説明

電磁波遮蔽シート

【課題】黄変し難く、微小気泡が混入し難く、画像鮮明度が高く、ヘイズの上昇を抑制することができる、光学特性に優れた接着剤層を備えた電磁波遮蔽シートを提供する。
【解決手段】透明基材の一方の面に、接着剤層を介して、導電性パターン層を備えた電磁波遮蔽シートにおいて、前記接着剤層が、(I)主剤として、ソフトセグメント(A)とハードセグメント(B)を含むポリエステルウレタンポリオール、及び(II)キシリレンジイソシアネート(XDI)とヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を含む硬化剤を含有する接着剤から形成され、且つ、前記主剤において、ソフトセグメント(A)とハードセグメント(B)の重量比((A):(B))が、60:40〜90:10であり、前記キシリレンジイソシアネート(XDI)と前記ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の重量比(XDI:HDI)が、50:50よりも大きく90:10以下であることを特徴とする電磁波遮蔽シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PDP(プラズマディスプレイパネル)などのディスプレイ(画像表示装置)から発生する電磁波を遮蔽(シールド)する電磁波遮蔽シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気電子機器の機能高度化と増加利用に伴い、電磁気的なノイズ妨害(Electro Magnetic Interference;EMI)が増え、陰極線管(CRTという)、プラズマディスプレイパネル(PDPという)などのディスプレイでも電磁波が発生する。この電磁波をシールドするために、ディスプレイ前面に配置する電磁波遮蔽シートが知られている。このような用途に用いる電磁波遮蔽シートでは、電磁波シールド性能と共に光透過性も要求される。そこで、基材に樹脂フィルムやガラス板等の透明基材を用い、この透明基材上に、銅などの金属から成る、導電性パターン層を形成することにより光透過性を付与した電磁波遮蔽シートが知られている。尚、当該パターンとしては、通常、メッシュ(導電性メッシュ層)が用いられる。
【0003】
上記導電性パターン層は、透明基材上に積層した金属箔をエッチング加工することにより、メッシュ状に形成される。このようにエッチング加工で得られるメッシュ状の金属箔は、単独で取り扱うことが困難であるため、通常、透明基材上に未加工の金属箔を接着剤層を介して積層した積層体をつくり、当該積層体上の金属箔に対して、パターン状のエッチングが行われている。
【0004】
上記接着剤層には、ポリエステル樹脂(代表的にはポリエステルポリオール)とイソシアネート系化合物を配合した接着剤が用いられる。
特許文献1には、飽和ポリエステルとキシリレンジイソシアネート(XDI)を含む硬化剤を配合した接着剤が開示されている。此の種の用途に使う金属箔表面には、投錨効果により接着力を強化する為の微小な凹凸があるため、当該接着剤を用いて、透明基材上に金属箔を貼り合わせる際に、両者間の空気が抜け切らず、当該金属箔表面と当該接着剤表面との間に微小気泡が生じる。そして、飽和ポリエステルとキシリレンジイソシアネート(XDI)を硬化反応させる過程において、接着剤層中に微小気泡が混入する。そのため、このようにして得られた電磁波遮蔽シートをディスプレイ前面に配置すると、接着剤層中に混入した微小気泡によって画像光が散乱し、ヘイズ(曇価)が上がるという問題があった。
【0005】
また、飽和ポリエステルとヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を含む硬化剤を配合した接着剤を用いた場合には、硬化後の接着剤層表面が、接着剤層の不均一な硬化収縮、塗工時の流動平坦化の不足等の為に、平面性が低下し、微小な歪み状の凹凸(前記の投錨効果向上の為の金属箔の微小な凹凸とは別のも)が生じる。そして、金属箔をエッチングしメッシュ状に形成すると、当該金属箔が除去された部分では、微小な歪み状の凹凸を有する接着剤層の表面が剥き出しになる。そのため、このようにして得られた電磁波遮蔽シートをディスプレイ前面に配置すると、PDP内部におけるバックライト背面からの透過光が、当該電磁波遮蔽シートの接着剤層表面の微小な歪み状の凹凸によって光が屈折して、真っ直ぐに進まず画像が歪んで見える、いわゆる「画像鮮明度」が低くなるという問題があった。
【0006】
また、画像の高品位化、高解像度化に伴い、メッシュの線幅を微細化(5〜30μm程度)した場合、斯かる微細線幅を安定して、再現性良く、且つ欠点無く加工するためには、透明基材上に接着剤層を介して金属箔を積層した積層体を、低濃度のエッチング液に長時間浸漬する必要がある。しかしながら、当該積層体をエッチング液に長時間浸漬させると、当該接着剤層中に、塩化第二鉄水溶液等に代表されるエッチング液がしみ込みやすくなり、当該接着剤層を黄変させる。また、このようにして得られた電磁波遮蔽シートをディスプレイ前面に配置するとヘイズが上がるという問題があった。
以上のように、従来の接着剤では、微小気泡が混入しないこと、接着剤層が黄変し難いこと、ヘイズが低いこと、及び画像鮮明度が高いことなどの電磁波遮蔽シートに求められる全ての光学特性を満足させることができなかった。
【0007】
【特許文献1】特開2003−198181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記問題点を鑑みてなされたものであり、黄変し難く、微小気泡が混入し難く、画像鮮明度が高く、ヘイズの上昇を抑制することができる、光学特性に優れた接着剤層を備えた電磁波遮蔽シートを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の接着剤を用いることにより、上記課題が解決されるという知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係る電磁波遮蔽シートは、透明基材の一方の面に、接着剤層を介して、導電性パターン層を備えた電磁波遮蔽シートにおいて、
前記接着剤層が、(I)主剤として、ソフトセグメント(A)とハードセグメント(B)を含むポリエステルウレタンポリオール、及び
(II)キシリレンジイソシアネート(XDI)とヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を含む硬化剤を含有する接着剤から形成され、且つ、前記主剤において、ソフトセグメント(A)とハードセグメント(B)の重量比((A):(B))が、60:40〜90:10であり、前記キシリレンジイソシアネート(XDI)と前記ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の重量比(XDI:HDI)が、50:50よりも大きく90:10以下であることを特徴とする。
【0010】
本発明の接着剤において、主剤として、ソフトセグメント(A)とハードセグメント(B)を含むポリエステルウレタンポリオールを用い、当該ソフトセグメント(A)と当該ハードセグメント(B)の重量比を特定の範囲とすることにより、硬化後の接着剤層を、エッチング液に長時間浸漬させても黄変し難くすることができる。また、キシリレンジイソシアネート(XDI)とヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を含む硬化剤を用い、当該キシリレンジイソシアネート(XDI)と当該ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の重量比を特定の範囲とすることにより、接着剤層中への微小気泡の混入を抑えることができ、且つ接着剤層表面に微小な歪み状の凹凸を生じ難くすることができる。
従って、本発明によれば、画像鮮明度に優れ、ヘイズの上昇を抑制することができる電磁波遮蔽シートを提供することができる。
【0011】
本発明に係る電磁波遮蔽シートにおいては、前記ポリエステルウレタンポリオールのガラス転移温度が、20〜40℃の範囲であることが、硬化後の接着剤層をエッチング液によって黄変し難くさせる点から好ましい。
【0012】
本発明に係る電磁波遮蔽シートにおいては、前記硬化剤の配合量が、前記主剤100重量部に対して、4〜30重量部の範囲であることが、エッチング後の黄変、ブロッキング、及び導電性パターン密着力の点から好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、特定の接着剤を用いることにより、硬化後の接着剤層が黄変し難く、微小気泡が混入し難く、且つ当該接着剤層表面に微小な歪み状の凹凸を生じ難くすることができるため、画像鮮明度が高く、ヘイズの上昇を抑制することが可能な電磁波遮蔽シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下において本発明を詳しく説明する。
本発明の電磁波遮蔽シートは、透明基材の一方の面に、接着剤層を介して、導電性パターン層を備えた電磁波遮蔽シートにおいて、
前記接着剤層が、(I)主剤として、ソフトセグメント(A)とハードセグメント(B)を含むポリエステルウレタンポリオール、及び
(II)キシリレンジイソシアネート(XDI)とヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を含む硬化剤を含有する接着剤から形成され、且つ、前記主剤において、ソフトセグメント(A)とハードセグメント(B)の重量比((A):(B))が、60:40〜90:10であり、前記キシリレンジイソシアネート(XDI)と前記ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の重量比(XDI:HDI)が、50:50よりも大きく90:10以下であることを特徴とする。
【0015】
透明基材の一方の面に、接着剤層を介して、導電性パターン層を備えた電磁波遮蔽シートにおいて、当該接着剤層を形成する接着剤によっては、接着剤層がエッチング液によって黄変したり、接着剤層中に微小気泡が混入したりすることによって、ヘイズが上昇したり、或いは、接着剤層表面に微小な歪み状の凹凸が生じることにより、画像鮮明度が低下するなどの問題があった。
これに対して、本発明の電磁波遮蔽シートに用いられる接着剤は、主剤として、ソフトセグメント(A)とハードセグメント(B)を含むポリエステルウレタンポリオールを用い、当該ソフトセグメント(A)と当該ハードセグメント(B)の重量比を特定の範囲とすることにより、硬化後の接着剤層を、エッチング液に長時間浸漬させても黄変し難くすることができる。また、キシリレンジイソシアネート(XDI)とヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を含む硬化剤を用い、当該キシリレンジイソシアネート(XDI)と当該ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の重量比を特定の範囲とすることにより、接着剤層中への微小気泡の混入を抑えることができ、且つ接着剤層表面に微小な歪み状の凹凸を生じ難くすることができる。
従って、本発明によれば、画像鮮明度に優れ、ヘイズの上昇を抑制することができる電磁波遮蔽シートを提供することができる。
【0016】
本発明の接着剤層が、黄変し難く、微小気泡を混入し難く、且つ接着剤層表面に微小な歪み状の凹凸を生じ難くすることができるのは、次のような理由によるものと考えられる。
透明基材上に接着剤層を介して金属箔を積層した積層体をエッチング処理する際のエッチング液の温度は、通常40〜50℃である。一方、従来用いられてきた接着剤のガラス転移温度は、通常15〜100℃の範囲で、エッチング液の温度に比べて同等程度乃至それよりも低い。そのため、当該積層体をエッチング液に長時間浸漬させると、当該接着剤層中に、エッチング液がしみ込みやすく、当該接着剤層を黄変させる。これに対して、接着剤の主剤であるソフトセグメント(A)にハードセグメント(B)を加えると、ガラス転移温度が高くなる。従って、当該接着剤のガラス転移温度をエッチング液の温度付近よりも十分高めになるように、当該ソフトセグメント(A)と当該ハードセグメント(B)の配合比を調整することで、エッチング処理時間を長くしても接着剤層中にエッチング液が浸透し難く、黄変を抑制することができ、ヘイズの上昇を抑制することができると考えられる。
また、本発明者らの実験の結果、接着剤の硬化剤中に含まれるキシリレンジイソシアネート(XDI)は、高粘弾性で固化状態になるのが速く、硬化反応速度が速い。また、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)は、低粘弾性で固化状態になるのが遅く、主剤との硬化反応過程において硬化収縮しやすいことがわかった。
従って、当該キシリレンジイソシアネート(XDI)を含む接着剤は変形し難く、また、接着剤の主剤とキシリレンジイソシアネート(XDI)の硬化反応が速く進行することにより、金属箔表面と接着剤表面との間に生じた微小気泡が、硬化後の接着剤層中に混入しやすくなると考えられる。また、当該ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を含む接着剤は、軟らかく変形しやすく、接着剤の主剤と当該ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の硬化反応過程において硬化収縮が起こりやすいため、接着剤層表面に微小な歪み状の凹凸を生じさせると考えられる。
このような観点から、硬化後の接着剤層中に微小気泡を混入し難くするためには、低粘弾性で固化状態になるのが遅いイソシアネート化合物を含む硬化剤を用いることが有効であり、一方、硬化後の接着剤層表面に微小な凹凸を生じ難くするためには、硬化収縮が起こり難いイソシアネート化合物を含む硬化剤を用いることが有効であると推測される。本願発明者らは、先ず、粘弾性の高低、及び硬化反応の遅速とを適正な範囲に調整すれば、斯かる黄変、微小気泡混入、及び微小な歪み状凹凸を全て改善する可能性が有るものと判断した。しかし、本願発明者らが各種試行錯誤して確認したところ、1種類のイソシアネート化合物で、此の様な相反する諸特性を適度に均衡して有する硬化剤を見出すことは出来無かった。
そこで、本発明においては、高粘弾性で硬化反応速度が速いため、硬化収縮が起こり難いキシリレンジイソシアネート(XDI)と、低粘弾性で固化状態になるのが遅いヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を併用し、その配合比を調整することにした。斯くの如くすることで、主剤と硬化剤の硬化反応速度を最適化することにより、硬化後の接着剤層中に微小気泡が混入し難く、当該接着剤層表面に微小な歪み状の凹凸を生じ難くすることができると考えられる。
尚、ここで「固化状態」とは、tanσが1になる状態のことである。また、「ソフトセグメント」とは、柔軟で可撓なセグメントのことであり、「ハードセグメント」とは、硬い剛直なセグメントのことである。
【0017】
〔層構成〕
図1は本発明による電磁波遮蔽シートについて、基本的な形態を例示する断面図である。なお、図1に示す断面図において、説明の容易化のために、厚み方向(図の上下方向)の縮尺を面方向(図の左右方向)の縮尺よりも大幅に拡大誇張し、尚且つ当該電磁波遮蔽シートの厚み方向の縮尺をプラズマディスプレイパネル(以下PDPとも称呼)の厚み方向の縮尺よりも大幅に拡大して図示してある。電磁波遮蔽シート1は、透明基材10の一方の面に、接着剤層11を介して、メッシュ状の導電性パターン層12が積層されている。当該導電性パターン層12は、前記透明基材10側の面とは反対側の面(画像の観察者乃至視聴者に面する側)が黒化処理されて黒化層13を有する。
本発明に係る電磁波遮蔽シート1は、プラズマディスプレイパネル20の前面に配置されれば、図1において図示していないが、粘着剤層を利用してプラズマディスプレイパネルに直接貼り付けられるものであっても、別途光学機能等を有していても良い他の板状透明基材に貼り付けた上で、プラズマディスプレイの前面に配置されても良い。
以下、本発明の電磁波遮蔽シートについて、透明基材から順に説明する。
【0018】
(透明基材)
透明基材は電磁波遮蔽シートを構成する一部の層であり、接着剤層を介して導電性パターン層を積層するための基材となる層である。また、必要に応じて紫外線吸収機能を付加させてもよい。従って、透明基材としては、機械的強度、光透過性と共に、適宜紫外線吸収能を有すれば、その他、耐熱性等の性能を適宜勘案したものを用途に応じて選択すればよい。このような、透明基材の具体例としては、樹脂等の有機材料或は硝子等の無機材料からなるシート(乃至フィルム。以下同様。)又は板が挙げられる。透明基材の透明性は高いほどよいが、好ましくは可視光域380〜780nmにおける光線透過率が70%以上、より好ましくは80%以上となる光透過性が良い。なお、光透過率の測定は、分光光度計(例えば、(株)島津製作所製 UV−3100PC)を用い、室温、大気中で測定した値を用いることができる。
【0019】
透明基材の材料として用いる樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、テレフタル酸−イソフタル酸−エチレングリコール共重合体、テレフタル酸−シクロヘキサンジメタノール−エチレングリコール共重合体などのポリエステル系樹脂、ナイロン6などのポリアミド系樹脂、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体などのスチレン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、イミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0020】
なお、これらの樹脂は、単独、又は複数種類の混合樹脂(ポリマーアロイを含む)として用いられ、透明樹脂基材の層構成は、単層、又は2層以上の積層体として用いられる。また、樹脂フィルムの場合、1軸延伸や2軸延伸した延伸フィルムが機械的強度の点でより好ましい。また、これら樹脂中には、必要に応じて適宜、充填剤、可塑剤、帯電防止剤などの添加剤を加えても良い。又、硝子としては、ソーダ硝子、カリ硝子、硼珪酸硝子、石英硝子等が挙げられる。通常、硝子の場合は、厚みの有る板状で用いられる。
【0021】
透明基材の厚さは、基本的には用途に応じ選定すればよく、特に制限はないが、通常は12〜5000μm、好ましくはフィルムの場合は50〜500μm、より好ましくは50〜200μm、板の場合は500〜3000μmである。このような厚み範囲ならば、機械的強度が十分で、反り、弛み、破断などを防ぎ、連続帯状で供給して加工する事も容易である。
なお、本発明では、透明基材としては、特に、可撓性の有る樹脂フィルム或は板から成るものが、製造加工適性が良好で、重量、価格も低減できる点で好ましい。特に、これら樹脂から成る基材を透明樹脂基材と称呼し、以降はこれを主体に例示して説明する。
【0022】
透明樹脂基材の形態としては樹脂板よりは透明樹脂フィルムが好ましい。当該樹脂フィルムのなかでも特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂フィルムが、透明性、耐熱性、コスト等の点で好ましく、より好ましくは2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが最適である。
【0023】
また、本発明においては、透明樹脂基材が紫外線吸収機能を有する場合、当該透明樹脂基材は、当該透明樹脂基材の樹脂中に紫外線吸収剤を練り込んだり、当該透明樹脂基材の構成層の一部として紫外線吸収剤を含む表面コート層を表面に設けたり、或いはこれら両方を併用した構成としてもよい。なお、表面コート層を設ける表面は表裏面のいずれか片側、又は両側のいずれでもよい。
また、透明樹脂基材には、密着性改善機能、耐久性改善機能、印刷性改善機能、及び耐溶剤性改善機能等の各種機能を適宜付与した下地層が形成されていてもよい。
【0024】
(接着剤層)
接着剤層は、導電性パターン層と透明基材とを接着する層である。本発明の接着剤層は、主剤として、ソフトセグメント(A)とハードセグメント(B)を含むポリエステルウレタンポリオール、及びキシリレンジイソシアネート(XDI)とヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を含む硬化剤を含有する接着剤から形成される。以下に、接着剤の組成について説明する。
【0025】
〔主剤〕
本発明で用いられる接着剤に含まれる主剤は、ソフトセグメント(A)とハードセグメント(B)の2成分を含むポリエステルウレタンポリオールである。当該ソフトセグメント(A)と当該ハードセグメント(B)の重量比((A):(B))は、60:40〜90:10の範囲であり、好ましくは70:30〜80:20の範囲である。当該重量比((A):(B))を上記範囲内とすることにより、硬化後の接着剤層を、エッチング液に長時間浸漬させても黄変し難くすることができ、且つ微小気泡混入、及び当該接着剤層表面の微小な歪み状凹凸も支障無く抑えることができる。
【0026】
また、上記ポリエステルウレタンポリオールのガラス転移温度(Tgとも略称)は、20〜40℃の範囲であることが好ましく、更に25〜35℃の範囲であることが好ましい。ガラス転移温度が20℃未満であると、エッチング後に黄変する恐れがあり、一方、40℃を超えると、メッシュ密着力が低下する恐れがある。
ここで、上記ポリエステルウレタンポリオールのハードセグメントのみを単独で重合した場合のガラス転移温度は20℃以上、好ましくは40℃以上、更に好ましくは80℃以上である。一般的には芳香族環を分子中に含むことが好ましい。又、上記ポリエステルウレタンポリオールのソフトセグメントのみを単独で重合した場合のガラス転移温度は40℃以下、好ましくは20℃以下、更に好ましくは10℃以下である。一般的には芳香族環を分子中に含まないことが好ましい。
そして、当該ハードセグメントと当該ソフトセグメントとを組合わせる場合には、
当該ハードセグメントのみの重合物のTg>当該ソフトセグメントのみの重合物のTgとなるものを選択し、組合わせる。
これら、ハードセグメントとソフトセグメントを構成する具体的材料を挙げると、例えば、多価カルボン酸として、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸、1,5−ナフタリンジカルボン酸、ビス(p−カルボキシフェニル)メタン、アントラセンジカルボン酸、4,4−ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、4,4′−ビス(シクロヘキシル)ジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、又はそれらのエステル形成性誘導体等から選択した1種以上、多価アルコールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、又はシクロヘキサンジメタノール等から選択した1種以上、或は多価イソシアネートとして、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、又はイソホロンジイソシアネート等の脂肪族乃至脂環式イソシアネートから選択した1種以上が挙げられる。
これらの成分を、上記ハードセグメントとソフトセグメントのTgの設計基準に則り、選択混合して、ポリエステルウレタンポリオールとなる様、重合反応させる。
【0027】
なお、ガラス転移温度は、「POLYMERHANDBOOK第3版」(John Wiley & Sons,Ink.発行)に記載された各ホモポリマーのガラス転移温度Tg(K)を基にして、下記式で計算により簡単に求められるほか、DSC(示差走差熱量測定装置)やDTA(示差熱分析装置)によって求めることができる。
1/Tg(K)=W/Tg+W/Tg+・・・・+Wn/Tgn
Wn;各単量体の重量分率
Tgn;各単量体の単独重合体のTg(K)であり、ポリマーハンドブック(3rd Ed.,J.Brandrup and E.H.Immergut,WILEY INTERSCIENCE)中の値など、一般に公開されている掲載値をもちいればよい。
【0028】
〔硬化剤〕
本発明で用いられる接着剤に含まれる硬化剤は、キシリレンジイソシアネート(XDI)とヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を含み、当該キシリレンジイソシアネート(XDI)とヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の重量比(XDI:HDI)は、50:50よりも大きく90:10以下であり、好ましくは70:30以上80:20以下である。当該重量比(XDI:HDI)を上記範囲内とすることにより、接着剤層中への微小気泡の混入を抑えることができ、且つ接着剤層表面に微小な凹凸を生じ難くすることができる。
【0029】
また、前記硬化剤の配合量が、前記主剤100重量部に対して、4〜30重量部の範囲であることが好ましく、更に10〜20重量部の範囲であることが好ましい。4重量部未満の場合、エッチング後の黄変、ブロッキングの発生、及び導電性パターン密着力の低下を招く恐れがあり、30重量部超過の場合、導電性パターン密着力が低下する恐れがある。
【0030】
(導電性パターン層)
導電性パターン層は、導電性を有することで電磁波遮蔽機能を担える層であり、またそれ自体は不透明性材料からなるが、画像光透過の為に多数の開口部が存在するパターン状の形状に加工することにより、電磁波遮蔽性能と光透過性を両立させている層である。
導電性パターン層は、機械的強度が弱いため独立した層として存在することが困難である。そのため、導電性パターン層は、通常、透明基材(透明樹脂基材又は透明硝子基材)の表面に導電層を積層し、当該導電層をエッチング(腐蝕)によりパターン形状とすることで形成される。
【0031】
導電性パターン層は、電磁波遮蔽性能を発現するに足る導電性を有する物質であれば、特に制限は無いが、通常は、導電性が良い点で金属層が好ましい。金属層の金属材料としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、クロム等が挙げられる。また、金属層の金属は合金でも良く、金属層は単層でも多層でも良い。例えば、鉄の場合には、低炭素リムド鋼や低炭素アルミキルド鋼などの低炭素鋼、Ni−Fe合金、インバー合金、等が好ましい。一方、金属が銅の場合は、金属材料は銅や銅合金となり、銅箔としては圧延銅箔や電解銅箔があるが、薄さ及びその均一性、黒化層との密着性等の点からは、電解銅箔が好ましい。
【0032】
なお、金属層による導電性パターン層の厚さは、1〜50μm程度、好ましくは2〜15μmである。厚さがこれより薄くなり過ぎると電気抵抗上昇により十分な電磁波遮蔽性能を得難くなり、厚さがこれより厚くなり過ぎると高精細なパターン形状が得難くなり、パターン形状の均一性が低下する。導電性パターン層の平坦化を行いやすく、平坦化を行った際に気泡の混入が少なく、透明性に優れた電磁波遮蔽シートを得やすい点からは、導電性パターン層の厚さは2〜10μm程度であることが好ましい。
【0033】
[メッシュの形状]
なお、導電性パターン層のパターン形状は、任意で特に限定されず、メッシュ(格子乃至は網)、ストライプ(平行線群)、螺旋等各種のものが使用可能であるが、通常、任意の電場の振動方向(偏光方向)に対して遮蔽性を発現可能なメッシュが多用される。
尚、以下導電性パターン層としては、代表的な導電性メッシュ層を主に例示して本発明を説明する。但し、本発明の導電パターンをメッシュ形状のみに限定する訳では無い。
そのメッシュの開口部の形状として、正方形が代表的である。開口部の平面視形状は、例えば、正三角形等の三角形、正方形、長方形、菱形、台形等の四角形、六角形等の多角形、或いは、円形、楕円形等である。メッシュはこれら形状からなる複数の開口部を有し、開口部間は通常幅均一のライン状(線状)のライン部(線部)となり、通常は、開口部及びライン部は全面で同一形状同一サイズである。具体的サイズを例示すれば、高開口率及びメッシュの非視認性の点で、開口部間のライン部の幅は5〜30μmが良い。また、開口部サイズは〔ライン間隔或いはラインピッチ〕−〔ライン幅〕であるが、この〔ライン間隔或いはラインピッチ〕で言うと100μm〜500μm、且つ開口率(開口部の面積の合計/メッシュ領域の全面積)を50〜97%とするのが、光透過性と電磁波遮蔽性との両立性の点で好ましい。また、モアレ縞防止の為ラインピッチは100μm〜500μmの間でランダムでもかまわない。
なお、バイアス角度(メッシュのライン部と電磁波遮蔽シートの外周辺との成す角度)は、ディスプレイの画素ピッチや発光特性を考慮して、モアレ縞が出難い角度に適宜設定すれば良い。
【0034】
[接地用領域とメッシュ領域]
また、導電性パターン層12は、図2の平面図で概念的に例示する導電性パターン層12のように、その平面方向に於いて、中央部のメッシュ領域121以外に周縁部に接地用領域122を備えた層とするのが、接地をとり易い点でより好ましい。当該接地用領域は画像表示を阻害しない為に、画像表示領域周縁部の一部又は全周に形成する。当該メッシュ領域とは電磁波遮蔽シートを適用するディスプレイの画像表示領域を全て覆うことが出来る領域である。当該接地用領域とは接地をとる為の領域である。当該画像表示領域とは、ディスプレイが実質的に画像を表示する領域(実質的画像表示領域)を少なくとも意味するが、ディスプレイを観察者から見た場合にディスプレイの外枠体による枠の内側全体の領域も便宜上含めた意味としても良い。その理由は、当該枠の内側で且つ実質的画像表示領域の外側に黒い領域(縁取り)が存在する場合、そこは本来画像表示領域外だが、目に触れる以上は外観が実質的画像表示領域と異なるのは違和感が生じるからである。
なお、接地用領域は基本的にはメッシュは不要だが、接地用領域の反り防止等の目的から、開口部から成るメッシュが存在しても良い。
【0035】
[黒化処理]
黒化処理は上記導電性パターン層の面の光反射を防ぐためのものであり、黒化処理で形成された黒化処理面により、導電性パターン層面での外光反射による透視画像の黒レベルの低下を防いで、また、透視画像の明室コントラストを向上させて、ディスプレイの画像の視認性を向上するものである。黒化処理面は、導電性パターン層のライン部(線状部分)の全ての面に設けることが好ましいが、表裏両面のうち少なくとも観察者側であると共に外光入射側の面を黒化処理面とすることが好ましい。ライン部の表裏両面や、側面(両側或いは片側)が更に黒化処理されていても良い。黒化層は、少なくとも観察者側に設ければ良いが、ディスプレイ面側にも設ける場合には、ディスプレイから発生する迷光を抑えられるので、さらに、画像の視認性が向上する。
黒化処理としては、導電性パターン層の表面を粗化するか、全可視光スペクトルに亘って光吸収性を付与するか、或いは両者を併用するか、何れかにより少なくとも最表面を黒(色)化することにより行なう。特に黒化処理を層の形成により行う場合、斯かる層を黒化層と称呼する。具体的な黒化処理としては、導電性パターン層上にメッキ等で黒化層を付加的に設ける他、エッチング等で表面から内部に向かって当該表面を構成する層自体の表面を粗面化して黒化層に変化させても良い。
尚、ここで言う「黒化層」乃至「黒化処理」の色は完全な黒である必要はなく、低明度の(暗い)有彩色又は無彩色、即ち、所謂暗色であれば、黒化層(黒化処理)の目指す相応の効果を奏する。かかる暗色としては、具体的には、黒、濃い(低明度の)灰色等の無彩色、紺色、褐色、深緑色、臙脂色、濃紫色等の低明度の有彩色が挙げられる。
【0036】
また、黒化層は黒等の暗色を呈し、密着性等の基本的物性を満足するものであれば良く、公知の黒化層を適宜採用し得る。従って、黒化層としては、金属等の無機材料、黒着色樹脂等の有機材料等を用いることができ、例えば無機材料としては、金属、合金、金属酸化物、金属硫化物等の金属化合物等の金属系の層として形成する。金属系の層の形成法としては、従来公知の各種黒化処理法を適宜採用できる。
【0037】
本発明の電磁波遮蔽シートは、単品で画像表示装置前面に設置することも可能ではあるが、通常は、フィルタ基板と積層して電磁波遮蔽フィルタ板として構成したり、或は各種の機能性層と積層して複合(多機能)フィルタとした上で、画像表示装置前面に設置することも出来る。
フィルタ基板としては、前記に於いて、電磁波遮蔽シートの透明基材として列挙した板形態の基材と同様のものの中から適宜選択すれば良い。
機能性層としては、光学フィルタ層、硬質塗膜(ハードコート)層、帯電防止層、防汚層、耐衝撃層等を適宜1以上選択して積層する。光学フィルタ層としては、紫外線吸収、近赤外線吸収、ネオン光吸収、反射防止、防眩、着色、微細ルーバ(鎧戸乃至簾)構造による外光反射防止乃至視野角規制機能等の機能を有するフィルタ層が挙げられる。これら、機能性層は、必要に応じ、適宜、透明基材と積層したり、2種以上の機能を1層に付与したりしても良い。これら機能層は、公知の各種構成のものから適宜選択する。
【0038】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0039】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
【0040】
(実施例1)
透明基材として、厚さ100μmで連続帯状の無着色透明な2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(A4300:商品名、東洋紡積社製)を用意した。
次に、当該基材の片面に、乾燥時の厚さが4μmとなるように下記組成の接着剤をコーティングして、接着剤層を形成した。
[組成]
(主剤)
・A1151:商品名、三井化学ポリウレタン(株)製(ソフトセグメント(A)とハードセグメント(B)の重量比((A):(B))が75:25):100質量部
(硬化剤)
・A10、商品名、三井化学ポリウレタン(株)製(キシレンジイソシアネート(XDI)含有):
7質量部
・A3070、商品名、三井化学ポリウレタン(株)製(ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)含有):3質量部
尚、XDIとHDIの重量比(XDI:HDI)は、7:3である。
【0041】
次に、上記PETフィルムの片面上に、上記接着剤層を介して、厚さ10μmの連続帯状の電解銅箔をドライラミネートして積層し、連続帯状の積層体を得た。ドライラミネートした後、50℃、3日間養生して、当該接着剤を硬化せしめた。
【0042】
(実施例2)
実施例1の接着剤層の形成において、硬化剤として、A10を8質量部、A3070を
2質量部用いて、XDIとHDIの重量比(XDI:HDI)を8:2とした以外は、前記実施例1と同様にして連続帯状の積層体を得た。
【0043】
(実施例3)
実施例1の接着剤層の形成において、硬化剤として、A10を9質量部、A3070を
1質量部用いて、XDIとHDIの重量比(XDI:HDI)を9:1とした以外は、前記実施例1と同様にして連続帯状の積層体を得た。
【0044】
(実施例4)
実施例2の接着剤層の形成において、硬化剤として、A10を6質量部、A3070を
4質量部用いて、主剤と硬化剤の配合比を6:4とした以外は、前記実施例2と同様にして連続帯状の積層体を得た。
【0045】
(比較例1)
実施例1の接着剤層の形成において、硬化剤として、A10を5質量部、A3070を5質量部用いて、XDIとHDIの重量比(XDI:HDI)を5:5とした以外は、前記実施例1と同様にして連続帯状の積層体を得た。
【0046】
(比較例2)
実施例1の接着剤層の形成において、硬化剤として、A10を10質量部用い、A3070を用いなかった以外は、前記実施例1と同様にして連続帯状の積層体を得た。
【0047】
(比較例3)
実施例1の接着剤層の形成において、硬化剤として、A10を用いず、A3070を10質量部用いた以外は、前記実施例1と同様にして連続帯状の積層体を得た。
【0048】
(比較例4)
実施例2の接着剤層の形成において、主剤をA1151の代わりにA310:商品名、三井化学ポリウレタン(株)製(ソフトセグメント(A)とハードセグメント(B)の重量比((A):(B))が100:0)を用いた以外は、前記実施例2と同様にして連続帯状の積層体を得た。
【0049】
(評価結果)
上記、各実施例、及び比較例に対して、以下の点を評価した。その結果を表1に記載する。
(1)エッチング処理後の接着剤層の黄変の有無
下記条件に従って上記連続帯状の積層体に対して、フォトリソグラフィー法を利用したエッチング処理を行った後の、接着剤層の黄変の有無を目視で観察した。
<判定>
・接着剤層が黄変しなかった:○
・接着剤層の黄変は見られたが、程度は軽微:△
・接着剤層が黄変し、顕著:×
(条件1)
上記連続帯状の積層体に対して、フォトリソグラフィー法を利用したエッチングにより、導電性パターン層として、開口部及びライン部とから成る導電性パターン層、当該導電性パターン層の4周を囲繞する外縁部に額縁状のメッシュ非形成の接地用領域を形成した。メッシュ形状は開口部が正方形の正方格子であり、線幅は10μm、開口部の間口幅(正方形の辺長)は300μmとした。当該メッシュ形状を有する長方形領域1つがPDPの1画面分に対応する。斯かる長方形のメッシュ状領域が、連続帯状に30mm間隔で一方に配列し、又当該メッシュ状領域の配列の両側には各々幅15mmの余白部を形成し、周縁部の接地用領域の幅を15mmとした。
エッチングは、具体的には、カラーTVシャドウマスク用の製造ラインを利用して、上記積層体に対して、レジスト形成、マスキングからエッチングまでを一貫して行った。すなわち、上記積層体の導電層面全面に感光性のエッチングレジストを塗布後、所望のメッシュパターンのマスクを密着露光し、現像、硬膜処理、ベーキングして、メッシュのライン部に相当する領域上にはレジスト層が残留し、開口部に相当する領域上にはレジスト層が無い様なパターンにレジスト層を加工した後、塩化第二鉄水溶液に50℃で1分間浸漬し、レジスト層非形成領域の導電層を、エッチング除去してメッシュ状の開口部を形成し、次いで、水洗、レジスト剥離、洗浄、乾燥を順次行った。
(条件2)
条件1において、上記積層体を塩化第二鉄水溶液に50℃で2分間浸漬した以外は、前記条件1と同様にエッチング処理を行った。
(2)ヘイズ
上記の条件1及び2に従って全面エッチング処理を行った積層体の接着剤層面に、DNK製のハンドラミネータであるビンチロールを使用して、巴川製紙所の透明粘着TD−06A/東洋紡績製のPETフィルムA4300(100μm)を貼り合わせた。貼り合わせ後、協真エンジニアリング社製のオートクレーブ処理装置HP−9515OMAを使用して70℃、0.5MPA、30minの条件で透明化処理を行った。透明化処理したサンプルについて、村上色彩研究所のHAZEMETERであるHM−150を使用し、PET面から光源を入射してHAZEを測定した。
<判定>
・5%以下:○
・5%超過:×
(3)画像鮮明度
上記の条件1に従って全面エッチング処理を行った積層体の接着剤層面に、DNK製のハンドラミネータであるビンチロールを使用して、巴川製紙所の透明粘着TD−06A/東洋紡績製のPETフィルムA4300(100μm)を貼り合わせた。貼り合わせ後、協真エンジニアリング社製のオートクレーブ処理装置HP−9515OMAを使用して70℃、0.5MPA、30minの条件で透明化処理を行った。PDP(パイオニア社製、品名「PDP−435HDL(42インチ)」、画像品質(明るさ、及びコントラスト)を「標準」モードに設定)を画像表示し、その前面に各実施例及び比較例の透明化処理したサンプルを全部並べて載置して、目視で当該パターンの白黒の境界が、像のユラギ、歪みが無く明瞭に見えるか否かで、画像鮮明度を判定した。
<判定>
・画像にユラギ、歪みが無く明瞭に見える:○
・画像にユラギ、歪みが見える:×
(4)微小気泡
上記の条件1に従って全面エッチング処理を行った積層体について、キーエンス社製のデジタルマイクロスコープVHX−100Fを使用して、PET面から微小気泡を観察した。
<判定>
・接着剤層中に微小気泡が混入しなかった:○
・接着剤層中に微小気泡が混入した:×
(5)メッシュ密着力
上記の条件1に従って全面エッチング処理を行った積層体について、メッシュ上にセロハン粘着テープを貼り合わせて手で剥離し、剥がれがないか確認した。
<判定>
・セロハンテープが剥がれなかった:○
・セロハンテープが剥がれた:×
【0050】
【表1】

【0051】
(結果のまとめ)
上記表1より、実施例1〜4では、硬化後の接着剤層が黄変せず、当該接着剤層中への微小気泡の混入を抑制することができ、ヘイズの上昇を抑制するとともに、画像鮮明度及び導電性パターン層との密着力を優れたものとすることができた。一方、硬化剤の重量比を本発明で特定した範囲外とした比較例1では、画像が歪み画像鮮明度を低下させた。また、XDIを含む硬化剤のみを用いた比較例2では、接着剤層中への微小気泡の混入が著しく、HDIを含む硬化剤のみを用いた比較例3では、画像が歪み画像鮮明度を低下させた。また、ソフトセグメントのみを含む主剤を用いた比較例4では、各実施例と同条件でエッチングし加工したものであっても、実施例に較べ、黄変が目視で判別可能な程度生じた。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る電磁波遮蔽シートの一例の断面模式図である。
【図2】本発明に用いられる導電性パターン層の一例の平面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 電磁波遮蔽シート
10 透明基材
11 接着剤層
12 導電性パターン(メッシュ)層
13 黒化層
20 プラズマディスプレイパネル
121 メッシュ領域
122 接地用領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の一方の面に、接着剤層を介して、導電性パターン層を備えた電磁波遮蔽シートにおいて、
前記接着剤層が、
(I)主剤として、ソフトセグメント(A)とハードセグメント(B)を含むポリエステルウレタンポリオール、及び
(II)キシリレンジイソシアネート(XDI)とヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を含む硬化剤を含有する接着剤から形成され、且つ、前記主剤において、ソフトセグメント(A)とハードセグメント(B)の重量比((A):(B))が、60:40〜90:10であり、前記キシリレンジイソシアネート(XDI)と前記ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の重量比(XDI:HDI)が、50:50よりも大きく90:10以下であることを特徴とする電磁波遮蔽シート。
【請求項2】
前記ポリエステルウレタンポリオールのガラス転移温度が、20〜40℃の範囲であることを特徴とする、請求項1に記載の電磁波遮蔽シート。
【請求項3】
前記硬化剤の配合量が、前記主剤100重量部に対して、4〜30重量部の範囲であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の電磁波遮蔽シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−290053(P2009−290053A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−142212(P2008−142212)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】