整参照情報の内容は、例えば、SA2で受信した対応タグIDと、当該対応タグIDを受信した受信アンテナ24a〜24dの位置に基づいて決定する。すなわち、位置認識装置20が対象収納棚3の正面の適切な位置に配置されている場合、4つの受信アンテナ24a〜24dの各々と、対象収納棚3の四隅に配置された各位置調整用タグ10とは、それぞれ1対1で対応しているので、対応タグIDが受信できた受信アンテナ24a〜24dは、対象収納棚3の正面に対するほぼ適切な位置に配置されており、対応タグIDが受信できなかった受信アンテナ24a〜24dは、対象収納棚3の正面に対する非適切な位置に配置されていると考えられる。従って、SA2で対応タグIDを受信できなかった受信アンテナ24a〜24dを使用者に報知することで、位置認識装置20の位置調整を行うべき方向を示唆することが可能になるため、調整参照情報として、当該対応タグIDを受信できなかった受信アンテナ24a〜24dを示す情報を含める。この場合、使用者は、調整参照情報を見ることで、対応タグIDが受信できなかった受信アンテナ24a〜24dの方に位置認識装置20を移動させ、入力部25を介した任意の方法で位置調整処理を再起動し、位置OKの旨が出力される迄、同様の操作を繰り返す。この位置認識処理によれば、位置認識装置20を、対象収納棚3の正面の適切な位置に容易かつ確実に配置することができる。
【0053】
(処理−位置認識処理)
次に、位置認識処理について説明する。図13は位置認識処理のフローチャートである。上述した位置調整処理の完了後、使用者が入力部25を介した任意の方法で位置認識処理を起動することで、制御部30の位置認識部30bによる位置認識処理が開始される。なおSB1からSB2は、図12のSA1からSA2と同様であるため、その説明を省略する。位置認識部30bは、各タグIDがいずれの受信アンテナ24a〜24dで受信されたのかを特定し、各タグIDが所定数以上の受信アンテナ24a〜24dにて受信されたか否かに基づいて、当該位置認識装置20に対する識別タグ9の位置を認識する(SB3)。
【0054】
すなわち、この実施の形態では、図8の認識基準テーブル28cに示したように、受信されたタグIDが対象収納棚3に配置されている配置確率が、当該タグIDが受信された受信アンテナ24a〜24dの数に応じて異なると考える。そして、配置確率は、同一のタグIDが全ての受信アンテナ24a〜24dで受信された場合には100%、いずれか3つの受信アンテナ24a〜24dで受信された場合には75%、いずれか2つの受信アンテナ24a〜24dで受信された場合には50%、いずれか1つの受信アンテナ24a〜24dで受信された場合には25%とする。そして、位置認識部30bは、このように配置確率を認識基準テーブル28cを参照して決定し、当該決定した配置確率と、受信されたタグIDに基づいて基本情報DB28aから取得した物品4の名称及び属性と、対象収納棚3の収納棚番号とを対応付けて、認識結果情報として認識結果DB28dに格納する(SB4)。
【0055】
また、位置認識部30bは、配置確率が所定確率以上(ここでは75%以上とする)である場合に(SB5、Yes)、当該タグIDを発信した識別タグ9(及び当該識別タグ9が貼付された物品4)が対象収納棚3に配置されていると判定し、当該判定したタグIDに配置確定フラグを対応付けて認識結果DB28dに格納する(SB6)。そして、位置認識部30bは、この認識結果DB28dに格納された認識結果情報を出力部26を介して出力する(SB7)。使用者は、この出力内容において配置確定タグが付けられた物品4の名称等を目視することで、対象収納棚3に収納された物品4を容易かつ確実に把握することが可能となる。
【0056】
(処理−追加位置認識処理)
この追加位置認識処理について説明する。図14は追加位置認識処理のフローチャートである。使用者は、配置確率が25%や50%であり配置確定タグが付けられなかった物品4が存在する場合には、この追加位置認識処理を行う。具体的には、位置認識装置20を再び通路7に沿って移動させ、対象収納棚3と、当該対象収納棚3に隣接する収納棚3との中央正面位置(例えば図2において一点鎖線にて示す位置)に配置する。そして、使用者が入力部25を介した任意の方法で追加位置認識処理を起動することで、制御部30の追加位置認識部30cによる追加位置認識処理が開始される。なおステップSC1からSC2は、図12のSA1からSA2と同様であるため、その説明を省略する。
【0057】
追加位置認識部30cは、認識結果DB28dに格納されたタグIDの中で、配置確定タグに対応付けられていないタグIDを特定し(SC3)、当該特定したタグIDと受信されたタグIDを比較する。そして、当該特定したタグIDが、左右の受信アンテナ24a〜24dの中で、対象収納棚3に近い方の側の受信アンテナ24a〜24dによって受信された場合には(SC4、Yes)、当該特定したタグIDに対応する識別タグ9が、対象収納棚3に収容されているものと判定し、配置確定タグを当該タグIDに対応させて認識結果DB28dに格納する(SC5)。そして、追加位置認識部30cは、この認識結果DB28dに格納された認識結果情報を出力部26を介して出力する(SC6)。
【0058】
(効果)
このように本実施の形態によれば、識別タグ9からの電波が所定数以上の受信アンテナ24a〜24dにて受信されたか否かに基づいて、識別タグ9の位置を認識することで、単一の受信アンテナ24a〜24dによる受信結果に基づいて認識を行う場合に比べて、識別タグ9の位置を高精度で認識することが可能となる。
【0059】
また、送信アンテナ23と複数の受信アンテナ24a〜24dを分離して配置したので、送信アンテナ23と受信アンテナ24a〜24dの各々に適した出力や感度を設定することが可能となる。
【0060】
また、複数の受信アンテナ24a〜24dを、同一の平面内であって等距離間隔で配置したので、送信アンテナ23の位置を中心とする同一条件で識別タグ9からの電波を受信アンテナ24a〜24dにて受信できるので、これら受信アンテナ24a〜24dによる識別タグ9の受信状態を正確に対比でき、この対比結果に基づいて識別タグ9の位置を高精度で認識することが可能となる。
【0061】
また、複数の受信アンテナ24a〜24dを、平面内において移動させることができるので、収納棚3の形状若しくは大きさや位置認識装置20と収納棚3の相対距離に応じて受信アンテナ24a〜24dを移動させることで、受信アンテナ24a〜24dの受信範囲を容易かつ正確に調整することができる。
【0062】
また、複数の受信アンテナ24a〜24dを、送信アンテナ23を中心とする等距離の間隔を維持しつつ移動させることができるので、複数の受信アンテナ24a〜24dによる電波の受信条件を同一に維持しつつ、受信アンテナ24a〜24dを移動させることができ、受信アンテナ24a〜24dの受信範囲を一層容易かつ正確に調整することができる。
【0063】
また、送信アンテナ23を覆う電波吸収体を設けたので、所望の方向に位置する識別タグ9に対してのみ電波を送信することが可能となり、送信アンテナ23の指向性を高めて、識別タグ9の位置を一層高精度で認識することが可能となる。
【0064】
また、収納棚3において位置認識装置20の認識範囲の周縁に対応する位置に設置された位置調整用タグ10を認識することで、収納棚3に対する位置認識装置20の配置位置を把握でき、この配置位置を容易かつ確実に調整することができる。
【0065】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る一実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0066】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0067】
(受信アンテナの数及び配置位置について)
上記実施の形態では、受信アンテナ24a〜24dの設置数は4つとしたが、この設置数は任意に変更することができ、例えば、設置数を3つとし、送信アンテナ23の位置を重心位置とする正三角形の各頂点に配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施の形態に係る位置認識システムが設置された保管エリアの平面図である。
【図2】図1の位置認識システムを位置認識装置の背面側から見た図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】図3の側面図である。
【図5】位置認識装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図6】基本情報DBの基本情報の構成例を示す図である。
【図7】位置調整DBの位置調整情報の構成例を示す図である。
【図8】認識基準テーブルの構成例を示す図である。
【図9】認識結果DBの認識結果情報の構成例を示す図である。
【図10】送信アンテナの構造例を示す縦断面図である。
【図11】受信アンテナの移動機構の拡大図である。
【図12】位置調整処理のフローチャートである。
【図13】位置認識処理のフローチャートである。
【図14】追加位置認識処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0069】
1 位置認識システム
2 保管エリア
3 収納棚
3a、3b 枠板
3c 棚板
5 収納列
6 収納レーン
7 通路
8 電波通過防止体
9 識別タグ
10 位置調整用タグ
20 位置認識装置
21 本体部
21a 筐体
21b 車輪
22 支持体
22a、22b 支持ロッド
23 送信アンテナ
23a 電波吸収体
23b 送信範囲
24a〜24d 受信アンテナ
24e 受信範囲
25 入力部
26 出力部
27 R/W部
28 記憶部
28a 基本情報DB
28b 位置調整DB
28c 認識基準テーブル
28d 認識結果DB
29 電源部
30 制御部
30a 位置調整部
30b 位置認識部
30c 追加位置認識部
31 移動機構
31a、31e、31f 固定ステー
31b 固定具
31c、31d 連結ロッド
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDタグの如き電波発信器の位置を認識するための位置認識装置及び位置認識システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の物品にRFIDタグを添付し、このRFIDタグにて記憶された情報を電波にて取得することで、物品の位置等を管理するための物品管理システムが提案されている。例えば、特許文献1には、物品にRFIDタグを取り付け、このRFIDタグに対するデータの書き込みや読取りを行うRFID質問器等を用いて物品管理を行うシステムが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−92114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなシステムにおいては、RFIDタグからの電波を感度よく受信できるタグ読取り装置が必要となる。特に、現在国内で標準化が進められているUHF帯域の電子タグシステムでは、UHF帯の特性を活かした中距離(例えば7から10m程度)の伝送を行うことを目標としているため、タグ読取り装置にも高い出力が要求され、タグ読取り装置から送信される電波の到達範囲も広くなる。このような場合、隣接するタグ読取り装置の相互間での電波干渉が生じ易く、RFIDタグの読取りを行うことができなり、RFIDタグの位置認識を正確に行うことが困難になる可能性が懸念される。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、RFIDタグの如き電波発信器の位置を高精度で認識できる、電波発信器の位置認識装置及び位置認識システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の電波発信器の位置認識装置は、外部からの電波によって駆動される電波発信器との間において、電波の送信及び受信を行う複数の送受信手段と、前記電波発信器からの電波を受信した前記送受信手段の数に基づいて、当該位置認識装置に対する前記電波発信器の位置を認識する位置認識手段とを備えたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の電波発信器の位置認識装置は、請求項1に記載の電波発信器の位置認識装置において、前記複数の送受信手段は、前記電波発信器に対して電波を送信する送信手段と、前記送信手段と分離して配置されたもので、前記電波発信器から発信された電波を受信する複数の受信手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の電波発信器の位置認識装置は、請求項2に記載の電波発信器の位置認識装置において、前記複数の受信手段を、同一の平面内であって、前記送信手段を中心として等距離を隔てた位置に配置したことを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に記載の電波発信器の位置認識装置は、請求項3に記載の電波発信器の位置認識装置において、前記複数の受信手段を、前記平面内において移動させるための移動手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に記載の電波発信器の位置認識装置は、請求項4に記載の電波発信器の位置認識装置において、前記移動手段は、前記複数の受信手段を、前記送信手段を中心とする等距離の間隔を維持しつつ移動させることを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に記載の電波発信器の位置認識装置は、請求項2から5のいずれか一項に記載の電波発信器の位置認識装置において、前記送信手段は、電波を送信する送信アンテナと、前記送信アンテナの周囲空間の中で所定の送信方向以外に至る周囲空間から当該送信アンテナを覆う電波吸収体とを備えたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項7に記載の電波発信器の位置認識システムは、収納手段に配置された電波発信器の位置を認識するための位置認識システムであって、前記請求項1から6のいずれか一項に記載の電波発信器の位置認識装置と、前記収納手段において前記位置認識装置の認識範囲の周縁に対応する位置に設置された位置調整用の電波発信器とを備え、前記位置認識装置は、前記位置調整用の電波発信器からの電波を前記位置認識装置にて受信することにより当該位置調整用の電波発信器の位置を認識し、当該認識した位置調整用の電波発信器の位置に基づいて、前記収納手段に対する当該位置認識装置の位置を特定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の電波発信器の位置認識装置によれば、電波発信器からの電波が所定数以上の送受信手段にて受信されたか否かに基づいて電波発信器の位置を認識することで、単一の送受信手段による受信結果に基づいて認識を行う場合に比べて、電波発信器の位置を高精度で認識することが可能となる。
【0014】
また、請求項2に記載の電波発信器の位置認識装置によれば、送信手段と複数の受信手段を分離して配置したので、送信手段と受信手段の各々に適した出力や感度を設定することが可能となる。
【0015】
また、請求項3に記載の電波発信器の位置認識装置によれば、複数の受信手段を、同一の平面内であって等距離間隔で配置したので、送信手段の位置を中心とする同一条件で電波発信器からの電波を受信手段にて受信できるので、これら受信手段による電波発信器の受信状態を正確に対比でき、この対比結果に基づいて電波発信器の位置を高精度で認識することが可能となる。
【0016】
また、請求項4に記載の電波発信器の位置認識装置によれば、複数の受信手段を、平面内において移動させることができるので、収納手段の形状若しくは大きさや位置認識装置と収納手段の相対距離に応じて受信手段を移動させることで、受信手段の受信範囲を容易かつ正確に調整することができる。
【0017】
また、請求項5に記載の電波発信器の位置認識装置によれば、複数の受信手段を、送信手段を中心とする等距離の間隔を維持しつつ移動させることができるので、複数の受信手段による電波の受信条件を同一に維持しつつ受信手段を移動させることができ、受信手段の受信範囲を一層容易かつ正確に調整することができる。
【0018】
また、請求項6に記載の電波発信器の位置認識装置によれば、送信アンテナを覆う電波吸収体を設けたので、所望の方向に位置する電波発信器に対してのみ電波を送信することが可能となり、送信アンテナの指向性を高めて、電波発信器の位置を一層高精度で認識することが可能となる。
【0019】
また、請求項7に記載の電波発信器の位置認識装置によれば、収納手段において位置認識装置の認識範囲の周縁に対応する位置に設置された位置調整用の電波発信器を認識することで、収納手段に対する位置認識装置の配置位置を把握でき、この配置位置を容易かつ確実に調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
〔実施の形態〕
以下に添付図面を参照して、この発明に係る電波発信器の位置認識装置及び位置認識システムの一実施の形態を詳細に説明する。ただし、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0021】
(構成)
最初に、本実施の形態に係る位置認識システムの構成について説明する。図1は本実施の形態に係る位置認識システムが設置された保管エリアの平面図、図2は図1の位置認識システムを位置認識装置の背面側から見た図、図3は図2の要部拡大図、図4は図3の側面図である。この位置認識システム1は、保管エリア2に配置された複数の収納棚3と、これら複数の収納棚3の近傍に配置された位置認識装置20とを備えて構成されている。
【0022】
(構成―収納棚)
最初に、収納棚3の構成について説明する。収納棚3は、管理対象となる物品4(図3、4にのみ図示)を収納するもので、特許請求の範囲における収納手段に対応する。この収納棚3の具体的な構成な任意であるが、例えば図2に示すように、上下一対の水平状の枠板3aと左右一対の鉛直状の枠板3bとを組み合わせて形成された枠体に、複数の水平状の棚板3cを一定間隔を隔てて配置して構成されており、これら棚板3cの上面に任意の物品4を載置することができる。ここでは、このように構成された収納棚3を、鉛直状の枠板3bが隣接するように複数並設することによって、図1に示す収納列5が形成されており、2組の収納列を背中合わせに配置されることで収納レーン6が形成されている。そして、この収納レーン6が、通路7を介して複数並設されている。
【0023】
ここで、背中合わせに配置された2組の収納棚3の相互間(収納列5の相互間)には、電波通過防止体8が配置されている。この電波通過防止体8は、一方の収納列5の正面に設置された位置認識装置20から、当該一方の収納列5の収納棚3に対して送信された電波が、当該収納棚3の棚板3cの間等を通過して、他方の収納列5の収納棚3に到達してしまうことで生じる誤検知を防止するためのものである。この電波通過防止体8の具体的構成は任意であるが、電波を反射する反射体(例えば、導電率が高い金属であり、銅、アルミニウム、ニッケル等)や、電波を吸収する電波吸収体(例えば、フェライト等の磁性体粉末を樹脂に含有させて磁性損失によって電磁波減衰を図るものや、導電性物質を絶縁体に分散させて導電損失により電波減衰を図るもの)を用いた板状体を、2組の収納列5の相互間の全域に渡るように、鉛直面に沿って配置して構成することができる。なお、この電波通過防止体8は、さらに任意の位置に配置してもよく、例えば、同一の収納列5において相互に隣接する収納棚3の間に配置してもよい。
【0024】
このように構成された収納棚3に収納される各物品4には、図3に示すように、識別タグ9が一つ貼付されている。この識別タグ9は、特許請求の範囲における電波発信器に対応するもので、例えば電源非内蔵型(パッシブ型)のRFIDタグとして構成されており、位置認識装置20から送信された電波による電磁誘導によって駆動され、内部メモリに予め記憶された情報を電波送信する。この情報としては、識別タグ9を一意に識別するための識別情報(以下「タグID」)が含まれるが、さらに、当該識別タグ9が貼付された物品4の名称や属性を含めてもよい。
【0025】
また、各収納棚3の正面(通路7側の面)の四隅には、位置調整用タグ10が設けられている。この位置調整用タグ10は、特許請求の範囲における位置調整用の電波発信器に対応するもので、識別タグ9と同様に電源非内蔵型のRFIDタグとして構成されており、位置認識装置20から送信された電波による電磁誘導によって駆動され、内部メモリに予め記憶されたタグIDを電波送信する。
【0026】
(構成―位置認識装置)
次に、位置認識装置20の構成について説明する。図5は位置認識装置20の電気的構成を示すブロック図である。位置認識装置20は、識別タグ9の位置を認識することにより、当該識別タグ9が貼付されている物品4の位置を認識するものであり、概略的には、本体部21、支持体22(図3、4にのみ図示)、送信アンテナ23、及び複数の受信アンテナ24a〜24dを備えて構成されている。
【0027】
図3に示すように、本体部21は、位置認識装置20を支持する基台であり、中空状の筐体21aと、この筐体21aの底部に設けられた車輪21bを備えて構成されている。この車輪21bを用いて位置認識装置20を通路7に沿って容易に移動させることができる。
【0028】
また、本体部21には、図5に示すように、入力部25、出力部26、R/W部27、記憶部28、電源部29、及び制御部30が収容されている。
【0029】
入力部25は、位置認識装置20に情報を入力するための入力手段であり、その具体的な構成は任意であるが、例えばタッチパネルやディプスイッチを用いて構成されている。
【0030】
出力部26は、位置認識装置20から情報を出力するための出力手段であり、その具体的な構成は任意であるが、例えば液晶モニタやスピーカを用いて構成されている。ただし、これら入力部25や出力部26は、例えば有線又は無線ネットワークにて入出力を行うネットワークインターフェース等として構成してもよい。
【0031】
R/W部27は、識別タグ9や位置調整用タグ10との間における読取り及び書き込みを行うRFID用の読み書き手段である。
【0032】
記憶部28は、位置認識装置20の制御に必要な各種の情報を記憶する記憶手段であり、例えばHD(ハードディスク)やフラッシュメモリによって構成されている。特に、この記憶部28には、基本情報データベース(以下、データベースを「DB」と称する)28a、位置調整DB28b、認識基準テーブル28c、及び認識結果DB28dが任意の方法で記憶されている。
【0033】
基本情報DB28aは、図6に構成例を示すように、各識別タグ9のタグIDと、各識別タグ9が貼付された物品4の名称及び物品4の属性(例えば大きさ、重量、所有者)を対応付けて構成された情報(以下「基本情報」)を格納する基本情報格納手段である。
【0034】
位置調整DB28bは、図7に構成例を示すように、各収納棚3を特定するための情報(ここでは、各収納棚3を一意に特定するための収納棚番号)と、各収納棚3に貼付された位置調整用識別タグ10のタグID(ここでは、一つの収納棚3の四隅に異なる位置調整用識別タグ10が配置されているため、一つの収納棚番号に対して4つのタグID)を対応付けて構成された情報(以下「位置調整情報」)を格納する位置調整情報格納手段である。
【0035】
認識基準テーブル28cは、図8に構成例を示すように、タグIDを含む電波を受信した受信アンテナ24a〜24dの数と、この電波を発信した識別タグ9が認識対象とする収納棚3(以下「対象収納棚3」と称する)に配置されている確率(以下「配置確率」と称する)とを対応付けて構成されたテーブルである。
【0036】
認識結果DB28dは、図9に構成例を示すように、物品4の名称と、当該物品4の位置を特定するための情報(ここでは、収納棚3を特定するための収納棚番号)と、後述する位置認識処理で特定された配置確率及び配置確定フラグとを対応付けて構成された情報(以下「認識結果情報」)を格納する認識結果情報格納手段である。
【0037】
図5の電源部29は、位置認識装置20の各部に電力を供給するための電源手段であり、コードレス化を図ることで位置認識装置20を容易に移動させることが可能となるように、例えば電源部29は充電可能な二次電池として構成されている。ただし、コードレス化が不要な場合、電源部29は、商用電源から電力を取得する電源コードや交流/直流変換回路を用いて構成することができる。
【0038】
制御部30は、位置認識装置20の各部を制御するための制御手段であり、例えば、図示しないCPU(Central Processing Unit)及びこのCPU上で実行されるプログラム(OS及びアプリケーションプログラムを含む)によって構成されている。この制御部30は、機能概念的に、位置調整部30a、位置認識部30b、及び追加位置認識部30cを備える。これら各部の具体的機能については後述する。これら各部は、任意の記憶媒体やネットワークを介して位置認識プログラムを当該位置認識装置20にインストールすることで構成される。
【0039】
支持体22は、送信アンテナ23及び複数の受信アンテナ24a〜24dを支持するための支持手段であり、例えば、図3、4に示すように、本体部21から上方に延出された複数の金属製の支持ロッド22aと、送信アンテナ23から複数の受信アンテナ24a〜24dに至る方向に配置された複数の金属製の支持ロッド22bとを備え、これら支持ロッド22a、22bに送信アンテナ23及び複数の受信アンテナ24a〜24dが固定されている。また、支持体22は、複数の受信アンテナ24a〜24dを移動可能とする移動機構31を備えているが、この移動機構31については後述する。
【0040】
送信アンテナ23及び複数の受信アンテナ24a〜24dは、特許請求の範囲における送受信手段を構成するものであり、送信アンテナ23は特許請求の範囲における送信手段に対応し、受信アンテナ24a〜24dは特許請求の範囲における受信手段に対応する。これら送信アンテナ23と受信アンテナ24a〜24dは、相互に分離して構成されているため、送信アンテナ23及び受信アンテナ24a〜24dの機能を単一のアンテナにより得る場合に比べて、高感度の位置認識を行うことが可能となる。すなわち、送信出力は法律により上限が定められているが、受信感度は上限は規定されていないため、これら送信アンテナ23と受信アンテナ24a〜24dを分離することで、各々に適した出力や感度を設定することが可能となる。また、送信アンテナ23の出力は上限まで高めることが好ましいが、この場合には認識対象以外の識別タグ9に対しても電波が到達する可能性が高まって誤認識の原因になり得るため、送信アンテナ23については指向性を制御することが望まれる。一方、受信アンテナ24a〜24dは、受信範囲を極力広範にすることが好ましい。従って、これら送信アンテナ23と受信アンテナ24a〜24dを分離することで、各々に適した指向性制御を行うことが可能となる。
【0041】
送信アンテナ23の指向性を制御するための構造例を図10に縦断面図として示す。送信アンテナ23の周囲には、当該送信アンテナ23の周囲空間の中で、所定の送信方向(位置認識装置20の正面に至る方向)以外に至る周囲空間から当該送信アンテナ23を覆う電波吸収体23aを設けている。この電波吸収体23aは、上述した電波通過防止体8と同様に構成することができ、このように電波吸収体23aを設けることで、送信アンテナ23から送信された電波を所定の送信方向のみに送信して、誤認識の可能性を低減することが可能となる。
【0042】
次に、これら送信アンテナ23及び複数の受信アンテナ24a〜24dの配置位置について説明する。図3、4に示すように、送信アンテナ23は、本体部21の鉛直上方位置に配置されている。この送信アンテナ23の送信範囲(収納棚3の正面位置における電波の送信範囲)23bは、図3にその外縁を示すように、送信アンテナ23を中心とした円状となり、1台の収納棚3の正面形状に合致するように(収納棚3の四隅に配置された位置調整用タグ10に電波が到達する範囲であって、それ以上の上方又は側方への電波の送信が極力少なくなるように)調整されている。
【0043】
また、複数の受信アンテナ24a〜24dは、同一の平面(図3に示す平面であり、以下「受信面」と称する)内であって、位置認識装置20の正面又は背面から見た場合に、送信アンテナ23を中心として等距離を隔てた位置に配置されている。各受信アンテナ24a〜24dの受信範囲(位置認識装置20の正面位置における電波の受信範囲)24eは、図3にその外縁を示すように、受信アンテナ24a〜24dを中心とした円状となり、相互に若干重複するように、かつ、複数の受信アンテナ24a〜24dの受信範囲によって1台の収納棚3の正面形状に合致するように(収納棚3の上下左右の最外側に収納された物品4に貼付された識別タグ9からの電波が受信可能となる範囲であって、当該収納棚3に隣接する他の収納棚3に収納された物品4に貼付された識別タグ9からの電波を極力受信しない範囲となるように)調整されている。
【0044】
ここで、これら送信アンテナ23の送信範囲23bや各受信アンテナ24a〜24dの受信範囲24eの最適範囲は、収納棚3の形状若しくは大きさや位置認識装置20と収納棚3の相対距離(以下、これらの条件を「認識条件」と称する)に応じて異なり得るため、これら送信範囲23bや受信範囲24eを認識条件に応じて調整可能とすることが好ましい。送信アンテナ23の送信範囲23bについては、電波送信出力を変えることで調整可能である。一方、受信アンテナ24a〜24dの受信範囲24eは、電波受信感度を変えることで調整可能であるとも考えられるが、受信アンテナ24a〜24dを同一位置に固定したままで電波受信感度のみを変えた場合には、各受信アンテナ24a〜24dの受信範囲24eが相互に重複しなくなることで、認識対象である収納棚3の識別タグ9からの電波が受信できなくなる範囲が生じたり、各受信アンテナ24a〜24dの受信範囲24eにおける相互の重複範囲が広くなり過ぎることで、同一の識別タグ9からの電波を複数の受信アンテナ24a〜24dが受信する可能性が高くなったりするために好ましくない。
【0045】
このため本実施の形態では、受信アンテナ24a〜24dを移動可能とすることでその受信範囲24eを調整することが可能となるように、受信アンテナ24a〜24dを移動させる移動機構31が設けられている。この移動機構31の拡大図を図11に示す。この移動機構31は、特許請求の範囲における移動手段に対応するもので、各受信アンテナ24a〜24d(図11では受信アンテナ24a〜24dの図示を省略する)を、受信面内において移動させる。具体的には、移動機構31は、固定ステー31a及び固定具31bを備えて構成されている。固定ステー31aは、送信アンテナ23から複数の受信アンテナ24a〜24dに至る方向に配置された支持ロッド22bを挿通させる挿通管であり、この固定ステー31aの前面に受信アンテナ24a〜24dが固定されている。固定具31bは、固定ステー31aを支持ロッド22bに固定するための固定手段である。この構造では、固定具31bを緩めた状態で受信アンテナ24a〜24dと共に固定ステー31aを支持ロッド22bに沿って所望の位置に移動させた後、固定具31bを絞めて受信アンテナ24a〜24dと共に固定ステー31aを支持ロッド22bに固定することで、受信アンテナ24a〜24dを容易に移動可能である。
【0046】
特にこの移動機構31は、複数の受信アンテナ24a〜24dを、送信アンテナ23を中心とする等距離の間隔を維持しつつ移動可能なように構成されている。具体的には、移動機構31には、連結ロッド31c、31dと、固定ステー31e、31fが設けられている。連結ロッド31cは、鉛直方向に沿って並設された受信アンテナ24aと24bを連結し、あるいは、鉛直方向に沿って並設された受信アンテナ24cと24dを連結するもので、鉛直方向に沿って配置されている。連結ロッド31dは、水平方向に沿って並設された受信アンテナ24aと24cを連結し、あるいは、水平方向に沿って並設された受信アンテナ24bと24dを連結するもので、水平方向に沿って配置されている。固定ステー31eは連結ロッド31cを挿通させる挿通管であり、固定ステー31fは連結ロッド31dを挿通させる挿通管であって、これら固定ステー31e、31fによって連結ロッド31c、31dの配置方向を水平状又は鉛直状に維持することで、これら連結ロッド31cと連結ロッド31dを、各受信アンテナ24a〜24dの取り付け位置において相互に直交する状態に維持することができる。従って、複数の受信アンテナ24a〜24dの一部のみを支持ロッド22bに沿って移動させることができず、全ての受信アンテナ24a〜24dを同時に支持ロッド22bに沿って同一距離だけ同一方向に移動させる必要が生じ、結果として、これら複数の受信アンテナ24a〜24dを、送信アンテナ23を中心とする等距離の間隔を維持しつつ移動させることが可能となる。このため、各受信アンテナ24a〜24dの受信範囲を、適切な相対関係を維持させつつ調整することが可能となる。ただし、このように受信アンテナ24a〜24dを移動させるための構造としては、他の構造を適用してもよい。
【0047】
(処理)
次に、このように構成された位置認識システム1における処理について説明する(以下の各処理の説明ではステップを「S」と略記する)。この処理は、収納棚3に対する位置認識装置20の位置を調整するための位置調整処理、収納棚3に配置された物品4の位置を当該物品4に貼付された識別タグ9を用いて認識するための位置認識処理、位置認識処理で位置が確定できなかった物品4の位置を確定させる追加位置認識処理に大別される。
【0048】
(処理−位置調整処理)
最初に、位置調整処理について説明する。図12は位置調整処理のフローチャートである。なお、以下の説明では、使用者が位置認識装置20を直接操作する場合について説明するが、実際には、夜間の無人時間帯等において位置認識装置20を自動運転させることも可能であり、この場合には、後述する使用者との間の入出力については、予め位置認識装置20に設定しておいたり、公知の記憶装置に蓄積しておくこと等ができる。
【0049】
使用者が位置認識装置20を通路7に沿って移動させ、対象収納棚3の正面位置に配置した後、入力部25を介した任意の方法で位置調整処理を起動することで、制御部30の位置調整部30aによる位置調整処理が開始される。また、この際、使用者は、対象収納棚3の収納棚番号を入力部25を介した任意の方法で位置認識装置20に入力する。
【0050】
位置調整部30aは、送信アンテナ23から電波を送信する(SA1)。この電波が到達した各識別タグ9や各位置調整用タグ10は当該電波による電磁誘導で駆動され、自己に予め記憶されたタグIDを送信する。位置調整部30aは、これらタグIDを各受信アンテナ24a〜24dにて受信する(SA2)。次いで、位置調整部30aは、対象収納棚3の収納棚番号に対応する全ての位置調整用識別タグ10のタグID(ここでは4つのタグID。以下「対応タグID」と称する)を位置調整DB28bから取得し(SA3)、これら全ての対応タグIDが、受信アンテナ24a〜24dにて受信されたか否かを判定する(SA4)。
【0051】
そして、位置調整部30aは、全ての対応タグIDが受信された場合には(SA4、Yes)、位置認識装置20が、対象収納棚3の正面の適切な位置に配置されていると判定し、位置OKの旨を出力部26を介して出力する(SA5)。一方、位置調整部30aは、いずれか一部の対応タグIDが受信されていない場合には(SA4、No)、対象収納棚3の正面の適切な位置に配置されていないと判定し、位置NGの旨を出力部26を介して出力する(SA6)。
【0052】
またこの際、位置調整部30aは、位置認識装置20の位置調整を行う際に参考となる調整参照情報を出力してもよい。この調整参照情報の内容は、例えば、SA2で受信した対応タグIDと、当該対応タグIDを受信した受信アンテナ24a〜24dの位置に基づいて決定する。すなわち、位置認識装置20が対象収納棚3の正面の適切な位置に配置されている場合、4つの受信アンテナ24a〜24dの各々と、対象収納棚3の四隅に配置された各位置調整用タグ10とは、それぞれ1対1で対応しているので、対応タグIDが受信できた受信アンテナ24a〜24dは、対象収納棚3の正面に対するほぼ適切な位置に配置されており、対応タグIDが受信できなかった受信アンテナ24a〜24dは、対象収納棚3の正面に対する非適切な位置に配置されていると考えられる。従って、SA2で対応タグIDを受信できなかった受信アンテナ24a〜24dを使用者に報知することで、位置認識装置20の位置調整を行うべき方向を示唆することが可能になるため、調整参照情報として、当該対応タグIDを受信できなかった受信アンテナ24a〜24dを示す情報を含める。この場合、使用者は、調整参照情報を見ることで、対応タグIDが受信できなかった受信アンテナ24a〜24dの方に位置認識装置20を移動させ、入力部25を介した任意の方法で位置調整処理を再起動し、位置OKの旨が出力される迄、同様の操作を繰り返す。この位置認識処理によれば、位置認識装置20を、対象収納棚3の正面の適切な位置に容易かつ確実に配置することができる。
【0053】
(処理−位置認識処理)
次に、位置認識処理について説明する。図13は位置認識処理のフローチャートである。上述した位置調整処理の完了後、使用者が入力部25を介した任意の方法で位置認識処理を起動することで、制御部30の位置認識部30bによる位置認識処理が開始される。なおSB1からSB2は、図12のSA1からSA2と同様であるため、その説明を省略する。位置認識部30bは、各タグIDがいずれの受信アンテナ24a〜24dで受信されたのかを特定し、各タグIDが所定数以上の受信アンテナ24a〜24dにて受信されたか否かに基づいて、当該位置認識装置20に対する識別タグ9の位置を認識する(SB3)。
【0054】
すなわち、この実施の形態では、図8の認識基準テーブル28cに示したように、受信されたタグIDが対象収納棚3に配置されている配置確率が、当該タグIDが受信された受信アンテナ24a〜24dの数に応じて異なると考える。そして、配置確率は、同一のタグIDが全ての受信アンテナ24a〜24dで受信された場合には100%、いずれか3つの受信アンテナ24a〜24dで受信された場合には75%、いずれか2つの受信アンテナ24a〜24dで受信された場合には50%、いずれか1つの受信アンテナ24a〜24dで受信された場合には25%とする。そして、位置認識部30bは、このように配置確率を認識基準テーブル28cを参照して決定し、当該決定した配置確率と、受信されたタグIDに基づいて基本情報DB28aから取得した物品4の名称及び属性と、対象収納棚3の収納棚番号とを対応付けて、認識結果情報として認識結果DB28dに格納する(SB4)。
【0055】
また、位置認識部30bは、配置確率が所定確率以上(ここでは75%以上とする)である場合に(SB5、Yes)、当該タグIDを発信した識別タグ9(及び当該識別タグ9が貼付された物品4)が対象収納棚3に配置されていると判定し、当該判定したタグIDに配置確定フラグを対応付けて認識結果DB28dに格納する(SB6)。そして、位置認識部30bは、この認識結果DB28dに格納された認識結果情報を出力部26を介して出力する(SB7)。使用者は、この出力内容において配置確定タグが付けられた物品4の名称等を目視することで、対象収納棚3に収納された物品4を容易かつ確実に把握することが可能となる。
【0056】
(処理−追加位置認識処理)
この追加位置認識処理について説明する。図14は追加位置認識処理のフローチャートである。使用者は、配置確率が25%や50%であり配置確定タグが付けられなかった物品4が存在する場合には、この追加位置認識処理を行う。具体的には、位置認識装置20を再び通路7に沿って移動させ、対象収納棚3と、当該対象収納棚3に隣接する収納棚3との中央正面位置(例えば図2において一点鎖線にて示す位置)に配置する。そして、使用者が入力部25を介した任意の方法で追加位置認識処理を起動することで、制御部30の追加位置認識部30cによる追加位置認識処理が開始される。なおステップSC1からSC2は、図12のSA1からSA2と同様であるため、その説明を省略する。
【0057】
追加位置認識部30cは、認識結果DB28dに格納されたタグIDの中で、配置確定タグに対応付けられていないタグIDを特定し(SC3)、当該特定したタグIDと受信されたタグIDを比較する。そして、当該特定したタグIDが、左右の受信アンテナ24a〜24dの中で、対象収納棚3に近い方の側の受信アンテナ24a〜24dによって受信された場合には(SC4、Yes)、当該特定したタグIDに対応する識別タグ9が、対象収納棚3に収容されているものと判定し、配置確定タグを当該タグIDに対応させて認識結果DB28dに格納する(SC5)。そして、追加位置認識部30cは、この認識結果DB28dに格納された認識結果情報を出力部26を介して出力する(SC6)。
【0058】
(効果)
このように本実施の形態によれば、識別タグ9からの電波が所定数以上の受信アンテナ24a〜24dにて受信されたか否かに基づいて、識別タグ9の位置を認識することで、単一の受信アンテナ24a〜24dによる受信結果に基づいて認識を行う場合に比べて、識別タグ9の位置を高精度で認識することが可能となる。
【0059】
また、送信アンテナ23と複数の受信アンテナ24a〜24dを分離して配置したので、送信アンテナ23と受信アンテナ24a〜24dの各々に適した出力や感度を設定することが可能となる。
【0060】
また、複数の受信アンテナ24a〜24dを、同一の平面内であって等距離間隔で配置したので、送信アンテナ23の位置を中心とする同一条件で識別タグ9からの電波を受信アンテナ24a〜24dにて受信できるので、これら受信アンテナ24a〜24dによる識別タグ9の受信状態を正確に対比でき、この対比結果に基づいて識別タグ9の位置を高精度で認識することが可能となる。
【0061】
また、複数の受信アンテナ24a〜24dを、平面内において移動させることができるので、収納棚3の形状若しくは大きさや位置認識装置20と収納棚3の相対距離に応じて受信アンテナ24a〜24dを移動させることで、受信アンテナ24a〜24dの受信範囲を容易かつ正確に調整することができる。
【0062】
また、複数の受信アンテナ24a〜24dを、送信アンテナ23を中心とする等距離の間隔を維持しつつ移動させることができるので、複数の受信アンテナ24a〜24dによる電波の受信条件を同一に維持しつつ、受信アンテナ24a〜24dを移動させることができ、受信アンテナ24a〜24dの受信範囲を一層容易かつ正確に調整することができる。
【0063】
また、送信アンテナ23を覆う電波吸収体を設けたので、所望の方向に位置する識別タグ9に対してのみ電波を送信することが可能となり、送信アンテナ23の指向性を高めて、識別タグ9の位置を一層高精度で認識することが可能となる。
【0064】
また、収納棚3において位置認識装置20の認識範囲の周縁に対応する位置に設置された位置調整用タグ10を認識することで、収納棚3に対する位置認識装置20の配置位置を把握でき、この配置位置を容易かつ確実に調整することができる。
【0065】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る一実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0066】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0067】
(受信アンテナの数及び配置位置について)
上記実施の形態では、受信アンテナ24a〜24dの設置数は4つとしたが、この設置数は任意に変更することができ、例えば、設置数を3つとし、送信アンテナ23の位置を重心位置とする正三角形の各頂点に配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施の形態に係る位置認識システムが設置された保管エリアの平面図である。
【図2】図1の位置認識システムを位置認識装置の背面側から見た図である。
【図3】図2の要部拡大図である。
【図4】図3の側面図である。
【図5】位置認識装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図6】基本情報DBの基本情報の構成例を示す図である。
【図7】位置調整DBの位置調整情報の構成例を示す図である。
【図8】認識基準テーブルの構成例を示す図である。
【図9】認識結果DBの認識結果情報の構成例を示す図である。
【図10】送信アンテナの構造例を示す縦断面図である。
【図11】受信アンテナの移動機構の拡大図である。
【図12】位置調整処理のフローチャートである。
【図13】位置認識処理のフローチャートである。
【図14】追加位置認識処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0069】
1 位置認識システム
2 保管エリア
3 収納棚
3a、3b 枠板
3c 棚板
5 収納列
6 収納レーン
7 通路
8 電波通過防止体
9 識別タグ
10 位置調整用タグ
20 位置認識装置
21 本体部
21a 筐体
21b 車輪
22 支持体
22a、22b 支持ロッド
23 送信アンテナ
23a 電波吸収体
23b 送信範囲
24a〜24d 受信アンテナ
24e 受信範囲
25 入力部
26 出力部
27 R/W部
28 記憶部
28a 基本情報DB
28b 位置調整DB
28c 認識基準テーブル
28d 認識結果DB
29 電源部
30 制御部
30a 位置調整部
30b 位置認識部
30c 追加位置認識部
31 移動機構
31a、31e、31f 固定ステー
31b 固定具
31c、31d 連結ロッド
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部からの電波によって駆動される電波発信器との間において、電波の送信及び受信を行う複数の送受信手段と、
前記電波発信器からの電波を受信した前記送受信手段の数に基づいて、当該位置認識装置に対する前記電波発信器の位置を認識する位置認識手段と、
を備えたことを特徴とする電波発信器の位置認識装置。
【請求項2】
前記複数の送受信手段は、
前記電波発信器に対して電波を送信する送信手段と、
前記送信手段と分離して配置されたもので、前記電波発信器から発信された電波を受信する複数の受信手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電波発信器の位置認識装置。
【請求項3】
前記複数の受信手段を、同一の平面内であって、前記送信手段を中心として等距離を隔てた位置に配置したこと、
を特徴とする請求項2に記載の電波発信器の位置認識装置。
【請求項4】
前記複数の受信手段を、前記平面内において移動させるための移動手段、
を備えたことを特徴とする請求項3に記載の電波発信器の位置認識装置。
【請求項5】
前記移動手段は、前記複数の受信手段を、前記送信手段を中心とする等距離の間隔を維持しつつ移動させること、
を特徴とする請求項4に記載の電波発信器の位置認識装置。
【請求項6】
前記送信手段は、
電波を送信する送信アンテナと、
前記送信アンテナの周囲空間の中で所定の送信方向以外に至る周囲空間から当該送信アンテナを覆う電波吸収体と、
を備えたことを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の電波発信器の位置認識装置。
【請求項7】
収納手段に配置された電波発信器の位置を認識するための位置認識システムであって、
前記請求項1から6のいずれか一項に記載の電波発信器の位置認識装置と、
前記収納手段において前記位置認識装置の認識範囲の周縁に対応する位置に設置された位置調整用の電波発信器とを備え、
前記位置認識装置は、前記位置調整用の電波発信器からの電波を前記位置認識装置にて受信することにより当該位置調整用の電波発信器の位置を認識し、当該認識した位置調整用の電波発信器の位置に基づいて、前記収納手段に対する当該位置認識装置の位置を特定すること、
を特徴とする電波発信器の位置認識システム。
【請求項1】
外部からの電波によって駆動される電波発信器との間において、電波の送信及び受信を行う複数の送受信手段と、
前記電波発信器からの電波を受信した前記送受信手段の数に基づいて、当該位置認識装置に対する前記電波発信器の位置を認識する位置認識手段と、
を備えたことを特徴とする電波発信器の位置認識装置。
【請求項2】
前記複数の送受信手段は、
前記電波発信器に対して電波を送信する送信手段と、
前記送信手段と分離して配置されたもので、前記電波発信器から発信された電波を受信する複数の受信手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電波発信器の位置認識装置。
【請求項3】
前記複数の受信手段を、同一の平面内であって、前記送信手段を中心として等距離を隔てた位置に配置したこと、
を特徴とする請求項2に記載の電波発信器の位置認識装置。
【請求項4】
前記複数の受信手段を、前記平面内において移動させるための移動手段、
を備えたことを特徴とする請求項3に記載の電波発信器の位置認識装置。
【請求項5】
前記移動手段は、前記複数の受信手段を、前記送信手段を中心とする等距離の間隔を維持しつつ移動させること、
を特徴とする請求項4に記載の電波発信器の位置認識装置。
【請求項6】
前記送信手段は、
電波を送信する送信アンテナと、
前記送信アンテナの周囲空間の中で所定の送信方向以外に至る周囲空間から当該送信アンテナを覆う電波吸収体と、
を備えたことを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の電波発信器の位置認識装置。
【請求項7】
収納手段に配置された電波発信器の位置を認識するための位置認識システムであって、
前記請求項1から6のいずれか一項に記載の電波発信器の位置認識装置と、
前記収納手段において前記位置認識装置の認識範囲の周縁に対応する位置に設置された位置調整用の電波発信器とを備え、
前記位置認識装置は、前記位置調整用の電波発信器からの電波を前記位置認識装置にて受信することにより当該位置調整用の電波発信器の位置を認識し、当該認識した位置調整用の電波発信器の位置に基づいて、前記収納手段に対する当該位置認識装置の位置を特定すること、
を特徴とする電波発信器の位置認識システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−91432(P2010−91432A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262154(P2008−262154)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】
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