説明

電源装置

【課題】コストを低減するとともに占有面積を小さくすることができる電源装置を提供すること。
【解決手段】CPU電源140は、車両に搭載されてLCDモジュール110のバックライトとして用いられるLED112の動作電圧を生成するLEDバックライト回路116とともに用いられる。CPU電源140は、変動が許容される入力電圧から一定の出力電圧を生成する電源回路150と、LEDバックライト回路116の出力電圧によって充電されるコンデンサ160と、バッテリ電圧が所定値以上のときに、バッテリ電圧を電源回路150に供給し、バッテリ電圧が所定値よりも低くなったときに、コンデンサ160の端子電圧を電源回路150に供給する入力電圧切替回路としてのスイッチ回路164、検出IC166とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイコン(マイクロコンピュータ)やCPUなどに電源電圧を供給する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電源オフ時において一定時間直流電源電圧を保持するようにした電源回路が知られている(例えば、特許文献1参照、)。この電源回路では、直流安定化電源回路の入力側にコンデンサとトランジスタを設け、電源オフ時にこのトランジスタをオフするこでコンデンサの放電時定数を大きくして電圧低下を遅らせることにより、直流安定化電源回路の出力電圧が一定時間維持される。この電圧維持により、マイコンが電源オフ時に所定の動作を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−141064号公報(第1−2頁、図1−2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、表示装置とその制御部が含まれ、他の装置から入力される映像信号に基づく表示を行う車載のディスプレイ製品を考えた場合に、製品としての最低動作保証電圧が9Vで、6.5Vまでは通信機能については動作している必要がある。この製品に含まれるマイコンやCPUの動作電圧を5Vとすると、特許文献1に開示された電源回路を用いた場合には、直流安定化電源回路の入力側に設けられたコンデンサによって6.5Vから5Vまで低下するまでの電圧差が1.5Vしかないため、直流安定化電源回路の出力電圧である5Vを一定時間維持しようとすると、静電容量が大きいコンデンサを用いる必要があり、コストが増大するとともに占有面積も大きくなるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、コストを低減するとともに占有面積を小さくすることができる電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の電源装置は、車両に搭載されて液晶表示装置のバックライトとして用いられる発光ダイオードの動作電圧を生成するバックライト回路とともに用いられる電源装置であって、変動が許容される入力電圧から一定の出力電圧を生成する電源回路と、バックライト回路の出力電圧によって充電されるコンデンサと、バッテリ電圧が所定値以上のときに、バッテリ電圧を電源回路に供給し、バッテリ電圧が所定値よりも低くなったときに、コンデンサの端子電圧を電源回路に供給する入力電圧切替回路とを備えている。特に、上述したバックライト回路は、バッテリ電圧を昇圧して出力電圧を生成しており、電源回路の入力電圧の変動の許容範囲には、入力電圧切替回路によって入力電圧の切り替えが行われる所定値から、バックライト回路の出力電圧までが少なくとも含まれることが望ましい。
【0007】
一般に、車載に搭載される液晶表示装置のバックライトとして用いられる発光ダイオードの動作電圧はバッテリ電圧よりも高いため、この高い電圧をコンデンサに保持しておいて、バッテリ電圧低下時に電源回路の入力電圧として用いることにより、この入力電圧が電源回路が動作不能に陥る電圧まで下がる時間を長くすることができる。換言すれば、バッテリ電圧低下時に電源回路の正常動作を一定時間保証するために必要なコンデンサの静電容量を大幅に小さくすることができる。特に、コンデンサの静電容量とコストおよび占有面積はほぼ比例する関係にあるため、他の付加回路(入力電圧切替回路)の追加を考慮しても大幅なコスト低減および占有面積の小型化が可能となる。
【0008】
また、上述した入力電圧切替回路は、バッテリ電圧を検出するバッテリ電圧検出回路と、バッテリ電圧検出回路によってバッテリ電圧が所定値よりも低くなったときにコンデンサの端子電圧を電源回路に印加するスイッチ回路とを備えることが望ましい。これにより、バッテリ電圧の低下時に確実に入力電圧の切り替えを行って、電源回路の正常動作を維持することが可能となる。
【0009】
また、上述した電源回路へのバッテリ電圧の供給経路と、電源回路へのコンデンサの端子電圧の供給経路のそれぞれには、電流の逆流防止用素子が挿入されていることが望ましい。これにより、バッテリ電圧とコンデンサの端子電圧とを選択的に電源回路に入力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施形態のディスプレイ装置の構成を示す図である。
【図2】CPU電源の詳細構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用した一実施形態のディスプレイ装置について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
図1は、一実施形態のディスプレイ装置の構成を示す図である。図1に示すディスプレイ装置100は、車両に搭載されて外部装置(図示せず)から入力された映像信号を表示するためのものであり、LCD(液晶表示装置)モジュール110、LCD電源114、LEDバックライト回路116、映像IC120、映像IC電源122、入力I/F(インタフェース)124、CPU130、BUS I/F132、CPU電源140、コイル142、コンデンサ144を含んで構成されている。
【0013】
LCDモジュール110は、バックライトとしてのLED(発光ダイオード)112を内蔵しており、LCD電源114によって生成される複数の駆動電圧を用いて表示制御される。
【0014】
LEDバックライト回路116は、LED112を駆動するためのLED電源であり、例えば、バッテリ200の端子電圧(バッテリ電圧)である12Vを22Vに昇圧してLED112の動作電圧を生成する。この22Vは、VFが6個のLED素子を直列に接続する場合を想定したものであり、直列する素子数が異なる場合や、使用するLED素子のVFが異なる場合には、この動作電圧の値も変更される。
【0015】
映像IC120は、入力I/F124を介して入力される入力映像信号に対応する映像を表示するためにLCDモジュール110を制御する。映像IC電源122は、バッテリ電圧が入力されており、映像IC120の動作電圧を生成する。入力I/F(インタフェース)124は、外部装置が接続可能であって、外部装置から入力される映像信号を受信して映像ICに入力する。
【0016】
CPU130は、ディスプレイ装置100全体、具体的にはLEDバックライト回路116、映像IC120、映像IC電源122、LCD電源114の各動作を制御する。また、CPU130は、BUS I/F132を介して外部装置との間で各種信号の送受信(通信)が可能であり、例えば、外部装置から送られてくる割り込み信号を制御動作に反映させることが可能となる。
【0017】
CPU電源140は、CPU130の動作電圧を生成する。本実施形態では、バッテリ電圧の過度の低下時あるいは切断時に、CPU130は、ユーザ調整情報のEEP−ROM(図示せず)への待避や、LCDモジュール110の破損等を防止するためにLCD電源114の電源オフシーケンスの遵守、不自然な残像の発生を防止するために映像ICのオフシーケンスの遵守、などの各種制御を行う必要がある。このため、CPU130に供給される動作電圧(例えば5V)は、バッテリ電圧の過度の低下あるいは切断が発生しても、ある程度の時間維持している必要があり、CPU電源140ではこのような動作電圧維持のために工夫がなされている。なお、コイル142とコンデンサ144によってLCフィルタを形成しており、バッテリ200の端子電圧に含まれるノイズを低減している。
【0018】
図2は、CPU電源140の詳細構成を示す図である。図2に示すように、CPU電源140は、電源回路150、コンデンサ152、154、160、ダイオード156、162、170、スイッチ回路(SW)164、検出IC166、抵抗168を含んで構成されている。
【0019】
電源回路150は、CPU130に供給する5Vの動作電圧を生成する安定化電源回路であって、入力電圧が5V以上の所定範囲(例えば、5VからLEDバックライト回路116の出力電圧である22Vまでの範囲)で変動したときに5Vの一定電圧を生成する。電源回路150の入力側および出力側には、平滑用のコンデンサ152、154が接続されている。
【0020】
ダイオード156は、バッテリ電圧が過度に低下したときに電源回路150の入力側とバッテリ端子側との間を遮断する電流逆流防止用素子であり、コイル142とコンデンサ144によって形成されるLCフィルタと電源回路150と電源回路150の入力端子との間に、アノードがLCフィルタ側になるように挿入されている。
【0021】
コンデンサ160は、LEDバックライト回路116の出力端子にダイオード162を介して接続されており、LEDバックライト回路116の出力電圧(22V)に応じた電荷を保持する。このコンデンサ160は、バッテリ電圧が低下したときに、バッテリ200に代わって電源回路150に入力電圧を供給するためのものであり、例えば100μFの静電容量を有している。ダイオード162は、LEDバックライト回路116の出力電圧が低下したときにLEDバックライト回路116の出力側とコンデンサ160との間を遮断する電流逆流防止用素子であり、これらの間にカソードがコンデンサ160側になるように挿入されている。なお、LEDバックライト回路116の出力側に設けられたコンデンサ118は、LEDバックライト回路116の出力電圧を平滑するためのものである。
【0022】
スイッチ回路164は、一方端がコンデンサ160に接続され、他方端が電流逆流防止用素子としてのダイオード170を介して電源回路150の入力側に接続されている。スイッチ回路164は、バッテリ電圧が低下したときにオンされ、それ以外のときにはオフされる。このスイッチ回路164は、例えば、アナログスイッチ、FET、バイポーラトランジスタなどにより形成することができる。検出IC166は、バッテリ電圧の検出を行っており、バッテリ電圧が所定値(例えば6.5V)よりも低下したときにスイッチ回路164をオンする。なお、検出IC166は、抵抗168を介してコンデンサ160側から印加される電圧によって動作しており、バッテリ電圧低下時の確実な動作が確保されている。
【0023】
上述したLCDモジュール110が特許請求の範囲における液晶表示装置に、LEDバックライト回路116がバックライト回路に、スイッチ回路164、検出IC166、ダイオード156、170が入力電圧切替回路に、検出IC166がバッテリ電圧検出回路にそれぞれ対応する。
【0024】
本実施形態のCPU電源140(電源装置)はこのような構成を有しており、次にその動作を説明する。
【0025】
(正常時の動作)
バッテリ電圧が6.5V以上の正常時には、スイッチ回路164がオフされている。このとき、コンデンサ160は、LEDバックライト回路116の出力電圧によって充電され、コンデンサ160の両端電圧は、LEDバックライト回路116の出力電圧(22V)とほぼ同じ値に維持される(実際には、ダイオード162の順方向電圧分低くなる)。また、電源回路150は、LCフィルタおよびダイオード156を介して印加されるバッテリ電圧に基づいて一定(5V)の出力電圧を生成する。この出力電圧は、CPU130およびBUS I/F132に動作電圧として印加される。
【0026】
(電圧低下時)
バッテリ電圧が6.5Vよりも低下すると、検出IC166は、このバッテリ電圧の低下を検出してスイッチ回路164をオンする。以後、コンデンサ160の端子電圧(両端電圧)がダイオード170を介して電源回路150の入力側に印加される。電源回路150は、スイッチ回路164を介して印加されるコンデンサ160の端子電圧に基づいて一定(5V)の出力電圧を生成する。特に、コンデンサ160の端子電圧は、スイッチ回路164をオンする直前までLEDバックライト回路116の出力電圧である20V以上の高い値を維持しているため、スイッチ回路164がオンされた後にコンデンサ160の端子電圧が、電源回路150が正常動作可能な5V近傍まで低下するまでの時間を長くすることができる。
【0027】
このように、本実施形態のCPU電源140では、LEDバックライト回路116の高い出力電圧をコンデンサ160に保持しておいて、バッテリ電圧低下時に電源回路150の入力電圧として用いることにより、この入力電圧が電源回路150が動作不能に陥る電圧まで下がる時間を長くすることができる。すなわち、バッテリ電圧低下時に電源回路150の正常動作を一定時間(バッテリ電圧低下時に所定の処理を行うために必要なCPU130の一定の動作時間)保証するために必要なコンデンサ160の静電容量を大幅に小さくすることができる。特に、コンデンサ160の静電容量とコストおよび占有面積はほぼ比例する関係にあるため、検出IC166等の他の付加回路の追加を考慮しても大幅なコスト低減および占有面積の小型化が可能となる。
【0028】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、ディスプレイ装置100に備わったCPU電源140について本発明を適用したが、LCDモジュールのバックライトとしてLEDが用いられている装置であればLEDバックライト回路の出力電圧を利用することができるため、ディスプレイ装置100以外の各種装置についても広く本発明を適用することができる。
【0029】
また、上述した実施形態では、電源回路150によって生成される動作電圧によってCPU130を動作させる場合を考えたが、マイコンやメモリ等のCPU以外の動作時間を長くする場合にも本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
上述したように、本発明によれば、バッテリ電圧低下時に電源回路150の正常動作を一定時間保証するために必要なコンデンサ160の静電容量を大幅に小さくすることができ、大幅なコスト低減および占有面積の小型化が可能となる。
【符号の説明】
【0031】
100 ディスプレイ装置
110 LCDモジュール
112 LED
114 LCD電源
116 LEDバックライト回路
120 映像IC
122 映像IC電源
124 入力I/F
130 CPU
132 BUS I/F
140 CPU電源
142 コイル
144、152、154、160 コンデンサ
200 バッテリ
150 電源回路
156、162、170 ダイオード
164 スイッチ回路(SW)
166 検出IC
168 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されて液晶表示装置のバックライトとして用いられる発光ダイオードの動作電圧を生成するバックライト回路とともに用いられる電源装置であって、
変動が許容される入力電圧から一定の出力電圧を生成する電源回路と、
前記バックライト回路の出力電圧によって充電されるコンデンサと、
バッテリ電圧が所定値以上のときに、前記バッテリ電圧を前記電源回路に供給し、バッテリ電圧が所定値よりも低くなったときに、前記コンデンサの端子電圧を前記電源回路に供給する入力電圧切替回路と、
を備えることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記バックライト回路は、バッテリ電圧を昇圧して出力電圧を生成しており、
前記電源回路の入力電圧の変動の許容範囲には、前記入力電圧切替回路によって入力電圧の切り替えが行われる前記所定値から、前記バックライト回路の出力電圧までが少なくとも含まれることを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記入力電圧切替回路は、
バッテリ電圧を検出するバッテリ電圧検出回路と、
前記バッテリ電圧検出回路によってバッテリ電圧が所定値よりも低くなったときに前記コンデンサの端子電圧を前記電源回路に印加するスイッチ回路と、
を備えることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記電源回路へのバッテリ電圧の供給経路と、前記電源回路への前記コンデンサの端子電圧の供給経路のそれぞれには、電流の逆流防止用素子が挿入されていることを特徴とする電源装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−221143(P2012−221143A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85196(P2011−85196)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】