説明

電源装置の制御方法及び電源装置

【課題】設備を新たに追加することなく、急な電源OFFのトリガに対応することが可能な電源装置の制御方法及び電源装置を提供する。
【解決手段】電源装置の制御方法は、電源OFFトリガ情報を取得するバッテリ100と、バッテリ100から電源が供給されるとともに、バッテリ100からの電源OFFトリガ情報に基づいた信号を受信してシステムのシャットダウン処理を行うロボットECU200とを有する電源装置の制御方法であって、バッテリ100は、シャットダウン処理の完了信号をロボットECU200から受信した後に、ロボットECU200へ供給する電源をOFFするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置の制御方法及び電源装置に関し、特に、電源部とシステム制御部とを有する電源装置の制御方法及び電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電源を備えた電源装置では、ユーザーが電源ONすると、制御部が種々の内部データを処理しながら動作しており、ユーザーが電源OFFする際には、次回の動作を正常に行うために制御部が内部データを記憶装置に退避する等のシャットダウン処理を行っている。しかし、電源が突然遮断された場合には、シャットダウン処理が実行できず、正常に内部データを退避できないため、再度電源ONしても、正常に動作しない恐れがある。
【0003】
このため、従来から、特許文献1のように、電源が突然遮断された場合でも、正常にシャットダウン処理を行う技術が知られている。
【0004】
特許文献1には、主電源が停止し、主電源からの電力の供給が遮断されたときには、補助電源が所定の一定時間電力の供給を継続するとともに、主電源の停止を停電検出部が検出し、シャットダウン処理部に信号を伝え、処理実行中の内部データ等を外部記憶手段に退避させ全処理を終了させるシャットダウン処理を一定時間経過後に実行した後、補助電源からの電力の供給を停止することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−73183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、特許文献1のような従来の電源装置では、補助電源等を備えることで、急に電源OFFとなった場合でも、正常なシャットダウン処理を可能にしている。
【0007】
しかしながら、従来の電源装置では、急な電源OFFのトリガに対応するために、補助電源等の設備を新たに追加する必要があるという問題がある。
【0008】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、設備を新たに追加することなく、急な電源OFFのトリガに対応することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電源装置の制御方法は、電源OFFトリガ情報を取得する電源部と、前記電源部から電源が供給されるとともに、前記電源部からの前記電源OFFトリガ情報に基づいた信号を受信してシステムのシャットダウン処理を行うシステム制御部とを有する電源装置の制御方法であって、前記電源部は、前記シャットダウン処理の完了信号を前記システム制御部から受信した後に、前記システム制御部へ供給する電源をOFFするものである。
【0010】
本発明に係る電源装置は、電源OFFトリガ情報を取得する電源部と、前記電源部から電源が供給されるとともに、前記電源部から前記電源OFFトリガ情報に基づいた信号を受信してシステムのシャットダウン処理を行うシステム制御部とを備え、前記電源部は、前記シャットダウン処理の完了信号を前記システム制御部から受信した後に、前記システム制御部へ供給する電源をOFFする電源制御部を有するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれは、設備を新たに追加することなく、急な電源OFFのトリガに対応することが可能な電源装置の制御方法及び電源装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電源装置の構成を示す構成図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係る電源装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態3に係る電源装置の構成を示す構成図である。
【図4】本発明の実施の形態3に係る電源装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施の形態4に係る電源装置の構成を示す構成図である。
【図6】本発明の実施の形態4に係る電源装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の実施の形態5に係る電源装置の構成を示す構成図である。
【図8】本発明の実施の形態5に係る電源装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(本発明の実施の形態1)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係るロボットシステム(電源装置)1の構成を示している。
【0014】
ロボットシステム1は、電源装置(電源システム)の一例であり、図に示されるように、バッテリ100、ロボットECU200、ロボット主電源ON−OFFトリガ検出部300を備えている。例えば、ロボットシステム1は、ユーザーを乗せて移動可能な倒立2輪型パーソナルモビリティロボットや、ユーザーのアシスト等を行う歩行アシストロボットである。
【0015】
バッテリ100とロボットECU200の間は、電源ライン10及び通信ライン20により接続されている。バッテリ100は、ロボットECU200から着脱可能であり、電源ライン10及び通信ライン20は、バッテリ100の接続端子とロボットECU200の接続端子に接続されている。
【0016】
電源ライン10は、バッテリ100からロボットECU200へ電源を供給するための配線である。電源ライン10は、第1の電源側に接続される信号線と、第2の電源側に接続される信号線とを含んでいる。
【0017】
通信ライン20は、バッテリ100とロボットECU200との間で、データ情報や指令コマンド等を通信するための配線である。通信ライン20は、バッテリ100からロボットECU200への第1の方向へ向かって主電源ON−OFFトリガ情報を伝送し、また、ロボットECU200からバッテリ100への第2の方向へ向かって放電停止指令を伝送する。例えば、通信ライン20において、第1及び第2の方向のそれぞれに対し、TTLレベルにてフラグを送受信することで各情報をデジタル信号により伝送してもよい。また、通信ライン20において、第1及び第2の方向のそれぞれに対し、一般に汎用バッテリ通信として使用されているSmbus通信を利用して各情報を伝送してもよい。
【0018】
バッテリ100とロボット主電源ON−OFFトリガ検出部300との間は、制御ライン30により接続されている。制御ライン30は、ロボットシステム1の主電源のONまたはOFFのトリガとなるトリガ情報を供給するための配線である。主電源のONまたはOFFのトリガであることを示す情報が主電源ON−OFFトリガ情報であり、特に、主電源OFFのトリガであることを示す情報が主電源OFFトリガ情報である。
【0019】
ロボット主電源ON−OFFトリガ検出部300は、ロボットシステムの主電源のONまたはOFFを検出し、バッテリ100へ主電源ON−OFFトリガ情報を送信する。ロボット主電源ON−OFFトリガ検出部300には、ユーザーやロボットの構成等に応じて種々のものが利用可能である。
【0020】
例えば、ロボット主電源ON−OFFトリガ検出部300として、ユーザーが操作する主電源SWを搭載してもよい。この場合、ユーザーのSW操作に応じて、主電源ON−OFFトリガ情報が出力される。
【0021】
また、ロボット主電源ON−OFFトリガ検出部300として、倒立2輪型パーソナルモビリティロボットのステップスイッチ情報を利用してもよい。この場合、ステップSW_ONすると(乗車時)、主電源OFFトリガ情報が出力され、ステップSW_OFFすると(降車時)、主電源OFFトリガ情報が出力される。
【0022】
また、ロボット主電源ON−OFFトリガ検出部300として、倒立2輪型パーソナルモビリティロボットの姿勢角センサ情報を利用してもよい。この場合、ロボットの傾きを検出し、ある一定角度以上(ロボット降車後の放置状態)になると、主電源OFFトリガ情報が出力される。
【0023】
また、ロボット主電源ON−OFFトリガ検出部300として、歩行アシストロボットの立脚状態判定を利用してもよい。この場合、ある一定時間立脚状態が継続したとき、主電源OFFトリガ情報が出力される。
【0024】
また、ロボット主電源ON−OFFトリガ検出部300として、歩行アシストロボットの着座状態判定を利用してもよい。この場合、ロボットが歩行状態から着座状態に移行したとき、主電源OFFトリガ情報が出力される。
【0025】
バッテリ(電源部)100は、ロボットECU200等、ロボットシステム1の各部へ電源(主電源)を供給する。図に示されるように、バッテリ100は、バッテリCPU110と、電源MOSトランジスタ120とを備えている。なお、バッテリ100は、第1の電源(または第2の電源)を供給する充電池等を備えている(不図示)。
【0026】
電源MOSトランジスタ120は、第1の電源と第2の電源との間に接続され、第1の電源と第2の電源の間の接続/切断を切り替えるスイッチ回路である。第1の電源は、VDD等のハイレベルの電源であり、第2の電源は、GND等のローレベルの電源である。
【0027】
例えば、電源MOSトランジスタ120は、Nチャネル型MOSトランジスタであり、ドレインに第1の電源が接続され、ゲートがバッテリCPU110に接続され、ソースが電源ライン10及びロボットECU200を介して第2の電源に接続されている。電源MOSトランジスタ120は、バッテリCPU110からの制御にしたがって、ON/OFFし、バッテリ100からロボットECU200への放電/放電停止を切り替える。
【0028】
バッテリCPU110は、バッテリ100の動作を制御する制御部であり、図に示されるように、トリガ取得部111、ECU間通信部112、電源制御部113を有している。例えば、メモリ等の記憶部に所定のプログラムが格納されており、バッテリCPU110がこのプログラムを実行することで、各部の構成が実現されている。
【0029】
トリガ取得部111は、ロボット主電源ON−OFFトリガ検出部300から制御ライン30を介して、主電源ON−OFFトリガ情報を取得する手段である。ECU間通信部112は、通信ライン20を介して、ロボットECU200内のECUCPU210と通信する手段である。また、ECU間通信部112は、トリガ取得部111が取得したトリガ情報をロボットECU200へ送信する手段と、ロボットECU200から放電停止指令を受信する手段を含んでいる。
【0030】
電源制御部113は、電源MOSトランジスタ120を制御して、バッテリ100からロボットECU200への放電動作(供給動作)を制御する。ECU間通信部112がロボットECU200から放電停止指令を受信した場合に、電源MOSトランジスタ120に放電停止させるように制御する。
【0031】
ロボットECU(システム制御部)200は、不図示のセンサやアクチュエータ等に接続され、ロボットシステム1の動作を制御する。図に示されるように、ロボットECU200は、ECUCPU210を備えている。
【0032】
ECUCPU210は、ロボットECU200の動作を制御する制御部であり、バッテリ間通信部211とシャットダウン処理部212を有している。例えば、メモリ等の記憶部に所定のプログラムが格納されており、ECUCPU210がこのプログラムを実行することで、各部の構成が実現されている。
【0033】
バッテリ間通信部211は、通信ライン20を介して、バッテリ100内のバッテリCPU110と通信する手段である。また、バッテリ間通信部211は、バッテリ100からの主電源ON−OFFトリガ情報を受信する手段と、バッテリ100へ放電停止指令を送信する手段を含んでいる。
【0034】
シャットダウン処理部212は、バッテリ間通信部211が主電源のON−OFFトリガ情報を受信した場合に、シャットダウン処理を実行する手段である。例えば、シャットダウン処理では、ログデータ等の必要な内部データを記憶装置へ退避する処理が行われる。
【0035】
このように、本実施形態では、主電源ON−OFFトリガ情報は、バッテリ側が監視することとした。また、主電源ON−OFFトリガ情報では、直接主電源のON−OFFを制御しないこととした。さらに、ロボットECUが主電源ON−OFF情報を受信し、バッテリへ指示することで、バッテリ側の放電・放電停止を制御することとした。
【0036】
したがって、本実施形態では、主電源のOFFトリガで直ちに主電源をOFFする一般的な電気システムとは異なり、外部からの操作やロボットシステムから主電源のOFFトリガが出力されたとしても、直ちに主電源がOFFされることがない。このため、主電源OFFの前に、ロボットECUが主電源OFFしても良いのかを判断し、シャットダウンすることができる。
【0037】
通常、リチウムイオンバッテリを使用したシステムでは、バッテリパックに制御基板を搭載することが安全上必須となるため、本発明を実施するにあたり、特別ユニットを追加する必要がない。すなわち、設備を追加することなく、急な電源OFFによるデータの記録漏れを防止することができる。
【0038】
また、ロボットに搭載のメインバッテリを継続して使用できるため、ログデータ保存中に電源が空になるリスクは極めて低い。
【0039】
(本発明の実施の形態2)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態2について説明する。本実施形態では、上記の実施の形態に対し、さらに、確実にログデータを取得できるように制御することを特徴としている。本実施形態のシステム構成は、図1と同様である。
【0040】
図2は、本発明の実施の形態2に係るロボットシステム(電源装置)の制御方法の流れを示している。まず、主電源OFFのトリガが発生する(S101)。すなわち、制御ライン30を介してバッテリCPU110へ主電源OFFトリガ情報が入力される。
【0041】
次いで、バッテリCPU110は、取得した主電源OFFトリガ情報をECUCPU210へ送信する(S102)。すなわち、バッテリCPU110は、ECUCPU210から、正常にシャットダウンが終了し、電源MOS_OFF許可信号を受信するまで、放電停止を待つ。
【0042】
次いで、ECUCPU210は、主電源OFFトリガ情報を受信し、シャットダウン処理を実行する(S103)。すなわち、ECUCPU210が、必要なログデータを保存し、シャットダウン処理が完了するまで、バッテリ100で電源遮断されることを防止する。
【0043】
次いで、ECUCPU210は、シャットダウン処理完了情報をバッテリCPU110へ送信する(S104)。すなわち、ECUCPU210は、シャットダウン処理が完了すると、電源MOSトランジスタ120のOFFを許可(電源MOS_OFF許可)するためのシャットダウン処理完了情報を送信する。
【0044】
次いで、バッテリCPU110は、シャットダウン処理完了情報を受信し、電源MOSトランジスタ120をOFFする(S105)。すなわち、バッテリCPU110は、ECUCPU210から正常にシャットダウンしたことを確認した上で、電源を遮断し放電を停止する。
【0045】
このように、本実施形態では、なんらかの主電源OFFトリガ発生時において、主電源OFFトリガ情報をバッテリを介してロボットECUが取得するようにした。また、ロボットECUは、この主電源OFFトリガ情報をもとに、シャットダウン処理(ログデータの記録等)を開始し、完了した時点で、バッテリへ放電停止(電源MOS_OFF)の指令を送信し、ロボットシステの主電源をOFFさせるようにした。
【0046】
したがって、本実施形態では、ロボットECUのシャットダウン処理が完了するまでは、バッテリが放電をし続けるため、ロボットECUから見た不意な電源OFFを防ぐことができ、電源OFFの際に必要なデータログを記録する等のシャットダウン処理を確実に行うことができる。
【0047】
(本発明の実施の形態3)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態3について説明する。本実施形態では、上記の実施の形態に対し、さらに、バッテリ残量低下時に電源OFFを制御することを特徴としている。
【0048】
図3は、本発明の実施の形態3に係るロボットシステム(電源装置)の構成を示している。図1の構成と比べて、このロボットシステム1では、バッテリ100が、残量低下検出部130を有している。その他の構成については、図1と同様である。残量低下検出部130は、バッテリの残量が所定の量よりも低下したことを検出し、検出したことをバッテリCPU110へ通知する。本実施形態では、この残量低下検出の通知が、主電源OFFトリガ情報に相当する。
【0049】
図4は、本発明の実施の形態3に係るロボットシステム(電源装置)の制御方法の流れを示している。
【0050】
まず、残量低下検出部130は、バッテリの残量低下を検出する(S201)。すなわち、残量低下検出部130は、バッテリの残量(残充電量)が、ロボットECU200のシャットダウン処理に最低限必要なバッテリの容量を下回りそうになったことを検出する。
【0051】
次いで、バッテリCPU110は、疑似主電源OFFトリガ情報をECUCPU210へ送信する(S202)。すなわち、バッテリCPU110は、バッテリの容量が所定値よりも低下したことを通知するために、疑似主電源OFFトリガ情報を送信する。疑似主電源OFFトリガ情報は、ロボットの主電源OFFトリガが入力されたことを示す疑似の情報である。したがって、ECUCPU210にとって、疑似主電源OFFトリガ情報は、主電源OFFトリガ情報と同じ情報である。
【0052】
次いで、図2のS103〜S105と同様に、ECUCPU210は、疑似主電源OFFトリガ情報を受信し、シャットダウン処理を実行し(S203)、ECUCPU210は、シャットダウン処理完了情報をバッテリCPU110へ送信し(S204)、バッテリCPU110は、シャットダウン処理完了情報を受信し、電源MOSトランジスタ120をOFFする(S205)。
【0053】
このように、本実施形態では、バッテリの残量が低下し充電が必要となった際に、バッテリはロボットECUへ主電源OFFトリガ取得情報を疑似的にロボットECUへ送信するようにした。また、ロボットECUは、この情報をもとに、シャットダウン処理(ログデータの記録等)を開始し、完了した時点で、バッテリへ放電停止(電源MOS_OFF)の指令を送信し、ロボットの電源をOFFさせるようにした。
【0054】
したがって、本実施形態では、ロボットECUのシャットダウン処理が完了するまでは、バッテリが放電をし続けるため、バッテリ残量低下による突然のバッテリ放電停止による、ロボットECUから見た不意な電源OFFを防ぐことができ、バッテリ残量低下時において、必要なデータログを記録する等のシャットダウン処理を確実に行うことができる。
【0055】
(本発明の実施の形態4)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態4について説明する。本実施形態では、上記の実施の形態に対し、さらに、バッテリ異常発生時に電源OFFを制御することを特徴としている。
【0056】
図5は、本発明の実施の形態4に係るロボットシステムの構成を示している。図1の構成と比べて、このロボットシステム1では、バッテリ100が、異常検出部140を有している。その他の構成については、図1と同様である。異常検出部140は、シャットダウン処理が実行できる程度に放電継続可能なバッテリの異常を検出し、検出したことをバッテリCPU110へ通知する。本実施形態では、この異常検出の通知が、主電源OFFトリガ情報に相当する。
【0057】
図6は、本発明の実施の形態4に係る電源装置(ロボットシステム)の制御方法の流れを示している。
【0058】
まず、異常検出部140は、ある程度の放電継続可能なバッテリ異常の発生を検出する(S301)。すなわち、直ちに放電停止をする必要はない異常については、シャットダウン完了まで放電を継続させる。
【0059】
次いで、図4のS202と同様に、バッテリCPU110は、疑似主電源OFFトリガ情報をECUCPU210へ送信する(S302)。
【0060】
次いで、図2のS103〜S105と同様に、ECUCPU210は、疑似主電源OFFトリガ情報を受信し、シャットダウン処理を実行し(S303)、ECUCPU210は、シャットダウン処理完了情報をバッテリCPU110へ送信し(S304)、バッテリCPU110は、シャットダウン処理完了情報を受信し、電源MOSトランジスタ120をOFFする(S305)。
【0061】
このように、本実施形態では、ある程度の放電継続可能なバッテリ異常発生時において、主電源OFFトリガ取得情報を疑似的にロボットECUへ送信するようにした。また、ロボットECUは、この情報をもとに、シャットダウン処理(ログデータの記録等)を開始し、完了した時点で、バッテリへ放電停止(電源MOS_OFF)の指令を送信し、ロボットの電源をOFFさせるようにした。
【0062】
したがって、本実施形態では、バッテリ側で主体的にロボットECUへシャットダウン処理を指示できる特徴を活用することで、全てのケースでのバッテリ異常発生で直ちに放電停止をするのではなく、ある程度の放電継続可能なバッテリ異常発生時においては、ロボットECUが、シャットダウン処理を完了するまでは、バッテリが放電をし続けるため、ロボットECUから見た不意な電源OFFを防ぐことができ、必要なデータログを記録する等のシャットダウン処理を確実に行うことができる。
【0063】
(本発明の実施の形態5)
以下、図面を参照して本発明の実施の形態5について説明する。本実施形態では、上記の実施の形態に対し、さらに、バッテリ異常発生時に危険回動作を行うことを特徴としている。
【0064】
図7は、本発明の実施の形態5に係るロボットシステムの構成を示している。図5の構成と比べて、このロボットシステム1では、ECUCPU210が、危険回避処理部213を有している。その他の構成については、図5と同様である。危険回避処理部213は、主電源OFFトリガは発生した場合に、危険回避動作を実行する。危険回避動作とは、ユーザーや環境対象物が危険な状態となることを回避するような動作である。
【0065】
図8は、本発明の実施の形態5に係る電源装置(ロボットシステム)の制御方法の流れを示している。
【0066】
まず、図6のS301と同様に、異常検出部140は、ある程度の放電継続可能なバッテリ異常の発生を検出する(S401)。すなわち、直ちに放電停止をする必要はない異常については、危険回避動作完了まで放電を継続させる。
【0067】
次いで、図6のS302と同様に、バッテリCPU110は、疑似主電源OFFトリガ情報をECUCPU210へ送信する(S402)。
【0068】
次いで、ECUCPU210は、危険回避動作指令を実行する(S403)。すなわち、ECUCPU210は、電源をOFFしても、ロボットが、ユーザーや環境対象物に危害を加えないように運転を中断させる。なお、危険回避動作とともに、シャットダウン処理を実行してもよい。
【0069】
次いで、ECUCPU210は、危険回避動作完了情報をバッテリCPU110へ送信する(S404)。すなわち、ECUCPU210は、危険回避動作が完了すると、電源MOSトランジスタ120のOFFを許可(電源MOS_OFF許可)するための危険回避動作完了情報を送信する。なお、危険回避動作完了情報を、疑似的なシャットダウン処理完了情報としてもよい。
【0070】
次いで、バッテリCPU110は、危険回避動作完了情報を受信し、電源MOSトランジスタ120をOFFする(S405)。すなわち、バッテリCPU110は、ECUCPU210から正常に危険回避動作が完了したことを確認した上で、電源を遮断し放電を停止する。
【0071】
このように、本実施形態では、ある程度の放電継続可能なバッテリ異常発生時において、主電源OFFトリガ取得情報を疑似的にロボットECUへ送信するようにした。さらに、ロボットECUは、この情報をもとに、危険回避動作を行い、完了した時点で、バッテリへ放電停止(電源MOS_OFF)の指令を送信し、ロボットの電源をOFFさせるようにした。
【0072】
したがって、本実施形態では、ロボットが駆動中に、バッテリ異常によって突然電源がOFFした場合、ユーザーや環境対象物に大きな危害を与える危険性があるところ、こうした危険を回避するため、バッテリ側で主体的にECUへ指令を送信できる特徴を活用することで、全てのケースでのバッテリ異常発生で直ちに放電停止をするのではなく、ある程度の放電継続可能なバッテリ異常発生時においては、危険回避動作指示を確実に完了させた上で、バッテリが放電停止を行うことができる。
(その他の本発明の実施の形態)
【0073】
上記の実施の形態において、ロボットの主電源OFFを、ロボットECUからのバッテリへの放電停止許可信号によって制御することができる。この制御により、ロボットの電源がOFFの状態では、確実にバッテリの放電が停止している状態を確保できる。すなわち、ユーザーによるバッテリ交換等、通常使用時にユーザーがバッテリの放電端子に触れる可能性のある状況での感電を未然に防ぐことが可能である。
【0074】
本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上記の例では、ロボットシステムの電源制御の例について説明したが、その他の制御システム等に適用してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 ロボットシステム
10 電源ライン
20 通信ライン
30 制御ライン
100 バッテリ
110 バッテリCPU
111 トリガ取得部
112 ECU間通信部
113 電源制御部
120 電源MOSトランジスタ
130 残量低下検出部
140 異常検出部
200 ロボットECU
210 ECUCPU
211 バッテリ間通信部
212 シャットダウン処理部
213 危険回避処理部
300 ロボット主電源ON−OFFトリガ検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源OFFトリガ情報を取得する電源部と、前記電源部から電源が供給されるとともに、前記電源部からの前記電源OFFトリガ情報に基づいた信号を受信してシステムのシャットダウン処理を行うシステム制御部とを有する電源装置の制御方法であって、
前記電源部は、前記シャットダウン処理の完了信号を前記システム制御部から受信した後に、前記システム制御部へ供給する電源をOFFする、
電源装置の制御方法。
【請求項2】
前記電源OFFトリガ情報は、前記電源の残充電量に基づいて生成された情報である、
請求項1に記載の電源装置の制御方法。
【請求項3】
前記電源OFFトリガ情報は、前記電源の残充電量が所定量よりも低下した場合に、生成された情報である、
請求項2に記載の電源装置の制御方法。
【請求項4】
前記電源OFFトリガ情報は、前記電源の状態が電源異常である場合に生成された情報である、
請求項1に記載の電源装置の制御方法。
【請求項5】
前記電源異常は、前記シャットダウン処理が完了するまで前記電源を供給可能な程度に、前記電源が異常な状態である、
請求項4に記載の電源装置の制御方法。
【請求項6】
前記電源OFFトリガ情報は、ユーザーの操作に応じた生成された情報である、
請求項1に記載の電源装置の制御方法。
【請求項7】
前記システムはロボットシステムであり、
前記電源OFFトリガ情報は、前記ロボットシステムが有するステップスイッチの動作に応じて生成された情報である、
請求項1に記載の電源装置の制御方法。
【請求項8】
前記システムはロボットシステムであり、
前記電源OFFトリガ情報は、前記ロボットシステムの傾きに応じて生成された情報である、
請求項1に記載の電源装置の制御方法。
【請求項9】
前記システムはロボットシステムであり、
前記電源OFFトリガ情報は、前記ロボットシステムの立脚時間に応じて生成された情報である、
請求項1に記載の電源装置の制御方法。
【請求項10】
前記システムはロボットシステムであり、
前記電源OFFトリガ情報は、前記ロボットシステムの着座状態に応じて生成された情報である、
請求項1に記載の電源装置の制御方法。
【請求項11】
前記システム制御部は、前記前記電源OFFトリガ情報に基づいた信号を受信して前記システムに危険回避動作を実行させ、
前記電源部は、前記危険回避動作の完了信号を前記システム制御部から受信した後に、前記システム制御部へ供給する電源をOFFする、
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の電源装置の制御方法。
【請求項12】
電源OFFトリガ情報を取得する電源部と、
前記電源部から電源が供給されるとともに、前記電源部から前記電源OFFトリガ情報に基づいた信号を受信してシステムのシャットダウン処理を行うシステム制御部とを備え、
前記電源部は、前記シャットダウン処理の完了信号を前記システム制御部から受信した後に、前記システム制御部へ供給する電源をOFFする電源制御部を有する、
電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−92817(P2013−92817A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232606(P2011−232606)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】