説明

電源装置

【課題】高効率な直列共振コンバータを提供する。
【解決手段】共振動作によって直流電力を交流電力に変換するインバータ回路20と、インバータ回路20によって変換された交流電力を絶縁するトランス30と、双方向スイッチQr11〜Qr14とQr21〜Qr24をブリッジ接続してなる整流回路40を備えた電源装置において、インバータ回路20のスイッチ素子Q1,Q2のオンオフ動作に同期して整流回路40の双方向スイッチQr11〜Qr14とQr21〜Qr24を選択的にオンオフ動作させることによって、トランス30の2次側に生じた交流電力を直流電力に変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電圧を他の直流電圧に変換して出力する電源装置に関し、詳しくは、直列共振回路を用いて直流電力を交流電力に変換し、高周波トランスで変換した後、整流回路を用いて所定の直流電力に変換する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直列共振を利用して直流電圧を所定の直流電圧に変換する電源装置として非特許文献1に開示されている電源装置を図5に示す。この電源装置は、インバータ2と、トランス3と、整流回路4とで構成されている。
【0003】
電源装置の動作の詳細は非特許文献1の"Analysis of Series-Resonant Converter"で説明されている。
インバータ2は、直流電源1の直流電圧Edを入力として、スイッチ素子Q1とQ2を交互にオンオフする。この動作により、コンデンサCrとインダクタLrとからなるLC回路で共振が起こる。この共振現象により発生した正弦波電流が、トランス3の1次巻線に流れる。トランス3の1次巻線に流れた電流は、変流されてトランス3の2次巻線に流れる。トランス3の2次巻線に流れる電流は、整流回路4で整流されて、平滑コンデンサCoを充電する。平滑コンデンサCoの電圧が、電源装置の出力電圧である。
【0004】
この電源装置では、出力電圧を所定値に維持するために、スイッチ素子Q1とQ2をオンオフする周波数を調節する。したがって、スイッチ素子Q1,Q2がオンオフする周波数が、LC回路の共振周波数に一致しない場合がある。このとき、スイッチ素子Q1,Q2はゼロ電流スイッチング(ゼロ電流でターンオンおよびターンオフするスイッチング)ができず、スイッチ素子Q1,Q2のスイッチング損失が増加するという問題がある。
【0005】
スイッチ素子Q1,Q2のスイッチング損失を増加させないために、スイッチ素子Q1とQ2のそれぞれに、コンデンサCZV1とCZV2を並列に接続している。並列接続されたコンデンサにより、スイッチ素子Q1とQ2はゼロ電圧スイッチング(ゼロ電圧でターンオンおよびターンオフするスイッチング)が可能となり、スイッチング損失の増加を防ぐことができる。
【0006】
図6は、直流電源1とインバータ2aとの間にチョッパ6を挿入して、インバータ2aの入力電圧を一定電圧に維持するようにした電源装置である。
この電源装置では、チョッパ6でインバータ2aの入力電圧を一定電圧に維持し、LC回路の共振周波数で、スイッチ素子Q1とQ2を交互にオンオフする。このようにすると、スイッチ素子Q1とQ2をLC回路の共振周波数に同期してオンオフすることができるので、コンデンサCZV1,CZV2を削除することができる。
【0007】
この電源装置の動作は、非特許文献2で説明されている。
なお、図5と図6に記載の電源装置において、スイッチ素子Q1,Q2をオンオフさせる周波数を可能な限り高い周波数とすれば、トランス3の小型化を図ることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Robert L. Steigerwald, “A Comparison of Half-Bridge Resonant Converter Topologies”, IEEE Transactions on Power Electronics, VOL.3, NO.2, APRIL, 1988
【非特許文献2】J Weber, et al., “Galvanic separated high frequency power converter for auxiliary railway supply”, EPE2003-Toulouse
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記した電源装置では、ゼロ電圧スイッチングまたはゼロ電流スイッチングを行うために、コンデンサCZV1,CZV2を設けるか、またはチョッパ6を設けなければならないという問題があった。また、コンデンサCZV1,CZV2を設けた場合であっても、スイッチ素子Q1,Q2がオンオフする周波数がLC回路の共振周波数からずれると、整流回路4のダイオードD1〜D4が逆回復するときにゼロ電圧スイッチングまたはゼロ電流スイッチングとはならないため、ダイオードD1〜D4で発生する損失が大きくなるという問題があった。
【0010】
本発明は上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、直列共振回路を用いて直流電力を交流電力に変換し、高周波絶縁トランスで絶縁した後、整流回路を用いて所定の直流電力に変換する電源装置であって、直流入力電圧を一定値に維持する回路を設けなくても、整流回路の損失を低減することができる電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、直流電力を共振動作によって交流電力に変換するインバータと、インバータによって変換された交流電力を1次巻線に入力して2次巻線に出力するトランスと、トランスの2次巻線に生じた交流電力を直流電力に変換する整流回路とを備えるようにした電源装置である。
【0012】
そして、整流回路を複数の双方向スイッチと平滑コンデンサで構成している。さらに、整流回路は、インバータの動作に同期して双方向スイッチをオンオフ動作させることによって、平滑コンデンサの両端電圧を所定値に維持する。すなわち、双方向スイッチは、インバータの動作に同期してオンオフすることにより、トランスの2次巻線に流れる電流がゼロのときにターンオンまたはターンオフのスイッチング動作を行う。
【0013】
そして、整流回路を、逆阻止能力を有するスイッチ素子を逆並列に接続した2つの双方向スイッチを直列に接続した双方向スイッチ直列回路で第1のレグと第2のレグを構成し、第1のレグと第2のレグとを平滑コンデンサに並列に接続し、第1のレグの接続中点をトランスの2次巻線の一端に接続し、第2のレグの接続中点をトランスの2次巻線の他端に接続して構成することができる。
【0014】
また、トランスの2次巻線を第1の巻線と第2の巻線とを直列に接続した構成とすることによって、整流回路を、1つの双方向スイッチからなる第1のレグと1つの双方向スイッチからなる第2のレグと平滑コンデンサとで構成することができる。
【0015】
すなわち、整流回路を、その一端がトランスの2次巻線の接続中点に接続される平滑コンデンサと、トランスの2次巻線の一端と平滑コンデンサの他端との間に接続される第1のレグと、トランスの2次巻線の他端と平滑コンデンサの他端との間に接続される第2のレグとで構成することもできる。
【0016】
この場合、トランスの2次巻線は、第1の巻線と第2の巻線が同じ巻数となるように構成するのが良い。
そして、整流回路がいずれの構成をとる場合であっても、双方向スイッチは、逆阻止能力を有するスイッチ素子を逆並列に接続した構成とするのが良い。
【0017】
また、整流回路がいずれの構成をとる場合であっても、双方向スイッチを構成するスイッチ素子をオンオフさせるための制御回路は、平滑コンデンサの電圧が所定値未満のとき、トランスから平滑コンデンサに向かって充電電流が流れるようにスイッチ素子をオンオフ動作させる。
【0018】
また、整流回路がいずれの構成をとる場合であっても、双方向スイッチを構成するスイッチ素子をオンオフさせるための制御回路は、平滑コンデンサの電圧が所定値より高いとき、平滑コンデンサからトランスに向かって放電電流が流れるようにスイッチ素子をオンオフ動作させる。
【0019】
そして、いずれの場合であっても、双方向スイッチのスイッチ素子がオンオフするタイミングは、インバータの動作に同期している。
すなわち、インバータを、第1のコンデンサと第2のコンデンサとを直列接続してなり、その両端が直流電源に接続されるとともに、その接続中点がトランスの一端に接続されるコンデンサ直列回路と、第1のスイッチ素子と第2のスイッチ素子とを直列接続してなり、コンデンサ直列回路に並列に接続されるスイッチ素子直列回路と、コンデンサとインダクタとが直列に接続され、その一端がスイッチ素子直列回路の接続中点に接続され、その他端がトランスの他端に接続されるLC共振回路とで構成し、インバータのスイッチ素子をオンオフさせるタイミングに同期して、整流回路のスイッチ素子をオンオフ動作させるようにする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電源装置を上記のように構成してインバータのスイッチ素子をオンオフさせるタイミングに同期して、整流回路のスイッチ素子をオンオフ動作させるので、整流回路のスイッチ素子は、ゼロ電流のタイミングでターンオンおよびターンオフすることができる。その結果、整流回路のスイッチ素子のスイッチング損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る電源装置の第1の実施形態を説明するための図である。
【図2】図1に示した電源装置各部の電圧波形および電流波形の説明をするための図であり、(a)はQ1のオンオフ状態、(b)はQ2のオンオフ状態、(c)はQ1の両端電圧、(d)はQ1に流れる電流、(e)はトランス30の1次巻線電圧、(f)はトランス30の1次巻線に流れる電流、(g)はトランス30の2次巻線電圧、(h)はトランス30の2次巻線に流れる電流、(i)は電源装置の出力電圧、(j)は整流回路40の出力電流、(k)は整流回路40においてオンするスイッチ素子である。
【図3】本発明に係る電源装置の第2の実施形態を説明するための図である。
【図4】図3に示した電源装置各部の電圧波形および電流波形の説明をするための図であり、(a)はQ1のオンオフ状態、(b)はQ2のオンオフ状態、(c)はQ1の両端電圧、(d)はQ1に流れる電流、(e)はトランス30aの1次巻線電圧、(f)はトランス30aの1次巻線に流れる電流、(g)はトランス30aの2次巻線電圧、(h)はトランス30aの第1の2次巻線に流れる電流、(i)はトランス30aの第2の2次巻線に流れる電流、(j)は電源装置の出力電圧、(k)は整流回路40aの出力電流、(l)は整流回路40aにおいてオンするスイッチ素子である。
【図5】従来技術に係る電源装置を説明するための図である。
【図6】従来技術に係る電源装置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図4に基づいて詳細に説明する。なお、図1〜図4において、図5および図6に示した構成要素と共通する構成要素には同符号を付している。
【0023】
図1は本発明に係る電源装置の第1の実施形態を説明するための図である。この電源装置は、インバータ20とトランス30と整流回路40と制御回路70で構成されている。
図において、直流電源1の電圧値はEdである。
【0024】
インバータ20は、コンデンサ直列回路とスイッチ素子直列回路とLC共振回路とで構成されている。コンデンサ直列回路は、コンデンサC1,C2を直列に接続した回路である。スイッチ素子直列回路は、スイッチ素子Q1,Q2を直列に接続した回路である。LC共振回路は、コンデンサCrとインダクタLrとを直列に接続した回路である。
【0025】
コンデンサ直列回路とスイッチ素子直列回路とは、直流電源1の両端に並列に接続されている。LC共振回路の一端はスイッチ素子直列回路の接続中点に接続され、他端はトランス30の1次巻線N1の一端に接続されている。コンデンサ直列回路の接続中点は、トランス30の1次巻線N1の他端に接続されている。
【0026】
なお、インダクタLrは、後述するトランス30の1次巻線N1の漏れインダクタンスを用いるものであっても良い。
トランス30は、鉄心31および1次巻線N1と2次巻線N2とで構成されている。1次巻線N1と2次巻線N2は、コンデンサC1,C2の電圧Ed/2と出力電圧Eoの比で、鉄心31に巻き回されている。トランス30は図5および図6のトランス3と別符号を付しているが、その機能において同一のものである。
【0027】
整流回路40は、スイッチ素子を逆並列接続した双方向スイッチを直列接続した第1と第2のレグと、平滑コンデンサCoとで構成されている。
第1のレグは、スイッチ素子Qr11とQr12とを逆並列接続した第1の双方向スイッチと、スイッチ素子Qr13とQr14とを逆並列接続した第2の双方向スイッチとを直列接続した回路である。第2のレグは、スイッチ素子Qr21とQr22とを逆並列接続した第3の双方向スイッチと、スイッチ素子Qr23とQr24とを逆並列接続した第4の双方向スイッチとを直列接続した回路である。
【0028】
スイッチ素子Qr11〜Qr14およびスイッチ素子Qr21〜Qr24は、いずれも逆阻止能力を有するスイッチ素子である。
第1のレグと第2のレグの一端は平滑コンデンサCoの正極端子に接続され、第1のレグと第2のレグの他端は平滑コンデンサCoの負極端子に接続されている。そして、第1のレグの接続中点は、トランス30の一端に接続されており、第2のレグの接続中点は、トランス30の他端に接続されている。
【0029】
平滑コンデンサCoの両端に生じる直流電圧が電源装置の出力電圧であり、その電圧値はEoである。電源装置の出力電圧は電圧検出器41で検出され、制御回路70に入力される。
【0030】
なお、図1において、スイッチ素子Q1とQ2は、ダイオードを逆並列に接続したIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)で記載しているが、高い周波数でオンオフ動作をすることができれば、自己消弧能力を有する他のスイッチ素子であっても良い。
【0031】
また、第1〜第4の双方向スイッチは、RB−IGBT(逆阻止絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)を逆並列接続した回路で記載しているが、逆阻止能力と自己消弧能力とを有する他のスイッチ素子を逆並列接続した構成であっても良い。また、ダイオードを逆並列接続した自己消弧能力を有するスイッチ素子を逆直列に接続した構成であっても良い。より望ましくは、逆阻止能力と自己消弧能力とを有するとともにオン電圧が低いスイッチ素子を逆並列に接続した構成とすれば、スイッチ素子の導通損失を少なくすることができる。
【0032】
上記主回路の構成に対して、制御回路70は、電源装置の出力電圧を所定値に維持するように、インバータ回路20のスイッチ素子Q1とQ2をオンオフするための制御信号G1,G2と、整流回路40のスイッチ素子Qr11〜Qr14とスイッチ素子Qr21〜Qr24とをオンオフするための制御信号Gr11〜Gr14と制御信号Gr21〜Gr24とを生成する。
【0033】
具体的には、制御回路70は、コンデンサCrとインダクタLrとを直列に接続したLC共振回路の共振周波数frを生成する。
次に、制御回路70は、生成した共振周波数frの半周期毎に、インバータ20のスイッチ素子Q1とQ2とを交互にオンオフするためのそれぞれの制御信号G1とG2とを生成する。したがって、スイッチ素子Q1とQ2とは、LC共振回路の共振周波数frの半周期毎に、交互にオンオフを行う。
【0034】
さらに、制御回路70は、インバータ20のスイッチ素子Q1がオンオフするタイミングに同期して、整流回路40の第1の双方向スイッチと第4の双方向スイッチの導通方向を切り換えるための制御信号を生成する。また、制御回路70は、スイッチ素子Q2がオンオフするタイミングに同期して、第2の双方向スイッチと第3の双方向スイッチの導通方向を切り換えるための制御信号を生成する。
【0035】
インバータ20のスイッチ素子Q1,Q2のオンオフ動作と整流回路40のスイッチ素子Qr11〜Qr14とスイッチ素子Qr21〜Qr24のオンオフ動作との関係を、図2を参照して説明する。
【0036】
図2は、上記構成を有する電源装置の各スイッチ素子の動作と各部の電圧・電流波形の関係を説明するための図である。
制御回路70によって生成された制御信号G1,G2によって、インバータ20のスイッチ素子Q1とQ2とは、交互にオンオフ動作を繰り返す(図2(a)、図2(b))。スイッチ素子Q1とQ2がオンオフする周波数は、上述のとおり、LC共振回路の共振周波数frである。
【0037】
スイッチ素子Q1の電圧Vce1は、スイッチ素子Q1がオンしているとき0[V]であり、スイッチ素子がオフしているとき(スイッチ素子がオンしているとき)はEd[V]である(図2(c))。一方、スイッチ素子Q2の電圧Vce2は、スイッチ素子Q1の両端電圧Vce1と逆の電圧となる(図示せず)。
【0038】
スイッチ素子Q1がターンオンしたとき、すなわちスイッチ素子Q1の電圧Vce1が0[V]になったとき、コンデンサCrとインダクタLrのLC共振回路にコンデンサC1の電圧Ed/2[V]が印加される。この電圧によって、コンデンサC1→スイッチ素子Q1→コンデンサCr→インダクタLr→トランス30の1次巻線N1→コンデンサC1の経路で電流Ic1が流れる。電流Ic1は、LC共振回路に生じた共振電流Ir1の正側の正弦半波電流である(図2(d))。
【0039】
一方、スイッチ素子Q2がターンオンしたとき、すなわちスイッチ素子Q2の電圧Vce1が0[V]になったとき、コンデンサCrとインダクタLrのLC共振回路にコンデンサC2の電圧Ed/2[V]が印加される。この電圧によって、コンデンサC2→トランス30の1次巻線N1→インダクタLr→コンデンサCr→スイッチ素子Q2→コンデンサC2の経路で電流Ic2が流れる。電流Ic2は、LC共振回路に生じた共振電流Ir1の負側の正弦半波電流である(図示せず)。
【0040】
したがって、スイッチ素子Q1とQ2がターンオンおよびターンオフするとき、スイッチ素子Q1,Q2に流れる電流は略0[A]である。
また、トランス30の1次巻線N1には電流Ic1とIc2とが合成された電流Ir1が流れる(図2(f))。
【0041】
トランス30の2次巻線N2には、共振電流Ir1が変流された電流Ir2が流れる(図2(h))。
このとき、トランス30の1次巻線N1には、スイッチ素子Q1,Q2のオンオフ動作に同期して、コンデンサC1とC2の電圧と略等しい振幅値の電圧VTr1が、正負に変化する矩形波交流電圧として印加される。矩形波交流電圧VTr1の正側振幅値は略Ed/2[V]であり、負側振幅値は略−Ed/2[V]である(図2(e))。
【0042】
トランス30の2次巻線N2には、1次巻線N1に印加された電圧が絶縁されかつ変圧された電圧VTr2が誘起する。2次巻線N2に誘起する矩形波交流電圧VTr2は第1〜第4の双方向スイッチによってコンデンサCoの電圧にクランプされる。したがって、2次巻線N2に誘起する矩形波交流電圧VTr2の正側振幅値は略Eo[V]であり、負側振幅値は略−Eo[V]である(図2(g))。
【0043】
ここで、制御回路70は、出力電圧Eoが所定値よりも低いとき、コンデンサCoを充電するように第1〜第4の双方向スイッチをオンオフさせる。一方、制御回路70は、出力電圧Eoが所定値よりも高いとき、コンデンサCoを放電するように第1〜第4の双方向スイッチをオンオフさせる。第1〜第4の双方向スイッチがオンオフするタイミングは、スイッチ素子Q1,Q2がオンオフするタイミングと同じタイミングである。
【0044】
例えば、図2(k)に示すように、出力電圧Eoが所定値よりも低くかつインバータ20のスイッチ素子Q1がターンオンしたとき、スイッチ素子Qr11とスイッチ素子Qr23とが同時にターンオンする。次に、出力電圧Eoが所定値よりも低くかつインバータ20のスイッチ素子Q2がターンオンしたとき、スイッチ素子Qr13とスイッチ素子Qr21とが同時にターンオンする。このように、出力電圧Eoが所定値よりも低いときは、スイッチ素子Qr11とスイッチ素子Qr23の組合せとスイッチ素子Qr13とスイッチ素子Qr21の組合せとで、交互にオンオフを繰り返す(図2(i)(k))。
【0045】
したがって、スイッチ素子Qr11,Qr13とスイッチ素子Qr21,Qr23とがターンオンおよびターンオフするとき、それぞれのスイッチ素子に流れる電流は略0[A]である。
【0046】
この動作によって電流Ir2は全波整流され、整流回路40から出力される電流IoはコンデンサCoを充電する直流電流(図2(j)の正極性の電流)となる。
次に、出力電圧Eoが所定値よりも高くかつインバータ20のスイッチ素子Q1がターンオンしたとき、整流回路40のスイッチ素子Qr14とスイッチ素子Qr22とがターンオンする。また、出力電圧Eoが所定値よりも高くかつインバータ20のスイッチ素子Q2がターンオンしたとき、整流回路40のスイッチ素子Qr12とスイッチ素子Qr24とがターンオンする(図2(i)(k))。
【0047】
したがって、スイッチ素子Qr12,Qr14とスイッチ素子Qr22,Qr24とがターンオンおよびターンオフするとき、それぞれのスイッチ素子に流れる電流は略0[A]である。
【0048】
この動作によって電流Ir2は全波整流され、整流回路40から出力される電流IoはコンデンサCoを放電する直流電流(図2(j)の負極性の電流)となる。
以上のとおり、整流回路40が平滑コンデンサCoの電圧を充電及び放電する動作によって、本実施形態の電源装置は出力電圧を所定値に維持することができる。
【0049】
さらに、整流回路40のスイッチ素子Qr11〜Qr14とQr21〜Qr24とは、いずれもゼロ電流でターンオンおよびターンオフするので、スイッチング損失を低減することができる。
【0050】
次に、図3を参照して、本発明に係る電源装置の他の実施形態について説明する。
図3は本発明に係る電源装置の第2の実施形態を説明するための図である。この電源装置は、インバータ20とトランス30aと整流回路40aと制御回路70aで構成されている。
【0051】
図において、直流電源1の電圧値はEdである。
インバータ20の構成は、図1に示した実施形態の構成と同じであるので、説明を省略する。
【0052】
トランス30aは、鉄心31および1次巻線N1と2次巻線N2で構成されている。2次巻線N2は、第1と第2の巻線N21,N22のそれぞれの一端を接続してセンタータップ構成とした巻線である。1次巻線N1と2次巻線N2の第1と第2の巻線N21,N22は、コンデンサC1,C2の電圧Ed/2と出力電圧Eoの比で、鉄心31に巻き回されている。すなわち、2次巻線の第1の巻線N21と第2の巻線N22の巻数は同じである。
【0053】
整流回路40aは、スイッチ素子を逆並列接続した第1と第3の双方向スイッチと、平滑コンデンサCoとで構成されている。第1の双方向スイッチは、スイッチ素子Qr11とQr12とを逆並列に接続してなるスイッチである。第3の双方向スイッチは、スイッチ素子Qr21とQr22とを逆並列に接続してなるスイッチである。スイッチ素子Qr11,Qr12およびスイッチ素子Qr21,Qr22は、いずれも逆阻止能力を有するスイッチ素子である。
【0054】
第1の双方向スイッチの一端はトランス30aの2次巻線の一端に接続され、第1の双方向スイッチの他端はコンデンサCoの正極端子に接続されている。第2の双方向スイッチの一端はトランス30aの2次巻線の他端に接続され、第2の双方向スイッチの他端はコンデンサCoの正極端子に接続されている。
【0055】
トランス30aの2次巻線のセンタータップは、コンデンサCoの負極端子に接続されている。
平滑コンデンサCoの両端に生じる直流電圧が電源装置の出力電圧であり、その電圧値はEoである。電源装置の出力電圧は電圧検出器41で検出され、制御回路70aに入力される。
【0056】
なお、図3において、スイッチ素子Q1とQ2は、ダイオードを逆並列に接続したIGBTで記載しているが、高い周波数でオンオフ動作をすることができれば、自己消弧能力を有する他のスイッチ素子であっても良い。
【0057】
また、第1と第3の双方向スイッチは、RB−IGBTを逆並列接続した回路で記載しているが、逆阻止能力と自己消弧能力を有する他のスイッチ素子を逆並列接続した構成であっても良い。また、ダイオードを逆並列接続した自己消弧能力を有するスイッチ素子を逆直列に接続した構成であっても良い。より望ましくは、逆阻止能力と自己消弧能力を有するとともにオン電圧が低いスイッチ素子を逆並列に接続した構成とすれば、スイッチ素子の導通損失を少なくすることができる。
【0058】
上記主回路の構成に対して、制御回路70aは、電源装置の出力電圧を所定値に維持するように、インバータ回路20のスイッチ素子Q1とQ2をオンオフするための制御信号G1,G2と、整流回路40aのスイッチ素子Qr11,Q12とQr21,22をオンオフするための制御信号Gr11,12,21,22を生成する。
【0059】
具体的には、制御回路70aは、コンデンサCrとインダクタLrとを直列に接続したLC共振回路の共振周波数frを生成する。
次に、制御回路70aは、生成した共振周波数frの半周期毎に、インバータ20のスイッチ素子Q1とQ2とを交互にオンオフするためのそれぞれの制御信号G1とG2とを生成する。したがって、スイッチ素子Q1とQ2とは、LC共振回路の共振周波数frの半周期毎に、交互にオンオフを行う。
【0060】
さらに、制御回路70aは、インバータ20のスイッチ素子Q1がオンオフするタイミングに同期して、整流回路40aの第1の双方向スイッチの導通方向を切り換えるための制御信号を生成する。また、制御回路70aは、スイッチ素子Q2がオンオフするタイミングに同期して、第3の双方向スイッチの導通方向を切り換えるための制御信号を生成する。
【0061】
インバータ20のスイッチ素子Q1,Q2のオンオフ動作と整流回路40aのスイッチ素子Qr11,12,21,22のオンオフ動作との関係を、図4を参照して説明する。
図4は、上記構成を有する電源装置の各スイッチ素子の動作と各部の電圧・電流波形の関係を説明するための図である。
【0062】
なお、図4(a)〜図4(f)までは、インバータ20の各部電圧・電流波形であり、図2(a)〜図2(f)に示した波形と同じであるため、説明を省略する。
トランス30aの2次巻線N2の巻線N21,N22には、1次巻線N1に印加された電圧が絶縁されかつ変圧された電圧VTr21,VTr22が誘起する。巻線N21に誘起する矩形波交流電圧VTr21は第1の双方向スイッチによってコンデンサCoの電圧にクランプされる。また、巻線N22に誘起する矩形波交流電圧VTr22は第3の双方向スイッチによってコンデンサCoの電圧にクランプされる。したがって、2次巻線N2の巻線N21,N22に誘起する矩形波交流電圧VTr21,VTr22の正側振幅値はいずれも略Eo[V]であり、負側振幅値はいずれも略−Eo[V]である(図4(g))。
【0063】
トランス30aの2次巻線N2の巻線N21とN22には、共振電流Ir1が変流された電流Ir21とIr22が流れる。2次巻線N2の巻線N21に流れる電流は、共振電流Ir1の正側半波を変流した電流である(図4(h))。一方、2次巻線N2の巻線N22に流れる電流は、共振電流Ir1の負側半波を変流した電流である(図4(i))。
【0064】
ここで、制御回路70aは、出力電圧Eoが所定値よりも低いとき、コンデンサCoを充電するように第1と第3の双方向スイッチをオンオフさせる。一方、制御回路70aは、出力電圧Eoが所定値よりも高いとき、コンデンサCoを放電するように第1と第3の双方向スイッチをオンオフさせる。
【0065】
例えば、図4(l)に示すように、出力電圧Eoが所定値よりも低くかつインバータ20のスイッチ素子Q1がターンオンしたとき、スイッチ素子Qr11が同時にターンオンする。次に、出力電圧Eoが所定値よりも低くかつインバータ20のスイッチ素子Q2がターンオンしたとき、スイッチ素子Qr21が同時にターンオンする。このように、出力電圧Eoが所定値よりも低いときは、スイッチ素子Qr11とスイッチ素子Qr21が、交互にオンオフを繰り返す(図(j)(l))。
【0066】
したがって、スイッチ素子Qr11,Qr21がターンオンおよびターンオフするとき、それぞれのスイッチ素子に流れる電流は略0[A]である。
スイッチ素子Qr11,Qr21のオンオフ動作によって電流Ir21とIr22とは整流され、整流回路40aから出力される電流IoはコンデンサCoを充電する直流電流(図4(k)の正極性の電流)となる。
【0067】
次に、出力電圧Eoが所定値よりも高くかつインバータ20のスイッチ素子Q1がターンオンしたとき、整流回路40aのスイッチ素子Qr12がターンオンする。また、出力電圧Eoが所定値よりも高くかつインバータ20のスイッチ素子Q2がターンオンしたとき、整流回路40aのスイッチ素子Qr22がターンオンする(図4(j)(l))。
【0068】
したがって、スイッチ素子Qr12,Qr24がターンオンおよびターンオフするとき、それぞれのスイッチ素子に流れる電流は略0[A]である。
スイッチ素子Qr12,Qr22のオンオフ動作によって電流Ir21とIr22は全波整流され、整流回路40aから出力される電流IoはコンデンサCoを放電する直流電流(図4(k)の負極性の電流)となる。
【0069】
以上のとおり、整流回路40aが平滑コンデンサCoの電圧を充電及び放電する動作によって、本実施形態の電源装置は出力電圧を所定値に維持することができる。
さらに、整流回路40aのスイッチ素子Qr11,12とスイッチ素子Qr21,22とは、いずれもゼロ電流でターンオンおよびターンオフするので、スイッチング損失を低減することができる。
【符号の説明】
【0070】
1・・・直流電源、2,2a,20,20a・・・インバータ、3,30,30a・・・トランス、4,40,40a・・・整流器、5・・・負荷、6・・・チョッパ、70,70a・・・制御回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を共振動作によって交流電力に変換するインバータと、
1次巻線に入力された前記交流電力を変換して2次巻線に出力するトランスと、
前記インバータの動作に同期して双方向スイッチを選択的にオンオフ動作させることによって前記トランスの2次巻線に生じた交流電力を直流電力に変換する整流回路と、
を備えたことを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記整流回路は、複数の双方向スイッチと平滑コンデンサとで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記トランスは1つの2次巻線を有しており、
前記整流回路は、2つの双方向スイッチを直列に接続した第1のレグと2つの双方向スイッチを直列に接続した第2のレグと平滑コンデンサとを備え、
前記第1のレグと前記第2のレグを前記平滑コンデンサに並列に接続し、
前記第1のレグの接続中点を前記トランスの2次巻線の一端に接続し、
前記第2のレグの接続中点を前記トランスの2次巻線の他端に接続した、
ことを特徴とする請求項2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記トランスは、第1の巻線と第2の巻線とを直列に接続した2次巻線を有しており、
前記整流回路は、1つの双方向スイッチからなる第1のレグと1つの双方向スイッチからなる第2のレグと平滑コンデンサとを備え、
前記トランスの2次巻線の接続中点を前記平滑コンデンサの一端に接続し、
前記第1のレグを前記トランスの2次巻線の一端と前記平滑コンデンサの他端との間に接続し、
前記第2のレグを前記トランスの2次巻線の他端と前記平滑コンデンサの他端との間に接続した、
ことを特徴とする請求項2に記載の電源装置。
【請求項5】
前記トランスの2次巻線の第1の巻線と第2の巻線の巻数が同じであることを特徴とする請求項4に記載の電源装置。
【請求項6】
前記双方向スイッチは、逆阻止能力を有するスイッチ素子を逆並列に接続してなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項7】
前記整流回路は、前記双方向スイッチを構成するスイッチ素子をオンオフ動作させるための制御回路を備え、
前記制御回路は、前記平滑コンデンサの電圧が所定値以下のとき、前記トランスから前記平滑コンデンサに向かって充電電流が流れるように前記スイッチ素子を選択的にオンオフ動作させる
ことを特徴とする請求項6に記載の電源装置。
【請求項8】
前記整流回路は、前記双方向スイッチを構成するスイッチ素子をオンオフ動作させるための制御回路を備え、
前記制御回路は、前記平滑コンデンサの電圧が所定値より高いとき、前記平滑コンデンサから前記トランスに向かって放電電流が流れるように前記スイッチ素子を選択的にオンオフ動作させる
ことを特徴とする請求項6に記載の電源装置。
【請求項9】
前記インバータは、
第1のコンデンサと第2のコンデンサとを直列接続してなり、その両端が直流電源に接続されるとともに、その接続中点が前記トランスの一端に接続されるコンデンサ直列回路と、
第1のスイッチ素子と第2のスイッチ素子とを直列接続してなり、前記コンデンサ直列回路に並列に接続されるスイッチ素子直列回路と、
コンデンサとインダクタとが直列に接続され、その一端が前記スイッチ素子直列回路の接続中点に接続され、その他端が前記トランスの他端に接続されるLC共振回路と、
を備え、
前記制御回路は、前記第1と第2のスイッチ素子のオンオフ動作に同期して、前記整流回路のスイッチ素子を選択的にオンオフ動作させる
ことを特徴とする請求項7または請求項8のいずれかに記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−110786(P2013−110786A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251612(P2011−251612)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】