説明

電源装置及びそれを用いた照明点灯装置並びに器具

【課題】電力損失及び雑音を低減させた小型の電源装置及びそれを用いた照明点灯装置並びに器具を提供する。
【解決手段】無電極放電灯点灯装置は、容量成分をなす平滑コンデンサC1と、電源投入時の突入電流を抑制する突入電流抑制回路8とを備える。突入電流抑制回路8は、ワイドバンドギャップ半導体からなり、直流電源回路1のインダクタL1に発生する電圧によりオン・オフが制御されるスイッチング素子Q1と、電源投入時の突入電流を抑制するサーミスタth1とを具備する。そして、電源投入時にはサーミスタth1によって突入電流が抑制され、その後一定時間が経過するとインダクタL1に発生した電圧によってスイッチング素子Q1がオンになり、直流電源回路1から所望の直流電圧が出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置及びそれを用いた照明点灯装置並びに器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、電源投入時の突入電流を抑制する機能を備えた電源装置が提供されている(例えば特許文献1参照)。この電源装置は、交流電源を全波整流するダイオードブリッジと、ダイオードブリッジの出力電圧を昇圧した直流電圧に変換する昇圧チョッパ回路と、電源投入時の突入電流を抑制する限流要素とを備える。限流要素の両端には、電源投入時から一定時間経過後に限流要素の両端を短絡するスイッチング素子が接続されており、このスイッチング素子のオン・オフの制御を、上記の昇圧チョッパ回路のインダクタに発生する電圧により行っている。
【0003】
この電源装置では、昇圧チョッパ回路に回路上の遅延要素が設けられており、電源投入後発振が開始されるまでに遅れ時間が存在するため、この遅れ時間が経過するまでは突入電流が流れる可能性があるが、ダイオードブリッジの出力に限流要素が接続されているため、上記の突入電流は限流要素で抑制されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3551451号(段落[0012]−段落[0018]、及び、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1に示した電源装置では、定常動作時において負荷へのメイン電流が上記のスイッチング素子に常時流れることに加えて、上記のスイッチング素子は、通常電源装置の入力部分に設けられるため、電源装置内で失われる電力に相当する電流も流れることになる。さらに、上記のスイッチング素子が従来のSi系半導体からなるサイリスタの場合にはオン抵抗が高いため電力損失が大きく、また上記のスイッチング素子がSi系半導体からなるFETの場合でもオン抵抗が少なからず存在するためやはり電力損失は大きくなってしまう。
【0006】
また、上述のように電力損失が大きいと部品の発熱量も増加し、これが装置の大型化や放熱構造の複雑化、組立性の悪化、デザインの制約、そして熱に対する信頼性低下の原因となっている。特に近年では、用途拡大のため100Wを超える無電極放電灯点灯装置の拡充がなされており、これにより負荷電流がますます増大することから、低損失化、小型化がより大きな課題となっている。例えば、駆動周波数が百数十kHz程度の無電極放電灯点灯装置の場合、100W以上のクラスではサイリスタやFETなどの半導体素子の発熱量がかなり大きくなるため、半導体素子を放熱シートを介してケース側面にクリップ固定し、半導体素子で発生した熱をケース外殻に逃がすといった複雑な放熱構造をとっており、無電極放電灯点灯装置の大型化につながっている。特に、上記のスイッチング素子がサイリスタの場合には許容接合温度が125℃程度であり、他の半導体素子に比べて許容接合温度が低いものが多いため、熱設計がより厳しいものとなっている。このため、サイリスタ温度を下げるための放熱板が必要であることから、装置の小型化、構造簡略化が図れない場合もあった。
【0007】
ところで、連続して電源をオン・オフする場合や、LED、有機EL、無電極放電灯などの始動・再始動性を活かした点滅用途、或いは無電極放電灯を間欠発振させる場合には、上記のスイッチング素子が連続でオン・オフを繰り返すことになる。したがって、上記のスイッチング素子に従来のSi系半導体素子を用いた場合には、後述するように逆回復が繰り返し行われるため、以下の問題が発生する。従来のSi系半導体素子では、数十ns程度の逆回復時間が存在し、この逆回復時間が数十MHz程度の周波数帯の雑音スペクトルの発生要因(雑音端子電圧、雑音電力、輻射雑音など)となっている。そして、この雑音は周囲機器に悪影響を及ぼす原因となる場合がある。また、従来のSi系半導体素子では、上記の逆回復時間が温度特性を持っているため、発生する雑音スペクトルの周波数帯が温度により変化する。したがって、より広い温度領域で雑音を抑えるためにはより広い周波数帯に対応させた雑音対策が必要であり、装置の大型化や構造複雑化、デザイン制約などの原因となってしまう。
【0008】
また、照明器具の場合には、その形状が10MHz〜30MHzの雑音帯域に影響を与えて、雑音レベルが変化することも知られている。例えば、電子安定器の出力側(ランプ線側)からランプ線を経由して器具に誘導される電流を介して電源線に重畳されるものが確認されており、またこの帯域の雑音はアースの取り方、アース安定度によっても変わることが確認されている。そして、上記のスイッチング素子に従来のSi系半導体素子を用いた場合には、上記の理由により10MHz〜30MHzの帯域の雑音が増大する。したがって、特に照明器具では、雑音の増大やこの雑音を対策するために器具設計が限定されるなどの原因となっている。上記の現象は数十kHz以上の高周波で動作する電源装置でみられる現象であるが、電源装置に無関係な筐体がたまたま電源装置に近接している場合でも影響を受けることがある。特に、駆動周波数が100kHz以上の無電極放電灯点灯装置では、金属反射板の形状やアースの取り方により、100MHz以上の帯域における雑音への影響が顕著に確認されている。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、電力損失及び雑音を低減させた小型の電源装置及びそれを用いた照明点灯装置並びに器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電源装置は、容量成分と、電源投入時の突入電流を抑制する突入電流抑制回路とを含む回路部を備え、突入電流抑制回路を構成する半導体素子のうち少なくとも1つがワイドバンドギャップ半導体からなることを特徴とする。
【0011】
この電源装置において、突入電流抑制回路は、ワイドバンドギャップ半導体からなるスイッチング素子を具備しているのが好ましい。
【0012】
また、この電源装置において、回路部は、出力部に容量成分を有するチョッパ回路を備え、突入電流抑制回路は、ワイドバンドギャップ半導体からなりチョッパ回路を構成するインダクタに直列に接続された双方向スイッチング素子と、インダクタ及び双方向スイッチング素子の直列回路に並列に接続された抵抗成分及びダイオードの直列回路とを具備し、双方向スイッチング素子は、チョッパ回路を構成するダイオードとして兼用され、回路部は、電源投入時には双方向スイッチング素子をオフにすることで突入電流抑制回路に突入電流を流して当該突入電流を抑制し、定常動作時には双方向スイッチング素子をダイオードに切り替えることでチョッパ動作を行わせるのも好ましい。
【0013】
さらに、この電源装置において、回路部は、ワイドバンドギャップ半導体からなる双方向スイッチング素子を具備する整流回路を備え、突入電流抑制回路は、双方向スイッチング素子と、整流回路に並列に接続された抵抗成分及びダイオードの直列回路とを具備し、双方向スイッチング素子は、整流回路を構成するダイオードとして兼用され、回路部は、電源投入時には双方向スイッチング素子をオフにすることで突入電流抑制回路に突入電流を流して当該突入電流を抑制し、定常動作時には双方向スイッチング素子をダイオードに切り替えることで整流動作を行わせるのも好ましい。
【0014】
本発明の照明点灯装置は、上記の電源装置と、電源装置から電力供給を受けて点灯する発光部とを備えていることを特徴とする。
【0015】
本発明の器具は、上記の電源装置又は照明点灯装置の何れか一方を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
電力損失及び雑音を低減させた小型の電源装置、照明点灯装置及び器具を提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態1を示す回路図である。
【図2】(a),(b)は同上の他の例の要部を示す回路図である。
【図3】同上の使用形態の一例を示し、(a)は斜視図、(b)はそれに用いられる無電極放電灯の構造図である。
【図4】同上を用いた照明器具の一例を示し、(a)は斜視図、(b)は概略断面図である。
【図5】同上を用いた照明器具の他の例を示し、(a)は正面図、(b)は下面図、(c)は左側面図である。
【図6】本発明の実施形態2を示す回路図である。
【図7】(a)は本発明の実施形態3を示す回路図、(b)〜(d)は同上の他の例の要部を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明に係る照明点灯装置及び照明器具の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
(実施形態1)
図1は本実施形態の無電極放電灯点灯装置(照明点灯装置)の一例を示す回路図であり、本点灯装置は、商用交流電源13から電力供給を受けて直流電圧を出力する直流電源回路1と、直流電源回路1を電源として動作し、直流電圧を高周波出力に変換する高周波電源回路2と、誘導コイル3及び無電極放電灯4とともに負荷回路を構成する共振回路6と、高周波電源回路2から無電極放電灯4への電力供給に異常があるときに、高周波電源回路2から誘導コイル3に与える高周波出力V2を無電極放電灯4が点灯しない大きさにする保護期間と無電極放電灯4が始動する大きさにする動作期間とを交互に繰り返すように高周波電源回路2を制御する保護回路7と、上記の保護期間から動作期間に移行する際に誘導コイル3に与える高周波出力V2の立ち上がりを緩やかにするオーバーシュート防止回路5と、電源投入時の突入電流を抑制する突入電流抑制回路8とを備える。ここに、本実施形態では、突入電流抑制回路8を含むすべての回路により回路部が構成されている。また、本実施形態では、誘導コイル3及び無電極放電灯4により発光部が構成され、発光部を除いた残りの上記回路により電源装置が構成されている。
【0020】
直流電源回路1は、商用交流電源13の交流出力を整流する整流回路10と、インダクタL1、ダイオードD1、スイッチング素子Q1、及び平滑コンデンサC1と、スイッチング素子Q1を駆動する駆動回路11とを具備した従来周知の昇圧チョッパ回路からなる。また、直流電源回路1は、保護回路7及びオーバーシュート防止回路5の電源となる第2電源12を備えており、平滑コンデンサC1の両端間に出力電圧V1を出力するとともに、第2電源12の出力端子間に出力電圧V3を出力する。ここに、本実施形態では、平滑コンデンサC1により容量成分が構成されている。
【0021】
高周波電源回路2は、直流電源回路1の出力端間に直列接続された一対のスイッチング素子Q2,Q3(例えばMOSFETなど)と、スイッチング素子Q2,Q3を高周波で交互にオン・オフする駆動回路20とを備える。スイッチング素子Q3の両端間には、共振回路6を構成するインダクタL2及びコンデンサC2の直列回路が接続され、さらにコンデンサC2の両端間にはコンデンサC3を介して誘導コイル3が接続される。
【0022】
保護回路7は、誘導コイル3の両端間に接続される抵抗R1とコンデンサC4の直列回路と、コンデンサC4の両端間に接続される抵抗R2と、第2電源12の出力端子間に接続される抵抗R3とコンデンサC5の直列回路と、コンデンサC5の両端間に接続される抵抗R4とを備える。さらに、第2電源12から電力供給されるコンデンサC5の両端間の電圧を基準電圧として、コンデンサC4の両端間の電圧が基準電圧を超えると出力がHレベルになるコンパレータCP1を備える。コンパレータCP1の出力端子と第2電源12の負極の出力端子との間には抵抗R5とコンデンサC6の直列回路が接続され、コンパレータCP1の出力がHレベルの期間にコンデンサC6を充電するようになっている。また、コンパレータCP1の出力がLレベルの期間にコンデンサC6に充電された電荷を放電するように、コンデンサC6と抵抗R5の接続点は抵抗R6とダイオードD2とを介してコンパレータCP1の出力端子に接続されている。
【0023】
また、保護回路7は、高周波電源回路2のスイッチング素子Q3をオフにすることによって高周波電源回路2の動作を停止できるように、スイッチング素子Q3のゲートにダイオードD3を介して接続された高周波停止回路70を備える。高周波停止回路70のトリガ端子70aはコンデンサC6と抵抗R5の接続点に接続されており、コンデンサC6の両端間の電圧が高周波停止回路70の閾値電圧に達すると高周波電源回路2の動作を停止させる。
【0024】
オーバーシュート防止回路5は、第2電源12の出力端子間に接続される抵抗R7とコンデンサC7の直列回路と、コンデンサC7の両端間に接続される抵抗R8と、抵抗R7とコンデンサC7の接続点が非反転入力端子に接続されたオペアンプOP1とを備える。オペアンプOP1は、反転入力端子と出力端子との間に抵抗R9及びコンデンサC8が並列に接続されるとともに、反転入力端子と第2電源12の負極の出力端子との間に抵抗R10が接続されており、非反転入力端子の電位が高くなると出力端子の電位を高くする。
【0025】
また、オーバーシュート防止回路5は、高周波電源回路2の出力する高周波出力の周波数を決定する周波数設定回路50を備える。周波数設定回路50の制御端子50bは、ダイオードD4と抵抗R11の直列回路を介してオペアンプOP1の出力端子に接続されるとともに、抵抗R12を介して第2電源12の負極の出力端子に接続される。また、周波数設定回路50は、制御端子50bからダイオードD4及び抵抗R11を介してオペアンプOP1の出力端子に流れる電流I1が小さくなると高周波出力の周波数を低くする。
【0026】
さらに、オーバーシュート防止回路5は、コンデンサC7に充電された電荷を放電するための電荷放電回路51を備える。電荷放電回路51は、コンデンサC7の両端間に抵抗R13を介して接続されるMOSFETからなるスイッチング素子Q4と、周波数設定回路50の制御出力端子50aと第2電源12の負極の出力端子との間に接続されたダイオードD5と抵抗R14と抵抗R15の直列回路とを備え、抵抗R14と抵抗R15の接続点にスイッチング素子Q4のゲートが接続される構成を有し、周波数設定回路50の制御出力端子50aがHレベルの期間にスイッチング素子Q4をオンすることでコンデンサC7に充電された電荷を放電する。
【0027】
突入電流抑制回路8は、整流回路10の正極側の出力ラインに接続されたスイッチング素子Q5と、スイッチング素子Q5と並列に接続された限流要素たるサーミスタth1とを備え、スイッチング素子Q5のオン・オフの制御を、直流電源回路1のインダクタL1に発生する電圧を用いて行うようにしてある。具体的には、インダクタL1として2次巻線L12を有するものを用い、この2次巻線L12に誘起される電圧をダイオードD6及びコンデンサC9を用いて整流平滑して、スイッチング素子Q5をオン・オフ制御するようにしてある。
【0028】
したがって、インダクタL1の2次巻線L12に電圧が誘起されていない電源投入時には、スイッチング素子Q5がオフであり、電源から流れ込む突入電流がサーミスタth1により抑制される。またこのとき、サーミスタth1を介して供給される直流電圧により、後段の直流電源回路1からは定常時よりも低い直流電圧が出力される。その後一定時間が経過すると、インダクタL1の2次巻線L12に電圧が誘起されてスイッチング素子Q5がオンになり、このスイッチング素子Q5を介して整流回路10から所定の直流電圧が供給されるため、後段の直流電源回路1からは所望の直流電圧が出力される。
【0029】
誘導コイル3は、図3(a)に示すように円筒形状のカプラ30に巻回される。図3(a)に示す例では、上記の電源装置が金属製のケース100に収納され、給電線100aを介して誘導コイル3に電気的に接続される。
【0030】
無電極放電灯4は、図3(b)に示すように、例えばガラスのような透明な材料からなり、外面に凹部41を有する中空のバルブ40と、合成樹脂からなる筒形状であって、バルブ40に対し凹部41の開口を囲む形で取り付けられた口金42とを有し、凹部41にカプラ30が挿入されることによって誘導コイル3の近傍に配置される。バルブ40には、例えば不活性ガスと金属蒸気とを含む放電ガスが封入されている。また、バルブ40の凹部41の底面には、カプラ30に挿入される排気管41aが突設されている。さらに、バルブ40の内面には、保護膜40aと蛍光体膜40bとが設けられている。そして、誘導コイル3が発生させる高周波電磁界によってバルブ40内にアーク放電が発生すると、発生した紫外線が蛍光体膜40bにおいて可視光に変換されることにより、無電極放電灯4が発光する。
【0031】
ところで、突入電流抑制回路8のスイッチング素子Q5には、定常動作時において負荷へのメイン電流が常時流れ、またこのスイッチング素子Q5は本点灯装置の入力部分に設けられているため、点灯装置内で失われる電力に相当する電流も流れることになる。したがって、従来のSi系半導体からなるサイリスタやFETをスイッチング素子Q5に用いた場合には、そのオン抵抗が比較的大きいことから電力損失が大きくなってしまう。また、スイッチング素子Q5の電力損失が大きくなるにつれて発熱量も増加することから、装置の大型化や放熱構造の複雑化、組立性の悪化、デザインの制約、そして熱に対する信頼性低下の原因となってしまう。
【0032】
そこで、本実施形態では、上記の問題を解決すべく、突入電流抑制回路8のスイッチング素子Q5にワイドバンドギャップ半導体素子(例えばGaN系半導体素子やSiC系半導体素子)を用いている。ここにおいて、ワイドバンドギャップ半導体とは、周期律表第2周期の軽元素(B、C、N、O)を構成要素とする半導体であり、バンドギャップ(禁止帯)がSi系半導体の2倍以上(2.0eV以上)のものをいう。このワイドバンドギャップ半導体は、従来のSi系半導体に比べて通電損失やオン抵抗が十分小さくなっており(1桁から2桁程度小さい)、また高温時における動作も可能となっている。
【0033】
その結果、従来のSi系半導体素子を用いた場合に比べて、突入電流抑制回路8で生じる電力損失を低減することができる。また、電力損失を低減することで発熱量を抑えることができ、しかもワイドバンドギャップ半導体素子は高温時の動作も可能であることから、従来例のように複雑な放熱構造を設けなくてもよく、小型の無電極放電灯点灯装置を提供することができる。さらに、放熱構造の簡素化、組立性向上、デザインの自由度向上、及び熱に対する信頼性向上なども期待できる。また、スイッチング素子Q5にGaN系半導体素子を用いた場合には高周波特性がさらによくなることから高効率化を図ることができ、スイッチング素子Q5にSiC系半導体素子を用いた場合にはオン抵抗が低く高耐圧な素子を実現できるため、より高い始動電圧を印加することができ、始動性がさらに向上するという利点がある。
【0034】
次に、図2(a)(b)は本実施形態の無電極放電灯点灯装置の他の例の要部を示す回路図であり、直流電源回路1と突入電流抑制回路8のみを図示してある。なお、直流電源回路1の後段の回路については図1と同様であるため、図示を省略しており、必要がある場合には図1を参照する。まず最初に、図2(a)に示す無電極放電灯点灯装置について説明する。
【0035】
図2(a)に示す突入電流抑制回路8は、整流回路10の負極側の出力ラインに接続されたスイッチング素子Q6と、スイッチング素子Q6と並列に接続された限流要素たる抵抗R19と、スイッチング素子Q6のゲートと整流回路10の負極側の出力ラインとの間に接続されたコンデンサC11及びツェナーダイオードZD1とを備える。この突入電流抑制回路8では、電源投入後に抵抗R20を介してコンデンサC11が充電され、コンデンサC11の両端電圧が所定電圧に達するとスイッチング素子Q6がオンになる。そして、スイッチング素子Q6を介して整流回路10から所定の直流電圧が供給されると、後段の直流電源回路1から所望の直流電圧が出力される。また、コンデンサC11の両端電圧が所定電圧に達するまではスイッチング素子Q6はオフのままであり、このときスイッチング素子Q6と並列に接続された抵抗R19により電源から流れ込む突入電流が抑制される。それとともに、抵抗R19を介して後段の直流電源回路1に直流電圧が供給され、直流電源回路1からは定常時よりも低い直流電圧が出力される。
【0036】
ここに、上記のツェナーダイオードZD1は、入力電源電圧が100V〜242V、又は100V〜277Vのユニバーサル電源に対応するために設けられたものであり、このツェナーダイオードZD1によってスイッチング素子Q6のゲートに一定電圧が安定的に印加される。
【0037】
また、図2(b)に示す突入電流抑制回路8は、整流回路10の正極側の出力ラインに接続されたスイッチング素子Q7と、スイッチング素子Q7と並列に接続された限流要素たる抵抗R25と、スイッチング素子Q7のゲートと整流回路10の正極側の出力ラインとの間に接続されたコンデンサC13及びツェナーダイオードZD2とを備える。この突入電流抑制回路8では、電源投入後に抵抗R25を介してコンデンサC13が充電され、コンデンサC13の両端電圧が所定電圧に達するとスイッチング素子Q7がオンになる。そして、スイッチング素子Q7を介して整流回路10から所定の直流電圧が供給されると、後段の直流電源回路1から所望の直流電圧が出力される。また、コンデンサC13の両端電圧が所定電圧に達するまではスイッチング素子Q7はオフのままであり、このときスイッチング素子Q7と並列に接続された抵抗R25により電源から流れ込む突入電流が抑制される。それとともに、抵抗R25を介して後段の直流電源回路1に直流電圧が供給され、直流電源回路1からは定常時よりも低い直流電圧が出力される。
【0038】
ここに、上記のツェナーダイオードZD2は、図2(a)中のツェナーダイオードZD1と同様に、スイッチング素子Q7のゲートに一定電圧を安定的に印加するために設けられたものである。
【0039】
而して、図2(a)(b)に示す無電極放電灯点灯装置によれば、図1に示した無電極放電灯点灯装置と同様に突入電流抑制回路8で生じる電力損失を低減できるとともに発熱量を小さくでき、その結果、小型の無電極放電灯点灯装置を提供することができる。
【0040】
ところで、無電極放電灯4を点灯させる際には、誘導コイル3への印加電圧が高いほど短時間で点灯させることができ、また電圧印加時間が長いほど比較的低い印加電圧で点灯させることができる。通常、誘導コイル3への印加電圧は部品耐圧等を超えない範囲で設定され、低温時や暗所などの始動が困難な場合には電圧印加時間を長くすることで無電極放電灯4を点灯させる。しかしながら、無電極放電灯4の始動時には高周波電源回路2での消費電力が2倍以上となることから、素子破壊を防止するためには電圧印加時間を短くする必要があり、その結果、十分な始動性が確保できない場合があった。このような課題に対して、始動困難時に高周波電源回路2を間欠的に動作させる方法があるが、この場合でも電圧印加時間は限られた期間となっており、また間に保護期間を必要としているため、その分始動性は低下することになる。これに対して本実施形態では、突入電流抑制回路8のスイッチング素子Q5〜Q7にワイドバンドギャップ半導体素子を用いているため、電力損失や発熱量を小さくすることができ、しかもワイドバンドギャップ半導体素子は高温時の動作も可能であることから、始動電圧を長時間印加することができ、その結果、始動性を向上させることができる。
【0041】
次に、図4は本発明に係る照明器具(器具)Aの一例であり、本照明器具Aは、透光性材料により略球状に形成されたバルブ40を具備する無電極放電灯4と、下面が開口する円筒状の本体部81と、本体部81の下面側に配置される椀型の外郭部82と、外郭部82の内面に沿って配置される反射板83とを備える。
【0042】
本体部81は、鋼板からなる取付部84が上面側に設けられており、また下面の開口近傍にはソケット90が配置されている。このソケット90には無電極放電灯4の口金42が装着され、ソケット90と口金42にそれぞれ設けられた電線(図示せず)同士が電気的に接続される。また、本体部81の内部には、無電極放電灯4を点灯させる点灯回路91が収納されている。ここに本例では、点灯回路91により電源装置が構成されている。
【0043】
外郭部82は、本体部81の下面に設けられた開口の周縁から下方に向かって拡径されており、外郭部82の内面側には所定の間隔を空けて反射板83が配置されている。反射板83は、アルミ板によってパラボラ型に形成されており、中心に形成された挿通孔83aにはバルブ40が挿通され、挿通孔83aの上側には遮光部材86が配置されている。そして、反射板83の下側には、透明強化ガラスにより円盤状に形成されたガラスパネル85が配置されている。
【0044】
また、図5は本発明に係る照明器具Aの他の例であり、本照明器具Aは、例えばステンレスからなる前面が開口した直方体形状のボディ71aと、例えば強化ガラスのような透光性を有する材料からなり、ボディ71aを開閉自在に閉塞するカバー71bとで構成された器具本体71を備える。ボディ71aの内底面には、例えばアルミニウムからなり、無電極放電灯4の光を前方へ配光する断面U字形状の反射板71cが固定されており、器具本体71に収納された無電極放電灯4の光はカバー71bを通して前方へ出射される。さらに、ボディ71aの内底面には、無電極放電灯4が取り付けられるカプラ(図示せず)と、本発明に係る電源装置を収納したケース100と、ケース100内の直流電源回路1に電気的に接続された端子台14とが、それぞれ固定されている。端子台14には、一端が商用交流電源13に接続された電線(図示せず)の他端が接続されるのであり、直流電源回路1は上記の電線と端子台14とを介して商用交流電源13に電気的に接続される。
【0045】
ここで、従来のSi系半導体素子は、上述したように数十ns程度の逆回復時間が存在し、さらにこの逆回復時間が温度特性を持っているため、数十MHz程度の周波数帯の雑音を発生させる。また、上述したように照明器具の形状が10MHz〜30MHzの雑音帯域に影響し、雑音レベルが変化する場合もある。例えば、図4及び図5に示した照明器具Aでは、スイッチング素子Q5〜Q7にSi系半導体素子を用いた場合、スイッチング素子Q5〜Q7で発生した雑音がランプ線を経由して反射板83や遮光部材86、反射板71cなどに誘導され、さらにこれらと電気的に接触する筐体を流れることで上記の雑音が電源線に重畳される可能性がある。
【0046】
これに対して本実施形態では、スイッチング素子Q5〜Q7にワイドバンドギャップ半導体素子を用いており、このワイドバンドギャップ半導体素子は、Si系半導体素子に比べて逆回復時間や逆回復時間の温度特性がほとんどないことから、広い温度領域での雑音低減が可能である。そして、雑音源であるスイッチング素子Q5〜Q7の雑音を低減することで、ランプ線を介して誘導される10MHz〜30MHz帯域の雑音を抑えることもできる。例えば、連続して電源をオン・オフする場合や、LED、有機EL、無電極放電灯などの始動・再始動性を活かした点滅用途、或いは無電極放電灯を間欠発振させる場合にも雑音を低減することができる。
【0047】
ここにおいて、本実施形態の直流電源回路1は、100V〜242Vの入力電圧に対応させたユニバーサル電源であり、100V系使用時の入力電流は200V系使用時の入力電流の約2倍程度にもなるため、大きな損失差が生じる。特にこの影響を受ける突入電流抑制回路8では差が大きく、例えば従来のSi系半導体素子をスイッチング素子Q5〜Q7に用いた場合には、100V系使用時の温度は200V系使用時の温度よりも数十℃程度高くなることがある。これは、Si系半導体素子の逆回復時間の温度特性に換算すると、雑音スペクトルが数MHz程度ずれるのに相当し、より広い周波数範囲に対して雑音対策をしなければならないことを意味する。これに対して本実施形態では、ワイドバンドギャップ半導体素子をスイッチング素子Q5〜Q7に用いているため、発熱量を低減することができて温度差を小さくすることができ、また逆回復時間や逆回復時間の温度特性がほとんどないため、雑音についても低減することができる。
【0048】
ところで、本実施形態では、非調光型の無電極放電灯点灯装置を例に説明したが、上記のスイッチング素子Q5〜Q7に起因する雑音の問題は調光制御を行った場合に特に顕著になる。この場合、100%出力に近いほど電流が流れ、スイッチング素子Q5〜Q7の温度は高くなる。したがって、スイッチング素子Q5〜Q7に従来のSi系半導体素子を用いた場合には、逆回復時間の温度特性により発生する雑音スペクトルの周波数帯域が大幅に変化することになる。これに対して本実施形態では、スイッチング素子Q5〜Q7にワイドバンドギャップ半導体素子を用いており、Si系半導体素子に比べて逆回復時間や逆回復時間の温度特性がほとんどないことから、広い温度領域、すなわち広い調光範囲での雑音低減が可能となる。
【0049】
例えば、全点灯(FULL点灯)と調光比50%に対応させた段調光型の無電極放電灯点灯装置(図示せず)を例に説明すると、全点灯時の入力電流は調光点灯時の入力電流の約2倍程度にもなり、大きな損失差が生じてしまう。したがって、スイッチング素子Q5〜Q7にSi系半導体素子を用いた場合には、全点灯時の温度は調光点灯時の温度よりも十数℃程度高くなる場合があるが、本実施形態ではワイドバンドギャップ半導体素子を用いているので、発熱量を低減することができて温度差を小さくすることができ、また逆回復時間や逆回復時間の温度特性がほとんどないため、雑音についても低減することができる。
【0050】
ここにおいて、突入電流抑制回路8を構成するスイッチング素子Q5〜Q7の駆動電圧は、部品小型化の観点から低い方が望ましく、特に入力電圧が100V〜242V、又は100V〜277Vとワイドに対応させる場合、全範囲に亘って最適設計するのは難しく、設計マージンは小さくなる。これに対して本実施形態では、上記のスイッチング素子Q5〜Q7にワイドバンドギャップ半導体素子を用いているので、従来のSi系半導体素子に比べて駆動電圧を下げることができ、その結果、動作安定性を高めることができる。また、本実施形態の無電極放電灯点灯装置を用いることによって、電力損失及び雑音を低減させた小型の照明器具Aを提供することができる。
【0051】
なお、図1及び図2に示した無電極放電灯点灯装置は一例であって、突入電流抑制回路のスイッチング素子にワイドバンドギャップ半導体素子を用いていれば、他の回路構成でもよい。また、直流電源回路1は、米国277V仕様まで含めた100V〜277V対応のユニバーサル電源であってもよい。さらに、本実施形態では、調光比が50%の場合について説明したが、調光比は0%〜100%の間であればよい。また、本実施形態では、段調光型の点灯装置を例に説明したが、連続調光型のものであってもよい。
【0052】
(実施形態2)
図6は本実施形態のLED点灯装置(照明点灯装置)の一例を示す回路図であり、本点灯装置は、フィルタ回路17と、整流回路10と、昇圧チョッパ回路15と、降圧チョッパ回路16と、突入電流抑制回路18と、複数の発光ダイオードLD1〜LDnとを備える。ここに、本実施形態では、発光ダイオードLD1〜LDnにより発光部が構成され、発光部を除く残りの上記回路により電源装置が構成されている。また、突入電流抑制回路18を含むすべての回路により回路部が構成されている。
【0053】
フィルタ回路17は、ヒューズ、コンデンサ及びラインフィルタからなり、商用交流電源13の一端にヒューズが直列に接続され、商用交流電源13の他端とヒューズの出力端と並列にコンデンサ、ラインフィルタが接続される。
【0054】
降圧チョッパ回路16は、制御回路IC3、スイッチング素子Q1、ダイオードD1、インダクタL1及び平滑コンデンサC2で構成され、制御回路IC3から出力されるゲート信号によりスイッチング素子Q1がオン・オフすることで、平滑コンデンサC2の両端間に一定の直流電圧が出力される。
【0055】
突入電流抑制回路18は、昇圧チョッパ回路15を構成するインダクタL2に直列に接続された双方向スイッチング素子Q3と、インダクタL2及び双方向スイッチング素子Q3の直列回路に並列に接続された抵抗(抵抗成分)R1及びダイオードD2の直列回路とで構成される。電源投入時には双方向スイッチング素子Q3はオフであるため、抵抗R1及びダイオードD2の直列回路に突入電流が流れ込み、昇圧チョッパ回路15のコンデンサC3に充電される。なお、上記の突入電流は限流要素たる抵抗R1により抑制される。
【0056】
ここにおいて、上記の双方向スイッチング素子Q3は2つのゲートg1,g2を備えており、両ゲートg1,g2に印加される電圧の組み合わせで動作モードが4通りに切り替えられる。具体的に説明すると、両ゲートg1,g2に電圧が印加されていない状態では、動作モードがスイッチモードに切り替えられてスイッチがオフになり(図6中のS1−S2間がオフ)、両ゲートg1,g2に電圧が印加されている状態では、動作モードがスイッチモードに切り替えられてスイッチがオンになる(図6中のS1−S2間がオン)。また、ゲートg1,g2の何れか一方にのみ電圧が印加されている状態では、動作モードが整流モードに切り替えられ、ゲートg1に電圧が印加されたときは左向きのダイオードとして機能し、ゲートg2に電圧が印加されたときは右向きのダイオードとして機能する。
【0057】
昇圧チョッパ回路15は、インダクタL2、スイッチング素子Q2、双方向スイッチング素子Q3及び平滑コンデンサC3で構成され、双方向スイッチング素子Q3のゲートg2に電圧が印加されたときに右向きのダイオードとして機能する。つまり、本実施形態では、突入電流抑制回路18の双方向スイッチング素子Q3で昇圧チョッパ回路15のダイオードを兼用している。また、本実施形態では、実施形態1と同様に双方向スイッチング素子Q3にワイドバンドギャップ半導体素子を用いている。
【0058】
したがって、実施形態1と同様に、突入電流抑制回路18で生じる電力損失を低減することができ、しかも電力損失を低減することで発熱量を小さくすることもできることから、小型のLED点灯装置を提供することができる。また、本実施形態によれば、突入電流抑制回路18を構成するスイッチング素子と、昇圧チョッパ回路15を構成するダイオードを1つの双方向スイッチング素子Q3で構成しているため、両者を別々に設けた場合に比べて部品点数を削減することができ、しかもスイッチング素子による電力損失をなくすこともできる。
【0059】
次に、本点灯装置の動作について説明する。図示しない操作スイッチを操作して電源が投入された時点では双方向スイッチング素子Q3はオフであり、このとき電源から流れ込む突入電流は突入電流抑制回路18側に流れ、抵抗R1により抑制される。突入電流抑制回路18を流れた電流は昇圧チョッパ回路15の平滑コンデンサC3に充電されていき、平滑コンデンサC3の両端電圧が所定電圧に達すると、双方向スイッチング素子Q3のゲートg2に上記電圧が印加されて双方向スイッチング素子Q3が右向きのダイオードに切り替えられる。そして、双方向スイッチング素子Q3がダイオードに切り替えられると、昇圧チョッパ回路15がチョッパ動作を開始し、発光ダイオードLD1〜LDnに電力が供給される。
【0060】
ここに、図1に示した無電極放電灯点灯装置において、直流電源回路1を構成するダイオードD1を双方向スイッチング素子で構成し、当該双方向スイッチング素子で突入電流抑制回路8を構成するスイッチング素子Q5を兼用するようにしてもよい。無電極放電灯点灯装置では、始動時に定常時の2倍以上の電力が必要であるため、ダイオードD1では後段の高周波電源回路2に所定の電力を供給できない場合がある。これに対して、ダイオードD1とスイッチング素子Q5を双方向スイッチング素子で兼用した場合には、上述のように電力損失を低減できるため、高周波電源回路2に所望の始動電力を供給することができる。つまり、始動性を向上させることができる。
【0061】
なお、本実施形態では、発光部が発光ダイオードLD1〜LDnである場合について説明したが、有機ELであってもよい。また、双方向スイッチング素子Q3をマイコンにより制御するようにしてもよい。
【0062】
(実施形態3)
図7(a)は本実施形態の照明点灯装置の一例を示す回路図であり、本点灯装置は、突入電流抑制回路19と、整流回路20と、負荷21(例えば発光ダイオードなど)とを備える。ここに、本実施形態では、負荷21により発光部が構成され、突入電流抑制回路19及び整流回路20により電源装置が構成されている。また、突入電流抑制回路19を含むすべての回路により回路部が構成されている。
【0063】
突入電流抑制回路19は、整流回路20を構成するダイオードD3,D4とともにダイオードブリッジを構成する双方向スイッチング素子Q1,Q2と、双方向スイッチング素子Q1と並列に接続されたダイオードD1及び抵抗R1の直列回路と、双方向スイッチング素子Q2と並列に接続されたダイオードD2及び抵抗R1の直列回路とを備える。電源投入時には双方向スイッチング素子Q1,Q2がともにオフであるため、電源から流れ込む突入電流はダイオードD1,D2及び抵抗R1の直列回路に流れ、平滑コンデンサC1に充電される。なお、上記の突入電流は抵抗R1により抑制される。
【0064】
整流回路20は、ダイオードD3,D4と、上記の双方向スイッチング素子Q1,Q2とで構成され、双方向スイッチング素子Q1,Q2の各ゲートに電圧が印加されると、実施形態2と同様に、双方向スイッチング素子Q1,Q2の動作モードが整流モードに切り替えられてダイオードとして機能する。つまり、本実施形態では、突入電流抑制回路19の双方向スイッチング素子Q1,Q2で整流回路20のダイオードを兼用している。また、本実施形態では、実施形態1,2と同様に双方向スイッチング素子Q1,Q2にワイドバンドギャップ半導体素子を用いている。
【0065】
したがって、実施形態1,2と同様に、突入電流抑制回路19で生じる電力損失を低減することができ、しかも電力損失を低減することで発熱量を小さくすることもできることから、小型の照明点灯装置を提供することができる。また、本実施形態によれば、突入電流抑制回路19を構成するスイッチング素子と、整流回路20を構成するダイオードを1つの双方向スイッチング素子で構成しているため、両者を別々に設けた場合に比べて部品点数を削減することができ、しかもスイッチング素子による電力損失をなくすこともできる。
【0066】
ここにおいて、スイッチング素子Q1,Q2がオフである電源投入時には、ダイオードD1〜D4で全波整流器が構成され、整流された電流は抵抗R1を介して平滑コンデンサC1に流れる。また、定常時には、整流モードで動作する双方向スイッチング素子Q1,Q2と、ダイオードD3,D4とで全波整流器が構成される。
【0067】
次に、本点灯装置の動作について説明する。図示しない操作スイッチを操作して電源が投入された時点では双方向スイッチング素子Q1,Q2はともにオフであり、このとき電源から流れ込む突入電流は突入電流抑制回路19側に流れ、抵抗R1により抑制される。突入電流抑制回路19を流れた電流は平滑コンデンサC1に充電されていき、平滑コンデンサC1の両端電圧が所定電圧に達すると、双方向スイッチング素子Q1,Q2の動作モードが整流モードに切り替えられ、双方向スイッチング素子Q1,Q2がダイオードとして機能する。そして、双方向スイッチング素子Q1,Q2がダイオードに切り替えられると、双方向スイッチング素子Q1,Q2及びダイオードD3,D4からなる整流回路20が整流動作を開始し、負荷21に電力が供給される。
【0068】
また、図7(b)は本実施形態の照明点灯装置の他の例の要部を示す回路図であり、本点灯装置は、突入電流抑制回路19と、整流回路20と、昇圧チョッパ回路22とを備える。
【0069】
突入電流抑制回路19は、整流回路20を構成するダイオードD3,D4とともにダイオードブリッジを構成する双方向スイッチング素子Q1,Q2と、双方向スイッチング素子Q1と並列に接続されたダイオードD1及びサーミスタth1の直列回路と、双方向スイッチング素子Q2と並列に接続されたダイオードD2及びサーミスタth1の直列回路とを備える。電源投入時には双方向スイッチング素子Q1,Q2がともにオフであるため、電源から流れ込む突入電流はダイオードD1,D2及びサーミスタth1の直列回路に流れ、平滑コンデンサC1に充電される。なお、上記の突入電流はサーミスタth1により抑制される。
【0070】
整流回路20は、ダイオードD3,D4と、上記の双方向スイッチング素子Q1,Q2とで構成され、双方向スイッチング素子Q1,Q2の各ゲートに電圧が印加されると、図7(a)と同様に、双方向スイッチング素子Q1,Q2の動作モードが整流モードに切り替えられてダイオードとして機能する。つまり、本実施形態では、突入電流抑制回路19の双方向スイッチング素子Q1,Q2で整流回路20のダイオードを兼用している。また、本実施形態では、実施形態1,2と同様に双方向スイッチング素子Q1,Q2にワイドバンドギャップ半導体素子を用いている。
【0071】
したがって、実施形態1,2と同様に、突入電流抑制回路19で生じる電力損失を低減することができ、しかも電力損失を低減することで発熱量を小さくすることもできることから、小型の照明点灯装置を提供することができる。また、本例によれば、突入電流抑制回路19を構成するスイッチング素子と、整流回路20を構成するダイオードを1つの双方向スイッチング素子で構成しているため、両者を別々に設けた場合に比べて部品点数を削減することができ、しかもスイッチング素子による電力損失をなくすこともできる。なお、動作については図7(a)に示した照明点灯装置と同様であるから、ここでは説明を省略する。
【0072】
ここにおいて、スイッチング素子Q1,Q2がオフである電源投入時には、ダイオードD1〜D4で全波整流器が構成され、整流された電流はサーミスタth1を介して平滑コンデンサC1に流れる。また、定常時には、整流モードで動作する双方向スイッチング素子Q1,Q2と、ダイオードD3,D4とで全波整流器が構成される。
【0073】
なお本例では、突入電流抑制回路19の出力部を昇圧チョッパ回路22の入力部に接続しているため、上記出力部を平滑コンデンサC1の正極側に接続した場合に比べて配線を短くすることができ、しかもコンデンサC2への突入電流を抑制することもできる。また、本構成によれば、ダイオードD1及びサーミスタth1の直列回路が双方向スイッチング素子と並列に設けられるとともに、ダイオードD2及びサーミスタth1の直列回路が双方向スイッチング素子Q2と並列に設けられており、双方向スイッチング素子Q1,Q2のみの場合に比べて電力損失を低減することができる。さらに、インダクタL1が設けられているため、突入電流抑制回路19のサーミスタth1を小さくしても突入電流を抑制することができる。
【0074】
また、図7(c)は倍電圧整流回路の一例を示す回路図であり、本例では突入電流抑制回路19の双方向スイッチング素子Q1,Q2で整流回路のダイオードを兼用している。この場合、双方向スイッチング素子Q1,Q2がオフである電源投入時には、ダイオードD1,D2で倍電圧整流回路が構成され、整流された電流は抵抗R1を介して平滑コンデンサC1,C2に流れる。また、定常時には、整流モードで動作する双方向スイッチング素子Q1,Q2で倍電圧整流回路が構成される。
【0075】
さらに、図7(d)は半波整流回路の一例を示す回路図であり、本例では突入電流抑制回路19の双方向スイッチング素子Q1で整流回路のダイオードを兼用している。この場合、双方向スイッチング素子Q1がオフである電源投入時には、ダイオードD1で半波整流回路が構成され、整流された電流は抵抗R1を介して平滑コンデンサC1に流れる。また、定常時には、整流モードで動作する双方向スイッチング素子Q1で半波整流回路が構成される。
【0076】
また、図7(c)中の双方向スイッチング素子Q1,Q2及び図7(d)中の双方向スイッチング素子Q1にワイドバンドギャップ半導体素子を用いているため、突入電流抑制回路19で生じる電力損失を低減することができ、しかも電力損失を低減することで発熱量を小さくすることもできることから、小型の照明点灯装置を提供することができる。さらに、突入電流抑制回路19を構成するスイッチング素子と、整流回路を構成するダイオードを1つの双方向スイッチング素子で構成しているため、両者を別々に設けた場合に比べて部品点数を削減することができ、しかもスイッチング素子による電力損失をなくすこともできる。
【0077】
なお、図7(a)及び図7(b)に示す照明点灯装置では、突入電流抑制回路19を構成するダイオードD1,D2の並列回路を抵抗R1(またはサーミスタth1)に直列に接続しているが、ダイオードD1又はD2の何れか一方だけでもよい。この場合、電源投入時の電圧位相によっては平滑コンデンサC1への充電開始時間が遅れることがあるが、部品点数を削減することができるという利点がある。また、図7(a)及び図7(b)中のダイオードD3,D4にワイドバンドギャップ半導体素子を用いた場合には、さらに電力損失を低減することができる。さらに、双方向スイッチング素子Q1,Q2をマイコンにより制御するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 直流電源回路
8 突入電流抑制回路
C1 平滑コンデンサ(容量成分)
L1 インダクタ
Q1 スイッチング素子
th1 サーミスタ(抵抗成分)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容量成分と、電源投入時の突入電流を抑制する突入電流抑制回路とを含む回路部を備え、
前記突入電流抑制回路を構成する半導体素子のうち少なくとも1つがワイドバンドギャップ半導体からなることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記突入電流抑制回路は、ワイドバンドギャップ半導体からなるスイッチング素子を具備していることを特徴とする請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
前記回路部は、出力部に前記容量成分を有するチョッパ回路を備え、
前記突入電流抑制回路は、ワイドバンドギャップ半導体からなり前記チョッパ回路を構成するインダクタに直列に接続された双方向スイッチング素子と、前記インダクタ及び前記双方向スイッチング素子の直列回路に並列に接続された抵抗成分及びダイオードの直列回路とを具備し、
前記双方向スイッチング素子は、前記チョッパ回路を構成するダイオードとして兼用され、
前記回路部は、電源投入時には前記双方向スイッチング素子をオフにすることで前記突入電流抑制回路に突入電流を流して当該突入電流を抑制し、定常動作時には前記双方向スイッチング素子をダイオードに切り替えることでチョッパ動作を行わせることを特徴とする請求項1又は2記載の電源装置。
【請求項4】
前記回路部は、ワイドバンドギャップ半導体からなる双方向スイッチング素子を具備する整流回路を備え、
前記突入電流抑制回路は、前記双方向スイッチング素子と、前記整流回路に並列に接続された抵抗成分及びダイオードの直列回路とを具備し、
前記双方向スイッチング素子は、前記整流回路を構成するダイオードとして兼用され、
前記回路部は、電源投入時には前記双方向スイッチング素子をオフにすることで前記突入電流抑制回路に突入電流を流して当該突入電流を抑制し、定常動作時には前記双方向スイッチング素子をダイオードに切り替えることで整流動作を行わせることを特徴とする請求項1又は2記載の電源装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の電源装置と、前記電源装置から電力供給を受けて点灯する発光部とを備えていることを特徴とする照明点灯装置。
【請求項6】
請求項1〜4の何れか1項に記載の電源装置、又は、請求項5記載の照明点灯装置の何れか一方を備えていることを特徴とする器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−48977(P2012−48977A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190004(P2010−190004)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】