説明

電磁コイル及びこれを利用したモータ

【解決課題】ローレンツ力がロータの回転方向に対して効率よく働くための電磁コイル、及びこのコイルを利用したモータを提供することを目的とする。
【解決手段】扁平状の導体を平巻してなる電磁コイルにおいて、全体形状が非円形状に形成されてなる。永久磁石からなるロータに対面して配置された際に、当該ロータの半径方向に沿った直線部を備える。非円形が扇状、楕円状、多角形状のいずれかから形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁コイル及びこれを利用したモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のモータとして、例えば、特開2005−261135号公報に記載のものが存在する。このモータは、交互に異極に着磁された複数の永久磁石を環状に配置したロータと、複数の電磁コイルを環状に配置したスータと、を備え、このステータと前記移動体とを非接触に対面させて配置し、電磁コイルに励磁電流を供給してロータと電磁コイルとの間の吸引−反発を利用してロータを回転させるように構成されている。
【0003】
この種のブラシレスモータにおいて、モータを軽量化するために平巻コイルが用いられている。平巻きコイルとは、径方向断面が偏平状又は薄板状に形成された導体をコアに巻き上げたものである。
【特許文献1】特開2005−261135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
平巻コイルにおいては、ステータであるコイルとロータである永久磁石との間に発生するローレンツ力がロータの回転方向に対して効率良く働かず電動モータの回転運動の効率が低下するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、ローレンツ力がロータの回転方向に対して効率よく働くための電磁コイル、及びこのコイルを利用したモータを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明は、扁平状の導体を平巻してなる電磁コイルにおいて、全体形状が非円形状に形成されてなる電磁コイルであることを特徴とするものである。
【0007】
さらに、本発明は、交互に異極に着磁された複数の永久磁石を環状に配置したロータと、既述の電磁コイルを複数環状に配置したステータと、を非接触に対面させ、前記電磁コイルに励磁電流を供給して前記ロータと前記電磁コイルとの間のローレンツ力により前記ロータを回転させるように構成したモータであることを特徴とする。
【0008】
本発明に係わる電磁コイルによれば、電磁コイルの非円形部分の全域でローレンツ力を発生させることができるために、ロータを回転させるトルクが円形の電磁コイルより大きくすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ローレンツ力がロータの回転方向に対して効率よく働くための電磁コイル、及びこのコイルを利用したモータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1に本発明に係わる平巻コイル10を示す。(1)は当該コイルの平面図であり、(2)はその右側面図であり、(3)はその正面図である。平巻コイル全体は、平面方向から見て非円形状としての扇形状になっている。符合12は端子である。この平巻コイル(1)では、径方向断面が偏平状の導体14が紙面に対して垂直方向にコイルに巻き付けられ、全体としてコアの形状より一回り大きい扇形状を呈している。(2)及び(3)に示すように、扁平状の導体が何層にもなって積層されている。
【0011】
図2は平巻コイルの第2の例を示したものであり、三角形状に構成されている。図3は平巻コイルの第3の例を示したものであり、平巻コイルは台形状に構成されている。
【0012】
図4は、電動モータのステータ及びロータを示したものである。(1)はロータ41の平面図であり、交互に異極に着磁された永久磁石40の複数が環状に配列されている。符合42は、ステータを固定するハウジングである。ロータの中心には軸部44がロータと一体に回転可能に構成されている。
【0013】
(2)及び(3)はそれぞれステータであり、(2)のステータ46と(3)のステータ48とを対面配置させ、このステータ間にロータを非接触に配置している。このモータ構造によれば、ロータを2相のステータで回転させることができるので、高トルクのモータを提供することができる。
【0014】
図4の(1)及び(2)において、扇形状の平巻コイル10の複数をロータと同様に環状に配置している。平巻コイルが非円形であり、図1に示すように扇状であるために、複数の平巻コイルを環状に配列させる際、隣接するコイル間の隙間を無くして高密度にコイルをロータに対して配列することができる。(2)及び(3)における、“S”及び“N”はロータとステータのコイルとの位置関係を明りょうにするために図面に付したものである。このように、2相あるステータのコイル配置は、ロータの一回転を電気角で2πとすると、π/6位相がずれるようにしている。
【0015】
図5は円形平巻コイルと非円形平巻コイルとのモータの回転トルクに差が生じる理由を説明するための、モータ平面図の一部である。(1)は円形平巻コイルを備えたモータを示し、(2)は非円形平巻コイルを備えたモータを示している。(1)において、フレミングの左手の法則により、ロータ41の回転方向へ働くベクトル53は円形のコイルの一部(52,53)に働くに過ぎない。これに対して(2)に示すように、平巻コイル10はロータの半径方向に直線部54を有しており、しかもこの直線部が永久磁石の半径方向の幅Hを超えていることから、永久磁石の半径方向の幅全域にわたって回転ベクトルが発生する。(1)では符合52のライン上のみで回転ベクトルが発生しているに過ぎない。したがって、モータの回転トルクが(2)のもの55は(1)のもの53に比べて顕著に増大する。
【0016】
次に、本発明に係わる電磁コイルの製造例を図6に基づいて説明する。予め導体14を圧延ロータにて薄板状に圧延し、これをボビン60に巻回してある導体供給手段を用意する。導体供給手段から薄板状の導体を、扇形状を持った成型治具材66を軸68を中心に回転させながら、この治具材に順次巻きつけていく。巻き付ける方向は、導体の薄板な面に対して垂直方向(即ち、紙面の垂直方向である。)である。符号62は扁平な導体を成型治具まで誘導する走行ガイドである。符号64は、成型治具に接したり成型治具から離れたりして、成型治具へ導体を巻回するのを補助する移動成型ガイドである。この成型にあっては、導体が破断しないように成型治具材のコーナーにおけるRや導体の材質を適宜調整する。コアレスタイプのコイルでは、平巻コイルから治具材を取り外すが、治具材をコアとしてそのまま平巻コイルに用いるようにもできる。
【0017】
図7は平巻コイルの実装例について説明する平面図である。平巻コイル10は半田71によって基板(PCB)70に固定される。半田による固定は、端子12の他、平巻部分の2箇所(図7)、3箇所(図8)、又は、平巻部分の全面である(図9)。図7において、符号72は半田部以外の導体を絶縁する被覆である。
【0018】
以上説明したように、既述の実施形態によれば、電磁コイルと永久磁石間のローレンツ力をロータの回転運動に効率良く利用することができる。さらに、電磁コイルの巻線効率が向上する。電磁コイルで発生する銅損失の熱伝伝導比が向上する。本発明の電磁コイルは、電動ブラシレス回転モータ、ファンモータ(軸流、シロッコ、外周駆動)、発電機に利用可能である。
【0019】
次に、コイルを基板に実装する他の実施形態について説明する。図10にコイルが基板に実装された様子を示す。(1)はコイルの平面図であり、(2)はその正面図である。符号10は平巻コイルであり、符号12はコイルの端子、符号70は基板、そして71は端子と基板上の回路とを接続する半田部である。電磁コイル10と基板70とは電磁コイルの絶縁被覆を電磁コイルと基板に対して融着することによって固定されている。
【0020】
図11に示すように、基板70上には、少なくともコイルの円形パターンに対応する金属膜からなる金属パターン20が予め形成されている。金属膜は、例えば熱伝導性が優れた銅材から構成されている。さらに、金属パターン上にはコイルの絶縁材を溶融させて互いに融着可能な絶縁材料22が形成されている。
【0021】
コイルを基板に実装する際、図12に示すようにコイルを基板に対して直角方向から加圧しながら、コイル10に絶縁材が溶融する程度の電流を流す。この際、基板の導電パターン20にも電流を通じてコイルの絶縁被覆と金属パターン上の絶縁材料22とを共に溶解させて互いに融着させる。
【0022】
図13は基板上の金属パターン20を示す。金属パターンはコイルの円形パターンに対応した形態を備えている。図14は金属パターン20の他の例を示す。この金属パターンは、鋸歯状の形態を持つことにより高抵抗を備えている。したがって、発熱量を高めることができる。
【0023】
図15はさらに他の金属パターンである。基板の非コイル側(裏)の面60には全面に金属膜62が形成され、スルーホール64を介してコイル側の面66の金属パターンと導通している。したがって、基板の発熱量が高くなりしかもスルーホールを介して基板表側の金属パターンに裏面より熱伝導が行われて、基板の発熱量をさらに向上させることができる。
【0024】
以上説明したように既述の実施形態によれば、電磁コイルと基板の固定部との固定作業が短時間かつ容易に済むようになる。平巻コイルでは、電磁コイルと基板との固定が面で行われるために固定強度を向上することができる。基板の固定部に金属パターンを形成したために、電磁コイルから発生する銅損熱に対する基板の熱伝導性を向上することができる。接着剤を使用しないために有毒ガスの発生を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係わる平巻コイルの第1の実施形態(コイル平面形状が扇形状)に係る平面図(1)、その側面図(2)、その正面図(3)である。
【図2】平巻コイルの第2の実施形態(コイルが三角形状)に係る平面図である。
【図3】平巻コイルの第3の実施形態(コイルが台形状)に係る平面図である。
【図4】本発明に係るコイルを備えたモータの平面図であり、(1)はロータの平面図、(2)は第1の相のステータ、(3)は第2の相のステータである。
【図5】本発明の原理を示すモータの平面図であり、(1)はコイルが円形の場合であり、(2)はコイルが非円形(台形状)の場合である。
【図6】本発明に係るコイルの製造例を示す平面図である。
【図7】本発明に係るコイルを基板に固定した第1の例に係る平面図である。
【図8】その第2の例に係る平面図である。
【図9】その第3の例に係る平面図である。
【図10】本発明に係る実装方法が適用されたコイル及び基板の平面(1)及びその平面図(2)である。
【図11】図1の基板の側面図である。
【図12】本発明に係る実装方法を示す、コイル及び基板の側面図である。
【図13】金属パターンの第1の例が形成された基板の斜視図である。
【図14】金属パターンの第2の例が形成された基板の斜視図である。
【図15】金属パターンの第3の例が形成された基板の斜視図である。
【符合の説明】
【0026】
10 平巻コイル、12 端子、14 基板、40 永久磁石、41 ロータ、46 ステータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平状の導体を平巻してなる電磁コイルにおいて、全体形状が非円形状に形成されてなる、電磁コイル。
【請求項2】
永久磁石からなるロータに対面して配置された際に、当該ロータの半径方向に沿った直線部を備えてなる、請求項1記載の電磁コイル。
【請求項3】
非円形が、扇状、楕円状、多角形状のいずれかから形成されてなる、請求項1記載の電磁コイル。
【請求項4】
前記多角形状が、三角形状、又は台形状である、請求項1記載の電磁コイル。
【請求項5】
非円形状のコアに前記扁平状の導体が巻かれた請求項1記載の電磁コイル。
【請求項6】
前記直線部の長さが前記ロータの径方向の幅以上である、請求項2記載の電磁コイル。
【請求項7】
交互に異極に着磁された複数の永久磁石を環状に配置したロータと、前記請求項1乃至7の何れか1項に記載の電磁コイルを複数環状に配置したステータと、を非接触に対面させ、前記電磁コイルに励磁電流を供給して前記ロータと前記電磁コイルとの間の吸引―反発により前記ロータを回転させるように構成したモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−159847(P2008−159847A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−347168(P2006−347168)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】