説明

電界放出表示装置

【課題】本発明は、電界放出表示装置に関し、特に、カーボンナノチューブを利用した電子エミッタ及び、それを利用した電界放出表示装置に関するものである。
【解決手段】本発明の電界放出表示装置は、絶縁基板と、複数の行電極と、複数の陰極エミッタと、隔離層と、複数の列電極と、陽極素子と、を含む。前記複数の陰極エミッタは、少なくとも一つの電子エミッタを含み、該電子エミッタは、チューブ状構造体であり、その一端が前記行電極に電気的に接続され、その他端が前記陽極電極の方向へ延伸する。前記電子エミッタは、中空であって線状の軸心を有し、前記電子エミッタは、前記線状の軸心を囲む複数のカーボンナノチューブからなり、前記電子エミッタの一つの端部に、複数の電子放出の先端が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界放出表示装置に関し、特に、カーボンナノチューブを利用した電子エミッタ及び、それを利用した電界放出表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電界放出表示装置は、ブラウン管(CRT)表示装置及び液晶表示装置(LCD)と比べて、良好な表示効果、広視野角、低消費電力、小型化などの優れた点を有するので、次世代の表示装置として開発されている。特に、カーボンナノチューブを利用する電界放出表示装置(CNT−FED)は、益々注目されてきている。カーボンナノチューブ(Carbon Nanotube,CNT)は、新型のカーボン材料であり、日本の研究員の飯島澄男よって1991年に発見された(非特許文献1を参照)。カーボンナノチューブは良好な導電性能、良好な化学的安定性、大きなアスペクト比(長さと直径の比)を有し、その先端の面積が理論的に最良の寸法に達するので、先端の面積が小さいほど局部の電界が集中するという理論により、カーボンナノチューブは、現在最良の電界放出表示装置用電子エミッタの一種である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Sumio Iijima、“Helical Microtubules of Graphitic Carbon”、Nature、1991年11月7日、第354巻、p.56‐58
【非特許文献2】Kaili Jiang、Qunqing Li、Shoushan Fan、“Spinning continuous carbon nanotube yarns”、Nature、2002年、第419巻、p.801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電界放出表示装置用電子エミッタは、カーボンナノチューブワイヤからなり、該カーボンナノチューブワイヤが第一端及び該第一端に対向する第二端を有する。前記電子エミッタが運転している場合、前記第一端は、導電基板に電気的に接続される。前記第二端は電子放出の端部として、前記導電基板から延伸している。
【0005】
しかしながら、前記電子エミッタは、機械によって長いカーボンナノチューブワイヤを切断することによって得られているので、前記電子エミッタの、電子放出の端部は平らな断面であり、それ故電子放出能力が低い。それにより、該電子エミッタを利用した電界放出表示装置の電界放出性能を下げる。
【0006】
従って、前記の課題を解決するために、電子放出能力に優れた電子エミッタ及びそれを利用した電界放出表示装置を提供することが必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電界放出表示装置は、絶縁基板と、複数の行電極と、複数の陰極エミッタと、隔離層と、複数の列電極と、陽極素子と、を含む。前記複数の行電極は、相互に平行に間隔を有して前記絶縁基板の一つの表面に設置されており、前記複数の陰極エミッタは、前記複数の行電極の、前記絶縁基板に隣接する表面とは反対の表面に設置される。前記隔離層は、前記複数の行電極の、前記絶縁基板に隣接する表面とは反対の表面に設置され、かつ各々の前記行電極の一部が前記隔離層で被覆され、前記複数の列電極は、相互に平行に間隔を有して、前記隔離層の、前記絶縁基板に隣接する表面とは反対の表面に設置される。前記複数の列電極は、前記隔離層に支持され、前記複数の行電極と相互に垂直に交叉して格子を形成し、前記陽極素子は、ガラス基板と、透明な陽極電極と、該陽極電極の一つの表面に被覆された複数の蛍光領域と、を含む。前記陽極基板は、前記陰極基板に対向して、相互に間隔を置いて設置される。前記陽極電極は、前記陽極基板の、前記陰極基板に対向する表面に設置される。単一の前記蛍光領域は、単一の前記格子に対応して設置される。前記複数の陰極エミッタは、少なくとも一つの電子エミッタを含み、前記電子エミッタは、チューブ状構造体であり、その一端が前記行電極に電気的に接続され、その他端が前記陽極電極の方向へ延伸し、前記電子エミッタは、中空であって線状の軸心を有し、前記電子エミッタは、前記線状の軸心を囲む複数のカーボンナノチューブからなり、前記電子エミッタの一つの端部に、複数の電子放出の先端が形成されている。
【0008】
本発明の電界放出表示装置は、絶縁基板と、複数の行電極と、複数の列電極と、複数の電子放出ユニットと、を含む。前記複数の行電極は、相互に平行に等間隔を有して前記絶縁基板の一つの表面に設置され、前記複数の列電極は、相互に平行に等間隔を有して、前記複数の行電極が設置された前記絶縁基板の一つの表面に設置され、前記複数の行電極と電気絶縁して垂直に交叉して、複数の格子を形成する。単一の前記電子放出ユニットは、単一の前記格子に対応して、一つの陰極電極と、該陰極電極と間隔を有して設置された一つの陽極電極と、陰極エミッタと、前記陽極電極の、前記絶縁基板に隣接する表面とは反対の表面に設置される蛍光層と、を含む。前記陰極電極及び前記陽極電極が、それぞれ前記複数の行電極及び複数の列電極に電気的に接続され、前記陰極エミッタが前記陰極電極に電気的に接続される。前記複数の陰極エミッタは、少なくとも一つの電子エミッタを含む。前記電子エミッタは、チューブ状構造体であり、その一端が前記陰極電極に電気的に接続され、その他端が前記陽極電極の方向へ延伸し、前記電子エミッタは、中空であって線状の軸心を有し、前記電子エミッタは、前記線状の軸心を囲む複数のカーボンナノチューブからなり、前記電子エミッタの一つの端部に、複数の電子放出の先端が形成されている。
【0009】
本発明の電界放出表示装置は、絶縁基板と、複数の行電極と、複数の列電極と、複数の電子放出ユニットと、陽極素子と、を含む。前記複数の行電極は、相互に平行に等間隔を有して前記絶縁基板の一つの表面に設置され、前記複数の列電極は、相互に平行に等間隔を有して、前記複数の行電極が設置された前記絶縁基板の一つの表面に設置され、前記複数の行電極と相互に電気絶縁して垂直に交叉し、複数の格子を形成する。単一の前記電子放出ユニットは、単一の前記格子に対応して、陰極電極と、該陰極電極と間隔を有して設置されたグリット電極と、陰極エミッタとを含む。前記陰極電極及びグリット電極が、それぞれ前記複数の行電極及び複数の列電極に電気的に接続され、前記陰極エミッタが前記陰極電極に電気的に接続される。前記陽極素子は、ガラス陽極基板と、透明な陽極電極と、複数の蛍光領域と、を含む。前記ガラス陽極基板は、前記陰極基板に対向して、相互に間隔を置いて設置され、前記陽極電極は、前記陽極基板の、前記陰極基板に対向する表面に設置され、前記複数の蛍光領域は、前記透明な陽極電極の前記陽極基板に隣接する表面とは反対の表面に被覆され、それぞれ前記電子放出のユニットに対応して設置され、前記複数の陰極エミッタは、少なくとも一つの電子エミッタを含む。前記電子エミッタは、チューブ状構造体であり、その一端が前記陰極電極に電気的に接続され、その他端が前記グリッド電極の方向へ延伸し、前記電子エミッタは、中空であって線状の軸心を有し、前記電子エミッタは、前記線状の軸心を囲む複数のカーボンナノチューブからなり、前記電子エミッタの一つの端部に、複数の電子放出の先端が形成されていること。
【発明の効果】
【0010】
従来の技術と比べると、本発明の電界放出表示装置において、複数の陰極エミッタは、少なくとも一つの電子エミッタを含む。前記電子エミッタは、チューブ状構造体である。該チューブ状構造体は、複数の電子放出先端を有するので、前記電子エミッタから、大きな放出電流を流すことができる。更に、前記チューブ状構造体は、複数の電子放出の先端を有する。隣接する二つの前記カーボンナノチューブの先端の距離は、チューブ状構造体の前記開口部から離れるにつれて、漸次に増加する。これにより、前記カーボンナノチューブの先端の間に、電界の遮蔽効果を低下することができる。最後に、電子エミッタ及びそれを利用した電界放出表示装置は、複数の電子放出の先端を有するので、該電子エミッタから電子を容易に放出させて、前記電子エミッタの電界放出性能を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1に係る電界放出表示装置の断面図である。
【図2】本発明の実施例1に係る電界放出表示装置の立体図である。
【図3】本発明の実施例1に係る電界放出表示装置における電子エミッタの構造を示す図である。
【図4】図3中の電子エミッタのSEM写真である。
【図5】図3中の電子エミッタの断面図である。
【図6】図3中の電子エミッタの、電子放出部のSEM写真である。
【図7】図3中の電子エミッタの、電子開口部のSEM写真である。
【図8】図3中の電子エミッタの、電子放出の先端のTEM写真である。
【図9】本発明の実施例1に係るカーボンナノチューブフィルムの一片のSEM写真である。
【図10】本発明の実施例1に係るカーボンナノチューブワイヤのSEM写真である。
【図11】本発明の実施例1に係るねじれたカーボンナノチューブワイヤのSEM写真である。
【図12】本発明の実施例1に係る複数のカーボンナノチューブフィルム又は/及びカーボンナノチューブワイヤからなる織物の模式図である。
【図13】図3中の電子エミッタの製造工程における管状カーボンナノチューブ予備体のSEM写真である。
【図14】本発明の電界放出表示装置における他の電子エミッタの構造を示す図である。
【図15】本発明の実施例2に係る電界放出表示装置の断面図である。
【図16】本発明の実施例2に係る電界放出表示装置の立体図である。
【図17】本発明の実施例3に係る電界放出表示装置の上面図である。
【図18】本発明の実施例3に係る電界放出表示装置の断面図である。
【図19】本発明の実施例4に係る電界放出表示装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0013】
(実施例1)
図1と図2を参照すると、本実施例の電界放出表示装置100aは、絶縁基板110aと、複数の行電極120aと、複数の列電極と140aと、複数の陰極エミッタ150aと、隔離層と、陽極基板160aと、陽極電極180aと、複数の蛍光領域190aと、を含む。前記複数の行電極120aは、相互に平行に間隔を有して前記絶縁基板110aの一つの表面に設置される。前記複数の陰極エミッタ150aは、前記行電極120aの、前記絶縁基板110aに隣接する表面とは反対の表面に設置されて前記行電極120aに電気的に接続して、且つ該複数の陰極エミッタ150aがマトリックス状に配列されている。前記隔離層は、相互に平行に間隔を有する複数の帯状の隔離体130aからなる。該複数の隔離体130aと前記複数の行電極120aとは、相互に垂直に交叉して設置され、各々の前記行電極120aの一部は前記隔離体130aで被覆される。前記複数の隔離体130aの、前記複数の陰極エミッタ150aに対応する場所には、複数の透過孔170aが形成されている。前記複数の列電極140aは、前記複数の行電極120aと電気絶縁して、前記隔離体130aに設置されている。前記列電極140aの、前記隔離体130aの透過孔170aに対応する場所に、複数の透過孔170bが形成されている。前記透過孔170aと、それに対応する前記透過孔170bとは相互に貫通して設置される。前記陰極エミッタ150aは、前記透過孔170a及び前記透過孔170bの内に貫通して延伸している。即ち、前記陰極エミッタ150aは、前記複数の行電極120aと前記複数の列電極と140aと交叉している場所に設置される。一つの前記陰極エミッタ150aは、単一の前記蛍光領域190aに対向して設置される。即ち、前記複数の行電極120aと前記複数の列電極140aと交叉している場所は、前記蛍光領域190aに対向している。
【0014】
前記絶縁基板110aは、ガラス、セラミックス又は二酸化硅素からなる。本実施例において、その材料は、ガラスである。
【0015】
前記複数の行電極120aは、ストリップ状または帯状であり、相互に平行に等間隔を有して、前記絶縁基板110aの一つの表面に設置される。該行電極120aは、銅、金、銀、酸化インジウムスズ又は導電ペーストなどの材料からなる。本実施例において、前記行電極120aは、銀電極である。
【0016】
前記複数の隔離体130aは、前記複数の行電極120aと相互に垂直に交叉して設置される。各々の前記行電極120aの一部は前記隔離体130aで被覆される。前記複数の隔離体130aの、前記複数の陰極エミッタ150aに対応する場所には、複数の透過孔170aが形成されている。前記透過孔170aと、それに対応する前記透過孔170bと、は相互に貫通して設置される。前記陰極エミッタ150aは、前記透過孔170a及び前記透過孔170bの内に貫通して延伸している。即ち、前記陰極エミッタ150aは、前記複数の行電極120aと前記複数の列電極と140aと交叉している場所に設置される。前記複数の陰極エミッタ150aの形状は制限されない。前記複数の隔離体130aは、ガラス、セラミックス又は二酸化硅素からなり、その長さが15μm以上である。更に、前記隔離層は、前記複数の透過孔170aを有する隔離板であることもできる。又は、前記隔離層は、前記絶縁基板110aと一体として形成される。本実施例において、前記複数の隔離体130aの長さが20μmである。
【0017】
前記複数の列電極140aは、銅、アルミニウム、金、銀、酸化インジウムスズ又は導電ペーストなどの材料からなる。前記列電極140aの、前記隔離体130aの透過孔170aに対応する場所に、複数の透過孔170bが形成されている。それぞれ前記透過孔170bと前記透過孔170aとは相互に貫通して設置されるので、前記陰極エミッタ150aから放出した電子は、前記透過孔170bを通して射出される。
【0018】
前記陽極電極180aは、ITOフィルムからなり、前記陽極基板160a、前記陽極電極180a及び前記複数の蛍光領域190aは、陽極素子を組み合わせる。該陽極素子は、前記絶縁基板110aに対向して、相互に間隔を置いて設置され、密封の空間が形成されている。
【0019】
図3〜図7を参照すると、前記陰極エミッタ150aは、少なくとも一つの電子エミッタ10を含む。本実施例の電子エミッタ10は、チューブ状構造体である。該チューブ状構造体は、その長手方向に沿って、中空であって線状の軸心(図示せず)を有する。さらに、前記チューブ状構造体には、前記線状の軸心を囲むように複数のカーボンナノチューブが設置されている。前記チューブ状構造体において、前記複数のカーボンナノチューブの大部分は、分子間力で端と端が接続され、前記チューブ状構造体の線状の軸心を軸として、螺旋状に配列して、前記線状の軸心の長手方向に沿って延伸している。前記チューブ状構造体における他のカーボンナノチューブは、螺旋状に配列していなくても、前記螺旋状に延伸した複数のカーボンナノチューブの配列方向及び延伸方向に影響を与えない。前記線状の軸心の長手方向は、前記大部分の複数のカーボンナノチューブの延伸方向と定義される。前記チューブ状構造体の線状の軸心を軸として、前記複数のカーボンナノチューブの大部分が螺旋状に延伸されている方向が螺旋方向と定義される。前記延伸方向と螺旋方向とは、角度α(0°<α≦90°)を成し、本実施例において、前記角度αは、30°以上60°以下である。
【0020】
前記チューブ状構造体は、第一端部102と、該第一端部102に対向して設置される第二端部104と、本体109と、を含む。前記チューブ状構造体は、前記第一端部102から、前記本体109を介して前記第二端部104まで延伸している。前記第一端部102から前記第二端部104までの方向に沿って、前記チューブ状構造体の直径は漸次に減少している。前記第二端部104は、電界放出部として、開口部110と、中空頚部108と、を含む。前記中空頚部108は、円錐体形状であり、前記本体109に接続している。前記複数のカーボンナノチューブの先端106は、前記中空頚部108の末端から伸びて、前記開口部110を囲み、相互に間隔を有して設置され、放射状に形成される。前記電子エミッタ10に電圧を印加する場合、前記中空頚部108によって、電界が集中され、該電子エミッタ10から電子を容易に放出させることができる。
【0021】
図7を参照すると、前記複数のカーボンナノチューブの先端106は、前記第一端部102から離れる方向沿って延伸する。前記カーボンナノチューブの先端106は、前記開口部110と反対の異なる方向に向かって、前記線状の軸心を囲み、放射状に形成される。隣接する二つの前記カーボンナノチューブの先端106の距離は、前記開口部110から離れるにつれて、漸次に増加する。これにより、前記カーボンナノチューブの先端106の間に、電界の遮蔽効果を低下することができる。前記開口部110の内径は、4μm〜6μmである。本実施例において、前記開口部110は、円形であり、その内径が5μmである。
【0022】
図8を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブの先端106は、複数のカーボンナノチューブからなる。前記複数のカーボンナノチューブが分子間力で相互に平行に配列されている。単一の前記カーボンナノチューブの先端106において、一本のカーボンナノチューブは、他の複数のカーボンナノチューブの中から突出している。前記突出したカーボンナノチューブの直径は5nmより小さい。本実施例において、前記突出したカーボンナノチューブの直径は4nmである。隣接する二つの前記カーボンナノチューブの先端106において、二つの前記突出したカーボンナノチューブの距離は0.1μm〜2μmであり、該距離と該突出したカーボンナノチューブの直径の比が20:1〜500:1である。前記距離と前記直径の比は非常に大きい場合、隣接する前記カーボンナノチューブの先端106の、電界の遮蔽効果を低下させることができる。
【0023】
前記チューブ状構造体の本体109の、内径及び外径は、実際の応用に応じて選択することができる。前記チューブ状構造体の、本体109の内径は10μm〜30μmであり、その外径は15μm〜60μmであることが好ましい。本実施例において、その内径は18μmであり、その外径は50μmである。電界の作用により、前記電子エミッタ10は電子を放出ことができるので、該電子エミッタ10は、電界放出表示装置、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)に利用することができる。
【0024】
前記電子エミッタ10の製造方法は、線状の支持体を提供するステップS10と、少なくとも一つのカーボンナノチューブ構造体を提供するステップS20と、前記線状の支持体を囲むように、前記線状の支持体に前記カーボンナノチューブ構造体を巻き付けるステップS30と、前記線状の支持体を取り除いた後、前記カーボンナノチューブ構造体を含む中空の管状カーボンナノチューブ予備体を得るステップS40と、前記中空の管状カーボンナノチューブ予備体を熔断するステップS50と、を含む。
【0025】
前記ステップS10において、前記線状の支持体は、一定の強度及び靭性を有し、前記カーボンナノチューブ構造体を支持することができる。該線状の支持体は、その中心軸を軸として回転し、その中心軸の長手方向に沿って直線移動することができる。前記線状の支持体は、化学方法又は物理方法で取り除かれる。前記線状の支持体の材料は、純粋な金属、合金、またはプラスチックであることができる。前記純粋な金属は、金、銀、銅、又はアルミニウムであり、前記合金は、銅−スズ合金であることができる。更に、前記線状の支持体が銅−スズ合金である場合、97wt%の銅及び3wt%のスズを含むことが好ましい。前記線状の支持体の直径は、実際の応用に応じて選択することができる。本実施例において、前記線状の支持体は金線であり、その直径が18μmである。
【0026】
前記ステップS20において、前記カーボンナノチューブ構造体は、複数のカーボンナノチューブからなり、自立構造を有するものである。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、前記カーボンナノチューブ構造体を独立して利用することができるという形態のことである。即ち、前記カーボンナノチューブ構造体を対向する両側から支持して、前記カーボンナノチューブ構造体の構造を変化させずに、前記カーボンナノチューブ構造体を懸架させることができることを意味する。
【0027】
前記カーボンナノチューブ構造体には、前記複数のカーボンナノチューブが配向し又は配向せずに配置されている。前記複数のカーボンナノチューブの配列方式により、前記カーボンナノチューブ構造体は非配向型のカーボンナノチューブ構造体及び配向型のカーボンナノチューブ構造体の二種に分類される。本実施例における非配向型のカーボンナノチューブ構造体では、カーボンナノチューブが異なる方向に沿って配置され、又は絡み合っている。配向型のカーボンナノチューブ構造体では、前記複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列している。
【0028】
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルム又は少なくとも一本のカーボンナノチューブワイヤからなる。前記カーボンナノチューブフィルムは、ドローン構造カーボンナノチューブフィルム、プレシッド構造カーボンナノチューブフィルム及び綿毛構造カーボンナノチューブフィルムのいずれか一種である。前記カーボンナノチューブフィルムはドローン構造カーボンナノチューブフィルムである場合、その製造方法は、超配列カーボンナノチューブアレイ(非特許文献2を参照)を提供するステップS210と、前記カーボンナノチューブアレイから、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムまたは一つのカーボンナノチューブワイヤ、を引き伸ばすステップS220と、を含む。
【0029】
前記ステップS210において、前記超配列カーボンナノチューブアレイの製造方法は、化学気相堆積法、アーク放電法及びレーザーアブレーション法を採用することができる。該カーボンナノチューブアレイは、互いに平行し、基材に垂直して生長する複数のカーボンナノチューブからなる。前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブであることができる。本実施例において、前記複数のカーボンナノチューブは、多層カーボンナノチューブである。
【0030】
前記ステップS220において、前記カーボンナノチューブ構造体を引き伸ばす工程は、次のサブステップを含む。前記超配列カーボンナノチューブアレイにおける複数のカーボンナノチューブを選択するサブステップS222と、所定の速度で前記複数のカーボンナノチューブを引き出し、複数のカーボンナノチューブセグメントからなる連続のカーボンナノチューブフィルムを形成するサブステップS224と、を含む。
【0031】
前記サブステップS222において、セロテープ(登録商標)、プライヤー、ピンセットなどの工具を利用して、前記超配列カーボンナノチューブアレイから複数のカーボンナノチューブを選択する。前記カーボンナノチューブセグメントは複数の相互に平行に配列されているカーボンナノチューブを含む。前記サブテップS224において、前記超配列カーボンナノチューブアレイにおけるカーボンナノチューブの生長する方向に垂直する方向に沿って、前記カーボンナノチューブを引き出すことが好ましい。
【0032】
具体的に、前記複数のカーボンナノチューブを引き出す工程において、複数のカーボンナノチューブセグメントがそれぞれ基材から脱離すると、前記複数のカーボンナノチューブセグメントが分子間力で端と端で接合され、連続のカーボンナノチューブフィルムが形成される。図9を参照すると、前記カーボンナノチューブセグメントにおけるカーボンナノチューブは、相互に平行し、同じ方向に沿って配列されている。前記カーボンナノチューブセグメントにおいて、少なくとも一本のカーボンナノチューブの長さは、前記カーボンナノチューブセグメントの全長と同じである。従って、前記カーボンナノチューブセグメントの一次元の寸法は、前記カーボンナノチューブの長さによって制限されている。前記カーボンナノチューブ構造体は、積層された複数の前記カーボンナノチューブセグメントを含むことができる。この場合、隣接する前記カーボンナノチューブセグメントは、分子間力で結合されている。前記カーボンナノチューブセグメントの厚さは、0.5nm〜100μmである。
【0033】
引き出すカーボンナノチューブの数量が少ない場合、線状のカーボンナノチューブ構造体、即ち、カーボンナノチューブワイヤが形成される。図10を参照すると、前記カーボンナノチューブワイヤは、分子間力で接続された複数のカーボンナノチューブからなる。この場合、一本のカーボンナノチューブワイヤ(非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ)は、端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブセグメント(図示せず)を含む。前記カーボンナノチューブセグメントは、同じ長さ及び幅を有する。さらに、各々の前記カーボンナノチューブセグメントに、同じ長さの複数のカーボンナノチューブが平行に配列されている。前記複数のカーボンナノチューブはカーボンナノチューブワイヤの中心軸に平行に配列されている。この場合、一本の前記カーボンナノチューブワイヤの直径は、1μm〜1cmである。図11を参照すると、前記カーボンナノチューブワイヤをねじり、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤを形成することができる。ここで、前記複数のカーボンナノチューブは前記カーボンナノチューブワイヤの中心軸を軸に、螺旋状に配列されている。この場合、一本の前記カーボンナノチューブワイヤの直径は、1μm〜1cmである。前記カーボンナノチューブ構造体は、前記非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ、ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ又はそれらの組み合わせのいずれか一種からなる。
【0034】
前記カーボンナノチューブワイヤを形成する方法は、カーボンナノチューブアレイから引き出してなるカーボンナノチューブフィルムを利用する。前記カーボンナノチューブワイヤを形成する方法は、次の三種がある。第一種では、前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの長手方向に沿って、前記カーボンナノチューブフィルムを所定の幅で切断し、カーボンナノチューブワイヤを形成する。第二種では、前記カーボンナノチューブフィルムを有機溶剤に浸漬させて、前記カーボンナノチューブフィルムを収縮させてカーボンナノチューブワイヤを形成することができる。第三種では、前記カーボンナノチューブフィルムを機械加工(例えば、紡糸工程)してねじれたカーボンナノチューブワイヤを形成する。詳しく説明すれば、まず、前記カーボンナノチューブフィルムを紡糸装置に固定させる。次に、前記紡糸装置を動作させて前記カーボンナノチューブフィルムを回転させ、ねじれたカーボンナノチューブワイヤを形成する。
【0035】
前記カーボンナノチューブ構造体は複数のカーボンナノチューブワイヤを含む場合、前記複数のカーボンナノチューブワイヤは平行に並列され、又は交叉して織られ、又はねじれていることができる。図12に複数のカーボンナノチューブワイヤ146からなる織物が示されている。
【0036】
前記ステップS30において、前記線状の支持体に、前記カーボンナノチューブ構造体を巻き付ける工程は、前記カーボンナノチューブ構造体の一端を前記線状の支持部に固定するサブステップS310と、前記線状の支持体を、その中心軸を軸として回転させ、その中心軸の長手方向に沿って直線移動させ、前記カーボンナノチューブ構造体を前記線状の支持部に巻き付けるサブステップS320と、含む。
【0037】
ここで、導電性の前記線状の支持体の長手方向は、大部分の前記複数のカーボンナノチューブの延伸方向と定義される。前記導電性の線状の支持体を軸として、大部分の前記カーボンナノチューブの巻き方向が螺旋方向と定義される。前記螺旋方向と前記延伸方向とは、角度αを成す(0°<α≦90°)。前記カーボンナノチューブ構造体を前記線状の支持体に巻き付けることにより、カーボンナノチューブ層状構造体を形成する。前記カーボンナノチューブ構造体の厚さが一定である場合、前記角度αが大きくなるほど、前記カーボンナノチューブ層状構造体が厚くなる。本実施例において、前記カーボンナノチューブ層状構造体の厚さは6μmである。
【0038】
前記サブステップS40において、化学方法又は物理方法によって、前記線状の支持体を取り除くことができる。前記線状の支持体がアルミニウムや鉄などの活性金属の合金からなる場合、酸性溶液で処理することにより、前記線状の支持体を取り除くことができる。前記線状の支持体が金や銀などの不活性金属の合金からなる場合、加熱蒸発法で前記線状の支持体を取り除くことができる。前記線状の支持体がポリマーからなる場合、外力で前記線状の支持体の中心軸に沿って、該線状の支持体を前記カーボンナノチューブ層状構造体から抜き取ることができる。前記チューブ状構造体の内径は、前記線状の支持体の外径に相当する。本実施例において、前記線状の支持体は金線であり、該金線の取り除く方法は、前記金線の両端を別々に二つの電極に電気的に接続する第一ステップと、真空環境下で前記二つの電極によって、前記金線に電流を提供して、該金線を加熱蒸発させる第二ステップと、を含む。
【0039】
図13を参照すると、サブステップS40で得られた中空の管状カーボンナノチューブ予備体は、接続された複数のカーボンナノチューブからなる。前記チューブ状構造体において、前記複数のカーボンナノチューブの大部分は、分子間力で端と端が接続され、前記チューブ状構造体の線状の軸心を軸として、螺旋状に配列して、前記線状の軸心の長手方向に沿って延伸している。前記チューブ状構造体における他のカーボンナノチューブは、螺旋状に配列してなくても、前記螺旋状に延伸した複数のカーボンナノチューブの配列方向及び延伸方向に影響を与えない。前記線状の軸心の長手方向は、前記大部分の複数のカーボンナノチューブの延伸方向と定義される。前記チューブ状構造体の、線状の軸心を軸として、前記複数のカーボンナノチューブの大部分が螺旋状に延伸されている方向は、螺旋方向と定義される。前記延伸方向と螺旋方向とは、角度α(0°<α≦90°)を成し、本実施例において、前記角度αは、30°以上60°以下である。
【0040】
前記中空の管状カーボンナノチューブ予備体に電流を流して熔断する方法は、真空又は不活性ガスの雰囲気で行われる。前記ステップS50は、前記中空の管状カーボンナノチューブ予備体を真空室又は不活性ガスを充満する反応室に置くサブステップS512と、前記中空の管状カーボンナノチューブ予備体の長手方向に沿う対向する両端に電圧を印加して、電流で前記管状カーボンナノチューブ予備体を所定の場所で熔断するサブステップS514と、を含む。
【0041】
前記サブステップS512において、陰極電極及び陽極電極は前記真空室内に設置される。前記陰極電極及び陽極電極は、それぞれ前記中空の管状カーボンナノチューブ予備体の、長手方向に沿う対向する両端に電気的に接続する。前記真空室内の真空度は、2×10−5Pa以下である。本実施例において、前記真空室内の真空度は2×10−5Paである。前記反応室の構造は前記真空室と同じであり、該反応室内の不活性ガスが、ヘリウム又はアルゴンである。
【0042】
前記サブステップS514において、前記管状カーボンナノチューブ予備体に印加する電圧は、前記管状カーボンナノチューブ予備体の内径、外径及び長さに関係する。本実施例において、前記管状カーボンナノチューブ予備体の内径は25μmであり、その外径は40μmであり、その長さは2cmであり、その直流電圧40ボルトである。これにより、前記管状カーボンナノチューブ予備体は、直流電流で加熱される。前記管状カーボンナノチューブ予備体の加熱温度は、2000K〜2400Kである。前記管状カーボンナノチューブ予備体の長手方向に沿って、前記管状カーボンナノチューブ予備体の異なる場所で電気抵抗が異なるので、前記管状カーボンナノチューブ予備体の異なる場所で温度が異なる。即ち、前記管状カーボンナノチューブ予備体において、電気抵抗が大きい場所で温度が高くなる。従って、所定の場所で前記管状カーボンナノチューブ予備体を熔断することができる。本実施例において、前記管状カーボンナノチューブ予備体を1時間以内で加熱した後、該管状カーボンナノチューブ予備体を所定の場所で熔断して、二つのチューブ状構造体を形成する。
【0043】
前記管状カーボンナノチューブ予備体を熔断した後、前記管状カーボンナノチューブ予備体の炭素原子は、熔断された場所から蒸発する。前記熔断された場所に近いほど、炭素原子が簡単に蒸発する。これにより、前記チューブ状構造体の熔断された端部に、中空の頚部が形成される。前記熔断工程を行う時、隣接する二つの熔断された端部の間に、微小な間隙を形成するので、該二つの熔断された端部の間にアーク放電が発生し、前記蒸発した炭素原子を電離させ、炭素イオンを形成する。前記炭素イオンは、前記熔断された端部と衝突またはエッチングするので、前記熔断された端部に複数のカーボンナノチューブの先端106を形成する。
【0044】
前記ステップS50において、前記中空の管状カーボンナノチューブ予備体を、電子衝突法によって熔断させる方法は、前記の管状カーボンナノチューブ予備体を真空室に置くサブステップS522と、前記中空の管状カーボンナノチューブ予備体の長手方向に沿って対向する両端に電圧を印加して、該中空の管状カーボンナノチューブ予備体を1800K〜2500Kで加熱するサブステップS524と、電子ビームを前記中空の管状カーボンナノチューブ予備体の所定の場所に衝突させて、該中空の管状カーボンナノチューブ予備体を熔断するサブステップS526と、を含む。
【0045】
前記サブステップS522において、前記真空室内の真空度は、1×10−4Pa以下である。本実施例において、その真空度は2×10−5Paである。
【0046】
サブステップS526において、前記電子ビームは、熱陰極などの電子放出源によって放出される。該電子放出源を利用して電子ビームを放出して、前記中空の管状カーボンナノチューブ予備体と衝突させる。前記電子放出源は、前記真空室内に設置される。前記電子放出源と前記中空の管状カーボンナノチューブ予備体との距離は、50μm〜2mmである。前記電子放出源で前記中空の管状カーボンナノチューブ予備体の所定の場所に電子ビームを放出する場合、該所定の場所の温度は、前記中空の管状カーボンナノチューブ予備体における他の場所の温度に比べて、最も高い。これにより、前記中空の管状カーボンナノチューブ予備体は、前記所定の場所で熔断され、二つの前記電子エミッタ10に形成される。
【0047】
前記ステップS50において、前記中空の管状カーボンナノチューブ予備体がレーザービーム照射方法で熔断される方法は、レーザービームで前記中空の管状カーボンナノチューブ予備体の所定の場所を照射するサブステップS532と、前記中空の管状カーボンナノチューブ予備体の長手方向に沿って対向する両端に電圧を印加して、前記中空の管状カーボンナノチューブ予備体を前記所定の場所に熔断するサブステップS534と、を含む。
【0048】
前記サブステップS532において、前記中空の管状カーボンナノチューブ予備体は、空気中又は酸化性ガス雰囲気中に設置される。前記レーザービームは、COレーザー、半導体レーザー及びUVレーザーなどのレーザーである。前記レーザービームのパワーが1ワット〜60ワットであり、その走査速度が100mm/s〜2000mm/sである。本実施例において、前記レーザービームのパワーが112ワットであり、その走査速度が1000mm/sである。前記レーザービームのパワーが大きいほど、前記レーザービームで前記中空の管状カーボンナノチューブ予備体を照射する時間が短くなる。
【0049】
前記サブステップS534において、前記中空の管状カーボンナノチューブ予備体は、真空室又は不活性ガスが充満する反応室に設置される。前記レーザービームから放出した熱で前記中空の管状カーボンナノチューブ予備体における所定の場所が酸化される。これにより、前記所定の場所で電気抵抗が増加される。前記中空の管状カーボンナノチューブ予備体において、電気抵抗が大きい場所で温度が高くなる。従って、所定の場所で前記中空の管状カーボンナノチューブ予備体を熔断することができる。
【0050】
前記中空の管状カーボンナノチューブ予備体は、真空室又は不活性ガスが充満する反応室に設置される場合、前記サブステップS532及び前記サブステップS534は、同時に行われる。
【0051】
前記電子エミッタ10の製造方法は、次の優れた点がある。第一に、前記電子エミッタ10の製造方法は、簡単であり、該前記電子エミッタ10の製造効率を高めることができる。第二に、前記中空の管状カーボンナノチューブ予備体を熔断することにより、前記チューブ状構造体の一端に複数の電子放出の先端が形成され、前記電子エミッタ10の電子放出性能を高めることができる。
【0052】
更に、前記電子エミッタ10の電子を容易に放出させるために、前記電子エミッタ10において、複数の電子放出の先端の、複数のカーボンナノチューブの間に、低仕事関数の材料を堆積させる。前記低仕事関数の材料は、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、六ホウ化トリウム及びホウ化イットリウム又はそれらの混合物のいずれか一種である。
【0053】
図14を参照すると、電子エミッタ20の構造は前記電子エミッタ10の構造と比べて、次の異なる点がある。電子エミッタ20は、導電性線状支持体26を含む。即ち、前記電子エミッタ20は、チューブ状構造体24及び前記導電性線状支持体26を含む。前記チューブ状構造体24の材料及び構造は、前記電子エミッタ10のチューブ状構造体と同じである。前記チューブ状構造体24は複数のカーボンナノチューブからなり、前記導電性線状支持体26を囲むように設置されている。前記チューブ状構造体24において、前記複数のカーボンナノチューブの大部分は、分子間力で端と端が接続され、前記導電性線状支持体26を軸として、螺旋状に配列して、前記線状の中心軸の長手方向に沿って延伸している。前記チューブ状構造体24における他のカーボンナノチューブは、螺旋状に配列していなくても、前記螺旋状に延伸した複数のカーボンナノチューブの配列方向及び延伸方向に影響を与えない。ここで、前記導電性線状支持体26の長手方向は、前記大部分の複数のカーボンナノチューブの延伸方向と定義される。前記導電性線状支持体26を軸として、前記大部分のカーボンナノチューブの巻き方向が螺旋方向と定義される。前記延伸方向と螺旋方向とは、角度α(0°<α≦90°)を成し、本実施例において、前記角度αは、30°〜60°である。前記導電性線状支持体26は、前記チューブ状構造体24より短くても、前記チューブ状構造体24の第二端部202から、該チューブ状構造体24の外部へ延伸してもいい。
【0054】
前記導電性線状支持体26は、前記チューブ状構造体24を支持できるので、該チューブ状構造体24は変形されない。且つ前記導電性線状支持体26により、前記電子エミッタ20の導電性を高めることができるので、該電子エミッタ20から電子を容易に放出させることができる。前記導電性線状支持体26は、一定の強度及び靭性を有する。該電性線状支持体26は、純粋な金属、合金、導電性を有する非金属及び金属酸化物からなる線状構造体であり(例えば、前記電性線状支持体26は、金、銀、銅及びアルミニウム、銅−スズ合金及び炭繊維からなる)、または、前記導電性線状支持体26は、導電層で被覆された複合の線状構造体である(例えば、銅−スズ合金の表面にアルミニウム膜を被覆することにより、または、柔靭性を有する繊維線の表面に金膜を被覆することにより、該電性線状支持体26を形成する)。前記線状の支持体の直径は、10μm〜30μmであることが好ましい。本実施例において、前記導電性線状支持体26は、金線であり、その直径が18μmである。
【0055】
前記電子エミッタ20の製造方法は、導電性線状支持体を提供するステップS100と、少なくとも一つのカーボンナノチューブ構造体を提供するステップS200と、前記導電性線状支持体を囲むように、前記導電性線状支持体に前記カーボンナノチューブ構造体を巻き付けて、カーボンナノチューブ複合線状構造体を形成するステップS300と、前記カーボンナノチューブ複合線状構造体を熔断するステップS400と、を含む。
【0056】
前記電子エミッタ20の製造方法は前記電子エミッタ10の製造方法と比べて、次の異なる点がある。前記電子エミッタ20において、前記導電性線状支持体26を含む。更に、前記ステップS400の前に、前記導電性線状支持体26が取り除かれない。
【0057】
前記チューブ状構造体24と前記導電性線状支持体26との溶融点は異なる。前記S400において、前記チューブ状構造体24の溶融点は、前記導電性線状支持体26の溶融点よりも低い場合、該チューブ状構造体24が前記導電性線状支持体26より速く熔断される。これにより、前記チューブ状構造体24及び前記導電性線状支持体26を加熱させた場合、前記チューブ状構造体24はその一つの部位が熔断されると、前記導電性線状支持体26の、前記チューブ状構造体24の熔断部位に対応する部位の電気抵抗は増大して、その温度が高くなる。よって、前記導電性線状支持体26は、前記チューブ状構造体24の熔断部位に対応する部位から熔断される。これとは逆に、前記チューブ状構造体24の溶融点が、前記導電性線状支持体26の溶融点よりも高い場合、前記導電性線状支持体26がチューブ状構造体24より速く熔断される。これにより、前記チューブ状構造体24及び前記導電性線状支持体26を加熱させた場合、前記導電性線状支持体26はその一つの部位が熔断されると、前記チューブ状構造体24の、前記導電性線状支持体26の熔断部位に対応する部位の電気抵抗は増大して、その温度が高くなる。よって、前記チューブ状構造体24は、前記導電性線状支持体26の熔断部位に対応する部位から熔断される。
【0058】
前記電子エミッタ20の製造方法は、次の優れた点がある。第一に、前記電子エミッタ20の製造方法は簡単であり、該前記電子エミッタ20の生産効率を高めることができる。第二に、前記カーボンナノチューブ複合線状構造体を熔断することにより、電子エミッタ20の一端に複数の電子放出の先端を形成でき、前記電子エミッタ20の電子放出性能を高めることができる。第三に、前記導電性線状支持体26は、前記カーボンナノチューブ複合線状構造体の中に設置されるので、該チューブ状構造体24は簡単に変形されることができない。第四に、前記導電性線状支持体26は、前記電子エミッタ20の導電性を高めることができるので、該電子エミッタ20から簡単に電子を放出させることができる。
【0059】
更に、導電性接着剤によって、前記チューブ状構造体の第一端部102又は202を前記行電極120aに電気的に接続させることができる。前記チューブ状構造体は、前記行電極120aに電気的に接続される。
【0060】
前記電子エミッタ10又は前記電子エミッタ20は、陰極エミッタ150aとして、植毛技術又は接着技術によって前記隔離層における透過孔170bの内に設置される。単一の前記陰極エミッタ150aは、少なくとも一つの前記電子エミッタ10又は前記電子エミッタ20を含むことができる。単一の前記陰極エミッタ150aが、複数の電子エミッタ10又は前記電子エミッタ20を含む場合、それぞれ前記複数の電子エミッタ10又は電子エミッタ20は、間隔を置いて設置される。
【0061】
前記複数の行電極120a、前記複数の列電極140a及び前記陽極電極180aに、異なる電圧を印加する場合(一般に、前記行電極120aを接地し、前記列電極140aに数十ボルト〜数百ボルトの電圧を印加し、前記陽極電極180aに前記列電極140aより大きい電圧を印加する)、前記陰極エミッタ150aは、少なくとも一つの前記電子エミッタ10又は前記電子エミッタ20を含むので、前記行電極120a及び前記列電極140aの間に生じた電場によって、前記電子エミッタ10又は前記電子エミッタ20から電子が放出される。前記電子は、前記列電極140aに向けて飛び、前記列電極140aにおける透過孔170bを透過した後、前記行電極120a及び前記陽極電極180aの間に生じた電場によって、該陽極電極180aに到達する。前記陽極電極180aに被覆された前記蛍光領域190aは、前記陰極エミッタ150aに対向して、相互に間隔を置いて設置されるので、前記電子は前記蛍光領域190aに衝突して、該電界放出表示装置100aを発光させる。前記複数の行電極120aはそれぞれ絶縁を保持し、前記複数の列電極140aはそれぞれ絶縁を保持するので、前記行電極120a及び前記列電極140aの間に異なる電圧を印加することにより、異なる場所の前記陰極エミッタ150aから電子を放出させて、前記陽極電極180aに衝突し、前記蛍光領域190aの異なる場所を発光させることにより、前記電界放出表示装置100aは異なる画像を表示する。
【0062】
本実施例の電界放出表示装置100aは、次の優れた点がある。第一には、前記電界放出表示装置100aにおける電子エミッタは、チューブ状構造体を含む。該チューブ状構造体は、複数の電子放出の先端を有する。隣接する二つの前記カーボンナノチューブの先端の距離は、チューブ状構造体の前記開口部から離れるにつれて、漸次に増加する。これにより、前記カーボンナノチューブの先端の間で、電界の遮蔽効果を低下させることができる。第二には、前記電子エミッタは、前記複数の電子放出の先端を有するので、前記電子エミッタの電流密度を増加させることができ、該電子エミッタの電子放出の量を増加させることができる。従って、電界放出表示装置100aにおける電子エミッタの数量を減少させることができる。従って、前記電界放出表示装置100aの構造が簡単になる。
【0063】
(実施例2)
図15及び図16を参照すると、本実施例の電界放出表示装置100bは、絶縁基板110bと、複数の行電極120bと、複数の隔離体130bと、複数の列電極140bと、複数の陰極エミッタ150bと、陽極基板160bと、陽極電極180b及び複数の蛍光粉領域190bと、を含む。前記複数の行電極120bは、相互に平行に等間隔を有して前記絶縁基板110bの、一つの表面に設置される。前記複数の隔離体130bは、帯状の構造体であり、相互に間隔を有して前記行電極120bの、前記絶縁基板110bに隣接する表面とは反対の表面に設置される。該複数の隔離体130bと前記複数の行電極120bとは、相互に垂直に交叉して設置され、各々の前記行電極120bの一部は前記隔離体130bで被覆される。前記複数の列電極140bは、前記複数の行電極120bと電気絶縁して、前記隔離体130bに設置されている。前記複数の陰極エミッタ150bは、前記行電極120bの、前記絶縁基板110bに隣接する表面とは反対の表面に設置されて前記行電極120bと電気的に接続して、且つ該複数の陰極エミッタ150bはマトリックス状に配列されている。前記複数の陰極エミッタ150bは、前記隣接する二つの列電極140bの間に、前記複数の隔離体130bによって、前記隣接する二つの列電極140bと電気絶縁して設置される。前記複数の行電極120bと前記複数の列電極140bとは、相互に垂直に交叉して設置され、複数の格子(図示せず)を形成する。各々の前記蛍光領域190bは、それぞれ前記複数の格子に一つずつ対応して設置される。本実施例において、前記絶縁基板110b、複数の行電極120b、複数の隔離体130b、複数の列電極140b、複数の陰極エミッタ150b、陽極基板160b、陽極電極180b及び複数の蛍光粉領域190bの構造、材料及びそれらの製造方法は、前記実施例1における前記絶縁基板110a、前記複数の行電極120a、前記複数の列電極140a、前記複数の陰極エミッタ150a、前記隔離層、前記陽極基板160a、前記陽極電極180a及び前記複数の蛍光領域190aのものと同じである。
【0064】
前記複数の行電極120b、複数の列電極140b及び前記陽極電極180bに、異なる電圧を印加する場合(一般に、前記行電極120bを接地し、前記列電極140bに数十ボルト〜数百ボルトの電圧を印加し、前記陽極電極180bに前記列電極140bより大きい電圧を印加する)、前記複数の蛍光領域190bに対応する前記陰極エミッタ150bは、少なくとも一つの前記電子エミッタ10又は前記電子エミッタ20を含むので、前記行電極120b及び前記列電極140bの間に生じた電場によって、前記電子エミッタ10又は前記電子エミッタ20から電子が放出される。前記電子は、前記列電極140bに向けて飛び、前記行電極120b及び前記陽極電極180bの間に生じた電場によって、該陽極電極180bに到達する。前記陽極電極180bに被覆された前記蛍光領域190bは、前記列電極140bに対向して、且つ相互に間隔を置いて設置されるので、前記放出された電子は前記蛍光領域190bに衝突して、該電界放出表示装置100bを発光させる。前記複数の行電極120bはそれぞれ絶縁を保持し、前記複数の列電極140bはそれぞれ絶縁を保持するので、前記行電極120b及び前記列電極140bの間に異なる電圧を印加することにより、異なる場所の前記陰極エミッタ150bから電子を放出させて、前記陽極電極180bに衝突し、前記蛍光領域190bの異なる場所を発光させることにより、前記電界放出表示装置100bは異なる画像を表示する。
【0065】
(実施例3)
図17と図18を参照すると、本実施例の電界放出表示装置200は、絶縁基板202と、複数の行電極204と、複数の列電極206と、複数の電子放出ユニット220と、を含む。前記複数の行電極204は、相互に平行に等間隔を有して前記絶縁基板の、一つの表面に設置される。前記複数の列電極206は、相互に平行に等間隔を有して、前記複数の行電極204が設置された前記絶縁基板の表面に設置され、前記複数の列電極206と相互に垂直に交叉する場所に隔離体216が設置される。前記隣接する二つの行電極204及び前記隣接する二つの列電極206が交叉して、複数の格子214が形成される。一つの前記格子214に、単一の電子放出ユニット220が設置される。
【0066】
単一の前記電子放出ユニット220は、陰極電極212と、該陰極電極212と間隔を有して設置された陽極電極210と、陰極エミッタ208と、蛍光層226と、を含む。前記蛍光層226は、前記陽極電極210の、前記絶縁基板202に隣接する表面とは反対の表面に設置される。前記陰極エミッタ208は、前記陽極電極210及び前記陰極電極212の間に設置され、且つ該陰極エミッタ208の一端が前記陰極電極212に電気的に接続して、その他端が前記陽極電極210へ延伸している。前記陰極エミッタ208は、直接前記絶縁基板202の、前記複数の行電極204及び前記列電極206が設置された表面に設置され、又は該表面と間隔を有して設置される。前記陰極エミッタ208は、前記絶縁基板202の、前記複数の行電極204及び前記列電極206が設置された表面に間隔を有して設置される場合、該陰極エミッタ208の電子放出能力が高まる。本実施例において、同じ行の前記電子放出ユニット220における陽極電極210は、該行の行電極204に電気的に接続して、同じ列の前記電子放出ユニット220における陰極電極212は、該列の列電極220に電気的に接続する。
【0067】
本実施例の電界放出表示装置200は、前記実施例1及び実施例2における電界放出表示装置100aと、電界放出表示装置100bとくらべると、次の主な異なる点がある。本実施例において、前記陰極エミッタ208は、前記絶縁基板202に平行する。前記実施例1及び実施例2における電界放出表示装置100a及び電界放出表示装置100bにおいて、前記陰極エミッタ150a及び、前記陰極エミッタ150bは、それぞれ前記絶縁基板110a及び前記絶縁基板110bに垂直する。
【0068】
前記絶縁基板202は、ガラス、セラミックス、ポリマー、石英などの材料からなり、その寸法及び厚さは制限されない。本実施例において、前記絶縁基板202は、ガラスからなり、その厚さが1mm以上であり、その辺長が1cm以上である。
【0069】
前記複数の行電極204及び前記複数の列電極206は、金属層などの導電材料からなる。本実施例において、前記複数の行電極204及び前記複数の列電極206は、導電ペーストで印刷された平面の導電体であり、それらの幅が30μm〜100μmであり、厚さが10μm〜50μmである。隣接する前記行電極204の距離が50μm〜2cmであり、隣接する前記列電極206の距離が50μm〜2cmである。本実施例において、前記複数の行電極204と前記複数の列電極206とは角度γで(10°≦γ≦90°)交叉し、該角度γが90°であることが好ましい。本実施例において、スクリーン印刷法で導電ペーストを前記絶縁基板202の一つの表面に印刷することにより、前記複数の行電極204及び前記複数の列電極206が形成される。前記導電ペーストは、金属粉、低融点ガラス粉末及び接着剤からなり、前記金属粉が銀粉であることが好ましい。前記接着剤は、テルピネオール又はエチルセルロースであることが好ましい。前記導電ペーストにおいて、前記金属粉の重量比は、50%〜90%であり、前記低融点ガラス粉末の重量比は、2%〜10%であり、前記接着剤の重量比は、8%〜40%である。
【0070】
前記陰極電極212及び前記陽極電極210は、金属層などの導電材料からなる。本実施例において、前記陰極電極212及び前記陽極電極210は、平面の導電体であり、その寸法が、前記格子214の寸法に関係する。前記陰極電極212は、直接前記列電極206に電気的に接続され、前記陽極電極210は、直接前記行電極204に電気的に接続される。前記陰極電極212及び前記陽極電極210の長さが20μm〜1.5cmであり、その幅が30μm〜1cmであり、その厚さが10μm〜500μmである。好ましくは、前記陰極電極212及び前記陽極電極210の長さが100μm〜700μmであり、その幅が50μm〜500μmであり、その厚さが20μm〜100μmである。本実施例において、前記陰極電極212及び前記陽極電極210は、導電ペーストであり、スクリーン印刷法で前記導電ペーストを前記絶縁基板202の一つの表面に印刷して形成される。前記導電ペーストの成分は、前記電極を含んでいる導電ペーストの成分と同じである。
【0071】
前記陰極エミッタ208は、平行且つ等間隔を有して配列された少なくとも一つの電子エミッタ218を含む。前記電子エミッタ218は、前記第一実施例の電子エミッタ10及び前記第二実施例の電子エミッタ20であることができる。前記電子エミッタ218はチューブ状構造体であり、該チューブ状構造体は、前記絶縁基板202の表面に平行して、前記陽極電極210へ延伸する電子放出の先端222を有する。
【0072】
少なくとも一つの前記管状カーボンナノチューブ予備体または少なくとも一つの前記カーボンナノチューブ複合線状構造体を前記陰極電極212及び前記陽極電極210の、前記絶縁基板に隣接する表面とは反対の表面に被覆した後、レーザービーム照射方法、電子ビームの照射方法で前記陰極212及び前記陽極電極210の間の管状カーボンナノチューブ予備体またはカーボンナノチューブ複合線状構造体を切断して、前記陰極電極212に固定された前記陰極エミッタ208を形成する。
【0073】
(実施例4)
図19を参照すると、本実施例の電界放出表示装置300は、絶縁基板302と、複数の行電極306と、複数の列電極304(図示せず)と、複数の電子放出ユニット320と、陽極素子330と、を含む。前記複数の行電極306は、相互に平行に等間隔を有し前記絶縁基板302の、一つの表面に設置される。前記複数の列電極304(図示せず)は、相互に平行に等間隔を有して、前記複数の行電極306が設置された前記絶縁基板302の表面に設置され、且つ前記複数の行電極306と相互に垂直に交叉して設置され、複数の格子(図示せず)を形成する。前記複数の列電極304と前記複数の行電極306とは電気絶縁を保持して設置される。単一の前記電子放出ユニット320は、単一の前記格子に対応して、陰極電極312と、該陰極電極312と間隔を有して設置されたグリット電極310と、陰極エミッタ308と、を含む。それぞれ前記陰極電極312及び前記グリット電極310は、前記複数の行電極306及び複数の列電極304に電気的に接続して、前記陰極エミッタ308が前記陰極電極312に電気的に接続する。
【0074】
前記グリット電極310は、前記陰極電極312に対応して間隔を有して設置される。前記陰極エミッタ308は、前記グリット電極310及び前記陰極電極312の間に設置され、且つ該陰極エミッタ308の一端が前記陰極電極312に電気的に接続して、その他端が前記グリット電極310へ延伸する。前記陰極エミッタ308は、前記絶縁基板302の、前記複数の行電極306及び前記列電極304が設置された表面に設置され、又は該表面と間隔を有して設置される。前記陰極エミッタ308は、前記絶縁基板302の、前記複数の行電極306及び前記列電極304が設置された表面に間隔を有して設置される場合、該陰極エミッタ308の電子放出能力が高まる。本実施例において、同じ行の前記電子放出ユニット320における陰極電極312は、該行の行電極306に電気的に接続して、同じ列の前記電子放出ユニット320におけるグリッド電極310は、該列の列電極304に電気的に接続する。
【0075】
前記陽極素子330は、ガラス陽極基板332と、透明な陽極電極334と、複数の蛍光領域336と、を含む。前記ガラス陽極基板332は、前記絶縁基板302に対向して、相互に間隔を置いて設置される。前記陽極電極334は、ITOフィルムであり、前記陽極基板334の、前記絶縁基板302に対向する表面に設置される。前記複数の蛍光領域336は、前記透明な陽極電極334の、前記陽極基板332に隣接する表面とは反対の表面に被覆され、それぞれ前記電子放出ユニット320に対応して設置される。前記複数の陰極エミッタ308は、少なくとも一つの電子エミッタを含み、該電子エミッタの構造が前記実施例1の電子エミッタ10及び電子エミッタ20と同じであることができる。
【0076】
前記陰極エミッタ308は、少なくとも一つの前記電子エミッタ10又は前記電子エミッタ20を含むので、前記陰極電極312と、前記グリット電極310及び前記陽極電極334に異なる電圧を印加する場合、前記陰極電極312及び前記グリット電極310の間に生じた電場によって、前記電子エミッタ10又は前記電子エミッタ20から電子を放出させる。前記電子は、前記列電極304に向けて飛び、前記行電極306及び前記陽極電極334の間に生じた電場によって、該陽極電極334に到達する。前記陽極電極334に被覆された前記蛍光領域336は、前記陰極エミッタ308に対向して、相互に間隔を置いて設置されるので、前記電子は前記蛍光領域336に衝突して、該電界放出表示装置300を発光させる。前記陰極電極312、グリット電極310及び前記陽極電極334を異なる電圧に印加することにより、該電界放出表示装置300は、異なる画像を表示する。
【0077】
本実施例の電界放出表示装置300は、次の優れた点がある。第一には、前記電界放出表示装置300における電子エミッタは、チューブ状構造体を含む。該チューブ状構造体は、複数の電子放出の先端を有する。隣接する二つの前記カーボンナノチューブの先端の距離は、チューブ状構造体の前記開口部から離れるにつれて、漸次に増加する。これにより、前記カーボンナノチューブの先端の間で、電界の遮蔽効果を低下することができる。第二には、前記電子エミッタは、前記複数の電子放出の先端を有するので、前記電子エミッタの電流密度を増加させることができ、該電子エミッタの電子放出の量を増加させることができる。従って、電界放出表示装置300における電子エミッタの数量を減少させることができる。よって、前記電界放出表示装置300の構造が簡単になる。
【符号の説明】
【0078】
10、20、218 電子エミッタ
102、202 第一端部
104 第二端部
106、28,222 電子放出の先端
108 中空頚部
109 本体
110 開口部
100a、100b、200、300 電界放出表示装置
110a、110b、202、302 絶縁基板
120a、120b、204、306 行電極
130a、130b、216 隔離体
140a、140b、206 列電極
150a、150b、208、308 陰極エミッタ
160a、160b 陽極基板
170a、170b 透過孔
180a、180b、210 陽極電極
190a、190b、336 蛍光領域
212、312 陰極電極
214 格子
22 電子放出部
220、320 電子放出ユニット
24 チューブ状構造体
26 導電性線状支持体
310 グリット電極
330 陽極素子
332 ガラス陽極基板
334 透明な陽極電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、複数の行電極と、複数の陰極エミッタと、隔離層と、複数の列電極と、陽極素子と、を含む電界放出表示装置において、
前記複数の行電極は、相互に平行に間隔を有して前記絶縁基板の一つの表面に設置されており、
前記複数の陰極エミッタは、前記複数の行電極の、前記絶縁基板に隣接する表面とは反対の表面に設置され、
前記隔離層は、前記複数の行電極の、前記絶縁基板に隣接する表面とは反対の表面に設置され、かつ各々の前記行電極の一部が前記隔離層で被覆され、
前記複数の列電極は、相互に平行に間隔を有して、前記隔離層の、前記絶縁基板に隣接する表面とは反対の表面に設置され、
前記複数の列電極は、前記隔離層に支持され、前記複数の行電極と相互に垂直に交叉して格子を形成し、
前記陽極素子は、ガラス基板と、透明な陽極電極と、該陽極電極の一つの表面に被覆された複数の蛍光領域と、を含み、
前記陽極基板は、前記陰極基板に対向して、相互に間隔を置いて設置され、
前記陽極電極は、前記陽極基板の、前記陰極基板に対向する表面に設置され、
単一の前記蛍光領域は、単一の前記格子に対応して設置され、
前記複数の陰極エミッタは、少なくとも一つの電子エミッタを含み、
前記電子エミッタは、チューブ状構造体であり、その一端が前記行電極に電気的に接続され、その他端が前記陽極電極の方向へ延伸し、
前記電子エミッタは、中空であって線状の軸心を有し、
前記電子エミッタは、前記線状の軸心を囲む複数のカーボンナノチューブからなり、
前記電子エミッタの一つの端部に、複数の電子放出の先端が形成されていることを特徴とする電界放出表示装置。
【請求項2】
絶縁基板と、複数の行電極と、複数の列電極と、複数の電子放出ユニットと、を含む電界放出表示装置において、
前記複数の行電極は、相互に平行に等間隔を有して前記絶縁基板の一つの表面に設置され、
前記複数の列電極は、相互に平行に等間隔を有して、前記複数の行電極が設置された前記絶縁基板の一つの表面に設置され、前記複数の行電極と電気絶縁して垂直に交叉して、複数の格子を形成し
単一の前記電子放出ユニットは、単一の前記格子に対応して、一つの陰極電極と、該陰極電極と間隔を有して設置された一つの陽極電極と、陰極エミッタと、前記陽極電極の、前記絶縁基板に隣接する表面とは反対の表面に設置される蛍光層と、を含み、前記陰極電極及び前記陽極電極が、それぞれ前記複数の行電極及び複数の列電極に電気的に接続され、前記陰極エミッタが前記陰極電極に電気的に接続され、
前記複数の陰極エミッタは、少なくとも一つの電子エミッタを含み、
前記電子エミッタは、チューブ状構造体であり、その一端が前記陰極電極に電気的に接続され、その他端が前記陽極電極の方向へ延伸し、
前記電子エミッタは、中空であって線状の軸心を有し、
前記電子エミッタは、前記線状の軸心を囲む複数のカーボンナノチューブからなり、
前記電子エミッタの一つの端部に、複数の電子放出の先端が形成されていることを特徴とする電界放出表示装置。
【請求項3】
絶縁基板と、複数の行電極と、複数の列電極と、複数の電子放出ユニットと、陽極素子と、を含む電界放出表示装置において、
前記複数の行電極は、相互に平行に等間隔を有して前記絶縁基板の一つの表面に設置され、
前記複数の列電極は、相互に平行に等間隔を有して、前記複数の行電極が設置された前記絶縁基板の一つの表面に設置され、前記複数の行電極と相互に電気絶縁して垂直に交叉し、複数の格子を形成し、
単一の前記電子放出ユニットは、単一の前記格子に対応して、陰極電極と、該陰極電極と間隔を有して設置されたグリット電極と、陰極エミッタとを含み、前記陰極電極及びグリット電極が、それぞれ前記複数の行電極及び複数の列電極に電気的に接続され、前記陰極エミッタが前記陰極電極に電気的に接続され、
前記陽極素子は、ガラス陽極基板と、透明な陽極電極と、複数の蛍光領域と、を含み、
前記ガラス陽極基板は、前記陰極基板に対向して、相互に間隔を置いて設置され、
前記陽極電極は、前記陽極基板の、前記陰極基板に対向する表面に設置され、
前記複数の蛍光領域は、前記透明な陽極電極の前記陽極基板に隣接する表面とは反対の表面に被覆され、それぞれ前記電子放出のユニットに対応して設置され、
前記複数の陰極エミッタは、少なくとも一つの電子エミッタを含み、
前記電子エミッタは、チューブ状構造体であり、その一端が前記陰極電極に電気的に接続され、その他端が前記グリッド電極の方向へ延伸し、
前記電子エミッタは、中空であって線状の軸心を有し、
前記電子エミッタは、前記線状の軸心を囲む複数のカーボンナノチューブからなり、
前記電子エミッタの一つの端部に、複数の電子放出の先端が形成されていることを特徴とする電界放出表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図12】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−134119(P2012−134119A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103634(P2011−103634)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】