説明

電磁波シールド用管体

【課題】 電磁波シールド用管体において、配線を通す作業を容易にし、グランドを取りやすくすること。
【解決手段】バネ性を有する金属ワイヤWをメリヤス編みにて筒状に編み上げたメッシュ筒体3をコルゲートチューブ2内に挿通してある。メッシュ筒体3は縮径変形し、これに伴う弾性反発力でコルゲートチューブ2の内面に圧接しているから、配線を電磁波シールド用管体1(メッシュ筒体3)に通す作業でメッシュ筒体3は邪魔にならない。メッシュ筒体3の端部3a、3bは、コルゲートチューブ2の端からはみ出ているので、この部分を金属クランプなどで把持してシャーシ等に固定することで容易にグランドを取ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールド用管体の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
配線から放射される電磁波を防ぐために、或いは外部の電磁波を配線が吸収するのを防ぐために、内外面にめっきしたコルゲートチューブに配線を通す技術がある(特開平9−298382号公報)。
【特許文献1】特開平9−298382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示のコルゲートチューブの場合、振動や屈曲によってめっきが剥がれるおそれがあり、またチューブ端末においてグランドを取り難いという問題があった。
なお、コルゲートチューブに導電布を入れたものに配線を通して電磁波シールドを行う技術もある。このものはめっきの剥がれという問題は存在しないが、導電布が邪魔になって配線を通し難いという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1記載の電磁波シールド用管体は、
可撓性のチューブと、
バネ性を有する金属ワイヤをメリヤス編みにて筒状に編成したメッシュ筒体とからなり、
前記メッシュ筒体を前記チューブ内に挿通して縮径させ、
その縮径に伴う弾性反発力で前記メッシュ筒体を前記チューブの内面に圧接させた
ことを特徴とする。
【0005】
この電磁波シールド用管体は、例えばコルゲートチューブ、軟質プラスチック製のチューブ、ゴムチューブ等の可撓性のチューブと、例えばベリリウム銅ワイヤ、SUSワイヤ、ピアノ線等のバネ性を有する金属ワイヤをメリヤス編みにて筒状に編成したメッシュ筒体とからなる。なお、メッシュ筒体の外径(編み上げ時)は、可撓性のチューブの内径よりも大きくされる。
【0006】
金属ワイヤをメリヤス編みにて筒状に編成したメッシュ筒体には、メリヤス編みの1目毎に小さなループが形成され、それらが小さなバネとして機能するので弾力性に優れる。また、メリヤス編みであるから、隣り合う編み目同士が接近し合う(目の重なり量を増す)変形や、これとは逆の変形も容易であるから、柔軟性にも優れる。
【0007】
そのメッシュ筒体をチューブ内に挿通すると、上記の径差(チューブ<メッシュ筒体)により、メッシュ筒体が縮径し、その縮径に伴う弾性反発力でメッシュ筒体がチューブの内面に圧接する。
【0008】
縮径に伴う弾性反発力でメッシュ筒体がチューブの内面に圧接しているから、チューブ内(実際にはメッシュ筒体内)に配線を通す作業においてメッシュ筒体が邪魔になることはなく、この作業を行い易い。
【0009】
電磁波シールド用管体の使用時に振動や屈曲があっても、メッシュ筒体を構成する金属ワイヤが切れて脱落するようなおそれはない。
また、振動が加えられても、メッシュ筒体がチューブの内面に圧接した状態が維持され、チューブが屈曲されても、メッシュ筒体がチューブの屈曲に容易に追随するからメッシュ筒体にはほとんど負荷が掛からないので、電磁波シールド用管体が破損するおそれもない。
【0010】
更に、配線とチューブが直接当たらないので、振動が加えられた場合にこの両者の接触によって異音が生ずるのを防止できる。
メッシュ筒体が上述のように弾力性を備えているので、請求項2記載のように、前記メッシュ筒体の一部が前記チューブの管外に露出している構成にすれば、具体的にはメッシュ筒体の端部(一端又は両端)をチューブの端からはみ出させたり、チューブの一部を切り欠いてメッシュ筒体の一部を露出させたりすれば、この露出している部分を金属クランプなどで把持でき、それによって容易にグランドを取ることができる。
【0011】
さらに、請求項3記載のように、前記メッシュ筒体の前記チューブの管外に露出している部分が外側に折り返されて前記チューブの外面を覆っている構成とすれば、上述の金属クランプなどによる把持が一層確実になる。なお、このメッシュ筒体の一部を外側に折り返してチューブの外面を覆う構成は、メッシュ筒体の端部をチューブの端からはみ出させたときに好適である。
【0012】
金属ワイヤとしては上に例示したベリリウム銅ワイヤ、SUSワイヤ、ピアノ線等が用いられるが、メッシュ筒体に良好な弾力性と柔軟性を持たせるには、金属ワイヤの線径は0.05〜0.2mmの範囲が好ましい。これは、金属ワイヤの線径が0.05mmを下回るとバネ性がやや弱くなり、同線径が0.2mmを上回るとバネ性がやや強くなる傾向があるためだが、金属ワイヤの材質の違いによるバネ性の強弱もあるので、必ずしもこの範囲に限定されるものではない。
【0013】
上述したとおり、メッシュ筒体の外径(編み上げ時)は可撓性のチューブの内径よりも大きくされるのであるが、金属ワイヤの線径が小さければ縮径されたときの弾性反発力(バネ力)が相対的に小さく、金属ワイヤの線径が大きくなれば縮径されたときの弾性反発力(バネ力)が相対的に大きくなる。従って、金属ワイヤの線径が小さいときにはメッシュ筒体の外径(編み上げ時)と可撓性のチューブの内径との径差を大きく、金属ワイヤの線径が大きいときにはメッシュ筒体の外径(編み上げ時)と可撓性のチューブの内径との径差を小さくするとよい。但し、最適な関係は一律に定まらないので、実験などに基づいて適宜に調整するのが望ましい。
【0014】
なお、請求項4記載のように、前記メッシュ筒体は、複数本の金属ワイヤからなる組ワイヤをメリヤス編みにて筒状に編成して形成されている構成としてもよい。この場合、複数本の金属ワイヤをより合わせて(つまり糸状にして)組ワイヤとしてもよいし、単に複数本を並列状にして組ワイヤを構成してもよい。いずれの場合も、メリヤス編みの目がつまって電磁波シールド効果が向上する。
【0015】
また、本発明の電磁波シールド用管体は、1本のチューブ内に1本のメッシュ筒体を挿通した構造に限るものではなく、請求項5記載のように、1本の前記チューブ内に複数本の前記メッシュ筒体が挿通されている構成にすることもできる。
【0016】
この1本のチューブ内に複数本のメッシュ筒体が挿通されている構成であっても、メッ
シュ筒体をチューブ内に挿通して縮径させれば、その縮径に伴う弾性反発力でメッシュ筒体を中空に維持できるから、各メッシュ筒体に配線を通すことができる。また、すべてのメッシュ筒体又は何本かのメッシュ筒体がチューブの内面に圧接するから、メッシュ筒体がチューブから抜け落ちるおそれはない。
【0017】
このように1本のチューブ内に複数本のメッシュ筒体を挿通し、各メッシュ筒体に配線を通せば、併走する配線間でのクロストークを防止できる。更には、チューブ端などにおいて何本かのメッシュ筒体を分岐させれば、メッシュ筒体にてカバーしたままで配線を分岐させることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明の実施例等により発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は下記の実施例等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でさまざまに実施できることは言うまでもない。
[実施例1]
図1に示すように、本実施例の電磁波シールド用管体1は、コルゲートチューブ2と、メッシュ筒体3とからなる。
【0019】
コルゲートチューブ2は合成樹脂(例えばABS樹脂)の成形品であり、本実施例では内径11mmの市販品を用いている。なお、コルゲートチューブ2は可撓性のチューブに該当する。
【0020】
メッシュ筒体3は、バネ性を有する金属ワイヤ(例えばベリリウム銅ワイヤ)Wを、図1(b)に拡大して示すようにメリヤス編みにて筒状に編み上げて構成される。本実施例では、メッシュ筒体3の編み上げ時の外径は16mmに設定した。なお、金属ワイヤWの線径は0.05〜0.2mmの範囲が好ましい。
【0021】
そして、このメッシュ筒体3をコルゲートチューブ2内に挿通してある。
コルゲートチューブ2の内径が11mm、メッシュ筒体3の編み上げ時の外径が16mmであるから、コルゲートチューブ2内に挿通されているメッシュ筒体3は縮径変形している。金属ワイヤWをメリヤス編みにて筒状に編成したメッシュ筒体3には、図1(b)に示すとおり、メリヤス編みの1目毎に小さなループが形成され、それらが小さなバネとして機能するので弾力性に優れている。従って、メッシュ筒体3は、この縮径に伴う弾性反発力でコルゲートチューブ2の内面に圧接した状態にある。
【0022】
また、メッシュ筒体3の端部3a、3bは、コルゲートチューブ2の端からはみ出ている(コルゲートチューブ2の管外に露出している)。一方の端部3aは外側に折り返されてコルゲートチューブ2の外面を覆っており、他方の端部3bは折り返されていない。なお、端部3bも端部3aと同様に折り返してもよいし、端部3aも端部3bと同様に折り返さない構成としてもよい。本例ではメッシュ筒体3の径がコルゲートチューブ2の径に比べて大きいので、端部3a又は端部3bを折り返す場合に、その作業を行いやすい。
【0023】
この電磁波シールド用管体1は、その内部に電気配線を通すことにより、配線がメッシュ筒体3によって取り囲まれた状態になり、その配線が電磁波シールドされる。
配線を電磁波シールド用管体1に、つまりメッシュ筒体3に通す作業においては、縮径に伴う弾性反発力でメッシュ筒体3がコルゲートチューブ2の内面に圧接しているから、メッシュ筒体3が邪魔になることはなく、この作業を行い易い。また、縮径に伴う弾性反発力でメッシュ筒体3がコルゲートチューブ2の内面に圧接しているから、メッシュ筒体
3がコルゲートチューブ2内で移動したり、コルゲートチューブ2から抜けたりするおそれはない。
【0024】
メッシュ筒体3の端部3aは外側に折り返されてコルゲートチューブ2の外面を覆っているので、この部分を金属クランプなどで把持してシャーシ等に固定することで容易にグランドを取ることができる。また、この場合、端部3aを金属クランプなどで把持すればコルゲートチューブ2も把持されるので、この金属クランプなどにてグランドを取るだけでなく電磁波シールド用管体1をシャーシ等に固定することができる。
【0025】
一方、メッシュ筒体3の端部3bは折返しになっていないが、メッシュ筒体3が弾力性を備えていて、金属クランプなどで把持しても容易にはつぶれないから、この露出している部分を金属クランプなどで把持して容易にグランドを取ることができる。
【0026】
しかも、メッシュ筒体3は、金属ワイヤWをメリヤス編みにて筒状に編成した構造であるから弾力性に優れ、また柔軟性にも優れる。このため、電磁波シールド用管体1をシャーシ等に取り付ける際に屈曲させるのは容易であり、その屈曲によりメッシュ筒体3を構成する金属ワイヤWが切れて脱落するようなおそれはない。また、電磁波シールド用管体1の使用時に振動が加えられても、同様に金属ワイヤWが切れて脱落するようなおそれはない。
【0027】
更に、中に通した配線とコルゲートチューブ2とが直接には接触しないので、振動が加えられた場合にこの両者の接触によって異音が生ずるのを防止できる。
[実施例2]
図2に示すように、1本のコルゲートチューブ2の中に複数本の(ここでは2本の)メッシュ筒体4、5を挿通して、電磁波シールド用管体1aを構成することもできる。この場合も、各メッシュ筒体4、5が縮径に伴う弾性反発力でコルゲートチューブ2の内面に圧接するから、メッシュ筒体4、5がコルゲートチューブ2内で移動したり、コルゲートチューブ2から抜けたりするおそれはない。
【0028】
この実施例2のように構成しても実施例1と同様の効果が得られる。
また、各メッシュ筒体4、5が、それぞれに挿通されている配線を電磁波シールドするので、メッシュ筒体4に通した配線とメッシュ筒体5に通した配線との間でのクロストークを防止できる。
【0029】
更には、図示するようにコルゲートチューブ2の端から出ているメッシュ筒体4、5を異なる方向に向かわせること、つまり分岐させることが可能で、メッシュ筒体にてカバーしたままで配線を分岐させることも可能である。配線を分岐させた場合、何本かのメッシュ筒体(ここではメッシュ筒体5)を、別のコルゲートチューブ2aに挿通させる(言うまでもないがメッシュ筒体5内の配線も)等も可能である。
[その他]
例えば、実施例1、2のメッシュ筒体3、4、5は1本の金属ワイヤWをメリヤス編みした構成であるが、複数本(例えば2本)の金属ワイヤからなる組ワイヤをメリヤス編みにて筒状に編成して形成されている構成としてもよい。この場合、複数本の金属ワイヤをより合わせて(つまり糸状にして)組ワイヤとしてもよいし、単に複数本を並列状にして組ワイヤを構成してもよい。いずれの場合も、メリヤス編みの目がつまって電磁波シールド効果が向上する。
【0030】
また、複数本(例えば2本)のワイヤからなる組ワイヤをメリヤス編みにて筒状に編成してメッシュ筒体を形成する場合、その中の1本又は複数本をポリエステル、ナイロン、
ケプラ等の合成樹脂ワイヤとする(いうまでもないが、少なくとも1本はバネ性を有する金属ワイヤである。)こともできる。このように、金属ワイヤと合成樹脂ワイヤとを共編みすると、メッシュ筒体内に挿通した配線とチューブとの接触によって異音が生ずるのを、金属ワイヤのみの場合よりも良好に防止できる。更に、合成樹脂ワイヤの存在により、配線とメッシュ筒体の金属ワイヤとが擦れて配線が傷つくのも防止できるし、メッシュ筒体が滑りやすくなるので配線を通しやすくもなる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例1の電磁波シールド用管体の説明図。
【図2】実施例2の電磁波シールド用管体の説明図。
【符号の説明】
【0032】
1、1a・・・電磁波シールド用管体、
2、2a・・・コルゲートチューブ、
3、4、5・・・メッシュ筒体、
3a、3b・・・端部、
W・・・金属ワイヤ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性のチューブと、
バネ性を有する金属ワイヤをメリヤス編みにて筒状に編成したメッシュ筒体とからなり、
前記メッシュ筒体を前記チューブ内に挿通して縮径させ、
その縮径に伴う弾性反発力で前記メッシュ筒体を前記チューブの内面に圧接させた
ことを特徴とする電磁波シールド用管体。
【請求項2】
前記メッシュ筒体の一部が前記チューブの管外に露出している
ことを特徴とする請求項1記載の電磁波シールド用管体。
【請求項3】
前記メッシュ筒体の前記チューブの管外に露出している部分が外側に折り返されて前記チューブの外面を覆っている
ことを特徴とする請求項2記載の電磁波シールド用管体。
【請求項4】
前記メッシュ筒体は、複数本の金属ワイヤからなる組ワイヤをメリヤス編みにて筒状に編成して形成されている
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか記載の電磁波シールド用管体。
【請求項5】
1本の前記チューブ内に複数本の前記メッシュ筒体が挿通されている
ことを特徴とする 請求項1ないし4のいずれか記載の電磁波シールド用管体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−251892(P2008−251892A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−92221(P2007−92221)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000242231)北川工業株式会社 (268)
【Fターム(参考)】