説明

電源供給装置、電源供給制御方法、電源供給制御プログラム、及びネットワークシステム

【課題】データをパケットで送受信する複数の通信端末に対してネットワークを介して電源を供給する場合のネットワーク全体の消費電力が低減される電源供給装置を提供する。
【解決手段】PoE受電装置A2,B3,C4,D5をひとつのVLAN(仮想LAN))に所属させ、同PoE受電装置A2,B3,C4,D5に対して電源が供給される優先度が設定されると共に、電源が供給されるPoE受電装置の数が所定の時間帯毎にあらかじめ設定される。そして、電源が供給されているPoE受電装置毎に送受信パケットの流量がパケットカウンタ14aで測定され、測定される送受信パケットの流量が第1の閾値以上になり、かつ電源が供給されていないPoE受電装置が存在するとき、同PoE受電装置に電源が供給される。一方、送受信パケットの流量が第1の閾値よりも小さい第2の閾値以下となったとき、当該PoE受電装置に対して電源の供給が停止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電源供給装置、電源供給制御方法、電源供給制御プログラム、及びネットワークシステムに係り、たとえば、データをパケットで送受信する複数の通信端末に対してイーサネット(Ethernet、登録商標)を介して電源を供給するPoE(Power over Ethernet 、登録商標)対応スイッチ/ルータなどに適用して好適な電源供給装置、電源供給制御方法、電源供給制御プログラム、及びネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
データをパケットで送受信する複数の通信端末(PoE受電装置)に対してイーサネットを介して電源を供給するPoE対応スイッチ/ルータは、PoE機能がオン状態に設定されている場合、ユーザが故意にオフ状態に設定しない限り、各PoE受電装置に電源を供給し続ける構成になっているため、ネットワークの使用状況によらず、一定の電力が消費されるという問題点がある。このため、ネットワーク全体の消費電力が低減される電源供給装置が提案されている。
【0003】
この種の関連する技術としては、たとえば、特許文献1に記載された電源供給装置がある。
この電源供給装置では、接続端子の一部又は全てが電源供給端子となっているコネクタに接続された通信端末について、電源供給を必要としない状態にあるか否かが、時刻データと非給電時間帯を表す時間帯データあるいは電源供給を必要とする頻度の検出と時間閾値によって判別される。そして、対応するコネクタを使用した電源供給が適宜停止される。これにより、不必要な電力供給が低減される。また、通信状況は、各通信端末の消費電力に基づいて測定される。
【特許文献1】特開2006−085503号公報(第9頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記文献を含む上記技術では、次のような問題点があった。
すなわち、上記PoE対応スイッチ/ルータでは、ユーザの操作によりPoE機能のオン/オフ状態の設定が行われるが、ユーザがPoE受電装置の使用状況に基づいて同PoE機能のオン/オフ状態の設定を行うことは現実的に困難である。このため、PoE受電装置の使用状況による動的な電源供給の制御が行われず、使用されていないPoE受電装置にも電源供給され、無駄な電力が消費されるという問題点がある。
【0005】
また、特許文献1に記載された電源供給装置では、各通信端末のポート単位で電力制御が行われるが、通信状況が同各通信端末の消費電力に基づいて測定されるので、この発明とは構成が異なっている。また、この電源供給装置では、各ポートに電力計測のための計測回路を実装する必要があり、ハード的に対象機器の電力消費量が異なる場合などの対応が必要である。この場合、たとえば、機器毎に消費電力の閾値を設定するなど、煩雑な作業が必要となる。
【0006】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、データをパケットで送受信する複数の通信端末に対してイーサネットを介して電源を供給する場合のネットワーク全体の消費電力が低減される電源供給装置、電源供給制御方法、電源供給制御プログラム、及びネットワークシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明の第1の構成は、データをパケットで送受信する複数の通信端末に対して、ネットワークを介して電源を供給する電源供給装置に係り、前記複数の通信端末のうちの電源が供給される通信端末の数を所定の時間帯毎にあらかじめ設定し、電源が供給されている前記各通信端末毎に送受信パケットの流量を測定し、前記流量が所定の閾値以上になり、かつ電源が供給されていない通信端末が存在するとき、該通信端末に電源を供給する電源供給制御手段が設けられていることを特徴としている。
【0008】
この発明の第2の構成は、データをパケットで送受信する複数の通信端末に対して、ネットワークを介して電源を供給する電源供給装置に用いられる電源供給制御方法に係り、前記複数の通信端末のうちの電源が供給される通信端末の数を所定の時間帯毎にあらかじめ設定し、電源が供給されている前記各通信端末毎に送受信パケットの流量を測定し、前記流量が所定の閾値以上になり、かつ電源が供給されていない通信端末が存在するとき、該通信端末に電源を供給することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
この発明の構成によれば、電源供給制御手段により、複数の通信端末のうちの電源が供給される通信端末の数が所定の時間帯毎にあらかじめ設定され、電源が供給されている各通信端末毎に送受信パケットの流量が測定され、同流量が所定の閾値以上になり、かつ電源が供給されていない通信端末が存在するとき、同通信端末に電源が供給されるので、ユーザの通信に影響を与えることなく、消費電力を必要最低限に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
複数の通信端末に対して電源が供給される優先度を設定すると共に、電源が供給される通信端末の数を所定の時間帯毎にあらかじめ設定し、電源が供給されている上記各通信端末毎に送受信パケットの流量を測定し、上記流量が第1の閾値以上になり、かつ電源が供給されていない通信端末が存在するとき、同通信端末に電源を供給する一方、上記流量が第1の閾値よりも小さい第2の閾値以下となったとき、当該通信端末に対して電源の供給を停止する電源供給制御手段が設けられている電源供給装置を提供する。
【0011】
また、この発明では、上記電源供給制御手段は、給電手段と、電源が供給されている上記各通信端末毎に送受信パケットの流量を測定するパケット流量測定手段と、同パケット流量測定手段で測定される上記送受信パケットの流量が上記第1の閾値以上になり、かつ電源が供給されていない通信端末が存在するとき、上記給電手段を介して、同通信端末に電源を供給する一方、上記流量が第1の閾値よりも小さい第2の閾値以下となったとき、当該通信端末に対して電源の供給を停止する制御部とを備えている。
【0012】
また、この発明では、上記制御部は、電源が供給されていない通信端末宛にパケットが着信したとき、同パケットを保持し、上記給電手段を介して同通信端末に電源を供給すると共に上記パケットを転送する構成とされている。
【0013】
また、この発明では、上記制御部は、電源の供給/停止の対象となる複数の通信端末をひとつのグループに所属させ、同グループに所属する通信端末に対して電源が供給される優先度を設定すると共に、電源が供給される通信端末の数を所定の時間帯毎にあらかじめ設定するスケジュールを有する。
【0014】
また、この発明は、データをパケットで送受信する複数の通信端末と、上記複数の通信端末に対して、ネットワークを介して電源を供給する電源供給装置とを有するネットワークシステムに係り、上記電源供給装置は、上記複数の通信端末のうちの電源が供給される通信端末の数を所定の時間帯毎にあらかじめ設定し、電源が供給されている上記各通信端末毎に送受信パケットの流量を測定し、上記流量が所定の閾値以上になり、かつ電源が供給されていない通信端末が存在するとき、同通信端末に電源を供給する電源供給制御手段が設けられている。
【0015】
また、この発明は、データをパケットで送受信する複数の通信端末と、上記複数の通信端末に対して、ネットワークを介して電源を供給する電源供給装置とを有するネットワークシステムに係り、上記電源供給装置は、上記複数の通信端末に対して電源が供給される優先度を設定すると共に、電源が供給される通信端末の数を所定の時間帯毎にあらかじめ設定し、電源が供給されている上記各通信端末毎に送受信パケットの流量を測定し、上記流量が第1の閾値以上になり、かつ電源が供給されていない通信端末が存在するとき、同通信端末に電源を供給する一方、上記流量が第1の閾値よりも小さい第2の閾値以下となったとき、当該通信端末に対して電源の供給を停止する電源供給制御手段が設けられている。
【0016】
また、この発明では、上記電源供給制御手段は、給電手段と、電源が供給されている上記各通信端末毎に送受信パケットの流量を測定するパケット流量測定手段と、同パケット流量測定手段で測定される上記送受信パケットの流量が上記第1の閾値以上になり、かつ電源が供給されていない通信端末が存在するとき、上記給電手段を介して、同通信端末に電源を供給する一方、上記流量が第1の閾値よりも小さい第2の閾値以下となったとき、当該通信端末に対して電源の供給を停止する制御部とを備えている。
【0017】
また、この発明では、上記制御部は、電源が供給されていない通信端末宛にパケットが着信したとき、同パケットを保持し、上記給電手段を介して同通信端末に電源を供給すると共に上記パケットを転送する構成とされている。
【0018】
また、この発明では、上記制御部は、電源の供給/停止の対象となる複数の通信端末をひとつのグループに所属させ、同グループに所属する通信端末に対して電源が供給される優先度を設定すると共に、電源が供給される通信端末の数を所定の時間帯毎にあらかじめ設定するスケジュールを有する。
【実施例】
【0019】
図1は、この発明の一実施例である電源供給装置が設けられているネットワークシステムの要部の電気的構成を示すブロック図である。
この例のネットワークシステムは、同図に示すように、PoE対応スイッチ/ルータ10と、PoE受電装置A2,B3,C4,D5と、スイッチA21とを有している。PoE受電装置A2,B3,C4,D5は、データをパケットで送受信する通信端末としての機能を有し、PoE対応スイッチ/ルータ10から図示しないRJ45ケーブルなどを経て電力が供給されることで動作する。
【0020】
PoE対応スイッチ/ルータ10は、TCP・UDP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol /User Datagram Protocol)/IPパケットの転送処理機能を有する装置であり、制御部11と、バスブリッジ12と、レイヤ3・4/スイッチング処理部13と、レイヤ2処理部14と、レイヤ1処理部15と、受電機器インタフェース部16とから構成され、上記PoE受電装置A2,B3,C4,D5に対して、ネットワーク(たとえば、イーサネット、Ethernet、登録商標)を介して電源を供給する。なお、上記レイヤ1,2,3,4は、OSI(Open Systems Interconnection、開放型システム間相互接続)プロトコルに基づいている。
【0021】
受電機器インタフェース部16は、PoE受電装置A2,B3,C4,D5と接続するためのポートA23,B24,C25,D26を有し、同PoE受電装置A2,B3,C4,D5に対して電力の供給を行う。また、受電機器インタフェース部16は、スイッチA21と接続するためのポートE27を有している。スイッチA21には、たとえばインターネット(Internet)NWなど、他のネットワークが接続されている。レイヤ1処理部15は、ポート給電部15aと、パケットインタフェース部15bとを有している。ポート給電部15aは、各ポートA23,B24,C25,D26毎に電源を供給する機能(PoE機能)を有し、設定により各ポート毎にPoE機能のオン状態/オフ状態を変更可能である。パケットインタフェース部15bは、受電機器インタフェース部16とレイヤ2処理部14との間を中継するインタフェースである。レイヤ2処理部14は、パケットカウンタ14aを有している。パケットカウンタ14aは、各ポートA23,B24,C25,D26,E27に接続されて電源が供給されているPoE受電装置A2,B3,C4,D5毎の送受信パケットの流量をカウントする。レイヤ3・4/スイッチング処理部13は、パケットの転送処理を行うスイッチ部13aと、パケットの帯域の監視を行う帯域監視部13bとを有している。帯域監視部13bは、設定により、各ポートA23,B24,C25,D26,E27毎の送受信パケットの流量を監視し、所定の閾値以上になったり、以下になった場合、制御部11へ割り込みintをかけて通知を行う。
【0022】
制御部11は、PoE対応スイッチ/ルータ10全体を制御するコンピュータとしてのCPU(中央処理装置)11a及び同CPU11aを動作させるための電源供給制御プログラムが記録されたROM(リード・オンリ・メモリ)11bを有し、バスブリッジ12及び制御バスBを介して、レイヤ3・4処理部13、レイヤ2処理部14、及びレイヤ1処理部15と接続され、各部の設定、パケットの送受信カウンタなどの状態監視を行う。特に、この実施例では、制御部11は、PoE対応スイッチ/ルータ10内の各部を制御するためのスケジュールが記憶されているRAM(Random Access Memory)11cが設けられている。RAM11cでは、電源の供給/停止の対象となるPoE受電装置A2,B3,C4,D5をひとつのグループに所属させ、同グループに所属する通信端末に対して電源が供給される優先度を設定すると共に、電源が供給されるPoE受電装置の数を所定の時間帯毎にあらかじめ設定するスケジュールが記憶されている。
【0023】
また、制御部11は、パケットカウンタ14aで測定される送受信パケットの流量が第1の閾値以上になり、かつ電源が供給されていないPoE受電装置が存在するとき、レイヤ1処理部15及び受電機器インタフェース部16を介して、同PoE受電装置に電源を供給する一方、上記流量が第1の閾値よりも小さい第2の閾値以下となったとき、当該PoE受電装置に対して電源の供給を停止する。また、制御部11は、電源が供給されていないPoE受電装置宛にパケットが着信したとき、同パケットを保持し、レイヤ1処理部15及び受電機器インタフェース部16を介して同PoE受電装置に電源を供給すると共に同パケットを転送する。
【0024】
図2は、図1中のRAM11cに記憶されているスケジュールの一例を示す図、及び図3が、図1のネットワークシステムの状況の変化及び動作の遷移の一例を示す図である。
これらの図を参照して、この例のPoE対応スイッチ/ルータ10(電源供給装置)に用いられる電源供給制御方法の処理内容について説明する。
このPoE対応スイッチ/ルータ10では、PoE受電装置A2,B3,C4,D5をひとつのグループ(たとえば、VLAN、Virtual LAN、仮想LAN))に所属させ、同PoE受電装置A2,B3,C4,D5に対して電源が供給される優先度が設定されると共に、電源が供給されるPoE受電装置の数が所定の時間帯毎にあらかじめ設定される。そして、電源が供給されているPoE受電装置毎に送受信パケットの流量がパケットカウンタ14aで測定され、測定される送受信パケットの流量が第1の閾値以上になり、かつ電源が供給されていないPoE受電装置が存在するとき、同PoE受電装置に電源が供給される。一方、送受信パケットの流量が第1の閾値よりも小さい第2の閾値以下となったとき、当該PoE受電装置に対して電源の供給が停止される。また、PoE対応スイッチ/ルータ10では、電源が供給されていないPoE受電装置宛にパケットが着信したとき、同パケットが保持され、同PoE受電装置に電源が供給されると共に同パケットが転送される。
【0025】
すなわち、RAM11cでは、図2に示すように、項目[1]にて、PoE対応スイッチ/ルータ10のポートA23,B24,C25,D26が設定されている。また、項目[2]にて、各ポートA23,B24,C25,D26に接続されているPoE受電装置A2,B3,C4,D5が設定されている。項目[3]にて、各ポートA23,B24,C25,D26が所属するVLANが“1”に設定されている。これにより、電源供給のオン/オフの制御は、各ポートA23,B24,C25,D26が所属しているVLAN毎に行われる。項目[4]にて、VLANの各時間毎の電源供給のオン/オフの設定が示され、ある時間帯に最低何個のポートに対して電源供給をオン状態にするかがデフォルト値で示されている。項目[5]にて、PoE受電装置A2,B3,C4,D5に対する電源供給の優先度が示され、優先度の高い順に電源供給がオン状態となる。
【0026】
項目[6]にて、PoE受電装置に対して電源が供給されるときの送受信パケットの流量の第1の閾値(オン帯域)が示されている。この場合、各ポートA23,B24,C25,D26のうちの電源供給がオン状態となっているポートの使用帯域が監視され、いずれかのポートで項目[6]で設定されている帯域(52Mbps)以上になった場合、電源供給がオフ状態のポートのうちの優先度の高いポートに対して電源供給がオン状態とされる。項目[7]にて、PoE受電装置に対して電源供給が停止されるときの送受信パケットの流量の第2の閾値(オフ帯域)が示されている。この場合、各ポートA23,B24,C25,D26のうちの電源供給がオフ状態となっているポートの使用帯域が監視され、いずれかのポートで項目[7]で設定されている帯域(0Mbps)以下になった場合、そのポートに対して電源供給がオフ状態とされる。ただし、電源供給がオン状態となっているポート数が項目[4]で設定されている数以下にならないようにする。
【0027】
このネットワークシステムでは、制御部11により、図2のスケジュールに基づいて、帯域監視部13bにオン帯域及びオフ帯域が設定される。帯域監視部13bでは、同設定により、各ポート毎の送受信パケットの流量が監視され、同流量が第1の閾値以上になったり、また、第2の閾値以下になった場合、制御部11へ割り込みintをかけて通知される。制御部11では、帯域監視部13bから割り込みintがあった場合、同帯域監視部13bのステータス(状態)を制御バスBを通じて確認し、オン帯域を超えている状態の場合、ポート給電部15aに対して、他のポートのPoE給電を開始する設定を行う。また、帯域監視部13bのステータスがオフ帯域以下の常態の場合、そのポートのPoE給電が停止される。
【0028】
すなわち、図3に示すように、項目[8]の初期状態(8−18時の時間帯)にて、ポートA23,B24の2つのポートに対する電源供給の機能(PoE機能)の優先順位が高い(優先度;1,2)ため、オン状態(ON)となっている。PoE対応スイッチ/ルータ10の制御部11は、定期的にレイヤ2処理部14のパケットカウンタ14aをポーリング(polling )することで、各ポートネットワークの使用状況を監視している。項目[9]の状況Aでは、ポートA23の使用帯域が15Mbps、及びポートB24の使用帯域が10Mbpsのとき、PoE機能のオン状態は変化しない。項目[10]の状況Bでは、ポートA23の使用帯域が53Mbps、及びポートB24の使用帯域が10Mbpsとなり、ポートA23の使用帯域が項目[6]で設定されている帯域(52Mbps)を超えているため、次に優先度の高いポートC25(優先度;3)のPoE機能がオン状態とされる。
【0029】
項目[11]の状況Cでは、ポートA23の使用帯域が53Mbps、ポートB24の使用帯域が53Mbps、及びポートC25の使用帯域が10Mbpsとなり、ポートB24の使用帯域が項目[6]で設定されている帯域(52Mbps)を超えているため、最後のポートD26のPoE機能がオン状態とされる。項目[12]の状況Dでは、ポートA23の使用帯域が0Mbps、ポートB24の使用帯域が15Mbps、ポートC25の使用帯域が10Mbps、及びポートD26の使用帯域が10Mbpsとなり、ポートA23の使用帯域が項目[7]で設定されている帯域(0bps)以下となったため、ポートA23のPoE機能がオフ状態(OFF)とされる。項目[13]の状況Eでは、ポートB24の使用帯域が15Mbps、ポートC25の使用帯域が10Mbps、及びポートD26の使用帯域が0Mbpsとなり、ポートD26の使用帯域が項目[7]で設定されている帯域(0bps)以下となったため、ポートD26のPoE機能がオフ状態とされる。項目[14]の状況Fでは、ポートB24の使用帯域が0Mbps、及びポートC25の使用帯域が10Mbpsとなり、項目[4]で設定されているデフォルト値のオン状態の台数(2台)になっているため、PoE機能のオン状態/オフ状態が保持される。
【0030】
また、レイヤ3・4/スイッチ処理部13では、給電されていないPoE受電装置に対するパケットAが到着した場合、制御バスBを介して制御部11へ転送する。制御部11は、そのパケットAを保持し、給電されていないPoE受電装置に給電を行い、ARP(Address Resolution Protocol )解決を行い、この後、該当するPoE受電装置に対してパケットAの転送を行う。ARP解決後、該当するPoE受電装置が接続されていない他のポートの給電を停止する。また、制御部11は、PoE受電装置の立ち上がり時間が遅い場合、パケットAに対して代理で応答することもある。
【0031】
以上のように、この実施例では、PoE受電装置A2,B3,C4,D5をひとつのVLANに所属させ、電源が供給されているPoE受電装置毎に送受信パケットの流量がパケットカウンタ14aで測定され、測定される送受信パケットの流量が第1の閾値以上になり、かつ電源が供給されていないPoE受電装置が存在するとき、同PoE受電装置に電源が供給される一方、送受信パケットの流量が第1の閾値よりも小さい第2の閾値以下となったとき、当該PoE受電装置に対して電源の供給が停止されるので、ユーザの通信に影響を与えることなく、消費電力が必要最低限に低減される。また、PoE対応スイッチ/ルータ10では、電源が供給されていないPoE受電装置宛にパケットが着信したとき、同パケットが保持され、同PoE受電装置に電源が供給されると共に同パケットが転送されるので、電源が供給されていないPoE受電装置があっても、パケットの着信に対応できる。また、使用されていないPoE受電装置には電源が供給されないため、PoE受電装置の稼働時間が少なくなり、電源を供給し続ける場合に比べ、故障の可能性が低くなる。
【0032】
以上、この発明の実施例を図面により詳述してきたが、具体的な構成は同実施例に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても、この発明に含まれる。
たとえば、上記実施例では、PoE機能の制御を行う単位がひとつのVLANとなっているが、図4中の項目[3]に示すように、PoE機能の制御を行う単位をひとつの所属グループとし、複数のポートを所属させることにより、グループ単位でPoE機能の制御を行うようにしても良い。この場合、所属しているVLANが異なる複数のポートをひとつのグループに所属させることや、あるひとつのVLANに所属しているポートの中で特定のポートを選択してグループに所属させることができ、より細かい制御が可能となる。
【0033】
制御部11は、ポートA23〜E27のパケット流量を、パケットカウンタ14aによるパケット数を読む込むことで監視し、同パケット流量がオン帯域を超えている場合、他のポートのPoE給電を開始する設定をポート給電部15aに対して行う一方、同パケット流量がオフ帯域となった場合、そのポートのPoE給電を停止するようにしても良い。これにより、帯域監視部13bを所有しない装置についても、パケット流量に基づいたPoE給電のオン/オフ制御が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
この発明は、データをパケットで送受信する複数の通信端末に対して、ネットワークを介して電源を供給する場合全般に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の一実施例である電源供給装置が設けられているネットワークシステムの要部の電気的構成を示すブロック図である。
【図2】図1中のRAM11cに記憶されているスケジュールの一例を示す図である。
【図3】図1のネットワークシステムの状況の変化及び動作の遷移の一例を示す図である。
【図4】図1中のRAM11cに記憶されているスケジュールの変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
10 PoE対応スイッチ/ルータ(電源供給装置、ネットワークシステムの一部)
11 制御部(電源供給制御手段の一部)
11a CPU(中央処理装置)(電源供給制御手段の一部)
11b ROM(Read Only Memory)(電源供給制御手段の一部)
11c RAM(Random Access Memory)(電源供給制御手段の一部)
13 レイヤ3・4/スイッチング処理部(電源供給制御手段の一部)
13a スイッチ部(電源供給制御手段の一部)
13b 帯域監視部(電源供給制御手段の一部)
14 レイヤ2処理部(電源供給制御手段の一部)
14a パケットカウンタ(電源供給制御手段の一部、パケット流量測定手段)
15 レイヤ1処理部(電源供給制御手段の一部)
15a ポート給電部(電源供給制御手段の一部)
15b パケットインタフェース部(電源供給制御手段の一部)
16 受電機器インタフェース部(電源供給制御手段の一部)
A2,B3,C4,D5 PoE受電装置(通信端末、ネットワークシステムの一部)
A23,B24,C25,D26 ポート(電源供給制御手段の一部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データをパケットで送受信する複数の通信端末に対して、ネットワークを介して電源を供給する電源供給装置であって、
前記複数の通信端末のうちの電源が供給される通信端末の数を所定の時間帯毎にあらかじめ設定し、電源が供給されている前記各通信端末毎に送受信パケットの流量を測定し、前記流量が所定の閾値以上になり、かつ電源が供給されていない通信端末が存在するとき、該通信端末に電源を供給する電源供給制御手段が設けられていることを特徴とする電源供給装置。
【請求項2】
データをパケットで送受信する複数の通信端末に対して、ネットワークを介して電源を供給する電源供給装置であって、
前記複数の通信端末に対して電源が供給される優先度を設定すると共に、電源が供給される通信端末の数を所定の時間帯毎にあらかじめ設定し、電源が供給されている前記各通信端末毎に送受信パケットの流量を測定し、前記流量が第1の閾値以上になり、かつ電源が供給されていない通信端末が存在するとき、該通信端末に電源を供給する一方、前記流量が第1の閾値よりも小さい第2の閾値以下となったとき、当該通信端末に対して電源の供給を停止する電源供給制御手段が設けられていることを特徴とする電源供給装置。
【請求項3】
前記電源供給制御手段は、
給電手段と、
電源が供給されている前記各通信端末毎に送受信パケットの流量を測定するパケット流量測定手段と、
該パケット流量測定手段で測定される前記送受信パケットの流量が前記第1の閾値以上になり、かつ電源が供給されていない通信端末が存在するとき、前記給電手段を介して、該通信端末に電源を供給する一方、前記流量が第1の閾値よりも小さい第2の閾値以下となったとき、当該通信端末に対して電源の供給を停止する制御部とを備えてなることを特徴とする請求項2記載の電源供給装置。
【請求項4】
前記制御部は、
電源が供給されていない通信端末宛にパケットが着信したとき、該パケットを保持し、前記給電手段を介して該通信端末に電源を供給すると共に前記パケットを転送する構成とされていることを特徴とする請求項3記載の電源供給装置。
【請求項5】
前記制御部は、
電源の供給/停止の対象となる複数の通信端末をひとつのグループに所属させ、該グループに所属する通信端末に対して電源が供給される優先度を設定すると共に、電源が供給される通信端末の数を所定の時間帯毎にあらかじめ設定するスケジュールを有することを特徴とする請求項3又は4記載の電源供給装置。
【請求項6】
データをパケットで送受信する複数の通信端末に対して、ネットワークを介して電源を供給する電源供給装置に用いられる電源供給制御方法であって、
前記複数の通信端末のうちの電源が供給される通信端末の数を所定の時間帯毎にあらかじめ設定し、電源が供給されている前記各通信端末毎に送受信パケットの流量を測定し、前記流量が所定の閾値以上になり、かつ電源が供給されていない通信端末が存在するとき、該通信端末に電源を供給することを特徴とする電源供給制御方法。
【請求項7】
データをパケットで送受信する複数の通信端末に対して、ネットワークを介して電源を供給する電源供給装置に用いられる電源供給制御方法であって、
前記複数の通信端末に対して電源が供給される優先度を設定すると共に、電源が供給される通信端末の数を所定の時間帯毎にあらかじめ設定し、電源が供給されている前記各通信端末毎に送受信パケットの流量を測定し、前記流量が第1の閾値以上になり、かつ電源が供給されていない通信端末が存在するとき、該通信端末に電源を供給する一方、前記流量が第1の閾値よりも小さい第2の閾値以下となったとき、当該通信端末に対して電源の供給を停止することを特徴とする電源供給制御方法。
【請求項8】
給電手段と、
電源が供給されている前記各通信端末毎に送受信パケットの流量を測定するパケット流量測定手段とを設けておき、
該パケット流量測定手段で測定される前記送受信パケットの流量が前記第1の閾値以上になり、かつ電源が供給されていない通信端末が存在するとき、前記給電手段を介して、該通信端末に電源を供給する一方、前記流量が第1の閾値よりも小さい第2の閾値以下となったとき、当該通信端末に対して電源の供給を停止することを特徴とする請求項7記載の電源供給制御方法。
【請求項9】
電源が供給されていない通信端末宛にパケットが着信したとき、該パケットを保持し、前記給電手段を介して該通信端末に電源を供給すると共に前記パケットを転送することを特徴とする請求項8記載の電源供給制御方法。
【請求項10】
電源の供給/停止の対象となる複数の通信端末をひとつのグループに所属させ、該グループに所属する通信端末に対して電源が供給される優先度を設定すると共に、電源が供給される通信端末の数を所定の時間帯毎にあらかじめ設定することを特徴とする請求項8又は9記載の電源供給制御方法。
【請求項11】
コンピュータに請求項1乃至5のいずれか一に記載の電源供給装置を制御させるための電源供給制御プログラム。
【請求項12】
データをパケットで送受信する複数の通信端末と、前記複数の通信端末に対して、ネットワークを介して電源を供給する電源供給装置とを有するネットワークシステムであって、
前記電源供給装置は、
前記複数の通信端末のうちの電源が供給される通信端末の数を所定の時間帯毎にあらかじめ設定し、電源が供給されている前記各通信端末毎に送受信パケットの流量を測定し、前記流量が所定の閾値以上になり、かつ電源が供給されていない通信端末が存在するとき、該通信端末に電源を供給する電源供給制御手段が設けられていることを特徴とするネットワークシステム。
【請求項13】
データをパケットで送受信する複数の通信端末と、前記複数の通信端末に対して、ネットワークを介して電源を供給する電源供給装置とを有するネットワークシステムであって、
前記電源供給装置は、
前記複数の通信端末に対して電源が供給される優先度を設定すると共に、電源が供給される通信端末の数を所定の時間帯毎にあらかじめ設定し、電源が供給されている前記各通信端末毎に送受信パケットの流量を測定し、前記流量が第1の閾値以上になり、かつ電源が供給されていない通信端末が存在するとき、該通信端末に電源を供給する一方、前記流量が第1の閾値よりも小さい第2の閾値以下となったとき、当該通信端末に対して電源の供給を停止する電源供給制御手段が設けられていることを特徴とする請求項12記載のネットワークシステム。
【請求項14】
前記電源供給制御手段は、
給電手段と、
電源が供給されている前記各通信端末毎に送受信パケットの流量を測定するパケット流量測定手段と、
該パケット流量測定手段で測定される前記送受信パケットの流量が前記第1の閾値以上になり、かつ電源が供給されていない通信端末が存在するとき、前記給電手段を介して、該通信端末に電源を供給する一方、前記流量が第1の閾値よりも小さい第2の閾値以下となったとき、当該通信端末に対して電源の供給を停止する制御部とを備えてなることを特徴とする請求項13記載のネットワークシステム。
【請求項15】
前記制御部は、
電源が供給されていない通信端末宛にパケットが着信したとき、該パケットを保持し、前記給電手段を介して該通信端末に電源を供給すると共に前記パケットを転送する構成とされていることを特徴とする請求項14記載のネットワークシステム。
【請求項16】
前記制御部は、
電源の供給/停止の対象となる複数の通信端末をひとつのグループに所属させ、該グループに所属する通信端末に対して電源が供給される優先度を設定すると共に、電源が供給される通信端末の数を所定の時間帯毎にあらかじめ設定するスケジュールを有することを特徴とする請求項14又は15記載のネットワークシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−218752(P2009−218752A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58794(P2008−58794)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】