説明

電界吸収変調型ファブリーペローレーザ及びその製作方法

電界吸収変調型ファブリーペローレーザ及びその製作方法が開示される。一態様において、光源(10)は、多モードレーザ光を生成するように動作可能なファブリーペロー(FP)レーザ(14)、通過するレーザ光を選択的に吸収及び伝達するように構成された電界吸収型光変調器(EAM)(18)、及び光アイソレータ(16)を含む。光アイソレータ(16)は、FPレーザ(14)とEAM(18)との間の光路上にある。光アイソレータ(16)は、FPレーザ(14)からEAM(18)までの光路に沿って進むレーザ光を伝達するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
一般に、光の強度を変調するために、2つの一般的方法、即ち直接変調と外部変調が使用される。
【0002】
直接変調の方法では、レーザ(例えば、レーザダイオード)が情報信号により直接的に変調されて、変調レーザ出力が生成される。レーザ出力のパワーは、レーザに対する入力駆動電流を変調することにより、直接的に変調される場合が多い。レーザは、駆動電流が閾値電流レベルを超える場合に、レージングを開始する。一般に、直接変調レーザに印加される入力駆動電流の変調範囲は、閾値電流レベルの近くからそれより上に及ぶ。
【0003】
外部変調方法では、変調器は、情報信号に従って、連続波レーザにより生成された光の強度を変調する。変調器及びレーザは、独立した別個の基板上に配置されるか、又は単一の基板上に一緒に製造され得る。外部変調器は、2つの主なファミリー、即ちマッハツェンダー型電気光学変調器のような、弱め合う干渉を通じて光を変調する電気光学型変調器、及び(例えば、量子閉じ込めシュタルク効果を通じて)吸収により光を変調する電界吸収型光変調器に分類される。
【0004】
直接変調時に、レーザ内の線形効果及び非線形効果は、チャーピングを生じさせる。チャーピングは、変調中のレーザ光パルスの持続時間にわたる光信号波長の変動である。正の過渡的チャーピングの場合、レーザ光パルスの前縁は、後縁よりも短い波長からなる。正の分散ファイバにおいて、より短い波長は、より長い波長よりも速く伝わる。従って、パルスは伝播する際に広がる。この正のチャーピングを補償するために、再生器を必要とすることが多く、通信ネットワークのコストが大幅に上昇する。チャーピング効果は、数GHzまでのビットレートの直接レーザ変調において、操作できる。レーザの直接変調は一般に、特にレーザが急激な立ち上がり端と立ち下がり端を有する鋭いレーザパルスを生成するように駆動される場合に、数GHzより上のビットレートで使用されない。
【0005】
外部変調は、チャーピングに影響されやすい用途に有利であり、その理由は、外部変調が出力信号に導入するチャーピングがほとんどないからである。このため、外部変調は、長距離デジタル光通信にほとんど専門的に使用されており、長距離光通信では、チャーピングに起因する直接変調レーザの過大なスペクトル広がりは、伝播中のより大きなパルス歪み、及び全体的性能の低下につながる。
【0006】
分布帰還型(DFB)レーザは一般に、長距離光通信の用途に使用されている。DFBレーザは、細いスペクトル線幅により特徴付けられる出力を生成し、これによりDFBレーザは長い距離にわたって信号を送信することが可能になる。また、この特徴により、DFBレーザは、同じ光ファイバで干渉せずに多重化信号をできるだけ多く伝送することが望まれる、波長分割多重(WDM)のような細い線幅の用途で使用されることも可能になる。しかしながら、DFBレーザは、スペクトル線幅を広げてノイズを増大させる後方反射に非常に影響されやすい。このため、DFBレーザは一般に、後方反射を阻止する光アイソレータと共に1つのパッケージに組み立てられる。
【0007】
DFBレーザの細い線幅の特徴、及び外部変調器の低いチャーピング特性は、長距離光データ伝送システムに活用される。しかしながら、DFBレーザの出力波長温度係数、及び電界吸収型光変調器の吸収端波長係数は一般に、大幅に異なり、それにより広い温度範囲にわたる動作が悪化する。この理由及び他の理由で、DFBレーザ及び電界吸収型光変調器を含むシステムは一般に、熱電冷却器のような直接的活性温度調整装置を含む。係る一手法において、DFBレーザ及び電界吸収型光変調器は、熱電冷却器に取り付けられたサブマウントに装着された光プラットフォームに実装される。サブマウントに装着されたサーミスタが、熱帰還を提供し、それにより熱電冷却器が、DFBレーザ及び電界吸収型光変調器の温度を所定の狭い温度範囲内に維持することが可能になる。
【0008】
上述した理由で、DFBレーザの設計は、大きくて、高価で、消費電力が高くなる傾向がある。
【0009】
概要
一態様において、本発明は、多モードレーザ光を生成するように動作可能なファブリーペロー(FP)レーザ、通過するレーザ光を選択的に吸収、及び伝達するように構成された電界吸収型光変調器(EAM)、及び光アイソレータを含む光源を特徴としている。光アイソレータは、FPレーザとEAMとの間の光路上にある。光アイソレータは、FPレーザからEAMまでの光路に沿って進むレーザ光を伝達するように構成される。
【0010】
別の態様において、本発明は、上述した光源を製作する方法を特徴としている。
【0011】
本発明の他の特徴及び利点は、図面及び特許請求の範囲を含む以下の説明から明らかになるであろう。
【0012】
詳細な説明
以下の説明において、同様の参照符号を用いて、類似の要素を特定する。更に、図面は、例示的な実施形態の主要な特徴を図で例示することが意図されている。図面は、実際の実施形態のあらゆる特徴、又は図示された要素の相対寸法を示すことが意図されておらず、一律の縮尺に従わずに描かれている。
【0013】
FPレーザは、比較的広いスペクトル線幅にわたる多数の縦モード(又は多モード)スペクトルにより特徴付けられる出力を生成する。FPレーザの広いスペクトル線幅は、長距離データ伝送の用途、及びWDMのような細い線幅の用途における使用を不可能にする。例えば、FPレーザのスペクトル内の各波長の分散は異なり、光信号を広げる材料分散を生じる。更に、FPレーザは、モードホッピングの挙動により特徴付けられ、それにより光信号に位相ジッタを生じるモード分配雑音が引き起こされる。また、FPレーザのスペクトル線幅は広すぎて、種々の縦モード間の干渉なしに、WDM用途で使用されることができない。これらの理由で、今までFPレーザの使用は、チャーピングに敏感でない比較的短距離の用途に限定されており、この場合、直接変調技術が十分な変調速度を提供する。
【0014】
以下で詳細に説明される光源の実施形態において、FPレーザと電界吸収型光変調器との間の構造的類似性は、信頼性が高く、広い温度範囲にわたって実質的に温度に無関係なデータ伝送能力を呈する高速な光源の設計を可能にするように活用される。従って、これらの設計は、製造コスト及び運転経費を増加させる、熱電冷却器のような直接的活性温度調整装置を省くことができる。このように、これらの実施形態は、高いデータ速度、短距離及び中間距離にわたる温度に無関係な動作により特徴付けられる実用的な光源の設計を可能にする。
【0015】
図1は、ファブリーペロー(FP)レーザ14、光アイソレータ16、及び電界吸収型光変調器18を含む光源10の実施形態を示す。光源10は、多種多様な既知の光通信プロトコル(例えば、振幅シフトキーイング(ASK)変調、周波数偏移(FSK)変調、位相偏移キーイング(PSK)変調等)の任意の1つに従って符号化される、デジタルインパルス出力信号22を生成する。実施形態によっては、光源10は、広い動作温度範囲にわたって、約1ギガビット/秒(Gb/秒)から約50Gb/秒までの範囲にわたるビットレートでデジタルインパルス出力信号22を生成する。
【0016】
図2は、光共振空洞32を画定する第1及び第2の反射体28、30を含むFPレーザ14の具現化形態を示す。光共振空洞32は、第1のクラッディング領域36と第2のクラッディング領域38との間に挿入された活性領域34を含む。例示された具現化形態において、第1のクラッディング領域36は、p型にドープされた材料からなる半導体層であり、第2のクラッディング領域38は、n型にドープされた材料からなる半導体層であり、活性領域34は、半導体材料のドープされていない層である。駆動電流(IDrive)がFPレーザ14に印加される場合、活性領域34の電子正孔対が結合して光40が生成される。実施形態によっては、活性領域34は、1つ又は複数の量子井戸を含み、それにより活性領域34で生成される光40の特性が調整される。第1及び第2の反射体28、30は、半導体材料の劈開されたファセットである。例示された実施形態において、反射体28は光40を100%反射し、反射体30は、偏光出力光42が部分的反射性の反射体30に対応するFPレーザ14のエッジを出射するように、光40を部分的に反射する。
【0017】
光共振空洞32は、図3Aに示された、均等に間隔をおいた光学縦モード44の個々のセットに光発振を制限する。出力光42の波長モード間隔(Δλ)は、Δλ=C(2nL)−1により与えられ、ここで、Cは光の速度であり、Lは空洞32の長さであり、nは、光が伝播する媒体の実効屈折率であり、nは1より大きい数である。活性領域34は、利得対波長の関数46により特徴付けられ、それにより比較的狭い波長帯域内の限られた数の光学モード(例えば、3〜30個のモード)のみの増幅という結果になる。FPレーザ14により生成された出力光42の出力パワースペクトル48は、図3Bに示される。波長スペクトル48は、出力光42のスペクトル成分の大きさの二乗和平方根の加重平均に対応する二乗平均平方根(RMS)の線幅により特徴付けられる。比較的狭いスペクトル線幅(しかし、依然として単一モードのスペクトルではない)を維持することにより、光源10が、より長い距離にわたって出力データ信号22を確実に伝送することが可能になる。具現化形態によっては、RMSスペクトル線幅は、最大でも3ナノメートル(nm)である。これらの具現化形態によっては、RMSスペクトル線幅は、最大でも1nmである。
【0018】
図4は、一対の偏光子50、52、及び偏光子50と52との間に挿入されたファラデー回転子54を含む光アイソレータ16の実施形態を示す。実施形態によっては、偏光子50、52は、複屈折プリズム又は偏光ビームスプリッタであり、ファラデー回転子54は、磁性ガーネット結晶である。環状の永久磁石56がファラデー回転子54を取り囲み、ファラデー回転子54に磁界を印加する。例示された実施形態において、偏光子50は、FPレーザ14から受光された光42の偏光に平行に向けられた偏光軸を有し、ファラデー回転子54は、光の偏光を45°回転させ、偏光子52は、ファラデー回転子54から受光される回転した光に平行に向けられた偏光軸を有する。このように、FPレーザ14から受光された偏光出力光42は、実質的に振幅低減なしで光アイソレータを通過する。一方、後方反射された光は、ファラデー回転子54を2回通過し、従って、偏光子50の偏光軸に対して直交する偏光を有する。このため、係る後方反射された光は、実質的に光アイソレータ16により阻止される。後方反射がFPレーザ14に到達することを防止することにより、光アイソレータ16は、そうしなければ生じるであろう出力データ信号22のスペクトル広がりを防止し、光源10が、FPレーザ14により生成された出力光42の実質的なスペクトル広がりなしで、出力光信号22を生成することが可能になる。例示された実施形態において、偏光子52の偏光軸は、偏光子50の偏光軸に対して45°の角度で配向されている。例示された実施形態において、電界吸収型光変調器18は、偏光に無関係である。別の実施形態において、光アイソレータ16は、偏光を維持するアイソレータであり、この場合、入力及び出力の偏光状態は同じ軸に沿っている。この別の実施形態において、電界吸収型光変調器18は、偏光に無関係、又は偏光に依存(例えば、TEモードのみ)してもよい。
【0019】
図5は、第1及び第2の電極62、64、第1及び第2のクラッディング領域66、68、及び活性領域70を含む電界吸収型光変調器18の実施形態を示す。
【0020】
第1及び第2の電極62、64は、1つ又は複数の金属層を含む。1つの例示的な実施形態において、第1及び第2の電極62、64のそれぞれは、接着力を向上させ、且つ電極62と64との間のオーミックコンタクトの接触面を形成し、半導体材料を支持するチタンの下側層、及び電界吸収型光変調器18の電気コンタクトを形成する金の上側層を含む。例示された実施形態において、第1の電極62は、図6Aに示されたような、導電材料の連続したストリップから形成された、又は図6Bに示されたような、個々の段間のマイクロストリップライン73により信号電極セグメントの各対が接続されている、直列に接続された導電材料の複数の間隔をおいた電極セグメントから形成された進行波信号電極である。
【0021】
実施形態によっては、第1及び第2の電極62、64は、個々のマイクロストリップラインにより入力及び出力ボンディングパッドに接続される。入力ボンディングパッドは、第1のボンディングワイヤにより駆動回路に接続され、出力ボンディングパッドは、第2のボンディングワイヤを介して外部終端負荷に接続される。電界吸収型光変調器18、入力及び出力ボンディングパッド、及び入力及び出力マイクロストリップラインは、同じ基板74(例えば、InP又はGaAsのような半導体材料のウェハ)上に製造される。外部終端負荷は、抵抗のような任意の適切な終端負荷である。終端負荷及び駆動回路は一般に、インピーダンス整合されて、反射を低減し、電界吸収型光変調器18の活性領域70の両端に供給され得る電圧を最大化する。
【0022】
例示された実施形態において、基板74は電気絶縁性であり、電界吸収型光変調器18、並びに第1及び第2の金属薄膜伝送ライン76、78は、基板74上に形成された導電半導体層80(例えば、n++InGaAs又はn++InGaAsP)上に形成される。他の実施形態において、基板74は導電性であり、電界吸収型光変調器18及び伝送ライン76、78は基板74上に直接的に形成される。
【0023】
第1及び第2のクラッディング領域66、68、及び活性領域70のそれぞれは、1つ又は複数の半導体層を含む。例示された実施形態において、第1及び第2のクラッディング領域66、68はn型にドープされ、活性領域はドープされず、従って、活性領域は比較的少量の不純物(例えば、約5×1015cm−3未満)を含む。第1及び第2のクラッディング領域66、68は、活性領域70の材料組成物よりも低い屈折率を有する材料組成物から形成される。このように、クラッディング領域66、68及び活性領域70は、電界吸収型光変調器18を通過する光の導波路として動作する。活性領域70は光吸収領域82を含み、光吸収領域82は、電界吸収プロセスに必要とされる束縛電子及びホール状態を生じる、伝導帯配列及び価電子帯配列を備える少なくとも1つの量子井戸を含む。
【0024】
図5に示された電界吸収型光変調器18の具現化形態は、リッジ型導波路構造に対応する。他の実施形態において、電界吸収型光変調器10は、様々なタイプの導波路構造により実現され得る。例えば、実施形態によっては、電界吸収型光変調器10は埋め込みヘテロ構造を含む。
【0025】
図7は、様々なバイアス条件のもとでの電界吸収型光変調器18の吸収スペクトル、及びFPレーザ14の出力スペクトル48のグラフを示す。図7に示されるように、電界吸収型光変調器18の吸収端(吸収スペクトル曲線の「ひざ」に対応する)は、印加逆バイアス(VReverse)が増加するにつれて、より長い波長に移動する。実施形態によっては、電界吸収型光変調器18のゼロバイアス(VReverse=0)の吸収端波長は、変調されるべき出力スペクトル48の所定のターゲット波長(例えば、主ピーク)よりも短くなるように設計される。例えば、1つの例示的な具現化形態において、電界吸収型光変調器18のゼロバイアス(VReverse=0)の吸収端波長は、約1555nmのターゲットレージング波長よりも短い約50〜70nmである。電界吸収型光変調器18に印加される逆バイアスが増加されるにつれて、吸収端波長は、より長い波長にシフトし、電界吸収型光変調器18から出射される光信号22が低減される。「オン」状態と「オフ」状態の比は、電界吸収型光変調器18の消光比と呼ばれる。
【0026】
光アイソレータ16により提供される光分離によって、光源10が光アイソレータ16の向こう側で生じる任意の反射に実質的に影響されないようにされる。出力光信号22のスペクトル及び振幅は主に、周囲温度、レーザ14に対する駆動電流、及び電界吸収型光変調器18に印加される電圧により決定される。出力信号22の温度依存性は、FPレーザ14及び電界吸収型光変調器18が出力波長及び吸収端温度係数のパリティを有し、共通の熱環境を共有するように、それらを設計することにより実質的に除去される。
【0027】
具現化形態によっては、FPレーザ14及び電界吸収型光変調器18は、FPレーザ14が、電界吸収型光変調器18の吸収端波長温度係数に実質的に等しい出力波長温度係数を有するように、設計される。例えば、具現化形態によっては、FPレーザ14の出力波長温度係数、及び電界吸収型光変調器18の吸収端波長温度係数は、実質的に等しい(即ち、それらは最大でも±25%だけ異なる)。具現化形態によっては、この温度係数パリティは、同じ半導体材料の群から選択された材料からFPレーザ14及び電界吸収型光変調器18を形成することにより達成される。本明細書で使用される場合、用語「半導体材料の群」は、例えば、親和性の基板上にエピタキシャル薄膜を形成するのに適した適切な元素の原子(例えば、III族、及びV族の元素の原子)の個々のセットからなる2つ又はそれ以上の要素からなる半導体材料のグループを指す。例示的な半導体材料の群は、InP基板上のInGa1−xAs1−y、ここで0≦x≦1、及び0≦y≦1;InP基板上のAlGaIn1−x−yAs、ここで0≦x≦1、及び0≦y≦1;GaAs基板上のInGa1−xAs、ここで0≦x≦1;GaAs基板上のAlGa1−xAs、ここで0≦x≦1を含む。
【0028】
出力波長及び吸収端温度係数のパリティに加えて、FPレーザ14及び電界吸収型光変調器18は、FPレーザ14及び電界吸収型光変調器18が光源10に指定された動作条件の範囲の全体にわたって実質的に同じ温度であるように、共通の熱環境を共有する。例えば、具現化形態によっては、FPレーザ14及び電界吸収型光変調器18の温度は、20℃から90℃の動作温度範囲にわたって最大でも15℃だけ異なる。
【0029】
以下に詳細に説明されるように、光源10のコンポーネントは別個にパッケージングされ得るけれども、共有の熱環境内に包含され、又は光源10のコンポーネントは共有の熱環境を画定する単一のパッケージにパッケージングされ得る。
【0030】
図8A及び8Bは、ファブリーペローレーザ14及び光アイソレータ16が光電子パッケージ90内に包含され、電界吸収型光変調器18が別個の光電子パッケージ92内に包含され、光電子パッケージ90、92の双方が共有の熱環境93内に包含されている光源10の具現化形態を示す。レンズ要素94(例えば、光学レンズ又は回折レンズ)が、FPレーザ14からの出力光42を、光アイソレータ16を通って光ファイバ96の端部へと集束させ、光ファイバ96はフェルール98により保持されている。FPレーザ14、レンズ要素94、及び光アイソレータ16は、第1の光電子パッケージ90内の基板100上に実装される。光学ベンチ位置合わせ技術を用いて、基板100に固定される前にこれらのコンポーネントを位置合わせする。FPレーザ14は、電気インターフェース102を介して駆動回路12に電気接続される。図8A及び図8Bに示された具現化形態において、高度の柔軟性は、偏光に無関係な電界吸収型光変調器18を使用することにより達成される。
【0031】
フェルール104は、光電子パッケージ92において光ファイバ96の端部を保持する。別の実施形態において、フェルール104は、光ファイバ96に接続され得る別個のファイバの端部を保持する。第2の光電子パッケージ92内のレンズ要素106(例えば、光学レンズ又は回折レンズ)は、光ファイバ96から受光した光を電界吸収型光変調器18の入力へ集束させる。フェルール109により保持された光ファイバ108は、電界吸収型光変調器18の出力からの出力光信号22を伝送する。電界吸収型光変調器18及びレンズ要素106は、第2の光電子パッケージ92内の基板111上に実装される。光学ベンチ位置合わせ技術を用いて、基板111に固定される前にこれらのコンポーネントを位置合わせする。電界吸収型光変調器18は、電気インターフェース110を介して駆動回路12に電気接続される。
【0032】
具現化形態によっては、第1及び第2の光電子パッケージ90、92は、同じプリント基板(例えば、マザーボード又はドーターボード)上に実装され、その基板は、共有の熱環境93を画定する光データ伝送システムのエンクロージャ内に包含される。他の具現化形態において、第1及び第2の光電子パッケージ90、92は、共有の熱環境93を画定する光データ伝送システムのエンクロージャ内に包含された異なるプリント基板上に実装される。このタイプに関する1つの例示的な具現化形態において、第1及び第2の光電子パッケージ90、92の一方は、マザーボード上に実装され、他方の光電子パッケージは、光データ伝送システムのエンクロージャ内のマザーボードに接続されたドーターボード上に実装される。このタイプに関する別の例示的な具現化形態において、第1及び第2の光電子パッケージ90、92は、光データ伝送システムのエンクロージャ内の同じマザーボードに接続された異なる個々のドーターボード上に実装される。これらの具現化形態において、第1及び第2の光電子パッケージは、任意の直接的活性温度調整装置から切り離される。
【0033】
図9A及び図9Bは、ファブリーペローレーザ14、光アイソレータ16、及び電界吸収型光変調器18が、同じ光電子パッケージ112内に包含され、その光電子パッケージが光源のコンポーネントに対する共有の熱環境を画定している光源10の具現化形態を示す。レンズ要素114(例えば、光学レンズ又は回折レンズ)が、FPレーザ14からの出力光42を平行化(コリメート)する。コリメート光は、光アイソレータ16を通過する。レンズ要素116(例えば、光学レンズ又は回折レンズ)が、光アイソレータ16からの光出力を電界吸収型光変調器18の入力に集束させる。FPレーザ14、レンズ要素114、116、光アイソレータ16、及び電界吸収型光変調器18は、光電子パッケージ112内の基板118上に実装される。光学ベンチ位置合わせ技術を用いて、基板118に固定される前にこれらのコンポーネントを位置合わせする。フェルール122により保持された光ファイバ120は、電界吸収型光変調器18の出力からの出力光信号22を伝送する。FPレーザ14及び電界吸収型光変調器18はそれぞれ、個々の電気インターフェース124、126を介して駆動回路12に電気接続される。
【0034】
図10は、光源10を製作する方法の実施形態を示す。この方法によれば、FPレーザ14が準備される(ブロック130)。電界吸収型光変調器18が準備される(ブロック132)。光アイソレータ16が準備される(ブロック134)。FPレーザ14、光アイソレータ16、及び電界吸収型光変調器18が、少なくとも1つの光電子パッケージ内に実装される(ブロック136)。
【0035】
上述した出力波長及び吸収端温度係数のパリティ、並びに共有熱環境の結果として、FPレーザの出力スペクトル48の中心と電界吸収型光変調器18のゼロバイアス吸収端波長との間の相対的な波長のオフセットは、比較的広い温度範囲(例えば、20℃〜90℃)にわたって実質的に一定である。この結果、電界吸収型光変調器18の挿入損失は、個々の帯域端のトラック、光出力の振幅、所与の電界吸収型光変調器のバイアスに対する消光比、及び信号振幅が実質的に温度に無関係であるので、実質的に温度によってシフトしない。
【0036】
光源10により生成される光信号22の多モードスペクトルは、出力光信号22が伝播できる距離を制限する。変調光出力信号22の比較的広いスペクトル特性は、多数の実用的な光データ伝送用途の有用な距離の範囲にわたって依然として使用され得る。例えば、約40Gb/秒までのデータレートを有する出力光信号22は、例えば、2nmの二乗平均平方根の線幅、0dBの出射光パワー、及び適切な受信機感度を用いて、多モード光ファイバで約20メートルまで伝播することができる。係る短距離のデータ伝送に対する用途には、コンピュータチップ間の高速信号伝送、データ伝送システム内のプリント基板間の高速信号伝送、バックプレーン間の高速信号伝送、及び別個のデータ伝送システムのラック間の高速信号伝送がある。
【0037】
図11は、光源10を駆動するための駆動回路12の実施形態を示す。非ゼロ復帰(NRZ)ドライバのような、外部デジタル信号源が、デジタル入力駆動信号20を駆動回路12に伝達する。駆動回路12は、個々の伝達関数Tlaser、Tmodでデジタル入力駆動信号20を修正して、駆動信号140、142をFPレーザ14及び電界吸収型光変調器18に同期して印加するRFコンポーネント(例えば、減衰器、フィルタ、及びカプラー)の個々のセット24、26を含む。また、駆動回路12は、FPレーザ14及び電界吸収型光変調器18を動作させるための適切な直流(DC)バイアス条件を確立するための回路要素も含むことができる。
【0038】
他の実施形態は、特許請求の範囲の範囲内にある。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】ファブリーペローレーザ、光アイソレータ、及び電界吸収型光変調器を含む光源の実施形態のブロック図である。
【図2】図1のファブリーペローレーザの具現化形態の線図である。
【図3A】図2のファブリーペローレーザの具現化形態に関する、例示的な光学縦モード、及び波長の関数としてプロットされた例示的な利得特性のセットのグラフである。
【図3B】図3Aの例示的なファブリーペローレーザの具現化形態に関する、波長の関数としてプロットされた光パワースペクトルのグラフである。
【図4】図1の光アイソレータの具現化形態の線図である。
【図5】図1の電界吸収型光変調器の実施形態に関する1つの実現可能な具現化形態の側面図である。
【図6A】導電材料の連続したストリップから形成された単一の電極を有する、図5の電界吸収型光変調器の実施形態に関する具現化形態の上面図である。
【図6B】段間のマイクロストリップラインにより直列に接続された、導電材料の複数の間隔をおいた電極セグメントから形成された単一の電極を有する、図5の電界吸収型光変調器の実施形態に関する具現化形態の上面図である。
【図7】様々なバイアス条件に関して、波長の関数としてプロットされた図5の電界吸収型光変調器に関する具現化形態の吸収係数の例示的なグラフである。
【図8A】図1の光源の具現化形態のブロック図である。
【図8B】図8Aの光源の具現化形態の側面図である。
【図9A】図1の光源の具現化形態のブロック図である。
【図9B】図9Aの光源の具現化形態の側面図である。
【図10】図1の光源の実施形態を製作する方法の流れ図である。
【図11】図1の光源の実施形態を駆動するための駆動回路に関する実施形態のブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多モードレーザ光を生成するように動作可能なファブリーペロー(FP)レーザ(14)と、
通過する前記多モードレーザ光を選択的に吸収、及び伝達するように構成された電界吸収型光変調器(EAM)(18)と、
前記FPレーザ(14)と前記EAM(18)との間の光路上にあり、前記FPレーザ(14)から前記EAM(18)までの前記光路に沿って進む前記多モードレーザ光を伝達するように構成された光アイソレータ(16)とを含む、変調可能な光源(10)。
【請求項2】
前記多モードレーザ光が、波長温度係数を有し、前記EAM(18)が、前記光源(10)に指定された動作温度範囲にわたって±25%以内で前記波長温度係数に等しい吸収端温度係数を有する、請求項1に記載の光源。
【請求項3】
前記FPレーザ(14)及び前記EAM(18)が、共通の半導体材料の群から選択された材料から製造される、請求項1に記載の光源。
【請求項4】
前記FPレーザ(14)及び前記EAM(18)の温度が、前記光源(10)に指定された動作条件のもとで、最大でも15℃だけ異なる、請求項1に記載の光源。
【請求項5】
前記光源(10)が、任意の直接的活性温度調整装置から切り離される、請求項1に記載の光源。
【請求項6】
前記FPレーザ(14)及び前記EAM(18)が、共通の熱環境を共有する、請求項1に記載の光源
【請求項7】
前記FPレーザ(14)及び前記光アイソレータ(16)を包含する第1の光電子パッケージ(90)と、
前記EAM(18)を包含する第2の光電子パッケージ(92)と、
前記第1及び第2の光電子パッケージ(90、92)を接続する光ファイバ(96)とを更に含む、請求項1に記載の光源。
【請求項8】
前記FPレーザ(14)、前記光アイソレータ(16)、及び前記EAM(18)を包含する光電子パッケージ(112)を更に含む、請求項1に記載の光源。
【請求項9】
変調可能な光源(10)を製作する方法であって、
多モードレーザ光を生成するように動作可能なファブリーペロー(FP)レーザ(14)を準備し、
通過する前記多モードレーザ光を選択的に吸収、及び伝達するように構成された電界吸収型光変調器(EAM)(18)を準備し、
前記FPレーザ(14)と前記EAM(18)との間の光路上に光アイソレータ(16)を設けることを含み、
前記光アイソレータ(16)が、前記FPレーザ(14)から前記EAM(18)までの前記光路に沿って進む前記多モードレーザ光を伝達するように構成されている、方法。
【請求項10】
前記FPレーザ(14)及び前記EAM(18)が、共通の半導体材料の群から選択された材料から製造される、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2008−503094(P2008−503094A)
【公表日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−516614(P2007−516614)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【国際出願番号】PCT/US2005/020804
【国際公開番号】WO2006/002029
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(506076606)アバゴ・テクノロジーズ・ジェネラル・アイピー(シンガポール)プライベート・リミテッド (129)
【Fターム(参考)】