説明

電源装置

【課題】動作開始時と動作停止時の基準電圧を切り替えて動作開始時と動作停止時の電圧にヒステリシスを持たせる電源装置において、安価な構成で安定した動作開始及び動作停止を実現すること。
【解決手段】交流電圧を整流した電圧が供給されるトランス9と、トランス9に供給される電圧をオンオフするスイッチング素子5、6の動作を制御する発振制御回路11と、交流電圧を整流した電圧を検知する直列に接続された電圧検知抵抗12、13、15と、発振制御回路11の動作を開始及び停止させるための信号を出力するために電圧検知抵抗12、13、15により検知した電圧と基準電圧とを比較するコンパレータ22とを備え、発振制御回路11の動作を開始させるときと停止させるときとで基準電圧を切り替える電源装置であって、抵抗13に並列に接続されたツェナーダイオード41を有し、ツェナーダイオード41は、交流電圧に応じて導通と非導通が切り替わる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電源装置に関し、特に商用交流電源などを入力して、所定の直流電圧を発生するスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源装置の従来例を図5(a)に示す。尚、後述する実施例と重複する部分については実施例中で説明する。スイッチング電源装置の発振制御回路11における、商用交流電源1の整流後の電圧に対する動作開始/停止端子37の電圧変動を説明する。スイッチング電源装置に商用交流電源1から電力が供給されると、一次側整流回路からの出力によって起動抵抗4を介してコンデンサ8が充電される。これにより発振制御回路11が起動し、抵抗18〜20で分圧された電圧値が動作開始電圧の基準電圧としてコンパレータ22の反転入力端子に入力される。一方、商用交流電源1の電圧は電圧検知抵抗12、15で分圧された電圧としてコンパレータ22の非反転入力端子に入力される。コンパレータ22は、入力された2つの電圧を比較した結果、商用交流電源1の電圧が基準電圧より十分に高ければ、発振制御回路11の動作開始/停止端子37にハイレベルを出力する。これにより、発振制御回路11が動作を開始してスイッチング素子5、6のスイッチングが始まる。また、同時に、コンパレータ22はハイレベルを出力することによりクランプ素子21を導通させて、抵抗18、19で分圧された電圧値が動作停止電圧の基準電圧としてコンパレータ22の反転入力端子に入力される。このようにコンパレータ22の反転入力端子の基準電圧を下げることで動作開始/停止の電圧にヒステリシスを持たせる。上記のように、動作開始/停止の電圧にヒステリシスを持たせることで、動作開始/停止の発振を防止できる。クランプ素子21を導通させて、動作開始/停止の電圧にヒステリシスを持たせる従来例として特許文献1が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−305639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来例として挙げた商用交流電源の電圧に応じて動作開始/停止を切り替え、更にクランプ素子を導通させることで動作開始/停止にヒステリシスを持たせる電源回路においては、次のような課題がある。すなわち、動作開始/停止を行う回路を構成する素子のばらつき、例えば抵抗値18、19の許容誤差(ばらつき)などによって動作開始/停止する商用交流電源の電圧に幅を有することになる。図5(b)は、横軸を商用交流電源の整流後の電圧、縦軸をコンパレータ22の非反転入力端子への入力電圧としたグラフである。結果として、図5(b)のAの線で示す例のようになる場合がある。Aの線は、動作開始電圧の基準電圧が開始(Max)に振れても、商用交流電源電圧が所望電圧2となり動作を開始できるように電圧検知抵抗12、15を設定したものである。この場合、動作停止電圧の基準電圧が停止(Min)に振れた時に動作停止電圧が所望電圧1よりも下がることで商用交流電源電圧の異常時に素子破壊を起こす場合がある。これは、素子の抵抗値のばらつき、また、素子からの発熱の影響等により基準電圧が停止(Typ)よりも低い停止(Min)となったために、商用交流電源電圧が所望電圧1以下となっても発振制御回路11が停止しないで動作し続けるためである。また、図5(b)のBの線で示す例のようになる場合がある。Bの線は、動作停止電圧の基準電圧が停止(Min)に振れても、商用交流電源電圧が所望電圧1となり動作を停止できるように電圧検知抵抗12、15を設定したものである。この場合、動作開始電圧の基準電圧が開始(Max)に振れた時に動作開始電圧が所望電圧2よりも上がることで通常の商用交流電源電圧時に動作を開始しないことが発生する場合がある。このような課題を解決するために、従来は、次のような対策を施している。すなわち、電源回路の発熱対策として、ファンの風量のアップやヒートシンクの拡大、また、素子のバラつきの低減策としてトランスやコンデンサなどの素子の定格アップなどの対策により商用交流電源の異常時に素子が破壊しないように対策を施している。しかし、この対策は電源回路のコストダウンや小型化を妨げる要因となっている。
【0005】
本発明は、このような状況のもとでなされたもので、動作開始時と動作停止時の基準電圧を切り替えて動作開始時と動作停止時の電圧にヒステリシスを持たせる電源装置において、安価な構成で安定した動作開始及び動作停止を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するために、本発明は以下の構成を備える。
【0007】
(1)入力された交流電圧を整流した電圧が供給されるトランスと、前記トランスに供給される電圧をオンオフするスイッチング素子の動作を制御する制御手段と、直列に接続された複数の抵抗からなり、前記交流電圧を整流した電圧を検知する電圧検知手段と、前記制御手段の動作を開始及び停止させるための信号を出力するために、前記電圧検知手段により検知した電圧と閾値電圧とを比較する比較手段と、を備え、前記制御手段の動作を開始させるときと停止させるときとで前記閾値電圧を切り替える電源装置であって、前記電圧検知手段は、前記複数の抵抗のうちの一の抵抗に並列に接続された切り替え手段を有し、前記切り替え手段は、前記交流電圧に応じて導通と非導通が切り替わることを特徴とする電源装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、動作開始時と動作停止時の基準電圧を切り替えて動作開始時と動作停止時の電圧にヒステリシスを持たせる電源装置において、安価な構成で安定した動作開始及び動作停止を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1の電源回路図、商用交流電源の整流後の電圧とコンパレータの非反転入力端子への入力電圧を示す図
【図2】実施例2の電源回路図、商用交流電源の整流後の電圧とコンパレータの非反転入力端子への入力電圧を示す図
【図3】実施例3の電源回路図、商用交流電源の整流後の電圧とコンパレータの非反転入力端子への入力電圧を示す図
【図4】実施例3の商用交流電源の整流後の電圧とコンパレータの非反転入力端子への入力電圧を示す図
【図5】従来例の電源回路図、商用交流電源の整流後の電圧とコンパレータの非反転入力端子への入力電圧を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を、実施例により図面を参照しながら詳しく説明する。
【実施例1】
【0011】
[スイッチング電源装置の構成と動作]
図1を参照して、実施例1に従って構成されるスイッチング電源装置について説明する。図5(a)の従来例と同一又は相当する部分には同一符号を付す。図1(a)は本実施例のスイッチング電源装置の回路図である。従来例に対して本実施例では、ツェナーダイオード41を電圧検知抵抗13に並列に接続し、電圧検知抵抗13に、電圧検知抵抗12、15を直列に接続するように追加している。以下、図1(a)の回路図を説明する。
【0012】
図1(a)のスイッチング電源装置は、トランス9と、一次側整流回路と、発振制御回路11と、補助側整流回路と、起動抵抗4と、を備え、入力された交流電源の交流電圧を変換して所望の直流電圧を出力する。トランス9は、一次巻線9a、二次巻線9b、9c及び補助巻線9dを有する。一次側整流回路は、ブリッジ整流回路2及び平滑コンデンサ3を有していて、商用交流電源1(交流電源)の交流電圧を整流して直流電圧をスイッチング素子5、6(図示例はMOSFET)を介してトランス9の一次巻線9aに供給する。10は電流共振コンデンサである。発振制御回路11(制御手段)は、スイッチング素子5、6のスイッチングすなわちオンオフを、駆動端子32、31を介して制御する他励式の発振制御回路である。補助側整流回路は、整流ダイオード7及びコンデンサ8を有していて、トランス9の補助巻線9dの出力を整流して発振制御回路11の電源端子35に供給する。起動抵抗4は、一次側整流回路の正の出力側と発振制御回路11の電源端子35との間に接続されている。
【0013】
トランス9の二次巻線9b、9cには整流ダイオード23、24及びコンデンサ25が接続されおり、二次側出力を整流して直流電圧を生成する。また、二次側には出力を分圧する抵抗28、抵抗29、シャントレギュレータ26、フォトカプラ27が接続されている。シャントレギュレータ26は抵抗28、抵抗29によって分圧された電圧と内部の基準電圧を比較し、その誤差を増幅する。シャントレギュレータ26の出力はフォトカプラ27に接続されており、発振制御回路11のフィードバック端子33に出力される。発振制御回路11はフォトカプラ27のフォトトランジスタに流れる電流に応じてスイッチング素子5、6を、駆動端子32、31を介して周波数制御する。この回路はフィードバック系を構成し、二次側出力を所定電圧に制御する。
【0014】
スイッチング電源装置は、平滑コンデンサ3と並列に複数接続された電圧検知抵抗12、13、15(電圧検知手段)と、電圧検知抵抗13に並列に接続されたツェナーダイオード41と、コンパレータ22とを備える。コンパレータ22(比較手段)は、電圧検知抵抗12、13、15で分圧された電圧値を、基準電圧(閾値電圧)と比較するためのものである。コンパレータ22に入力する基準電圧は、発振制御回路11の端子36から出力される定電圧を抵抗18〜20で分圧して生成し、コンパレータ22の出力は発振制御回路11の動作開始/停止端子37に接続されている。コンパレータ22の出力は、抵抗20をクランプするためのクランプ素子21(本実施例の図示例はMOSFETであり、抵抗18、19、20による分圧比を切り替えるスイッチ素子ともいう)にも接続されている。
【0015】
本実施例の電流共振回路のスイッチング動作について説明する。商用交流電源1から電力が供給されると一次側整流回路からの出力によって起動抵抗4を介してコンデンサ8が充電され、発振制御回路11が起動する。発振制御回路11は、一般に専用のIC(集積回路)が用いられている。発振制御回路11が起動すると、抵抗18〜20で分圧された電圧値が、発振制御回路11の動作を開始させるための電圧(以下、動作開始電圧)の基準電圧としてコンパレータ22の反転入力端子に入力される。すなわち、コンパレータ22の反転入力端子には、発振制御回路11の動作開始時の基準電圧が入力される。同様に、商用交流電源1の整流後の電圧が電圧検知抵抗12、13及び15で分圧された電圧が、コンパレータ22の非反転入力端子に入力される。16はコンデンサである。コンパレータ22は、反転入力端子に入力された電圧(動作開始時の基準電圧)及び非反転入力端子に入力された電圧(商用交流電源1の整流後の電圧を分圧した電圧)を比較する。コンパレータ22により入力電圧を比較した結果、商用交流電源1の整流後の電圧を分圧した電圧すなわち商用交流電源1の電圧が十分に高ければ、コンパレータ22は発振制御回路11の動作開始/停止端子37にハイレベルを出力する。これにより、発振制御回路11が動作を開始してスイッチング素子であるFET5、6のスイッチングが始まる。
【0016】
発振制御回路11は、FET5のスイッチングを行う駆動端子32からハイレベルを出力し、FET5をオンしてトランス9の一次巻線9aに電圧を印加し、二次側にエネルギーを供給する。また、発振制御回路11は、FET5をオンすることにより、電流共振コンデンサ10にエネルギーを蓄える。続いて、発振制御回路11は、駆動端子32からローレベルを出力し、FET5をオフする。次いで発振制御回路11は、FET6を駆動する駆動端子31からハイレベルを出力し、FET6をオンすることで電流共振コンデンサ10の電圧をトランス9の一次巻線9aに印加し、二次側にエネルギーを供給する。続いて、発振制御回路11は、駆動端子31からローレベルを出力してFET6をオフし、次いで駆動端子32からハイレベルを出力してFET5をオンする。発振制御回路11は、この動作を繰り返すことで、二次側に所望の電力を供給し続ける。
【0017】
また、コンパレータ22の出力はクランプ素子21にも接続されており、コンパレータ22がハイレベルを出力すると、クランプ素子21を導通させる。このため、コンパレータ22の反転入力端子には、抵抗18、19で分圧された電圧値が、発振制御回路11を停止させるための電圧(以下、動作停止電圧)の基準電圧として入力される。すなわち、コンパレータ22の反転入力端子には、発振制御回路11の動作停止時の基準電圧が入力される。抵抗18〜20で分圧された動作開始電圧よりも抵抗18、19で分圧された動作停止電圧の方が低くなる。このように、コンパレータ22の反転入力端子の基準電圧を下げることで動作開始電圧と動作停止電圧とにヒステリシスを持たせている。動作開始/停止の電圧にヒステリシスを持たせることで、動作開始/停止の発振を防止できる。
【0018】
ここで、商用交流電源1の異常によりコンデンサ3の電圧が低下し、コンパレータ22の非反転入力端子に入力される電圧が反転入力端子に入力される電圧よりも低下した場合、コンパレータ22は次のように動作する。すなわち、コンパレータ22は発振制御回路11の動作開始/停止端子37にローレベルを出力する。コンパレータ22が発振制御回路11の動作開始/停止端子37にローレベルを出力することで、発振制御回路11は駆動端子31、32の出力を強制的にローレベルにしてFET5、6をオフし、スイッチングを停止する。また、コンパレータ22はクランプ素子21にもローレベルを出力しており、クランプ素子21は非導通となる。このため、コンパレータ22の反転入力端子には抵抗18〜20で分圧された動作開始電圧の基準電圧が入力され、基準電圧の電圧値が切り替わる。
【0019】
[クランプ素子による折り曲がり点]
図1(b)は本実施例のコンパレータ22の非反転入力端子への入力電圧(すなわち整流後の商用交流電源1の電圧を電圧検知抵抗12、13、15又は12、15により検知(分圧)した電圧値)と商用交流電源1の整流後の電圧の関係を示すグラフである。尚、以降、コンパレータ22の非反転入力端子への入力電圧である、電圧検知抵抗12、13、15又は12、15により整流後の商用交流電源1の電圧を検知(分圧)した電圧を、単に検知電圧とする。図1(b)に従って検知電圧と商用交流電源1の整流後の電圧、及びクランプ素子であるツェナーダイオード41(切り替え手段)の導通状態の推移を説明する。図中、開始(Max)及び停止(Min)(破線)は、コンパレータ22の反転入力端子に入力される基準電圧であり、スイッチング電源装置を構成する全部品の精度条件のばらつきを考慮した場合の動作開始電圧の最大値及び動作停止電圧の最小値を示す。また、開始(Typ)、停止(Typ)は、コンパレータ22の反転入力端子に入力される電圧を決定する部品、例えば抵抗18、19の抵抗値等のばらつき(精度誤差)が0である場合の値である。開始(Max)、停止(Max)、開始(Typ)、停止(Typ)は、発振制御回路11の動作を開始するとき又は停止するときの閾値ともいえる。
【0020】
本実施例では、電圧検知抵抗13と並列にツェナーダイオード41を接続する。これにより、整流後の商用交流電源1の電圧をコンデンサ3と並列に複数接続された電圧検知抵抗12、13及び15によって検知(分圧)した電圧値と商用交流電源1の整流後の電圧値との関係に、図に示すような折り曲がり点を設けることができる。
【0021】
商用交流電源1の電圧が高い場合、ツェナーダイオード41が導通し、ツェナー電圧が電圧検知抵抗13にかかる。そして、検知電圧VSENは、式(1)のように、商用交流電源1の整流後の電圧VACからツェナーダイオード41のツェナー電圧VZDを引いた電圧を電圧検知抵抗12、15で分圧することになる。
SEN=(VAC−VZD)×R15/(R12+R15) (1)
【0022】
ここで、商用交流電源1の電圧が低下していくと、電圧検知抵抗13にかかる電圧とツェナーダイオード41のツェナー電圧が等しくなる。商用交流電源1の電圧が更に低下した場合、電圧検知抵抗13にかかる電圧が低くなるためにツェナーダイオード41は非導通となり、商用交流電源1の電圧は電圧検知抵抗12、13及び15で分圧される。検知電圧VSENは、式(2)のようになる。
SEN=VAC×R15/(R12+R13+R15) (2)
【0023】
例えば、電圧検知抵抗12、13を100kΩ、抵抗15を27kΩ、ツェナーダイオード41のツェナー電圧を48Vとする。この場合、商用交流電源1の整流後の電圧が約109V以上ではツェナーダイオード41は導通し、電圧検知抵抗13にはツェナーダイオード41のツェナー電圧である48Vがかかる。また、商用交流電源1の整流後の電圧が約109V未満になると、ツェナーダイオード41は非導通となり、検知電圧の値は電圧検知抵抗12、13、15で分圧される値となる。この場合、商用交流電源1の整流後の電圧値109Vが折り曲がり点となる。すなわち、折り曲がり点である電圧値109Vは、クランプ素子であるツェナーダイオード41の導通と非導通が切り替わる閾値であり、クランプ素子は109V以上(閾値以上)で導通し、109V未満(閾値未満)で非導通となる。このように、折り曲がり点を整流後の電圧値109Vとすることで、次のようにすることができる。すなわち、定格電圧にマージンを加味した所望電圧2以下の整流後の商用交流電源電圧で動作を開始し、素子破壊するおそれのある電圧にマージンを加味した所望電圧1以上の整流後の商用交流電源電圧で動作を停止することができる。すなわち、動作開始電圧が、スイッチング電源装置を構成する全部品の精度条件のばらつきを考慮したときの最大値である開始(Max)となった場合でも、所望電圧2以下の整流後の商用交流電源電圧で動作を開始することができる。また、動作停止電圧が、スイッチング電源装置を構成する全部品の精度条件のばらつきを考慮したときの最小値である停止(Min)となった場合でも、所望電圧1以上の整流後の商用交流電源電圧で動作を停止することができる。尚、所望電圧2は、整流後の商用交流電源電圧が所望電圧2になったときに、発振制御回路11が動作を開始すべき電圧である。また、所望電圧1は、整流後の商用電源電圧が所望電圧1になったときに、発振制御回路11が動作を停止すべき電圧である。
【0024】
このように、検知電圧の商用交流電源1の整流後の電圧に対する変化量(図1(b)のグラフの傾き)について次のことがいえる。すなわち、商用交流電源1の整流後の電圧が電圧検知抵抗12、13及び15で分圧されることで、電圧検知抵抗12、15で分圧されたときと比較して、変化量を小さくすることが可能となる。すなわち、ツェナーダイオード41の非導通時における商用交流電源1の整流後の電圧に対する検知電圧の変化量を、ツェナーダイオード41の導通時の変化量に比較して小さくすることができる。これにより、発振制御回路11の動作開始/停止端子37に入力される値を決定する素子、例えば抵抗18、19などにばらつきがあり、コンパレータ22の反転入力端子に入力される基準電圧にばらつきがある場合においても、次のような効果がある。すなわち、商用交流電源1の異常により電圧が低下してもスイッチング動作を停止する動作停止電圧の最小値である停止(Min)に達する商用交流電源1の電圧を素子破壊することのない所望電圧1以上の電圧にすることができる。また、スイッチング動作を開始する動作開始電圧の最大値である開始(Max)に達する商用交流電源1の電圧を電源装置が正常に起動できる所望電圧2以下の電圧にすることができる。
【0025】
以上、本実施例によれば、動作開始時と動作停止時の基準電圧を切り替えて動作開始時と動作停止時の電圧にヒステリシスを持たせる電源装置において、安価な構成で安定した動作開始及び動作停止を実現することができる。
【実施例2】
【0026】
実施例2では、クランプする素子としてFETを用いる。図2(a)は、従来例からFET48、抵抗17、商用交流電源1の電圧を検出する電圧検出抵抗44〜46及びトランジスタ49、抵抗47を追加している。FET48(切り替え手段)を電圧検知抵抗17と並列に接続することで、コンデンサ3と並列に複数接続された電圧検知抵抗12、15、17によって検知される電圧値と整流後の商用交流電源1の電圧値の関係に折り曲がり点を持たせることができる。尚、図2(a)において、図1(a)と同じ符号を付した部分の説明は省略する。
【0027】
[クランプ素子による折り曲がり点]
図2(b)は本実施例における検知電圧と商用交流電源1の整流後の電圧の関係を示すグラフである。図2に従って検知電圧と商用交流電源1の整流後の電圧及びクランプ素子であるFET48の導通状態の推移を説明する。
【0028】
商用交流電源1の電圧が高い場合、電圧検出抵抗44〜46の分圧によってトランジスタ49をオンできる電圧が抵抗46にかかり、トランジスタ49をオンする。そして、トランジスタ49をオンすることで、FET48がオフし、商用交流電源1の電圧は電圧検知抵抗12、15及び17で分圧されることになる。検知電圧VSENは、式(3)のようになる。
SEN=VAC×(R15+R17)/(R12+R15+R17) (3)
【0029】
ここで、商用交流電源1の電圧が低下していくと、電圧検出抵抗46にかかる電圧が低くなるために、トランジスタ49がオフし、FET48はオンする。FET48が導通となることで、整流後の商用交流電源1の電圧は電圧検知抵抗12、15で分圧される。FET48の飽和電圧を微小として無視すると、検知電圧VSENは式(4)のようになる。
SEN=VAC×R15/(R12+R15) (4)
【0030】
トランジスタ49にかかる電圧によって分圧抵抗の構成を変化させることで、検知電圧と商用交流電源1の電圧値の関係に折り曲がり点を持たせる。
【0031】
例えば、電圧検出抵抗44、45を100kΩ、抵抗46を1.5kΩとすると、商用交流電源1の整流後の電圧が約94V以上ではトランジスタ49がオンし、FET48はオフとなる。また、商用交流電源1の整流後の電圧が約94V未満になるとトランジスタ49がオフし、FET48はオンとなり、コンパレータ22の非反転入力端子に入力される電圧は電圧検知抵抗12、15で分圧される値となる。この場合、商用交流電源1の整流後の電圧値94Vが折り曲がり点となる。すなわち、折り曲がり点である電圧値94Vは、クランプ素子であるツェナーダイオード41の導通と非導通が切り替わる閾値であり、クランプ素子は94V以上(閾値以上)で非導通となり、94V未満(閾値未満)で導通となる。
【0032】
このように、発振制御回路11の動作開始/停止端子37に入力される値を決定する素子、抵抗18、19などにばらつきがある場合においても、次のような効果がある。異常により商用交流電源1の電圧が低下したとしてもスイッチング動作を停止する動作停止電圧の最小値である停止(Min)に達する整流後の商用交流電源1の電圧を、素子破壊することのない所望電圧1以上の電圧にすることができる。また、FET48を用いて電圧検知抵抗17をクランプすることで、検知電圧と商用交流電源1の整流後の電圧値に、より急峻な折り曲がり点を持たせることが可能となる。
【0033】
以上、本実施例によれば、動作開始時と動作停止時の基準電圧を切り替えて動作開始時と動作停止時の電圧にヒステリシスを持たせる電源装置において、安価な構成で安定した動作開始及び動作停止を実現することができる。
【実施例3】
【0034】
本実施例においては、スイッチング電源装置に流れる電流によって、クランプ素子の導通を切り替える例を示す。図3(a)は、従来例に電圧検知抵抗13、カレントトランス51、電流検知抵抗52、電流検知回路53(電流検知手段)を追加している。更に、電流検知回路53の出力によってオン/オフを切り替えるトランジスタ55、FET56、抵抗54、57、58及びクランプ素子であるツェナーダイオード41(切り替え手段)を追加している。電流検知回路53は、トランジスタ55に例えばハイレベル又はローレベルの信号を出力する。電圧検知抵抗13と並列にツェナーダイオード41を接続し、更にスイッチング電源装置に流れる電流に応じてFET56を切り替える。これにより、コンデンサ3と並列に複数接続された電圧検知抵抗12、13及び15によって検知される電圧値と商用交流電源1の整流後の電圧値の関係に持たせる折り曲がり点を電流に応じて可変にすることができる。
【0035】
[クランプ素子による折り曲がり点]
図3(b)は本実施例において、例えば異常により商用交流電源1の電圧が低下した場合に、スイッチング電源装置に流れる電流が閾値電流値よりも高くなるときの検知電圧と商用交流電源1の整流後の電圧の関係を示すグラフである。図3(b)に従って検知電圧と商用交流電源1の整流後の電圧及びクランプ素子であるツェナーダイオード41の導通状態の推移を説明する。本実施例では、閾値電流値を例えば4Aと設定する。尚、閾値電流値は、素子破壊の生じる電流・電圧との兼ね合いにより決定される。例えば低い電圧でも素子破壊が生じるおそれが低下するため、電流に応じて停止すべき電圧を変更する。閾値電流値は、システムの構成や素子の余裕度により変わるものであり、本実施例の値に限定されない。
【0036】
(商用交流電源の電圧が高い場合)
商用交流電源1の電圧が十分に高い場合、電流検知回路53で検知されるスイッチング電源装置に流れる電流は、電流検知回路53内部に持つ閾値電流値4Aよりも低い。電流検知回路53は、検知した電流の値が閾値電流値以下である場合、トランジスタ55にハイレベルの信号を出力する。これにより、トランジスタ55がオンし、更にFET56がオンする。FET56がオンしていることで、ツェナーダイオード41は導通し、ツェナーダイオード41のツェナー電圧が電圧検知抵抗13にかかる。そして、検知電圧値は整流後の商用交流電源1の電圧からツェナーダイオード41のツェナー電圧を引いた電圧を電圧検知抵抗12、15で分圧することになる。
【0037】
(商用交流電源の電圧が低下し検知電流が閾値電流値よりも高い場合)
ここで、異常により商用交流電源1の電圧が低下していくと、電流検知回路53で検知される電流が増加し、電流検知回路53内部に持つ閾値電流値4Aよりも高くなると、電流検知回路53はローレベルの信号を出力する。そして、電流検知回路53はトランジスタ55をオフする。トランジスタ55をオフすると、FET56がオフし、ツェナーダイオード41は非導通となる。ツェナーダイオード41が非導通となった結果、整流後の商用交流電源1の電圧は電圧検知抵抗12、13及び15で分圧される。
【0038】
(商用交流電源の電圧が低下し検知電流が閾値電流値よりも低い場合)
また、図4は本実施例において、異常により商用交流電源1の電圧が低下してもスイッチング電源装置に流れる電流が閾値電流値4Aよりも低いときの検知電圧と商用交流電源1の整流後の電圧の関係を示すグラフである。図4に従って検知電圧と商用交流電源1の整流後の電圧及びクランプ素子であるツェナーダイオード41の導通状態の推移を説明する。
【0039】
商用交流電源1の電圧が高い場合、図3(b)と同様に、FET56がオンし、ツェナーダイオード41が導通し、ツェナーダイオード41のツェナー電圧が電圧検知抵抗13にかかる。そして、検知電圧は商用交流電源1の電圧からツェナーダイオード41のツェナー電圧を引いた電圧を電圧検知抵抗12、15で分圧することになる。ここで、異常により商用交流電源1の電圧が低下しても例えば二次側で必要とする電流が少ないために電流検知回路53で検知される電流が電流検知回路53内部に持つ閾値電流値4Aよりも低いままであると、電流検知回路53はハイレベルの信号を出力し続ける。これにより電流検知回路53はトランジスタ55のオンを継続し、FET56のオンを継続する。この点、FET56がオフすることでツェナーダイオード41が非導通となり折り曲がり点が生じた図3(b)とは異なる。商用交流電源1の電圧が更に低下した場合、電圧検知抵抗13にかかる電圧が低くなるためにツェナーダイオード41は非導通となり、商用交流電源1の整流後の電圧は電圧検知抵抗12、13及び15で分圧される。
【0040】
尚、図4の所望電圧3は、素子破壊するおそれのある電圧にマージンを加味した値であり、所望電圧1より低い値である(所望電圧3<所望電圧1)。このような関係となる理由は、上述したように素子破壊が生じるポイントは電流と電圧によって決定し、電流が小さいときは素子破壊することのない所望電圧がより低い値となるからである。このように、本実施例では、電流に応じて折り曲がり点を可変にする構成としている(図3、図4)。これにより、動作停止の所望電圧が所望電圧1と所望電圧3との間で変化しても、発振制御回路11を不要に停止させることがなくユーザビリティを改善することができる。また、素子破壊を生じさせることなく適切なタイミングで発振制御回路11を停止させることができる。
【0041】
上記によって、発振制御回路11の動作開始/停止端子37に入力される値を決定する素子、例えば抵抗18、19などにばらつきがある場合においても、次のような効果がある。図3(b)のように、異常により商用交流電源1の電圧が低下したとしてもスイッチング動作を停止するための基準電圧である停止(Min)に達する商用交流電源1の電圧を素子破壊することのない所望電圧1以上の電圧にすることができる。また、図4のように、電源装置に流れる電流に応じて素子破壊することのない電圧が所望電圧1から所望電圧3に変化する場合においても、クランプ素子の導通を切り替える。これにより、動作停止するための商用交流電源1の電圧を変化させ、電圧変動に対してより強い構成とすることが可能となる。
【0042】
以上、本実施例によれば、動作開始時と動作停止時の基準電圧を切り替えて動作開始時と動作停止時の電圧にヒステリシスを持たせる電源装置において、安価な構成で安定した動作開始及び動作停止を実現することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 商用交流電源
5、6 スイッチング素子
9 トランス
11 発振制御回路
12、13、15 抵抗
22 コンパレータ
41 ツェナーダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された交流電圧を整流した電圧が供給されるトランスと、
前記トランスに供給される電圧をオンオフするスイッチング素子の動作を制御する制御手段と、
直列に接続された複数の抵抗からなり、前記交流電圧を整流した電圧を検知する電圧検知手段と、
前記制御手段の動作を開始及び停止させるための信号を出力するために、前記電圧検知手段により検知した電圧と閾値電圧とを比較する比較手段と、を備え、
前記制御手段の動作を開始させるときと停止させるときとで前記閾値電圧を切り替える電源装置であって、
前記電圧検知手段は、前記複数の抵抗のうちの一の抵抗に並列に接続された切り替え手段を有し、
前記切り替え手段は、前記交流電圧に応じて導通と非導通が切り替わることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
前記電源装置に流れる電流を検知する電流検知手段を備え、
前記切り替え手段は、前記電流検知手段により検知した電流に応じて導通と非導通が切り替わることを特徴とする請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記切り替え手段は、ツェナーダイオードであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記切り替え手段は、FETであることを特徴とする請求項1又は2に記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−21756(P2013−21756A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−150865(P2011−150865)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】