説明

電源装置

【課題】自動車が衝突ないし転倒した場合に、その衝撃力を使用して、回転機械への給電を遮断すると同時に平滑コンデンサに蓄えられた電荷を放電することが可能な電源装置を得る。
【解決手段】高圧直流電源部10と、回転機械50を駆動するインバータ40と、高圧直流電源部10とインバータ40とを接続する一対の直流母線11と12と、インバータ40と並列に接続される平滑コンデンサ60と、平滑コンデンサ60と並列に接続されリレー70と抵抗80とを直列に接続した直列回路と、直流母線11の線路上に設置される接合部20とを備え、接合部20は、所定の外力が加わった場合、直流母線11の導通を遮断し、かつ、リレー70を閉状態にすることで平滑コンデンサ60の電荷を放電させる機構を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気自動車やハイブリッド自動車の電源装置において、直流電源から回転機械への電力供給手段と自動車が衝突ないし転倒した場合の電力遮断手段と平滑コンデンサの電荷解放手段とを有する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電源装置においては、自動車の衝突時に電源装置が変位することにより、平滑コンデンサの電荷を放電用抵抗によって放電する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、従来の電源装置においては、自動車の衝突時にコントローラ内の衝突または衝突予測の検出手段からの指令により、バッテリからの電力供給を遮断状態に制御し、平滑コンデンサの電荷を放電状態に制御する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−125183号公報(第4頁、第1図)
【特許文献2】特開2006−224772号公報(第3−5頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気自動車やハイブリッド自動車が衝突ないし転倒した場合には、速やかに回転機械への給電を遮断し蓄電部品の電荷を放電しなければならない。
従来の電源装置では、蓄電部品である平滑コンデンサの電荷放電手段を備えているが、直流電源から回転機械への電力遮断手段を備えていない。また、自動車の衝突ないし転倒時に、電源装置以外のコントローラの機能が存続していなければ直流電源から回転機械への電力遮断が実施できないという問題点があった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、自動車が衝突ないし転倒した場合に電力供給および遮断手段以外の機能存否に係わらず、衝突ないし転倒の衝撃力を使用して、回転機械への給電を遮断すると同時に平滑コンデンサに蓄えられた電荷を直ちに放電することができる電源装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る電源装置においては、直流電源と、前記直流電源から入力された直流電力を交流電力に変換して回転機械を駆動するインバータと、前記直流電源と前記インバータとを接続する一対の直流母線と、前記一対の直流母線間に前記インバータに対して並列に接続される平滑コンデンサと、前記平滑コンデンサに対して並列に接続され、リレーと抵抗とを直列に接続した直流回路と、前記直流母線の線路上に設置される接合部とを備えた電源装置であって、前記接合部は、所定の外力が加わった場合、前記直流母線の導通を遮断する第1の遮断機構を有し、かつ、前記リレーを閉状態にすることで前記平滑コンデンサの電荷を前記抵抗によって放電させる第2の遮断機構を有するものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明は、直流母線上に接合部を設置することにより、自動車が衝突ないし転倒した場合に、電力供給および遮断手段以外の機能存否に係わらず、衝突ないし転倒の衝撃力を使用して、回転機械への給電を遮断すると同時に平滑コンデンサに蓄えられた電荷を直ちに放電することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の第1の実施の形態における電源装置のブロック図である。
【図2】この発明の第1の実施の形態における接合部の模式断面図である。
【図3】この発明の第1の実施の形態における接合部の遮断状態の一例を表わす模式断面図である。
【図4】この発明の第1の実施の形態における接合部の遮断状態の一例を表わす模式断面図である。
【図5】この発明の第1の実施の形態における接合部の遮断状態の一例を表わす模式断面図である。
【図6】この発明の第1の実施の形態における接合部の遮断状態の一例を表わす模式断面図である。
【図7】この発明の第5の実施の形態における接合部の遮断状態の一例を表わす模式断面図である。
【図8】この発明の第6の実施の形態における交差部の第4の導体の一例を表わす模式断面図である。
【図9】この発明の第7の実施の形態における接合部を2つ設置した場合の電源装置のブロック図である。
【図10】この発明の第9の実施の形態における接合部を設置した高圧直流電源部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明を実施するための第1の実施の形態における電源装置のブロック図である。まず、電気自動車やハイブリッド自動車の電源装置について図1を用いて説明する。直流電源である高圧直流電源部10とインバータ40とは一対の直流母線によって接続されている。一対の直流母線のうちの一方の直流母線は、直流母線11およびインバータ用母線31で構成され、他方の直流母線を直流母線12とする。高圧直流電源部10が出力する直流電力は、一対の直流母線11と、直流母線12とに給電される。一方の直流母線11は、接合部20において、インバータ用母線31と連結し、これにより接合部20は直流母線の線路上に設置される。インバータ40は、インバータ用母線31と他方の直流母線12とによって供給される直流電力を、図示していないが制御ユニットからのトルク指令信号に応じた交流電力に変換して、車輪を駆動する回転機械50へ供給する。なお、インバータ40近傍での直流母線12を、以後の説明の簡便のためにインバータ用母線32とする。
【0010】
インバータ40の近傍において、インバータ用母線31と、インバータ用母線32との間に、供給直流電力の電圧値安定を目的とした大容量の平滑コンデンサ60が接続される。この平滑コンデンサ60の電荷を放電させるために、リレー70と放電抵抗80とを直列に接続した直流回路を、接合部20と平滑コンデンサ60の中間位置に、インバータ用母線31とインバータ用母線32とに跨って設置する。
【0011】
リレー70は、スイッチ部71と電磁石72とから構成される。電磁石72に電流が流れない場合、スイッチ部71は内部の弾性力により閉状態、すなわち、リレー70は導通状態になる。反対に、電磁石72に電流が流れると、電磁石72の作用で、スイッチ部71は内部の弾性力に抗して開状態、すなわち、リレー70は遮断状態になる。リレー70内の電磁石72の一方の端子は、リレー制御線73を通して、接合部20に接続される。また、リレー70内の電磁石72の他方の端子は、低圧直流電源90を経由した後、リレー制御線74を通して、接合部20に接続される。
【0012】
次に、接合部20の構造について説明する。図2は接合部20の一実施例を示す模式断面図である。図2(a)は接合部の直流母線側の模式断面図、図2(c)は接合部のインバータ母線側の模式断面図、図2(b)は接合部全体の模式断面図を示す。接合部20は、第1の遮断機構と第2の遮断機構から構成され、第1の遮断機構は、第1の導体である直流母線11、第2の導体であるインバータ用母線31、および直流母線11とインバータ用母線31とを接続する後述の接続部の一部である第3の導体201で構成されている。また、第2の遮断機構は、第1の導体である直流母線11、第2の導体であるインバータ用母線31、および直流母線11とインバータ用母線31とに対して、電気的に絶縁して交差する後述の交差部の一部である第4の導体202で構成されている。
【0013】
接合部20において、直流母線11は、第1の直流母線凸状部211と第2の直流母線凸状部212とを有する。接合部20において、インバータ用母線31は、第1の直流母線凸状部211に相対する位置に第1のインバータ用母線凸状部231を、第2の直流母線凸状部212に相対する位置に第2のインバータ用母線凸状部232を、それぞれ有する。接合部20において、直流母線11のインバータ用母線31に相対する面と、第1の直流母線凸状部211の側面218および第2の直流母線凸状部212の側面219とには、電気的に絶縁処理を施した絶縁体213を形成する。同様に、接合部20において、インバータ用母線31の直流母線11に相対する面と、第1のインバータ用母線凸状部231の側面238および第2のインバータ用母線凸状部232の側面239とには、電気的に絶縁処理を施した絶縁体233を形成する。
【0014】
第1の直流母線凸状部211と第1のインバータ用母線凸状部231との互いに相対する表面には、半球状あるいは略半球状の窪み214と窪み234が、それぞれ設けられている。窪み214の窪み内面は、直流母線11と導通状態である。同じく、窪み234の窪み内面は、インバータ用母線31と導通状態である。窪み214と窪み234に、全部あるいは一部が挿入可能な球状あるいは略球状の第3の導体201を窪み214と窪み234との空隙に挿入することにより、直流母線11とインバータ用母線31との通電を可能にする。ここで、接続部は、第1の直流母線凸状部211、第1のインバータ用母線凸状部231、窪み214、窪み234、および第3の導体201で構成される。
【0015】
一方、第2の直流母線凸状部212表面から直流母線11を貫通し、第2の直流母線凸状部212の反対面である面215で開口するように、細孔216を空ける。細孔216の内壁と面215の開口部周辺と第2の直流母線凸状部212の開口部周辺とには、電気的に絶縁処理を施した絶縁体217を形成する。同様に、第2のインバータ用母線凸状部232表面からインバータ用母線31を貫通し、第2のインバータ用母線凸状部232の反対面である面235で開口するように、細孔236を空ける。細孔236の内壁と面235の開口部周辺と第2のインバータ母線凸状部232の開口部周辺とには、電気的に絶縁処理を施した絶縁体237を形成する。細孔216と細孔236には、細くて硬いが折れやすい第4の導体202が貫通している。例えば、第4の導体としては、針状導体が考えられる。第4の導体202の面215側の端は、リレー制御線73と接続している。第4の導体202の面235側の端は、リレー制御線74と接続している。ここで、交差部は、上記の第2の直流母線凸状部212、第2のインバータ用母線凸状部232、細孔216、細孔236、および第4の導体202で構成される。
【0016】
接合部20は、通常、上記のように構成されているので、直流電力は直流母線11から第3の導体201を経由してインバータ用母線31へ供給される。リレー70内の電磁石72には、第4の導体202を経由して電流が流れるため、リレー70は開状態になっている。
【0017】
ここで、窪み214の形状と窪み234の形状および第3の導体201の形状は、所定の外力が接合部20に加えられた場合には、第3の導体201が窪み214ないし窪み234から外れ、接続部の一部である第3の導体201が所定の位置から外れるような形状に設計する。加えて、第1の直流母線凸状部211の側面218と第1のインバータ用母線凸状部231の側面238とは、段差を形成するなどして、第3の導体201が窪み214ないし窪み234に容易に戻らない形状に設計する。更に、第2の直流母線凸状部212の側面219と第2のインバータ用母線凸状部232の側面239とは、段差を形成するなどして、第3の導体201が容易に乗り越えられない形状に設計する。なお、所定の外力とは、自動車が衝突ないし転倒した場合に想定される衝撃力(力積)の値である。この衝撃力を受ける場所としては、自動車の前面、側面および後面などの色々な場所が考えられる。
【0018】
上記のように設計された接合部20において、自動車が衝突ないし転倒した場合の接合部20の変化の例を図3から図6の接合部の遮断状態の一例を表わす模式断面図を用いて説明する。自動車が衝突ないし転倒した場合、第3の導体201は、図3から図5に示すように、直流母線11の絶縁体213ないしインバータ用母線31の絶縁体233に接触して、あるいは、図6に示すように接合部20から外れて、直流母線11とインバータ用母線31との間の通電を遮断し、かつ、容易に通電を復帰させることはない。
【0019】
同時に、自動車が衝突ないし転倒した場合、第4の導体202は、第2の直流母線凸状部212と第2のインバータ用母線凸状部232との接触箇所近傍で、図3から図6に示すように、直流母線側第4の導体202aとインバータ用母線側第4の導体202bとに切断され、リレー制御線73とリレー制御線74との間の導通を遮断する。リレー制御線73とリレー制御線74との導通が遮断されることによって、リレー70内の電磁石72はリレー70内のスイッチ部71の弾性力に抗する力を失い、リレー70は導通状態に変化する。
【0020】
リレー70が導通状態になることによって、平滑コンデンサ60と放電抵抗80とがリレー70を介して接続され、既に直流母線11から第3の導体201を介してインバータ用母線31へ給電されることのなくなった平滑コンデンサ60に蓄えられていた電荷は、放電抵抗80により熱として開放される。
【0021】
以上のように、接合部20は構成されるので、自動車が衝突ないし転倒した場合には、接合部20以外の機能存否に係わらず、その衝撃力を使用して、インバータ40や平滑コンデンサ60への給電を遮断すると同時に、平滑コンデンサ60に蓄えられた電荷を直ちに放電することが可能である。また、接合部20は、高圧電源部10と平滑コンデンサ60の間であれば、どこへでも配置することが可能である。
【0022】
また、窪み214と窪み234および第3の導体201が、2次元平面において受ける力が等しくなるような等方性の形状であることから、自動車が衝突ないし転倒した場合に接合部20が受ける衝撃力の方向性に因らずに、インバータ40や平滑コンデンサ60への給電を遮断すると同時に、平滑コンデンサ60に蓄えられた電荷を直ちに放電する効果もある。
【0023】
なお、本実施の形態1では、第1の遮断機構を凸状部の窪みと導体で構成したが、第2の遮断機構のような棒状導体をそれぞれの母線に形成した孔に母線と導通するように保持し、所定の外力により、この棒状導体が折れることで母線間の通電が遮断されるように構成しても良い。このように第1の遮断機構を構成することで、この部分の形状を簡易なものとし、製造費用を削減することも可能となる。また、第2の遮断機構を第1の遮断機構と同じような球状導体を用いて形成しても同様な効果を得ることが可能である。
【0024】
実施の形態2.
実施の形態1では、接合部20において、第1の直流母線凸状部211と第1のインバータ用母線凸状部231と第3の導体201が、それぞれ1個ずつで形成される1対の接続部のみで直流電力を供給する様に記載したが、複数対の接続部、即ち、複数対の第1の直流母線凸状部、第1のインバータ用母線凸状部、第3の導体で接合部20を構成することもある。
【0025】
本実施の形態2においては、実施の形態1で記載した所定の外力が接合部20に加えられた場合に、接合部20の全ての接続部で第3の導体201が第1の直流母線凸状部の窪み211ないし第1のインバータ用母線凸状部の窪み231から外れるようにそれぞれの窪みの形状および第3の導体の形状を設計する。
【0026】
このように接合部20を構成することにより、自動車が衝突ないし転倒した場合には、接合部20以外の機能存否に係わらず、その衝撃力を使用して、インバータ40や平滑コンデンサ60への給電を遮断すると同時に、平滑コンデンサ60に蓄えられた電荷を直ちに放電することを可能にするのみならず、接触抵抗を小さくでき、接合部20での消費電力を小さくすることが可能になり、高圧直流電源部10の小型化または自動車の走行距離の伸長が可能になる。
【0027】
また、直流母線11からインバータ用母線31への電流量を大きくすることが可能になり、回転機械50に大きなトルクを発生させることや、高速で回転させることが可能になる。また、接合部20での消費電力を小さくできることにより、接合部20での発熱量を小さくすることが可能になり、接合部20の小型化も可能になる。さらに、接続部が複数存在することにより、直流母線11からインバータ用母線31への電力供給の信頼性を高める効果もある。
【0028】
実施の形態3.
実施の形態1ないし実施の形態2においては、第1の直流母線凸状部211の窪み214と第3の導体201との間、ないし、第1のインバータ用凸状部231の窪み234と第3の導体201との間は、直接接触するように説明したが、窪み214ないし窪み234に導電性ペーストを塗布、あるいは、第3の導体201の表面に導電性ペーストを塗布する場合もある。
【0029】
このように接合部20を構成することにより、自動車が衝突ないし転倒した場合には、接合部20以外の機能存否に係わらず、その衝撃力を使用して、インバータ40や平滑コンデンサ60への給電を遮断すると同時に、平滑コンデンサ60に蓄えられた電荷を直ちに放電することを可能にするのみならず、窪み214と第3の導体201との間、ないし、窪み234と第3の導体201との間の接触抵抗を小さくして接合部20での消費電力を小さくすることが可能になり、高圧直流電源部10の小型化または自動車の走行距離の伸長が可能になる。
【0030】
また、接合部20での消費電力を小さくできることにより、接合部20での発熱量を小さくすることが可能になり、接合部20の小型化も可能になる。また、形状が変形するペーストの存在に因り、直流母線11からインバータ用母線31への電力供給の信頼性を高める効果もある。
【0031】
実施の形態4.
実施の形態1から実施の形態3においては、第3の導体201の形状を球状または略球状として説明したが、第3の導体201の形状を、実施の形態1または実施の形態2で記載した所定の外力が接合部20に加えられた場合に、第3の導体201が第1の直流母線凸状部211の窪み214ないし第1のインバータ用凸状部231の窪み234から外れる楕円体または多面体にする場合もある。この際、第3の導体201の楕円体または多面体の形状に合せて、窪み214の形状および窪み234の形状を設計する。
【0032】
このように接合部20を構成することにより、自動車が衝突ないし転倒した場合には、接合部20以外の機能存否に係わらず、その衝撃力を使用して、インバータ40や平滑コンデンサ60への給電を遮断すると同時に、平滑コンデンサ60に蓄えられた電荷を直ちに放電することを可能にするのみならず、窪み214と第3の導体201との間、ないし、窪み234と第3の導体201との間の接触面積を大きくでき、そのため接触抵抗を小さくして接合部20での消費電力を小さくすることが可能になり、高圧直流電源部10の小型化または自動車の走行距離の伸長が可能になる。また、接合部20での消費電力を小さくできることにより、接合部20での発熱量を小さくすることが可能になり、接合部20の小型化も可能になる。
【0033】
実施の形態5.
図7は、第3の導体が直流母線凸状部あるいはインバータ用凸状部のいずれかと一体化した場合の接合部の遮断状態の一例を表わす模式断面図である。図7から判るように、第3の導体201を、第1の直流母線凸状部211の窪み214または第1のインバータ用凸状部231の窪み234のいずれか一方の窪みと一体に構成した突出部240としても良い。
【0034】
このように接合部20を構成することにより、自動車が衝突ないし転倒した場合には、接合部20以外の機能存否に係わらず、その衝撃力を使用して、インバータ40や平滑コンデンサ60への給電を遮断すると同時に、平滑コンデンサ60に蓄えられた電荷を直ちに放電することを可能にするのみならず、部品点数を少なくすることが可能になり、材料費ないし加工費の低減も可能である。また、実施の形態2のように、第1の遮断機構の接続部を複数対の接続部で構成しても良く、また、実施の形態3のように、接続部へ導電性ペーストを塗布しても良く、さらに、実施の形態4のように突出部240の形状を楕円体または多面体としても良い。このように構成することで、接続部での接触抵抗を小さくして接合部20での消費電力を小さくすることが可能になり、高圧直流電源部10の小型化または自動車の走行距離の伸長が可能になる。
【0035】
実施の形態6.
図3から図6に示すように、第2の遮断機構の第4の導体202は、自動車の衝突ないし転倒により、直流母線側第4の導体202aとインバータ用母線側第4の導体202bとに切断されると説明したが、元々、直流母線側第4の導体202aとインバータ用母線側第4の導体202bとが、第2の直流母線凸状部212と第2のインバータ用母線凸状部232の接触箇所で、例えば、図8(a)や図8(b)に示すように、接しかつ噛合っており、自動車の衝突ないし転倒により、所定の外力が加わった場合、直流母線側第4の導体202aとインバータ用母線側第4の導体202bとの接触(噛合わせ)が外れ、電気的導通が遮断されるように接合部20を構成しても良い。
【0036】
このように接合部20を構成することにより、自動車が衝突ないし転倒した場合には、接合部20以外の機能存否に係わらず、その衝撃力を使用して、インバータ40や平滑コンデンサ60への給電を遮断すると同時に、平滑コンデンサ60に蓄えられた電荷を直ちに放電することを可能にするのみならず、長くて折れやすい針状導体である第4の導体202を直流母線11に形成した細孔216とインバータ用母線31に形成した細孔236に貫通させる作業が無くなるため、加工費の低減も可能になる。また、第4の導体202を細孔216と細孔236とに挿入させる場合に折ってしまって通し損ねることが無くなるため、材料費の低減も可能になる。
【0037】
実施の形態7.
実施の形態1から実施の形態6では、接合部20をインバータ40の一方の電力供給端であるインバータ用母線31と直流母線11との間にのみ設置し、インバータ40の他方の電力供給端であるインバータ用母線32は直流母線12と一体である場合を説明してきた。
【0038】
しかしながら、本実施の形態では、第1の接合部20は実施の形態1から実施の形態6と同様に直流母線11とインバータ用母線31との間に設置し、もう1つの第2の接合部21が直流母線12とインバータ用母線32との間にも設置する場合について、図9を用いて説明する。なお、第1の接合部20と第2の接合部21とは、ここまで説明してきた接合部20と同一の手段である。ただし、第2の接合部21の2本のリレー制御線をリレー制御線75とリレー制御線76として記載する。また、図9において、図1と同一の機能を有する部分には同一の符号を附している。
【0039】
本実施の形態では、第1の接合部20の一方のリレー制御線73は、これまでの説明と同じく、リレー70内の電磁石72の一方の端子に接続される。しかし、第1の接合部20の他方のリレー制御線74は、第2の接合部21の一方のリレー制御線75に接続される。第2の接合部21の他方のリレー接続線76は、低圧直流電源90を経由して、リレー70内の電磁石72のもう一方の端子に接続される。
【0040】
このように電源装置を構成することにより、自動車が衝突ないし転倒した場合に、第1の接合部20ないし第2の接合部21の少なくとも一方で、電力の供給遮断と第4の導体202による導通遮断が実施されると、インバータ40と平滑コンデンサ60には直流電力が供給されなくなり、かつ、平滑コンデンサ60に蓄えられた電荷は放電抵抗80を介して解放される。
【0041】
インバータ用母線の双方にそれぞれ接合部を設置することにより、自動車が衝突ないし転倒した場合には、接合部20以外の機能存否に係わらず、その衝撃力を使用して、インバータ40や平滑コンデンサ60への給電を遮断すると同時に、平滑コンデンサ60に蓄えられた電荷を直ちに放電することを可能にするのみならず、インバータへの電力遮断と平滑コンデンサの電荷解放に係る手段が増えることにより、確実な電力遮断および電荷解放を実施することが可能になる。また、複数の接合部を設置することにより、縦方向や横方向といった衝撃の方向性にも対応が可能となる。
【0042】
実施の形態8.
実施の形態1では、第2の遮断機構の第4の導体202を直流母線11およびインバータ用母線31に空けられた細孔216と細孔236とに挿入することとした。また、実施の形態6では、直流母線側第4の導体202aを直流母線11の細孔216に、インバータ用母線側第4の導体202bをインバータ用母線31の細孔236に、それぞれ挿入するとした。
【0043】
しかし、上記第4の導体202を直流母線11およびインバータ用母線31の側面で直流母線11とインバータ用母線31とにそれぞれ絶縁して接着しても、所定の外力が接合部20に加えられた場合には、第4の導体202が折れることにより、リレー70が閉状態に移行して、平滑コンデンサ60に蓄えられた電荷を解放することができる。
【0044】
同様に、直流母線側第4の導体202aを直流母線11の側面に絶縁して接着し、かつ、インバータ用母線側第4の導体202bを直流母線側第4の導体202aに対応するインバータ用母線31の側面に絶縁して直流母線側第4の導体202aとインバータ用母線側第4の導体202bとが接する様に接着しても、所定の外力が接合部20に加えられた場合には、直流母線側第4の導体202aとインバータ用母線側第4の導体202bとの間の導通が遮断されて、リレー70が閉状態に移行して、平滑コンデンサ60に蓄えられた電荷を解放することができる。
【0045】
このように接合部20を構成することにより、自動車が衝突ないし転倒した場合には、接合部20以外の機能存否に係わらず、その衝撃力を使用して、インバータ40や平滑コンデンサ60への給電を遮断すると同時に、平滑コンデンサ60に蓄えられた電荷を直ちに放電することを可能にするのみならず、長くて折れやすい針状導体である第4の導体202や直流母線側第4の導体202aやインバータ用母線側第4の導体202bを貫通させる作業が無くなるため、加工費の低減も可能になり、また、折ってしまって通し損ねることが無くなるため、材料費の低減も可能になる。
【0046】
実施の形態9.
高圧直流電源部10は、インバータ40に直流電力を供給す際に電流を大きくするよりも電圧を高くする方が効率が良い。そのため、高圧直流電源部10は、図10に示すように、燃料電池や蓄電池などで構成される駆動用電源101の出力を昇圧コンバータ102で電圧を昇圧し、昇圧コンバータ102の出力を出力線103,104に接続し、昇圧コンバータ102の出力を安定化する目的で出力線103,104に跨って出力用コンデンサ105が設置され、出力用コンデンサ105の両端は、直流母線11,12に接続されるように構成される。
【0047】
しかし、本実施の形態では、図10に示すように、実施の形態1から実施の形態8で説明した接合部20と同じ接合部120を昇圧コンバータ102と出力用コンデンサ105の間の一方の出力線103に挿入して直流母線11の線路上に設置し、実施の形態1で説明したリレー70と同一の機能を有するリレー170と、実施の形態1で説明した放電抵抗80と同一の機能を有する放電抵抗180とを直列に接続した直流回路を接合部120と出力用コンデンサ105の中間位置、または、出力用コンデンサ105と直流母線11および12との中間位置に出力線103と104とに跨って設置し、更に、リレー170内の電磁石172の一方の端子はリレー制御線173を通して、接合部120に接続され、また、リレー170内の電磁石172の他方の端子は、実施の形態1で説明した低圧直流電源90と同一の機能を有する低圧直流電源190を経由した後にリレー制御線174を通して、接合部120に接続されるように構成される。
【0048】
リレー制御線173とリレー制御線174との接合部120での接続は、実施の形態1で説明したリレー制御線73とリレー制御線74との接合部20での接続と同一である。但し、放電抵抗180は、出力用コンデンサ105と平滑用コンデンサ60の双方に蓄えられた電荷を放電させるに耐えられる電力消費の能力を有する必要がある。
【0049】
以上のように、高圧直流電源部10は構成されるので、自動車が衝突ないし転倒した場合には、高圧電源直流部10以外の機能存否に係わらず、その衝撃力を使用して、出力用コンデンサ105やインバータ40や平滑コンデンサ60への給電を遮断すると同時に、出力用コンデンサ105と平滑コンデンサ60に蓄えられた電荷を直ちに放電することが可能である。
【0050】
また、高圧直流電源部10は、インバータ40や平滑コンデンサ60とは離れた場所に設置されることが多いので、自動車が衝突ないし転倒した際、高圧直流電源部のみに衝撃力が働いた場合でも、確実にインバータ40への給電遮断と平滑コンデンサ60に蓄えられた電荷の解放を実施することが可能になる。
【0051】
なお、本実施の形態による高圧直流電源部10を実施の形態1から実施の形態8にも適用する場合には、実施の形態1から実施の形態8で説明した放電抵抗80には、出力用コンデンサ105と平滑コンデンサ60の双方に蓄えられた電荷を放電させるに耐えられる電力消費の能力を有する必要がある。
【0052】
更に、実施の形態7で説明した場合と同様に、もう1つの接合部121を昇圧コンバータ102と出力用コンデンサ105の間の出力線104に挿入する場合もある。この場合、出力用コンデンサ105の電荷を解放する構造は、実施の形態7で平滑コンデンサ60の電荷を解放する構造に準ずる。
【符号の説明】
【0053】
10 高圧直流電源部、11,12 直流母線、20,120 接合部、21 第2の接合部、31,32 インバータ用母線、40 インバータ、50 回転機械、60 平滑コンデンサ、70,170 リレー、71,171 スイッチ部、72,172 電磁石、73,74,75,76,173,174 リレー制御線、80,180 放電抵抗、90,190 低圧直流電源、101 駆動用電源、102 昇圧コンバータ、103,104 出力線、105 出力用コンデンサ、201 第3の導体、202 第4の導体、202a 直流母線側第4の導体、202b インバータ用母線側第4の導体、211 第1の直流母線凸状部、212 第2の直流母線凸状部、213,217,233,237 絶縁体、214 第1の直流母線凸状部の窪み、215 第2の直流母線凸状部の反対面、216,236 細孔、218 第1の直流母線凸状部の側面、219 第2の直流母線凸状部の側面、231 第1のインバータ用母線凸状部、232 第2のインバータ用母線凸状部、234 第1のインバータ用母線凸状部の窪み、235 第2のインバータ用母線凸状部の反対面、238 第1のインバータ用母線凸状部の側面、239 第2のインバータ用母線凸状部の側面、240 第3の導体と窪みを一体に構成した突出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源と、
前記直流電源から入力された直流電力を交流電力に変換して回転機械を駆動するインバータと、
前記直流電源と前記インバータとを接続する一対の直流母線と、
前記一対の直流母線間に前記インバータに対して並列に接続される平滑コンデンサと、
前記平滑コンデンサに対して並列に接続され、リレーと抵抗とを直列に接続した直列回路と、
前記直流母線の線路上に設置される接合部とを備えた電源装置であって、
前記接合部は、
所定の外力が加わった場合、前記直流母線の導通を遮断する第1の遮断機構を有し、かつ、前記リレーを閉状態にすることで前記平滑コンデンサの電荷を前記抵抗によって放電させる第2の遮断機構を有することを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記接合部は、
前記直流電源側の前記直流母線に接続される第1の導体と、
前記第1の導体に対向し、前記インバータ側の前記直流母線に接続される第2の導体とを有し、
前記第1の遮断機構は、前記第1の導体、前記第2の導体、および前記第1の導体と前記第2の導体とを接続する接続部で構成され、
前記第2の遮断機構は、前記第1の導体、前記第2の導体、および前記第1の導体と前記第2の導体とに対して電気的に絶縁状態で交差し、前記直列回路に接続される交差部で構成され、
前記所定の外力が加わった場合、前記第1の遮断機構は、前記接続部が所定の位置から外れて前記直流母線の導通を遮断し、かつ、
前記第2の遮断機構は、前記交差部が切断して前記リレーを閉状態にすることを特徴とする請求項1記載の電源装置。
【請求項3】
前記第1の遮断機構において、
前記接続部は、前記第1の導体と前記第2の導体とは相対する位置にそれぞれ凸状部を有し、
2つの前記凸状部の相対する表面にそれぞれ窪みを設け、
前記第1の導体と前記第2の導体との相対する面のうち少なくとも一方の面および前記2つの凸状部側面は絶縁処理され、
前記第1の導体の凸状部の窪みと前記第2の導体の凸状部の窪みとの隙間に全部あるいは一部が挿入され、前記第1の導体と前記第2の導体とを導通状態にする第3の導体で構成され、
前記所定の外力が加わった場合、前記第3の導体が、2つの前記窪みのうちの少なくとも一方から外れることを特徴とする請求項2記載の電源装置。
【請求項4】
前記窪みの形状が、半球状または略半球状であることを特徴とする請求項3記載の電源装置。
【請求項5】
それぞれの前記凸状部が前記第1の導体および前記第2の導体に対して段差を形成し、
前記所定の外力が加わった場合、前記第3の導体が、2つの前記窪みのうちの少なくとも一方から外れて前記窪みに戻らないことを特徴とする請求項3または請求項4記載の電源装置。
【請求項6】
前記第3の導体の形状が、球状、楕円体または多面体であることを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれか1項記載の電源装置。
【請求項7】
前記第1の遮断機構において、
前記接続部は、前記第1の導体と前記第2の導体とは相対する位置にそれぞれ凸状部を有し、
2つの前記凸状部の相対する表面のいずれか一方には窪みを設け、かつ、
他方には前記凸状部の表面から突出させた突出部を設け、
前記第1の導体と前記第2の導体との相対する面のうち少なくとも一方の面および前記2つの凸状部側面は絶縁処理され、
前記窪みと前記突出部とを噛合せることで前記第1の導体と前記第2の導体とを導通状態に保持し、
前記所定の外力が加わった場合、前記接続部と前記窪みとの噛合せが外れることを特徴とする請求項2記載の電源装置。
【請求項8】
前記窪みの形状が、半球状または略半球状であり、かつ、
前記突出部の形状が、半球状または略半球状であることを特徴とする請求項7記載の電源装置。
【請求項9】
前記第2の遮断機構において、
前記交差部は、前記第1の導体と前記第2の導体との相対する位置にそれぞれ孔を設け、前記孔の内部と前記孔の開口部周辺とに絶縁処理を施し、
前記それぞれの孔を貫通する第4の導体で構成され、
前記第4の導体の両端と前記リレーを制御するリレー制御線の両端とをそれぞれ接続することで前記リレーを開状態に保持し、
前記所定の外力が加わった場合、前記第4の導体が切断し、前記リレーへの導通が遮断されることで前記リレーが閉状態となることを特徴とする請求項2から請求項8のいずれか1項記載の電源装置。
【請求項10】
前記第2の遮断機構において、
前記第4の導体は、2つ以上の導体を接続させたものであり、
前記所定の外力が加わった場合、
前記2つ以上の導体が非接触となり、前記リレーへの導通が遮断されることで前記リレーが閉状態となることを特徴とする請求項9記載の電源装置。
【請求項11】
前記第2の遮断機構において、
前記交差部は、前記第1の導体と前記第2の導体とのそれぞれの側面に絶縁処理を施し、前記それぞれの側面に第4の導体を固着して構成され、
前記第4の導体の両端はそれぞれ前記リレーを制御する前記リレー制御線と接続することで前記リレーを開状態に保持し、
前記所定の外力が加わった場合、前記第4の導体が切断し、前記リレーへの導通が遮断されることで前記リレーが閉状態となることを特徴とする請求項2から請求項8のいずれか1項記載の電源装置。
【請求項12】
前記第2の遮断機構において、
前記第4の導体は、2つの導体を接続させたものであり、2つの導体のうち一方を前記第1の導体の側面に固着し、
他方を前記第2の導体の側面に固着し、
前記所定の外力が加わった場合、前記2つの導体は非接触となり、前記リレーへの導通が遮断されることで前記リレーが閉状態となることを特徴とする請求項11記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−112055(P2013−112055A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257858(P2011−257858)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】