説明

電流センサの故障診断装置、センサシステム、電流センサの故障診断方法

【課題】電流センサにより検出される電流が所定範囲内という特定の条件下に限定されることなく、電流センサの故障診断が可能な技術を提供する。
【解決手段】励磁コイル22が巻回された磁性体コア21に励磁電流iが流されることで励磁コイル22が受けた磁束の変化に応じた検出信号iを出力する電流センサ20の故障診断装置40であって、励磁コイル22とは別に磁性体コア21に巻回された故障検知コイル41と、制御部42と、を備え、制御部42は、故障検知コイル41に生じる誘起電圧vを検出する誘起電圧検出処理と、誘起電圧検出処理で検出した誘起電圧vに基づいて電流センサ20を故障と判定する故障判定処理と、を実行する構成を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流センサの故障を診断する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばバッテリへの蓄電量を算出するために、バッテリに接続される電流経路にその電流を検出する電流センサが設けられている。特許文献1には、電流センサにより充放電電流を検出し、これを出力先の電子制御ユニットにおいて繰り返し積算することでバッテリへの蓄電量を算出する方法が開示されている。このような方法において、電流センサに故障が生じた場合には、バッテリへの蓄電量を算出できないことになるため、当該故障を診断できるようにしておくことは製品としての信頼性を高めるために重要である。
【0003】
電流センサの故障診断の一例として、特許文献1には、バッテリの端子間電圧を検出する電圧検出手段を備え、電流センサにより検出される電流がほぼ流れていないときに電圧検出手段により検出される電圧の変動の状態に基づいて電流センサの異常を判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3757687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術では、電流センサの故障診断が可能なのは、電流センサにより検出される電流が略流れていないときに限られてしまう。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、電流センサにより検出される被計測電流が流れているかいないかに関係なく、電流センサの故障診断が可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、励磁コイルが巻回された磁性体コアに励磁電流が流されることで前記励磁コイルが受けた磁束の変化に応じた検出信号を出力する電流センサの故障診断装置であって、前記励磁コイルとは別に前記磁性体コアに巻回された故障検知コイルと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記故障検知コイルに生じる誘起電圧を検出する誘起電圧検出処理と、前記誘起電圧検出処理で検出した誘起電圧に基づいて前記電流センサを故障と判定する故障判定処理と、を実行する構成を有するところに特徴を有する。
【0008】
この故障診断装置は、同一の磁性体コアに電流検出用の励磁コイルと故障検知コイルとを巻き付け、変圧器の要領で、励磁コイルに印加される電圧に比例する誘起電圧を故障検知コイルから検出し、その電圧値や波形によって、電流センサの故障を判断するものである。このような構成によれば、例えば測定導体への通電の有無に関係なく、電流センサの使用状態において、故障診断を行うことが可能である。
【0009】
また、電流センサに本発明の故障診断装置を組み込む必要がなく、同型の電流センサであれば適用が可能であるから、汎用性に優れる。また、故障診断対象となる電流センサとは別に、電流センサ等のセンサ類を複数搭載し、それぞれの計測結果を比較することにより故障診断を行う場合と比較して、小型化及び低コスト化が可能である。それは、例えば電流センサを故障診断として用いる場合よりも、故障診断装置自体が故障検知コイルと制御部による簡易な構成であるためである。
【0010】
また、電流センサ内において計測回路の多重化を行ったり、上記した各種センサを多重設置してそれぞれの出力値を比較して故障診断を行う場合には、どの回路又はセンサに故障したかが判別つかないといった虞がある。これに対して、本発明は、故障診断装置を取り付けた電流センサ自体が故障したことを確実に検知できるため、故障診断の信頼性が向上する。なお、複数の電流センサを搭載したり、センサ内で回路を多重化するような場合であっても、補助的な故障診断装置として、本発明の故障診断装置を搭載することは可能である。
【0011】
前記制御部は、前記電流センサの正常時及び異常時の少なくとも一方の時における前記誘起電圧の信号波形情報を記憶する記憶部を備え、前記制御部は、前記故障判定処理において、前記記憶部から読み出した前記信号波形情報と、前記誘起電圧検出処理により検出された前記誘起電圧の信号波形情報とを比較して前記電流センサの故障を判別する構成を有するものであってもよい。
【0012】
予め、故障を判別する基準となる、電流センサの正常時及び異常時の少なくとも一方の時における誘起電圧の信号波形情報を記憶部に記憶しておくことで、検出値同士を比較して故障を診断する場合と比較して、迅速な故障診断が可能である。また、電流センサの正常時及び異常時のいずれか一方の時の誘起電圧の信号波形情報を記憶しておけば、この信号波形情報を基準とする所定範囲外となる場合を故障と判別することも可能である。よって、記憶部に記憶する必要のある情報量を少なく抑えることで、制御部の負荷が低減し、更にタイムリーな故障診断を行うことが可能である。
【0013】
前記信号波形情報は、周期、振幅、オフセット値の少なくとも1つを含むことが望ましい。電流センサの正常時において、励磁コイルから出力される検出信号と故障検知コイルから出力される誘起電圧の測定値とに一定の相関関係があることによって、本発明の故障検知装置は成り立っている。よって、この既知の相関関係が成り立っているかを判断する要素として、誘起電圧の周期、振幅、オフセット値の波形及び数値のいずれかを故障診断に用いれば、少ない情報量であっても、確実に故障診断を行うことが可能である。
【0014】
また、被計測電流が流れる測定導体を貫通させる磁性体コアと、前記磁性体コアに巻回された励磁コイルと、前記励磁コイルに励磁電流を流す励磁電流出力回路と、前記励磁コイルが受けた磁束の変化に応じた検出信号を出力する信号出力回路と、を有する電流センサと、前記電流センサの故障診断装置と、を備えるセンサシステムであってもよい。
【0015】
また、励磁コイルが巻回された磁性体コアに励磁電流が流されることで前記励磁コイルが受けた磁束の変化に応じた検出信号を出力する電流センサの故障を診断する故障診断方法であって、前記励磁コイルとは別に前記磁性体コアに巻回した故障検知コイルに生じる誘起電圧を検出する誘起電圧検出工程と、前記誘起電圧検出工程で検出した誘起電圧に基づいて電流センサを故障と判定する故障判定工程と、を含む電流センサの故障診断方法であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電流センサにより検出される電流が流れているかいないかに関係なく、電流センサの故障診断が可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】一実施形態に係る故障診断システムの基本構成を示した概略回路図
【図2】励磁コイルに印加する電圧波形及び被計測電流の大きさに応じて異なる電流波形を示したグラフ
【図3】図1のブロック図
【図4】励磁コイルに印加する電圧波形と故障検知コイルから検出される電圧波形を比較したグラフ
【図5】正常時に検出される誘起電圧の波形を示したグラフ
【図6】異常時に検出される誘起電圧の波形を示したグラフ
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態>
一実施形態を図1ないし図6によって説明する。
本実施形態の故障診断システム10は、電流センサ20とその電流センサ20の故障診断を行う故障診断装置40からなり、例えば電気自動車やハイブリット自動車等の車両に搭載され、電流センサ20は、バッテリやインバータに供給される被計測電流Iの測定等に用いられる。
【0019】
この電流センサ20は、図1に示すように、磁性体コア21に、励磁コイル22と帰還コイル24を巻き付け、この帰還コイル24に流れるフィードバック電流iにより被計測電流Iを算出する周知のフラックスゲート方式からなる。即ち、被計測電流Iが流れる測定導体50を貫通させるリング状の磁性体コア21と、磁性体コア21に巻回した励磁コイル22と、励磁コイル22に励磁電流iを流す励磁電流出力回路30と、励磁コイル22からの検出信号を出力する信号出力回路23と、この信号出力回路23に直列に接続され、励磁コイル22に対して略直角となる位置において磁性体コア21に巻回した帰還コイル24と、を備える。なお、励磁コイル22と帰還コイル24とは同じ向きに巻回されており、図3に示すように、この電流センサ20の入力端子20Aは外部電源51に接続されている。
【0020】
励磁電流出力回路30は、所謂発振回路であって、数kHzオーダーの所定周波数の交流矩形波信号(高周波電流)を交流励磁電圧として、励磁コイル22に印加する回路である。この励磁電流出力回路30は、バッテリ31(本実施形態ではバッテリとして図示したが、これに限らず、電流センサ20の電源50から電力が供給されていてもよい)と、励磁コイル22との間に接続されたHブリッジ回路32を有する。
【0021】
Hブリッジ回路32は4つのスイッチング素子S1〜S4からなり、MOSFETやIGBT等のスイッチングトランジスタにより構成されている。スイッチング素子S1、S4が開いた状態にあるときは、スイッチング素子S2、S3は閉じた状態にあり、また、スイッチング素子S1、S4が閉じた状態にあるときは、スイッチング素子S2、S3は開いた状態にある。Hブリッジ回路32におけるスイッチの切替タイミングは図示しない電流センサ20の制御部において制御される。この切替タイミングは、磁性体コア21のB−H特性に応じて、励磁コイル22に流れる励磁電流iによる励磁が、飽和領域に入るように制御される。例えば実際に流れる励磁電流iが図2の(b)、励磁コイル22に印加する励磁電圧vが図2の(a)の波形であって、いずれの波形も正負の領域において左右対称となっている。
【0022】
励磁コイル22に流れた出力電流iは、信号出力回路23にて検出される。その検出方法は、まず、図1に示すように、励磁コイル22の出力回路に、第1抵抗器25を挿入し、この第1抵抗器25によって出力電流iを出力電圧として検出する。
【0023】
さて、ここで出力される出力電流iの波形は、測定導体50に流れる被計測電流Iの大きさによって変化する。これは、測定導体50に電流Iが流れると、励磁コイル22が受ける磁束が変化するためである。被計測電流I=0のときは、励磁コイル22は被計測電流Iによる磁束変化を受けないから、出力電流iの波形は、図2の(b)の励磁電流iの波形と略同じとなる。
【0024】
一方、被計測電流I>0(又はI<0)のとき、励磁コイル22は被計測電流Iによって生じる磁束が一方向へ重畳されるため、正領域又は負領域において飽和に達する時間が一方向で早くなる。結果として、図2の(c)、(d)に示すように、左右対称であった励磁電流iの波形(図2の(b)参照)とは異なり、左右の対称性が崩れる。本電流センサ20は、このような現象を利用し、各出力電流iの励磁電流iからのオフセット量dyを補正する(打ち消す)フィードバック電流iを帰還コイル24へと供給し、このフィードバック電流iの値を対応する電圧vとして検出することにより、被計測電流Iを算出することができる。
【0025】
その構成を更に詳しく説明すると、まず図1に示すように、第1抵抗器25によって検出された出力電流iは増幅回路26へと入力される。一方、帰還コイル24には、オフセット量dyに対応したフィードバック電流iが流れる。図3に示すように、このフィードバック電流iは電流センサ20の出力端子20Bを通って第2抵抗器27により、電圧vとして検出される。このフィードバック電流iに対応する電圧値vは、電流センサ20の制御部28に入力され、ADコンバータ28Aによりデジタル値に変換されたのち、CPU28Bにて各種処理が行われ、例えばバッテリの充電量を把握したり、充電量を抑制してバッテリの充電不足や過充電を抑制する制御に用いられる。
【0026】
続いて、電流センサ20の故障診断装置40について説明する。故障診断装置40は、図1又は図3に示すように、励磁コイル22及び帰還コイル24とは別に磁性体コア21に巻回された故障検知コイル41と、故障検知コイル41に生じる誘起電圧vを検出してその検出値により電流センサ20の故障を判定する制御部42とを備える。
【0027】
励磁コイル22と故障検知コイル41とは、変圧器を構成する一次巻線と二次巻線の関係にあって、故障検知コイル41に誘起される誘起電圧viは、励磁コイル22に印加される励磁電圧vと比例関係にある。よって、例えば、励磁コイル22と故障検知コイル41の巻き数が同じであって、励磁電圧vが図4の(a)に示す波形である場合、誘起電圧vも、図4の(b)に示すような、略同じ波形を示す。本実施形態の故障診断装置40は、この関係性を利用して、所定の励磁電圧vに誘起電圧viが比例しない場合、電流センサ20が故障していると判定するものである。なお、被計測電流Iの大きさに関係なく、励磁電圧v及び誘起電圧vの関係だけで電流センサ20の故障を判別できるから、電流センサ20の製品としての信頼性が高まる。
【0028】
制御部42は、この故障検知コイル41に生じる誘起電圧vを抵抗器等により検出し、ADコンバータ42Aに入力してデジタル値に変換されたのち、CPU42Bに入力される(以上が誘起電圧検出処理に相当する)。CPU42Bには、記憶部42Cが接続されており、この記憶部42Cには、電流センサ20が正常である場合の誘起電圧viの信号波形情報(図5参照)と、電流センサ20が異常である場合の誘起電圧viの信号波形情報(図6参照)が記憶されている。なお、ここでは、図6に示す異常値として、励磁電流出力回路30が故障し、励磁コイル22に励磁電圧vが印加されていない場合を例示したが、これに限られず、複数の異なる異常値が記憶されていてもよいものとする。
【0029】
さて、CPU42に入力された誘起電圧viの検出値は、記憶部42Cから読み出された正常値及び異常値を表す信号波形情報と比較される。ここでは、誘起電圧viの検出値が図5に示す正常時の波形情報と同等の振幅を有する場合、正常と判定し、図6に示す異常時の波形情報に近い略振幅が0に近い場合を異常と判定する(誘起電圧処理以降の以上の記述が故障判定処理に相当する)。異常と判定された場合には、CPU42から、例えば電池全体を制御する制御ユニット等へ故障検出信号が出力され、ユーザに報知されたり、又は予め決められた故障時の制御がなされる。
【0030】
以上説明したように、本実施形態によれば、測定導体50への通電の有無に限らず、電流センサ20の使用状態において、特定の条件下に限定されることなく故障診断を行うことができる。
【0031】
また、電流センサ20の各種回路に故障診断装置40を組み込む必要がなく、同型の電流センサであれば適用が可能であるから、汎用性に優れる。更に、故障診断対象となる電流センサ20とは別に、電流センサ等のセンサ類を複数搭載し、それぞれの計測結果を比較することにより故障診断を行う場合と比較して、故障診断装置40自体が故障検知コイル41と制御部42による簡易な構成であるため、小型化が可能であるし、格段に安く故障診断を行うことが可能である。
【0032】
また、予め、正常時と異常時の信号波形情報を記憶部42Cに記憶しておき、実際に誘起電圧検出処理により検出された誘起電圧vの測定値と比較するから、迅速な故障診断が可能である。
【0033】
また、電流センサ20の正常時において、励磁コイル22から出力される出力電流iと故障検知コイル41から出力される誘起電圧vの測定値とに一定の相関関係があることによって、本実施形態の故障検知装置40は成り立っている。よって、この既知の相関関係が成り立っているかを判断する要素として、例えば本実施形態のように、振幅のみの少ない情報量であっても、確実に故障診断を行うことが可能である。
【0034】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0035】
(1)上記した実施形態では、電流センサ20及び故障診断装置40からなる故障診断システム10を例示したが、これに限られず、故障診断装置40単体、又は例示した手段を用いる故障診断方法も含むものとする。
【0036】
(2)上記した実施形態では、Hブリッジ回路32が機能していない停止時の誘起電圧vの波形を異常時とし、その反対を正常時として記憶部42Cに記憶しておき、故障診断を行ったが、これに加えて、周期のずれや波形の乱れ、オフセット量が大幅に異なる等によって故障診断を行うものであってもよい。また、電流センサの正常時及び異常時に対応する誘起電圧の信号波形情報のいずれか一方を記憶しておき、正常時の信号波形情報に実測値が当てはまらない場合には異常と判定する、又は異常時の信号波形情報に実測値が当てはまる場合に正常と判定する処理を行うものであってもよい。
【0037】
(3)上記した実施形態では、予め電流センサ20の正常時と異常時に対応する誘起電圧vの信号波形情報を記憶部42Cに記憶しておき、その波形情報と検出された誘起電圧値とを比較して故障診断を行ったが、これに限られず、例えば、励磁コイルから出力された出力信号と検出された誘起電圧値とを比較して、故障診断を行うものであってもよい。この場合、両電圧値間には比例関係があるはずであるから、誘起電圧の周期や振幅、オフセット値等が所定の範囲から外れている場合には、故障と判断することができる。
【0038】
(4)上記した実施形態では、信号波形情報を記憶していたが、これに限られず、正常時に所定時間毎に得られるはずの電圧値のみを記憶しておいてもよい。
【0039】
(5)上記した実施形態では、故障検知コイル41からADコンバータ42Aを省略したが、抵抗器の他に、増幅回路やその他誘起電圧を検出するのに必要な回路が挿入されていてもよい。
【0040】
(6)上記した実施形態に故障検知コイルの巻き数は限定されない。励磁コイルの巻き数に対して、故障検知コイルの巻き数を増やせば、最大電圧値が大きくなるため、検出精度に優れる。
【0041】
(7)上記した実施形態では、Hブリッジ回路により交流矩形波信号(高周波電流)を印加していたが、これに限られず、例えば交流電源をつないでいてもよいし、その他の発振器により高周波電流を流す形態であってもよい。
【0042】
(8)上記した実施形態では、励磁コイル22と帰還コイル24とは同じ向きに巻回されていたが、これに限られず、励磁コイルと帰還コイルの巻回方向が逆向きであってもよい。この場合、例えば、帰還コイルに電流を流す手段の制御によって検知する信号を正負逆に扱えばよい。
【0043】
(9)上記した実施形態では、被計測電流Iが流れることに伴う磁束の変化、つまり励磁電流iのオフセット量をフィードバック電流iを流すことにより補正し、その補正値によって計測電流値、又はそれに相応する値を検出していたが、これに限られず、励磁コイルから検出される波形そのものから、被計測電流Iを測定する電流センサに適用されていてもよい。
【0044】
(10)上記した実施形態では、各制御部28,42はそれぞれ1つのCPU28B,42Bを備える構成であったが、これに限られず、例えば各制御部が複数のCPUを備える構成でもよく、特に故障診断装置の制御部における誘起電圧検出処理と、故障判定処理はASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハード回路で構成してもよく、更に、CPUとハード回路により構成したものであってもよい。また、複数のCPUやハード回路を備える構成では、例えば上記処理の一部又は全部を複数のCPU等で分担して処理させてもよい。
【0045】
(11)上記した実施形態では、電流センサ20の故障診断を、故障診断装置40のみによって行っていたが、これに限られず、例えば複数の電流センサを搭載し、それぞれの測定値を比較して故障診断を行う場合であっても、それに加えた補助的な故障診断装置として本発明を適用してもよい。
【0046】
(12)上記した実施形態では、記憶部42Cとして具体的な例示を避けたが、例えば記憶装置としては、ROMやRAM等記憶装置全般を用いることができる。
【0047】
(13)上記した各実施形態において、上述の利点や効果の各々の全てが本願発明の必須の構成要件につながるものではなく、本願発明は、上述の利点や効果の各々を簡易に実現させる設計自由度を与えるものであって、少なくとも一つの利点あるいは効果を実現させるものであれば良い。
【符号の説明】
【0048】
10:故障診断システム、20:電流センサ、21:磁性体コア、22:励磁コイル、23:信号出力回路、24:帰還コイル、25:第1抵抗器、26:増幅回路、27:第2抵抗器、30:励磁電流出力回路、32:Hブリッジ回路、40:故障診断装置、41:故障検知コイル、42:制御部、50:測定導体、51:外部電源、I:被計測電流、i:励磁電流、i:出力電流、i:フィードバック電流(検出信号)、v:フィードバック電流の対応電圧、v:励磁電圧、v:誘起電圧、dy:オフセット量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁コイルが巻回された磁性体コアに励磁電流が流されることで前記励磁コイルが受けた磁束の変化に応じた検出信号を出力する電流センサの故障診断装置であって、
前記励磁コイルとは別に前記磁性体コアに巻回された故障検知コイルと、制御部と、を備え、
前記制御部は、前記故障検知コイルに生じる誘起電圧を検出する誘起電圧検出処理と、
前記誘起電圧検出処理で検出した誘起電圧に基づいて前記電流センサを故障と判定する故障判定処理と、を実行する構成を有する電流センサの故障診断装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記電流センサの正常時及び異常時の少なくとも一方の時における前記誘起電圧の信号波形情報を記憶する記憶部を備え、
前記制御部は、前記故障判定処理において、前記記憶部から読み出した前記信号波形情報と、前記誘起電圧検出処理により検出された前記誘起電圧の信号波形情報とを比較して前記電流センサの故障を判別する構成を有することを特徴とする請求項1に記載の電流センサの故障診断装置。
【請求項3】
前記信号波形情報は、周期、振幅、オフセット値の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項2に記載の電流センサの故障診断装置。
【請求項4】
被計測電流が流れる測定導体を貫通させる磁性体コアと、
前記磁性体コアに巻回された励磁コイルと、
前記励磁コイルに励磁電流を流す励磁電流出力回路と、
前記励磁コイルが受けた磁束の変化に応じた検出信号を出力する信号出力回路と、を有する電流センサと、
請求項1に記載の前記電流センサの故障診断装置と、を備えるセンサシステム。
【請求項5】
励磁コイルが巻回された磁性体コアに励磁電流が流されることで前記励磁コイルが受けた磁束の変化に応じた検出信号を出力する電流センサの故障を診断する故障診断方法であって、
前記励磁コイルとは別に前記磁性体コアに巻回した故障検知コイルに生じる誘起電圧を検出する誘起電圧検出工程と、
前記誘起電圧検出工程で検出した誘起電圧に基づいて電流センサを故障と判定する故障判定工程と、を含む電流センサの故障診断方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−88284(P2013−88284A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228915(P2011−228915)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(507151526)株式会社GSユアサ (375)
【Fターム(参考)】