説明

電磁波シールド材およびそれを装着してなるプラズマディスプレイパネル

【課題】一枚のフィルムで反射防止機能、電磁波シールド機能を有し、アースを容易に取ることができる電磁波シールド材を提供することを主要な目的とする
【解決手段】プラズマディスプレイパネル2の前面に配置され、該プラズマディスプレイパネル2から放射される電磁波をシールドする電磁波シールド材1に係り、PET基材層4と、PET基材層4の一方の面上に設けられた、導電性ペーストインキのにじみを防止するためのインキ受容層6と、インキ受容層6の上に格子状に設けられた、電磁波シールドメッシュ層7と、電磁波シールドメッシュ層7を覆うように、インキ受容層6の上に設けられた機能層8とを備える。機能層8には、これを貫通して、電磁波シールドメッシュ層7の一部を露出させる、アースを取るための貫通孔9が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に電磁波シールド材に関するものであり、より特定的には、ロール状に巻き取ることができる一体化され、かつアースを容易に取ることができるように改良された電磁波シールド材に関する。この発明はまたそのような電磁波シールド材を装着してなるプラズマディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来のプラズマディスプレイパネルの概念図である。図5は、図4におけるV−V線に沿う断面図である。
【0003】
これらの図を参照して、プラズマディスプレイパネル21の表示部22の前面側に、フィルタ23が配置されている。フィルタ23は、ガラス基材層24と、反射防止フィルム25と、メッシュフィルム26と保護膜27とを含む。反射防止フィルム25は、PETフィルムに反射防止膜5aがコーティングされてなる。メッシュフィルム26は、PETフィルムに導電性メッシュ6aが形成されてなる。保護膜27はPETフィルムで形成されている。ガラス基材層24と反射防止フィルム25とメッシュフィルム26と保護膜27は、それぞれ粘着層8a、8b、8cで貼り合わされる。
【0004】
図6を参照して、導電性メッシュ6aは、例えば銀ペーストを用いてスクリーン印刷により、格子状に形成される。格子を取り囲むように、導電性ガスケット29に接続される接続用パッド6bもスクリーン印刷により、導電性メッシュ6aと同時に形成される。
【0005】
フィルタ23は、図4に示すように、導電性ガスケット29と接続用パッド6bが接触するように、プラズマディスプレイパネル21の前面に押圧して固定される。
【0006】
プラズマディスプレイパネル21から出た、有害な電磁波は、導電性メッシュ6aに捕らえられ、接続用パッド6b、導電性ガスケット29、筐体を通過してアースに接続され逃がされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特願2010−136340号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の方法では、以上のように、粘着/フィルム層数が多いため、部品点数が多く、作業が煩雑であり、またコスト高となっていた。また、ガラス基材で光学フィルターを形成しているため、割れ易く、ロールツーロール(roll to roll)の流れ作業ができず、作業効率を低下させていた。
【0009】
本発明の目的は、ロールツーロールを実現でき、ロール状に巻き取ることができる、一体化され、かつアースを容易に取ることができるように改良された電磁波シールド材を提供することにある。
【0010】
この発明の他の目的は、そのような電磁波シールド材を装着してなるプラズマディスプレイパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、プラズマディスプレイパネルの前面に配置され、該プラズマディスプレイパネルから放射される電磁波をシールドする電磁波シールド材に係る。電磁波シールド材は、PET基材層と、上記PET基材層の一方の面上に設けられた、導電性ペーストインキのにじみを防止するためのインキ受容層と、上記インキ受容層の上に格子状に設けられた、電磁波シールドメッシュ層と、上記電磁波シールドメッシュ層を覆うように、上記インキ受容層の上に設けられた機能層とを備える。上記機能層には、これを貫通して、上記電磁波シールドメッシュ層の一部を露出させる、アースを取るための貫通孔が設けられている。
【0012】
この貫通孔に導電性ペーストを充填することにより、アース引き出し線が形成され、アースを容易に取ることができる。上記基材層がポリエチレンテレフタレートで形成されるので、膜厚を調節することにより、ロール状に巻き取ることができる。
【0013】
上記貫通孔は、縦又は横に並んで複数個設けられるのが好ましい。
【0014】
上記貫通孔は、レーザで穿孔(せんこう)されるのが好ましい。
機能層は、重合性バインダー塗布液を硬化させて形成したものであり、ハードコート機能を有するハードコート機能層、反射防止機能を有する反射防止機能層、防眩性機能を有する防眩性機能層、帯電防止機能を有する帯電防止機能層、などである。また、機能層は、上記機能のうち複数の機能を有する単一層または、複数層である。
【0015】
重合性バインダー塗布液とは、紫外線硬化性樹脂、光重合性開始剤等を含有する。公知の重合性バインダー塗布液を塗布し、紫外線の照射又は加熱によって硬化することによりハードコート層が得られる。この重合性バインダー塗布液には上記樹脂以外に本発明の効果を損なわない範囲において、その他の成分を含んでいても差し支えない。その他の成分は特に制限されるものではなく、例えば、ハードコート層に防眩性機能を発現させるために重合性バインダー塗布液に透光性有機微粒子を加えてもよい。また、ハードコート層に帯電防止機能を発現させるために、ITO(インジウム−錫複合酸化物)微粒子、ATO(アンチモン−錫複合酸化物)微粒子、アンチモン酸亜鉛微粒子等の導電性微粒子を加えてもよい。
【0016】
さらには、反射防止機能を発現させるために、上記ハードコート層の上に、反射防止層を設けることができる。
【0017】
反射防止層は、機能層8の塗工面の上に、高屈折率層/低屈折率層を、または低屈折率層を、塗布、硬化させることによって形成される。
【0018】
上記高屈折率層は、無機材料や、紫外線硬化型樹脂などを含む高屈折率層塗液を硬化させることによって形成される。
【0019】
上記無機材料は、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等を用いることができる。
【0020】
上記高屈折率層の屈折率は、高屈折率層の直上に形成される低屈折率層よりも屈折率を高くする必要があり、その屈折率は好ましくは1.55〜1.90の範囲内である。
【0021】
上記高屈折率層の光学膜厚(nd)は、好ましくは100nm〜250nmである。
【0022】
上記低屈折率層は、シリカ微粒子、バインダー成分などを含む低屈折率層形成用塗液を硬化させることによって形成される。
【0023】
上記シリカ微粒子は、シリカゾル、多孔質シリカ微粒子、中空シリカ微粒子等を用いることができる。上記バインダー成分は、含フッ素有機化合物の単体又は混合物や、フッ素を含まない有機化合物の単体若しくは混合物又は重合体等を用いることができる。
【0024】
上記低屈折率層の屈折率は、好ましくは1.20〜1.45の範囲内である。上記低屈折率層の光学膜厚(nd)は、好ましくは100nm〜175nmである。
【0025】
上記電磁波シールドメッシュ層は、導電性銀ペーストをスクリーン印刷法により印刷して形成されてなる。
【0026】
本発明の他の局面に従うプラズマディスプレイパネルは、上述の特徴を有する電磁波シールド材を装着してなる。
【発明の効果】
【0027】
本発明を利用すると、1枚の基材フィルム(例えばPETフィルム)に、コーティングや印刷によって、反射防止性、ハードコート性、防眩性、帯電防止性、電磁波シールド性などの機能を作りこむことができるので、基本的には1回の貼り合わせで前面フィルタが構成できる。また、上記機能層には、これらを貫通して、上記電磁波シールドメッシュ層の一部を露出させる、アースを取るための貫通孔が設けられているので、容易にアースを取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る電磁波シールド材を貼り付けたプラズマディスプレイパネルの概念図である。
【図2】本発明に係る電磁波シールド材の平面図である。
【図3】図2におけるIII−III線に沿う断面図である。
【図4】従来のプラズマディスプレイパネルに装着する機能フィルムの分解斜視図である。
【図5】図4におけるV−V線に沿う断面図である。
【図6】従来の導電性メッシュの平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
ロール状に巻き取ることができる、一体化され、かつアースを容易に取ることができるように改良された電磁波シールド材を得るという目的を、PETを基材層に用い、かつ機能層に、これらを貫通して、上記電磁波シールドメッシュ層の一部を露出させる、アースを取るための貫通孔を設けることによって実現した。以下、本発明の実施例を、図を用いて説明する。
【実施例1】
【0030】
図1は、実施例に係る透明導電性シートを含む電磁波シールド材を装着したプラズマディスプレイパネルの概念図である。図2は、電磁波シールド材の平面図である。図3は、図2におけるIII−III線に沿う断面図である。
【0031】
これらの図を参照して、電磁波シールド材1は、プラズマディスプレイパネル2の表示部3に装着されて用いられ、プラズマテレビから放射される電磁波を遮断する。
【0032】
電磁波シールド材1は、75〜100μm厚みのポリエチレンフタレート(PET)で形成されたPET基材層4を備える。PET基材層4の一方の面上に、アンダーコート層5(1μm厚)と、導電性ペーストインキのにじみを防止するためのインキ受容層6(1μm)が設けられている。インキ受容層6は、シリカ、チタニア、アルミナなどを主成分とする微粒子の集合体である透明多孔質で形成される。インキ受容層6の上に、導電性ペーストインキをスクリーン印刷し、これを焼成することによって形成された格子状の電磁波シールドメッシュ層7が設けられている。アンダーコート層5は、銀ペーストインキの焼成時に、基材層4のPET成分から生じるオリゴマー成分及び添加剤などが、電磁波シールドメッシュ層7に向かって拡散するのを遮断する機能を持たせるために設けられている。
【0033】
電磁波シールドメッシュ層7を覆うように、インキ受容層6の上に機能層8が設けられている。機能層8は、ATO(アンチモン−錫複合酸化物)微粒子を含む重合性バインダー塗布液を硬化させることによって形成されたハードコート層と、その上に設けられた反射防止層とからなる。反射防止層は、光学膜厚(nd):150nm、屈折率(n):1.60の高屈折率層と、その高屈折率層の上に設けられた光学膜厚(nd):140nm、屈折率(n):1.35の低屈折率層とからなる。
【0034】
機能層8には、これらを貫通して、電磁波シールドメッシュ層7の一部を露出させる、アースを取るための貫通孔9が設けられている。この貫通孔9に、電磁波シールドメッシュ層7に電気的接続されるように導電性ペーストを充填することで、容易にアース引き出し線を形成することができる。プラズマテレビから放出される有害な電磁波は、電磁波シールドメッシュ層7に捕らえられ、貫通孔9に充填された導電性ペーストで形成されたアース引き出し線及び筐体を通過してアースに接続され逃がされる。
【0035】
PET基材層4の他方の面にはバックコート層10が設けられている。
【0036】
貫通孔9は、縦又は横に並んで複数個設けられる。貫通孔9は、レーザで穿孔される。
【0037】
PET基材層4の膜厚は、当該電磁波シールド材がロール状に巻き取られ得る厚さにされている。
【0038】
上記機能層8の塗工方法としては、ロールコート法、スピンコート法、コイルバー法、ディップコート法、ダイコート法等により基材フィルム上に塗布、乾燥した後、紫外線を照射する方法が挙げられる。ロールコート法等、連続的に塗布できる方法が生産性及び生産コストの点より好ましい。
【0039】
本実施例によれば、1枚のフィルムの形態で、反射防止機能、ハードコート機能、防眩機能、帯電防止機能、電磁波シールド機能を有する電磁波シールド材が得られるので部品点数が少なく、作業がし易くなる。基材層4はポリエチレンテレフタレートで形成されているので、膜厚を調節することにより、ロール状に巻き取ることができ、ロールツーロールの作業が実現できる。
【0040】
アンダーコート層5は、UV硬化型のアクリルウレタン樹脂又はエポキシアクリレートで形成することにより、工程の短縮化および生産性の向上を図ることができるが、熱硬化性樹脂で形成してもよい。
【0041】
今回開示された実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明に係る電磁波シールド材は、一枚のフィルムで反射防止機能、ハードコート機能、防眩機能、帯電防止機能、電磁波シールド機能を有し、アースを容易に取ることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 電磁波シールド材
2 プラズマディスプレイパネル
3 表示部
4 PET基材層
5 アンダーコート層
6 インキ受容層
7 電磁波シールドメッシュ層
8 機能層
9 貫通孔
10 バックコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマディスプレイパネルの前面に配置され、該プラズマディスプレイパネルから放射される電磁波をシールドする電磁波シールド材であって、
PET基材層と、
前記PET基材層の一方の面上に設けられた、導電性ペーストインキのにじみを防止するためのインキ受容層と、
前記インキ受容層の上に格子状に設けられた、電磁波シールドメッシュ層と、
前記電磁波シールドメッシュ層を覆うように、前記インキ受容層の上に設けられた機能層とを備え、
前記機能層には、これを貫通して、前記電磁波シールドメッシュ層の一部を露出させる、アースを取るための貫通孔が設けられている電磁波シールド材。
【請求項2】
前記機能層は、ハードコート機能層、反射防止機能層、防眩性機能層、帯電防止機能層のうち、少なくとも一つの機能層である、請求項1に記載の電磁波シールド材。
【請求項3】
前記貫通孔は、縦又は横に並んで複数個設けられる、請求項1又は2に記載の電磁波シールド材。
【請求項4】
前記貫通孔は、レーザで穿孔されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の電磁波シールド材。
【請求項5】
前記基材層の膜厚は、当該電磁波シールド材がロール状に巻き取られ得る厚さにされている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電磁波シールド材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の電磁波シールド材を装着してなるプラズマディスプレイパネル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−164884(P2012−164884A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25312(P2011−25312)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】