説明

電波監視装置

【課題】電波発射源から発射される電波の実効輻射電力を検知できる電波監視装置を提供すること。
【解決手段】電波発射源Tから発射された電波を受信する電波受信部11と、この電波受信部11で受信した受信信号をデジタル化して受信データに変換する変換部12R、121〜12Nと、この変換部12R、121〜12Nで変換した受信データを処理して電波発射源Tの距離を求め、この求めた距離情報を用いて得られた電波減衰量および受信信号の受信電力、電波受信部11のアンテナ利得をもとに、電波発射源Tの実効輻射電力を求める信号処理部15とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電波発射源から発射された電波を監視する電波監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電波監視装置は違法な電波などを監視する装置で、たとえば電波発射源から発射された電波の到来方向や中心周波数、帯域幅、スプリアス強度などを検出している。また、その検出結果を表示器の画面上などに表示している。
【0003】
従来の電波監視装置は、電波の到来方向を検知する場合、たとえば電波発射源から発射された電波を複数のアンテナで受信し、その受信した信号を処理し、電波の到来方向を検知し推定している(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−209358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電波監視装置は、電波の到来方向および電波の質、たとえば中心周波数や帯域幅、スプリアス強度などを検知している。しかし、電波発射源の実効輻射電力を測定できないため、電波発射源から発射される電波の出力が違法であるかどうかを監視できないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記した欠点を解決し、電波発射源から発射される電波の実効輻射電力を測定できる電波監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電波監視装置は、電波発射源から発射された電波を受信する電波受信手段と、この電波受信手段で受信した受信信号をデジタル化して受信データに変換する変換手段と、この変換手段で変換した前記受信データを処理し、前記電波発射源の距離を求める距離測定手段と、この距離測定手段で求めた距離情報をもとにその距離による電波減衰量を求める電波減衰量算出手段と、この電波減衰量算出手段で求めた前記電波減衰量および前記受信信号の受信電力、前記電波受信手段のアンテナ利得をもとに、前記電波発射源の実効輻射電力を求める実効輻射電力算出手段とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電波監視に必要な情報、たとえば電波発射源から発射される電波の実効輻射電力を測定できる電波監視装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施形態について図1の回路構成図を参照して説明する。
【0009】
電波発射源Tから発射された電波を受信する電波受信部11は、基準アンテナ11aとアレーアンテナ11bとで構成されている。基準アンテナ11aはたとえば1個の基準用アンテナ素子11Rから形成され、アレーアンテナ11bは、たとえば複数のN個のアレー用アンテナ素子111〜11Nから形成されている。基準アンテナ11aとアレーアンテナ11bは近傍に配置され、N個のアレ用ーアンテナ素子111〜11Nは、たとえばある間隔で直線上に設けるアレー配列、あるいは、縦方向および横方向にそれぞれある間隔で設ける2次元配列に配置される。
【0010】
図1では、基準アンテナ11aとアレーアンテナ11bを別に設けている。しかし、アレー用アンテナ素子111〜11Nの1つを基準アンテナ11aとして用いることもできる。
【0011】
基準アンテナ11aで受信された受信信号は周波数変換部12Rに供給される。アレー用アンテナ素子111〜11Nは切替器SWに接続されている。アレー用アンテナ素子111〜11Nで受信された受信信号は、たとえば切替器SWの動作によって、ある時間間隔で1つずつ順に取り出され、周波数変換部121〜12Nに供給される。周波数変換部12R、121〜12Nに供給された受信信号はそれぞれ、局部発振部13から加えられる局発信号によって周波数変換され、AD変換部14R、141〜14Nに送られる。
【0012】
AD変換部14R、141〜14Nでは受信信号をデジタル化し、受信データに変換する。AD変換部14R、141〜14Nから出力する受信データは信号処理部15に送られる。
【0013】
信号処理部15は受信データを処理し、電波発射源から発射された電波の実効輻射電力(以下、EIRPという)などの計算を行い、その計算結果を操作表示入力部16に送る。操作表示入力部16は、信号処理部15の計算結果を画面上に表示し、また、操作者からの入力を受け付ける。
【0014】
たとえば、操作表示入力部16は、操作者から受信希望周波数帯が入力されると、その受信希望周波数帯情報を信号処理部15に送る。信号処理部15は、希望周波数帯情報が送られてくると、周波数設定信号Cを局部発振部13に送り、受信希望周波数帯の信号を受信できるように、局部発振部13が発生する局部発振信号の周波数を設定する。
【0015】
ここで、信号処理部15について図2の回路構成図を参照して説明する。
【0016】
信号処理部15は複数のメモリ21R、211〜21Nなどから構成されている。メモリ21R、211〜21Nは、AD変換部14R、141〜14Nから送られる受信データをそれぞれ、受信データDR、D1〜DNとして一時的に記憶する。
【0017】
メモリ21Rに記憶した受信データDRは信号解析部22に送られる。信号解析部22は受信データDRを処理、たとえば周波数解析を行い、電波の質たとえば中心周波数23aや帯城幅23b、スプリアス強度23c、受信電力23dなどを検出する。これらの検出情報はEIRP計算処理部24に送られる。なお、EIRP計算処理部24には、アンテナ利得テーブルなどから、受信電波の周波数および方向毎に測定した電波受信手段11のアンテナ利得データ25が送られている。
【0018】
また、メモリ21R、211〜21Nに記憶した受信データDR、D1〜DNは相関マトリクス処理部26に送られる。相関マトリクス処理部26は、受信データDR、D1〜DNをもとに相関マトリクスを求め、求めた相関マトリクスを2次元FFT部27に送る。
【0019】
2次元FFT部27は、相関マトリクス処理部26で得た相関マトリクスをもとに2次元FFTを行い、電波ホログラフィ像28を出力する。この電波ホログラフィ像28はピーク検出処理部29に送られる。ピーク検出処理部29は、電波ホログラフィ像28の出力からピーク検出を行い、電波発射源Tの位置を特定し、電波発射源Tまでの距離を算出した距離算出結果30、および、電波発射源Tの方向を探知した方向探知結果31を出力する。これらの距離算出結果30および方向探知結果31は、たとえばEIRP計算処理部24に送られる。
【0020】
EIRP計算処理部24は、信号解析部22から送られる中心周波数23aや受信電力23d、および、受信アンテナ利得25aや距離計算結果30をもとに、式(1)によってEIRPを計算し、電波発射源Tから発射された電波のEIRPを検出する。
【0021】
Pt=Pr−Gra+Lspan…(1)
Pt:電波発射源の実効輻射電力(dBW)
Pr:受信電力(dBW)
Gra:受信アンテナ利得(dB)…予め、周波数および方向毎のアンテナ利得を測定し、アンテナ利得テーブルに蓄積しておく。
【0022】
Lspan:電波発射源および受信点間の距離による減衰(dB)で、式(2)の関係がある。
【0023】
Lspan=20log(4×π×D/λ)…(2)
D:電波発射源とアレーアンテナとの距離
λ:中心周波数の波長
そして、上記の方法で算出した電波発射源のEIRP、および、信号解析部22で検知した中心周波数やスプリアス強度、帯域幅などの各データが、EIRP計算処理部24からたとえば操作表示入力部16に送られる。
【0024】
なお、上記したように、電波発射源の距離および電波発射源の方向を検知する場合、メモリ21R、211〜21Nに蓄積した受信データDR、D1〜DNを用いて演算処理が行われる。この演算処理は、たとえば図3に示すようなパラメータを用いて行われる。たとえば電波発射源Tまでの距離をz、電波受信部11と電波発射源Tとを結ぶz軸に直交する軸をx軸とする。また、基準用アンテナ11Rのx座標をξrefとし、N個のアレイ用アンテナ素子111〜11Nのx座標をξ1,ξ2,…,ξNとする。
【0025】
そして、たとえば基準用アンテナ11の受信信号に基づく受信データDRをフーリエ変換しその複素共役を求める。また、アレイ用アンテナ素子111〜11Nの受信信号に基づく受信データD1〜DNをフーリエ変換する。そして、受信データDRをフーリエ変換した演算結果と、受信データD1〜DNをフーリエ変換した演算結果とを、電波発射源Tから発射される電波の周波数範囲で掛け合わせて足しこみ、相関マトリクスu(ξn)を求める。さらに、この演算結果u (ξn)をフレネル近似を用いた式に代入し、電波発射源のホログラフィ再生像を求める。その後、ホログラフィ再生像が最大となる座標から電波発射源Tの位置を特定し、電波発射源Tの距離および電波発射源Tの方向を検知する。
【0026】
次に、本発明の動作について図4のフロー図を参照して説明する。
【0027】
まず、操作表示入力部16からの入力に基づいて受信希望周波数帯を設定する(S401)。次に、受信希望周波数帯の信号を受信するために各定数、たとえば局部発振器13の局発信号の周波数を設定する(S402)。次に、到来電波を電波受信手段11で受信する(S403)。次に、AD変換によってデジタル化した受信データを蓄積する(S404)。次に、必要期間、たとえば電波発射源Tの位置を特定するために必要なデータを収集する期間が完了したか否かを判定する(S405)。
【0028】
この判定で、必要期間のデータの蓄積を完了したと判定した場合、周波数解析部22において、メモリ21Rの受信データDRをもとに、受信信号の周波数解析を行い(S406)、到来電波の中心周波数23aおよび帯域幅23b、スプリアス強度23c、受信電力23dなどを検知する。
【0029】
次に、各受信データDR、D1〜DNをもとに相関関数を計算し、相関マトリクスu(ξn)を作成する(S407)。次に、2次元FFTを行う(S408)。次に、電波発射源Tの方向を検知する測距処理を行う(S410)。この測距処理(S410)の後、S403〜S410を繰り返す。
【0030】
また、S405の判定で、必要期間のデータの蓄積を完了していないと判定した場合はS403に戻る。
【0031】
ここで、上記の測定結果を操作表示入力部16に表示した画面例を図5に示す。たとえば横軸に周波数(MHz)が示され、縦軸にレベル(dB)が示される。
【0032】
そして、画面上に、計算で得た送信波形51や受信した受信波形52などが示される。規定値がたとえば枠53で表示され、たとえば送信波形51の振幅(EIRP)が枠53の外まで延び、規定値を越えていると判定される。また、枠53の外にスプリアス54が表示されている。中心周波数55や帯域幅は枠53内で、規定値の範囲内であることが表示されている。この場合、規定値を越えた項目、たとえばEIRPおよびスプリアスを枠56で囲み、規定値をオーバしているがどうかを識別できるようにしている。
【0033】
このように、信号処理部15の計算結果を操作表示入力部16で画面表示すれば、送信波形が規定値をオーバしているがどうかが容易に検知できる。
【0034】
上記した本発明によれば、電波監視に必要な情報、たとえば電波発射源から発射される電波の実効輻射電力を検知できる電波監視装置を実現できる。したがって、実効輻射電力が規定値を超えているかどうかの運用者による確認が容易になり、運用効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態を説明する回路構成図である。
【図2】本発明に係る信号処理部を説明する回路構成図である。
【図3】本発明に係る電波発射源の位置の特定に用いるパラメータを説明するための図である。
【図4】本発明の動作を説明するためのフロー図である。
【図5】本発明に係る操作表示入力部の表示例を説明する表示画面図である。
【符号の説明】
【0036】
11…電波受信部
11a…基準アンテナ
11b…アレーアンテナ
12R、121〜12N…周波数変換部
13…局部発振部
14R、141〜14N…AD変換部
15…信号処理部
16…操作表示入力部
21R、211〜21N…メモリ
22…信号解析部
24…EIRP計算処理部
26…相関マトリクス処理部
27…2次元FFT部
28…電波ホログラフィ像
SW…切替器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波発射源から発射された電波を受信する電波受信手段と、この電波受信手段で受信した受信信号をデジタル化して受信データに変換する変換手段と、この変換手段で変換した前記受信データを処理し、前記電波発射源の距離を求める距離測定手段と、この距離測定手段で求めた距離情報をもとにその距離による電波減衰量を求める電波減衰量算出手段と、この電波減衰量算出手段で求めた前記電波減衰量および前記受信信号の受信電力、前記電波受信手段のアンテナ利得をもとに、前記電波発射源の実効輻射電力を求める実効輻射電力算出手段とを具備したことを特徴とする電波監視装置。
【請求項2】
電波減衰量をLspan、受信電力をPr、アンテナ利得をGra、実効輻射電力をPtとした場合、実効輻射電力を、Pt=Pr−Gra+Lspanで求める請求項1記載の電波監視装置。
【請求項3】
距離測定手段が、変換手段で変換された受信データを用い、フレネル近似を用いた電波ホログラフィ法によって電波発射源の距離を求める請求項1記載の電波監視装置。
【請求項4】
電波受信手段がアレイアンテナとこのアレイアンテナの近傍に配置する基準アンテナとを有し、距離測定手段が、変換手段で変換した受信データのうち、前記基準アンテナの受信信号に基づく受信データをフーリエ変換して、その複素共役を求める第1演算手段と、前記変換手段で変換した受信データのうち、前記アレイアンテナの各素子による受信信号に基づく受信データをフーリエ変換する第2演算手段と、前記第1演算手段の演算結果と前記第2演算手段の演算結果とを、電波発射源から発射される電波の周波数範囲で掛け合わせて足しこむ第3演算手段と、この第3演算手段の演算結果をフレネル近似して、前記電波発射源のホログラフィ再生像を求める第4演算手段と、この第4演算手段で求めたホログラフィ再生像が最大となる座標を、前記電波発射源の位置として検出する第5演算手段とを有する請求項1記載の電波監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−349631(P2006−349631A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−179597(P2005−179597)
【出願日】平成17年6月20日(2005.6.20)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】