説明

電源装置

【課題】完成品の状態で絶縁耐圧試験が実施可能な電源装置を提供する。
【解決手段】電子回路基板10を収容したシャーシフレーム20の内部に、入力2a,2bとフレームグランド8間にサージアブソーバ4,5を備えた電源装置1において、前記サージアブソーバ4,5にショートバー6を接続し、前記シャーシフレーム20に開口21Aと、該開口21Aに臨む突片21とを設け、前記ショートバー6と前記突片21とを、絶縁部材10を間に挟んで、前記シャーシフレーム20の開口21Aを通じて外部から螺入する固定ねじ7で導通可能に連結したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雷サージ印加等の過電圧から電源回路を保護する機構を備えた電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、雷サージ印加等の瞬間的な過電圧(サージ電圧)から回路を保護するために、電源入力と接地間にバリスタ等のサージアブソーバを備えた電源装置が知られている。この種のサージアブソーバは、例えばプリント基板のパターン上に半田付けされているが、装置の絶縁耐圧試験に際しては、サージアブソーバを回路上切り離す必要がある。そのため、絶縁耐圧試験に際し、サージアブソーバの接続を簡易に断続することができるように、電子回路基板上に挿抜容易なコネクタを具備したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−253695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、サージアブソーバが実装される電子回路基板は、電源装置の完成品の状態ではシャーシフレーム内部に収容されるため、絶縁耐圧試験を行う際には、サージアブソーバを回路上切り離すために、少なくともシャーシフレームの一部、例えば蓋或いはカバー、を取り外す必要があった。そのため、装置完成品の状態では絶縁耐圧試験が実施できず、絶縁耐圧試験を行うための工数が増加するという問題がある。
本発明は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、完成品の状態で絶縁耐圧試験が実施可能な電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、電子回路基板を収容したシャーシフレームの内部に、入力とフレームグランド間にサージアブソーバを備えた電源装置において、前記サージアブソーバにショートバーを接続し、前記シャーシフレームに開口と、該開口に臨む突片とを設け、前記ショートバーと前記突片とを、絶縁部材を間に挟んで、前記シャーシフレームの開口を通じて外部から螺入する固定ねじで導通可能に連結したことを特徴とする。
この構成によれば、ショートバーとシャーシフレームに設けた突片を導通させる固定ねじを、シャーシフレームの外部から着脱させることができるため、シャーシフレームの内部に電子回路基板を収容した状態で、シャーシフレームを分解することなくサージアブソーバとフレームグランド間の接続を断続させて、サージアブソーバを回路上切り離すことができ、電源装置を完成品の状態で絶縁耐圧試験を実施することができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、シャーシフレームの外部から固定ねじを外すという簡単な作業で、シャーシフレームの内部に収容されたサージアブソーバを回路上切り離すことができるため、シャーシフレームを分解することなく、電源装置の完成品の状態で絶縁耐圧試験を実施することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本実施形態の電源装置の回路図である。
【図2】電源装置の外装を示す斜視図である。
【図3】電源装置の本体を示す図である。
【図4】電源装置の本体と電子回路基板の構成を示す図である。
【図5】ショートバーとシャーシフレームの連結構成を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明を適用した実施形態に係る電源装置1の回路図である。電源装置1は、入力2a,2bと、出力3a,3bとを有し、その間に電源回路31を備える。入力2a,2bと、電源回路31の間には、電源回路31を雷サージ印加等の瞬間的な過電圧から保護する保護回路30が備えられている。また、電源装置1の出力3a,3bは負荷32に接続される。電源装置1は、入力2a,2bから直流48V電源の供給を受ける。
【0009】
保護回路30は、電源の入力2a,2bとフレームグランド8の間に挿入された、例えばバリスタ等のサージアブソーバ4,5を備える。電源ラインにサージ電圧がかかった場合には、サージアブソーバ4,5がサージを吸収し、サージの電源回路30への侵入から保護する。サージアブソーバ4,5の接続点にはショートバー6が設けられ、ショートバー6は、電子回路基板10にねじ12、13で固定されている。フレームグランド8は電源装置1の外装を形成する後述のシャーシフレーム20であり、フレームグランド8とショートバー6は、FGねじ(固定ねじ)7で連結されている。
【0010】
電源装置1のシャーシフレーム20は、図2に示すように、略矩形に形成され、蓋体20Aと箱形本体20Bとで構成されている。電源装置1の完成品の状態では、シャーシフレーム20の三面を形成する蓋体20Aが、シャーシフレーム20の本体20Bの開口部に不図示のねじで螺合される。シャーシフレーム20の残りの三面を形成する本体20Bには、本体20Bの底部20Cの一部を、シャーシフレーム20の内側に向かって切り起こして形成した突片21が設けられている。
この構成によれば、電源装置の組み立て作業時には、シャーシフレームの箱形本体20Bから蓋体20Aを外した状態で電子回路基板を容易にシャーシフレームの内部に固定することができる。
また、本体20Bの短手方向の一方の側面には出力3a,3bが形成され、他方の側面には、図示は省略したが、入力2a,2bが形成される。また、入力2a,2bが形成された側面には、電源装置1の持ち運びを容易にするためにハンドル24が備えられている。
【0011】
本体20Bの底部20Cの裏面(シャーシフレーム20の内面)には、図3(a),(b)に示すように、例えば底部20Cの4隅に設けられた、ボス部22が備えられている。また、前述の突片21は、略L字形状に形成され、突片21の高さはボス部22の高さと同一の高さに形成されている。突片21の底部20Cと略平行の面には、ねじ孔23が設けられている。突片21は、底部20Cの一部を切り起こして形成しているため、底部20Cには、突片21の周囲に開口21Aが形成され、突片21は、開口21Aに臨んでいる。開口21Aの大きさは、開口21AからFGねじ7を螺入させ、ねじ孔23を介して突片21とショートバー6を連結するために、ドライバーが1本入る程度で良く、小さく形成することができる。
【0012】
ボス部22には、図4(b),(c)に示すように、電源回路及び保護回路が形成される電子回路基板10が積載される。電子回路基板10は、ねじ11でボス部22に固定され、底部20Cから浮いた状態で支持される。電子回路基板10は、シャーシフレーム20の略一杯に延存している。サージアブソーバ4,5は、電子回路基板10に半田付けなどで接続されるとともに、図4(a)に示すように、ショートバー6に電子回路基板10に形成されたパターン14で接続されている。また、シャーシフレーム20に形成された突片21は、電子回路基板10の裏面10bに宛がわれている。
【0013】
ショートバー6は、突片21と対抗する位置に配置され、電子回路基板10の表面10aに、パターン14と密接するように、ねじ12,13で固定されている。また、ショートバー6には、突片21に設けられたねじ孔23と重合する位置にFGねじ7が螺合される孔が形成されている。
突片21とショートバー6の間には、絶縁部材15(図5参照)が配置され、突片21とショートバー6は導通していない。突片21とショートバー6を、図4(b),(c)に示すように、電子回路基板10を間に挟んだ状態で配置した場合には、電子回路基板10が絶縁部材となり、突片21とショートバー6間は導通していない。
【0014】
FGねじ7は、開口21Aを通じて螺入自在に備えられている。FGねじ7を開口21Aを介してシャーシフレーム20の外側から螺入し、突片21とショートバー6をFGねじ7で連結することで、サージアブソーバ4,5とフレームグランド8を回路上接続することができる。また、FGねじ7を外した状態においては、突片21とショートバー6間の接続が切断され、サージアブソーバ4,5はフレームグランド8に接続されていない状態となり、サージアブソーバ4,5は、回路上切り離される。
【0015】
突片21と、電子回路基板10を固定するボス部22とは同一の高さに形成され、突片21が電子回路基板10の裏面10bに宛がわれている。
これらの構成によれば、本体20Bの底部20Cに浮いた状態で支持されている電子回路基板10の裏面に、ボス部22と同一の高さに形成されたシャーシフレーム20の突片21が宛がわれているため、突片21が電子回路基板10を下方から支えている状態となり、突片21にFGねじ7を固定しても、電子回路基板10が撓むのを防止するとことができる。さらに突片21が、シャーシフレーム20の本体20Bの底部20Cに設けた開口21Aに臨んでいるため、開口21Aを通じて容易にFGねじ7をシャーシフレーム20の外部から螺入させることができ、突片21とショートバー6を断絶する際には、シャーシフレーム20の外部からFGねじ7を簡単に取り外すことができるため、絶縁耐圧試験時の工数を低減することができる。
【0016】
ところで、電源回路31(図1参照)を保護するためには、電源装置1の予め既定されている絶縁耐圧よりも低い動作電圧のサージアブソーバ4,5を電子回路基板10に接続する必要がある場合があり、電源装置1の絶縁耐圧試験実施時にはサージアブソーバ4,5には、サージアブソーバ4,5の作動電圧よりも高い電圧が電子回路基板10に印加される。そのため、サージアブソーバ4,5が接続されている状態では、絶縁不良となってしまうため、サージアブソーバ4,5を電源回路上切り離して絶縁耐圧試験を実施する必要がある。
【0017】
電源装置1の完成品状態では、蓋体20Aはシャーシフレーム20にねじ止めされ、本体20Bの底部20Cに固定されている電子回路基板10は、シャーシフレーム20の内部に収容されている。この状態において底部20Cに設けられた小さな開口21Aを通じて、ドライバー等でFGねじ7を突片21から取り外すことによって、サージアブソーバ4,5とフレームグランド8との接続が断絶し、サージアブソーバ4,5を、容易に電源回路上切り離すことができる。これによって、電源装置1を完成品状態で、FGねじ7をシャーシフレーム20の外部から取り外すだけで絶縁耐圧試験を実施することが可能となる。
絶縁耐圧試験終了時には、再び、底部20Cに設けられた小さな開口21Aを通じて、シャーシフレーム20の外側からFGねじ7を螺入し、ドライバー等でFGねじ7を突片21とショートバー6に螺合して、突片21とショートバー6とを連結し、サージアブソーバ4,5をフレームグランド8と容易に接続することができる。
【0018】
底部20Cの開口21Aは、小さく形成することができるため、シャーシフレーム20の外観を大きく損ねることがない。そのため、底部20Cはシャーシフレーム20の上面、或いは、底面のどちらに配置される構成としても良いが、電源装置1の底面側に配置された場合には、殊更電源装置1の外観に影響を及ぼすことがない。
【0019】
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本実施形態では、突片21は、シャーシフレーム20の底部20Cの一部を、シャーシフレーム20の内側に向かって切り起こして形成したが、これに限らず、例えば、底部20Cにパンチなどで凹部を形成して突片21を備える構成としてもよい。
また、本実施形態では、突片21とショートバー6は、間に電子回路基板10を挟んで配置される構成としたが、これに限らず、図5に示すように、電子回路基板10の表面10aに固定されるショートバー6が突出する孔10cを電子回路基板10に設け、ショートバー6と突片21との間に絶縁部材15を挟んで、FGねじ7を螺入する構成としても良い。
その他の細部構成についても、任意に変更可能である。
【符号の説明】
【0020】
1 電源装置
4 サージアブソーバ
6 ショートバー
7 FGねじ(固定ねじ)
8 フレームグランド
10 電子回路基板(絶縁部材)
15 絶縁部材
20 シャーシフレーム
20A 蓋体
20B 本体
20C 底部
21 突片
21A 開口
22 ボス部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路基板を収容したシャーシフレームの内部に、入力とフレームグランド間にサージアブソーバを備えた電源装置において、前記サージアブソーバにショートバーを接続し、前記シャーシフレームに開口と、該開口に臨む突片とを設け、前記ショートバーと前記突片とを、絶縁部材を間に挟んで、前記シャーシフレームの開口を通じて外部から螺入する固定ねじで導通可能に連結したことを特徴とする電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−232236(P2011−232236A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−103953(P2010−103953)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000005382)古河電池株式会社 (314)
【Fターム(参考)】