電磁波シールドシート及び光学フィルタ
【課題】外部のアース端子との直接の接続が可能となる新しい接地構造を有し、プラズマディスプレイパネルに特別な設計や工夫を施すことなく、プラズマディスプレイ装置のコストダウンを実現し、製造過程で傷が付きにくい、新構造の電磁波シールドシートを提供する。
【解決手段】基材フィルム2aと、基材フィルム2aの一方の面13aに形成された、メッシュ状パターンからなる電磁波シールド層及び電磁波シールド層に電気的に接続された接地層4aと、を有し、基材フィルム2aの他方の面14aに、接地層4aと向かい合うように配置された導電層5aが設けられ、導電層5aと接地層4aとが部分的に接触している電磁波シールドシート1a。
【解決手段】基材フィルム2aと、基材フィルム2aの一方の面13aに形成された、メッシュ状パターンからなる電磁波シールド層及び電磁波シールド層に電気的に接続された接地層4aと、を有し、基材フィルム2aの他方の面14aに、接地層4aと向かい合うように配置された導電層5aが設けられ、導電層5aと接地層4aとが部分的に接触している電磁波シールドシート1a。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールドシート及び該電磁波シールドシートを用いた光学フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ装置はテレビやパーソナルコンピュータのモニター等、各種の分野で用いられているが、その種類は多岐にわたる。ディスプレイ装置の種類としては、例えば、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置(LCD)、プラズマディスプレイ装置、及びELディスプレイ装置等を挙げることができる。
【0003】
上記の様々なディスプレイ装置のうち、大画面ディスプレイ装置の分野では、プラズマディスプレイ装置が注目されている。プラズマディスプレイ装置は、画像表示領域に微細な画素区画パターンが形成されたプラズマディスプレイパネルを有する高精細な表示装置であり、その奥行きが薄いこと、また軽量であることから、テレビジョン、モニター等の種々の用途に利用され、今後も需要の増加が期待されている。
【0004】
しかし、こうしたプラズマディスプレイ装置は、発光にプラズマ放電を利用するため、30MHz〜1GHz帯域の不要な電磁波が外部に漏洩して他の機器(例えば、遠隔制御機器、情報処理装置等)に影響を与えるおそれがある。そのため、プラズマディスプレイ装置に用いられるプラズマディスプレイパネルの前面側(観察者側)に、漏洩する電磁波をシールドするための電磁波シールドフィルムを設けるのが一般的である。
【0005】
電磁波シールドフィルムは、プラズマディスプレイパネルの表示の視認性を落とすことなく電磁波を効率的にシールドするために、通常、金属メッシュ、及びこの金属メッシュと電気的に接続された電極部が、透明基材フィルム上に形成された形態を有する。こうした電磁波シールドフィルムは、粘着剤を用いてディスプレイパネルの表示面に貼付される。そして、外部のアース端子と上記の電極部とを電気的に接続することにより、金属メッシュが接地される。
【0006】
金属メッシュを接地するための構造として、特許文献1では、ディスプレイパネルの周縁に接地電極を配置し、この接地電極に設けられた突起又は突条を電磁波シールドフィルムの電極部に貫通させることにより、金属メッシュの接地を行う構造が提案されている。
【特許文献1】特開2006−196760号公報(第0033段落〜第0036段落、図5、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1においては、例えば同文献の図5,6に示されるように、金属メッシュ(以下、「金属メッシュ」を「メッシュ状パターンからなる電磁波シールド層」又は、単に「電磁波シールド層」という。)を、粘着剤を介してディスプレイパネルに対向するように設置する構成を採用している。これは、ディスプレイパネルと電磁波シールド層とを近接(数十μmの間隔)して設けることにより、ディスプレイパネルから漏洩する電磁波を効率的にシールドするためであると考えられる。ところが、上記のような構成は、電磁波シールド層とディスプレイパネルとが近接して設けられる分、ディスプレイパネル側に接地用の電極を設けることなく、電磁波シールド層を接地するための端子を外部に取り出すことが困難となる。このため、特許文献1に記載された発明においては、ディスプレイパネルの周縁に接地電極を配置し、この接地電極に設けられた突起又は突条を電磁波シールドフィルムの電極部に貫通させることにより、電磁波シールド層の接地をとる構造を採用している(以下、「電磁波シールドフィルム」を「電磁波シールドシート」という。また、電極部を「接地層」という。)。
【0008】
しかしながら、特許文献1で提案された構造では、ディスプレイパネル側に接地電極を設ける必要があるためにディスプレイパネルにおいて所定の設計変更が必要となる課題があるが、ディスプレイパネルは表面がガラス基板であることが多いのでその設計変更は容易ではない。また、接地電極に突起又は突条を設ける分、ディスプレイ装置全体のコストが増加する課題もある。さらに、同文献の図6に記載されるように、接地電極に設けられた突起又は突条を接地層に貫通させるために圧縮ロールを用いているが、こうした圧縮ロールの採用により、圧縮ロールの押圧により電磁波シールドシートに傷が付きやすくなるという課題もある。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、外部のアース端子との直接の接続が可能となる新しい接地構造を有し、プラズマディスプレイパネルに特別な設計や工夫を施すことなく、プラズマディスプレイ装置のコストダウンを実現し、製造過程で傷が付きにくい、新構造の電磁波シールドシートを提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、外部のアース端子との直接の接続が可能となる新しい接地構造を有し、プラズマディスプレイパネルに特別な設計や工夫を施すことなく、プラズマディスプレイ装置のコストダウンを実現し、製造過程で傷が付きにくい、新構造の光学フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明の電磁波シールドシートは、基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に形成された、メッシュ状パターンからなる電磁波シールド層及び該電磁波シールド層に電気的に接続された接地層と、を有する電磁波シールドシートにおいて、前記基材フィルムの他方の面に、前記接地層と向かい合うように配置された導電層が設けられ、該導電層と前記接地層とが部分的に接触していることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、基材フィルムの他方の面に、接地層と向かい合うように配置された導電層が設けられ、導電層と接地層とが部分的に接触しているので、基材フィルムの他方の面と接地層ひいては電磁波シールド層との電気的な接続が確保され、その結果、外部のアース端子との直接の接続が可能となる接地構造を有する電磁波シールドシートを得ることができる。
【0013】
本発明の電磁波シールドシートの好ましい態様においては、前記導電層が前記他方の面の面内に複数設けられている。
【0014】
この発明によれば、導電層が、基材フィルムの他方の面の面内に複数設けられているので、導電層と接地層とが電気的に接続される箇所が増加し、その結果、電磁波シールド層の接地を行いやすくなる。
【0015】
本発明の電磁波シールドシートの好ましい他の態様においては、前記導電層と前記接地層との部分的な接触が超音波接合により行われている。
【0016】
この発明によれば、導電層と接地層との部分的な接触が超音波接合により行われているので、導電層と接地層との安定な電気的接続が可能となり、その結果、安定した接地特性を有する電磁波シールドシートを得ることができる。
【0017】
本発明の電磁波シールドシートの好ましい他の態様においては、前記導電層及び前記接地層に同一の金属材料を用いる。
【0018】
この発明によれば、導電層及び接地層に同一の金属材料を用いるので、導電層と接地層との接合が強固になり、その結果、導電層と接地層との間の電気抵抗をより低減できる。
【0019】
上記課題を解決するための本発明に係る第1の光学フィルタは、基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に形成された、メッシュ状パターンからなる電磁波シールド層及び該電磁波シールド層に電気的に接続された接地層と、前記基材フィルムの他方の面に設けられた光学調整層と、を有する光学フィルタにおいて、前記基材フィルムの他方の面のうち前記光学調整層が設けられていない基材フィルム面に、前記接地層と向かい合うように配置された導電層が設けられ、該導電層と前記接地層とが部分的に接触していることを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、基材フィルムの他方の面のうち光学調整層が設けられていない基材フィルム面に、接地層と向かい合うように配置された導電層が設けられ、導電層と接地層とが部分的に接触しているので、基材フィルムの他方の面と接地層ひいては電磁波シールド層との電気的な接続が確保され、その結果、外部のアース端子との直接の接続が可能となる接地構造を有する光学フィルタを得ることができる。
【0021】
本発明に係る第1の光学フィルタの好ましい態様においては、前記導電層が前記基材フィルム面の面内に複数設けられている。
【0022】
この発明によれば、導電層が基材フィルム面の面内に複数設けられているので、導電層と接地層とが電気的に接続される箇所が増加し、その結果、電磁波シールド層の接地を行いやすくなる。
【0023】
上記課題を解決するための本発明に係る第2の光学フィルタは、基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に形成された、メッシュ状パターンからなる電磁波シールド層及び該電磁波シールド層に電気的に接続された接地層と、前記基材フィルムの他方の面に設けられた光学調整層と、を有する光学フィルタにおいて、前記光学調整層の表面に、前記接地層と向かい合うように配置された導電層が設けられ、該導電層と前記接地層とが部分的に接触していることを特徴とする。
【0024】
この発明によれば、光学調整層の表面に、接地層と向かい合うように配置された導電層が設けられ、導電層と前記接地層とが部分的に接触しているので、光学調整層の表面と接地層ひいては電磁波シールド層との電気的な接続が確保され、その結果、外部のアース端子との直接の接続が可能となる接地構造を有する光学フィルタを得ることができる。
【0025】
本発明に係る第2の光学フィルタの好ましい態様においては、前記導電層が前記光学調整層の表面の面内に複数設けられている。
【0026】
この発明によれば、導電層が光学調整層の表面の面内に複数設けられているので、導電層と接地層とが電気的に接続される箇所が増加し、その結果、電磁波シールド層の接地を行いやすくなる。
【0027】
本発明の光学フィルタの好ましい態様においては、前記導電層と前記接地層との部分的な接触が超音波接合により行われている。
【0028】
この発明によれば、導電層と接地層との部分的な接触が超音波接合により行われているので、導電層と接地層との安定な電気的接続が可能となり、その結果、安定した接地特性を有する電磁波シールドシートを得ることができる。
【0029】
本発明の光学フィルタの好ましい他の態様においては、前記導電層及び前記接地層に同一の金属材料を用いる。
【0030】
この発明によれば、導電層及び接地層に同一の金属材料を用いるので、導電層と接地層との接合が強固になり、その結果、導電層と接地層との間の電気抵抗をより低減できる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の電磁波シールドシートによれば、基材フィルムの他方の面に、接地層と向かい合うように配置された導電層が設けられ、導電層と接地層とが部分的に接触しているので、外部のアース端子との直接の接続が可能となる接地構造を有する電磁波シールドシートを得ることができる。そして、本発明の電磁波シールドシートによれば、プラズマディスプレイパネルに特別な設計や工夫を施すことなく、プラズマディスプレイ装置のコストダウンを実現し、製造過程で傷が付きにくい、新構造の電磁波シールドシートを提供できる。
【0032】
本発明に係る第1の光学フィルタによれば、基材フィルムの他方の面のうち光学調整層が設けられていない基材フィルム面に、接地層と向かい合うように配置された導電層が設けられ、導電層と接地層とが部分的に接触しているので、外部のアース端子との直接の接続が可能となる接地構造を有する光学フィルタを得ることができる。そして、本発明に係る第1の光学フィルタによれば、プラズマディスプレイパネルに特別な設計や工夫を施すことなく、プラズマディスプレイ装置のコストダウンを実現し、製造過程で傷が付きにくい、新構造の光学フィルタを提供できる。
【0033】
本発明に係る第2の光学フィルタによれば、光学調整層の表面に、接地層と向かい合うように配置された導電層が設けられ、導電層と接地層とが部分的に接触しているので、外部のアース端子との直接の接続が可能となる接地構造を有する光学フィルタを得ることができる。そして、本発明に係る第2の光学フィルタによれば、プラズマディスプレイパネルに特別な設計や工夫を施すことなく、プラズマディスプレイ装置のコストダウンを実現し、製造過程で傷が付きにくい、新構造の光学フィルタを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
次に、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0035】
[電磁波シールドシート及びその製造方法]
(電磁波シールドシート)
図1は、本発明の電磁波シールドシートの一例を示す模式的な斜視図であり、図2は、図1におけるA−A’面の模式的な断面図であり、図3は、図2の一部を拡大して示す模式的な断面図である。
【0036】
本発明の電磁波シールドシート1aは、基材フィルム2aと、基材フィルム2aの一方の面13aに形成された、メッシュ状パターンからなる電磁波シールド層3a及び電磁波シールド層3aに電気的に接続された接地層4aと、を有し、基材フィルム2aの他方の面14aに、接地層4aと向かい合うように配置された導電層5aが設けられ、導電層5aと接地層4aとが部分的に接触している。なお、本発明において、「導電層と接地層とが部分的に接触している」とは、図2に示すような、断続的に導電層5aと接地層4aとが接触している場合のように、導電層の少なくとも一部が接地層と接触している接触形態をいう。このため、こうした接触形態としては、図2に示されるようなものに限られず、例えば、導電層の全面が接地層と接触するようなものを用いてもよい。
【0037】
電磁波シールドシート1aにおいては、基材フィルム2aの他方の面14aに、接地層4aと向かい合うように配置された導電層5aが設けられ、導電層5aと接地層4aとが部分的に接触しているので、基材フィルム2aの他方の面14aと接地層4aひいては電磁波シールド層3aとの電気的な接続が確保され、その結果、外部のアース端子との直接の接続が可能となる接地構造が形成される。
【0038】
電磁波シールドシート1aにおいては、導電層5aと接地層4aとの部分的な接触が超音波接合により行われている。導電層5aと接地層4aとの部分的な接触が超音波接合により行われているので、導電層5aと接地層4aとの安定な電気的接続が可能となり、その結果、安定した接地特性を有する電磁波シールドシート1aを得ることができる。なお、導電層と接地層との電気的な接続方法としては、超音波接合の他、例えば、回転押圧体の内部にある固定ヒータを用いた加熱による接合(例えば、特開2006−209393号公報を参照)、ヒータが内蔵された伝熱性のかしめ刃による接合(例えば、特開2006−107418号公報を参照)、及びレーザ光を用いた加熱による接合(例えば、特開2006−209395号公報を参照)等を用いることもできる。
【0039】
基材フィルム2aは、透明なフィルムであり、従来公知のものを用いることができる。具体的には、透明性の高い樹脂フィルムが用いられる。基材フィルム2aの透明性は、分光光度計等を利用して測定される可視光線透過率で80%以上であることが好ましい。樹脂フィルムの材料としては、透明性、耐熱性、コスト等の観点から、通常、ポリエチレンテレフタレートが用いられる。また、こうした樹脂フィルムは、1軸延伸又は2軸延伸した延伸シートが用いられ、より好ましくは2軸延伸した延伸シートが用いられる。基材フィルム2aの厚さは、機械的強度、反りや弛み、破断、及び帯状で供給して加工すること等を考慮して、通常12μm以上、通常1000μm以下とする。
【0040】
基材フィルム2aの表面には、電磁波シールド層3a及びこの電磁波シールド層3aに電気的に接続された接地層4aがそれぞれ設けられている。
【0041】
電磁波シールド層3aは、プラズマディスプレイパネルから漏洩する電磁波をシールドするために、基材フィルム2aの一方の面13aに設けられる。電磁波シールド層3aは、プラズマディスプレイパネルの視認性を低下させずに電磁波シールド機能を奏するために、互いに交差する細い導電性の線群で形成されるメッシュ状パターンからなる。
【0042】
電磁波シールド層3aは、図1には図示していないが、プラズマディスプレイパネルと対向するようにして、電磁波シールドシート1aとプラズマディスプレイパネルとが貼り合わせられる。これにより、電磁波シールド層3aとプラズマディスプレイパネルとが数十μmのオーダーで近接して配置されることになり、電磁波シールド機能がより効果的に発現するようになる。一方で、こうした電磁波シールド層3aとプラズマディスプレイパネルのガラスの表示面とが近接することにより、電磁波シールド層3aの外部のアース端子への接続方法が課題となるが、この点については、接地層4aと、超音波接合により電気的に接続された導電層5aとを用いることにより、外部のアース端子との直接の接続が可能となる接地構造が得られる。
【0043】
電磁波シールド層3aには、通常、電磁波シールド機能以外に、プラズマディスプレイパネルに入射する外光を吸収するという機能が付加される。このため、電磁波シールド層3aを構成するメッシュ状パターンの線群は、通常、電磁波をシールドするための金属材料で構成される金属層と、外光を吸収するための黒化層との少なくとも2層で構成される。そして、外光が入射する側に黒化層が設けられ、プラズマディスプレイパネルと対向する側に金属層が設けられるように構成される。より詳しくは、上記で説明したように、プラズマディスプレイパネルの表示面は電磁波シールド層3aに対向するように電磁波シールドシート1aに貼り合わせられる(図1では図示していない。)ので、電磁波シールド層3aは、基材フィルム2aの一方の面13aから、黒化層及び金属層の順番になるように形成される。こうした電磁波シールド層3aは、通常、黒化処理によって得られる黒化層と、銅等の金属層との2層を少なくとも有する薄膜を基材フィルム2aの全面に形成し、フォトリソグラフィー法等でメッシュ状パターンにパターニングして得る。
【0044】
電磁波シールド層3aは、通常、プラズマディスプレイパネルの表示面と同等またはそれより大きくなるように形成され、図1に示すように略長方形の形状を有する。
【0045】
接地層4aは、電磁波シールド層3aと外部のアース端子とを電気的に接続するために用いられるものである。このため、接地層4aは、メッシュ状パターンからなる電磁波シールド層3aと電気的に接続され、電磁波シールド層3aと同様に、基材フィルム2aの一方の面13a上に設けられている。より詳しくは、図1では、接地層4aは、電磁波シールド層3aを囲むようにして基材フィルム2a上に額縁状に設けられている。接地層4aと電磁波シールド層3aとの電気的な接続は、通常、電磁波シールド層3aのメッシュ状パターンを構成する線群と、接地層4aとを連続的に形成することによって行われる。例えば、上記のフォトリソグラフィー法でメッシュ状パターンからなる電磁波シールド層3aを形成する場合には、黒化処理によって得られる黒化層と、銅等の金属層との2層を少なくとも有する薄膜を基材フィルム2aの全面に形成する。その後フォトリソグラフィー法で、電磁波シールド層3aに該当する領域をメッシュ状パターンにパターニングすれば、パターニングが行われなかった電磁波シールド層3aの周囲の領域が接地層4aとなる。こうして得られる接地層4aの、材料、層構成、及び厚さ等は、電磁波シールド層3aと同様となる。なお、接地層は、必ずしも額縁状である必要はない。例えば、電磁波シールド層と同様にメッシュ状パターンに形成してもよい。
【0046】
導電層5aは、基材フィルム2aの他方の面14aと接地層4aとの間の電気的な接続を確保するために用いられるものである。より詳しくは、導電層5aは、基材フィルム2aの他方の面14aに設けられ、接地層4aと向かい合うように配置され、接地層4aと超音波接合される。導電層5aと接地層4aとを超音波接合して部分的に接触させることにより、基材フィルム2aの他方の面14aにおける外部のアース端子との直接の接続が可能となる。
【0047】
導電層5aは、図3に示すように、空隙部H1の底部で接地層4aと接触し溶融することにより、溶接面6aを形成する。溶接面6aは、図3では3カ所形成されているが、こうした断続的に形成される複数の溶接面6aにより、導電層5aと接地層4aとが部分的に接触することとなる。空隙部H1は、超音波接合の際に、超音波ヘッドに加えられる超音波振動及び温度によって、基材フィルム2aが軟化又は溶融されて、基材フィルム2aの材料が超音波ヘッドの周囲に押し出されることによって形成される。そして、空隙部H1内の基材フィルムの材料をほとんど押し出すと、最終的に導電層5aと接地層4aとが接触して、超音波ヘッドの熱と超音波振動により、導電層5a又は接地層4aのいずれか又は両方が溶融して溶接面6aが形成される。なお、図1〜3の光学シールドシート1aにおいては、超音波ヘッドを導電層5a側から押し込んで導電層5aに凹凸形状を形成し、溶接面6aで導電層5aと接地層4aとを接触させているが、本発明はこうした態様に限られるものではない。例えば、接地層の厚さにもよるが、超音波ヘッドを接地層の側から押し込んで接地層に凹凸形状を形成し、接地層と導電層との間で溶接面を形成してもよい。また、例えば、導電層及び接地層を挟むようにして2つの超音波ヘッドで押し込み、導電層及び接地層の両方に凹凸形状を形成し、導電層及び接地層が接触した部分で溶接面を形成してもよい。
【0048】
導電層5aでは、図1に示すように、溶接面6aが9カ所形成されているが、導電層一つあたりの溶接面は、通常1以上とする。上記範囲とすれば、超音波ヘッドをコンパクトに形成できるとともに、導電層と接地層との電気的接続を確保しやすくなる。
【0049】
導電層5aと接地層4aとが形成する溶接面6aの幅tは、図3に示すように、通常1.0mm以上、好ましくは2.5mm以上とする。上記範囲とすれば、導電層5aと電磁波シールド層3aとの間の電気抵抗を低減しやすくなる。基材フィルム2aとして、例えば100μm以上の比較的厚い厚さを有するフィルムを用いる場合には、導電層5aと接地層4aとの電気的接続を確実にするために、接合面6aの幅tを上記範囲に制御することが重要となる。
【0050】
導電層5aには、通常、金属材料が用いられる。導電層5aに用いる金属材料としては、例えば、銅、アルミ、金等を挙げることができる。これらのうち、電気抵抗、コスト等の点から、銅を用いることが好ましい。一方、上記で説明したように、接地層4aに金属層が用いられる場合には、導電層5a及び接地層4aに同一の金属材料を用いることが好ましい。同一の金属材料を用いることにより、溶接面6aにおける導電層5aと接地層4aとの接合が強固になり、その結果、導電層5aと接地層4aとの間の電気抵抗をより低減できる。
【0051】
導電層5aの厚さは、通常5μm以上、好ましくは10μm以上とする。上記範囲とすれば、超音波接合時に切断されることなく溶融されやすくなり、接地層4aとの間で強固な溶接面6aを形成しやすくなる。
【0052】
図4は、電磁波シールドシートの他の一例を示す模式的な斜視図であり、図5は、図4に示す電磁波シールドシートの裏面を示す模式的な斜視図である。
【0053】
電磁波シールドシート1bにおいては、基材フィルム2bの他方の面14bの面内に導電層5bが複数、より詳しくは、4カ所設けられている。そして、これら複数の導電層5bがそれぞれ接地層4bと超音波接合されている。図5に示すように、導電層5bが、接地層4bと向かい合うようにして、基材フィルム2bの他方の面14bにおける異なる位置に複数配置されることにより、基材フィルム2bの他方の面14bの面内に導電層5bが複数設けられることになる。
【0054】
電磁波シールドシート1bにおいては、導電層5bが複数設けられ、これら複数の導電層5bがそれぞれ接地層4bと超音波接合されているので、導電層5bと接地層4bとが電気的に接続される箇所が増加し、その結果、電磁波シールド層3bの接地を行いやすくなる。具体的には、電磁波シールドシート1bにおいては、一つの導電層5bあたりの溶接面6bの数が9個であるので、電磁波シールドシート1b全体でみると、36個の溶接面6bが存在することになる。このように、本発明においては、基材フィルムの他方の面の面内に導電層が複数設けられていることが好ましいが、電磁波シールドシートに設けられる導電層の数は、通常1以上、好ましくは4以上とする。この範囲とすれば、電磁波シールド層の接地が行いやすくなる。
【0055】
電磁波シールドシート1a,1bは、図1〜5に示されるように、1つの導電層ごとに、9つの溶接面からなる超音波溶接部が1つ形成されるというものである。しかしながら、本発明はこのような態様に限られるものではない。例えば、導電層を接地層と同じ大きさにする等、導電層を大きく設け、一つの導電層に上記の超音波溶接部を複数設けるということをしてもよい。
【0056】
(電磁波シールドシートの製造方法)
本発明の電磁波シールドシートは、通常、一方の面に電磁波シールド層及び接地層が設けられた基材フィルムを準備した後、基材フィルムの他方の面に、導電層を接地層と向き合う位置に設置し、導電層と接地層とを超音波接合することによって製造される。
【0057】
一方の面に電磁波シールド層及び接地層が形成された基材フィルムの製造は、例えば、上記で一部説明したとおり、基材フィルム上にスパッタリングや印刷等により、黒化層と金属層とを少なくとも形成し、これをフォトリソグラフィー法でパターニングして基材フィルム上に電磁波シールド層及び接地層を形成することによって行われる。こうした製造方法は、従来公知の方法をそのまま用いることができるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0058】
次に、電磁波シールド層及び接地層が形成された基材フィルムの他方の面に、導電層を接地層と向き合うような位置に設置し、超音波接合を行う。導電層の設置及び超音波接合は、連続的に行ってもよいし、間欠的に行っても良い。連続的に行う場合は、通常、長尺の基材フィルム表面に一組の電磁波シールド層及び接地層が連続的かつ断続的に複数設けられてロール状に巻き取られたものを準備し、長尺の基材フィルムをロールから引き出しながら、一組の電磁波シールド層及び接地層ごとに導電層の設置及び超音波接合を行う。一方、導電層の設置及び超音波接合を間欠的に行う場合は、通常、上記のロール状に形成された長尺の基材フィルムから、一組の電磁波シールド層及び接地層毎に基材フィルムを切り出し、これら1枚1枚の基材フィルム毎に、導電層の設置及び超音波接合を行う。
【0059】
図6は、導電層の設置及び超音波接合を行う際の各工程を示す模式的な断面図である。より詳しくは、図6(a)には導電層を設置する工程が、図6(b),(c),(d)には超音波接合を行う工程が示されている。以下、各工程について説明する。
【0060】
導電層5cを設置する工程においては、図6(a)に示すように、接着層8を介して、導電層5cが基材フィルム2cの他方の面14cに貼り付けられる。このとき、導電層5cは、基材フィルム2cを挟んで接地層4cと向かい合うような位置に設置する。なお、図6(a)においては、導電層5cの片面に接着層8を設けることにより、基材フィルム2c上での導電層5cの設置・固定が行われるが、本発明はこのような態様に限られるものではない。例えば、接着層を用いることなく、導電層を基材フィルム上に単に裁置するだけでもよい。また、例えば、スクリーン印刷、パターン印刷等の印刷法、スパッタリングや蒸着等の物理的気相成長法(Physical vapor deposition:PVD)を用いて基材フィルム上に導電層の形成を行ってもよい。
【0061】
次に、超音波接合を行う工程においては、まず、図6(b)に示すように、所定の温度に加熱された超音波ヘッド9が超音波振動しながら導電層5cから接地層4cへの方向(下向き方向)に移動する。そして、超音波ヘッド9を基材フィルム2c側に押し込みながら、超音波ヘッド9に加えられる超音波振動及び温度によって、基材フィルム2aの材料が軟化又は溶融されて、超音波ヘッド9の周囲に押し出される。そして、図6(c)に示すように、導電層5cが接地層4cに接し、接触面が超音波接合されて溶接面6cが形成される。その後、図6(d)に示すように、超音波ヘッド9を接地層4cから導電層5cへの方向(上向き方向)に移動させて、超音波接合によって形成された溶接面6cから、離脱させる。以上を経て、電磁波シールドシート1cが製造される。
【0062】
基材フィルム2cは、一般的には比較的厚いフィルムが用いられ、この厚いフィルムを介して導電層5cと接地層4cとが超音波接合される。このため、導電層5cと接着層4cとの電気的な接続を確保するため、超音波接合に用いる超音波ヘッド9の加熱温度、振幅、荷重、及び押し込み量の制御が重要となる。
【0063】
超音波ヘッド9の加熱温度は、基材フィルム2cに樹脂を用いる場合には、この樹脂の軟化温度よりも高い温度に設定することが好ましい。より具体的には、超音波ヘッド9の加熱温度は、通常50℃以上、好ましくは80℃以上とする。加熱温度を上記範囲とすれば、軟化・溶融による基材フィルム2cの除去が行われやすくなる。
【0064】
超音波ヘッド9の振幅は、通常8.5μm以上、好ましくは10μm以上とする。超音波ヘッド9の振幅を上記範囲とすれば、軟化・溶融した基材フィルム2cをより効率的に除去することが可能となる。
【0065】
超音波接合の際に、超音波ヘッド9にかける荷重は、通常50N以上、好ましくは200N以上とする。超音波ヘッド9にかける荷重を上記範囲とすれば、軟化・溶融した基材フィルム2cをより効率的に除去することが可能となる。
【0066】
超音波ヘッド9の押し込み量は、基材フィルム2cの厚さにも依存するが、通常50μm以上、好ましくは75μm以上とする。超音波ヘッド9の押し込み量を上記範囲とすれば、接地層4cを傷つけにくく、効率的な超音波接合が行われやすくなる。
【0067】
以上説明した超音波接合の工程は、工業的には、例えば、特開2006−79258号公報に記載された超音波接合の方法、装置を適宜応用して行うこともできる。
【0068】
[光学フィルタ及びその製造方法]
(光学フィルタ)
図7は、本発明の光学フィルタの一例を示す模式的な斜視図であり、図8は、図7におけるB−B’面の模式的な断面図である。
【0069】
本発明に係る第1の光学フィルタ10aは、基材フィルム2dと、基材フィルム2dの一方の面13dに形成された、メッシュ状パターンからなる電磁波シールド層3d及び電磁波シールド層3dに電気的に接続された接地層4dと、基材フィルム2dの他方の面14dに設けられた光学調整層7aと、を有し、基材フィルム2dの他方の面14dのうち光学調整層7aが設けられていない基材フィルム面に、接地層4dと向かい合うように配置された導電層5dが設けられ、導電層5dと接地層4dとが部分的に接触している。
【0070】
光学フィルタ10aにおいては、基材フィルム2dの他方の面14dのうち光学調整層7aが設けられていない基材フィルム面に、接地層4dと向かい合うように配置された導電層5dが設けられ、導電層5dと接地層4dとが部分的に接触しているので、基材フィルム2dの他方の面14dと接地層4dひいては電磁波シールド層3dとの電気的な接続が確保され、その結果、外部のアース端子との直接の接続が可能となる接地構造が形成される。
【0071】
光学フィルタ10aにおいては、導電層5dと接地層4dとの部分的な接触が超音波接合により行われている。導電層5dと接地層4dとの部分的な接触が超音波接合により行われているので、導電層5dと接地層4dとの安定な電気的接続が可能となり、その結果、安定した接地特性を有する光学フィルタ10aを得ることができる。なお、導電層と接地層との電気的な接続方法としては、超音波接合の他、様々な方法を用いることが可能であることは、電磁波シールドシートにおいてすでに説明したとおりである。
【0072】
光学フィルタ10aは、光学調整層7aを間欠的に基材フィルム2dに貼り合わせて製造される形態のものである。より具体的には、光学フィルタ10aは、長尺の基材フィルム表面に一組の電磁波シールド層及び接地層が連続的かつ断続的に複数設けられてロール状に巻き取られたものを準備し、このロール状に形成された長尺の基材フィルムから、一組の電磁波シールド層3d及び接地層4d毎に基材フィルム2dを切り出し、こうして得られた基材フィルム2d毎に、電磁波シールド層3dと同程度の大きさの光学調整層7aを、基材フィルム2dの他方の面14dに、電磁波シールド層3dが形成された領域をカバーするように貼り合わせて得られるものである。
【0073】
光学フィルタ10aは、電磁波シールド層3dとほぼ同等の大きさの光学調整層7aが基材フィルム2dの他方の面14dに貼り付けられていること以外は、基本的には、図1〜3で説明した電磁波シールドシート1aと同様とすればよい。したがって、光学フィルタ10aにおける好ましい態様や変形例も、基本的に電磁波シールドシート1aと同様とすればよい。以下、光学フィルタ10aの好ましい態様について代表的なものをいくつか説明する。
【0074】
光学フィルタ10aにおいて、導電層5dとして金属を用い、接地層4dに金属層が用いられる場合には、導電層5d及び接地層4dに同一の金属材料を用いることが好ましい。同一の金属材料を用いることにより、溶接面(以下、光学フィルタ10aの溶接面を「第一溶接面」という。)11aにおける導電層5dと接地層4dとの接合が強固になり、その結果、導電層5dと接地層4dとの間の電気抵抗をより低減できる。
【0075】
光学フィルタ10aは、上記で説明したように、電磁波シールド層3dとほぼ同等の大きさの光学調整層7aが基材フィルム2dの他方の面14dに貼り付けられている点で電磁波シールドシート1aと異なる。そこで、以下では、電磁波シールドシート1aとの相違点である光学調整層7aについて説明を行う。
【0076】
光学調整層7aとしては、従来公知のものをそのまま用いればよい。例えば近赤外線吸収層、ネオン光吸収層、紫外線吸収層、反射防止層、ハードコート層、防汚層、及び防眩層等を挙げることができる。これら層を複数用いる場合における層を積層する順番は、用いる用途に応じて適宜調整すればよい。また、それぞれの層の厚さはそれぞれの光学調整層7a毎に適当な厚さが設定される。
【0077】
近赤外線吸収層は、通常、プラズマディスプレイパネルから放射される近赤外線を吸収するために設けることができる。近赤外線吸収層を設けることにより、プラズマディスプレイ装置の近くで使用されるリモートコントロール装置の誤作動等を防止することができる。近赤外線吸収層は、例えば、ジインモニウム系化合物、フタロシアニン系化合物等の近赤外線吸収剤をバインダ樹脂中に添加した塗料を、基材フィルム2dの他方の面14d上に塗工する、又は透明基材上にかかる近赤外線吸収塗料を塗工したものを基材フィルム2dの他方の面14d上に接着剤で接着することにより設けることができる。
【0078】
ネオン光吸収層は、通常、プラズマディスプレイパネルから放射されるネオン光を吸収するために設けることができる。ネオン原子の発光スペクトル帯域は波長550〜640nmであるので、ネオン光吸収層は、通常、少なくとも550〜640nmの波長領域内に吸収極大を有する色素をバインダ樹脂に分散させた層とすることが好ましく、中心波長590nmにおける光線透過率が50%以下になるように含有量等を調整することがより好ましい。
【0079】
紫外線吸収層は、外光としてプラズマディスプレイパネルに入射する紫外線を吸収して、プラズマディスプレイパネルを構成する材料の紫外線劣化を防ぐために設けることができる。また、上記のような有機系の近赤外線吸収剤を含有する近赤外線吸収層を設ける場合には、この近赤外線吸収剤は紫外線により劣化しやすいため、紫外線吸収層を近赤外線吸収層より外側に積層することが好ましい。紫外線吸収層は、通常、紫外線吸収剤をバインダ樹脂に分散させた層を基材フィルム2dの他方の面14d上に設ける、又は紫外線吸収層を有するシートを基材フィルム2dの他方の面14d上に貼り合わせて設けることができる。
【0080】
反射防止層(AR(Anti Reflection)層)は、通常、光干渉で反射光を抑制するために設けることができる。反射防止層としては、通常、低屈折率層が最表面に位置する様にして低屈性率層と高屈折率層とを交互に積層した多層構成からなるものが好ましく用いられる。
【0081】
ハードコート層(HC(Hard Coat)層)は、通常、光学調整層7aの表面を保護するために設けることができる。ハードコート層は、通常、電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等で形成される。
【0082】
防眩層(AG(Anti Glare)層)は、光拡散によって外光の鏡面反射を低減し、ギラツキを防止するために設けることができる。防眩層は、通常、透明樹脂バインダ中にこれと屈折率の異なるシリカ等の無機フィラーを分散させた層として、又は透明樹脂層表面にエンボス加工等で光拡散性の微小な凹凸を賦形したものとして形成することができる。
【0083】
防汚層は、通常、基材フィルム2dに付着する汚れを防止するために設けることができる。防汚層は、撥水性や撥油性を有する層であり、通常、シロキサン系化合物や、フッ素化アルキルシリル化合物等が用いられる。
【0084】
光学調整層7aは、求められる性能に応じて、以上説明した各層を適宜選択して用いればよい。
【0085】
図9は、本発明の光学フィルタの他の一例を示す模式的な斜視図であり、図10は、図9におけるC−C’面の模式的な断面図である。
【0086】
本発明に係る第2の光学フィルタ10bは、基材フィルム2eと、基材フィルム2eの一方の面13eに形成された、メッシュ状パターンからなる電磁波シールド層3e及び電磁波シールド層3eに電気的に接続された接地層4eと、基材フィルム2eの他方の面14eに設けられた光学調整層7bとを有し、光学調整層7bの表面16に、接地層4eと向かい合うように配置された導電層5eが設けられ、導電層5eと接地層4eとが部分的に接触している。なお、光学調整層7bの表面16とは、光学調製層7bと基材フィルム2eとが接している面とは反対側の面をいう。
【0087】
光学フィルタ10bにおいては、光学調整層7bの表面16に、接地層4eと向かい合うように配置された導電層5eが設けられ、導電層5eと接地層4eとが部分的に接触しているので、光学調整層7bの表面16と接地層4eひいては電磁波シールド層3eとの電気的な接続が確保され、その結果、外部のアース端子との直接の接続が可能となる接地構造が形成される。
【0088】
光学フィルタ10bにおいては、導電層5eと接地層4eとの部分的な接触が超音波接合により行われている。導電層5eと接地層4eとの部分的な接触が超音波接合により行われているので、導電層5eと接地層4eとの安定な電気的接続が可能となり、その結果、安定した接地特性を有する光学フィルタ10bを得ることができる。なお、導電層と接地層との電気的な接続方法としては、超音波接合の他、様々な方法を用いることが可能であることは、電磁波シールドシートにおいてすでに説明したとおりである。
【0089】
光学フィルタ10bは、光学調整層7bを連続的に基材フィルム2eに貼り合わせて製造される形態のものである。具体的には、長尺の基材フィルム表面に一組の電磁波シールド層及び接地層が連続的かつ断続的に複数設けられてロール状に巻き取られたものを準備し、また、長尺の光学調整層がロール状に形成されたものを準備する。ここで、光学調整層の幅は、基材フィルムの幅よりも小さく、電磁波シールド層の短辺の長さと略同一となっている。そして、これら二つのロールから基材フィルムと光学調整層を引き出し、電磁波シールド層と光学調整層とを重ねるようにして、基材フィルムの他方の面に光学調整層を貼り合わせた後、光学フィルタ10bを1枚ずつ切り出す。
【0090】
光学フィルタ10bは、図9に示すように、光学調整層7bの長辺が基材フィルム2eの長辺の長さと同一になっているために、導電層5eが光学調整層7bの表面16に設けられていること、超音波接合により光学調整層7b及び基材フィルム2eの材料が軟化・溶融により超音波ヘッドの周囲に押し出される結果、導電層5eと接地層4eとが接触して溶接面(以下、光学フィルタ10bにおける溶接面を「第2溶接面」という。)12aが形成されること、以外は、図7,8で説明した光学フィルタ10aひいては図1〜3で説明した電磁波シールドシート1aと同様とすればよい。したがって、光学フィルタ10bにおける好ましい態様や変形例も、基本的に光学フィルタ10aひいては図1〜3で説明した電磁波シールドシート1aと同様とすればよい。以下、光学フィルタ10bの好ましい態様について代表的なものをいくつか説明する。
【0091】
光学フィルタ10bにおいて、導電層5eとして金属を用い、接地層4eに金属層が用いられる場合には、導電層5e及び接地層4eに同一の金属材料を用いることが好ましい。同一の金属材料を用いることにより、第2溶接面12aにおける導電層5eと接地層4eとの接合が強固になり、その結果、導電層5eと接地層4eとの間の電気抵抗をより低減できる。
【0092】
光学フィルタ10bは、上記で説明したように、導電層5eが光学調整層7bの表面16に設けられている点、超音波接合により光学調整層7b及び基材フィルム2eの材料が軟化・溶融により超音波ヘッドの周囲に押し出される結果、導電層5eと接地層4eとが接触して第2溶接面12aが形成される点、の2点において光学フィルタ10aと異なる。そこで、以下では、光学フィルタ10aとの上記2点の相違点について説明する。
【0093】
光学フィルタ10bにおいては、光学調整層7bの表面16と、接地層4eひいては電磁波シールド層3eとの間での電気的な接続を確保するために、導電層5eが光学調整層7bの表面16に設けられている。より詳しくは、図10に示すように、導電層5eは、光学調整層7bの表面16において、接地層4eと向かい合うように配置されている。また、超音波接合により光学調整層7b及び基材フィルム2eの材料が軟化・溶融により超音波ヘッドの周囲に押し出される結果、導電層5eと接地層4eとが接触して第2溶接面12aが形成される。より詳しくは、図10に示すように、超音波接合により光学調整層7b及び基材フィルム2eの材料が超音波ヘッドの周囲に押し出されて形成される空隙部H2の底部において、導電層5eと接地層4eとが接触して溶融することにより第2溶接面12aが形成される。図7,8に示す光学フィルム10aと比較して、超音波接合により除去すべき層の厚みが厚くなる分、第2溶接面12aでの電気的接続を確保するための超音波接合の条件の制御が重要となる。
【0094】
図11は、本発明の光学フィルタのさらに他の一例を示す模式的な斜視図である。光学フィルタ10cでは、導電層(図11には図示していない。)が、基材フィルム2fの他方の面のうち光学調整層が設けられていない基材フィルム面(以下、「基材フィルム2fの他方の面のうち光学調整層が設けられていない基材フィルム面」を、「基材フィルム面」ということがある。)の面内に複数設けられている。同様に、導電層が、光学調整層7cの表面の面内に複数設けられている。そして、これら複数の導電層がそれぞれ接地層4fと超音波接合により部分的に接触している。より詳しくは、図11には図示されていないが、導電層が8カ所設けられている。そして、4カ所が基材フィルム面の面内に設けられ、4カ所が光学調整層7cの表面の面内に設けられている。そしていずれの導電層も、接地層4fと向かい合うように配置されている。こうして導電層が基材フィルム面の面内及び光学調整層7cの表面の面内に複数設けられており、これら複数の導電層がそれぞれ接地層4fと超音波接合されているので、導電層と接地層4fとが電気的に接続される箇所が増加し、その結果、電磁波シールド層3fの接地を行いやすくなる。具体的には、基材フィルム面の異なる位置に設けられた4カ所の導電層により第1溶接面11bが36個形成され、光学調整層7bの表面の異なる位置に設けられた4カ所の導電層により第2溶接面12bが36個形成されている。このように、本発明においては、導電層が基材フィルム面の面内に複数設けられていること、すなわち、導電層が基材フィルム面上の異なる位置に複数設けられることが好ましく、また、導電層が光学調整層の表面の面内に複数設けられていること、すなわち、導電層が光学調整層の表面上の異なる位置に複数設けられることが好ましい。光学フィルタに設けられる上記の導電層の数は、通常1以上、好ましくは4以上とする。この範囲とすれば、電磁波シールド層の接地が行いやすくなる。
【0095】
(光学フィルタの製造方法)
本発明の光学フィルタは、通常、一方の面に電磁波シールド層及び接地層が設けられ、他方の面には光学調整層が設けられた基材フィルムを準備した後、基材フィルムの他方の面又は光学調整層の表面に、導電層を接地層と向き合う位置に設置し、導電層と接地層とを超音波接合することによって製造される。
【0096】
光学フィルムは、電磁波シールドシートにおける基材フィルムの他方の面に光学調整層を貼り付けることによって製造される。光学フィルムの製造方法は、従来公知の方法をそのまま用いることができるので、ここでは詳細な説明は省略する。また、光学フィルムにおける導電層の設置及び超音波接合を行う工程についても、電磁波シールドシートで説明した製造方法をそのまま用いるか、適宜応用すればよいので、ここでの説明は省略する。
【0097】
[プラズマディスプレイ装置への適用]
図12は、本発明の光学フィルタを適用したプラズマディスプレイ装置の模式的断面図である。より詳しくは、7,8図に示す光学フィルタ10aをプラズマディスプレイ装置に適用したものである。
【0098】
プラズマディスプレイ装置100は、プラズマディスプレイパネル80と、光学フィルタ10aの電磁波シールド層3dとが、粘着層70を挟んで向かい合うように設置されている。そして、基材フィルム2dの他方の面14dに存在する導電層5dと、外部アース端子90とを電気的に接続することにより、電磁波シールド層3dが接地されている。この構成では、電磁波シールド層3dとプラズマディスプレイパネル80とが数十μmのオーダーに近接して設置されることになるので、電磁波シールドの機能が向上する。一方、電磁波シールド層3dとプラズマディスプレイパネル80とが近接して位置する分、光学フィルタ10aとプラズマディスプレイパネル80との間に存在する粘着層70が形成する空間に外部アース端子を挿入することは現実的でない。無理に外部アース端子を設置すると、外部アース端子がプラズマディスプレイパネル80の表面に接触して傷を付ける可能性もある。そこで、導電層5dを設けて、導電層5dと接地層4dとを超音波接合して、基材フィルム2dの他方の面14dから外部アース端子90に接地を行う、本発明の光学フィルタ10aにおいて採用する接地構造の有効性が発揮されることになる。
【0099】
プラズマディスプレイ装置100では、図7,8の光学フィルタ10aについてのみ説明したが、上記において紹介したその他の電磁波シールドシート1a,1b,1cや、光学フィルタ10b,10cにおいても同様の効果が奏される。
【実施例】
【0100】
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0101】
[実施例1]
接地層を表面に有する基材フィルムを用意した。ここで、接地層は35μmの銅箔とし、基材フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ100μm)を用いた。次いで、基材フィルムの他方の面に、接地層と向かい合うようにして導電層(銅箔、厚さ100μm)を載置した後、この導電層上に超音波ヘッドを押圧し、導電層と接地層との超音波接合を行った。こうして、導電層と接地層とを部分的に接触させた。また、超音波接合の条件は、加重を400N、振幅を19.6μm、超音波ヘッドの押し込み量を135μmとした。
【0102】
こうして得た電磁波シールドシートの断面を、超深度形状測定顕微鏡VK−8500((株)キーエンス製)のCCDカメラを用いた撮影したところ、超音波接合によりポリエチレンテレフタレートフィルムの除去が良好に行われ、導電層として用いた銅箔と、接地層として用いた銅箔とが接合されていることを確認した。また、電磁波シールドシートにつき、接地層と導電層との間の抵抗値を測定したところ3.5Ωであった。この結果より、厚さ100μmという厚いポリエチレンテレフタレートフィルムにおいても、接地層と導電層とが電気的に接続されており、実使用上の接地特性が確保できることがわかった。
【0103】
[実施例2]
図1に示す電磁波シールドシート1aと同様の構造を有する電磁波シールドシートを準備した。より詳しくは、電磁波シールド層及びこの電磁波シールド層に電気的に接続された接地層を一方の面に有する基材フィルムを、フォトリソグラフィー法を用いて製造した。ここで、基材フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ75μm)を用いた。次いで、基材フィルムの他方の面に、接地層と向かい合うようにして導電層(銅箔、厚さ40μm)を載置した後、この銅箔上に超音波ヘッドを押圧し、導電層と接地層との超音波接合を行った。こうして、導電層と接地層とを部分的に接触させた。また、超音波接合の条件は、加重を400N、振幅を18μm、超音波ヘッドの押し込み量を150μmとした。
【0104】
こうして得られた電磁波シールドシートにつき、接地層と導電層との間の抵抗値を測定したところ6.3Ωであった。この結果より、接地層と導電層とが電気的に接続されており、実使用上の接地特性が確保できることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の電磁波シールドシートの一例を示す模式的な斜視図である。
【図2】図1におけるA−A’面の模式的な断面図である。
【図3】図2の一部を拡大して示す模式的な断面図である。
【図4】電磁波シールドシートの他の一例を示す模式的な斜視図である。
【図5】図4に示す電磁波シールドシートの裏面を示す模式的な斜視図である。
【図6】導電層の設置及び超音波接合を行う工程を示す模式的な断面図である。
【図7】本発明の光学フィルタの一例を示す模式的な斜視図である。
【図8】図7におけるB−B’面の模式的な断面図である。
【図9】本発明の光学フィルタの他の一例を示す模式的な斜視図である。
【図10】図9におけるC−C’面の模式的な断面図である。
【図11】本発明の光学フィルタのさらに他の一例を示す模式的な斜視図である。
【図12】本発明の光学フィルタを適用したプラズマディスプレイ装置の模式的断面図である。
【符号の説明】
【0106】
1a,1b,1c 電磁波シールドシート
2a,2b,2c,2d,2e,2f 基材フィルム
3a,3b,3c,3d,3e,3f 電磁波シールド層
4a,4b,4c,4d,4e,4f 接地層
5a,5b,5c,5d,5e 導電層
6a,6b,6c 溶接面
7a,7b,7c 光学調整層
8 接着層
9 超音波ヘッド
10a,10b,10c 光学フィルタ
11a,11b 第1溶接面
12a,12b 第2溶接面
13a,13d,13e 基材フィルムの一方の面
14a,14b,14c,14d,14e,14d 基材フィルムの他方の面
16 光学調整層の表面
70 粘着層
80 プラズマディスプレイパネル
90 外部アース端子
100 プラズマディスプレイ装置
H1,H2 空隙部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールドシート及び該電磁波シールドシートを用いた光学フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ装置はテレビやパーソナルコンピュータのモニター等、各種の分野で用いられているが、その種類は多岐にわたる。ディスプレイ装置の種類としては、例えば、CRTディスプレイ装置、液晶ディスプレイ装置(LCD)、プラズマディスプレイ装置、及びELディスプレイ装置等を挙げることができる。
【0003】
上記の様々なディスプレイ装置のうち、大画面ディスプレイ装置の分野では、プラズマディスプレイ装置が注目されている。プラズマディスプレイ装置は、画像表示領域に微細な画素区画パターンが形成されたプラズマディスプレイパネルを有する高精細な表示装置であり、その奥行きが薄いこと、また軽量であることから、テレビジョン、モニター等の種々の用途に利用され、今後も需要の増加が期待されている。
【0004】
しかし、こうしたプラズマディスプレイ装置は、発光にプラズマ放電を利用するため、30MHz〜1GHz帯域の不要な電磁波が外部に漏洩して他の機器(例えば、遠隔制御機器、情報処理装置等)に影響を与えるおそれがある。そのため、プラズマディスプレイ装置に用いられるプラズマディスプレイパネルの前面側(観察者側)に、漏洩する電磁波をシールドするための電磁波シールドフィルムを設けるのが一般的である。
【0005】
電磁波シールドフィルムは、プラズマディスプレイパネルの表示の視認性を落とすことなく電磁波を効率的にシールドするために、通常、金属メッシュ、及びこの金属メッシュと電気的に接続された電極部が、透明基材フィルム上に形成された形態を有する。こうした電磁波シールドフィルムは、粘着剤を用いてディスプレイパネルの表示面に貼付される。そして、外部のアース端子と上記の電極部とを電気的に接続することにより、金属メッシュが接地される。
【0006】
金属メッシュを接地するための構造として、特許文献1では、ディスプレイパネルの周縁に接地電極を配置し、この接地電極に設けられた突起又は突条を電磁波シールドフィルムの電極部に貫通させることにより、金属メッシュの接地を行う構造が提案されている。
【特許文献1】特開2006−196760号公報(第0033段落〜第0036段落、図5、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1においては、例えば同文献の図5,6に示されるように、金属メッシュ(以下、「金属メッシュ」を「メッシュ状パターンからなる電磁波シールド層」又は、単に「電磁波シールド層」という。)を、粘着剤を介してディスプレイパネルに対向するように設置する構成を採用している。これは、ディスプレイパネルと電磁波シールド層とを近接(数十μmの間隔)して設けることにより、ディスプレイパネルから漏洩する電磁波を効率的にシールドするためであると考えられる。ところが、上記のような構成は、電磁波シールド層とディスプレイパネルとが近接して設けられる分、ディスプレイパネル側に接地用の電極を設けることなく、電磁波シールド層を接地するための端子を外部に取り出すことが困難となる。このため、特許文献1に記載された発明においては、ディスプレイパネルの周縁に接地電極を配置し、この接地電極に設けられた突起又は突条を電磁波シールドフィルムの電極部に貫通させることにより、電磁波シールド層の接地をとる構造を採用している(以下、「電磁波シールドフィルム」を「電磁波シールドシート」という。また、電極部を「接地層」という。)。
【0008】
しかしながら、特許文献1で提案された構造では、ディスプレイパネル側に接地電極を設ける必要があるためにディスプレイパネルにおいて所定の設計変更が必要となる課題があるが、ディスプレイパネルは表面がガラス基板であることが多いのでその設計変更は容易ではない。また、接地電極に突起又は突条を設ける分、ディスプレイ装置全体のコストが増加する課題もある。さらに、同文献の図6に記載されるように、接地電極に設けられた突起又は突条を接地層に貫通させるために圧縮ロールを用いているが、こうした圧縮ロールの採用により、圧縮ロールの押圧により電磁波シールドシートに傷が付きやすくなるという課題もある。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、外部のアース端子との直接の接続が可能となる新しい接地構造を有し、プラズマディスプレイパネルに特別な設計や工夫を施すことなく、プラズマディスプレイ装置のコストダウンを実現し、製造過程で傷が付きにくい、新構造の電磁波シールドシートを提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、外部のアース端子との直接の接続が可能となる新しい接地構造を有し、プラズマディスプレイパネルに特別な設計や工夫を施すことなく、プラズマディスプレイ装置のコストダウンを実現し、製造過程で傷が付きにくい、新構造の光学フィルタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明の電磁波シールドシートは、基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に形成された、メッシュ状パターンからなる電磁波シールド層及び該電磁波シールド層に電気的に接続された接地層と、を有する電磁波シールドシートにおいて、前記基材フィルムの他方の面に、前記接地層と向かい合うように配置された導電層が設けられ、該導電層と前記接地層とが部分的に接触していることを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、基材フィルムの他方の面に、接地層と向かい合うように配置された導電層が設けられ、導電層と接地層とが部分的に接触しているので、基材フィルムの他方の面と接地層ひいては電磁波シールド層との電気的な接続が確保され、その結果、外部のアース端子との直接の接続が可能となる接地構造を有する電磁波シールドシートを得ることができる。
【0013】
本発明の電磁波シールドシートの好ましい態様においては、前記導電層が前記他方の面の面内に複数設けられている。
【0014】
この発明によれば、導電層が、基材フィルムの他方の面の面内に複数設けられているので、導電層と接地層とが電気的に接続される箇所が増加し、その結果、電磁波シールド層の接地を行いやすくなる。
【0015】
本発明の電磁波シールドシートの好ましい他の態様においては、前記導電層と前記接地層との部分的な接触が超音波接合により行われている。
【0016】
この発明によれば、導電層と接地層との部分的な接触が超音波接合により行われているので、導電層と接地層との安定な電気的接続が可能となり、その結果、安定した接地特性を有する電磁波シールドシートを得ることができる。
【0017】
本発明の電磁波シールドシートの好ましい他の態様においては、前記導電層及び前記接地層に同一の金属材料を用いる。
【0018】
この発明によれば、導電層及び接地層に同一の金属材料を用いるので、導電層と接地層との接合が強固になり、その結果、導電層と接地層との間の電気抵抗をより低減できる。
【0019】
上記課題を解決するための本発明に係る第1の光学フィルタは、基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に形成された、メッシュ状パターンからなる電磁波シールド層及び該電磁波シールド層に電気的に接続された接地層と、前記基材フィルムの他方の面に設けられた光学調整層と、を有する光学フィルタにおいて、前記基材フィルムの他方の面のうち前記光学調整層が設けられていない基材フィルム面に、前記接地層と向かい合うように配置された導電層が設けられ、該導電層と前記接地層とが部分的に接触していることを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、基材フィルムの他方の面のうち光学調整層が設けられていない基材フィルム面に、接地層と向かい合うように配置された導電層が設けられ、導電層と接地層とが部分的に接触しているので、基材フィルムの他方の面と接地層ひいては電磁波シールド層との電気的な接続が確保され、その結果、外部のアース端子との直接の接続が可能となる接地構造を有する光学フィルタを得ることができる。
【0021】
本発明に係る第1の光学フィルタの好ましい態様においては、前記導電層が前記基材フィルム面の面内に複数設けられている。
【0022】
この発明によれば、導電層が基材フィルム面の面内に複数設けられているので、導電層と接地層とが電気的に接続される箇所が増加し、その結果、電磁波シールド層の接地を行いやすくなる。
【0023】
上記課題を解決するための本発明に係る第2の光学フィルタは、基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に形成された、メッシュ状パターンからなる電磁波シールド層及び該電磁波シールド層に電気的に接続された接地層と、前記基材フィルムの他方の面に設けられた光学調整層と、を有する光学フィルタにおいて、前記光学調整層の表面に、前記接地層と向かい合うように配置された導電層が設けられ、該導電層と前記接地層とが部分的に接触していることを特徴とする。
【0024】
この発明によれば、光学調整層の表面に、接地層と向かい合うように配置された導電層が設けられ、導電層と前記接地層とが部分的に接触しているので、光学調整層の表面と接地層ひいては電磁波シールド層との電気的な接続が確保され、その結果、外部のアース端子との直接の接続が可能となる接地構造を有する光学フィルタを得ることができる。
【0025】
本発明に係る第2の光学フィルタの好ましい態様においては、前記導電層が前記光学調整層の表面の面内に複数設けられている。
【0026】
この発明によれば、導電層が光学調整層の表面の面内に複数設けられているので、導電層と接地層とが電気的に接続される箇所が増加し、その結果、電磁波シールド層の接地を行いやすくなる。
【0027】
本発明の光学フィルタの好ましい態様においては、前記導電層と前記接地層との部分的な接触が超音波接合により行われている。
【0028】
この発明によれば、導電層と接地層との部分的な接触が超音波接合により行われているので、導電層と接地層との安定な電気的接続が可能となり、その結果、安定した接地特性を有する電磁波シールドシートを得ることができる。
【0029】
本発明の光学フィルタの好ましい他の態様においては、前記導電層及び前記接地層に同一の金属材料を用いる。
【0030】
この発明によれば、導電層及び接地層に同一の金属材料を用いるので、導電層と接地層との接合が強固になり、その結果、導電層と接地層との間の電気抵抗をより低減できる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の電磁波シールドシートによれば、基材フィルムの他方の面に、接地層と向かい合うように配置された導電層が設けられ、導電層と接地層とが部分的に接触しているので、外部のアース端子との直接の接続が可能となる接地構造を有する電磁波シールドシートを得ることができる。そして、本発明の電磁波シールドシートによれば、プラズマディスプレイパネルに特別な設計や工夫を施すことなく、プラズマディスプレイ装置のコストダウンを実現し、製造過程で傷が付きにくい、新構造の電磁波シールドシートを提供できる。
【0032】
本発明に係る第1の光学フィルタによれば、基材フィルムの他方の面のうち光学調整層が設けられていない基材フィルム面に、接地層と向かい合うように配置された導電層が設けられ、導電層と接地層とが部分的に接触しているので、外部のアース端子との直接の接続が可能となる接地構造を有する光学フィルタを得ることができる。そして、本発明に係る第1の光学フィルタによれば、プラズマディスプレイパネルに特別な設計や工夫を施すことなく、プラズマディスプレイ装置のコストダウンを実現し、製造過程で傷が付きにくい、新構造の光学フィルタを提供できる。
【0033】
本発明に係る第2の光学フィルタによれば、光学調整層の表面に、接地層と向かい合うように配置された導電層が設けられ、導電層と接地層とが部分的に接触しているので、外部のアース端子との直接の接続が可能となる接地構造を有する光学フィルタを得ることができる。そして、本発明に係る第2の光学フィルタによれば、プラズマディスプレイパネルに特別な設計や工夫を施すことなく、プラズマディスプレイ装置のコストダウンを実現し、製造過程で傷が付きにくい、新構造の光学フィルタを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
次に、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0035】
[電磁波シールドシート及びその製造方法]
(電磁波シールドシート)
図1は、本発明の電磁波シールドシートの一例を示す模式的な斜視図であり、図2は、図1におけるA−A’面の模式的な断面図であり、図3は、図2の一部を拡大して示す模式的な断面図である。
【0036】
本発明の電磁波シールドシート1aは、基材フィルム2aと、基材フィルム2aの一方の面13aに形成された、メッシュ状パターンからなる電磁波シールド層3a及び電磁波シールド層3aに電気的に接続された接地層4aと、を有し、基材フィルム2aの他方の面14aに、接地層4aと向かい合うように配置された導電層5aが設けられ、導電層5aと接地層4aとが部分的に接触している。なお、本発明において、「導電層と接地層とが部分的に接触している」とは、図2に示すような、断続的に導電層5aと接地層4aとが接触している場合のように、導電層の少なくとも一部が接地層と接触している接触形態をいう。このため、こうした接触形態としては、図2に示されるようなものに限られず、例えば、導電層の全面が接地層と接触するようなものを用いてもよい。
【0037】
電磁波シールドシート1aにおいては、基材フィルム2aの他方の面14aに、接地層4aと向かい合うように配置された導電層5aが設けられ、導電層5aと接地層4aとが部分的に接触しているので、基材フィルム2aの他方の面14aと接地層4aひいては電磁波シールド層3aとの電気的な接続が確保され、その結果、外部のアース端子との直接の接続が可能となる接地構造が形成される。
【0038】
電磁波シールドシート1aにおいては、導電層5aと接地層4aとの部分的な接触が超音波接合により行われている。導電層5aと接地層4aとの部分的な接触が超音波接合により行われているので、導電層5aと接地層4aとの安定な電気的接続が可能となり、その結果、安定した接地特性を有する電磁波シールドシート1aを得ることができる。なお、導電層と接地層との電気的な接続方法としては、超音波接合の他、例えば、回転押圧体の内部にある固定ヒータを用いた加熱による接合(例えば、特開2006−209393号公報を参照)、ヒータが内蔵された伝熱性のかしめ刃による接合(例えば、特開2006−107418号公報を参照)、及びレーザ光を用いた加熱による接合(例えば、特開2006−209395号公報を参照)等を用いることもできる。
【0039】
基材フィルム2aは、透明なフィルムであり、従来公知のものを用いることができる。具体的には、透明性の高い樹脂フィルムが用いられる。基材フィルム2aの透明性は、分光光度計等を利用して測定される可視光線透過率で80%以上であることが好ましい。樹脂フィルムの材料としては、透明性、耐熱性、コスト等の観点から、通常、ポリエチレンテレフタレートが用いられる。また、こうした樹脂フィルムは、1軸延伸又は2軸延伸した延伸シートが用いられ、より好ましくは2軸延伸した延伸シートが用いられる。基材フィルム2aの厚さは、機械的強度、反りや弛み、破断、及び帯状で供給して加工すること等を考慮して、通常12μm以上、通常1000μm以下とする。
【0040】
基材フィルム2aの表面には、電磁波シールド層3a及びこの電磁波シールド層3aに電気的に接続された接地層4aがそれぞれ設けられている。
【0041】
電磁波シールド層3aは、プラズマディスプレイパネルから漏洩する電磁波をシールドするために、基材フィルム2aの一方の面13aに設けられる。電磁波シールド層3aは、プラズマディスプレイパネルの視認性を低下させずに電磁波シールド機能を奏するために、互いに交差する細い導電性の線群で形成されるメッシュ状パターンからなる。
【0042】
電磁波シールド層3aは、図1には図示していないが、プラズマディスプレイパネルと対向するようにして、電磁波シールドシート1aとプラズマディスプレイパネルとが貼り合わせられる。これにより、電磁波シールド層3aとプラズマディスプレイパネルとが数十μmのオーダーで近接して配置されることになり、電磁波シールド機能がより効果的に発現するようになる。一方で、こうした電磁波シールド層3aとプラズマディスプレイパネルのガラスの表示面とが近接することにより、電磁波シールド層3aの外部のアース端子への接続方法が課題となるが、この点については、接地層4aと、超音波接合により電気的に接続された導電層5aとを用いることにより、外部のアース端子との直接の接続が可能となる接地構造が得られる。
【0043】
電磁波シールド層3aには、通常、電磁波シールド機能以外に、プラズマディスプレイパネルに入射する外光を吸収するという機能が付加される。このため、電磁波シールド層3aを構成するメッシュ状パターンの線群は、通常、電磁波をシールドするための金属材料で構成される金属層と、外光を吸収するための黒化層との少なくとも2層で構成される。そして、外光が入射する側に黒化層が設けられ、プラズマディスプレイパネルと対向する側に金属層が設けられるように構成される。より詳しくは、上記で説明したように、プラズマディスプレイパネルの表示面は電磁波シールド層3aに対向するように電磁波シールドシート1aに貼り合わせられる(図1では図示していない。)ので、電磁波シールド層3aは、基材フィルム2aの一方の面13aから、黒化層及び金属層の順番になるように形成される。こうした電磁波シールド層3aは、通常、黒化処理によって得られる黒化層と、銅等の金属層との2層を少なくとも有する薄膜を基材フィルム2aの全面に形成し、フォトリソグラフィー法等でメッシュ状パターンにパターニングして得る。
【0044】
電磁波シールド層3aは、通常、プラズマディスプレイパネルの表示面と同等またはそれより大きくなるように形成され、図1に示すように略長方形の形状を有する。
【0045】
接地層4aは、電磁波シールド層3aと外部のアース端子とを電気的に接続するために用いられるものである。このため、接地層4aは、メッシュ状パターンからなる電磁波シールド層3aと電気的に接続され、電磁波シールド層3aと同様に、基材フィルム2aの一方の面13a上に設けられている。より詳しくは、図1では、接地層4aは、電磁波シールド層3aを囲むようにして基材フィルム2a上に額縁状に設けられている。接地層4aと電磁波シールド層3aとの電気的な接続は、通常、電磁波シールド層3aのメッシュ状パターンを構成する線群と、接地層4aとを連続的に形成することによって行われる。例えば、上記のフォトリソグラフィー法でメッシュ状パターンからなる電磁波シールド層3aを形成する場合には、黒化処理によって得られる黒化層と、銅等の金属層との2層を少なくとも有する薄膜を基材フィルム2aの全面に形成する。その後フォトリソグラフィー法で、電磁波シールド層3aに該当する領域をメッシュ状パターンにパターニングすれば、パターニングが行われなかった電磁波シールド層3aの周囲の領域が接地層4aとなる。こうして得られる接地層4aの、材料、層構成、及び厚さ等は、電磁波シールド層3aと同様となる。なお、接地層は、必ずしも額縁状である必要はない。例えば、電磁波シールド層と同様にメッシュ状パターンに形成してもよい。
【0046】
導電層5aは、基材フィルム2aの他方の面14aと接地層4aとの間の電気的な接続を確保するために用いられるものである。より詳しくは、導電層5aは、基材フィルム2aの他方の面14aに設けられ、接地層4aと向かい合うように配置され、接地層4aと超音波接合される。導電層5aと接地層4aとを超音波接合して部分的に接触させることにより、基材フィルム2aの他方の面14aにおける外部のアース端子との直接の接続が可能となる。
【0047】
導電層5aは、図3に示すように、空隙部H1の底部で接地層4aと接触し溶融することにより、溶接面6aを形成する。溶接面6aは、図3では3カ所形成されているが、こうした断続的に形成される複数の溶接面6aにより、導電層5aと接地層4aとが部分的に接触することとなる。空隙部H1は、超音波接合の際に、超音波ヘッドに加えられる超音波振動及び温度によって、基材フィルム2aが軟化又は溶融されて、基材フィルム2aの材料が超音波ヘッドの周囲に押し出されることによって形成される。そして、空隙部H1内の基材フィルムの材料をほとんど押し出すと、最終的に導電層5aと接地層4aとが接触して、超音波ヘッドの熱と超音波振動により、導電層5a又は接地層4aのいずれか又は両方が溶融して溶接面6aが形成される。なお、図1〜3の光学シールドシート1aにおいては、超音波ヘッドを導電層5a側から押し込んで導電層5aに凹凸形状を形成し、溶接面6aで導電層5aと接地層4aとを接触させているが、本発明はこうした態様に限られるものではない。例えば、接地層の厚さにもよるが、超音波ヘッドを接地層の側から押し込んで接地層に凹凸形状を形成し、接地層と導電層との間で溶接面を形成してもよい。また、例えば、導電層及び接地層を挟むようにして2つの超音波ヘッドで押し込み、導電層及び接地層の両方に凹凸形状を形成し、導電層及び接地層が接触した部分で溶接面を形成してもよい。
【0048】
導電層5aでは、図1に示すように、溶接面6aが9カ所形成されているが、導電層一つあたりの溶接面は、通常1以上とする。上記範囲とすれば、超音波ヘッドをコンパクトに形成できるとともに、導電層と接地層との電気的接続を確保しやすくなる。
【0049】
導電層5aと接地層4aとが形成する溶接面6aの幅tは、図3に示すように、通常1.0mm以上、好ましくは2.5mm以上とする。上記範囲とすれば、導電層5aと電磁波シールド層3aとの間の電気抵抗を低減しやすくなる。基材フィルム2aとして、例えば100μm以上の比較的厚い厚さを有するフィルムを用いる場合には、導電層5aと接地層4aとの電気的接続を確実にするために、接合面6aの幅tを上記範囲に制御することが重要となる。
【0050】
導電層5aには、通常、金属材料が用いられる。導電層5aに用いる金属材料としては、例えば、銅、アルミ、金等を挙げることができる。これらのうち、電気抵抗、コスト等の点から、銅を用いることが好ましい。一方、上記で説明したように、接地層4aに金属層が用いられる場合には、導電層5a及び接地層4aに同一の金属材料を用いることが好ましい。同一の金属材料を用いることにより、溶接面6aにおける導電層5aと接地層4aとの接合が強固になり、その結果、導電層5aと接地層4aとの間の電気抵抗をより低減できる。
【0051】
導電層5aの厚さは、通常5μm以上、好ましくは10μm以上とする。上記範囲とすれば、超音波接合時に切断されることなく溶融されやすくなり、接地層4aとの間で強固な溶接面6aを形成しやすくなる。
【0052】
図4は、電磁波シールドシートの他の一例を示す模式的な斜視図であり、図5は、図4に示す電磁波シールドシートの裏面を示す模式的な斜視図である。
【0053】
電磁波シールドシート1bにおいては、基材フィルム2bの他方の面14bの面内に導電層5bが複数、より詳しくは、4カ所設けられている。そして、これら複数の導電層5bがそれぞれ接地層4bと超音波接合されている。図5に示すように、導電層5bが、接地層4bと向かい合うようにして、基材フィルム2bの他方の面14bにおける異なる位置に複数配置されることにより、基材フィルム2bの他方の面14bの面内に導電層5bが複数設けられることになる。
【0054】
電磁波シールドシート1bにおいては、導電層5bが複数設けられ、これら複数の導電層5bがそれぞれ接地層4bと超音波接合されているので、導電層5bと接地層4bとが電気的に接続される箇所が増加し、その結果、電磁波シールド層3bの接地を行いやすくなる。具体的には、電磁波シールドシート1bにおいては、一つの導電層5bあたりの溶接面6bの数が9個であるので、電磁波シールドシート1b全体でみると、36個の溶接面6bが存在することになる。このように、本発明においては、基材フィルムの他方の面の面内に導電層が複数設けられていることが好ましいが、電磁波シールドシートに設けられる導電層の数は、通常1以上、好ましくは4以上とする。この範囲とすれば、電磁波シールド層の接地が行いやすくなる。
【0055】
電磁波シールドシート1a,1bは、図1〜5に示されるように、1つの導電層ごとに、9つの溶接面からなる超音波溶接部が1つ形成されるというものである。しかしながら、本発明はこのような態様に限られるものではない。例えば、導電層を接地層と同じ大きさにする等、導電層を大きく設け、一つの導電層に上記の超音波溶接部を複数設けるということをしてもよい。
【0056】
(電磁波シールドシートの製造方法)
本発明の電磁波シールドシートは、通常、一方の面に電磁波シールド層及び接地層が設けられた基材フィルムを準備した後、基材フィルムの他方の面に、導電層を接地層と向き合う位置に設置し、導電層と接地層とを超音波接合することによって製造される。
【0057】
一方の面に電磁波シールド層及び接地層が形成された基材フィルムの製造は、例えば、上記で一部説明したとおり、基材フィルム上にスパッタリングや印刷等により、黒化層と金属層とを少なくとも形成し、これをフォトリソグラフィー法でパターニングして基材フィルム上に電磁波シールド層及び接地層を形成することによって行われる。こうした製造方法は、従来公知の方法をそのまま用いることができるので、ここでは詳細な説明は省略する。
【0058】
次に、電磁波シールド層及び接地層が形成された基材フィルムの他方の面に、導電層を接地層と向き合うような位置に設置し、超音波接合を行う。導電層の設置及び超音波接合は、連続的に行ってもよいし、間欠的に行っても良い。連続的に行う場合は、通常、長尺の基材フィルム表面に一組の電磁波シールド層及び接地層が連続的かつ断続的に複数設けられてロール状に巻き取られたものを準備し、長尺の基材フィルムをロールから引き出しながら、一組の電磁波シールド層及び接地層ごとに導電層の設置及び超音波接合を行う。一方、導電層の設置及び超音波接合を間欠的に行う場合は、通常、上記のロール状に形成された長尺の基材フィルムから、一組の電磁波シールド層及び接地層毎に基材フィルムを切り出し、これら1枚1枚の基材フィルム毎に、導電層の設置及び超音波接合を行う。
【0059】
図6は、導電層の設置及び超音波接合を行う際の各工程を示す模式的な断面図である。より詳しくは、図6(a)には導電層を設置する工程が、図6(b),(c),(d)には超音波接合を行う工程が示されている。以下、各工程について説明する。
【0060】
導電層5cを設置する工程においては、図6(a)に示すように、接着層8を介して、導電層5cが基材フィルム2cの他方の面14cに貼り付けられる。このとき、導電層5cは、基材フィルム2cを挟んで接地層4cと向かい合うような位置に設置する。なお、図6(a)においては、導電層5cの片面に接着層8を設けることにより、基材フィルム2c上での導電層5cの設置・固定が行われるが、本発明はこのような態様に限られるものではない。例えば、接着層を用いることなく、導電層を基材フィルム上に単に裁置するだけでもよい。また、例えば、スクリーン印刷、パターン印刷等の印刷法、スパッタリングや蒸着等の物理的気相成長法(Physical vapor deposition:PVD)を用いて基材フィルム上に導電層の形成を行ってもよい。
【0061】
次に、超音波接合を行う工程においては、まず、図6(b)に示すように、所定の温度に加熱された超音波ヘッド9が超音波振動しながら導電層5cから接地層4cへの方向(下向き方向)に移動する。そして、超音波ヘッド9を基材フィルム2c側に押し込みながら、超音波ヘッド9に加えられる超音波振動及び温度によって、基材フィルム2aの材料が軟化又は溶融されて、超音波ヘッド9の周囲に押し出される。そして、図6(c)に示すように、導電層5cが接地層4cに接し、接触面が超音波接合されて溶接面6cが形成される。その後、図6(d)に示すように、超音波ヘッド9を接地層4cから導電層5cへの方向(上向き方向)に移動させて、超音波接合によって形成された溶接面6cから、離脱させる。以上を経て、電磁波シールドシート1cが製造される。
【0062】
基材フィルム2cは、一般的には比較的厚いフィルムが用いられ、この厚いフィルムを介して導電層5cと接地層4cとが超音波接合される。このため、導電層5cと接着層4cとの電気的な接続を確保するため、超音波接合に用いる超音波ヘッド9の加熱温度、振幅、荷重、及び押し込み量の制御が重要となる。
【0063】
超音波ヘッド9の加熱温度は、基材フィルム2cに樹脂を用いる場合には、この樹脂の軟化温度よりも高い温度に設定することが好ましい。より具体的には、超音波ヘッド9の加熱温度は、通常50℃以上、好ましくは80℃以上とする。加熱温度を上記範囲とすれば、軟化・溶融による基材フィルム2cの除去が行われやすくなる。
【0064】
超音波ヘッド9の振幅は、通常8.5μm以上、好ましくは10μm以上とする。超音波ヘッド9の振幅を上記範囲とすれば、軟化・溶融した基材フィルム2cをより効率的に除去することが可能となる。
【0065】
超音波接合の際に、超音波ヘッド9にかける荷重は、通常50N以上、好ましくは200N以上とする。超音波ヘッド9にかける荷重を上記範囲とすれば、軟化・溶融した基材フィルム2cをより効率的に除去することが可能となる。
【0066】
超音波ヘッド9の押し込み量は、基材フィルム2cの厚さにも依存するが、通常50μm以上、好ましくは75μm以上とする。超音波ヘッド9の押し込み量を上記範囲とすれば、接地層4cを傷つけにくく、効率的な超音波接合が行われやすくなる。
【0067】
以上説明した超音波接合の工程は、工業的には、例えば、特開2006−79258号公報に記載された超音波接合の方法、装置を適宜応用して行うこともできる。
【0068】
[光学フィルタ及びその製造方法]
(光学フィルタ)
図7は、本発明の光学フィルタの一例を示す模式的な斜視図であり、図8は、図7におけるB−B’面の模式的な断面図である。
【0069】
本発明に係る第1の光学フィルタ10aは、基材フィルム2dと、基材フィルム2dの一方の面13dに形成された、メッシュ状パターンからなる電磁波シールド層3d及び電磁波シールド層3dに電気的に接続された接地層4dと、基材フィルム2dの他方の面14dに設けられた光学調整層7aと、を有し、基材フィルム2dの他方の面14dのうち光学調整層7aが設けられていない基材フィルム面に、接地層4dと向かい合うように配置された導電層5dが設けられ、導電層5dと接地層4dとが部分的に接触している。
【0070】
光学フィルタ10aにおいては、基材フィルム2dの他方の面14dのうち光学調整層7aが設けられていない基材フィルム面に、接地層4dと向かい合うように配置された導電層5dが設けられ、導電層5dと接地層4dとが部分的に接触しているので、基材フィルム2dの他方の面14dと接地層4dひいては電磁波シールド層3dとの電気的な接続が確保され、その結果、外部のアース端子との直接の接続が可能となる接地構造が形成される。
【0071】
光学フィルタ10aにおいては、導電層5dと接地層4dとの部分的な接触が超音波接合により行われている。導電層5dと接地層4dとの部分的な接触が超音波接合により行われているので、導電層5dと接地層4dとの安定な電気的接続が可能となり、その結果、安定した接地特性を有する光学フィルタ10aを得ることができる。なお、導電層と接地層との電気的な接続方法としては、超音波接合の他、様々な方法を用いることが可能であることは、電磁波シールドシートにおいてすでに説明したとおりである。
【0072】
光学フィルタ10aは、光学調整層7aを間欠的に基材フィルム2dに貼り合わせて製造される形態のものである。より具体的には、光学フィルタ10aは、長尺の基材フィルム表面に一組の電磁波シールド層及び接地層が連続的かつ断続的に複数設けられてロール状に巻き取られたものを準備し、このロール状に形成された長尺の基材フィルムから、一組の電磁波シールド層3d及び接地層4d毎に基材フィルム2dを切り出し、こうして得られた基材フィルム2d毎に、電磁波シールド層3dと同程度の大きさの光学調整層7aを、基材フィルム2dの他方の面14dに、電磁波シールド層3dが形成された領域をカバーするように貼り合わせて得られるものである。
【0073】
光学フィルタ10aは、電磁波シールド層3dとほぼ同等の大きさの光学調整層7aが基材フィルム2dの他方の面14dに貼り付けられていること以外は、基本的には、図1〜3で説明した電磁波シールドシート1aと同様とすればよい。したがって、光学フィルタ10aにおける好ましい態様や変形例も、基本的に電磁波シールドシート1aと同様とすればよい。以下、光学フィルタ10aの好ましい態様について代表的なものをいくつか説明する。
【0074】
光学フィルタ10aにおいて、導電層5dとして金属を用い、接地層4dに金属層が用いられる場合には、導電層5d及び接地層4dに同一の金属材料を用いることが好ましい。同一の金属材料を用いることにより、溶接面(以下、光学フィルタ10aの溶接面を「第一溶接面」という。)11aにおける導電層5dと接地層4dとの接合が強固になり、その結果、導電層5dと接地層4dとの間の電気抵抗をより低減できる。
【0075】
光学フィルタ10aは、上記で説明したように、電磁波シールド層3dとほぼ同等の大きさの光学調整層7aが基材フィルム2dの他方の面14dに貼り付けられている点で電磁波シールドシート1aと異なる。そこで、以下では、電磁波シールドシート1aとの相違点である光学調整層7aについて説明を行う。
【0076】
光学調整層7aとしては、従来公知のものをそのまま用いればよい。例えば近赤外線吸収層、ネオン光吸収層、紫外線吸収層、反射防止層、ハードコート層、防汚層、及び防眩層等を挙げることができる。これら層を複数用いる場合における層を積層する順番は、用いる用途に応じて適宜調整すればよい。また、それぞれの層の厚さはそれぞれの光学調整層7a毎に適当な厚さが設定される。
【0077】
近赤外線吸収層は、通常、プラズマディスプレイパネルから放射される近赤外線を吸収するために設けることができる。近赤外線吸収層を設けることにより、プラズマディスプレイ装置の近くで使用されるリモートコントロール装置の誤作動等を防止することができる。近赤外線吸収層は、例えば、ジインモニウム系化合物、フタロシアニン系化合物等の近赤外線吸収剤をバインダ樹脂中に添加した塗料を、基材フィルム2dの他方の面14d上に塗工する、又は透明基材上にかかる近赤外線吸収塗料を塗工したものを基材フィルム2dの他方の面14d上に接着剤で接着することにより設けることができる。
【0078】
ネオン光吸収層は、通常、プラズマディスプレイパネルから放射されるネオン光を吸収するために設けることができる。ネオン原子の発光スペクトル帯域は波長550〜640nmであるので、ネオン光吸収層は、通常、少なくとも550〜640nmの波長領域内に吸収極大を有する色素をバインダ樹脂に分散させた層とすることが好ましく、中心波長590nmにおける光線透過率が50%以下になるように含有量等を調整することがより好ましい。
【0079】
紫外線吸収層は、外光としてプラズマディスプレイパネルに入射する紫外線を吸収して、プラズマディスプレイパネルを構成する材料の紫外線劣化を防ぐために設けることができる。また、上記のような有機系の近赤外線吸収剤を含有する近赤外線吸収層を設ける場合には、この近赤外線吸収剤は紫外線により劣化しやすいため、紫外線吸収層を近赤外線吸収層より外側に積層することが好ましい。紫外線吸収層は、通常、紫外線吸収剤をバインダ樹脂に分散させた層を基材フィルム2dの他方の面14d上に設ける、又は紫外線吸収層を有するシートを基材フィルム2dの他方の面14d上に貼り合わせて設けることができる。
【0080】
反射防止層(AR(Anti Reflection)層)は、通常、光干渉で反射光を抑制するために設けることができる。反射防止層としては、通常、低屈折率層が最表面に位置する様にして低屈性率層と高屈折率層とを交互に積層した多層構成からなるものが好ましく用いられる。
【0081】
ハードコート層(HC(Hard Coat)層)は、通常、光学調整層7aの表面を保護するために設けることができる。ハードコート層は、通常、電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等で形成される。
【0082】
防眩層(AG(Anti Glare)層)は、光拡散によって外光の鏡面反射を低減し、ギラツキを防止するために設けることができる。防眩層は、通常、透明樹脂バインダ中にこれと屈折率の異なるシリカ等の無機フィラーを分散させた層として、又は透明樹脂層表面にエンボス加工等で光拡散性の微小な凹凸を賦形したものとして形成することができる。
【0083】
防汚層は、通常、基材フィルム2dに付着する汚れを防止するために設けることができる。防汚層は、撥水性や撥油性を有する層であり、通常、シロキサン系化合物や、フッ素化アルキルシリル化合物等が用いられる。
【0084】
光学調整層7aは、求められる性能に応じて、以上説明した各層を適宜選択して用いればよい。
【0085】
図9は、本発明の光学フィルタの他の一例を示す模式的な斜視図であり、図10は、図9におけるC−C’面の模式的な断面図である。
【0086】
本発明に係る第2の光学フィルタ10bは、基材フィルム2eと、基材フィルム2eの一方の面13eに形成された、メッシュ状パターンからなる電磁波シールド層3e及び電磁波シールド層3eに電気的に接続された接地層4eと、基材フィルム2eの他方の面14eに設けられた光学調整層7bとを有し、光学調整層7bの表面16に、接地層4eと向かい合うように配置された導電層5eが設けられ、導電層5eと接地層4eとが部分的に接触している。なお、光学調整層7bの表面16とは、光学調製層7bと基材フィルム2eとが接している面とは反対側の面をいう。
【0087】
光学フィルタ10bにおいては、光学調整層7bの表面16に、接地層4eと向かい合うように配置された導電層5eが設けられ、導電層5eと接地層4eとが部分的に接触しているので、光学調整層7bの表面16と接地層4eひいては電磁波シールド層3eとの電気的な接続が確保され、その結果、外部のアース端子との直接の接続が可能となる接地構造が形成される。
【0088】
光学フィルタ10bにおいては、導電層5eと接地層4eとの部分的な接触が超音波接合により行われている。導電層5eと接地層4eとの部分的な接触が超音波接合により行われているので、導電層5eと接地層4eとの安定な電気的接続が可能となり、その結果、安定した接地特性を有する光学フィルタ10bを得ることができる。なお、導電層と接地層との電気的な接続方法としては、超音波接合の他、様々な方法を用いることが可能であることは、電磁波シールドシートにおいてすでに説明したとおりである。
【0089】
光学フィルタ10bは、光学調整層7bを連続的に基材フィルム2eに貼り合わせて製造される形態のものである。具体的には、長尺の基材フィルム表面に一組の電磁波シールド層及び接地層が連続的かつ断続的に複数設けられてロール状に巻き取られたものを準備し、また、長尺の光学調整層がロール状に形成されたものを準備する。ここで、光学調整層の幅は、基材フィルムの幅よりも小さく、電磁波シールド層の短辺の長さと略同一となっている。そして、これら二つのロールから基材フィルムと光学調整層を引き出し、電磁波シールド層と光学調整層とを重ねるようにして、基材フィルムの他方の面に光学調整層を貼り合わせた後、光学フィルタ10bを1枚ずつ切り出す。
【0090】
光学フィルタ10bは、図9に示すように、光学調整層7bの長辺が基材フィルム2eの長辺の長さと同一になっているために、導電層5eが光学調整層7bの表面16に設けられていること、超音波接合により光学調整層7b及び基材フィルム2eの材料が軟化・溶融により超音波ヘッドの周囲に押し出される結果、導電層5eと接地層4eとが接触して溶接面(以下、光学フィルタ10bにおける溶接面を「第2溶接面」という。)12aが形成されること、以外は、図7,8で説明した光学フィルタ10aひいては図1〜3で説明した電磁波シールドシート1aと同様とすればよい。したがって、光学フィルタ10bにおける好ましい態様や変形例も、基本的に光学フィルタ10aひいては図1〜3で説明した電磁波シールドシート1aと同様とすればよい。以下、光学フィルタ10bの好ましい態様について代表的なものをいくつか説明する。
【0091】
光学フィルタ10bにおいて、導電層5eとして金属を用い、接地層4eに金属層が用いられる場合には、導電層5e及び接地層4eに同一の金属材料を用いることが好ましい。同一の金属材料を用いることにより、第2溶接面12aにおける導電層5eと接地層4eとの接合が強固になり、その結果、導電層5eと接地層4eとの間の電気抵抗をより低減できる。
【0092】
光学フィルタ10bは、上記で説明したように、導電層5eが光学調整層7bの表面16に設けられている点、超音波接合により光学調整層7b及び基材フィルム2eの材料が軟化・溶融により超音波ヘッドの周囲に押し出される結果、導電層5eと接地層4eとが接触して第2溶接面12aが形成される点、の2点において光学フィルタ10aと異なる。そこで、以下では、光学フィルタ10aとの上記2点の相違点について説明する。
【0093】
光学フィルタ10bにおいては、光学調整層7bの表面16と、接地層4eひいては電磁波シールド層3eとの間での電気的な接続を確保するために、導電層5eが光学調整層7bの表面16に設けられている。より詳しくは、図10に示すように、導電層5eは、光学調整層7bの表面16において、接地層4eと向かい合うように配置されている。また、超音波接合により光学調整層7b及び基材フィルム2eの材料が軟化・溶融により超音波ヘッドの周囲に押し出される結果、導電層5eと接地層4eとが接触して第2溶接面12aが形成される。より詳しくは、図10に示すように、超音波接合により光学調整層7b及び基材フィルム2eの材料が超音波ヘッドの周囲に押し出されて形成される空隙部H2の底部において、導電層5eと接地層4eとが接触して溶融することにより第2溶接面12aが形成される。図7,8に示す光学フィルム10aと比較して、超音波接合により除去すべき層の厚みが厚くなる分、第2溶接面12aでの電気的接続を確保するための超音波接合の条件の制御が重要となる。
【0094】
図11は、本発明の光学フィルタのさらに他の一例を示す模式的な斜視図である。光学フィルタ10cでは、導電層(図11には図示していない。)が、基材フィルム2fの他方の面のうち光学調整層が設けられていない基材フィルム面(以下、「基材フィルム2fの他方の面のうち光学調整層が設けられていない基材フィルム面」を、「基材フィルム面」ということがある。)の面内に複数設けられている。同様に、導電層が、光学調整層7cの表面の面内に複数設けられている。そして、これら複数の導電層がそれぞれ接地層4fと超音波接合により部分的に接触している。より詳しくは、図11には図示されていないが、導電層が8カ所設けられている。そして、4カ所が基材フィルム面の面内に設けられ、4カ所が光学調整層7cの表面の面内に設けられている。そしていずれの導電層も、接地層4fと向かい合うように配置されている。こうして導電層が基材フィルム面の面内及び光学調整層7cの表面の面内に複数設けられており、これら複数の導電層がそれぞれ接地層4fと超音波接合されているので、導電層と接地層4fとが電気的に接続される箇所が増加し、その結果、電磁波シールド層3fの接地を行いやすくなる。具体的には、基材フィルム面の異なる位置に設けられた4カ所の導電層により第1溶接面11bが36個形成され、光学調整層7bの表面の異なる位置に設けられた4カ所の導電層により第2溶接面12bが36個形成されている。このように、本発明においては、導電層が基材フィルム面の面内に複数設けられていること、すなわち、導電層が基材フィルム面上の異なる位置に複数設けられることが好ましく、また、導電層が光学調整層の表面の面内に複数設けられていること、すなわち、導電層が光学調整層の表面上の異なる位置に複数設けられることが好ましい。光学フィルタに設けられる上記の導電層の数は、通常1以上、好ましくは4以上とする。この範囲とすれば、電磁波シールド層の接地が行いやすくなる。
【0095】
(光学フィルタの製造方法)
本発明の光学フィルタは、通常、一方の面に電磁波シールド層及び接地層が設けられ、他方の面には光学調整層が設けられた基材フィルムを準備した後、基材フィルムの他方の面又は光学調整層の表面に、導電層を接地層と向き合う位置に設置し、導電層と接地層とを超音波接合することによって製造される。
【0096】
光学フィルムは、電磁波シールドシートにおける基材フィルムの他方の面に光学調整層を貼り付けることによって製造される。光学フィルムの製造方法は、従来公知の方法をそのまま用いることができるので、ここでは詳細な説明は省略する。また、光学フィルムにおける導電層の設置及び超音波接合を行う工程についても、電磁波シールドシートで説明した製造方法をそのまま用いるか、適宜応用すればよいので、ここでの説明は省略する。
【0097】
[プラズマディスプレイ装置への適用]
図12は、本発明の光学フィルタを適用したプラズマディスプレイ装置の模式的断面図である。より詳しくは、7,8図に示す光学フィルタ10aをプラズマディスプレイ装置に適用したものである。
【0098】
プラズマディスプレイ装置100は、プラズマディスプレイパネル80と、光学フィルタ10aの電磁波シールド層3dとが、粘着層70を挟んで向かい合うように設置されている。そして、基材フィルム2dの他方の面14dに存在する導電層5dと、外部アース端子90とを電気的に接続することにより、電磁波シールド層3dが接地されている。この構成では、電磁波シールド層3dとプラズマディスプレイパネル80とが数十μmのオーダーに近接して設置されることになるので、電磁波シールドの機能が向上する。一方、電磁波シールド層3dとプラズマディスプレイパネル80とが近接して位置する分、光学フィルタ10aとプラズマディスプレイパネル80との間に存在する粘着層70が形成する空間に外部アース端子を挿入することは現実的でない。無理に外部アース端子を設置すると、外部アース端子がプラズマディスプレイパネル80の表面に接触して傷を付ける可能性もある。そこで、導電層5dを設けて、導電層5dと接地層4dとを超音波接合して、基材フィルム2dの他方の面14dから外部アース端子90に接地を行う、本発明の光学フィルタ10aにおいて採用する接地構造の有効性が発揮されることになる。
【0099】
プラズマディスプレイ装置100では、図7,8の光学フィルタ10aについてのみ説明したが、上記において紹介したその他の電磁波シールドシート1a,1b,1cや、光学フィルタ10b,10cにおいても同様の効果が奏される。
【実施例】
【0100】
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0101】
[実施例1]
接地層を表面に有する基材フィルムを用意した。ここで、接地層は35μmの銅箔とし、基材フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ100μm)を用いた。次いで、基材フィルムの他方の面に、接地層と向かい合うようにして導電層(銅箔、厚さ100μm)を載置した後、この導電層上に超音波ヘッドを押圧し、導電層と接地層との超音波接合を行った。こうして、導電層と接地層とを部分的に接触させた。また、超音波接合の条件は、加重を400N、振幅を19.6μm、超音波ヘッドの押し込み量を135μmとした。
【0102】
こうして得た電磁波シールドシートの断面を、超深度形状測定顕微鏡VK−8500((株)キーエンス製)のCCDカメラを用いた撮影したところ、超音波接合によりポリエチレンテレフタレートフィルムの除去が良好に行われ、導電層として用いた銅箔と、接地層として用いた銅箔とが接合されていることを確認した。また、電磁波シールドシートにつき、接地層と導電層との間の抵抗値を測定したところ3.5Ωであった。この結果より、厚さ100μmという厚いポリエチレンテレフタレートフィルムにおいても、接地層と導電層とが電気的に接続されており、実使用上の接地特性が確保できることがわかった。
【0103】
[実施例2]
図1に示す電磁波シールドシート1aと同様の構造を有する電磁波シールドシートを準備した。より詳しくは、電磁波シールド層及びこの電磁波シールド層に電気的に接続された接地層を一方の面に有する基材フィルムを、フォトリソグラフィー法を用いて製造した。ここで、基材フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ75μm)を用いた。次いで、基材フィルムの他方の面に、接地層と向かい合うようにして導電層(銅箔、厚さ40μm)を載置した後、この銅箔上に超音波ヘッドを押圧し、導電層と接地層との超音波接合を行った。こうして、導電層と接地層とを部分的に接触させた。また、超音波接合の条件は、加重を400N、振幅を18μm、超音波ヘッドの押し込み量を150μmとした。
【0104】
こうして得られた電磁波シールドシートにつき、接地層と導電層との間の抵抗値を測定したところ6.3Ωであった。この結果より、接地層と導電層とが電気的に接続されており、実使用上の接地特性が確保できることがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明の電磁波シールドシートの一例を示す模式的な斜視図である。
【図2】図1におけるA−A’面の模式的な断面図である。
【図3】図2の一部を拡大して示す模式的な断面図である。
【図4】電磁波シールドシートの他の一例を示す模式的な斜視図である。
【図5】図4に示す電磁波シールドシートの裏面を示す模式的な斜視図である。
【図6】導電層の設置及び超音波接合を行う工程を示す模式的な断面図である。
【図7】本発明の光学フィルタの一例を示す模式的な斜視図である。
【図8】図7におけるB−B’面の模式的な断面図である。
【図9】本発明の光学フィルタの他の一例を示す模式的な斜視図である。
【図10】図9におけるC−C’面の模式的な断面図である。
【図11】本発明の光学フィルタのさらに他の一例を示す模式的な斜視図である。
【図12】本発明の光学フィルタを適用したプラズマディスプレイ装置の模式的断面図である。
【符号の説明】
【0106】
1a,1b,1c 電磁波シールドシート
2a,2b,2c,2d,2e,2f 基材フィルム
3a,3b,3c,3d,3e,3f 電磁波シールド層
4a,4b,4c,4d,4e,4f 接地層
5a,5b,5c,5d,5e 導電層
6a,6b,6c 溶接面
7a,7b,7c 光学調整層
8 接着層
9 超音波ヘッド
10a,10b,10c 光学フィルタ
11a,11b 第1溶接面
12a,12b 第2溶接面
13a,13d,13e 基材フィルムの一方の面
14a,14b,14c,14d,14e,14d 基材フィルムの他方の面
16 光学調整層の表面
70 粘着層
80 プラズマディスプレイパネル
90 外部アース端子
100 プラズマディスプレイ装置
H1,H2 空隙部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に形成された、メッシュ状パターンからなる電磁波シールド層及び該電磁波シールド層に電気的に接続された接地層と、を有する電磁波シールドシートにおいて、
前記基材フィルムの他方の面に、前記接地層と向かい合うように配置された導電層が設けられ、該導電層と前記接地層とが部分的に接触していることを特徴とする電磁波シールドシート。
【請求項2】
前記導電層が前記他方の面の面内に複数設けられている、請求項1に記載の電磁波シールドシート。
【請求項3】
前記導電層と前記接地層との部分的な接触が超音波接合により行われている、請求項1又は2に記載の電磁波シールドシート。
【請求項4】
前記導電層及び前記接地層に同一の金属材料を用いる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電磁波シールドシート。
【請求項5】
基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に形成された、メッシュ状パターンからなる電磁波シールド層及び該電磁波シールド層に電気的に接続された接地層と、前記基材フィルムの他方の面に設けられた光学調整層と、を有する光学フィルタにおいて、
前記基材フィルムの他方の面のうち前記光学調整層が設けられていない基材フィルム面に、前記接地層と向かい合うように配置された導電層が設けられ、該導電層と前記接地層とが部分的に接触していることを特徴とする光学フィルタ。
【請求項6】
前記導電層が前記基材フィルム面の面内に複数設けられている、請求項5に記載の光学フィルタ。
【請求項7】
基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に形成された、メッシュ状パターンからなる電磁波シールド層及び該電磁波シールド層に電気的に接続された接地層と、前記基材フィルムの他方の面に設けられた光学調整層と、を有する光学フィルタにおいて、
前記光学調整層の表面に、前記接地層と向かい合うように配置された導電層が設けられ、該導電層と前記接地層とが部分的に接触していることを特徴とする光学フィルタ。
【請求項8】
前記導電層が前記光学調整層の表面の面内に複数設けられている、請求項7に記載の光学フィルタ。
【請求項9】
前記導電層と前記接地層との部分的な接触が超音波接合により行われている、請求項5〜8のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項10】
前記導電層及び前記接地層に同一の金属材料を用いる、請求項5〜9のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項1】
基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に形成された、メッシュ状パターンからなる電磁波シールド層及び該電磁波シールド層に電気的に接続された接地層と、を有する電磁波シールドシートにおいて、
前記基材フィルムの他方の面に、前記接地層と向かい合うように配置された導電層が設けられ、該導電層と前記接地層とが部分的に接触していることを特徴とする電磁波シールドシート。
【請求項2】
前記導電層が前記他方の面の面内に複数設けられている、請求項1に記載の電磁波シールドシート。
【請求項3】
前記導電層と前記接地層との部分的な接触が超音波接合により行われている、請求項1又は2に記載の電磁波シールドシート。
【請求項4】
前記導電層及び前記接地層に同一の金属材料を用いる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電磁波シールドシート。
【請求項5】
基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に形成された、メッシュ状パターンからなる電磁波シールド層及び該電磁波シールド層に電気的に接続された接地層と、前記基材フィルムの他方の面に設けられた光学調整層と、を有する光学フィルタにおいて、
前記基材フィルムの他方の面のうち前記光学調整層が設けられていない基材フィルム面に、前記接地層と向かい合うように配置された導電層が設けられ、該導電層と前記接地層とが部分的に接触していることを特徴とする光学フィルタ。
【請求項6】
前記導電層が前記基材フィルム面の面内に複数設けられている、請求項5に記載の光学フィルタ。
【請求項7】
基材フィルムと、該基材フィルムの一方の面に形成された、メッシュ状パターンからなる電磁波シールド層及び該電磁波シールド層に電気的に接続された接地層と、前記基材フィルムの他方の面に設けられた光学調整層と、を有する光学フィルタにおいて、
前記光学調整層の表面に、前記接地層と向かい合うように配置された導電層が設けられ、該導電層と前記接地層とが部分的に接触していることを特徴とする光学フィルタ。
【請求項8】
前記導電層が前記光学調整層の表面の面内に複数設けられている、請求項7に記載の光学フィルタ。
【請求項9】
前記導電層と前記接地層との部分的な接触が超音波接合により行われている、請求項5〜8のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【請求項10】
前記導電層及び前記接地層に同一の金属材料を用いる、請求項5〜9のいずれか1項に記載の光学フィルタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−300549(P2008−300549A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143793(P2007−143793)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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