説明

電流制限装置を具備した電気機械用冗長巻線

【課題】電気機械で短絡電流による熱損傷が生じないように短絡電流を本質的に制限する電気機械および方法を提供する。
【解決手段】回転子構成部材と、この回転子構成部材に隣接する固定子構成部材とを有する電気機械において、固定子構成部材の複数の歯部に巻線を配置する際に、短絡が生じたときにコイルを流れる電流が相互インピーダンスを誘導して、総インピーダンスを増加させるように、少なくとも一対のコイルを流れる電流の向きが同一スロットで同一方向となるように巻き付け、他の相に対しては磁気結合を相殺する向きに巻き付ける。これにより短絡時の短絡電流の増加が防止され、異なる相間の冗長性が保持され、1つの相の短絡が他の相に影響を与えない構成が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、モータ、発電機、交流発電機、始動発電機、その他同種類の電気機械に関し、更に詳細には本発明は、電流制限装置を具備した冗長巻線を有する電気機械に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機械の一例は、永久磁石電動機または発電機である。この機械は、少なくとも部分的に、例えば、サマリウム−コバルトのような永久磁石で形成された回転子を含む。電動機では巻線を流れる電流が回転磁場を誘導し、これは引き続いてトルクを回転子の磁石部分に与え、電動機として動作させる。同様に、発電機では回転子に加えられたトルクは、結果として回転磁場となり、これは巻線の中に電流を誘導する。
【0003】
このような電気機械は、巻線磁界同期械、かご型電動機およびブラシを必要とするその他の型式の電気機械に対して大きな利益を与える。特にブラシを必要としない永久磁石機は、比較的信頼性が高く軽量であり、必要な回転磁場を生成するために電子回路を使用し、電動機および発電機のいずれとしても動作可能である。
【0004】
これらの利点に鑑み、そのような機械は、航空機での応用に適していると思われる。特に、そのような機械は、トルク・エンジンの始動機および発電機として使用に役立つと思われる。好適に、そのような機械は、直接、エンジン軸に接続可能である。必要であれば、発電された電気は、従来型軽量電子回路を用いて、整流および平滑することが可能である。直流電力が必要な場合は、従来からの航空機での用途と同様、回転速度ならびに発電機出力周波数は、制御される必要がない。そのような機械は、始動機としても発電機としても機能できる。
【0005】
永久磁石機での大きな短絡電流により発生する熱のため、永久磁石機の巻線は、内部故障の予期不能な事象から十分に保護されなければならない。保護外部回路および機器には、しばしば電気機械の巻線の外部に、可融性材料または電子制御が具備されている。しかしながら、内部短絡状態がモータ/発電機内部で生じる可能性があり、それは外部フューズまたは制御で検出または制御されない。巻線を大きな短絡電流から保護する種々の手法が開発されてきたが、これらの手法は、冗長性および安全性機能を備えてはいない。
【0006】
例えば、巻線内に保護を具備する1つの手法が米国特許第6,313,560号に記載され、これは、ここに参照することにより、その全てが組み入れられる。この‘560特許は、回転子または固定子の一部を形成し、その磁気特性を選択された温度以上で失う磁石構成部品を含む電気機械を記載している。この磁性材料は、固定子に関する磁束を誘導する磁気回路の一部を形成している。その結果、回転子から放射される全ての磁束は、この温度以上で固定子に関して循環することを停止し、機械は、発電機またはモータとして動作することを停止する。構成部品を形成する材料は、機械が熱的に損傷を受ける温度より低くなるように選択温度が選定される。これは、次に巻線の動作温度を制限し、従って典型的に故障により引き起こされる機械運転中の過熱を防止する。問題として、一度、温度が超過すると、機械は、温度が下がるまで動作を停止する。従って、機械が動力を提供しない期間が存在する。
【0007】
別の手法が米国特許出願第2004/0189108号に記載され、これは、ここに参照することにより全体が盛り込まれている。この出願は、永久磁石電気機械を記載し、ここで固定子の材料がそのキューリ温度以上の温度に達すると、固定子を通る磁束循環が妨げられるように、固定子の材料が選定される。先に述べた‘560特許と同様、一度、温度が超過すると、機械は、その機械が冷却されるまで動作を停止する。
【0008】
更に別の手法が米国特許出願第2004/0183392号および米国特許出願第2004/0184204号に記載され、これらは、共にここに参照することにより、これらの全てが盛り込まれる。これらの出願は、回転子および固定子を有する電気機械の巻線を流れる最大電流を制限する他の種々の装置を記述する。巻線周囲の適切な漏洩磁束を助長することにより漏れインピーダンスが得られ、これは、機械設計の問題として巻線を流れる最大電流を制限するために使用される。これらの出願に記載され、きわめて小さなスロット間隙および大きな半径方向歯先高さを含むスロット構造に適し、高い透磁率を有する材質で作られたトップ・スティックを使用した装置は、これまで20年間に渡ってタービン・エンジンで使用される種々のエンジン専用永久磁石交流発電機の中で効果的にインダクタンスを増大させるために広く使用されている。問題となるのは、そのような装置は、巻線の冗長性を具備しないことである。すなわち、仮に巻線の1つの相が短絡すると、残りの相が従前と同様の電気出力を提供し続けられなくなる。
【0009】
要約すると、電気機械の短絡電流を制限する方法および装置では、短絡状態の間またはその後に少なくとも能力を下げた状態で機械の運転を継続できるようにする必要性が存在する。更に、電気機械の短絡電流を制限する方法および装置では、巻線の磁気的および電気的絶縁を提供し、これによって故障状態下で巻線の冗長性および信頼性を提供する必要性が存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
1つの特徴として、回転子アセンブリと回転子アセンブリに近接した固定子アセンブリを含む電気機械が提供される。固定子アセンブリは、複数の歯部の周囲に配置された複数の巻線を含み、巻線の各々の相は、隣接する歯部の周囲に反対方向に巻かれた少なくとも一対のコイルを含み、コイル間に相互インダクタンスを生じるようになされている。異なる相のコイルは、磁気的および電気的に絶縁され巻線の冗長性を与える。
【0011】
相の総インピーダンスは、十分高く、巻線の相の短絡電流が電気機械に熱障害を引き起こす値未満の電流強度に制限される。総インピーダンスは、また十分に高く、巻線の相の電流が予め定められた電流強度に制限される。
【0012】
別の特徴として、回転子アセンブリと回転子アセンブリに近接した固定子アセンブリを含む電気機械が提供される。固定子アセンブリは、複数のスロットに配置された複数の巻線を含む。巻線の各相は、同一スロットに配置された少なくとも一対のコイルを含み、これは、動作中に一対のコイルの電流が同一方向にスロットを通って流れ、コイル間の相互インダクタンスを増すように配列される。
【0013】
更に別の特徴として、電気機械の短絡電流を制限する方法が提供される。電気機械は、複数の歯部に配置される複数の巻線を有する1つの固定子アセンブリを含む。この方法は、巻線の1つの相の2つのコイルをスロットで分離された固定子の隣接する歯部に配置し、2つのコイルを配置し、故障時に短絡電流が各々のコイルを同一方向にスロットを通して流れてコイル間に相互インダクタンスを誘導し、この相互インダクタンスがその相の総インピーダンスの一部を作り出し、短絡電流が電気機械への熱損傷を引き起こす値以下の大きさにこの総インピーダンスが制限される。
【0014】
次に添付図面を参照するが、種々の図面において同一部分は、同一番号が付される。
【実施例】
【0015】
図1および図2を参照すると、本発明の巻線構成と共に使用される電気機械の例が、全体として10で示されている。図1の例において、電気機械は、典型的な永久磁石電動機/発電機として示されている。しかしながら、本発明は、巻線を具備した固定子を有する電動機、発電機、交流発電機、始動発電機など、永久磁石またはその他を含む任意の電気機械に組み込めるものである。
【0016】
図示されている例では、電気機械10は、固定子構成部材12および回転子構成部材14を含む。固定子構成部材14は、固定子構成部材12と同軸の中心軸16に関して自由に回転するように装着される。回転子構成部材14は、回転可能軸18を含み、これは、その周辺に保持リング22またはその他の好適な手段によって固定された永久磁石20を有する。各々の永久磁石20は、機械10の磁極を形成する。機械10は、6つの極を有するように示されているが、極数は、個々の用途からの要求によって選択可能である。
【0017】
固定子構成部材12は、固定子コア24を含み、これは、低損失磁気材(例えば、珪素鋼、電気鉄積層材、粉末鉄材など)で作られている。固定子コア24は、その内側に縦長に延びた複数の等間隔のスロット26を有する。スロット26は、複数の歯部28の側面を定め、その各々は、スロット26の間に延びる固定子コア24の部分から形成されている。図示されている例では、全部で9つのスロット26および歯部28が固定子コアの長さ方向に沿って延びている。しかしながら、理解されるように、スロット26および歯部28の数は、個々のアプリケーションの要求に応じて選択される。また、スロット26、歯部28および機械10のその他の種々の機能は、尺度を合わせてまたは比例して図示されるではなく、提示されている概念を説明し易くするために示されていることが理解される。
【0018】
スロット26に歯部28の周囲に巻き付けられているのは、導線30であり、これは、固定子構成部材12の巻線32を形成する。巻線32の配列を以下に詳細に説明する。またスロット26の内部には、スロット絶縁材、ワニス・コーティング、導線絶縁材および固定子構成部材12の製造に際して典型的に使用されるその他の材料が配置されている。
【0019】
図示されている実施例では、導線30は、絶縁された導電性線材として表現されており、また巻線32は、各々の歯部28の周囲に複数回巻き付けられた線材で形成されているように表現されている。しかしながら、巻線32を形成する導線30は、任意の好適に絶縁された歯部28の周囲に1回または複数回の巻き付けを形成するように巻き付けられるか、事前に形成されるか、またはアセンブルされた導電性構造で構わないと考えられる。例えば、導線30は、絶縁された導電性の棒体、杆体または同様の物を含み、これらは、歯部28の周囲に1回または複数回の巻付けを形成するように形作られているか、またはアセンブルされる。
【0020】
ここで使用されている用語「スロット」は、導線30を受け入れる固定子の部分である。従って、1つのスロットは、図1および図2に表現されているように、その長さ方向に開口部を有する凹部、または導線30を受け入れることが可能な固定子内の何らかの凹部である。スロットの形状および寸法は、個別のアプリケーションの必要に応じて選択される。同様に、用語「歯部」は、ここでは、その周囲に導線30が配置されている固定子の一部として使用されている。従って、歯部は、スロット26で定められた側部と回転子14に隣接する1つの開放端を有する構造、または固定子12の一部として形成されるか、またはそれに取り付けられたその他の何らかの構造である。歯部の形状および寸法は、個別のアプリケーションの必要に応じて選択される。
【0021】
良く理解されるように、電気機械10は、発電機(交流発電機)モード、または電動機(始動電動機)モードで運転される。発電機(交流発電機)モードで運転される際、外部トルク源(例えば、タービン・エンジン)が回転軸18をその軸16の周囲に強制的に回転させ、磁石20を巻線32を通過させ、スロット26の巻線32に磁束の閉回路を形成させる。回転子構成部材14が回転すると、固定子構成部材12の磁束が変化し、この変化する磁束は、結果として巻線32に電圧を生成し、これは、電気出力となる。
【0022】
電動機(始動電動機)モードで運転される際、外部源からの電圧が巻線32に供給され、これは、巻線32に電流を生じ、その結果、磁束が歯部28と固定子コア24とで形成された磁気回路内に構築される。電流が好適な方法で巻線32に供給されると、回転子構成部材14が回転され、従って使用可能なトルクを生じる。
【0023】
交流発電機または電動機モードのいずれで運転されるかに関係なく、電気機械10の磁路が図3に部分的かつ簡略に表現されており、磁路は、矢印34で表現され、極および仮想極が「N」または「S」で表現されている。上述の通り、この磁束34が交流発電機巻線32に電圧を誘導する(または電動機の場合、回転子14を回転させる磁力を永久磁石20と共に生成する)。
【0024】
図1−図3の例において、電気機械10は、固定子構成部材12に配置された回転子構成部材14を有する(「内部回転子」構造)、典型的な永久磁石電動機/発電機として表現されている。また、電気機械10が「外部回転子」構造を有することも可能であり、ここでは固定子構成部材12が固定子構成部材12の周囲に回転するように配置された中空の円筒状回転子構成部材14に配置されている。この「外部回転子」構造において、スロット26および歯部28は、固定子12の外周上に形成され、永久磁石20は、回転子16の内面上に取り付けられている。
【0025】
図4のA−Cは、巻線32を流れる電流を制限する図1の固定子12の巻線32の構成を表す。先に触れたように、1から9まで番号を付けられた9つの歯部28のみが示されているが、歯部28の個数は、個別のアプリケーションの必要に応じて選択される。図4のA−Cには、三相電気機械の各位相A,B,Cがそれぞれ示されている。各々の相は、直列接続された3つのコイル50を有する。ここで使用されている「コイル」は、単一歯部の周囲に配置された1つの相部分である。1つのコイルは、例えば、図4のA−Cに示されるように、1回または複数回、歯部28の周囲に巻き付けられている絶縁された導線30を含むか、または1つのコイルは、絶縁された導電性の棒体、杆体または同様の物を含み、これらは、歯部28の周囲に1回または複数回の巻付けを形成するように形作られているか、またはアセンブルされている。
【0026】
導線30の端部は、6つの導線52を形成し、これらは、3つの同一の電気的に120度ずれた単相出力として取り扱えるように配列されている。これに代わって、導線52を1つの三相出力を与えるように接続することも可能である。
【0027】
図示されている実施例では、相Aに属する第1のコイル50は、第1の歯部28上に時計回りに巻かれ、第2のコイル50は、第2の歯部28上に反時計回りに巻かれ、第3のコイル50は、第7の歯部28上に時計回りに巻かれている。同様に、相Bに属する第1のコイル50は、第5の歯部28上に時計回りに巻かれ、相Bの第2のコイル50は、第6の歯部28上に反時計回りに巻かれ、相Bの第3のコイル50は、第8の歯部28上に時計回りに巻かれている。相Cに属するコイル50は、第9の歯部28上に時計回りに、第3の歯部28上に反時計回りに第4の歯部28上に時計回りに巻かれている。
【0028】
各々のコイル50は、各歯部28の周囲に3回巻き付けられた導線30を含むように示されているが、導線30の巻数は、1回または複数回であり、個別のアプリケーションの要求に従うものと考えている。更に、図4のA−Cに図示されている巻線配列は、6極機械に対するものである。本発明は、異なる極数の機械にも採用できると考えている。
【0029】
図5は、図4のA−Cの巻線配列の図式的表現である。図5において、各歯部の反対側に配置されている記号×および○は、コイルが歯部の周囲に巻かれている方向を表す。例えば○|×は、そのコイルが歯部の周囲に反時計回りに巻かれていることを示し、×|○は、そのコイルが歯部の周囲に時計回りに巻かれていることを示している。
【0030】
図6は、従来技術による巻線配列の図式的表現であり、比較のために提示されている。図6から分かるように、相Aに属するコイルは、全て第1、第4および第7の歯部の周囲に時計回り(または全て反時計回り)に巻かれている。相Bに属するコイルは、全て第2、第5および第8の歯部の周囲に時計回り(または全て反時計回り)に巻かれている。相Cに属するコイルは、全て第3、第6および第9の歯部の周囲に時計回り(または全て反時計回り)に巻かれている。
【0031】
図4のA−Cおよび図5から分かるように、同一相に属する固定子スロット26(図1)内のコイルの位置は、図6に図示された従来型巻線配列で可能なもの以上のインダクタンスをその相内に増やすようになされている。例えば、図4のA−Cおよび図5の実施例では、相Aに属する第1のコイル50は、第1の歯部28上に時計回りに巻かれ、第2のコイル50は、第2の歯部28上に反時計回りに巻かれている。これらのコイル50を通って電流が流れると、コイル50の隣接する対の中を流れる電流は、同一スロット26(例えば、第1および第2の歯部28の間のスロット26)を通って同一方向に流れ、これは、コイル50間の相互インダクタンスを図6に示されているような従来技術で可能なもの以上に増加させる。相互インダクタンスが増加する結果、その相内の総インピーダンス(総相インピーダンス)が増加する。本発明者は、総相インピーダンスを増加させると、その巻線を流れる最大可能電流を好適に制限することが可能であることを理解しており、従って機械設計者に対して本質的電流制限および短絡防止を与えるツールを提供する。
【0032】
同一相の隣接コイル50間の付加相互インピーダンスにより、設計者は、機械10内で電流を適切に制限するために必要な総相インピーダンスが得られるようになる。総相インピーダンスを正確に定め制御することが可能であり、例えば、コイル50の巻数および位置を選択することにより、および/または寸法、形状および固定子コア24(例えば、スロット26および歯部28)の材質を含む固定子コア24の種々の機能、また固定子コア24と回転子14との間の空隙の幅を選択することにより行える。回転子および固定子は、図1−3に示されているものとは、異なる設計および構成が可能であることは理解される。例えば、機械10は、軸方向空隙機械が可能である。
【0033】
好適に、総相インピーダンスは、与えられた設計に対して、短絡が発生した際に機械10に対して考えられる熱損傷を与えないように(すなわち、巻線の短絡相の最大温度上昇が機械絶縁またはその他の機械内で使用されている材質の温度制限未満であり、かつ、その機械の短絡していない巻線に壊滅損傷を引き起こす温度以下)、最大短絡電流が十分小さくなるように定められる。いずれにしても、本発明の本機能は、結果として巻線32内の短絡電流を制限する。
【0034】
また図4のA−Cおよび図5から分かるように、この巻線構造は、異なる相間の相互結合を排除しており、従って磁気的絶縁がなされている。例えば、相Aに属する第1および第2のコイル50(歯部1および2)は、それぞれ相Cの第1および第2のコイル50(歯部3および9)に隣接している。相Aの第1のコイル50は、隣接する相Cの第3のコイル50と同一方向に巻かれており、一方、相Aの第2のコイル50は、隣接する相Cの第3のコイル50と反対方向に巻かれている。電流がこれらのコイル50を通って流れると、この構成は、相間の全ての磁気結合を相殺する。
【0035】
これらの相は、電気的に絶縁され(相間の電気的絶縁により)、また磁気的に絶縁されているので(巻線構成により)、任意の相の損失は、他の相には影響を与えず、これは、その損失の前と同じ電気出力を提供し続ける。言葉を変えると、図4のA−Cおよび図5に示す構成は、巻線の冗長性を与える。これは、相間で磁気結合が存在するために1つの相の短絡が他の相に影響を与える従来機械と異なる点である。
【0036】
図7は、図5の構成を18歯部固定子、12極回転子の組合せに適用したものを図示する。図7の実施例において、図5の中で歯部1−9に示されているパターンが歯部1’−9’に繰り返されている。歯部1−9および1’−9’上の導線は、2つの三相電気出力60を形成するように構成されている。
【0037】
好適に、図7の構成は、更に上のレベルの冗長性を与える。先に述べたように、各相の電気的および磁気的絶縁により、任意の相の損失が他の相に影響することがなく、これは、損失の後も同一電気出力を提供し続けることを可能とする。更に、図7に示されている構成では、三相電気出力60の各々は、電気的および磁気的に絶縁されている。その結果、三相電気出力60は、冗長となる。仮に三相電気出力60の任意の1つが故障した場合、残った三相電気出力60は、その故障前と同様に機能し続ける。
【0038】
本発明の巻線構成は、電気機械の単一固定子内に電流制限機構を具備した複数の冗長巻線を実現する方法を提供する。この巻線構成は、本質的に高い相互インピーダンス、従って巻線内の最大電流を制限するより高いインピーダンスを提供する。本発明は、回転電気機械の設計者が巻線内の最大短絡電流が巻線に絶縁に損傷を与えたり、またはその他の致命的損害を引き起こすような大きな電流を生じないように保証することを可能とする。しかしながら、内部故障の際には、この機械の出力は、低下する。
【0039】
ここで特定の実施例に関して説明した全ての機能、特徴、改変または修正は、また、ここに記述した任意のその他の実施例に適用したり、使用したりまたは組み込むことができることは理解される。図は、特定の寸法で描かれたものでなく、単に放射状空隙型機械を示しているのみである。種々のその他の型式の回転子および固定子構造が使用可能である。例えば、本発明は、軸空隙型機械で採用可能であり、および/または永久磁石を非磁性材ハブ上に保持リングで取り付けられた鉄極と共に使用する回転子設計でも採用可能である。
【0040】
先に開示した種々および他の特徴および機能またはそれらの代替物は、多くのその他の異なるシステムまたはアプリケーションの中に好適に組み合わせられることは理解される。ここに予見できないまたは予期しない改変、修正変更、変形または改善は、当業者には引き続いて可能であろうが、それらはまた添付の特許請求の範囲に包含されるものと意図している。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は、本発明の巻線構成と共に使用できる電気機械の回転子と固定子の図式底面図である。
【図2】図2は、図1の機械の回転子および固定子の図式部分展開透視図である。
【図3】図3は、図1の電気機械内の磁束経路を表す図式底面図である。
【図4】図4は、本発明の1つの実施例に基づき巻線を流れる電流を制限し、図1の固定子部分を巻き付ける方法を図示し、Aは、相Aでの巻き付け方法、Bは、相Bでの巻き付け方法、Cは、相Cでの巻き付け方法である。
【図5】図5は、図4の巻線構成の図式表現である。
【図6】図6は、従来技術の巻線構成の図式表現である。
【図7】図7は、本発明の別の実施例に基づく巻線構成の図式表現である。
【符号の説明】
【0042】
10 電気機械
12 固定子構成部材
14 回転子構成部材
16 中心軸
18 回転可能軸
20 永久磁石
22 保持リング
24 固定子コア
26 スロット
28 歯部
30 導線
32 巻線
50 コイル
52 導線
60 三相電気出力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機械であって、
回転子構成部材と、
回転子構成部材に隣接する固定子構成部材とを含み、固定子は、複数の歯部の周囲に配置された巻線を含み、巻線の各々の相は、隣接する歯部の周囲に反対向きに巻かれた少なくとも一対のコイルを含み、コイル間の相互インピーダンスを増加させ、巻線の総インピーダンスを増加させる電気機械。
【請求項2】
請求項1記載の電気機械において、相の総インピーダンスは、十分に高く、熱損傷が電気機械に引き起こされる値以下に巻線の相内短絡電流の電流強度が制限される電気機械。
【請求項3】
請求項1記載の電気機械において、相の総インピーダンスは、十分に高く、巻線の相内電流が予め定められた電流強度に制限される電気機械。
【請求項4】
請求項1記載の電気機械において、巻線の各相は、磁気的および電気的に他の相から絶縁され巻線の冗長性を与える電気機械。
【請求項5】
請求項1記載の電気機械において、巻線の各相は、
異なる相からの第1の隣接コイルと同一方向に巻かれた第1のコイルと、
異なる相からの第2の隣接コイルと逆方向に巻かれた第2のコイルとを含む電気機械。
【請求項6】
請求項1記載の電気機械において、巻線は、2つまたはそれ以上の相を含む電気機械。
【請求項7】
請求項6記載の電気機械において、巻線は、2つまたはそれ以上の冗長な多重相電気出力を含む電気機械。
【請求項8】
電気機械であって、
回転子構成部材と、
回転子構成部材に隣接した固定子構成部材とを含み、固定子構成部材は、複数のスロットに配置された巻線を有し、巻線の各々の相は、同一スロットに配置された少なくとも一対のコイルを含み、このコイルは、動作時に一対のコイルの電流がそのスロットを通って同一方向に流れ、コイル間の相互インピーダンスを増加させ、巻線の総インピーダンスを増加させる電気機械。
【請求項9】
請求項8記載の電気機械において、相の総インピーダンスは、十分に高く、熱損傷が電気機械に引き起こされる値以下に巻線の相内短絡電流の電流強度が制限される電気機械。
【請求項10】
請求項8記載の電気機械において、相の総インピーダンスは、十分に高く、巻線の相内電流が予め定められた電流強度に制限される電気機械。
【請求項11】
請求項8記載の電気機械において、巻線の各相は、磁気的および電気的に他の相から絶縁され巻線の冗長性を与える電気機械。
【請求項12】
請求項8記載の電気機械において、巻線は、2つまたはそれ以上の相を含む電気機械。
【請求項13】
請求項6記載の電気機械において、巻線は、2つまたはそれ以上の冗長な多重相電気出力を含む電気機械。
【請求項14】
複数の歯部に配置された巻線を有する固定子構成部材を含む電気機械の短絡電流を制限する方法であって、
巻線の1つの相の2つのコイルを1つのスロットで分離された隣接する固定子の歯部に配置し、
2つのコイルを配列し、故障状態の際に各々のコイルを流れる短絡電流がスロットを通して同一方向にコイル間に相互インピーダンスを誘導するように流れ、相互インピーダンスは、十分に高く、相の総インピーダンスの一部を提供し、短絡電流が電気機械に熱損傷を引き起こす強度以下に総インピーダンスが制限される前記方法。
【請求項15】
請求項14記載の方法は、更に、
各相が磁気的および電気的に他の相から絶縁され巻線の冗長性を与えるように巻線を配列することを含む前記方法。
【請求項16】
請求項14記載の方法において、巻線は、2つまたはそれ以上の相を含む前記方法。
【請求項17】
請求項16記載の方法において、巻線は、2つまたはそれ以上の冗長な多重相電気出力を含む前記方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−82391(P2007−82391A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−214013(P2006−214013)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【出願人】(505298548)アストロニクス アドバンスド エレクトロニック システムズ コーポレイション (3)
【Fターム(参考)】