説明

電源装置

【課題】直流電圧源の負担を低減できる高信頼な電源装置を提供することを目的とする。
【解決手段】直流電圧源10と、直流電圧源10に直列に接続された蓄電素子13と、直流電圧源10と蓄電素子13間のエネルギーの授受を行うように接続されたDC/DCコンバータ19と、直流電圧源10と蓄電素子13の直列回路の両端に接続された高電圧負荷15とから構成され、DC/DCコンバータ19に内蔵された制御回路33は、高電圧負荷15への電力供給時に蓄電素子13から直流電圧源10に電力を供給することにより、直流電圧源10から出力される電流を低減するようにしたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大電力に対する直流電圧源の負担を低減する電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の流れを受け、特に自動車(以下、車両という)においてはパワーステアリングの電動化が普及してきている。この電動パワーステアリングはハンドル操作をモータにより補助するため、従来のように油圧ポンプを駆動する必要がなくなり、エンジンの負担を軽減できる。従って、燃費向上に効果的なシステムである。
【0003】
しかし、ハンドル操作時には大トルクが必要なため、電動パワーステアリングのモータと駆動回路はパルス的に数kWオーダーの大電力を消費する。この際、前記モータとして駆動電圧が高いものを用いることで電流値を低減できるので、送電時の電力損失が抑制され、さらなる燃費向上が可能となる。
【0004】
このように高駆動電圧のモータを動作させるためには、直流電圧源であるバッテリに直列に蓄電素子であるコンデンサを接続する電源装置とすればよい。これにより、モータにはバッテリの電圧とコンデンサの電圧の和が印加されるので、高電圧によるモータ駆動が可能となる。このような電源装置の例が下記特許文献1に提案されている。
【0005】
この電源装置のブロック回路図を図5に示す。なお、本来図5の構成は高駆動電圧の負荷を動作させるものではなく、許容電圧範囲が狭い負荷に対してコンデンサによりバッテリ電圧変動を抑制して安定電力を供給するものであるが、回路構成上は同等となるので、高駆動電圧の負荷を動作させる場合について説明する。
【0006】
図5において、直流電圧源であるバッテリ101には蓄電素子であるコンデンサ103が直列接続されている。また、バッテリ101の両端にはオーディオやカーナビゲーションのようにバッテリ101の電圧で駆動可能な低電圧負荷105が接続されている。これに対し、前記したパワーステアリングのモータのように高電圧で駆動する負荷(以下、高電圧負荷107という)がバッテリ101とコンデンサ103の直列回路の両端に接続されている。
【0007】
さらに、バッテリ101の両端にはバッテリ101を充電するために、エンジン(図示せず)により発電する発電機109がインバータ111を介して接続されている。これに対し、コンデンサ103を充電するために、バッテリ101の両端とコンデンサ103の両端に、前者が入力側、後者が出力側になるようにそれぞれ接続したDC/DCコンバータ113を設けている。
【0008】
次に、図5の電源装置の動作について説明する。車両の通常走行時は、バッテリ101の電力により低電圧負荷105が駆動している。この時、コンデンサ103が満充電状態でなければ、DC/DCコンバータ113が駆動し、バッテリ101の電圧を昇圧してコンデンサ103に電力を供給することにより、満充電にする。満充電になればDC/DCコンバータ113は停止する。
【0009】
この状態でハンドル操作が行われたとする。これにより、電動パワーステアリングのモータと駆動回路からなる高電圧負荷107にはバッテリ101とコンデンサ103の両方から電力が供給され、高電圧負荷107を駆動することが可能となる。
【特許文献1】特開2005−204421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような従来の電源装置は、確かにバッテリ101だけでは駆動できない高電圧負荷107を動作させることができるのであるが、高電圧負荷107の定電力消費に伴ってコンデンサ103の両端電圧は経時的に低下していく。従って、高電圧負荷107に定電力を供給するために、コンデンサ103の両端電圧が下がった分、バッテリ101とコンデンサ103からの電流が経時的に増加していく。この際、コンデンサ103は急速充放電特性に優れるため、電流増加に対する追従性が良好であるが、バッテリ101の放電電流には限界がある。このようなバッテリ101の限界電流に近い電流を放電すると、バッテリ101の負担が大きくなり信頼性が低下するという課題があった。
【0011】
また、バッテリ101の充電時においても、その充電電流には限界があるため、これに近い電流で充電することによってもバッテリ101の負担が大きくなり信頼性が低下するという課題があった。
【0012】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、バッテリ(直流電圧源)の負担を低減できる高信頼な電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記従来の課題を解決するために、本発明は直流電圧源と、前記直流電圧源に直列に接続された蓄電素子と、前記直流電圧源と前記蓄電素子間のエネルギーの授受を行うように接続されたDC/DCコンバータと、前記直流電圧源と前記蓄電素子の直列回路の両端に接続された負荷とから構成され、前記DC/DCコンバータに内蔵された制御回路は、前記負荷への電力供給時に前記蓄電素子から前記直流電圧源に電力を供給することにより、前記直流電圧源から出力される電流を低減するようにしたものである。
【0014】
また、本発明は直流電圧源と、前記直流電圧源に直列に接続された蓄電素子と、前記直流電圧源と前記蓄電素子間のエネルギーの授受を行うように接続されたDC/DCコンバータと、前記直流電圧源と前記蓄電素子の直列回路の両端に接続された直流発電機とから構成され、前記DC/DCコンバータに内蔵された制御回路は、前記直流発電機が発電する時に、前記直流電圧源から前記蓄電素子に電力を供給することにより、前記直流電圧源に入力される電流を低減するようにしたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電源装置によれば、負荷への電力供給時に、蓄電素子から負荷に対してだけでなく直流電圧源に対しても電力を供給するので、その分、直流電圧源から流れる電流が低減されることになり、直流電圧源に大きな負担がかかることがない電源装置を実現できる。
【0016】
また、本発明の電源装置によれば、直流発電機の発電時に、直流電圧源にとって負担となる充電電流分も蓄電素子に充電できるので、その分、直流電圧源に入力される電流が低減されることになり、直流電圧源に大きな負担がかかることがない電源装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における電源装置のブロック回路図である。図2は本発明の実施の形態1における電源装置の電力、電圧、および電流の経時変化図であり、(a)は高電圧負荷の消費電力Phの経時変化図を、(b)は高電圧負荷の電流Ihの経時変化図を、(c)は高電圧負荷の電圧Vhの経時変化図を、(d)は蓄電素子の電流Icの経時変化図を、(e)は低電圧負荷の電流ILの経時変化図を、(f)は直流電圧源の電流Ibの経時変化図を、(g)はDC/DCコンバータの電流Idの経時変化図を、それぞれ示す。なお、図1において細線矢印は各部における電流を示し、矢印の方向が正と定義する。また、本実施の形態1では電動パワーステアリング付き自動車を例に説明する。
【0019】
図1において、直流電圧源10は定格電圧がDC12Vのバッテリからなり、その両端には直流発電機11が接続されている。直流発電機11は交流発電機11aと整流器11bから構成されている。これにより直流電圧源10が充電される。直流電圧源10には複数の電気二重層キャパシタからなる蓄電素子13が直列に接続されている。なお、電気二重層キャパシタは定格電圧が約2.2Vと低いため、複数個を直列、または直並列接続することで必要な電圧を得る構成としている。
【0020】
直流電圧源10と蓄電素子13の直列回路の両端には高電圧負荷15が接続されている。本実施の形態1においても高電圧負荷15は電動パワーステアリングのモータと駆動回路からなる。なお、駆動回路はDC/DCコンバータやインバータ等により構成され、モータの駆動、および制御に必要な信号を発生する。高電圧負荷15の駆動電圧はDC20〜30V程度であり、直流電圧源10の定格電圧(DC12V)では直接駆動することができない。そのため、電圧の不足分を蓄電素子13で補う構成としている。
【0021】
また、直流電圧源10の両端にはオーディオやナビゲーション等の定常的に電力を消費する低電圧負荷17が接続されている。低電圧負荷17の駆動電圧はDC11〜14V程度であるので、直流電圧源10にて直接駆動している。
【0022】
直流電圧源10と蓄電素子13の間には、両者の電気エネルギーの授受を行うように接続されたDC/DCコンバータ19が接続されている。具体的には、高電圧負荷15と蓄電素子13の接続点がDC/DCコンバータ19の第1入出力端子21に、直流電圧源10と蓄電素子13の接続点がDC/DCコンバータ19の第2入出力端子23に、直流電圧源10の負極がDC/DCコンバータ19の共通端子25に、それぞれ接続されている。
【0023】
次に、DC/DCコンバータ19の詳細構成について説明する。まず、直流電圧源10と蓄電素子13の直列回路の両端、すなわち第1入出力端子21と共通端子25には、第1スイッチング素子27と第2スイッチング素子29の直列回路の両端が並列に接続されている。また、直流電圧源10と蓄電素子13の接続点、すなわち第2入出力端子23と、第1スイッチング素子27と第2スイッチング素子29の接続点との間にはインダクタンス素子31が接続されている。
【0024】
第1スイッチング素子27と第2スイッチング素子29には、それぞれのオンオフ制御を行う制御回路33が接続されている。制御回路33は共通端子25に対する第1入出力端子21と第2入出力端子23の電圧を検出する機能も有する。
【0025】
以上が少なくともDC/DCコンバータ19を構成するための最低限の構成であるが、本実施の形態1では上記構成に加え、入出力電圧の平滑化を行うための第1平滑コンデンサ35、および第2平滑コンデンサ37を、それぞれ第1入出力端子21と第2入出力端子23の間、および第2入出力端子23と共通端子25の間に接続している。
【0026】
なお、DC/DCコンバータ19は、第1入出力端子21の電圧(=高電圧負荷15の電圧Vh)が低い時に、高電圧負荷15の駆動可能上限電圧(本実施の形態1ではDC30V)レベルまで充電するように動作する。また、直流電圧源10の電流Ibが後述する既定値以上に増加した時は、DC/DCコンバータ19の蓄電素子13への充電電流を制限するか、または蓄電素子13の放電電流を増加して、電流Ibが既定値以上に増加しないように制御する。
【0027】
また、直流電圧源10の出力電流をDC/DCコンバータ19により制御するために、電流センサ39が直流電圧源10の正極側に設けられている。なお、電流センサ39の出力は制御回路33に入力される。
【0028】
次に、本実施の形態1の電源装置の動作について図2を参照しながら説明する。なお、図2(a)〜(g)において、いずれも横軸は時間を示す。
【0029】
まず、時間t0においては、車両使用中であるがハンドル操作を行っておらず、高電圧負荷15がほとんど動作していない状態であるとする。従って、図2(a)に示すように、高電圧負荷15の消費電力Phは極めて小さく、ほとんど0である。ゆえに、図2(b)に示すように、高電圧負荷15の電流Ihもほぼ0となる。
【0030】
この時、蓄電素子13は完全に放電しておらず、ある程度の電力を蓄えていたとする。従って、蓄電素子13の電圧は、ある値を有する。一方、直流電圧源10はバッテリであるので、常に一定の電圧Vb(例えばDC12V)を有する。これらのことから、図2(c)に示すように、高電圧負荷15には直流電圧源10の電圧Vbと蓄電素子13の電圧の和で表される電圧Vhが印加されている。この状態では蓄電素子13は充放電が行われていないので、図2(d)に示すように、蓄電素子13の電流Icは0である。
【0031】
一方、低電圧負荷17は定常的に動作し続けているので、図2(e)に示すように、低電圧負荷17の電流ILは時間によらず一定となる。この電流ILの供給源は、前記したように蓄電素子13の電流Icが0であり、この時点ではDC/DCコンバータ19も停止しているので、直流電圧源10のみとなる。従って、図2(f)に示すように、直流電圧源10の電流Ibは低電圧負荷17の電流ILと等しくなる。なお、詳細は後述するが、DC/DCコンバータ19は蓄電素子13を充電する場合と、高電圧負荷15への電力供給時に蓄電素子13から直流電圧源10に電力を供給する場合に動作する。
【0032】
また、前記したようにDC/DCコンバータ19は停止しているので、図2(g)に示すようにDC/DCコンバータ19の電流Idは0である。なお、DC/DCコンバータ19の電流Idは第2入出力端子23を流れる電流とする。
【0033】
上記の状態では蓄電素子13が満充電ではないので、ハンドル操作が行われた時に十分な電力を高電圧負荷15に供給できない可能性がある。そこで、ハンドル操作が行われておらず、高電圧負荷15の消費電力Phが小さい時間t1でDC/DCコンバータ19を動作させ、蓄電素子13を満充電にする。具体的には、制御回路33が第1入出力端子21の電圧(Vhに相当)を読み込み、高電圧負荷15の駆動可能上限電圧(DC30V)になるまで第1スイッチング素子27と第2スイッチング素子29を交互にオンオフ制御することで、直流電圧源10から蓄電素子13に電力を供給する。この際、蓄電素子13への充電は定電流で行われるようにDC/DCコンバータ19が動作するので、図2(c)に示すように、蓄電素子13の電圧が経時的に上昇する。従って、高電圧負荷15に印加される電圧Vhも経時的に上昇する。また、図2(d)に示すように、蓄電素子13に流れる充電電流Icは時間t1で正の一定値となる。
【0034】
これに伴い、図2(f)に示すように、蓄電素子13への充電電流Icの供給源である直流電圧源10の電流Ibは時間t1で急に増加した後、蓄電素子13の電圧が上昇するに従って電流Ibも上昇していく。ゆえに、図2(g)に示すように、DC/DCコンバータ19の電流Idも時間t1で正方向に急増した後、上昇していく。
【0035】
制御回路33は蓄電素子13の充電中も電圧Vhの監視を行っているので、図2(c)に示すように、時間t2で電圧Vhが蓄電素子13の満充電時の電圧であるDC30Vに達すれば、DC/DCコンバータ19の動作を停止する。これにより、時間t2以降は電圧Vhが一定電圧となる。また、DC/DCコンバータ19の停止に伴い、図2(d)に示すように、蓄電素子13の電流Icは0になり、図2(g)に示すように、DC/DCコンバータ19の電流Idも0になる。ゆえに、直流電圧源10の電流Ibは充電のための電流が0になるので、図2(f)に示すように、低電圧負荷17の電流ILまで低下する。
【0036】
次に、時間t3でハンドル操作を行い、高電圧負荷15がパルス的に大電力を消費したとする。この時、高電圧負荷15は定電力を消費するので、その消費電力Phは図2(a)に示すように急激に一定値まで上昇する。それに伴い、図2(b)に示すように、高電圧負荷15の電流Ihは時間t3で急増する。
【0037】
一方、蓄電素子13は高電圧負荷15に対して放電するため、その電圧は経時的に低下していく。ゆえに、高電圧負荷15の電圧Vhも経時的に低下するが、図2(b)に示したように、高電圧負荷15の電流Ihは経時的に上昇しているので、両者の積である高電圧負荷15の消費電力Phは図2(a)に示すように一定となる。
【0038】
このような動作により、蓄電素子13の電流Icは、図2(d)に示すように負方向に流れ、経時的に低下していくが、これは図1の細線矢印で示したように蓄電素子13から直流電圧源10側に電流が流れる時、すなわち蓄電素子13の充電時の電流の方向を正と定義したため、放電時には図2(d)のように電流が経時的に低下することになる。しかし、その絶対値は経時的に増えているので、高電圧負荷15への蓄電素子13からの電流絶対値は経時的に上昇していくことになる。
【0039】
一方、直流電圧源10からも高電圧負荷15に電流Ibを供給するので、図2(f)に示すように、時間t3で電流Ibが急増した後、経時的に上昇していく。なお、時間t3においてはDC/DCコンバータ19が停止したままなので、図2(g)に示すように、DC/DCコンバータ19の電流Idは0のままである。
【0040】
このような状態のまま時間t4以降も高電圧負荷15が定電力を消費し続けると、従来の構成では図2(c)の太点線で示したように蓄電素子13の電圧が下がり続けるので、それを補い、定電力を供給し続けるために、図2(d)の太点線に示すように蓄電素子13の電流Icの絶対値が上昇し続けるとともに、図2(f)の太点線に示すように直流電圧源10の電流Ibも上昇し続ける。その結果、電流Ibが限界に達してしまうと、必要な電流が得られず高電圧負荷15を駆動できなくなる上に、直流電圧源10の負担が大きくなり寿命に影響することから信頼性が低下してしまう。
【0041】
そこで、本実施の形態1では、直流電圧源10の電流Ibにおける限界電流値(例えば120A)に対して余裕を持たせた既定値Ibs(例えば100A)を決定しておき、電流Ibが既定値Ibs以上になればDC/DCコンバータ19を起動して、蓄電素子13から直流電圧源10に電力を供給するように制御している。この動作の詳細を以下に説明する。
【0042】
時間t4に至ると、図2(f)の太実線に示すように、直流電圧源10の電流Ibが既定値Ibsに達したとする。この電流Ibは電流センサ39により制御回路33が監視しているので、電流Ibが既定値Ibs以上になると、制御回路33は第1スイッチング素子27と第2スイッチング素子29を交互にオンオフ制御することによりDC/DCコンバータ19を起動する。この際、制御回路33は電流Ibが既定値Ibsになるようにオンオフ比を調整する。その結果、直流電圧源10から出力される電流Ibは既定値Ibsの一定値となる。このように動作することで、直流電圧源10は限界電流値まで電流を流すことがなくなるので、負担が低減され高信頼性が得られる。
【0043】
なお、電流Ibを既定値Ibsにするためには、本来図2(f)の太点線で示したように上昇していく電流分を蓄電素子13から供給しなければならない。そのために、DC/DCコンバータ19は蓄電素子13から直流電圧源10に電力を供給する方向に動作する。その結果、図2(g)の太実線に示すように、DC/DCコンバータ19の電流Idは負方向で絶対値が経時的に増加していく。これにより、蓄電素子13の電流Icは、図2(d)の太実線に示すように電流Idを流す分だけ従来(太点線)よりも多くの電流が流れることになる。ゆえに、図2(c)の太実線に示すように、蓄電素子13の電圧が従来(太点線)よりも早く低下していくので、高電圧負荷15に印加される電圧Vhも時間t4までの低下に比べ早く低下していく。しかし、電圧Vhが低下した分、電流Icの絶対値が増加しているので、高電圧負荷15の駆動に必要な定電力Phは、図2(a)に示すように維持される。従って、直流電圧源10の負担を低減しつつ高電圧負荷15を駆動し続けることができる。
【0044】
なお、このような動作とすることにより、直流電圧源10の負担は低減されるものの、蓄電素子13の負担は増すことになる。そこで、蓄電素子13として大容量、かつ急速充放電特性に優れる電気二重層キャパシタを用いている。これは、電気二重層キャパシタにおいて、たとえ従来の構成よりも大電流を放電したとしても、急速な放電が可能であるとともに、大容量ゆえに0V近傍までの放電に余裕があり、また0V近傍まで放電しても寿命にほとんど影響しない特性を有するためである。従って、時間t4からt5の動作を行っても、蓄電素子13にとってはそれほどの負担にならないことになる。
【0045】
次に、時間t5で高電圧負荷15の動作が停止したとする。動作の停止は例えば高電圧負荷15から発せられる信号により知ることができる。これにより、制御回路33はDC/DCコンバータ19の動作を停止する。その結果、まず図2(a)に示すように、高電圧負荷15の消費電力Phはほぼ0となり、図2(b)に示すように、高電圧負荷15の電流Ihもほとんど0となる。これに伴い、高電圧負荷15に印加される電圧Vhは、図2(c)の太実線に示すように、高電圧負荷15の動作が停止した時(時間t5)の電圧を維持する。また、高電圧負荷15とDC/DCコンバータ19の動作が停止しているので、蓄電素子13の放電も停止する。従って、図2(d)に示すように、蓄電素子13の電流Icも0になる。さらに、DC/DCコンバータ19の停止により、図2(g)に示すように、電流Idも0になる。これらにより、電流Ih、Ic、Idがいずれもほぼ0になるため、図2(f)に示すように、直流電圧源10の電流Ibは低電圧負荷17にのみ供給され、その電流値はILとなる。
【0046】
時間t5以降の状態は時間t0とほぼ同じであるので、再び時間t1以降の動作を繰り返すことにより、高電圧負荷15に十分な電力を供給し続けることができる。
【0047】
以上の構成、動作により、高電圧負荷15への電力供給時に、蓄電素子13から高電圧負荷15に対してだけでなく直流電圧源10に対しても電力を供給するので、直流電圧源10の負担が低減され、かつ高電圧負荷15に必要な電力の供給が可能な電源装置を実現できた。
【0048】
なお、本実施の形態1では時間t4において直流電圧源10の電流Ibを電流センサ39にて検出しているが、これは高電圧負荷15の電流Ihを検出するようにしてもよい。この場合、図2(b)、(f)より電流Ihと電流Ibの間に相関があるので、時間t4における既定値Ibsに相当する電流Ihの既定値(Ihsと呼ぶ)をあらかじめ決定しておき、電流Ihが既定値Ihsに至れば、DC/DCコンバータ19を起動すればよい。
【0049】
また、時間t4におけるDC/DCコンバータ19の起動は、高電圧負荷15の電圧Vhにより制御してもよい。すなわち、本実施の形態1では電流センサ39の出力によりDC/DCコンバータ19の起動を制御しているが、高電圧負荷15は定電力消費を行っているので、図2(b)、(c)に示すように、高電圧負荷15の電流Ihと電圧Vhが反比例の関係を有する。従って、電流Ihの既定値Ihsに対して電圧Vhの既定値(Vhsと呼ぶ)をあらかじめ決定しておくことができる。これにより、制御回路33は第1入出力端子21により高電圧負荷15の電圧Vhを検出し、既定値Vhsに至ればDC/DCコンバータ19を起動するように制御すればよい。また、直流電圧源10が内部抵抗値を有していれば、直流電圧源10に電流Ibが流れることで電圧降下が生じるので、この電圧降下を検出することにより電流Ibを推定することができる。すなわち、制御回路33は直流電圧源10の電圧Vbを第2入出力端子23から検出し、電圧Vbが既定値(Vbsと呼ぶ)以下になった時に、電流Ibが既定値Ibs以上になったと推定できるので、DC/DCコンバータ19を起動するように制御してもよい。これらの構成にすると、電流センサ39が不要になり、より簡単な回路構成とすることができる。
【0050】
さらに、本実施の形態1のように、高電圧負荷15の電力消費パターンがあらかじめわかっている場合は、直流電圧源10の電流Ibを低減するためにDC/DCコンバータ19を起動する時間t4も既知となるため、制御回路33の時間管理によってDC/DCコンバータ19の起動制御を行ってもよい。また、高電圧負荷15の内部回路によって消費電流Ihがわかる場合は、高電圧負荷15が直接DC/DCコンバータ19の電流Idを制御して直流電圧源10の電流Ibを低減してもよい。これらの構成によっても、電流センサ39が不要になり、より簡単な回路構成とすることができる。
【0051】
また、本実施の形態1では、図2の時間t1〜t2と時間t4〜t5の区間のみDC/DCコンバータ19を起動し、それ以外の区間は停止するように制御しているが、この停止区間は、DC/DCコンバータ19の電流Idが0になる条件で第1スイッチング素子27と第2スイッチング素子29を駆動することにより、DC/DCコンバータ19を動作させ続けてもよい。これにより、図2(f)に示すように、時間t1やt3における直流電圧源10の電流Ibの急増に対し、高応答にDC/DCコンバータ19を動作させることができる。
【0052】
また、本実施の形態1では図2(e)に示すように、低電圧負荷17の電流ILが一定の場合について述べたが、電流ILが変化する場合は次のように制御すればよい。DC/DCコンバータ19は双方向型であるので、低電圧負荷17の電流ILが小さい時はDC/DCコンバータ19で蓄電素子13を充電する方向に動作させる。一方、電流ILが大きい時は蓄電素子13を放電する方向に動作させるとともに、高電圧負荷15の電流Ihが大きくなった時はDC/DCコンバータ19の電流Idが負になるように、電流Ihが小さい時は電流Idが正になるように制御する。これにより、電流ILやIhの変動に対して、直流電圧源10の電流Ibの変動を常に抑制するように制御することが可能となる。
【0053】
また、本実施の形態1では直流電圧源10として車両用のバッテリを用いた場合について説明したが、これは交流電源を整流して直流電圧源とするACアダプタ等であってもよい。この場合は、直流発電機11が交流電源に、整流器11bが整流回路に相当する。
【0054】
(実施の形態2)
図3は、本発明の実施の形態2における電源装置のブロック回路図である。図4は本発明の実施の形態2における電源装置の電力、電圧、および電流の経時変化図であり、(a)は直流発電機の発電電力Pgの経時変化図を、(b)は直流発電機の電流Igの経時変化図を、(c)は直流発電機の電圧Vgの経時変化図を、(d)は蓄電素子の電流Icの経時変化図を、(e)は低電圧負荷の電流ILの経時変化図を、(f)は直流電圧源の電流Ibの経時変化図を、(g)はDC/DCコンバータの電流Idの経時変化図を、それぞれ示す。なお、図3において、図1と同じ構成には同一の番号を付し、詳細な説明を省略する。また、図3中の細線矢印の意味や定義も図1と同じである。また、本実施の形態2では車両制動エネルギーの回生システム付き自動車を例に説明する。
【0055】
図3において、本実施の形態2の特徴となる構成は、車両制動エネルギーを回生する直流発電機11を直流電圧源10と蓄電素子13の直列回路の両端に接続した点である。これにより、直流電圧源10と蓄電素子13を同時に充電することができる。なお、本実施の形態2では高電圧負荷15が存在しない構成としたが、実施の形態1と同様に高電圧負荷15があってもよい。この時の動作は、実施の形態1の動作と、以下に説明する本実施の形態2の動作を組み合わせたものとなる。
【0056】
次に、本実施の形態2の電源装置の動作について図4を参照しながら説明する。なお、図4(a)〜(g)において、いずれも横軸は時間を示す。
【0057】
まず、時間t0においては、通常の車両走行時であり、ブレーキ操作を行っていない状態であるとする。従って、図4(a)に示すように直流発電機11の発電電力Pgはほぼ0である。ゆえに、図4(b)に示すように、直流発電機11の電流Igもほぼ0となる。
【0058】
この時、蓄電素子13はそれを構成する電気二重層キャパシタに負電圧が印加されないようにするために、完全放電しないように制御されている。従って、時間t0においてもある程度の電力を蓄えているので、蓄電素子13の電圧は、ある値を有する。一方、直流電圧源10はバッテリであるので、常に一定の電圧Vb(例えばDC12V)を有する。これらのことから、図4(c)に示すように、直流発電機11の電圧Vgは直流電圧源10の電圧Vbと蓄電素子13の電圧の和となる。この状態では蓄電素子13は充放電が行われていないので、図4(d)に示すように、蓄電素子13の電流Icは0である。
【0059】
一方、低電圧負荷17は定常的に動作し続けているので、図4(e)に示すように、低電圧負荷17の電流ILは時間によらず一定となる。この電流ILの供給源は、前記したように蓄電素子13の電流Icが0であり、この時点ではDC/DCコンバータ19も停止しているので、直流電圧源10のみとなる。従って、図4(f)に示すように、直流電圧源10の電流Ibは低電圧負荷17の電流ILと等しくなる。なお、詳細は後述するが、DC/DCコンバータ19は蓄電素子13に回収した制動時の電力を直流電圧源10に充電する場合と、直流発電機11の発電時に直流電圧源10から蓄電素子13に電力を供給する場合に動作する。
【0060】
また、前記したようにDC/DCコンバータ19が停止しているので、図4(g)に示すようにDC/DCコンバータ19の電流Idは0である。なお、DC/DCコンバータ19の電流Idは第2入出力端子23を流れる電流とする。
【0061】
次に、時間t1でブレーキ操作を行い、直流発電機11が制動エネルギーを電力に変換(=発電)したとする。この時、本実施の形態2では直流発電機11が定電力を発電するものとする。ゆえに、発電電力Pgは図4(a)に示すように急激に一定値まで上昇する。それに伴い、図4(b)に示すように、直流発電機11の電流Igは時間t1で負方向に急増する。
【0062】
一方、蓄電素子13は直流発電機11の発電電力を充電するため、その電圧は時間t1以降、経時的に上昇していく。ゆえに、直流発電機11の電圧Vgも経時的に上昇するが、図4(b)のように、直流発電機11の電流Igの絶対値は経時的に0に近づくので、両者の積である直流発電機11の発電電力Pgは図4(a)に示すように一定となる。
【0063】
このような動作により、蓄電素子13の電流Icは、図4(d)に示すように正方向に大きく流れた後、経時的に低下していく。
【0064】
一方、直流電圧源10にも直流発電機11の電力が充電されるので、その電流Ibは、図4(f)に示すように、時間t1で負方向に急増した後、電流Ibの絶対値が経時的に0に近づく。なお、直流電圧源10は、図4(e)に示すように常に低電圧負荷17に定電流ILを供給し続けているので、直流発電機11から直流電圧源10に入力される電流と直流電圧源10に入力される電流と定電流ILの差分が電流Ibとして直流電圧源10に充電されることになる。
【0065】
この時、制御回路33は電流センサ39で読み込んだ電流Ibの絶対値が既定値の絶対値(Ibk)以上であれば、第1スイッチング素子27と第2スイッチング素子29を交互にオンオフ制御することにより、直流電圧源10から蓄電素子13に電力を供給する方向にDC/DCコンバータ19を起動する。なお、既定値は直流電圧源10の限界充電電流(直流電圧源10の最大充電電圧であるDC16Vを印加した時に流れる電流値)より余裕を持たせた値としてあらかじめ決定しておく。ここで、図4(f)においては、既定値を−Ibkとして負の値で記載しているが、これは図3の細線矢印に示すように、直流電圧源10の電流Ibが放電時に正、充電時に負と定義したためである。
【0066】
制御回路33は、第1スイッチング素子27と第2スイッチング素子29のオンオフ比を調整することで、直流電圧源10に入力される電流−Ibが既定値−Ibkになるように制御するので、図4(f)の太実線に示すように、電流−Ibが既定値−Ibkを負方向に超えることがなくなる。従って、充電電流の抑制が可能となるので、直流電圧源10の負担を低減でき、信頼性が向上する。なお、図4(f)の太点線はDC/DCコンバータ19を動作させなかった場合であり、この際は電流−Ibが限界充電電流に近づくため、直流電圧源10の寿命に影響を与える可能性が大きくなる。
【0067】
ここで、時間t1においてDC/DCコンバータ19が起動したことにより、図4(g)に示すようにDC/DCコンバータ19の電流Idが正方向に大きく流れる。この電流はDC/DCコンバータ19により第1入出力端子21から蓄電素子13に供給されるので、実質的には直流電圧源10への過剰な充電電流をDC/DCコンバータ19により蓄電素子13に流していることになる。従って、直流電圧源10の負担は低減されるものの、蓄電素子13の負担は増すことになるが、実施の形態1で説明したように、蓄電素子13として大容量、かつ急速充放電特性に優れる電気二重層キャパシタを用いているので、蓄電素子13にとってはそれほどの負担にならない。
【0068】
その後、図4(c)に示すように、蓄電素子13の電圧は充電されるとともに上昇していくが、図4(a)に示すように発電電力Pgが一定であるので、図4(b)に示すように直流発電機11の電流Igは経時的に0に近づく。この際、DC/DCコンバータ19が動作している場合は、図4(c)の太実線に示すように、蓄電素子13の電圧はDC/DCコンバータ19が動作していない場合(図4(c)の太点線)に比べ傾きが大きくなる。これは、直流電圧源10への過剰な充電電流分を蓄電素子13が充電しているためである。その結果、図4(b)の太実線に示すように、DC/DCコンバータ19が動作していない場合(図4(b)の太点線)に比べ、直流発電機11の電流Igは早く0に近づく。また、図4(d)の太実線に示すように、DC/DCコンバータ19が動作していない場合(図4(d)の太点線)に比べ、時間t1での蓄電素子13の電流Icは大きくなるとともに、その後早く低下していく。
【0069】
次に、図4(f)の太実線に示すように、時間t2で直流電圧源10の電流−Ibが既定値−Ibkから0に向かい、電流絶対値が低下したとする。この時点で制御回路33はDC/DCコンバータ19の動作を停止する。その結果、図4(g)に示すように、DC/DCコンバータ19の電流Idは0になるとともに、電流Ibの絶対値と蓄電素子13の電流Ic(図4(d)の太実線)が経時的に低下していくので、図4(b)の太実線に示すように直流発電機11の電流Igの絶対値も経時的に低下し続ける。従って、図4(c)の太実線に示すように直流発電機11の電圧Vgは経時的に上昇し続ける。
【0070】
その後、時間t3でブレーキ操作が終了し、直流発電機11の発電が停止したとする。これにより、まず図4(a)に示すように、直流発電機11の発電電力Pgはほぼ0となり、図4(b)に示すように、直流発電機11の電流Igもほとんど0となる。これに伴い、直流発電機11の電圧Vgは、図4(c)の太実線、および太点線に示すように、直流発電機11の発電が停止した時(時間t3)の電圧をそれぞれ維持する。さらに、直流発電機11の発電とDC/DCコンバータ19の動作が停止しているので、蓄電素子13への充電も停止する。従って、図4(d)に示すように、蓄電素子13の電流Icも0になる。また、時間t2ですでにDC/DCコンバータ19が停止しているので、図4(g)に示すように、電流Idも0のままである。これらにより、電流Ig、Ic、Idがいずれもほぼ0になるため、図4(f)に示すように、直流電圧源10の電流Ibは時間t0〜t1と同様に低電圧負荷17にのみ供給され、その電流値はILとなる。
【0071】
時間t3〜t4は直流発電機11の発電電力が極めて小さいので、制御回路33はこの状態の時に蓄電素子13に蓄えた制動エネルギーを直流電圧源10に定電流充電する。これにより、直流電圧源10に充電し切れなかった制動エネルギーを定電流で着実に蓄電素子13から充電するので、極めて高効率な回生システムとすることができる。この際の動作は以下の通りである。
【0072】
制御回路33はブレーキ操作が行われておらず、直流発電機11の発電電力Pgが極めて小さいという条件の時(時間t4)に、DC/DCコンバータ19を動作させ、蓄電素子13の電力を直流電圧源10に供給する。具体的には、制御回路33が第1入出力端子21の電圧(Vgに相当)を読み込み、蓄電素子13の放電下限電圧(時間t0と同じ電圧)になるまで第1スイッチング素子27と第2スイッチング素子29を交互にオンオフ制御することで、蓄電素子13から直流電圧源10に電力を供給する。この際、前記したように直流電圧源10への充電は定電流で行われるようにDC/DCコンバータ19が動作するので、図4(c)の太実線や太点線に示すように、蓄電素子13の電圧が直線的に低下する。従って、直流発電機11の電圧Vgも経時的に低下する。また、図4(d)に示すように、蓄電素子13の放電電流Icは時間t4で負の一定値となる。
【0073】
これに伴い、図4(f)に示すように、直流電圧源10の充電電流Ibは時間t4で急に低下した後、蓄電素子13の電圧が低下するに従って電流Ibが上昇していく。ゆえに、図4(g)に示すように、DC/DCコンバータ19の電流Idも時間t4で負方向に急増した後、上昇していく。なお、図4(f)の電流Ibは、直流電圧源10から低電圧負荷17に供給している電流IL(ここでは正の電流)と蓄電素子13からDC/DCコンバータ19によって供給される電流Id(ここでは負の電流)の和であるため、時間t4で電流Ibが低下することになる。また、図4(f)、および(g)において、太点線は太実線に比べ電流絶対値がいずれも大きくなっているが、これは、図4(c)において太点線で示した蓄電素子13の電圧が太実線の場合に比べて低いためである。すなわち、蓄電素子13の電圧が低い分、電流IbやIdが大きくなる。
【0074】
制御回路33は直流電圧源10の充電中も電圧Vgの監視を行っているので、時間t1〜t2でDC/DCコンバータ19を動作させなかった場合は図4(c)の太点線に示すように時間t5で、また、時間t1〜t2でDC/DCコンバータ19を動作させた場合は図4(c)の太実線に示すように時間t6で、それぞれ電圧Vgが蓄電素子13の前記放電下限電圧に達すれば、DC/DCコンバータ19の動作を停止する。なお、時間t1〜t2でDC/DCコンバータ19を動作させた時は、させなかった時に比べて蓄電素子13を長時間放電することができるが、これは時間t1〜t2で直流電圧源10に充電できない分も蓄電素子13により充電したためである。
【0075】
時間t5(太点線)、またはt6(太実線)でDC/DCコンバータ19を停止すると、それ以降は電圧Vgが時間t0と同じ一定電圧となる。また、図4(d)に示すように、蓄電素子13の電流Icは0になり、図4(g)に示すように、DC/DCコンバータ19の電流Idも0になる。ゆえに、直流電圧源10の電流Ibは、図4(f)に示すように、低電圧負荷17の電流ILになる。
【0076】
この時間t6以降の状態は時間t0と同じであるので、再び時間t1以降の動作を繰り返すことにより、直流発電機11の発電電力を効率よく回収し続けることができる。
【0077】
以上の構成、動作により、直流発電機11の発電電力を直流電圧源10と蓄電素子13に充電する際に、直流電圧源10の充電電流−Ibが既定値−Ibkを超えた分を加えて蓄電素子13を充電するので、直流電圧源10の負担が低減され、充電時にも高信頼な電源装置を実現できた。
【0078】
なお、本実施の形態2においても、実施の形態1と同様に、直流電圧源10の電流Ibを検出する替わりに、直流発電機11の電流Igを検出してもよい。また、DC/DCコンバータ19を動作させ続けてもよい。
【0079】
また、実施の形態1、2では電源装置をそれぞれ電動パワーステアリングと制動エネルギーの回生システムに適用した場合について説明したが、これはアイドリングストップシステムや電動過給器、ハイブリッドシステム等に用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の電源装置は、大電力に対して直流電圧源の負担が低減されるので、特に大きな負荷変動や発電変動が発生する場合の電源装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施の形態1における電源装置のブロック回路図
【図2】本発明の実施の形態1における電源装置の電力、電圧、および電流の経時変化図であり、(a)高電圧負荷の消費電力Phの経時変化図、(b)高電圧負荷の電流Ihの経時変化図、(c)高電圧負荷の電圧Vhの経時変化図、(d)蓄電素子の電流Icの経時変化図、(e)低電圧負荷の電流ILの経時変化図、(f)直流電圧源の電流Ibの経時変化図、(g)DC/DCコンバータの電流Idの経時変化図
【図3】本発明の実施の形態2における電源装置のブロック回路図
【図4】本発明の実施の形態2における電源装置の電力、電圧、および電流の経時変化図であり、(a)直流発電機の発電電力Pgの経時変化図、(b)直流発電機の電流Igの経時変化図、(c)直流発電機の電圧Vgの経時変化図、(d)蓄電素子の電流Icの経時変化図、(e)低電圧負荷の電流ILの経時変化図、(f)直流電圧源の電流Ibの経時変化図、(g)DC/DCコンバータの電流Idの経時変化図
【図5】従来の電源装置のブロック回路図
【符号の説明】
【0082】
10 直流電圧源
11 直流発電機
13 蓄電素子
15 高電圧負荷
19 DC/DCコンバータ
27 第1スイッチング素子
29 第2スイッチング素子
31 インダクタンス素子
33 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧源と、
前記直流電圧源に直列に接続された蓄電素子と、
前記直流電圧源と前記蓄電素子間のエネルギーの授受を行うように接続されたDC/DCコンバータと、
前記直流電圧源と前記蓄電素子の直列回路の両端に接続された負荷とから構成され、
前記DC/DCコンバータに内蔵された制御回路は、前記負荷への電力供給時に前記蓄電素子から前記直流電圧源に電力を供給することにより、前記直流電圧源から出力される電流を低減するようにした電源装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記直流電圧源から出力される電流が既定値以上の時に前記DC/DCコンバータを起動し、前記蓄電素子から前記直流電圧源に電力を供給するようにした請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記負荷の消費電力が小さい時に、前記DC/DCコンバータにより前記直流電圧源から前記蓄電素子に電力を供給するようにした請求項1に記載の電源装置。
【請求項4】
前記DC/DCコンバータは少なくとも前記制御回路と、
前記制御回路によりオンオフ制御される、直列接続された第1スイッチング素子、および第2スイッチング素子と、
前記直流電圧源と前記蓄電素子の接続点に一端が、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子の接続点に他端が、それぞれ接続されたインダクタンス素子とからなり、
前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子の直列回路の両端が、前記直流電圧源と前記蓄電素子の直列回路の両端に並列に接続された構成を有し、
前記制御回路は、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子を交互にオンオフ制御するためのオンオフ比を調整することで、前記直流電圧源から出力される電流を制御するようにした請求項1に記載の電源装置。
【請求項5】
直流電圧源と、
前記直流電圧源に直列に接続された蓄電素子と、
前記直流電圧源と前記蓄電素子間のエネルギーの授受を行うように接続されたDC/DCコンバータと、
前記直流電圧源と前記蓄電素子の直列回路の両端に接続された直流発電機とから構成され、
前記DC/DCコンバータに内蔵された制御回路は、前記直流発電機が発電する時に、前記直流電圧源から前記蓄電素子に電力を供給することにより、前記直流電圧源に入力される電流を低減するようにした電源装置。
【請求項6】
前記制御回路は、前記直流電圧源に入力される電流が既定値以上の時に前記DC/DCコンバータを起動し、前記直流電圧源から前記蓄電素子に電力を供給するようにした請求項5に記載の電源装置。
【請求項7】
前記制御回路は、前記直流発電機の発電電力が小さい時に、前記DC/DCコンバータにより前記蓄電素子から前記直流電圧源に電力を供給するようにした請求項5に記載の電源装置。
【請求項8】
前記DC/DCコンバータは少なくとも前記制御回路と、
前記制御回路によりオンオフ制御される、直列接続された第1スイッチング素子、および第2スイッチング素子と、
前記直流電圧源と前記蓄電素子の接続点に一端が、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子の接続点に他端が、それぞれ接続されたインダクタンス素子とからなり、
前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子の直列回路の両端が、前記直流電圧源と前記蓄電素子の直列回路の両端に並列に接続された構成を有し、
前記制御回路は、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子を交互にオンオフ制御するためのオンオフ比を調整することで、前記直流電圧源に入力される電流を制御するようにした請求項5に記載の電源装置。
【請求項9】
前記蓄電素子は電気二重層キャパシタである請求項1、または5に記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−211952(P2008−211952A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48740(P2007−48740)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】