電源装置
【課題】簡易な構成によって、異常をユーザが認識しやすくすることが可能な、電源装置を提供する。
【解決手段】スイッチング電源100の過電流保護時において、主スイッチング素子9の発振周波数が可聴周波数域まで低下するように過電流レベルが設定される。過電流レベルを設定するために、抵抗素子6の抵抗値が予め調整される。これにより、スイッチング電源100の過電流保護時に通知音が発生する。スイッチング電源100の過電流保護時においてスイッチング電源100の出力電圧が所定値まで低下した場合(たとえば短絡時)には、主スイッチング素子9が間欠発振する。主スイッチング素子9の発振周波数は可聴周波数域内にあるので、スイッチング電源100から間欠音を発生させることができる。
【解決手段】スイッチング電源100の過電流保護時において、主スイッチング素子9の発振周波数が可聴周波数域まで低下するように過電流レベルが設定される。過電流レベルを設定するために、抵抗素子6の抵抗値が予め調整される。これにより、スイッチング電源100の過電流保護時に通知音が発生する。スイッチング電源100の過電流保護時においてスイッチング電源100の出力電圧が所定値まで低下した場合(たとえば短絡時)には、主スイッチング素子9が間欠発振する。主スイッチング素子9の発振周波数は可聴周波数域内にあるので、スイッチング電源100から間欠音を発生させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、過負荷時等の異常時に通知音を発生させる電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
数十W程度以下の小電力の電源装置には、RCC(Ringing Choke Converter)方式と呼ばれる自励式のフライバックコンバーターが多く用いられる。その理由として、汎用部品によって電源装置を構成することが可能であること、回路構成が簡単であること、安価に製造可能であることなどが挙げられる。
【0003】
図11は、従来の擬似共振型RCC方式スイッチング電源の要部を示す回路図である。図11において、この擬似共振型RCC方式スイッチング電源は、1次巻線51と2次巻線52と補助巻線53とを有するトランス50と、1次巻線51に直列接続された主スイッチング素子62と、主スイッチング素子62に並列接続されたコンデンサー63とを備える。補助巻線53の一方端子と主スイッチング素子62のゲートとの間には、遅延回路54、抵抗素子60およびコンデンサー61が直列接続されている。遅延回路54は、バイポーラトランジスタ55、抵抗素子56,57、コンデンサー58、およびダイオード59を含む。
【0004】
主スイッチング素子62のオン期間にトランス50にエネルギーが蓄積され、主スイッチング素子62のオフ期間にトランス50のエネルギーが放出される。トランス50のエネルギーの放出が終了すると、コンデンサー63と1次巻線51で共振回路が形成され、主スイッチング素子62のドレイン−ソース間電圧が減衰振動する。トランス50のエネルギーの放出が終了すると、主スイッチング素子62に電流が流れ始め、補助巻線53に正電圧が発生する。遅延回路54は、補助巻線53に発生した正電圧を、主スイッチング素子62のドレイン−ソース間電圧の谷点まで遅延させて主スイッチング素子62のゲートに与える。これにより、主スイッチング素子62のターンオン時のスイッチング損失が低減される(たとえば、非特許文献1参照)。
【0005】
一方、電源装置の異常を検出するための回路が従来から提案されている。たとえば特開平9−65569号公報(特許文献1)は、直流電源からの電力により作動するセンサ等の負荷回路の過負荷による異常状態を検出する回路を開示する。また、たとえば、特開2008−90448号公報(特許文献2)は、電源供給経路に負荷装置が接続されている場合において、正常に電源が供給されているのかあるいは異常な状態で電源が供給されているのかをユーザが把握するための電源装置およびプログラムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−65569公報
【特許文献2】特開2008−90448号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「トランジスタ技術」(CQ出版社発行)2009年1月号187〜201頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電源装置の異常には、たとえば、負荷(装置)側の異常による過電流状態、負荷側の短絡状態、あるいは電源回路内の二次側短絡状態などが挙げられる。しかしながら、図11に開示されるような従来の擬似共振型RCC方式スイッチング電源は、上記のような電源装置の異常を通知するための手段を有していない。したがって従来の擬似共振型RCC方式スイッチング電源の異常をユーザが把握することは容易ではない。
【0009】
一方、特許文献1あるいは特許文献2に開示された構成によれば、ユーザが電源装置の異常を把握することは可能である。しかし、電源装置の異常を検出するために、マイクロコンピュータ、CPU等の制御回路が用いられる。
【0010】
電源装置の異常を監視するための回路(制御回路)を従来の擬似共振型RCC方式スイッチング電源の構成に追加することによって、電源装置の部品点数が増える。また、回路構成が複雑化する可能性がある。このため、図11に開示されたRCC方式スイッチング電源の構成に、特許文献1あるいは特許文献2に開示された構成を組み合わせた場合には、回路構成が簡単であることなどといった、RCC方式の電源装置でのメリットを十分に享受できなくなる可能性がある。
【0011】
また、特許文献2に開示された構成では、電源装置が正常および異常のいずれであるかがランプによってユーザに通知される。しかしながらユーザの目の届きにくい場所に電源装置が配置された場合には、電源装置が異常であることにユーザが気付きにくくなる。したがって電源装置が異常になった際におけるユーザへの通知方法に改善の余地がある。
【0012】
それゆえに、この発明の主たる目的は、簡易な構成によって、異常をユーザが認識しやすくすることが可能な、電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は要約すれば、通知音を発生させる電源装置であって、1次巻線と補助巻線と2次巻線とを有するトランスと、1次巻線に接続された第1の電極と、第2の電極と、補助巻線に生じた電圧を受ける制御電極とを有する主スイッチング素子と、主スイッチング素子の第1および第2の電極に接続された第1のコンデンサーと、補助巻線に生じた電圧を遅延させて主スイッチング素子の制御電極に与える遅延回路と、トランスの2次巻線に生じた電圧を整流して負荷に供給される直流電圧を生成する整流回路と、整流回路から負荷への出力電流が増大するほど主スイッチング素子の発振周波数を低下させる周波数制御回路と、主スイッチング素子の第2の電極と基準電圧ノードとの間に接続されて、出力電流の過電流レベルを、その抵抗値によって設定する第1の抵抗素子とを備える。出力電流が過電流レベルに達した場合には、電源装置を過電流から保護するために、周波数制御回路は、整流回路の出力電圧が低下するように発振周波数を低下させる。電源装置の過電流保護時に通知音を発生させるために、電源装置の過電流保護時において周波数制御回路が発振周波数を可聴周波数域まで低下させるように、過電流レベルを設定するための第1の抵抗素子の抵抗値が予め設定される。
【0014】
好ましくは、電源装置の過電流保護時において整流回路の出力電圧が所定値まで低下した場合に、主スイッチング素子の制御電極に与えられる電圧が主スイッチング素子のしきい値電圧以下となるように、2次巻線と補助巻線との巻線比を含む回路定数が設定され、それによって主スイッチング素子を間欠的に発振させる。
【0015】
好ましくは、電源装置は、主スイッチング素子の制御電極と基準電圧ノードとの間に接続された第2の抵抗素子をさらに備える。回路定数は、第2の抵抗素子の抵抗値をさらに含む。
【0016】
好ましくは、遅延回路は、主スイッチング素子の制御電極と主スイッチング素子の第2の電極とに電気的に接続された第2のコンデンサーを含む。電源装置は、補助巻線と主スイッチング素子の制御電極とに電気的に接続された第3のコンデンサーをさらに備える。回路定数は、第2および第3のコンデンサーの容量値をさらに含む。
【0017】
好ましくは、電源装置は、第3のコンデンサーとともに補助巻線と主スイッチング素子の制御電極との間に直列接続された第3の抵抗素子をさらに備える。回路定数は、第3の抵抗素子の抵抗値をさらに含む。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、簡易な構成によって、異常をユーザが認識しやすくすることが可能な電源装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の一実施の形態に係る電源装置の構成を示す回路図である。
【図2】主スイッチング素子9のドレイン−ソース間電圧Vds、ドレイン電流Id、およびゲート−ソース間電圧Vgsを示すタイムチャートである。
【図3】図1に示したスイッチング電源100の出力電圧−出力電流特性を模式的に示した図である。
【図4】通常動作時における主スイッチング素子のドレイン−ソース間電圧を示した波形図である。
【図5】過電流保護時における主スイッチング素子のドレイン−ソース間電圧を示した波形図である。
【図6】間欠発振時における主スイッチング素子のドレイン−ソース間電圧を示した波形図である。
【図7】図1に示した抵抗素子5の抵抗値と発振波形との関係の一例を示した図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る電源装置の適用例を示した図である。
【図9】図8に示した電源装置150の外観を示した模式図である。
【図10】図9に示したラベルに記載された文言の一例を説明するための図である。
【図11】従来の擬似共振型RCC方式スイッチング電源の要部を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下において、本発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0021】
図1は、この発明の一実施の形態に係る電源装置の構成を示す回路図である。図1を参照して、この発明の一実施の形態に係る擬似共振型RCC方式スイッチング電源100(以下、単に「スイッチング電源100」と称する)は、入力端子T1,T2、全波整流回路1、コンデンサー2,7,10、副スイッチング素子(NPNバイポーラトランジスタ)3、抵抗素子4〜6、インダクタ8、主スイッチング素子(NチャネルMOSトランジスタ)9、およびトランス11を備える。トランス11は、1次巻線12、2次巻線13、および補助巻線14を含む。2次巻線13には1次巻線12と逆極性の電圧が発生し、補助巻線14には1次巻線12と同極性の電圧が発生する。
【0022】
入力端子T1,T2間には、商用交流電圧VACが印加される。全波整流回路1は、入力端子T1,T2を介して与えられた商用交流電圧VACを全波整流する。コンデンサー2は、全波整流回路1の出力端子1aおよび基準電圧端子1b間に接続され、全波整流回路1の出力電圧を平滑化して直流電圧VDC1を生成する。すなわち全波整流回路1およびコンデンサー2は、直流電源を構成する。また、基準電圧端子1bは、基準電圧ノードに相当する。
【0023】
抵抗素子4,5は、端子1a,1b間に直列接続される。副スイッチング素子3のコレクタは抵抗素子4,5間のノードN4に接続され、そのエミッタは基準電圧端子1bに接続される。1次巻線12の一方端子は全波整流回路1の出力端子1aに接続され、1次巻線12の他方端子は主スイッチング素子9および抵抗素子6を介して基準電圧端子1bに接続される。コンデンサー7は、ノードN4と主スイッチング素子9のソースとの間に接続される。インダクタ8は、ノードN4と主スイッチング素子9のゲートとの間に接続される。主スイッチング素子9のドレインは、1次巻線12に接続される。コンデンサー10は、主スイッチング素子9のソースおよびドレイン間に接続される。
【0024】
コンデンサー7およびインダクタ8は、補助巻線14に生じた電圧を遅延させて主スイッチング素子9のゲートに与える遅延回路を構成する。遅延回路は、主スイッチング素子9のターンオンおよびターンオフのタイミングを調整してスイッチング損失を低減させる。遅延回路をコンデンサー7とインダクタ8で構成したので、非特許文献1の場合に比べて、部品点数が少なくなり、低コスト化を図ることができる。
【0025】
スイッチング電源100は、さらに、コンデンサー15,19、抵抗素子16,18,20、ツェナーダイオード17、ダイオード21、フォトカプラー22を備える。フォトカプラー22は、フォトダイオード23およびフォトトランジスタ24を含む。
【0026】
コンデンサー15および抵抗素子16は、補助巻線14の一方端子と主スイッチング素子9のノードN4との間に直列接続される。すなわちコンデンサー15および抵抗素子16は補助巻線14と主スイッチング素子9のゲートとに電気的に接続される。
【0027】
ツェナーダイオード17のカソードは補助巻線14の一方端子に接続され、そのアノードは抵抗素子18を介して副スイッチング素子3のベースに接続される。コンデンサー19は、副スイッチング素子3のベースと主スイッチング素子9のソースとの間に接続される。抵抗素子20は、コンデンサー19に並列接続される。ダイオード21のアノードは補助巻線14の一方端子に接続され、そのカソードはフォトトランジスタ24を介して副スイッチング素子3のベースに接続される。補助巻線14の他方端子は、基準電圧端子1bに接続される。
【0028】
副スイッチング素子3、コンデンサー19およびフォトカプラー22は、トランス11の2次側の整流回路から負荷40への出力電流が増大するほど主スイッチング素子9の発振周波数(スイッチング周波数)を低下させる周波数制御回路を構成する。
【0029】
スイッチング電源100は、さらに、ダイオード25、コンデンサー26,29,32、抵抗素子27,30,31、インダクタ28、シャントレギュレータ34、出力端子T3、および基準電圧端子T4を備える。ダイオード25、コンデンサー26,29、およびインダクタ28は、トランス11の2次巻線13に生じた電圧を整流する整流回路を構成する。
【0030】
ダイオード25のアノードは2次巻線13の一方端子に接続され、そのカソードはインダクタ28を介して出力端子T3に接続される。コンデンサー26の一方電極はダイオード25のカソードに接続され、その他方電極は2次巻線13の他方端子および基準電圧端子T4に接続される。コンデンサー29は、出力端子T3,T4間に接続される。抵抗素子30,31は、出力端子T3,T4間に直列接続される。抵抗素子30,31間のノードN30は、シャントレギュレータ34の参照電圧端子34aに接続される。
【0031】
抵抗素子27の一方電極はダイオード25のカソードに接続され、その他方電極はフォトダイオード23を介してシャントレギュレータ34のカソードに接続される。コンデンサー32は、抵抗素子27の他方電極とノードN30との間に接続される。抵抗素子33は、出力端子T3とシャントレギュレータ34のカソードとの間に接続される。シャントレギュレータ34のアノードは、基準電圧端子T4に接続される。負荷40は、出力端子T3,T4間に接続される。
【0032】
なお、本発明における主スイッチング素子の第1の電極、第2の電極および制御電極は、主スイッチング素子9のドレイン電極、ソース電極、およびゲート電極とそれぞれ対応する。
【0033】
また、本発明における第1の抵抗素子は、抵抗素子6と対応する。本発明における第2の抵抗素子は、抵抗素子5と対応する。本発明における第3の抵抗素子は、抵抗素子16と対応する。
【0034】
また、本発明における第1のコンデンサーは、コンデンサー10と対応する。本発明における第2のコンデンサーは、コンデンサー7に対応する。本発明における第3のコンデンサーは、コンデンサー15に対応する。
【0035】
次に、この擬似共振型RCC方式スイッチング電源の動作について説明する。商用交流電圧VACが入力端子T1,T2に印加されると、商用交流電圧VACは全波整流回路1で全波整流され、コンデンサー2で平滑化されて直流電圧VDC1となる。直流電圧VDC1は、トランス11の1次巻線12の一方端子に与えられる。また、出力端子1aから抵抗素子4を介してノードN4に電流が流れ、ノードN4の電圧が上昇する。ノードN4の電圧は、インダクタ8を介して主スイッチング素子9のゲートに与えられる。これにより、主スイッチング素子9および1次巻線12に電流が流れ始める。
【0036】
1次巻線12に電流が流れると、2次巻線13の一方端子には負電圧が発生し、ダイオード25に電流が流れず、トランス11にエネルギーが蓄積される。また、補助巻線14の一方端子には正電圧が発生し、この正電圧はコンデンサー15および抵抗素子16と、コンデンサー7およびインダクタ8からなる遅延回路を介して主スイッチング素子9のゲートに与えられる。これにより、主スイッチング素子9がターンオンする。
【0037】
直流電圧VDC2が高くなるほど、補助巻線14からダイオード21およびフォトカプラー22に含まれるフォトトランジスタ24を通じて流れる電流が増大するので、コンデンサー19に流れる電流が大きくなる。このため副スイッチング素子3のベース電圧の上昇速度は速くなる。逆に、直流電圧VDC2が低くなるほど、補助巻線14からダイオード21およびフォトトランジスタ24を通じて流れる電流が減少するので、コンデンサー19に流れる電流が小さくなる。このため副スイッチング素子3のベース電圧の上昇速度が遅くなる。すなわちフォトカプラー22は、コンデンサー19の充電電流を直流電圧VDC2に応じて設定する。
【0038】
ノードN30の電圧が予め定められた参照電圧に等しい場合は、シャントレギュレータ34のカソードからアノードに所定値の電流が流れる。ノードN30の電圧が参照電圧よりも高くなると、シャントレギュレータ34に流れる電流は、ノードN30の電圧と参照電圧との差電圧に応じて増大する。一方、ノードN30の電圧が参照電圧よりも低くなると、シャントレギュレータ34に流れる電流は、参照電圧とノードN30の電圧との差電圧に応じて減少する。
【0039】
したがって、直流電圧VDC2が所定値よりも上昇すると、シャントレギュレータ34に流れる電流が増大し、フォトダイオード23およびフォトトランジスタ24に流れる電流が増大する。これにより、副スイッチング素子3のオフ時間が短くなり、主スイッチング素子9のオン時間が短くなって直流電圧VDC2が低下する。
【0040】
逆に、直流電圧VDC2が所定値よりも低下すると、シャントレギュレータ34に流れる電流が減少し、フォトダイオード23およびフォトトランジスタ24に流れる電流が減少する。これにより、副スイッチング素子3のオフ時間が長くなり、主スイッチング素子9のオン時間が長くなって直流電圧VDC2が上昇する。したがって直流電圧VDC2を一定に保つことが可能となる。
【0041】
ツェナーダイオード17および抵抗18は、高入力時の過電流保護開始ポイントの補正用回路として機能する。過電流保護動作は、低入力時(たとえばAC85Vが入力端子T1,T2に入力した時)と、高入力時(たとえばAC132Vが入力端子T1,T2に入力した時)とでは、二次側出力で同じ大きさの電力が消費される場合には、一次回路に流れる電流(主スイッチング素子9のドレイン電流)が変化する。具体的には、低入力時には電流のピーク値が大きくなる一方で、高入力時には電流のピーク値が低下する。このため、過電流保護動作開始ポイントを設定するための抵抗6のみでは、入力電圧の変化によって過電流保護動作開始ポイントが変化する。高入力時にはピーク電流値が小さいために、過電流保護動作にいたるまでには二次側の電流を増やす必要がある。その結果、低入力時とは過電流保護動作開始ポイントが変化する。
【0042】
上記のような過電流保護動作開始ポイントの変化幅をできるだけ小さくするために、ツェナーダイオード17および抵抗18が用いられる。高入力時にはトランス11の主巻線12の両端に発生する電圧が上昇する。このため補助巻線14に発生する電圧も上昇する。また、二次側で電流を増やすと主スイッチング素子9のオンデューティが大きくなる(広がる)ので、補助巻線14に発生する電圧もオンデューティが大きくなった分だけ上昇する。このような特性を利用することで過電流保護動作開始ポイントを補正することができる。
【0043】
過電流保護開始ポイントの設定は、たとえば以下の順番で行なわれる。まず低入力(たとえば上記のようにAC85V)時における過電流保護動作開始ポイントを抵抗6によって設定する。次に一次側(電源側)の入力を高入力(たとえば上記のようにAC132V)に設定して、低入力時の過電流保護動作開始ポイントまで二次側の電流を増加させる。この際に、補助巻線14に発生する電圧をオシロスコープ等でモニターして、補助巻線14の発生電圧レベルを確認する。この値に応じてツェナーダイオード17の値(ツェナー電圧)を決定し、その後、抵抗18の値を調整することで過電流保護開始ポイントを微調整する。
【0044】
続いてスイッチング電源100の過電流保護動作について以下に説明する。まず低入力時には、二次側電流(負荷電流)の増大によって、主スイッチング素子9のドレイン電流が定格時より増える。このときの抵抗6の電位差によって、抵抗20を介して副スイッチング素子3をオンして急速に主スイッチング素子9をオフさせる。
【0045】
一方、高入力時には、二次側電流(負荷電流)の増大によって主スイッチング素子のドレイン電流が増加するが、低入力時における過電流動作開始ポイントでは、抵抗6に発生している電位差は定格時よりも大きくなっているものの、副スイッチング素子3をオンさせるだけの電位差は発生していない。その代わりに、補助巻線14に発生している電圧が高くなるとともに、二次側電流(負荷電流)の増大によって定格時のオンデューティよりもデューティが広がっていることで、補助巻線14に発生する電圧がさらに上昇する。
【0046】
その結果、ツェナーダイオード17の電圧が、上記手法によって決定された電圧値(ツェナー電圧)を超えることで、ツェナーダイオード17に電流が流れる。これによって、抵抗18を介して副スイッチング素子3のベースに電流が流れ込み副スイッチング素子3をオンし、主スイッチング素子9が急速にオフされて過電流保護動作が開始される。
【0047】
図2は、主スイッチング素子9のドレイン−ソース間電圧Vds、ドレイン電流Id、およびゲート−ソース間電圧Vgsを示すタイムチャートである。図2において、主スイッチング素子9のオフ期間とオン期間が交互に現れる。主スイッチング素子9がオフすると(時刻t0,t2,t4)、ドレイン−ソース間電圧Vdsはオーバーシュートして振動した後に直流電圧VDC1になる。
【0048】
オフ期間において、トランス11のエネルギーが放出されてゼロになると(時刻tA)、コンデンサー10と1次巻線12によって共振回路が形成され、ドレイン−ソース間電圧Vdsはコンデンサー10のキャパシタンスと1次巻線12のインダクタンスで決まる共振周波数で減衰振動する。このとき、トランス11の補助巻線14の一方端子に正電圧が発生し、この正電圧がコンデンサー15および抵抗素子16と、コンデンサー7およびインダクタ8からなる遅延回路によって所定の時間Td1だけ遅延されて主スイッチング素子9のゲートに与えられる。
【0049】
すなわち、補助巻線14の一方端子の電圧が急峻に立ち上げられると、インダクタ8が高インピーダンス状態になり、補助巻線14からコンデンサー15および抵抗素子16を介してコンデンサー7に電流が流れる。その後、補助巻線14の一方端子の電圧の時間変化(dV/dt)が小さくなるに従ってインダクタ8のインピーダンスが減少し、補助巻線14からコンデンサー15、抵抗素子16およびインダクタ8を介して主スイッチング素子9のゲートに電流が流れ、主スイッチング素子9のゲート−ソース間電圧Vgsが上昇する。
【0050】
このようにして、主スイッチング素子9がオンするタイミングをドレイン−ソース間電圧Vdsの谷点まで遅延させることにより、主スイッチング素子9のターンオン時のスイッチング損失を低減できる。また、コンデンサー10の電荷は、1次巻線12を介して平滑用のコンデンサー2に回生される。ゲート−ソース間電圧Vgsが主スイッチング素子9のしきい値電圧を越えると、主スイッチング素子9がオンし、ドレイン電流Idが上昇する(時刻t1,t3)。
【0051】
ドレイン電流Idが上昇すると、補助巻線14に発生する正電圧も上昇し、コンデンサー19が充電されて副スイッチング素子3のベース電圧が上昇する。ベース電圧が副スイッチング素子3のしきい値電圧を越えると、副スイッチング素子3がオンし、ノードN4の電圧が急峻に低下する。このとき、インダクタ8が高インピーダンス状態になり、コンデンサー7の電荷が副スイッチング素子3を介して放電される。その後、ノードN4の電圧の時間変化(dV/dt)が小さくなるに従ってインダクタ8のインピーダンスが減少し、主スイッチング素子9のゲートの電荷がインダクタ8および副スイッチング素子3を介して放電され、主スイッチング素子9がターンオフする。これにより、ゲート−ソース間電圧Vgsが滑らかに変化し、主スイッチング素子9のターンオフ時に発生するノイズが低減される。
【0052】
再び図1を参照してスイッチング電源100の動作をさらに説明する。直流電圧VDC2が高くなるほどコンデンサー19に流れる電流が大きくなるので、副スイッチング素子3のベース電圧の上昇速度は速くなる。したがって、副スイッチング素子3がオンするタイミングが早くなる。言い換えると主スイッチング素子9がオフするタイミングが早くなる。この結果、主スイッチング素子9のオン期間が短くなる。
【0053】
逆に、直流電圧VDC2が低くなるほどコンデンサー19に流れる電流が小さくなるので、副スイッチング素子3のベース電圧の上昇速度は遅くなる。したがって、副スイッチング素子3がオンするタイミングが遅くなる。言い換えると主スイッチング素子9がオフするタイミングが遅くなる。この結果、主スイッチング素子9のオン期間が長くなる。
【0054】
スイッチング電源100からの出力電流(2次側の整流回路からの出力電流)が小さい、すなわち負荷が小さいほど、トランス11にエネルギーを蓄えるための時間が短くなるので、主スイッチング素子9のスイッチング周波数(発振周波数)が高くなる。逆に、負荷が大きくなるほどトランス11にエネルギーを蓄えるための時間を長くしなければならないため主スイッチング素子9の発振周波数が低下する。
【0055】
トランス11の2次側の出力が過電流となった場合(たとえば負荷の増大、端子T3,T4の短絡、あるいは負荷40の短絡など)、トランス11の2次側の出力電流が増大することで抵抗素子6の電圧降下が大きくなり、抵抗20を介して副スイッチング素子3をオンさせることによって主スイッチング素子9のゲート−ソース間電圧が低下して主スイッチング素子9のドレイン電流が減少する。このため、トランス11に蓄積されるエネルギーが減少する。しかしトランス11の2次側の出力電流が限界(過電流レベル)に達しているため直流電圧VDC2が低下する。これにより過電流保護機能が動作する。抵抗素子6の抵抗値によって、直流電圧VDC2の低下が開始される出力電流値(過電流レベル)を設定することができる。
【0056】
直流電圧VDC2が低下すると、主スイッチング素子9のオフ期間に補助巻線14に発生する電圧も低下するため、コンデンサー19に逆方向に蓄積される電荷が減少する。このため副スイッチング素子3がオフしにくくなる。このため主スイッチング素子9のオン期間がさらに短くなる。したがって、出力電流、出力電圧がともに低下する。主スイッチング素子9のオン期間が短くなることで主スイッチング素子9の発振周波数がさらに低下する。
【0057】
トランス11は、2次巻線13によってスイッチング電源100の出力電圧(トランス11の2次側電圧)を生成するだけでなく、補助巻線14によって主スイッチング素子9のゲート−ソース間電圧Vgs(駆動電圧)も生成している。ゲート−ソース間電圧Vgsの波高値は、補助巻線14と2次巻線13との巻数比によって定められる。トランス11の2次側電圧が低下することでゲート−ソース間電圧Vgsも低下する。
【0058】
主スイッチング素子9のオン期間は、負荷あるいはスイッチング電源100の出力端子T3,T4が短絡するまで短くなり続ける。スイッチング電源100の過電流保護時に負荷がある一定の状態に達した場合、スイッチング電源100の出力電圧は所定値まで低下する。たとえば負荷が短絡状態になったときのスイッチング電源100の出力電圧は、ある最低値まで低下する。このときの主スイッチング素子9のゲート−ソース間電圧Vgsが主スイッチング素子9のしきい値電圧以下となるように、補助巻線14と2次巻線13との巻数比が予め定められる。これによって、主スイッチング素子9は、オン状態を維持できなくなり、間欠発振する。
【0059】
なお間欠発振は、主スイッチング素子9が発振状態と停止状態とを繰り返す場合を含むが、これに限定されるものではない。主スイッチング素子9に流れる電流が周期的に大小を繰り返す場合も間欠発振に含みうる。
【0060】
図3は、図1に示したスイッチング電源100の出力電圧−出力電流特性を模式的に示した図である。図3を参照して、スイッチング電源100の出力電圧−出力電流特性は「フの字特性」を有する。すなわち、出力電流IがI1に達するまでは出力電圧Vは略一定値(V1)であるが出力電流IがI1に達すると、過電流保護が開始される。過電流保護機能によって出力電圧Vが低下するとともに出力電流Iが低下する。出力電圧Vが所定値V2(たとえば最低値)まで低下すると、主スイッチング素子9が間欠発振する。
【0061】
RCC方式など自励発振を基本動作とするスイッチング電源においては、負荷状態に応じて発振周波数が変化しながら、制御が実行される。通常動作時にスイッチング電源の発振周波数(主スイッチング素子の発振周波数)が可聴周波数域に入った場合には、トランス等から音が発生する。この音がユーザに異音として聞こえる可能性がある。
【0062】
一方で、近年では機器の小型化が求められている。スイッチング電源においても発振周波数を上げることによって、トランスの小型化が実現されている。しかしながら、RCC方式の電源の場合、負荷が軽くなるほど発振周波数が高くなるため、軽負荷時の効率が大幅に低下する可能性がある。また、定格負荷動作時においても発振周波数を高くすることによって効率が低下する可能性がある。
【0063】
したがって、本発明の実施の形態では、通常の動作時における発振周波数は、可聴周波数域よりも高い周波数領域内に設定される。通常の動作時における発振周波数は、主スイッチング素子9、ダイオード25およびトランス11の特性等を考慮して設定されるが、一例を示すと、発振周波数は40〜60kHzの範囲に設定される。これによって、スイッチング電源100の通常時におけるスイッチング電源100の効率を高めることができる。
【0064】
なおRCC方式のスイッチング電源の場合、発振周波数fは、暫定的にある値に設定しておき、後から求められた不連続時間によって実際の値を計算することができる(たとえば「トランジスタ技術」(CQ出版社発行)2009年1月号193〜195頁参照)。
【0065】
発振周波数を定めるスイッチングの周期は、主スイッチング素子9の最大オン時間ton(max)と、2次側ダイオード(ダイオード25)の最小オン時間toff’(min)と、不連続時間tdelayとに分けて考えることができる。入力直流電圧(端子1a,1b間の電圧)が最小のときの各時間の比率(デューティ)を仮に決定し、暫定的に決定された発振周波数の逆数と、その比率との積によって、各時間を算出できる。
【0066】
次にトランス11を選定する(設計する)ことによって、トランス11の1次巻線のインダクタンスLpを算出することができる。不連続時間tdelayは、共振用コンデンサーであるコンデンサー10の静電容量Cと、トランス11の1次巻線12のインダクタンスLpを用いて以下の式(1)に従って表わされる。
【0067】
tdelay=π×(Lp×C)1/2 ・・・(1)
スイッチング電源100の実際の発振周波数は、上記の式(1)に従って求められた不連続時間tdelayと、予め算出された時間ton(max)およびtoff’(min)とを用いて以下の式(2)に従って定めることができる。
【0068】
f=1/T=1/{ton(max)+toff’(min)+tdelay} ・・・(2)
さらに本発明の実施の形態によれば、スイッチング電源100の過電流保護時において、主スイッチング素子9の発振周波数が可聴周波数域まで低下するように過電流レベルが設定される。過電流レベルを設定するために、抵抗素子6の抵抗値が予め調整される。これにより、スイッチング電源100の過電流保護時に通知音が発生する。抵抗素子6の抵抗値を定めるための方法は特に限定されず、たとえば計算によって算出されてもよいし、実験によって決定されてもよい。
【0069】
スイッチング電源100の通常動作時における主スイッチング素子の発振周波数が可聴周波数域よりも高いため、ユーザが聞こえる音は発生していない。すなわちスイッチング電源100の異常時にのみ通知音が発生するので、ユーザにスイッチング電源100の異常を通知することができる。
【0070】
さらに本発明の実施の形態によれば、スイッチング電源100の過電流保護時においてスイッチング電源100の出力電圧が所定値まで低下した場合(たとえば短絡時のように、2次側の整流回路の出力電圧が最低値まで低下した場合)には、主スイッチング素子9のゲートに与えられる電圧が主スイッチング素子9のしきい値電圧以下となる。このような電圧の関係が満たされるように、2次巻線13と補助巻線14との巻線比を含む回路定数が設定される。これにより主スイッチング素子9を間欠的に発振させることができる。主スイッチング素子9の発振周波数は可聴周波数域内にあるので、スイッチング電源100から間欠音を発生させることができる。
【0071】
なお、過電流保護が機能しているが間欠発振していない場合、スイッチング電源100からは連続音が発生する。このようにスイッチング電源100の異常の種類に応じて、音の発生態様を変えることができる。したがってユーザがスイッチング電源100の異常の種類を判別することができる。
【0072】
間欠発振は、補助巻線14と2次巻線13との巻数比を調整することで実現可能である。ただし、間欠発振を実現するための回路定数は、巻数比だけでなく、コンデンサー7、15の容量値および/または抵抗素子5,16の抵抗値を含んでもよい。
【0073】
たとえば主スイッチング素子9のゲート側に接続されるコンデンサー7,15の容量値を大きくする事で過電流保護動作時の電圧降下が急峻に変化する。具体的には電圧−電流特性が垂下型からフの字型へと変化する。また、副スイッチング素子3のコレクタに接続される抵抗素子5の抵抗値を小さくし、かつ、主スイッチング素子9のゲート側に接続される抵抗素子16の抵抗値を大きくすることでも同様の結果が得られる。上記のいずれの方法であっても、過電流保護時における補助巻線14の電圧を大きく低下させることができる。したがってスイッチング電源100を間欠発振させることができる。
【0074】
なお、一例では、抵抗素子5の抵抗値が補助巻線14の電圧の低下にとって最も支配的であり、次にコンデンサー7、15の容量値、最後に抵抗素子16の抵抗値となる。ただし調整が行なわれる定数は電源の容量などに応じて異ならせてもよい。
【0075】
図4は、通常動作時における主スイッチング素子のドレイン−ソース間電圧を示した波形図である。なお、コンデンサー15の容量値を95000pF、抵抗素子5の抵抗値を15kΩとした。図4を参照して、ドレイン−ソース間電圧の波形の時間間隔は約18.4μsである。したがって、通常動作時における発振周波数は約54.4kHzである。
【0076】
図5は、過電流保護時における主スイッチング素子のドレイン−ソース間電圧を示した波形図である。ただしスイッチング電源は、間欠発振していない。図5を参照して、ドレイン−ソース間電圧の波形の時間間隔は約540.6μsである。したがって、過電流保護時における発振周波数は約1.85kHzである。すなわち、過電流保護時における発振周波数は可聴周波数域(たとえば20Hz〜20kHz)に入っている。このときには、スイッチング電源は通知音として連続音を発生させる。
【0077】
図6は、間欠発振時における主スイッチング素子のドレイン−ソース間電圧を示した波形図である。図6(A)は、波形全体を示した図である。図6(B)は、図6(A)における丸囲みの部分の拡大図である。
【0078】
図6(A)を参照して、波形の時間間隔は、約4.22msであるので、周波数は約237.2Hzである。図6(B)を参照して、発振時における波形の時間間隔は、264.0μs、192.0μs、168.0μsである。したがって周波数は、それぞれ、3.78kHz、5.21kHz、5.95kHzとなる。すなわちスイッチング電源100は、間欠的に通知音を発生させる。
【0079】
また、抵抗素子5の抵抗値を小さくすることによって間欠発振の開始を早めることも可能である。
【0080】
図7は、図1に示した抵抗素子5の抵抗値と発振波形との関係の一例を示した図である。図7(A)は、抵抗素子5の抵抗値を47kΩに設定したときの発振波形(出力電圧−出力電流曲線)を示す。図7(B)は、抵抗素子5の抵抗値を27kΩに設定したときの発振波形(出力電圧−負荷電流曲線)を示す。
【0081】
図7(A)に示された発振波形では、発振周波数は約1.8kHz〜3.6kHzの可聴周波数であるものの、間欠発振は生じていない。これに対して図7(B)に示された発振波形において丸囲みの部分が間欠発振を示す。なお、図7(B)に示された発振波形において、発振周波数は、約464Hz〜2.6kHzの範囲であり、可聴周波数域内である。
【0082】
[スイッチング電源の適用例]
本発明の実施の形態に係る電源装置の用途は特に限定されるものではない。以下に、1つの適用例を示す。
【0083】
図8は、本発明の実施の形態に係る電源装置の適用例を示した図である。図8を参照して、スイッチング電源100は、増幅部151と電源装置150とが分離されたブースターの電源装置150に搭載される。電源装置150は増幅部151を動作させるための電源電圧(たとえばDC15V)を増幅部151に供給する。スイッチング電源100は、入力された交流電圧(たとえば日本国内では周波数が50Hzまたは60Hzの交流100V)をDC15Vに変換して出力する。
【0084】
電源装置150から増幅部151に電源電圧が供給されることによって、増幅部151は、アンテナ152からの入力信号を増幅する。増幅部151から電源装置150への入力信号は、電源装置150を通して図示しない受信装置(たとえばチューナーを内蔵したテレビジョン受像機)に送られる。
【0085】
電源装置150は、たとえばテレビジョン受像機のそばに配置される。増幅部151の電源電圧は電源装置150から同軸ケーブルを通して増幅部151に供給される。増幅部151の設置場所は特に限定されるものでなく、屋外および屋内のいずれに設置されてもよい。
【0086】
電源装置150は、ユーザの目の届きにくい場所(たとえばテレビジョン受像機と壁面端子との間の場所)に設置されることがある。電源装置150の異常が発生したときの通知方法としてランプ等の表示手段による通知方法を用いることが考えられる。しかし、ユーザの目の届きにくい場所に電源装置150が配置された場合、ユーザがその異常に気付きにくい可能性がある。
【0087】
これに対して、本発明の実施の形態によれば、電源装置150の異常時に電源装置150から通知音が発生する。したがって、ユーザの目の届きにくい場所に電源装置150が配置されていても、ユーザが電源装置150の異常に気付きやすくすることができる。
【0088】
さらに、本発明の実施の形態によれば、電源装置150の異常状態に応じて、発生させる音を連続音から間欠音に切換えることができる。これにより電源装置150の異常の種類が異なることにユーザが気付くことができる。
【0089】
図9は、図8に示した電源装置150の外観を示した模式図である。図9を参照して、電源装置150は、本発明の実施の形態に係るスイッチング電源100を収納した筐体161を有する。筐体161の表面には、電源装置150の異常の種類と電源装置150の通知音との関係を説明したラベル162が貼付される。
【0090】
図10は、図9に示したラベルに記載された文言の一例を説明するための図である。図9および図10を参照して、ラベル162には、「ピー」という連続音の発生時の異常について「ブースターの故障が考えられます」いうメッセージ、「ピッピッピッ」という間欠音の発生時の異常について「電源装置の故障が考えられます」とのメッセージが記載される。
【0091】
ブースターの故障とは、図8に示した増幅部151の故障に相当する。増幅部151の故障によって電源装置の出力電流が過電流レベルに達すると、「ピー」という連続音が発生する。これに対して、電源装置150の内部での故障(たとえば2次側の短絡)が発生した場合、電源装置150が間欠発振する。これにより「ピッピッピッ」という間欠音が発生する。ユーザはラベル162に記載のメッセージを確認することで、異常の原因を把握することができる。
【0092】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0093】
1 全波整流回路、2,7,10,15,19,26,29,32,61 コンデンサー、3 副スイッチング素子(NPNバイポーラトランジスタ)、4〜6,16,18,20,27,30,31,33,60 抵抗素子、8,28 インダクタ、9,62 主スイッチング素子(NチャネルMOSトランジスタ)、11,50 トランス、12,51 1次巻線、12,52 2次巻線、14,53 補助巻線、17 ツェナーダイオード、21,25,59 ダイオード、22 フォトカプラー、23 フォトダイオード、24 フォトトランジスタ、34 シャントレギュレータ、40 負荷、54 遅延回路、55 バイポーラトランジスタ,100 スイッチング電源、150 電源装置、151 増幅部、152 アンテナ、161 筐体、162 ラベル、N4,N30 ノード。
【技術分野】
【0001】
この発明は、過負荷時等の異常時に通知音を発生させる電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
数十W程度以下の小電力の電源装置には、RCC(Ringing Choke Converter)方式と呼ばれる自励式のフライバックコンバーターが多く用いられる。その理由として、汎用部品によって電源装置を構成することが可能であること、回路構成が簡単であること、安価に製造可能であることなどが挙げられる。
【0003】
図11は、従来の擬似共振型RCC方式スイッチング電源の要部を示す回路図である。図11において、この擬似共振型RCC方式スイッチング電源は、1次巻線51と2次巻線52と補助巻線53とを有するトランス50と、1次巻線51に直列接続された主スイッチング素子62と、主スイッチング素子62に並列接続されたコンデンサー63とを備える。補助巻線53の一方端子と主スイッチング素子62のゲートとの間には、遅延回路54、抵抗素子60およびコンデンサー61が直列接続されている。遅延回路54は、バイポーラトランジスタ55、抵抗素子56,57、コンデンサー58、およびダイオード59を含む。
【0004】
主スイッチング素子62のオン期間にトランス50にエネルギーが蓄積され、主スイッチング素子62のオフ期間にトランス50のエネルギーが放出される。トランス50のエネルギーの放出が終了すると、コンデンサー63と1次巻線51で共振回路が形成され、主スイッチング素子62のドレイン−ソース間電圧が減衰振動する。トランス50のエネルギーの放出が終了すると、主スイッチング素子62に電流が流れ始め、補助巻線53に正電圧が発生する。遅延回路54は、補助巻線53に発生した正電圧を、主スイッチング素子62のドレイン−ソース間電圧の谷点まで遅延させて主スイッチング素子62のゲートに与える。これにより、主スイッチング素子62のターンオン時のスイッチング損失が低減される(たとえば、非特許文献1参照)。
【0005】
一方、電源装置の異常を検出するための回路が従来から提案されている。たとえば特開平9−65569号公報(特許文献1)は、直流電源からの電力により作動するセンサ等の負荷回路の過負荷による異常状態を検出する回路を開示する。また、たとえば、特開2008−90448号公報(特許文献2)は、電源供給経路に負荷装置が接続されている場合において、正常に電源が供給されているのかあるいは異常な状態で電源が供給されているのかをユーザが把握するための電源装置およびプログラムを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−65569公報
【特許文献2】特開2008−90448号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「トランジスタ技術」(CQ出版社発行)2009年1月号187〜201頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
電源装置の異常には、たとえば、負荷(装置)側の異常による過電流状態、負荷側の短絡状態、あるいは電源回路内の二次側短絡状態などが挙げられる。しかしながら、図11に開示されるような従来の擬似共振型RCC方式スイッチング電源は、上記のような電源装置の異常を通知するための手段を有していない。したがって従来の擬似共振型RCC方式スイッチング電源の異常をユーザが把握することは容易ではない。
【0009】
一方、特許文献1あるいは特許文献2に開示された構成によれば、ユーザが電源装置の異常を把握することは可能である。しかし、電源装置の異常を検出するために、マイクロコンピュータ、CPU等の制御回路が用いられる。
【0010】
電源装置の異常を監視するための回路(制御回路)を従来の擬似共振型RCC方式スイッチング電源の構成に追加することによって、電源装置の部品点数が増える。また、回路構成が複雑化する可能性がある。このため、図11に開示されたRCC方式スイッチング電源の構成に、特許文献1あるいは特許文献2に開示された構成を組み合わせた場合には、回路構成が簡単であることなどといった、RCC方式の電源装置でのメリットを十分に享受できなくなる可能性がある。
【0011】
また、特許文献2に開示された構成では、電源装置が正常および異常のいずれであるかがランプによってユーザに通知される。しかしながらユーザの目の届きにくい場所に電源装置が配置された場合には、電源装置が異常であることにユーザが気付きにくくなる。したがって電源装置が異常になった際におけるユーザへの通知方法に改善の余地がある。
【0012】
それゆえに、この発明の主たる目的は、簡易な構成によって、異常をユーザが認識しやすくすることが可能な、電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は要約すれば、通知音を発生させる電源装置であって、1次巻線と補助巻線と2次巻線とを有するトランスと、1次巻線に接続された第1の電極と、第2の電極と、補助巻線に生じた電圧を受ける制御電極とを有する主スイッチング素子と、主スイッチング素子の第1および第2の電極に接続された第1のコンデンサーと、補助巻線に生じた電圧を遅延させて主スイッチング素子の制御電極に与える遅延回路と、トランスの2次巻線に生じた電圧を整流して負荷に供給される直流電圧を生成する整流回路と、整流回路から負荷への出力電流が増大するほど主スイッチング素子の発振周波数を低下させる周波数制御回路と、主スイッチング素子の第2の電極と基準電圧ノードとの間に接続されて、出力電流の過電流レベルを、その抵抗値によって設定する第1の抵抗素子とを備える。出力電流が過電流レベルに達した場合には、電源装置を過電流から保護するために、周波数制御回路は、整流回路の出力電圧が低下するように発振周波数を低下させる。電源装置の過電流保護時に通知音を発生させるために、電源装置の過電流保護時において周波数制御回路が発振周波数を可聴周波数域まで低下させるように、過電流レベルを設定するための第1の抵抗素子の抵抗値が予め設定される。
【0014】
好ましくは、電源装置の過電流保護時において整流回路の出力電圧が所定値まで低下した場合に、主スイッチング素子の制御電極に与えられる電圧が主スイッチング素子のしきい値電圧以下となるように、2次巻線と補助巻線との巻線比を含む回路定数が設定され、それによって主スイッチング素子を間欠的に発振させる。
【0015】
好ましくは、電源装置は、主スイッチング素子の制御電極と基準電圧ノードとの間に接続された第2の抵抗素子をさらに備える。回路定数は、第2の抵抗素子の抵抗値をさらに含む。
【0016】
好ましくは、遅延回路は、主スイッチング素子の制御電極と主スイッチング素子の第2の電極とに電気的に接続された第2のコンデンサーを含む。電源装置は、補助巻線と主スイッチング素子の制御電極とに電気的に接続された第3のコンデンサーをさらに備える。回路定数は、第2および第3のコンデンサーの容量値をさらに含む。
【0017】
好ましくは、電源装置は、第3のコンデンサーとともに補助巻線と主スイッチング素子の制御電極との間に直列接続された第3の抵抗素子をさらに備える。回路定数は、第3の抵抗素子の抵抗値をさらに含む。
【発明の効果】
【0018】
この発明によれば、簡易な構成によって、異常をユーザが認識しやすくすることが可能な電源装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の一実施の形態に係る電源装置の構成を示す回路図である。
【図2】主スイッチング素子9のドレイン−ソース間電圧Vds、ドレイン電流Id、およびゲート−ソース間電圧Vgsを示すタイムチャートである。
【図3】図1に示したスイッチング電源100の出力電圧−出力電流特性を模式的に示した図である。
【図4】通常動作時における主スイッチング素子のドレイン−ソース間電圧を示した波形図である。
【図5】過電流保護時における主スイッチング素子のドレイン−ソース間電圧を示した波形図である。
【図6】間欠発振時における主スイッチング素子のドレイン−ソース間電圧を示した波形図である。
【図7】図1に示した抵抗素子5の抵抗値と発振波形との関係の一例を示した図である。
【図8】本発明の実施の形態に係る電源装置の適用例を示した図である。
【図9】図8に示した電源装置150の外観を示した模式図である。
【図10】図9に示したラベルに記載された文言の一例を説明するための図である。
【図11】従来の擬似共振型RCC方式スイッチング電源の要部を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下において、本発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0021】
図1は、この発明の一実施の形態に係る電源装置の構成を示す回路図である。図1を参照して、この発明の一実施の形態に係る擬似共振型RCC方式スイッチング電源100(以下、単に「スイッチング電源100」と称する)は、入力端子T1,T2、全波整流回路1、コンデンサー2,7,10、副スイッチング素子(NPNバイポーラトランジスタ)3、抵抗素子4〜6、インダクタ8、主スイッチング素子(NチャネルMOSトランジスタ)9、およびトランス11を備える。トランス11は、1次巻線12、2次巻線13、および補助巻線14を含む。2次巻線13には1次巻線12と逆極性の電圧が発生し、補助巻線14には1次巻線12と同極性の電圧が発生する。
【0022】
入力端子T1,T2間には、商用交流電圧VACが印加される。全波整流回路1は、入力端子T1,T2を介して与えられた商用交流電圧VACを全波整流する。コンデンサー2は、全波整流回路1の出力端子1aおよび基準電圧端子1b間に接続され、全波整流回路1の出力電圧を平滑化して直流電圧VDC1を生成する。すなわち全波整流回路1およびコンデンサー2は、直流電源を構成する。また、基準電圧端子1bは、基準電圧ノードに相当する。
【0023】
抵抗素子4,5は、端子1a,1b間に直列接続される。副スイッチング素子3のコレクタは抵抗素子4,5間のノードN4に接続され、そのエミッタは基準電圧端子1bに接続される。1次巻線12の一方端子は全波整流回路1の出力端子1aに接続され、1次巻線12の他方端子は主スイッチング素子9および抵抗素子6を介して基準電圧端子1bに接続される。コンデンサー7は、ノードN4と主スイッチング素子9のソースとの間に接続される。インダクタ8は、ノードN4と主スイッチング素子9のゲートとの間に接続される。主スイッチング素子9のドレインは、1次巻線12に接続される。コンデンサー10は、主スイッチング素子9のソースおよびドレイン間に接続される。
【0024】
コンデンサー7およびインダクタ8は、補助巻線14に生じた電圧を遅延させて主スイッチング素子9のゲートに与える遅延回路を構成する。遅延回路は、主スイッチング素子9のターンオンおよびターンオフのタイミングを調整してスイッチング損失を低減させる。遅延回路をコンデンサー7とインダクタ8で構成したので、非特許文献1の場合に比べて、部品点数が少なくなり、低コスト化を図ることができる。
【0025】
スイッチング電源100は、さらに、コンデンサー15,19、抵抗素子16,18,20、ツェナーダイオード17、ダイオード21、フォトカプラー22を備える。フォトカプラー22は、フォトダイオード23およびフォトトランジスタ24を含む。
【0026】
コンデンサー15および抵抗素子16は、補助巻線14の一方端子と主スイッチング素子9のノードN4との間に直列接続される。すなわちコンデンサー15および抵抗素子16は補助巻線14と主スイッチング素子9のゲートとに電気的に接続される。
【0027】
ツェナーダイオード17のカソードは補助巻線14の一方端子に接続され、そのアノードは抵抗素子18を介して副スイッチング素子3のベースに接続される。コンデンサー19は、副スイッチング素子3のベースと主スイッチング素子9のソースとの間に接続される。抵抗素子20は、コンデンサー19に並列接続される。ダイオード21のアノードは補助巻線14の一方端子に接続され、そのカソードはフォトトランジスタ24を介して副スイッチング素子3のベースに接続される。補助巻線14の他方端子は、基準電圧端子1bに接続される。
【0028】
副スイッチング素子3、コンデンサー19およびフォトカプラー22は、トランス11の2次側の整流回路から負荷40への出力電流が増大するほど主スイッチング素子9の発振周波数(スイッチング周波数)を低下させる周波数制御回路を構成する。
【0029】
スイッチング電源100は、さらに、ダイオード25、コンデンサー26,29,32、抵抗素子27,30,31、インダクタ28、シャントレギュレータ34、出力端子T3、および基準電圧端子T4を備える。ダイオード25、コンデンサー26,29、およびインダクタ28は、トランス11の2次巻線13に生じた電圧を整流する整流回路を構成する。
【0030】
ダイオード25のアノードは2次巻線13の一方端子に接続され、そのカソードはインダクタ28を介して出力端子T3に接続される。コンデンサー26の一方電極はダイオード25のカソードに接続され、その他方電極は2次巻線13の他方端子および基準電圧端子T4に接続される。コンデンサー29は、出力端子T3,T4間に接続される。抵抗素子30,31は、出力端子T3,T4間に直列接続される。抵抗素子30,31間のノードN30は、シャントレギュレータ34の参照電圧端子34aに接続される。
【0031】
抵抗素子27の一方電極はダイオード25のカソードに接続され、その他方電極はフォトダイオード23を介してシャントレギュレータ34のカソードに接続される。コンデンサー32は、抵抗素子27の他方電極とノードN30との間に接続される。抵抗素子33は、出力端子T3とシャントレギュレータ34のカソードとの間に接続される。シャントレギュレータ34のアノードは、基準電圧端子T4に接続される。負荷40は、出力端子T3,T4間に接続される。
【0032】
なお、本発明における主スイッチング素子の第1の電極、第2の電極および制御電極は、主スイッチング素子9のドレイン電極、ソース電極、およびゲート電極とそれぞれ対応する。
【0033】
また、本発明における第1の抵抗素子は、抵抗素子6と対応する。本発明における第2の抵抗素子は、抵抗素子5と対応する。本発明における第3の抵抗素子は、抵抗素子16と対応する。
【0034】
また、本発明における第1のコンデンサーは、コンデンサー10と対応する。本発明における第2のコンデンサーは、コンデンサー7に対応する。本発明における第3のコンデンサーは、コンデンサー15に対応する。
【0035】
次に、この擬似共振型RCC方式スイッチング電源の動作について説明する。商用交流電圧VACが入力端子T1,T2に印加されると、商用交流電圧VACは全波整流回路1で全波整流され、コンデンサー2で平滑化されて直流電圧VDC1となる。直流電圧VDC1は、トランス11の1次巻線12の一方端子に与えられる。また、出力端子1aから抵抗素子4を介してノードN4に電流が流れ、ノードN4の電圧が上昇する。ノードN4の電圧は、インダクタ8を介して主スイッチング素子9のゲートに与えられる。これにより、主スイッチング素子9および1次巻線12に電流が流れ始める。
【0036】
1次巻線12に電流が流れると、2次巻線13の一方端子には負電圧が発生し、ダイオード25に電流が流れず、トランス11にエネルギーが蓄積される。また、補助巻線14の一方端子には正電圧が発生し、この正電圧はコンデンサー15および抵抗素子16と、コンデンサー7およびインダクタ8からなる遅延回路を介して主スイッチング素子9のゲートに与えられる。これにより、主スイッチング素子9がターンオンする。
【0037】
直流電圧VDC2が高くなるほど、補助巻線14からダイオード21およびフォトカプラー22に含まれるフォトトランジスタ24を通じて流れる電流が増大するので、コンデンサー19に流れる電流が大きくなる。このため副スイッチング素子3のベース電圧の上昇速度は速くなる。逆に、直流電圧VDC2が低くなるほど、補助巻線14からダイオード21およびフォトトランジスタ24を通じて流れる電流が減少するので、コンデンサー19に流れる電流が小さくなる。このため副スイッチング素子3のベース電圧の上昇速度が遅くなる。すなわちフォトカプラー22は、コンデンサー19の充電電流を直流電圧VDC2に応じて設定する。
【0038】
ノードN30の電圧が予め定められた参照電圧に等しい場合は、シャントレギュレータ34のカソードからアノードに所定値の電流が流れる。ノードN30の電圧が参照電圧よりも高くなると、シャントレギュレータ34に流れる電流は、ノードN30の電圧と参照電圧との差電圧に応じて増大する。一方、ノードN30の電圧が参照電圧よりも低くなると、シャントレギュレータ34に流れる電流は、参照電圧とノードN30の電圧との差電圧に応じて減少する。
【0039】
したがって、直流電圧VDC2が所定値よりも上昇すると、シャントレギュレータ34に流れる電流が増大し、フォトダイオード23およびフォトトランジスタ24に流れる電流が増大する。これにより、副スイッチング素子3のオフ時間が短くなり、主スイッチング素子9のオン時間が短くなって直流電圧VDC2が低下する。
【0040】
逆に、直流電圧VDC2が所定値よりも低下すると、シャントレギュレータ34に流れる電流が減少し、フォトダイオード23およびフォトトランジスタ24に流れる電流が減少する。これにより、副スイッチング素子3のオフ時間が長くなり、主スイッチング素子9のオン時間が長くなって直流電圧VDC2が上昇する。したがって直流電圧VDC2を一定に保つことが可能となる。
【0041】
ツェナーダイオード17および抵抗18は、高入力時の過電流保護開始ポイントの補正用回路として機能する。過電流保護動作は、低入力時(たとえばAC85Vが入力端子T1,T2に入力した時)と、高入力時(たとえばAC132Vが入力端子T1,T2に入力した時)とでは、二次側出力で同じ大きさの電力が消費される場合には、一次回路に流れる電流(主スイッチング素子9のドレイン電流)が変化する。具体的には、低入力時には電流のピーク値が大きくなる一方で、高入力時には電流のピーク値が低下する。このため、過電流保護動作開始ポイントを設定するための抵抗6のみでは、入力電圧の変化によって過電流保護動作開始ポイントが変化する。高入力時にはピーク電流値が小さいために、過電流保護動作にいたるまでには二次側の電流を増やす必要がある。その結果、低入力時とは過電流保護動作開始ポイントが変化する。
【0042】
上記のような過電流保護動作開始ポイントの変化幅をできるだけ小さくするために、ツェナーダイオード17および抵抗18が用いられる。高入力時にはトランス11の主巻線12の両端に発生する電圧が上昇する。このため補助巻線14に発生する電圧も上昇する。また、二次側で電流を増やすと主スイッチング素子9のオンデューティが大きくなる(広がる)ので、補助巻線14に発生する電圧もオンデューティが大きくなった分だけ上昇する。このような特性を利用することで過電流保護動作開始ポイントを補正することができる。
【0043】
過電流保護開始ポイントの設定は、たとえば以下の順番で行なわれる。まず低入力(たとえば上記のようにAC85V)時における過電流保護動作開始ポイントを抵抗6によって設定する。次に一次側(電源側)の入力を高入力(たとえば上記のようにAC132V)に設定して、低入力時の過電流保護動作開始ポイントまで二次側の電流を増加させる。この際に、補助巻線14に発生する電圧をオシロスコープ等でモニターして、補助巻線14の発生電圧レベルを確認する。この値に応じてツェナーダイオード17の値(ツェナー電圧)を決定し、その後、抵抗18の値を調整することで過電流保護開始ポイントを微調整する。
【0044】
続いてスイッチング電源100の過電流保護動作について以下に説明する。まず低入力時には、二次側電流(負荷電流)の増大によって、主スイッチング素子9のドレイン電流が定格時より増える。このときの抵抗6の電位差によって、抵抗20を介して副スイッチング素子3をオンして急速に主スイッチング素子9をオフさせる。
【0045】
一方、高入力時には、二次側電流(負荷電流)の増大によって主スイッチング素子のドレイン電流が増加するが、低入力時における過電流動作開始ポイントでは、抵抗6に発生している電位差は定格時よりも大きくなっているものの、副スイッチング素子3をオンさせるだけの電位差は発生していない。その代わりに、補助巻線14に発生している電圧が高くなるとともに、二次側電流(負荷電流)の増大によって定格時のオンデューティよりもデューティが広がっていることで、補助巻線14に発生する電圧がさらに上昇する。
【0046】
その結果、ツェナーダイオード17の電圧が、上記手法によって決定された電圧値(ツェナー電圧)を超えることで、ツェナーダイオード17に電流が流れる。これによって、抵抗18を介して副スイッチング素子3のベースに電流が流れ込み副スイッチング素子3をオンし、主スイッチング素子9が急速にオフされて過電流保護動作が開始される。
【0047】
図2は、主スイッチング素子9のドレイン−ソース間電圧Vds、ドレイン電流Id、およびゲート−ソース間電圧Vgsを示すタイムチャートである。図2において、主スイッチング素子9のオフ期間とオン期間が交互に現れる。主スイッチング素子9がオフすると(時刻t0,t2,t4)、ドレイン−ソース間電圧Vdsはオーバーシュートして振動した後に直流電圧VDC1になる。
【0048】
オフ期間において、トランス11のエネルギーが放出されてゼロになると(時刻tA)、コンデンサー10と1次巻線12によって共振回路が形成され、ドレイン−ソース間電圧Vdsはコンデンサー10のキャパシタンスと1次巻線12のインダクタンスで決まる共振周波数で減衰振動する。このとき、トランス11の補助巻線14の一方端子に正電圧が発生し、この正電圧がコンデンサー15および抵抗素子16と、コンデンサー7およびインダクタ8からなる遅延回路によって所定の時間Td1だけ遅延されて主スイッチング素子9のゲートに与えられる。
【0049】
すなわち、補助巻線14の一方端子の電圧が急峻に立ち上げられると、インダクタ8が高インピーダンス状態になり、補助巻線14からコンデンサー15および抵抗素子16を介してコンデンサー7に電流が流れる。その後、補助巻線14の一方端子の電圧の時間変化(dV/dt)が小さくなるに従ってインダクタ8のインピーダンスが減少し、補助巻線14からコンデンサー15、抵抗素子16およびインダクタ8を介して主スイッチング素子9のゲートに電流が流れ、主スイッチング素子9のゲート−ソース間電圧Vgsが上昇する。
【0050】
このようにして、主スイッチング素子9がオンするタイミングをドレイン−ソース間電圧Vdsの谷点まで遅延させることにより、主スイッチング素子9のターンオン時のスイッチング損失を低減できる。また、コンデンサー10の電荷は、1次巻線12を介して平滑用のコンデンサー2に回生される。ゲート−ソース間電圧Vgsが主スイッチング素子9のしきい値電圧を越えると、主スイッチング素子9がオンし、ドレイン電流Idが上昇する(時刻t1,t3)。
【0051】
ドレイン電流Idが上昇すると、補助巻線14に発生する正電圧も上昇し、コンデンサー19が充電されて副スイッチング素子3のベース電圧が上昇する。ベース電圧が副スイッチング素子3のしきい値電圧を越えると、副スイッチング素子3がオンし、ノードN4の電圧が急峻に低下する。このとき、インダクタ8が高インピーダンス状態になり、コンデンサー7の電荷が副スイッチング素子3を介して放電される。その後、ノードN4の電圧の時間変化(dV/dt)が小さくなるに従ってインダクタ8のインピーダンスが減少し、主スイッチング素子9のゲートの電荷がインダクタ8および副スイッチング素子3を介して放電され、主スイッチング素子9がターンオフする。これにより、ゲート−ソース間電圧Vgsが滑らかに変化し、主スイッチング素子9のターンオフ時に発生するノイズが低減される。
【0052】
再び図1を参照してスイッチング電源100の動作をさらに説明する。直流電圧VDC2が高くなるほどコンデンサー19に流れる電流が大きくなるので、副スイッチング素子3のベース電圧の上昇速度は速くなる。したがって、副スイッチング素子3がオンするタイミングが早くなる。言い換えると主スイッチング素子9がオフするタイミングが早くなる。この結果、主スイッチング素子9のオン期間が短くなる。
【0053】
逆に、直流電圧VDC2が低くなるほどコンデンサー19に流れる電流が小さくなるので、副スイッチング素子3のベース電圧の上昇速度は遅くなる。したがって、副スイッチング素子3がオンするタイミングが遅くなる。言い換えると主スイッチング素子9がオフするタイミングが遅くなる。この結果、主スイッチング素子9のオン期間が長くなる。
【0054】
スイッチング電源100からの出力電流(2次側の整流回路からの出力電流)が小さい、すなわち負荷が小さいほど、トランス11にエネルギーを蓄えるための時間が短くなるので、主スイッチング素子9のスイッチング周波数(発振周波数)が高くなる。逆に、負荷が大きくなるほどトランス11にエネルギーを蓄えるための時間を長くしなければならないため主スイッチング素子9の発振周波数が低下する。
【0055】
トランス11の2次側の出力が過電流となった場合(たとえば負荷の増大、端子T3,T4の短絡、あるいは負荷40の短絡など)、トランス11の2次側の出力電流が増大することで抵抗素子6の電圧降下が大きくなり、抵抗20を介して副スイッチング素子3をオンさせることによって主スイッチング素子9のゲート−ソース間電圧が低下して主スイッチング素子9のドレイン電流が減少する。このため、トランス11に蓄積されるエネルギーが減少する。しかしトランス11の2次側の出力電流が限界(過電流レベル)に達しているため直流電圧VDC2が低下する。これにより過電流保護機能が動作する。抵抗素子6の抵抗値によって、直流電圧VDC2の低下が開始される出力電流値(過電流レベル)を設定することができる。
【0056】
直流電圧VDC2が低下すると、主スイッチング素子9のオフ期間に補助巻線14に発生する電圧も低下するため、コンデンサー19に逆方向に蓄積される電荷が減少する。このため副スイッチング素子3がオフしにくくなる。このため主スイッチング素子9のオン期間がさらに短くなる。したがって、出力電流、出力電圧がともに低下する。主スイッチング素子9のオン期間が短くなることで主スイッチング素子9の発振周波数がさらに低下する。
【0057】
トランス11は、2次巻線13によってスイッチング電源100の出力電圧(トランス11の2次側電圧)を生成するだけでなく、補助巻線14によって主スイッチング素子9のゲート−ソース間電圧Vgs(駆動電圧)も生成している。ゲート−ソース間電圧Vgsの波高値は、補助巻線14と2次巻線13との巻数比によって定められる。トランス11の2次側電圧が低下することでゲート−ソース間電圧Vgsも低下する。
【0058】
主スイッチング素子9のオン期間は、負荷あるいはスイッチング電源100の出力端子T3,T4が短絡するまで短くなり続ける。スイッチング電源100の過電流保護時に負荷がある一定の状態に達した場合、スイッチング電源100の出力電圧は所定値まで低下する。たとえば負荷が短絡状態になったときのスイッチング電源100の出力電圧は、ある最低値まで低下する。このときの主スイッチング素子9のゲート−ソース間電圧Vgsが主スイッチング素子9のしきい値電圧以下となるように、補助巻線14と2次巻線13との巻数比が予め定められる。これによって、主スイッチング素子9は、オン状態を維持できなくなり、間欠発振する。
【0059】
なお間欠発振は、主スイッチング素子9が発振状態と停止状態とを繰り返す場合を含むが、これに限定されるものではない。主スイッチング素子9に流れる電流が周期的に大小を繰り返す場合も間欠発振に含みうる。
【0060】
図3は、図1に示したスイッチング電源100の出力電圧−出力電流特性を模式的に示した図である。図3を参照して、スイッチング電源100の出力電圧−出力電流特性は「フの字特性」を有する。すなわち、出力電流IがI1に達するまでは出力電圧Vは略一定値(V1)であるが出力電流IがI1に達すると、過電流保護が開始される。過電流保護機能によって出力電圧Vが低下するとともに出力電流Iが低下する。出力電圧Vが所定値V2(たとえば最低値)まで低下すると、主スイッチング素子9が間欠発振する。
【0061】
RCC方式など自励発振を基本動作とするスイッチング電源においては、負荷状態に応じて発振周波数が変化しながら、制御が実行される。通常動作時にスイッチング電源の発振周波数(主スイッチング素子の発振周波数)が可聴周波数域に入った場合には、トランス等から音が発生する。この音がユーザに異音として聞こえる可能性がある。
【0062】
一方で、近年では機器の小型化が求められている。スイッチング電源においても発振周波数を上げることによって、トランスの小型化が実現されている。しかしながら、RCC方式の電源の場合、負荷が軽くなるほど発振周波数が高くなるため、軽負荷時の効率が大幅に低下する可能性がある。また、定格負荷動作時においても発振周波数を高くすることによって効率が低下する可能性がある。
【0063】
したがって、本発明の実施の形態では、通常の動作時における発振周波数は、可聴周波数域よりも高い周波数領域内に設定される。通常の動作時における発振周波数は、主スイッチング素子9、ダイオード25およびトランス11の特性等を考慮して設定されるが、一例を示すと、発振周波数は40〜60kHzの範囲に設定される。これによって、スイッチング電源100の通常時におけるスイッチング電源100の効率を高めることができる。
【0064】
なおRCC方式のスイッチング電源の場合、発振周波数fは、暫定的にある値に設定しておき、後から求められた不連続時間によって実際の値を計算することができる(たとえば「トランジスタ技術」(CQ出版社発行)2009年1月号193〜195頁参照)。
【0065】
発振周波数を定めるスイッチングの周期は、主スイッチング素子9の最大オン時間ton(max)と、2次側ダイオード(ダイオード25)の最小オン時間toff’(min)と、不連続時間tdelayとに分けて考えることができる。入力直流電圧(端子1a,1b間の電圧)が最小のときの各時間の比率(デューティ)を仮に決定し、暫定的に決定された発振周波数の逆数と、その比率との積によって、各時間を算出できる。
【0066】
次にトランス11を選定する(設計する)ことによって、トランス11の1次巻線のインダクタンスLpを算出することができる。不連続時間tdelayは、共振用コンデンサーであるコンデンサー10の静電容量Cと、トランス11の1次巻線12のインダクタンスLpを用いて以下の式(1)に従って表わされる。
【0067】
tdelay=π×(Lp×C)1/2 ・・・(1)
スイッチング電源100の実際の発振周波数は、上記の式(1)に従って求められた不連続時間tdelayと、予め算出された時間ton(max)およびtoff’(min)とを用いて以下の式(2)に従って定めることができる。
【0068】
f=1/T=1/{ton(max)+toff’(min)+tdelay} ・・・(2)
さらに本発明の実施の形態によれば、スイッチング電源100の過電流保護時において、主スイッチング素子9の発振周波数が可聴周波数域まで低下するように過電流レベルが設定される。過電流レベルを設定するために、抵抗素子6の抵抗値が予め調整される。これにより、スイッチング電源100の過電流保護時に通知音が発生する。抵抗素子6の抵抗値を定めるための方法は特に限定されず、たとえば計算によって算出されてもよいし、実験によって決定されてもよい。
【0069】
スイッチング電源100の通常動作時における主スイッチング素子の発振周波数が可聴周波数域よりも高いため、ユーザが聞こえる音は発生していない。すなわちスイッチング電源100の異常時にのみ通知音が発生するので、ユーザにスイッチング電源100の異常を通知することができる。
【0070】
さらに本発明の実施の形態によれば、スイッチング電源100の過電流保護時においてスイッチング電源100の出力電圧が所定値まで低下した場合(たとえば短絡時のように、2次側の整流回路の出力電圧が最低値まで低下した場合)には、主スイッチング素子9のゲートに与えられる電圧が主スイッチング素子9のしきい値電圧以下となる。このような電圧の関係が満たされるように、2次巻線13と補助巻線14との巻線比を含む回路定数が設定される。これにより主スイッチング素子9を間欠的に発振させることができる。主スイッチング素子9の発振周波数は可聴周波数域内にあるので、スイッチング電源100から間欠音を発生させることができる。
【0071】
なお、過電流保護が機能しているが間欠発振していない場合、スイッチング電源100からは連続音が発生する。このようにスイッチング電源100の異常の種類に応じて、音の発生態様を変えることができる。したがってユーザがスイッチング電源100の異常の種類を判別することができる。
【0072】
間欠発振は、補助巻線14と2次巻線13との巻数比を調整することで実現可能である。ただし、間欠発振を実現するための回路定数は、巻数比だけでなく、コンデンサー7、15の容量値および/または抵抗素子5,16の抵抗値を含んでもよい。
【0073】
たとえば主スイッチング素子9のゲート側に接続されるコンデンサー7,15の容量値を大きくする事で過電流保護動作時の電圧降下が急峻に変化する。具体的には電圧−電流特性が垂下型からフの字型へと変化する。また、副スイッチング素子3のコレクタに接続される抵抗素子5の抵抗値を小さくし、かつ、主スイッチング素子9のゲート側に接続される抵抗素子16の抵抗値を大きくすることでも同様の結果が得られる。上記のいずれの方法であっても、過電流保護時における補助巻線14の電圧を大きく低下させることができる。したがってスイッチング電源100を間欠発振させることができる。
【0074】
なお、一例では、抵抗素子5の抵抗値が補助巻線14の電圧の低下にとって最も支配的であり、次にコンデンサー7、15の容量値、最後に抵抗素子16の抵抗値となる。ただし調整が行なわれる定数は電源の容量などに応じて異ならせてもよい。
【0075】
図4は、通常動作時における主スイッチング素子のドレイン−ソース間電圧を示した波形図である。なお、コンデンサー15の容量値を95000pF、抵抗素子5の抵抗値を15kΩとした。図4を参照して、ドレイン−ソース間電圧の波形の時間間隔は約18.4μsである。したがって、通常動作時における発振周波数は約54.4kHzである。
【0076】
図5は、過電流保護時における主スイッチング素子のドレイン−ソース間電圧を示した波形図である。ただしスイッチング電源は、間欠発振していない。図5を参照して、ドレイン−ソース間電圧の波形の時間間隔は約540.6μsである。したがって、過電流保護時における発振周波数は約1.85kHzである。すなわち、過電流保護時における発振周波数は可聴周波数域(たとえば20Hz〜20kHz)に入っている。このときには、スイッチング電源は通知音として連続音を発生させる。
【0077】
図6は、間欠発振時における主スイッチング素子のドレイン−ソース間電圧を示した波形図である。図6(A)は、波形全体を示した図である。図6(B)は、図6(A)における丸囲みの部分の拡大図である。
【0078】
図6(A)を参照して、波形の時間間隔は、約4.22msであるので、周波数は約237.2Hzである。図6(B)を参照して、発振時における波形の時間間隔は、264.0μs、192.0μs、168.0μsである。したがって周波数は、それぞれ、3.78kHz、5.21kHz、5.95kHzとなる。すなわちスイッチング電源100は、間欠的に通知音を発生させる。
【0079】
また、抵抗素子5の抵抗値を小さくすることによって間欠発振の開始を早めることも可能である。
【0080】
図7は、図1に示した抵抗素子5の抵抗値と発振波形との関係の一例を示した図である。図7(A)は、抵抗素子5の抵抗値を47kΩに設定したときの発振波形(出力電圧−出力電流曲線)を示す。図7(B)は、抵抗素子5の抵抗値を27kΩに設定したときの発振波形(出力電圧−負荷電流曲線)を示す。
【0081】
図7(A)に示された発振波形では、発振周波数は約1.8kHz〜3.6kHzの可聴周波数であるものの、間欠発振は生じていない。これに対して図7(B)に示された発振波形において丸囲みの部分が間欠発振を示す。なお、図7(B)に示された発振波形において、発振周波数は、約464Hz〜2.6kHzの範囲であり、可聴周波数域内である。
【0082】
[スイッチング電源の適用例]
本発明の実施の形態に係る電源装置の用途は特に限定されるものではない。以下に、1つの適用例を示す。
【0083】
図8は、本発明の実施の形態に係る電源装置の適用例を示した図である。図8を参照して、スイッチング電源100は、増幅部151と電源装置150とが分離されたブースターの電源装置150に搭載される。電源装置150は増幅部151を動作させるための電源電圧(たとえばDC15V)を増幅部151に供給する。スイッチング電源100は、入力された交流電圧(たとえば日本国内では周波数が50Hzまたは60Hzの交流100V)をDC15Vに変換して出力する。
【0084】
電源装置150から増幅部151に電源電圧が供給されることによって、増幅部151は、アンテナ152からの入力信号を増幅する。増幅部151から電源装置150への入力信号は、電源装置150を通して図示しない受信装置(たとえばチューナーを内蔵したテレビジョン受像機)に送られる。
【0085】
電源装置150は、たとえばテレビジョン受像機のそばに配置される。増幅部151の電源電圧は電源装置150から同軸ケーブルを通して増幅部151に供給される。増幅部151の設置場所は特に限定されるものでなく、屋外および屋内のいずれに設置されてもよい。
【0086】
電源装置150は、ユーザの目の届きにくい場所(たとえばテレビジョン受像機と壁面端子との間の場所)に設置されることがある。電源装置150の異常が発生したときの通知方法としてランプ等の表示手段による通知方法を用いることが考えられる。しかし、ユーザの目の届きにくい場所に電源装置150が配置された場合、ユーザがその異常に気付きにくい可能性がある。
【0087】
これに対して、本発明の実施の形態によれば、電源装置150の異常時に電源装置150から通知音が発生する。したがって、ユーザの目の届きにくい場所に電源装置150が配置されていても、ユーザが電源装置150の異常に気付きやすくすることができる。
【0088】
さらに、本発明の実施の形態によれば、電源装置150の異常状態に応じて、発生させる音を連続音から間欠音に切換えることができる。これにより電源装置150の異常の種類が異なることにユーザが気付くことができる。
【0089】
図9は、図8に示した電源装置150の外観を示した模式図である。図9を参照して、電源装置150は、本発明の実施の形態に係るスイッチング電源100を収納した筐体161を有する。筐体161の表面には、電源装置150の異常の種類と電源装置150の通知音との関係を説明したラベル162が貼付される。
【0090】
図10は、図9に示したラベルに記載された文言の一例を説明するための図である。図9および図10を参照して、ラベル162には、「ピー」という連続音の発生時の異常について「ブースターの故障が考えられます」いうメッセージ、「ピッピッピッ」という間欠音の発生時の異常について「電源装置の故障が考えられます」とのメッセージが記載される。
【0091】
ブースターの故障とは、図8に示した増幅部151の故障に相当する。増幅部151の故障によって電源装置の出力電流が過電流レベルに達すると、「ピー」という連続音が発生する。これに対して、電源装置150の内部での故障(たとえば2次側の短絡)が発生した場合、電源装置150が間欠発振する。これにより「ピッピッピッ」という間欠音が発生する。ユーザはラベル162に記載のメッセージを確認することで、異常の原因を把握することができる。
【0092】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0093】
1 全波整流回路、2,7,10,15,19,26,29,32,61 コンデンサー、3 副スイッチング素子(NPNバイポーラトランジスタ)、4〜6,16,18,20,27,30,31,33,60 抵抗素子、8,28 インダクタ、9,62 主スイッチング素子(NチャネルMOSトランジスタ)、11,50 トランス、12,51 1次巻線、12,52 2次巻線、14,53 補助巻線、17 ツェナーダイオード、21,25,59 ダイオード、22 フォトカプラー、23 フォトダイオード、24 フォトトランジスタ、34 シャントレギュレータ、40 負荷、54 遅延回路、55 バイポーラトランジスタ,100 スイッチング電源、150 電源装置、151 増幅部、152 アンテナ、161 筐体、162 ラベル、N4,N30 ノード。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源装置であって、
1次巻線と補助巻線と2次巻線とを有するトランスと、
前記1次巻線に接続された第1の電極と、第2の電極と、前記補助巻線に生じた電圧を受ける制御電極とを有する主スイッチング素子と、
前記主スイッチング素子の前記第1および第2の電極に接続された第1のコンデンサーと、
前記補助巻線に生じた電圧を遅延させて前記主スイッチング素子の前記制御電極に与える遅延回路と、
前記トランスの前記2次巻線に生じた電圧を整流して負荷に供給される直流電圧を生成する整流回路と、
前記整流回路から前記負荷への出力電流が増大するほど前記主スイッチング素子の発振周波数を低下させる周波数制御回路と、
前記主スイッチング素子の前記第2の電極と基準電圧ノードとの間に接続されて、前記出力電流の過電流レベルを、その抵抗値によって設定する第1の抵抗素子とを備え、
前記出力電流が前記過電流レベルに達した場合には、前記電源装置を過電流から保護するために、前記周波数制御回路は、前記整流回路の出力電圧が低下するように前記発振周波数を低下させ、
前記電源装置の過電流保護時に通知音を発生させるために、前記電源装置の過電流保護時において前記周波数制御回路が前記発振周波数を可聴周波数域まで低下させるように、前記過電流レベルを設定するための前記第1の抵抗素子の抵抗値が予め設定される、電源装置。
【請求項2】
前記電源装置の過電流保護時において前記整流回路の前記出力電圧が所定値まで低下した場合に、前記主スイッチング素子の前記制御電極に与えられる電圧が前記主スイッチング素子のしきい値電圧以下となるように、前記2次巻線と前記補助巻線との巻線比を含む回路定数が設定され、それによって前記主スイッチング素子を間欠的に発振させる、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記電源装置は、
前記主スイッチング素子の前記制御電極と前記基準電圧ノードとの間に接続された第2の抵抗素子をさらに備え、
前記回路定数は、
前記第2の抵抗素子の抵抗値をさらに含む、請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記遅延回路は、
前記主スイッチング素子の前記制御電極と前記主スイッチング素子の前記第2の電極とに電気的に接続された第2のコンデンサーを含み、
前記電源装置は、
前記補助巻線と前記主スイッチング素子の前記制御電極とに電気的に接続された第3のコンデンサーをさらに備え、
前記回路定数は、
前記第2および第3のコンデンサーの容量値をさらに含む、請求項2または3に記載の電源装置。
【請求項5】
前記電源装置は、
前記第3のコンデンサーとともに前記補助巻線と前記主スイッチング素子の前記制御電極との間に直列接続された第3の抵抗素子をさらに備え、
前記回路定数は、
前記第3の抵抗素子の抵抗値をさらに含む、請求項4に記載の電源装置。
【請求項1】
電源装置であって、
1次巻線と補助巻線と2次巻線とを有するトランスと、
前記1次巻線に接続された第1の電極と、第2の電極と、前記補助巻線に生じた電圧を受ける制御電極とを有する主スイッチング素子と、
前記主スイッチング素子の前記第1および第2の電極に接続された第1のコンデンサーと、
前記補助巻線に生じた電圧を遅延させて前記主スイッチング素子の前記制御電極に与える遅延回路と、
前記トランスの前記2次巻線に生じた電圧を整流して負荷に供給される直流電圧を生成する整流回路と、
前記整流回路から前記負荷への出力電流が増大するほど前記主スイッチング素子の発振周波数を低下させる周波数制御回路と、
前記主スイッチング素子の前記第2の電極と基準電圧ノードとの間に接続されて、前記出力電流の過電流レベルを、その抵抗値によって設定する第1の抵抗素子とを備え、
前記出力電流が前記過電流レベルに達した場合には、前記電源装置を過電流から保護するために、前記周波数制御回路は、前記整流回路の出力電圧が低下するように前記発振周波数を低下させ、
前記電源装置の過電流保護時に通知音を発生させるために、前記電源装置の過電流保護時において前記周波数制御回路が前記発振周波数を可聴周波数域まで低下させるように、前記過電流レベルを設定するための前記第1の抵抗素子の抵抗値が予め設定される、電源装置。
【請求項2】
前記電源装置の過電流保護時において前記整流回路の前記出力電圧が所定値まで低下した場合に、前記主スイッチング素子の前記制御電極に与えられる電圧が前記主スイッチング素子のしきい値電圧以下となるように、前記2次巻線と前記補助巻線との巻線比を含む回路定数が設定され、それによって前記主スイッチング素子を間欠的に発振させる、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記電源装置は、
前記主スイッチング素子の前記制御電極と前記基準電圧ノードとの間に接続された第2の抵抗素子をさらに備え、
前記回路定数は、
前記第2の抵抗素子の抵抗値をさらに含む、請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記遅延回路は、
前記主スイッチング素子の前記制御電極と前記主スイッチング素子の前記第2の電極とに電気的に接続された第2のコンデンサーを含み、
前記電源装置は、
前記補助巻線と前記主スイッチング素子の前記制御電極とに電気的に接続された第3のコンデンサーをさらに備え、
前記回路定数は、
前記第2および第3のコンデンサーの容量値をさらに含む、請求項2または3に記載の電源装置。
【請求項5】
前記電源装置は、
前記第3のコンデンサーとともに前記補助巻線と前記主スイッチング素子の前記制御電極との間に直列接続された第3の抵抗素子をさらに備え、
前記回路定数は、
前記第3の抵抗素子の抵抗値をさらに含む、請求項4に記載の電源装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2011−239611(P2011−239611A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−110456(P2010−110456)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]