電磁石形アクチュエータ及び平面モータ
【課題】一層構造においても平均推力が大きく、かつ、積層化した場合にも平均推力が増大するという積層効果があり、また、冷却効果がある電磁石形アクチュエータ及びこれを用いた平面モータを提供することにある。
【解決手段】固定子コア1aは、X方向に配列されかつY方向に延在する複数のコアを有し、また、固定子コア1bも、X方向に配列されかつY方向に延在する複数のコア歯を有する。可動子3は固定子コア1a、1b間にX方向に移動可能に設けられ、X方向に交互に配列されている磁性体及び非磁性体を有する。コイル2a、2bは固定子コア1a、1bに対してはY方向かつ可動子3に対してはZ方向の磁束を発生するためのものである。磁束は固定子コアたとえば1aから可動子3を介して固定子コアたとえば1bへ流れる。
【解決手段】固定子コア1aは、X方向に配列されかつY方向に延在する複数のコアを有し、また、固定子コア1bも、X方向に配列されかつY方向に延在する複数のコア歯を有する。可動子3は固定子コア1a、1b間にX方向に移動可能に設けられ、X方向に交互に配列されている磁性体及び非磁性体を有する。コイル2a、2bは固定子コア1a、1bに対してはY方向かつ可動子3に対してはZ方向の磁束を発生するためのものである。磁束は固定子コアたとえば1aから可動子3を介して固定子コアたとえば1bへ流れる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁石(EM)形アクチュエータ及びこれを用いた平面モータに関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石形アクチュエータに比較して、積層化が容易にできる電磁石形アクチュエータは高推力の点で着目されている。
【0003】
図19は第1の従来の電磁石形アクチュエータを示し、(A)は全体斜視図、(B)は部分断面斜視図である(参照:非特許文献1)。図19において、固定子コア101aは、X方向に配列されかつY方向に延在する複数のコア歯を有し、また、固定子コア101bも、X方向に配列されかつY方向に延在する複数のコア歯を有する。この場合、固定子コア101aのコア歯は固定子コア101bのコア歯に対向している。フレームコア101cは固定子コア101a、101bと共に磁路を形成するためのものである。
【0004】
コイル102は固定子コア101a、101bに対してX方向の磁束を発生するためのものである。この場合、コイル102は固定子コア101a、101bに巻回された後に、フレームコア101cが固定子コア101a、101bに結合される。尚、フレームコア101cを固定子コア101a、101bに結合した後に、コイル102を固定子コア101a、101bに巻回してもよい。この結果、上記の磁束はフレームコア101cをもX方向に沿って通過するが、固定子コア101a、101b内の磁束の方向と反対である。つまり、この磁束は、主に、固定子コア101a、101b及びフレームコア101cが形成する磁路を通過する。
【0005】
他方、可動子103は固定子コア101a、101b間にX方向に移動可能に設けられ、X方向に交互に配列されている磁性体及び非磁性体を有する。この場合、可動子103の一部は上記磁路の中に存在する。尚、図19においては、非磁性体は省略してある。
【0006】
図19において、可動子103内の1つの磁性体を通過する磁束は、固定子コア101aの複数の空隙及び可動子103の複数の非磁性体を通過するので、1つの磁気回路の磁気抵抗が大きく、従って、平均推力が減少する。しかし、積層した場合の可動子103内の1つの磁性体を通過する磁束について、積層によるZ方向の空隙による磁気抵抗の増大は相対的に少なく、従って、全体の磁気抵抗が小さくなる分、平均推力の増大に寄与すると考えられる。
【0007】
図20は第2の従来の電磁石形アクチュエータを示し、(A)は全体斜視図、(B)は部分断面斜視図である。この電磁石形アクチュエータはリニアモータの最も一般的なものである。図20において、固定子コア201aは、X方向に配列されかつY方向に延在する複数のコア歯を有し、また、固定子コア201bも、X方向に配列されかつY方向に延在する複数のコア歯を有する。この場合、固定子コア201aのコア歯は固定子コア201bのコア歯に対向している。フレームコア201cは固定子コア201a、201bと共に磁路を形成するためのものであり、たとえば、固定子コア201a、201bと結合している。つまり、磁束は、主に、固定子コア201a、201b及びフレームコア201cが形成する磁路を通過する。
【0008】
コイル202は固定子コア201a、201bに対してZ方向の磁束を発生するためのものである。この場合、コイル202はフレームコア201cに巻回された後に、フレームコア201cが固定子コア201a、201bに結合される。尚、フレームコア201cを固定子コア201a、201bに結合した後に、コイル202をフレームコア201cに巻回してもよい。この結果、上記の磁束はフレームコア201cをもZ方向に沿って通過する。
【0009】
他方、可動子203は固定子コア201a、201b間にX方向に移動可能に設けられ、X方向に交互に配列されている磁性体及び非磁性体を有する。この場合、可動子203の一部は上記磁路の中に存在する。尚、図20においては、非磁性体は省略してある。
【0010】
図20において、可動子203内の1つの磁性体を通過する磁束は、固定子コア201aの複数の空隙及び可動子203の複数の非磁性体をほとんど通過しないので、1つの磁気回路の磁気抵抗が小さく、従って、平均推力の増大に寄与する。しかし、積層した場合の可動子203内の1つの磁性体を通過する磁束について、積層によるZ方向の空隙による磁気抵抗の増大は相対的に大きく、従って、全体の磁気抵抗が大きくなる分、平均推力の増大に対する悪影響を及ぼすと考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図21は図19、図20の電磁石形アクチュエータのほぼ同一条件における平均推力を示すグラフである。すなわち、図20の電磁石形アクチュエータの平均推力は図19の電磁石形アクチュエータの平均推力のほぼ40倍と優れている。これは上述のことから、図20の磁気回路における磁気抵抗は図19の磁気回路における磁気抵抗より小さいことに基づくと考えられる。つまり、第1の従来の電磁石形アクチュエータの平均推力は劣るという課題がある。
【0012】
図22の(A)、(B)は、それぞれ、図19、図20の電磁石形アクチュエータを多層化した場合のほぼ同一条件における平均推力を示すグラフである。すなわち、図22においては、図19、図20における可動子103;203の数を5、10と増加させると共に、固定子コア101a、101b;201a、201bの総数を6、11と増加させた場合の平均推力が示されている。図19の電磁石形アクチュエータを5層、10層化した場合には、図22の(A)に示すごとく、平均推力は3.6倍、4.7倍と増加するのに対し、図20の電磁石形アクチュエータを5層、10層化した場合には、図22の(B)に示すごとく、平均推力は0.032倍、0.027倍と減少する。これは、上述のことから、図20において多層化した場合には、それ以上に磁気回路の磁気抵抗が著しく増大することに基づくと考えられる。つまり、第2の従来の電磁石形アクチュエータには積層効果がないという課題がある。
【0013】
また、図19、図20において、熱源となるコイル102,202が固定子コア101a、101b;201a、201b及び可動子103;203に近接する構造となっているので、第1、第2の従来の電磁石形アクチュエータの冷却効果が小さいという課題もある。
【0014】
さらに、図19、図20においては、可動子103、203がY方向に移動して可動子103、203とコイル102,202との相対的位置の変化量が大きくなった場合には、可動子103、203の近くに配置されているコイル102,202をその相対的位置の変化量に応じて大きくしなければならず、従って、コイル冷却のための冷却装置を設置した場合には、冷却装置も大きくしなければならない。この結果、平面モータへの適用が不可能であるという課題もあった。
【0015】
従って、本発明の目的は、一層構造においても平均推力が大きく、かつ、積層化した場合にも平均推力が増大するという積層効果があり、また、コイルの発熱の悪影響を受けにくい電磁石形アクチュエータ及びこれを用いた平面モータを提供することにある。
【非特許文献1】Pierre-Emmanuel Cavarec, Hamid Ben Ahmed, and Bernard Multon: New Multi-Rod Linear Actuator for Direct-Drive, Wide Mechanical Bandpass Applications, IEEE Transaction on Industrial Applications, vol.39, no.4, (2003), pp.961-967.
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の課題を解決するために本発明に係る電磁石形アクチュエータは、第1の方向(たとえばX方向)に配列されかつ第1の方向にほぼ直交する第2の方向(たとえばY方向)に延在する複数のコア歯を有する第1の固定子コアと、X方向に配列されかつY方向に延在する複数のコア歯を有する第2の固定子コアと、第1の固定子コアと第2の固定子コアとの間にX方向に移動可能に設けられ、X方向に交互に配列された磁性体及び非磁性体を有する可動子と、第1、第2の固定子コアに対してはY方向かつ可動子に対しては第1、第2の方向にほぼ直交する第3方向(たとえばZ方向)の磁束を発生するための少なくとも1つのコイルとを備えている。この結果、磁束は第1、第2の固定子コアの一方から可動子を介して第1、第2の固定子コアの他方へ流れるようになる。
【0017】
また、本発明に係る電磁石形アクチュエータは、第1の方向に2列に対向して配列されかつ第1の方向にほぼ直交する第2の方向に延在する複数のコア歯を有する第1の固定子コアと、第1の方向に2列に対向して配列されかつ第2の方向に延在する複数のコア歯を有する第2の固定子コアとを備えており、この場合、第1の固定子コアのコア歯と第2の固定子コアのコア歯とが交互に配置されている。さらに、可動子は、第1、第2の固定子コアの2列のコア歯の間に第1の方向に移動可能に設けられ、この可動子は第1の方向に交互に配列された磁性体及び非磁性体を有する。さらに、少なくとも1つのコイルは第1、第2の固定子コアに対しては第2の方向かつ可動子に対しては第1、第2の方向にほぼ直交する第3の方向の磁束を発生する。この磁束は第1、第2の固定子コアの一方から可動子を介して前記第1、第2の固定子コアの他方へ流れるようにした。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、可動子数が単数あるいは複数においても、平均推力を大きくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は本発明に係る電磁石形アクチュエータの第1の実施の形態を示し、(A)は全体斜視図、(B)は部分断面斜視図である。図1において、固定子コア1aは、X方向に配列されかつY方向に延在する複数のコアを有し、また、固定子コア1bも、X方向に配列されかつY方向に延在する複数のコア歯を有する。この場合、固定子コア1aのコア歯は固定子コア1bのコア歯に対応している。フレームコア1cは固定子コア1a、1bと共に磁路を形成するためのものである。つまり、磁束は、主に、固定子コア1a、1b及びフレームコア1cが形成する磁路を通過する。
【0020】
コイル2a、2bは固定子コア1a、1bに対してY方向の磁束を発生するためのものである。この場合、コイル2a、2bはフレームコア1cの固定子コア1a、1bの固定部に巻回される。この結果、上記の磁束はフレームコア1cをもY方向に沿って通過するが、固定子コア1a、1b内の磁束の方向と反対である。尚、コイル2a、2bの一方を省略することができ、この場合、電磁石形アクチュエータの小型化ができる。
【0021】
他方、可動子3は固定子コア1a、1b間にX方向に移動可能に設けられ、X方向に交互に配列されている磁性体及び非磁性体を有する。この場合、可動子3の一部は上記磁路の中に存在する。尚、図1においては、非磁性体は省略してある。
【0022】
図1においては、熱源となるコイル2が固定子コア1a、1b及び可動子3から離れている構造となっているので、冷却効果が大きい。
【0023】
図2は図19、図20、図1の電磁石形アクチュエータのほぼ同一条件における平均推力を示すグラフである。すなわち、図1の電磁石形アクチュエータの平均推力は図20の電磁石形アクチュエータの平均推力と同等であり、図19の電磁石形アクチュエータの平均推力のほぼ40倍と優れている。これは、図1の磁気回路における磁気抵抗は図20の磁気回路における磁気抵抗と同様に、図19の磁気回路における磁気抵抗より小さいことに基づくと考えられる。つまり、図3の矢印に示すように、可動子3の1つの磁性体を通過する磁束は、固定子コア1a→フレームコア1c→固定子コア1b→空隙→可動子3→空隙→固定子コア1aのように流れ、1つの磁気回路内の空隙は2つとなるので、1つの磁気回路の磁気抵抗が小さい。従って、図1の電磁石形アクチュエータの平均推力の増大に対する悪影響がなくなる。
【0024】
図4は図1の電磁石形アクチュエータを多層化した場合のほぼ同一条件における平均推力を示すグラフである。すなわち、図4においては、図1における可動子3の数を5、10と増加させると共に、固定子コア1a、1bの数を6、11と増加させた場合の平均推力が示されている。図1の電磁石形アクチュエータを5層、10層化した場合には、平均推力は5.7倍、11倍と増加する。つまり、積層した場合の図1の可動子3内の1つの磁性体を通過する磁束について、積層によるZ方向の空隙による磁気抵抗の増大は相対的に少なく、従って、全体の磁気抵抗が小さくなる分、平均推力の増大に対する悪影響がなくなる。従って、図19の電磁石形アクチュエータと比較しても積層効果がある。
【0025】
このように、図1の電磁石形アクチュエータにおいては、一層構造においても平均推力が大きく、かつ、積層化した場合にも平均推力が増大するという積層効果がある。さらに、冷却効果もある。
【0026】
また、可動子3がY方向に移動して可動子3とコイル2との相対的位置の変化量が大きくなった場合にも、可動子3の近くに配置されているコイル2をその相対的位置の変化量に応じて大きくする必要はないので、コイル冷却のための冷却装置を設置した場合にも、冷却装置は大きくならない。この結果、後述のごとく、平面モータへの適用が可能となる。
【0027】
図5、図6は図1の固定子コア1aのコア歯及びこれに対応する固定子コア1bのコア歯の配置を説明するための断面図、平面図である。図5の対向配置においては、固定子コア1aのコア歯と固定子コア1bのコア歯とが対向して配置されており、また、図6の交互配置においては、固定子コア1aのコア歯と固定子コア1bのコア歯は交互に配置されている。
【0028】
図5においては、可動子3の磁性体を通過する磁束を大きくするために、固定子コア1aのコア歯とこれに対応する固定子コア1bのコア歯との鉛直方向距離、両コア歯の中心点間距離あるいは両コア歯の最短距離を小さくすると、逆に、磁束が可動子3の磁性体を介して通過する可能性が小さくなり、平均推力は減少する。これに対し、図6においては、固定子コア1aのコア歯及びこれに対応する固定子コア1bのコア歯の中心点距離を大きくしても、磁束が可動子3の磁性体を介して通過する可能性が大きく、従って、平均推力の低下を抑止できる。
【0029】
図7は図1の電磁石形アクチュエータを固定子コア1a、1bのコア歯の配置のみを変化した場合のほぼ同一条件における平均推力を示すグラフである。すなわち、図6のごとく、固定子コア1aのコア歯及び固定子コア1bのコア歯を交互に配置すると、平均推力は図5の対向配置に比較して5.2倍と増加する。
【0030】
図8は図1の可動子3の磁性体の配置を説明するための平面図である。図8においては、可動子3の磁性体をY方向に沿って分割してある。これにより、磁束が可動子3の磁性体内をY方向に沿って通過しにくくしている。つまり、図9に示すごとく、可動子3の磁性体内をY方向に沿って通過する推力に寄与しない磁束を抑制すると共に、可動子3の磁性体内のZ方向の推力に寄与する磁束がY方向全体に沿って存在するようになる。
【0031】
図10は図1の電磁石形アクチュエータを可動子3の磁性体の構造のみを変化した場合のほぼ同一条件における平均推力を示すグラフである。すなわち、可動子3の磁性体をY方向に沿って分割すると、特に、起磁力を大きくした場合に、平均推力は増大する。
【0032】
図11は図1の電磁石形アクチュエータの動作を説明するための断面図である。図11の(A)においては、可動子3はX方向のプラス側に移動し、他方、図11の(B)においては、可動子3はX方向のマイナス側に移動する。
【0033】
図12は本発明に係る電磁石形アクチュエータの第2の実施の形態を示し、(A)は全体斜視図、(B)は部分断面斜視図である。図12においては、図1の電磁石形アクチュエータを多層化たとえば5層化してある。すなわち、図12においては、可動子3の数を5と増加させると共に、固定子コア1a、1bの総数を6と増加させてある。この場合の平均推力は、上述のごとく、増加し、図1の電磁石形アクチュエータに比較して積層効果がある。
【0034】
図13は図1、図12の電磁石形アクチュエータの可動子の厚さ特性を示すグラフである。可動子3の厚さが小さい程、可動子質量当りの平均推力が増加することが分る。
【0035】
図14は本発明に係る電磁石形アクチュエータの第3の実施の形態を示し、(A)は全体斜視図、(B)は部分断面斜視図である。図14において、固定子コア1a’は、X方向に2列に対向して配列されかつY方向に延在する複数のコアを有し、また、固定子コア1b’も、X方向に2列に対向して配列されかつY方向に延在する複数のコア歯を有する。この場合、固定子コア1a’のコア歯と固定子コア1b’のコア歯とは交互に配置されている。
【0036】
他方、可動子3’は固定子コア1a、1bの2列のコア歯間にX方向に移動可能に設けられ、X方向に交互に配列されている磁性体及び非磁性体を有する。尚、図14においては、非磁性体は省略してある。
【0037】
図15は図14の固定子コア1a’のコア歯及び固定子コア1b’のコア歯の進行方向磁束型配置を説明するための断面図、平面図である。図15の配置においては、固定子コア1a’の一対のコア歯と固定子コア1b’の一対のコア歯とがX方向に並置されている。
【0038】
図15においては、固定子コア1a’、1b’のコア歯間の距離を大きくしても、磁束が可動子3’の磁性体を介して通過する可能性が大きく、従って、平均推力の低下を抑止できる。すなわち、図16に示すように、交互固定子コアの場合、固定子コア1a、1bの距離Mを4mmから12mmに大きくすると、平均推力は減少する。これに対し、進行方向磁束型固定子コアの場合、固定子コア1a’、1b’のコア歯間距離Mを12mmとした場合でも、平均推力の低下は小さい。
【0039】
尚、図15の電磁石形アクチュエータにおいても、図8に示す可動子3’の磁性体の分割、図12に示す積層構造を適用できる。
【0040】
図17はたとえば図12の電磁石形アクチュエータを用いた平面モータを示す斜視図である。すなわち、図17の(A)に示すごとく、単一のテーブル20の四方には4つの電磁石形アクチュエータ21,22,23,24が設けられている。各電磁石形アクチュエータ21,22,23,24は、上述のごとく、その横方向の可動範囲が広いので、電磁石形アクチュエータ21,22によりテーブル20をX方向に移動でき、かつ、電磁石形アクチュエータ23,24によりテーブル20をY方向に移動できる。尚、図17の(B)に示すごとく、各電磁石形アクチュエータ21,22,23,24を複数の電磁石形アクチュエータで構成してもよい。
【0041】
図18は本発明に係る他の平面モータを示す図である。図18においては、単一のテーブル30のX方向移動に対して、固定子コア1’Xa、1’Xb、フレームコア1’Xc、コイル2’Xa、2’Xb、X方向用可動子3’XよりなるX方向側フレクシブル電磁石形アクチュエータが設けられ、また、テーブル30のY方向移動に対して、固定子コア1’Ya、1’Yb、フレームコア1’Yc、コイル2’Ya、2’Yb、Y方向用可動子3’YよりなるY方向側フレクシブル電磁石形アクチュエータが設けられている。X方向用可動子3’Xはテーブル30のX方向の両端に固定され、また、Y方向用可動子3’Yはテーブル30のY方向の両端に固定されている。この場合、X方向用可動子3’X及びY方向用可動子3’Yは広い可動範囲を有している。このように、2組のアクチュエータを設け、1組のアクチュエータを1方向駆動用のリニアモータとして利用する場合、推力発生部分を可動範囲以上にすることができ、この結果、平面モータ全体をコンパクトにすると共に、推力を発生する部分を増加させて平均推力を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る電磁石形アクチュエータの第1の実施の形態を示し、(A)は全体斜視図、(B)は部分断面斜視図である。
【図2】図1の電磁石形アクチュエータの平均推力を示すグラフである。
【図3】図1の電磁石形アクチュエータの磁束を説明するための図である。
【図4】図1の電磁石形アクチュエータを多層化した場合の平均推力を示すグラフである。
【図5】図1の固定子コアのコア歯の対向配置を説明する図であって、(A)は断面図、(B)は平面図である。
【図6】図1の固定子コアのコア歯の交互配置を説明する図であって、(A)は断面図、(B)は平面図である。
【図7】図1の電磁石形アクチュエータのコア歯の対向配置及び交互配置の場合の平均推力を示すグラフである。
【図8】図1の電磁石形アクチュエータの可動子の分割配置を説明するための平面図である。
【図9】図8の電磁石形アクチュエータの磁束を説明するための図である。
【図10】図1の電磁石形アクチュエータの可動子を分割した場合の平均推力を示すグラフである。
【図11】図1の電磁石形アクチュエータの動作を説明するための断面図である。
【図12】本発明に係る電磁石形アクチュエータの第2の実施の形態を示し、(A)は全体斜視図、(B)は部分断面斜視図である。
【図13】図1、図12の電磁石形アクチュエータの可動子の厚さ特性を示すグラフである。
【図14】本発明に係る電磁石形アクチュエータの第3の実施の形態を示し、(A)は全体斜視図、(B)は部分断面斜視図である。
【図15】図16の固定子コアのコア歯の対向配置を説明する図であって、(A)は断面図、(B)は平面図である。
【図16】図14の電磁石形アクチュエータの平均推力を示すグラフである。
【図17】本発明に係る平面モータを示す斜視図である。
【図18】本発明に係る他の平面モータを示す図である。
【図19】第1の従来の電磁石形アクチュエータを示し、(A)は全体斜視図、(B)は部分断面斜視図である。
【図20】第2の従来の電磁石形アクチュエータを示し、(A)は全体斜視図、(B)は部分断面斜視図である。
【図21】図19、図20の電磁石形アクチュエータの平均推力を示すグラフである。
【図22】図19、図20の電磁石形アクチュエータを多層化した場合の平均推力を示すグラフである。
【符号の説明】
【0043】
1a、1b、1a’、1b’、101a、101b、201a、201b…固定子コア
1c、101c、201c…フレームコア
2a、2b、102、202…コイル
3、3’、103、203…可動子
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁石(EM)形アクチュエータ及びこれを用いた平面モータに関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石形アクチュエータに比較して、積層化が容易にできる電磁石形アクチュエータは高推力の点で着目されている。
【0003】
図19は第1の従来の電磁石形アクチュエータを示し、(A)は全体斜視図、(B)は部分断面斜視図である(参照:非特許文献1)。図19において、固定子コア101aは、X方向に配列されかつY方向に延在する複数のコア歯を有し、また、固定子コア101bも、X方向に配列されかつY方向に延在する複数のコア歯を有する。この場合、固定子コア101aのコア歯は固定子コア101bのコア歯に対向している。フレームコア101cは固定子コア101a、101bと共に磁路を形成するためのものである。
【0004】
コイル102は固定子コア101a、101bに対してX方向の磁束を発生するためのものである。この場合、コイル102は固定子コア101a、101bに巻回された後に、フレームコア101cが固定子コア101a、101bに結合される。尚、フレームコア101cを固定子コア101a、101bに結合した後に、コイル102を固定子コア101a、101bに巻回してもよい。この結果、上記の磁束はフレームコア101cをもX方向に沿って通過するが、固定子コア101a、101b内の磁束の方向と反対である。つまり、この磁束は、主に、固定子コア101a、101b及びフレームコア101cが形成する磁路を通過する。
【0005】
他方、可動子103は固定子コア101a、101b間にX方向に移動可能に設けられ、X方向に交互に配列されている磁性体及び非磁性体を有する。この場合、可動子103の一部は上記磁路の中に存在する。尚、図19においては、非磁性体は省略してある。
【0006】
図19において、可動子103内の1つの磁性体を通過する磁束は、固定子コア101aの複数の空隙及び可動子103の複数の非磁性体を通過するので、1つの磁気回路の磁気抵抗が大きく、従って、平均推力が減少する。しかし、積層した場合の可動子103内の1つの磁性体を通過する磁束について、積層によるZ方向の空隙による磁気抵抗の増大は相対的に少なく、従って、全体の磁気抵抗が小さくなる分、平均推力の増大に寄与すると考えられる。
【0007】
図20は第2の従来の電磁石形アクチュエータを示し、(A)は全体斜視図、(B)は部分断面斜視図である。この電磁石形アクチュエータはリニアモータの最も一般的なものである。図20において、固定子コア201aは、X方向に配列されかつY方向に延在する複数のコア歯を有し、また、固定子コア201bも、X方向に配列されかつY方向に延在する複数のコア歯を有する。この場合、固定子コア201aのコア歯は固定子コア201bのコア歯に対向している。フレームコア201cは固定子コア201a、201bと共に磁路を形成するためのものであり、たとえば、固定子コア201a、201bと結合している。つまり、磁束は、主に、固定子コア201a、201b及びフレームコア201cが形成する磁路を通過する。
【0008】
コイル202は固定子コア201a、201bに対してZ方向の磁束を発生するためのものである。この場合、コイル202はフレームコア201cに巻回された後に、フレームコア201cが固定子コア201a、201bに結合される。尚、フレームコア201cを固定子コア201a、201bに結合した後に、コイル202をフレームコア201cに巻回してもよい。この結果、上記の磁束はフレームコア201cをもZ方向に沿って通過する。
【0009】
他方、可動子203は固定子コア201a、201b間にX方向に移動可能に設けられ、X方向に交互に配列されている磁性体及び非磁性体を有する。この場合、可動子203の一部は上記磁路の中に存在する。尚、図20においては、非磁性体は省略してある。
【0010】
図20において、可動子203内の1つの磁性体を通過する磁束は、固定子コア201aの複数の空隙及び可動子203の複数の非磁性体をほとんど通過しないので、1つの磁気回路の磁気抵抗が小さく、従って、平均推力の増大に寄与する。しかし、積層した場合の可動子203内の1つの磁性体を通過する磁束について、積層によるZ方向の空隙による磁気抵抗の増大は相対的に大きく、従って、全体の磁気抵抗が大きくなる分、平均推力の増大に対する悪影響を及ぼすと考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図21は図19、図20の電磁石形アクチュエータのほぼ同一条件における平均推力を示すグラフである。すなわち、図20の電磁石形アクチュエータの平均推力は図19の電磁石形アクチュエータの平均推力のほぼ40倍と優れている。これは上述のことから、図20の磁気回路における磁気抵抗は図19の磁気回路における磁気抵抗より小さいことに基づくと考えられる。つまり、第1の従来の電磁石形アクチュエータの平均推力は劣るという課題がある。
【0012】
図22の(A)、(B)は、それぞれ、図19、図20の電磁石形アクチュエータを多層化した場合のほぼ同一条件における平均推力を示すグラフである。すなわち、図22においては、図19、図20における可動子103;203の数を5、10と増加させると共に、固定子コア101a、101b;201a、201bの総数を6、11と増加させた場合の平均推力が示されている。図19の電磁石形アクチュエータを5層、10層化した場合には、図22の(A)に示すごとく、平均推力は3.6倍、4.7倍と増加するのに対し、図20の電磁石形アクチュエータを5層、10層化した場合には、図22の(B)に示すごとく、平均推力は0.032倍、0.027倍と減少する。これは、上述のことから、図20において多層化した場合には、それ以上に磁気回路の磁気抵抗が著しく増大することに基づくと考えられる。つまり、第2の従来の電磁石形アクチュエータには積層効果がないという課題がある。
【0013】
また、図19、図20において、熱源となるコイル102,202が固定子コア101a、101b;201a、201b及び可動子103;203に近接する構造となっているので、第1、第2の従来の電磁石形アクチュエータの冷却効果が小さいという課題もある。
【0014】
さらに、図19、図20においては、可動子103、203がY方向に移動して可動子103、203とコイル102,202との相対的位置の変化量が大きくなった場合には、可動子103、203の近くに配置されているコイル102,202をその相対的位置の変化量に応じて大きくしなければならず、従って、コイル冷却のための冷却装置を設置した場合には、冷却装置も大きくしなければならない。この結果、平面モータへの適用が不可能であるという課題もあった。
【0015】
従って、本発明の目的は、一層構造においても平均推力が大きく、かつ、積層化した場合にも平均推力が増大するという積層効果があり、また、コイルの発熱の悪影響を受けにくい電磁石形アクチュエータ及びこれを用いた平面モータを提供することにある。
【非特許文献1】Pierre-Emmanuel Cavarec, Hamid Ben Ahmed, and Bernard Multon: New Multi-Rod Linear Actuator for Direct-Drive, Wide Mechanical Bandpass Applications, IEEE Transaction on Industrial Applications, vol.39, no.4, (2003), pp.961-967.
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述の課題を解決するために本発明に係る電磁石形アクチュエータは、第1の方向(たとえばX方向)に配列されかつ第1の方向にほぼ直交する第2の方向(たとえばY方向)に延在する複数のコア歯を有する第1の固定子コアと、X方向に配列されかつY方向に延在する複数のコア歯を有する第2の固定子コアと、第1の固定子コアと第2の固定子コアとの間にX方向に移動可能に設けられ、X方向に交互に配列された磁性体及び非磁性体を有する可動子と、第1、第2の固定子コアに対してはY方向かつ可動子に対しては第1、第2の方向にほぼ直交する第3方向(たとえばZ方向)の磁束を発生するための少なくとも1つのコイルとを備えている。この結果、磁束は第1、第2の固定子コアの一方から可動子を介して第1、第2の固定子コアの他方へ流れるようになる。
【0017】
また、本発明に係る電磁石形アクチュエータは、第1の方向に2列に対向して配列されかつ第1の方向にほぼ直交する第2の方向に延在する複数のコア歯を有する第1の固定子コアと、第1の方向に2列に対向して配列されかつ第2の方向に延在する複数のコア歯を有する第2の固定子コアとを備えており、この場合、第1の固定子コアのコア歯と第2の固定子コアのコア歯とが交互に配置されている。さらに、可動子は、第1、第2の固定子コアの2列のコア歯の間に第1の方向に移動可能に設けられ、この可動子は第1の方向に交互に配列された磁性体及び非磁性体を有する。さらに、少なくとも1つのコイルは第1、第2の固定子コアに対しては第2の方向かつ可動子に対しては第1、第2の方向にほぼ直交する第3の方向の磁束を発生する。この磁束は第1、第2の固定子コアの一方から可動子を介して前記第1、第2の固定子コアの他方へ流れるようにした。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、可動子数が単数あるいは複数においても、平均推力を大きくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は本発明に係る電磁石形アクチュエータの第1の実施の形態を示し、(A)は全体斜視図、(B)は部分断面斜視図である。図1において、固定子コア1aは、X方向に配列されかつY方向に延在する複数のコアを有し、また、固定子コア1bも、X方向に配列されかつY方向に延在する複数のコア歯を有する。この場合、固定子コア1aのコア歯は固定子コア1bのコア歯に対応している。フレームコア1cは固定子コア1a、1bと共に磁路を形成するためのものである。つまり、磁束は、主に、固定子コア1a、1b及びフレームコア1cが形成する磁路を通過する。
【0020】
コイル2a、2bは固定子コア1a、1bに対してY方向の磁束を発生するためのものである。この場合、コイル2a、2bはフレームコア1cの固定子コア1a、1bの固定部に巻回される。この結果、上記の磁束はフレームコア1cをもY方向に沿って通過するが、固定子コア1a、1b内の磁束の方向と反対である。尚、コイル2a、2bの一方を省略することができ、この場合、電磁石形アクチュエータの小型化ができる。
【0021】
他方、可動子3は固定子コア1a、1b間にX方向に移動可能に設けられ、X方向に交互に配列されている磁性体及び非磁性体を有する。この場合、可動子3の一部は上記磁路の中に存在する。尚、図1においては、非磁性体は省略してある。
【0022】
図1においては、熱源となるコイル2が固定子コア1a、1b及び可動子3から離れている構造となっているので、冷却効果が大きい。
【0023】
図2は図19、図20、図1の電磁石形アクチュエータのほぼ同一条件における平均推力を示すグラフである。すなわち、図1の電磁石形アクチュエータの平均推力は図20の電磁石形アクチュエータの平均推力と同等であり、図19の電磁石形アクチュエータの平均推力のほぼ40倍と優れている。これは、図1の磁気回路における磁気抵抗は図20の磁気回路における磁気抵抗と同様に、図19の磁気回路における磁気抵抗より小さいことに基づくと考えられる。つまり、図3の矢印に示すように、可動子3の1つの磁性体を通過する磁束は、固定子コア1a→フレームコア1c→固定子コア1b→空隙→可動子3→空隙→固定子コア1aのように流れ、1つの磁気回路内の空隙は2つとなるので、1つの磁気回路の磁気抵抗が小さい。従って、図1の電磁石形アクチュエータの平均推力の増大に対する悪影響がなくなる。
【0024】
図4は図1の電磁石形アクチュエータを多層化した場合のほぼ同一条件における平均推力を示すグラフである。すなわち、図4においては、図1における可動子3の数を5、10と増加させると共に、固定子コア1a、1bの数を6、11と増加させた場合の平均推力が示されている。図1の電磁石形アクチュエータを5層、10層化した場合には、平均推力は5.7倍、11倍と増加する。つまり、積層した場合の図1の可動子3内の1つの磁性体を通過する磁束について、積層によるZ方向の空隙による磁気抵抗の増大は相対的に少なく、従って、全体の磁気抵抗が小さくなる分、平均推力の増大に対する悪影響がなくなる。従って、図19の電磁石形アクチュエータと比較しても積層効果がある。
【0025】
このように、図1の電磁石形アクチュエータにおいては、一層構造においても平均推力が大きく、かつ、積層化した場合にも平均推力が増大するという積層効果がある。さらに、冷却効果もある。
【0026】
また、可動子3がY方向に移動して可動子3とコイル2との相対的位置の変化量が大きくなった場合にも、可動子3の近くに配置されているコイル2をその相対的位置の変化量に応じて大きくする必要はないので、コイル冷却のための冷却装置を設置した場合にも、冷却装置は大きくならない。この結果、後述のごとく、平面モータへの適用が可能となる。
【0027】
図5、図6は図1の固定子コア1aのコア歯及びこれに対応する固定子コア1bのコア歯の配置を説明するための断面図、平面図である。図5の対向配置においては、固定子コア1aのコア歯と固定子コア1bのコア歯とが対向して配置されており、また、図6の交互配置においては、固定子コア1aのコア歯と固定子コア1bのコア歯は交互に配置されている。
【0028】
図5においては、可動子3の磁性体を通過する磁束を大きくするために、固定子コア1aのコア歯とこれに対応する固定子コア1bのコア歯との鉛直方向距離、両コア歯の中心点間距離あるいは両コア歯の最短距離を小さくすると、逆に、磁束が可動子3の磁性体を介して通過する可能性が小さくなり、平均推力は減少する。これに対し、図6においては、固定子コア1aのコア歯及びこれに対応する固定子コア1bのコア歯の中心点距離を大きくしても、磁束が可動子3の磁性体を介して通過する可能性が大きく、従って、平均推力の低下を抑止できる。
【0029】
図7は図1の電磁石形アクチュエータを固定子コア1a、1bのコア歯の配置のみを変化した場合のほぼ同一条件における平均推力を示すグラフである。すなわち、図6のごとく、固定子コア1aのコア歯及び固定子コア1bのコア歯を交互に配置すると、平均推力は図5の対向配置に比較して5.2倍と増加する。
【0030】
図8は図1の可動子3の磁性体の配置を説明するための平面図である。図8においては、可動子3の磁性体をY方向に沿って分割してある。これにより、磁束が可動子3の磁性体内をY方向に沿って通過しにくくしている。つまり、図9に示すごとく、可動子3の磁性体内をY方向に沿って通過する推力に寄与しない磁束を抑制すると共に、可動子3の磁性体内のZ方向の推力に寄与する磁束がY方向全体に沿って存在するようになる。
【0031】
図10は図1の電磁石形アクチュエータを可動子3の磁性体の構造のみを変化した場合のほぼ同一条件における平均推力を示すグラフである。すなわち、可動子3の磁性体をY方向に沿って分割すると、特に、起磁力を大きくした場合に、平均推力は増大する。
【0032】
図11は図1の電磁石形アクチュエータの動作を説明するための断面図である。図11の(A)においては、可動子3はX方向のプラス側に移動し、他方、図11の(B)においては、可動子3はX方向のマイナス側に移動する。
【0033】
図12は本発明に係る電磁石形アクチュエータの第2の実施の形態を示し、(A)は全体斜視図、(B)は部分断面斜視図である。図12においては、図1の電磁石形アクチュエータを多層化たとえば5層化してある。すなわち、図12においては、可動子3の数を5と増加させると共に、固定子コア1a、1bの総数を6と増加させてある。この場合の平均推力は、上述のごとく、増加し、図1の電磁石形アクチュエータに比較して積層効果がある。
【0034】
図13は図1、図12の電磁石形アクチュエータの可動子の厚さ特性を示すグラフである。可動子3の厚さが小さい程、可動子質量当りの平均推力が増加することが分る。
【0035】
図14は本発明に係る電磁石形アクチュエータの第3の実施の形態を示し、(A)は全体斜視図、(B)は部分断面斜視図である。図14において、固定子コア1a’は、X方向に2列に対向して配列されかつY方向に延在する複数のコアを有し、また、固定子コア1b’も、X方向に2列に対向して配列されかつY方向に延在する複数のコア歯を有する。この場合、固定子コア1a’のコア歯と固定子コア1b’のコア歯とは交互に配置されている。
【0036】
他方、可動子3’は固定子コア1a、1bの2列のコア歯間にX方向に移動可能に設けられ、X方向に交互に配列されている磁性体及び非磁性体を有する。尚、図14においては、非磁性体は省略してある。
【0037】
図15は図14の固定子コア1a’のコア歯及び固定子コア1b’のコア歯の進行方向磁束型配置を説明するための断面図、平面図である。図15の配置においては、固定子コア1a’の一対のコア歯と固定子コア1b’の一対のコア歯とがX方向に並置されている。
【0038】
図15においては、固定子コア1a’、1b’のコア歯間の距離を大きくしても、磁束が可動子3’の磁性体を介して通過する可能性が大きく、従って、平均推力の低下を抑止できる。すなわち、図16に示すように、交互固定子コアの場合、固定子コア1a、1bの距離Mを4mmから12mmに大きくすると、平均推力は減少する。これに対し、進行方向磁束型固定子コアの場合、固定子コア1a’、1b’のコア歯間距離Mを12mmとした場合でも、平均推力の低下は小さい。
【0039】
尚、図15の電磁石形アクチュエータにおいても、図8に示す可動子3’の磁性体の分割、図12に示す積層構造を適用できる。
【0040】
図17はたとえば図12の電磁石形アクチュエータを用いた平面モータを示す斜視図である。すなわち、図17の(A)に示すごとく、単一のテーブル20の四方には4つの電磁石形アクチュエータ21,22,23,24が設けられている。各電磁石形アクチュエータ21,22,23,24は、上述のごとく、その横方向の可動範囲が広いので、電磁石形アクチュエータ21,22によりテーブル20をX方向に移動でき、かつ、電磁石形アクチュエータ23,24によりテーブル20をY方向に移動できる。尚、図17の(B)に示すごとく、各電磁石形アクチュエータ21,22,23,24を複数の電磁石形アクチュエータで構成してもよい。
【0041】
図18は本発明に係る他の平面モータを示す図である。図18においては、単一のテーブル30のX方向移動に対して、固定子コア1’Xa、1’Xb、フレームコア1’Xc、コイル2’Xa、2’Xb、X方向用可動子3’XよりなるX方向側フレクシブル電磁石形アクチュエータが設けられ、また、テーブル30のY方向移動に対して、固定子コア1’Ya、1’Yb、フレームコア1’Yc、コイル2’Ya、2’Yb、Y方向用可動子3’YよりなるY方向側フレクシブル電磁石形アクチュエータが設けられている。X方向用可動子3’Xはテーブル30のX方向の両端に固定され、また、Y方向用可動子3’Yはテーブル30のY方向の両端に固定されている。この場合、X方向用可動子3’X及びY方向用可動子3’Yは広い可動範囲を有している。このように、2組のアクチュエータを設け、1組のアクチュエータを1方向駆動用のリニアモータとして利用する場合、推力発生部分を可動範囲以上にすることができ、この結果、平面モータ全体をコンパクトにすると共に、推力を発生する部分を増加させて平均推力を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る電磁石形アクチュエータの第1の実施の形態を示し、(A)は全体斜視図、(B)は部分断面斜視図である。
【図2】図1の電磁石形アクチュエータの平均推力を示すグラフである。
【図3】図1の電磁石形アクチュエータの磁束を説明するための図である。
【図4】図1の電磁石形アクチュエータを多層化した場合の平均推力を示すグラフである。
【図5】図1の固定子コアのコア歯の対向配置を説明する図であって、(A)は断面図、(B)は平面図である。
【図6】図1の固定子コアのコア歯の交互配置を説明する図であって、(A)は断面図、(B)は平面図である。
【図7】図1の電磁石形アクチュエータのコア歯の対向配置及び交互配置の場合の平均推力を示すグラフである。
【図8】図1の電磁石形アクチュエータの可動子の分割配置を説明するための平面図である。
【図9】図8の電磁石形アクチュエータの磁束を説明するための図である。
【図10】図1の電磁石形アクチュエータの可動子を分割した場合の平均推力を示すグラフである。
【図11】図1の電磁石形アクチュエータの動作を説明するための断面図である。
【図12】本発明に係る電磁石形アクチュエータの第2の実施の形態を示し、(A)は全体斜視図、(B)は部分断面斜視図である。
【図13】図1、図12の電磁石形アクチュエータの可動子の厚さ特性を示すグラフである。
【図14】本発明に係る電磁石形アクチュエータの第3の実施の形態を示し、(A)は全体斜視図、(B)は部分断面斜視図である。
【図15】図16の固定子コアのコア歯の対向配置を説明する図であって、(A)は断面図、(B)は平面図である。
【図16】図14の電磁石形アクチュエータの平均推力を示すグラフである。
【図17】本発明に係る平面モータを示す斜視図である。
【図18】本発明に係る他の平面モータを示す図である。
【図19】第1の従来の電磁石形アクチュエータを示し、(A)は全体斜視図、(B)は部分断面斜視図である。
【図20】第2の従来の電磁石形アクチュエータを示し、(A)は全体斜視図、(B)は部分断面斜視図である。
【図21】図19、図20の電磁石形アクチュエータの平均推力を示すグラフである。
【図22】図19、図20の電磁石形アクチュエータを多層化した場合の平均推力を示すグラフである。
【符号の説明】
【0043】
1a、1b、1a’、1b’、101a、101b、201a、201b…固定子コア
1c、101c、201c…フレームコア
2a、2b、102、202…コイル
3、3’、103、203…可動子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に配列されかつ該第1の方向にほぼ直交する第2の方向に延在する複数のコア歯を有する第1の固定子コア(1a)と、
前記第1の方向に配列されかつ前記第2の方向に延在する複数のコア歯を有する第2の固定子コア(1b)と、
前記第1の固定子コアと前記第2の固定子コアとの間に前記第1の方向に移動可能に設けられ、前記第1の方向に交互に配列された磁性体及び非磁性体を有する可動子(3)と、
前記第1、第2の固定子コアに対しては前記第2の方向かつ前記可動子に対しては前記第1、第2の方向にほぼ直交する第3の方向の磁束を発生するための少なくとも1つのコイル(2a,2b)と
を具備し、
前記磁束は前記第1、第2の固定子コアの一方から前記可動子を介して前記第1、第2の固定子コアの他方へ流れるようにした電磁石形アクチュエータ。
【請求項2】
前記第1の固定子コアの各コア歯と前記第2の固定子コアの各コア歯とが交互に配置されている請求項1に記載の電磁石形アクチュエータ。
【請求項3】
前記可動子の磁性体は前記第2の方向に沿って分割されている請求項1に記載の電磁石形アクチュエータ。
【請求項4】
前記第1、第2の固定子コア及び前記可動子を、それぞれ、複数設け、
前記第3の方向に沿って前記第1、第2の固定子コアを交互に配列し、
前記各可動子を前記第1、第2の固定子コアの間に移動可能に設けられた請求項1に記載の電磁石形アクチュエータ。
【請求項5】
前記複数の第1の固定子コアは第1のコアに接続され、前記複数の第2の固定子コアは第2のコアに接続されている請求項4に記載の電磁石形アクチュエータ。
【請求項6】
前記コイルは前記第1、第2のコアの少なくとも1つに巻回されている請求項5に記載の電磁石形アクチュエータ。
【請求項7】
テーブル(20)と、
該テーブルの周囲に固定された少なくとも4つの可動子と
を具備し、
該各可動子は請求項1,2,3,4,5もしくは6に記載の電磁石形アクチュエータの可動子である平面モータ。
【請求項8】
前記電磁石形アクチュエータのうち対向する2つを結合した請求項7に記載の平面モータ。
【請求項9】
テーブル(30)と、
該テーブルの第1の方向の両端に固定された第1の可動子と、
前記テーブルの前記第1の方向にほぼ直交する第2の方向の両端に固定された第2の可動子と
を具備し、
前記各第1、第2の可動子は請求項1,2,3,4,5もしくは6に記載の電磁石形アクチュエータの可動子である平面モータ。
【請求項10】
前記電磁石形アクチュエータはフレキシブルである請求項9に記載の平面モータ。
【請求項11】
第1の方向に2列に対向して配列されかつ該第1の方向にほぼ直交する第2の方向に延在する複数のコア歯を有する第1の固定子コア(1a’)と、
前記第1の方向に2列に対向して配列されかつ前記第2の方向に延在する複数のコア歯を有する第2の固定子コア(1b’)と
を具備し、前記第1の固定子コアのコア歯と前記第2の固定子コアのコア歯とが交互に配置され、
さらに、
前記第1、第2の固定子コアの2列のコア歯の間に前記第1の方向に移動可能に設けられ、前記第1の方向に交互に配列された磁性体及び非磁性体を有する可動子(3)と、
前記第1、第2の固定子コアに対しては前記第2の方向かつ前記可動子に対しては前記第1、第2の方向にほぼ直交する第3の方向の磁束を発生するための少なくとも1つのコイル(2a,2b)と
を具備し、前記磁束は前記第1、第2の固定子コアの一方から前記可動子を介して前記第1、第2の固定子コアの他方へ流れるようにした電磁石形アクチュエータ。
【請求項12】
前記可動子の磁性体の幅は前記第1、第2の固定子コアの隣接するコア歯に同時に対向し得るように設定される請求項11に記載の電磁石形アクチュエータ。
【請求項13】
前記可動子の磁性体は前記第2の方向に沿って分割されている請求項11に記載の電磁石形アクチュエータ。
【請求項14】
前記第1、第2の固定子コア及び前記可動子を、前記第3の方向に沿って、それぞれ、複数設け、
前記各可動子を前記第1、第2の固定子コアの2列のコア歯の間に移動可能に設けられた請求項11に記載の電磁石形アクチュエータ。
【請求項15】
前記複数の第1の固定子コアは第1のコアに接続され、前記複数の第2の固定子コアは第2のコアに接続されている請求項14に記載の電磁石形アクチュエータ。
【請求項16】
前記コイルは前記第1、第2のコアの少なくとも1つに巻回されている請求項15に記載の電磁石形アクチュエータ。
【請求項17】
テーブル(20)と、
該テーブルの周囲に固定された少なくとも4つの可動子と
を具備し、
該各可動子は請求項11,12,13,14,15もしくは16に記載の電磁石形アクチュエータの可動子である平面モータ。
【請求項18】
前記電磁石形アクチュエータのうち対向する2つを結合した請求項17に記載の平面モータ。
【請求項19】
テーブル(30)と、
該テーブルの第1の方向の両端に固定された第1の可動子と、
前記テーブルの前記第1の方向にほぼ直交する第2の方向の両端に固定された第2の可動子と
を具備し、
前記各第1、第2の可動子は請求項11,12,13,14,15もしくは16に記載の電磁石形アクチュエータの可動子である平面モータ。
【請求項20】
前記電磁石形アクチュエータはフレキシブルである請求項19に記載の平面モータ。
【請求項1】
第1の方向に配列されかつ該第1の方向にほぼ直交する第2の方向に延在する複数のコア歯を有する第1の固定子コア(1a)と、
前記第1の方向に配列されかつ前記第2の方向に延在する複数のコア歯を有する第2の固定子コア(1b)と、
前記第1の固定子コアと前記第2の固定子コアとの間に前記第1の方向に移動可能に設けられ、前記第1の方向に交互に配列された磁性体及び非磁性体を有する可動子(3)と、
前記第1、第2の固定子コアに対しては前記第2の方向かつ前記可動子に対しては前記第1、第2の方向にほぼ直交する第3の方向の磁束を発生するための少なくとも1つのコイル(2a,2b)と
を具備し、
前記磁束は前記第1、第2の固定子コアの一方から前記可動子を介して前記第1、第2の固定子コアの他方へ流れるようにした電磁石形アクチュエータ。
【請求項2】
前記第1の固定子コアの各コア歯と前記第2の固定子コアの各コア歯とが交互に配置されている請求項1に記載の電磁石形アクチュエータ。
【請求項3】
前記可動子の磁性体は前記第2の方向に沿って分割されている請求項1に記載の電磁石形アクチュエータ。
【請求項4】
前記第1、第2の固定子コア及び前記可動子を、それぞれ、複数設け、
前記第3の方向に沿って前記第1、第2の固定子コアを交互に配列し、
前記各可動子を前記第1、第2の固定子コアの間に移動可能に設けられた請求項1に記載の電磁石形アクチュエータ。
【請求項5】
前記複数の第1の固定子コアは第1のコアに接続され、前記複数の第2の固定子コアは第2のコアに接続されている請求項4に記載の電磁石形アクチュエータ。
【請求項6】
前記コイルは前記第1、第2のコアの少なくとも1つに巻回されている請求項5に記載の電磁石形アクチュエータ。
【請求項7】
テーブル(20)と、
該テーブルの周囲に固定された少なくとも4つの可動子と
を具備し、
該各可動子は請求項1,2,3,4,5もしくは6に記載の電磁石形アクチュエータの可動子である平面モータ。
【請求項8】
前記電磁石形アクチュエータのうち対向する2つを結合した請求項7に記載の平面モータ。
【請求項9】
テーブル(30)と、
該テーブルの第1の方向の両端に固定された第1の可動子と、
前記テーブルの前記第1の方向にほぼ直交する第2の方向の両端に固定された第2の可動子と
を具備し、
前記各第1、第2の可動子は請求項1,2,3,4,5もしくは6に記載の電磁石形アクチュエータの可動子である平面モータ。
【請求項10】
前記電磁石形アクチュエータはフレキシブルである請求項9に記載の平面モータ。
【請求項11】
第1の方向に2列に対向して配列されかつ該第1の方向にほぼ直交する第2の方向に延在する複数のコア歯を有する第1の固定子コア(1a’)と、
前記第1の方向に2列に対向して配列されかつ前記第2の方向に延在する複数のコア歯を有する第2の固定子コア(1b’)と
を具備し、前記第1の固定子コアのコア歯と前記第2の固定子コアのコア歯とが交互に配置され、
さらに、
前記第1、第2の固定子コアの2列のコア歯の間に前記第1の方向に移動可能に設けられ、前記第1の方向に交互に配列された磁性体及び非磁性体を有する可動子(3)と、
前記第1、第2の固定子コアに対しては前記第2の方向かつ前記可動子に対しては前記第1、第2の方向にほぼ直交する第3の方向の磁束を発生するための少なくとも1つのコイル(2a,2b)と
を具備し、前記磁束は前記第1、第2の固定子コアの一方から前記可動子を介して前記第1、第2の固定子コアの他方へ流れるようにした電磁石形アクチュエータ。
【請求項12】
前記可動子の磁性体の幅は前記第1、第2の固定子コアの隣接するコア歯に同時に対向し得るように設定される請求項11に記載の電磁石形アクチュエータ。
【請求項13】
前記可動子の磁性体は前記第2の方向に沿って分割されている請求項11に記載の電磁石形アクチュエータ。
【請求項14】
前記第1、第2の固定子コア及び前記可動子を、前記第3の方向に沿って、それぞれ、複数設け、
前記各可動子を前記第1、第2の固定子コアの2列のコア歯の間に移動可能に設けられた請求項11に記載の電磁石形アクチュエータ。
【請求項15】
前記複数の第1の固定子コアは第1のコアに接続され、前記複数の第2の固定子コアは第2のコアに接続されている請求項14に記載の電磁石形アクチュエータ。
【請求項16】
前記コイルは前記第1、第2のコアの少なくとも1つに巻回されている請求項15に記載の電磁石形アクチュエータ。
【請求項17】
テーブル(20)と、
該テーブルの周囲に固定された少なくとも4つの可動子と
を具備し、
該各可動子は請求項11,12,13,14,15もしくは16に記載の電磁石形アクチュエータの可動子である平面モータ。
【請求項18】
前記電磁石形アクチュエータのうち対向する2つを結合した請求項17に記載の平面モータ。
【請求項19】
テーブル(30)と、
該テーブルの第1の方向の両端に固定された第1の可動子と、
前記テーブルの前記第1の方向にほぼ直交する第2の方向の両端に固定された第2の可動子と
を具備し、
前記各第1、第2の可動子は請求項11,12,13,14,15もしくは16に記載の電磁石形アクチュエータの可動子である平面モータ。
【請求項20】
前記電磁石形アクチュエータはフレキシブルである請求項19に記載の平面モータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2009−181995(P2009−181995A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17323(P2008−17323)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】
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