説明

電源装置および電気装置の放熱構造

【課題】プリント基板へ半田接続する半導体素子の放熱効果改善と、半導体素子のリード端子が,製品の輸送・移動の振動により,リード端子の半田接続部で破断あるいは亀裂が発生するのを防止することである。
【解決手段】半導体素子駆動用プリント基板3において,半導体素子のリード端子5との半田接続部13と半田接続部以外の部分11との間にフレキシブル部8を形成し,フレキシブル部8はプリント基板の表面・裏面を構成しているガラスエポキシ材などの絶縁基材10を実装しないことにより,銅箔9と銅箔間の絶縁物12とで薄いフィルム状のフレキシブル性を有する状態とし,半導体素子のリード端子5にかかる歪力あるいは振動による動荷重を吸収できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,溶接機用,めっき用などの半導体電源装置の放熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接機用,めっき用などの半導体電源装置は,製品をコンパクトに製作するために,半導体と半導体冷却フィンとプリント基板などを出力制御ブロック7として一体に組み,固定のための材料と配線のための材料を極力減らすような製作方法が実施されている。図3にその実施例の構造図を,図4にその回路構成のブロック図を示す。この例では,半導体素子冷却フィン2に半導体素子1,半導体素子駆動用プリント基板3,制御用基板4を取り付け,半導体素子のリード端子5を半導体素子駆動用プリント基板3に直接半田付け6して,その間の配線材料を省略し,同時に半導体素子1と半導体素子駆動用プリント基板3との相互の位置固定を行っている。
【0003】
しかし,このようにした場合,前記構成部品は剛体あるいは硬質材料で構成されてあり,相互の固定部分には可動部が無いため,固定するための材料や各部品の寸法・角度の誤差により,あるいは組立作業上での誤差などにより,前記構成部品と配線のそれぞれに歪力が生じている。この為、半導体素子1が半導体素子駆動用プリント基板3に半田付け6をされ,制御用基板4にビスで固定された状態で, 半導体素子冷却フィン2に抑え金具18で固定された場合, 半導体素子1が半導体素子冷却フィン2に対して浮き,放熱が正常にできず,半導体素子1が破壊する場合がある。また、この電源装置を輸送あるいは移動させる場合,相互の固定部分には,輸送・移動時の振動による動荷重が前記の歪力にプラスされて加わることになり,各構成部品を相互に固定した力のループの中で,一番機械強度が脆弱な部分で破損する場合が有る。
【0004】
この例では,半導体素子1が半導体素子冷却フィン2から浮き, 半導体素子1の放熱が正常にできず,半導体素子1が破壊することがあった。また,半導体素子駆動用プリント基板3へ配線する,半導体素子のリード端子5の半田接続部6の断面が,例えば約1*1mmと細いため機械強度が弱く,半導体素子のリード端子5の前記半田接続部6において破断あるいは亀裂が発生することがあった。
【0005】
半導体素子1が半導体素子冷却フィン2から浮く事の改善と,振動を伴う環境下での使用等による,部品のリード端子とプリント基板との半田接続部にかかる力を吸収する方法として,部品のリード端子とプリント基板との間にフレキシブル基板を仲介して接続することにより,半田接続部にかかる力をフレキシブル基板で吸収する方法が行われる事例が有り,従来の改善実施例として図5にその内容を示す。
【0006】
この例では,部品14のリード端子15を一旦フレキシブル基板17に接続し,フレキシブル基板17とプリント基板16を接続しているが,この場合,フレキシブル基板17が新たに必要であり,フレキシブル基板17を取り付け,配線するスペースも必要であり,又作業性も悪くなっている。
【特許文献1】実開平7−7167号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は,半導体素子が半導体素子冷却フィンから浮く事で,正常な放熱ができない事で熱破壊する事と,コンパクトな電源装置を製作するために,半導体素子のリード端子をプリント基板へ直接半田接続する事で,製品の輸送・移動時の振動により,半導体素子のリード端子が半田接続部分で破断あるいは亀裂が発生する点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は,半導体素子1が半導体素子冷却フィン2から浮く事の改善と,輸送・移動時の振動による半導体素子のリード端子5の破断あるいは亀裂を防ぐために,半導体素子のリード端子5を半田接続する半導体素子駆動用プリント基板3の半田接続部13の周辺をフレキシブル性を有する材料で構成し,半導体素子のリード端子5にかかる歪力あるいは振動による動荷重を吸収できるようにする事である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は,半導体素子のリード端子5を半田接続する半導体素子駆動用プリント基板3の半田接続部13の周辺にフレキシブル性材料を採用することにより,半導体素子1が半導体素子冷却フィン2から浮く事で熱破壊する事の改善と,半導体電源装置の輸送・移動時の振動による力を吸収し,半導体素子のリード端子5の破断あるいは亀裂の発生を防止できる。又,この発明を実施するに当たって,構成部品の基本的構造は変わらず,周辺の構造を改善前の構造と変更する必要は無く,既製の製品に対しても半導体素子駆動用プリント基板3を交換することで簡単に実施できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
半導体素子1が半導体素子冷却フィン2から浮く事による熱破壊防止と,半導体素子のリード端子5の破断あるいは亀裂の発生を防止するという目的を,半導体素子駆動用プリント基板3の機能を損なうことなく,又他の前記の構成部品及びその相互の固定方法を何ら変更することなく,半導体駆動用プリント基板3内の前記の半田接続部13の周辺材料をフレキシブル性を有する材料で構成することで実現した。
【実施例1】
【0011】
図1は本発明の実施例であって,半導体素子駆動用プリント基板3において,前記の半導体素子のリード端子5との半田接続部13と半田接続部以外の部分11との間に,薄いフィルム状のフレキシブル部8を設けた。このフレキシブル部8により,半導体電源装置の輸送・移動時の振動により生じる力は吸収され,半導体素子のリード端子5の破断あるいは亀裂の発生を防止できる。
【0012】
図2に前記のフレキシブル部8の構成を示す。前記の半田接続部13と半田接続部以外の部分11との間のフレキシブル部8を形成する部分は,前記のプリント基板3の表面・裏面を構成している例えばガラスエポキシ材などの絶縁基材10を実装しないことにより,銅箔9と銅箔間の絶縁物12と, 銅箔9を覆う絶縁物12とで薄いフィルム状のフレキシブル部8を構成する。
【産業上の利用可能性】
【0013】
電子部品が大容量化する一方で,サイズは小型化し,プリント基板上で電力配線を行うことが増加している。この場合の配線は、銅帯が使用されることも多く,本実施例のように半導体素子のリード端子を直接配線する場合に限らず,プリント基板とプリント基板外からの剛体の配線が接続する場合はしばしば有り,このような場合にも本発明の内容は有効となる。又,前記の配線の接続方法は半田付けの場合に限らず,ビス止め,カシメ,差込などの他の接続方法である場合にも応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例
【図2】フレキシブル部を説明する半導体素子駆動用プリント基板の断面図
【図3】従来の実施例を説明する図
【図4】図1,図3を説明するブロック回路図
【図5】従来の改善実施例
【符号の説明】
【0015】
1 半導体素子
2 半導体素子冷却フィン
3 半導体素子駆動用プリント基板
4 制御用基板
5 半導体素子のリード端子
6 半導体素子のリード端子の半導体駆動用プリント基板への半田接続部
7 出力制御ブロック
8 フレキシブル部
9 銅箔
10 絶縁基材
11 半田接続部以外の部分
12 銅箔間の絶縁物
13 半導体素子のリード端子と半田接続する半導体素子駆動用プリント基板の半田接
続部
14 部品
15 リード端子
16 プリント基板
17 フレキシブル基板
18 抑え金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子と半導体素子冷却フィンとプリント基板などが一体のブロック構造に組み立てられ,半導体素子駆動用プリント基板に半導体素子のリード端子が直接半田付けされている溶接機用,めっき用などの電源装置において,前記プリント基板の前記半田付け部の周辺がフレキシブル性を有する材料を用いて構成されるプリント基板にした事を特徴とする電源装置の放熱構造。
【請求項2】
請求項1の電源装置において,前記の半田付け部がフレキシブル性を有する材料を用いて構成される前記プリント基板は,半導体素子のリード端子との半田接続部と前記の半田接続部以外の部分との間を薄いフィルム状のフレキシブル部としたことを特徴とする電源装置の放熱構造。
【請求項3】
請求項2の電源装置において,前記プリント基板の半田接続部と,前記プリント基板の半田接続部以外の部分との間を薄いフィルム状のフレキシブル部とする,前記プリント基板は,その表面と裏面を構成しているガラスエポキシ材などの絶縁基材を,前記フレキシブル部とする部分には実装しないことにより,銅箔で,あるいは多層基板の場合は銅箔と銅箔間の絶縁材とで薄いフィルム状のフレキシブル部を構成することを特徴とする電源装置の放熱構造。
【請求項4】
プリント基板を内部に備え,前記プリント基板外から剛性の配線を前記プリント基板に半田接続する電気装置において,前記プリント基板の半田接続部と前記プリント基板の半田接続部以外の部分との間を薄いフィルム状のフレキシブル部とし,前記プリント基板の表面と裏面を構成しているガラスエポキシ材などの絶縁基材を,前記フレキシブル部とする部分には実装しないことにより,銅箔で,あるいは多層基板の場合は銅箔と銅箔間の絶縁材とで薄いフィルム状のフレキシブル部を構成することを特徴とする電気装置の放熱構造。
【請求項5】
プリント基板を内部に備え,前記プリント基板外から剛性の配線を前記プリント基板に接続する電気装置において,前記プリント基板の前記接続部と前記プリント基板の前記接続部以外の部分との間を薄いフィルム状のフレキシブル部とし,前記プリント基板の表面と裏面を構成しているガラスエポキシ材などの絶縁基材を,前記フレキシブル部とする部分には実装しないことにより,銅箔で,あるいは多層基板の場合は銅箔と銅箔間の絶縁材とで薄いフィルム状のフレキシブル部を構成することを特徴とする電気装置
の放熱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−332247(P2006−332247A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−152393(P2005−152393)
【出願日】平成17年5月25日(2005.5.25)
【出願人】(000144393)株式会社三社電機製作所 (95)
【Fターム(参考)】