説明

電界放射型装置用ガラス板

【課題】X線遮蔽能力が高く、且つ耐熱性が高い電界放射型装置用ガラス板を提供する。
【解決手段】ガラス組成として、質量%で、SiO30〜50%、Al0〜10%、B0〜20%、MgO+CaO+SrO(MgO、CaO、及びSrOの合量)0〜25%、BaO15〜35%、ZrO+TiO+La+Nb(ZrO、TiO、La、及びNbの合量)3〜40%を含有し、歪点が650℃以上、10keVにおけるX線吸収係数が150cm−1以上であることを特徴とする電界放射型装置用ガラス板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に電界放射型装置用ガラス板に関し、特に電界放射型照明用ガラス板に関する。
【背景技術】
【0002】
電界放射型照明は、薄型軽量、低消費電力、鮮明な表示特性等の利点を有するため、益々普及する傾向にある。
【0003】
電界放射型照明は、透明電極や蛍光体が形成された前面ガラス基板と、カソード電極、ゲート電極、冷陰極(エミッタ)、絶縁膜等が形成された背面ガラス基板とを対向させた上で、ガラス基板の周囲をフリットシールした後、装置内部を真空にすることにより作製される。
【0004】
ところで、電界放射型照明は、蛍光体に電子線をあてて映像を映し出す際、装置内部でX線が発生する。このX線は、ガラス板を着色させて、映像を暗くすることがある。また、X線が装置外部に漏洩して人体に悪影響を及ぼすおそれもある。このため、電界放射型照明の場合、ガラス板のX線遮蔽能力を高める必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−125218号公報
【特許文献2】特開平11−224595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、電界放射型装置用ガラス板として、ディスプレイ用ガラス板や窓板ガラス等の他用途のガラス板が用いられていた。しかし、窓板ガラスは、X線吸収係数が低いため、装置内部で発生するX線により着色し易く、またX線の漏洩を惹起するおそれがある。液晶ディスプレイ用ガラス板も、X線吸収係数が低いため、装置内部で発生するX線により着色し易く、またX線の漏洩を惹起するおそれがある。
【0007】
また、電界放射型照明の製造工程では、高精度のアライメントが必要になる。しかし、ガラス板の耐熱性が低いと、電界放射型照明の製造工程において、熱処理によりガラス板が収縮し、所望のアライメント精度を確保できない。
【0008】
そこで、本発明は、X線遮蔽能力が高く、且つ耐熱性が高いガラス板を創案することにより、電界放射型装置の特性維持に寄与することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、鋭意検討の結果、ガラス板のガラス組成範囲及び特性範囲を厳密に規制することにより、上記技術的課題を解決できることを見出し、本発明として、提案するものである。すなわち、本発明の電界放射型装置用ガラス板は、ガラス組成として、質量%で、SiO 30〜50%、Al 0〜10%、B 0〜20%、MgO+CaO+SrO(MgO、CaO、及びSrOの合量) 0〜25%、BaO 15〜35%、ZrO+TiO+La+Nb(ZrO、TiO、La、及びNbの合量) 3〜40%を含有し、歪点が650℃以上、10keVにおけるX線吸収係数が150cm−1以上であることを特徴とする。ここで、「歪点」とは、ASTM C336−71に基づいて測定した値を指す。なお、「10keVにおけるX線吸収係数」は、ガラス組成と密度に基づいて、計算で求めることができる。
【0010】
本発明の電界放射型装置用ガラス板は、上記のようにガラス組成範囲が規制されている。このようにすれば、ガラス板のX線遮蔽能力と耐熱性を高めることができる。特に、本発明の電界放射型装置用ガラス板は、BaOを15〜35質量%、ZrO+TiO+La+Nbを3〜40質量%含有している。このようにすれば、ガラス板のX線遮蔽能力を顕著に高めることができる。
【0011】
本発明の電界放射型装置用ガラス板は、歪点が650℃以上である。このようにすれば、電界放射型照明の製造工程において、熱処理によりガラス板が収縮し難くなり、所望のアライメント精度を確保し易くなる。なお、歪点が高い程、ガラス板の耐熱性は高くなる。また、Bの含有量を減量(特に10質量%以下)、Alの含有量を増量すれば、歪点を高め易くなる。
【0012】
本発明の電界放射型装置用ガラス板は、10keVにおけるX線吸収係数が150cm−1以上である。このようにすれば、装置内部で発生したX線を遮蔽し易くなる。
【0013】
なお、電界放射型装置の場合、ガラス板の表面に、透明電極、絶縁膜等の様々な膜やエミッタ等が成膜されると共に、フォトリソグラフィーエッチング(フォトエッチング)によって種々の回路やパターンが形成される。ガラス板は、これらの工程で種々の薬品処理を受ける。このため、ガラス板には、耐薬品性も要求される。本発明の電界放射型装置用ガラス板は、上記のようにガラス組成範囲を規制されているため、耐薬品性も良好である。
【0014】
第二に、本発明の電界放射型装置用ガラス板は、実質的にアルカリ成分を含有しないことが好ましい。電界放射型照明は、エミッタから放出される電子線を蛍光体にあてることで発光させて映像を映し出すものであるが、ガラス板中にアルカリ成分が含まれていると、電子を放出するエミッタにアルカリイオンが拡散し、電子源の劣化を招く。このため、電界放射型照明の場合、ガラス板のアルカリ成分の含有量を低減することが要求されている。しかし、従来のプラズマディスプレイ用ガラス板や窓板ガラスは、ガラス組成中にアルカリ成分を多量に含んでいるため、エミッタにアルカリイオンが拡散し、電子源の劣化を招いていた。そこで、上記のように、ガラス組成中からアルカリ成分を除くと、電子源の劣化を防止することができる。ここで、「実質的にアルカリ成分を含有せず」とは、ガラス組成中のアルカリ成分(例えば、アルカリ金属酸化物)の含有量が1000ppm以下の場合を指す。
【0015】
第三に、本発明の電界放射型装置用ガラス板は、30〜380℃における平均熱膨張係数が60×10−7〜90×10−7/℃であることが好ましい。ここで、「30〜380℃における平均熱膨張係数」は、ディラトメーター等で測定することができる。
【0016】
第四に、本発明の電界放射型装置用ガラス板は、液相粘度が103.5dPa・s以上であることが好ましい。「液相粘度」は、液相温度におけるガラスの粘度を白金球引き上げ法により測定した値を指す。「液相温度」は、300〜500μmの大きさに粉砕したガラス試料を白金製ボートに入れた上で、950〜1200℃の温度勾配炉に移して24時間保持した後、偏光顕微鏡で白金製ボートのガラスの表面を観察することにより、結晶が析出し始めた温度(初相の析出温度)を測定した値を指す。
【0017】
第五に、本発明の電界放射型装置用ガラス板は、照明に用いることが好ましい。
【0018】
第六に、本発明の電界放射型装置用ガラス板は、ディスプレイに用いることが好ましい。
【0019】
第七に、本発明のガラス板は、ガラス組成として、質量%で、SiO 30〜50%、Al 0〜10%、B 0〜20%、MgO+CaO+SrO 0〜25%、BaO 15〜35%、ZrO+TiO+La+Nb 3〜40%を含有し、歪点が650℃以上、10keVにおけるX線吸収係数が150cm−1以上であることを特徴とする。なお、本明細書の記載は、電界放射型装置用途に基づく説明が主であるが、本発明は、有機EL照明、有機ELディスプレイ等の用途にも適用可能である。
【0020】
第八に、本発明のガラス板は、液相粘度が103.5dPa・s以上であることが好ましい。
【0021】
第九に、本発明のガラス板は、照明に用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の電界放射型装置用ガラス板は、X線遮蔽能力が高く、しかも耐熱性が高いため、X線による着色、X線の外部漏洩、熱処理による熱収縮等の不具合を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の電界放射型装置用ガラス板は、ガラス組成として、質量%で、SiO 30〜50%、Al 0〜10%、B 0〜20%、MgO+CaO+SrO 0〜25%、BaO 15〜35%、ZrO+TiO+La+Nb 3〜40%を含有する。上記のように各成分の含有量を限定した理由を以下に説明する。なお、以下の%表示は、特に断りがある場合を除き、質量%を指す。
【0024】
SiOは、ガラスのネットワークを形成する成分であり、その含有量は30〜50%、32〜49%、35〜48%、40〜47%、特に43〜45%が好ましい。SiOの含有量が30%より少ないと、ガラスの耐熱性、化学的耐久性が低下し易くなる。一方、SiOの含有量が50%より多いと、ガラスの溶融温度が不当に上昇するおそれがある。
【0025】
Alは、ガラスの歪点を上昇させて、ガラスの耐熱性を高める成分であり、その含有量は0〜10%、0.5〜8%、1〜7%特に3〜5%が好ましい。Alの含有量が10%より多いと、ガラスの溶融温度が不当に上昇するおそれがあり、またガラスが失透し易くなる。
【0026】
は、融剤として作用して、ガラスの溶融性を高める成分であり、その含有量は0〜20%、0〜18%、0〜15%、0〜10%、0〜5%、0〜3%、特に0〜1%が好ましい。Bの含有量が20%より多いと、ガラスの歪点が低下して、ガラスの耐熱性が低下し易くなる。
【0027】
MgO+CaO+SrOは、ガラスの高温粘性を低下させて、ガラスの溶融性を高める成分であり、その含有量は0〜25%、1〜24%、5〜23%、8〜21%、特に10〜15%が好ましい。MgO+CaO+SrOの含有量が25%より多いと、ガラスが顕著に失透し易くなり、また化学的耐久性が低下し易くなる。
【0028】
MgOは、ガラスの高温粘性を低下させて、ガラスの溶融性を高める成分であると共に、ガラスのヤング率を上昇させる成分であり、その含有量は0〜10%、0〜5%、特に0〜3%が好ましい。MgOの含有量が10%より多いと、ガラスが顕著に失透し易くなり、また化学的耐久性が低下し易くなる。
【0029】
CaOは、ガラスの高温粘性を低下させて、ガラスの溶融性を高める成分であり、その含有量は0〜10%、0.1〜10%、1〜9%、3〜8%、特に5〜7%が好ましい。CaOの含有量が10%より多いと、ガラスが失透し易くなり、また化学的耐久性が低下し易くなる。
【0030】
SrOは、ガラスの高温粘性を低下させて、ガラスの溶融性を高める成分であり、その含有量は0〜10%、0.1〜10%、1〜8%、2〜7%、特に3〜6%が好ましい。SrOの含有量が10%より多いと、ガラスが失透し易くなり、また化学的耐久性が低下し易くなる。
【0031】
BaOは、ガラスのX線吸収係数、化学的耐久性、耐失透性を高める成分であり、その含有量は15〜35%、20〜32%、特に24〜30%が好ましい。BaOの含有量が15%より少ないと、ガラスのX線吸収係数が低下し易くなる。一方、BaOの含有量が35%より多いと、ガラスの溶融性が低下し易くなる。
【0032】
ZrO+TiO+La+Nbは、ガラスのX線吸収係数を高める成分であり、その含有量は3〜40%、8〜35%、15〜32%、特に20〜30%が好ましい。ZrO+TiO+La+Nbの含有量が3%より少ないと、ガラスのX線吸収係数が低下し易くなる。一方、ZrO+TiO+La+Nbの含有量が40%より多いと、ガラスが失透し易くなる。
【0033】
ZrOは、ガラスのX線吸収係数、歪点、化学的耐久性を高める成分であり、その含有量は0〜10%、0.1〜8%、1〜6%、2〜5%、特に3〜5%が好ましい。ZrOの含有量が10%より多いと、ガラス中にジルコン等のブツが析出し易くなる。
【0034】
TiOは、ガラスのX線吸収係数、歪点、化学的耐久性を高める成分であり、その含有量は0〜15%、1〜12%、3〜9.5%、特に4〜8%が好ましい。TiOの含有量が15%より多いと、ガラスが失透し易くなる。
【0035】
Laは、ガラスのX線吸収係数、耐失透性を高める成分であり、その含有量は0〜15%、1〜12%、2〜10%、特に3〜8%が好ましい。Laの含有量が15%より多いと、ガラス組成の成分バランスが損なわれて、ガラスが失透し易くなる。
【0036】
Nbは、ガラスのX線吸収係数を高める成分であり、その含有量は0〜15%、1〜12%、3〜12%、特に5〜10%が好ましい。Nbの含有量が15%より多いと、ガラスが失透し易くなる。
【0037】
上記成分以外にも、以下の成分を添加することができる。
【0038】
ZnOは、ガラスの歪点を低下させずに、ガラスの高温粘性を低下させて、ガラスの溶融性を高める成分であり、その含有量は0〜20%、0〜10%、0〜8%、特に0〜5%が好ましい。ZnOの含有量が20%より多いと、ガラスが失透し易くなる。
【0039】
CeOは、X線によるガラスの着色を抑制する成分であり、その含有量は0〜5%、特に0〜1%が好ましい。CeOの含有量が5%より多いと、ガラスの透過率が低下し易くなる。
【0040】
上記の理由により、LiO、NaO、KO等のアルカリ成分の添加を避けることが好ましい。また、環境的観点から、実質的にPbOを含有しないことが好ましい。「実質的にPbOを含有せず」とは、ガラス組成中のPbOの含有量が1000ppm以下の場合を指す。
【0041】
上記の成分以外にも、特性を損なわない範囲で他の成分を添加することができる。例えば、清澄剤として、As、Sb、SnO、F、Cl、SO等を各々3%まで添加することができる。また、ガラスの化学的耐久性を高めるために、Y、WOを各々5%まで添加することができる。さらに、ガラスの耐失透性を高めるために、Pを5%まで添加することができる。
【0042】
本発明の電界放射型装置用ガラス板において、10keVにおけるX線吸収係数は150cm−1以上、180cm−1以上、200cm−1以上、250cm−1以上、特に300cm−1以上が好ましい。10keVにおけるX線吸収係数が150cm−1より低いと、X線が装置外部に漏洩して人体に悪影響を及ぼすおそれがある。なお、ZrO+TiO+La+Nbの含有量が多くなると、X線吸収係数は150cm−1以上になり易い。
【0043】
本発明の電界放射型装置用ガラス板において、歪点は650℃以上、660℃以上、670℃以上、680℃以上、特に690℃以上が好ましい。歪点が650℃より低いと、電界放射型装置の製造工程における熱処理でガラス板が熱収縮し易くなり、所望のアライメント精度を確保し難くなる。なお、Bの含有量を10%以下にすれば、歪点が650℃以上になり易い。
【0044】
本発明の電界放射型装置用ガラス板において、30〜380℃における平均熱膨張係数は60×10−7〜90×10−7/℃、特に70×10−7〜85×10−7/℃が好ましい。平均熱膨張係数が60×10−7/℃より低いと、フリットの熱膨張係数に整合し難くなるため、長期に亘って装置内部の真空状態を維持し難くなり、結果として、電子放出特性が低下し易くなる。一方、平均熱膨張係数が90×10−7/℃より高いと、電界放射型装置の製造工程における熱処理でガラス板が破損し易くなる。なお、CaO+SrO+BaO(CaO、SrO、及びBaOの合量)の含有量を20〜45%に規制すれば、上記範囲内に平均熱膨張係数を規制し易くなる。
【0045】
本発明の電界放射型装置用ガラス板において、液相粘度は103.5dPa・s以上が好ましい。液相粘度が103.5dPa・sより低いと、フロート法、オーバーフローダウンドロー法、ロールアウト法等でガラス板を成形し難くなるため、ガラス板の製造コストが高騰し易くなる。したがって液相粘度は、103.5dPa・s以上、10dPa・s以上、104.5dPa・s以上、104.8dPa・s以上、10dPa・s以上が好ましい。
【0046】
本発明のガラス板は、ガラス組成として、質量%で、SiO 30〜50%、Al 0〜10%、B 0〜20%、MgO+CaO+SrO 0〜25%、BaO 15〜35%、ZrO+TiO+La+Nb 3〜40%を含有し、歪点が650℃以上、10keVにおけるX線吸収係数が150cm−1以上であることを特徴とする。本発明のガラス板の技術的特徴(好適な組成、特性)は、本発明の電界放射型装置用ガラス板と同様である。ここでは、便宜上、本発明のガラス板に関する説明を省略する。
【実施例】
【0047】
以下、実施例に基づいて、本発明を説明する。なお、以下の実施例は単なる例示である。本発明は以下の実施例に何ら限定されない。
【0048】
表1、2は、本発明の実施例(試料No.1〜20)及び比較例(試料No.21、22)を示している。なお、試料No.22は、従来のソーダガラス板(窓板ガラス)である。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
次のようにして、表中の各試料を作製した。まず、表中のガラス組成となるようにガラス原料を調合した後、得られたガラスバッチを白金ポットに投入し、1500℃で4時間溶融した。次に、溶融ガラスをカーボン板の上に流し出して板状に成形した後、徐冷処理を行った。続いて、得られた板状ガラスを板厚2mmになるように両面研磨した後、200mm角の寸法に切断加工し、ガラス板を作製した。
【0052】
得られた各試料について、密度ρ、30〜380℃における平均熱膨張係数α、歪点Ps、液相温度TL、液相粘度Log10ηTL、10keVにおけるX線吸収係数を評価した。その結果を表1に示す。
【0053】
密度ρは、周知のアルキメデス法により測定した値である。
【0054】
30〜380℃における平均熱膨張係数αは、ディラトメーターにより測定した値である。
【0055】
歪点Psは、ASTM C336−71に基づいて測定した値である。
【0056】
液相温度TLは、300〜500μmの大きさに粉砕した各試料を白金製ボートに入れた上で、950〜1200℃の温度勾配炉に移して24時間保持した後、偏光顕微鏡で白金製ボートのガラスの表面を観察することにより、結晶が析出し始めた温度(初相の析出温度)を測定した値である。
【0057】
液相粘度Log10ηTLは、液相温度におけるガラスの粘度を指し、白金球引き上げ法により測定した値である。なお、液相粘度が大きい程、ガラス板に成形し易くなる。
【0058】
10keVにおけるX線吸収係数は、ガラス組成と密度に基づいて、計算で求めた値である。
【0059】
表1、2から明らかなように、試料No.1〜20は、歪点Psが62℃以上であるため、耐熱性が良好である。また、試料No.1〜20は、10keVにおけるX線吸収係数が218cm−1以上であるため、装置内部で発生したX線を良好に遮蔽することができる。また、試料No.1〜20は、30〜380℃における平均熱膨張係数αが67.2×10−7〜82.0×10−7/℃であるため、フリットの熱膨張係数に整合しており、また電界放射型装置の製造工程における熱処理で破損し難いと考えられる。さらに、試料No.1〜20は、液相粘度が103.5dPa・s以上であるため、フロート法、オーバーフローダウンドロー法、スロットダウンドロー法、ロールアウト法等で平板形状に成形し易いと考えられる。なお、試料No.1〜20は、ガラス組成中にアルカリ成分を含んでいないため、電子源の劣化を防止することができる。
【0060】
一方、試料No.21は、10keVにおけるX線吸収係数が126cm−1であるため、装置内部で発生したX線を的確に遮蔽できないと考えられる。また、試料No.22は、ガラス組成中にアルカリ成分を含有しているため、電子源を劣化させるおそれがあると共に、X線吸収係数が57cm−1であるため、装置内部で発生したX線を的確に遮蔽できないと考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス組成として、質量%で、SiO 30〜50%、Al 0〜10%、B 0〜20%、MgO+CaO+SrO 0〜25%、BaO 15〜35%、ZrO+TiO+La+Nb 3〜40%を含有し、歪点が650℃以上、10keVにおけるX線吸収係数が150cm−1以上であることを特徴とする電界放射型装置用ガラス板。
【請求項2】
実質的にアルカリ成分を含有しないことを特徴とする請求項1に記載の電界放射型装置用ガラス板。
【請求項3】
30〜380℃における平均熱膨張係数が60×10−7/℃〜90×10−7/℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電界放射型装置用ガラス板。
【請求項4】
液相粘度が103.5dPa・s以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の電界放射型装置用ガラス板。
【請求項5】
照明に用いることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の電界放射型装置用ガラス板。
【請求項6】
ディスプレイに用いることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の電界放射型装置用ガラス板。
【請求項7】
ガラス組成として、質量%で、SiO 30〜50%、Al 0〜10%、B 0〜20%、MgO+CaO+SrO 0〜25%、BaO 15〜35%、ZrO+TiO+La+Nb 3〜40%を含有し、歪点が650℃以上、10keVにおけるX線吸収係数が150cm−1以上であることを特徴とするガラス板。
【請求項8】
液相粘度が103.5dPa・s以上であることを特徴とする請求項7に記載のガラス板。
【請求項9】
照明に用いることを特徴とする請求項7又は8に記載のガラス板。

【公開番号】特開2012−12291(P2012−12291A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120011(P2011−120011)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】