説明

電磁誘導加熱容器、及び電磁誘導加熱調理器

【課題】 本発明は土鍋風の外観のよい電磁誘導加熱容器を提供し、かつ省エネルギーの要求も考慮した電磁誘導加熱容器、及びその電磁誘導加熱容器を内鍋に使用した電磁誘導炊飯器等の電磁誘導加熱調理器を提供することを目的とする。
【解決手段】 電磁誘導加熱容器であって、アーク溶射によって容器本体の外周面に形成された第1の金属層と、上記第1の金属層上にアーク溶射によって形成された第2の金属層と、上記第2の金属層上にセラミック塗装によって形成されたセラミック層と、上記容器本体に形成され、高周波電流による電磁誘導作用を行う磁性体とを有することを特徴とし、更に上記構成の電磁誘導加熱容器を使用する電磁誘導加熱調理器を提供することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電磁誘導加熱容器、及び電磁誘導加熱容器を使用した電磁誘導加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、家庭内電化が進み、オール電化住宅等も注目を集め、例えば従来ガスを使用していたキッチンでもIH(Induction Heating)調理器への移行が進んでいる。このような状況において、電磁誘導加熱が可能な鍋やフライパンが開発されている。
【0003】
また、このような電磁誘導加熱容器では、煮込み料理や、カレーの温め直しなど、焦げ付きを防止する為フッ素樹脂加工が行われている。特許文献1は、調理容器の内面にフッ素樹脂を主成分とする非粘着層をコーティングし、裏面に所定の厚みを有する熱伝導の良い非磁性金属材料からなる均熱層を設けた加熱調理器を提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−99064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の電磁誘導加熱容器では、外周面にアルミニウム(Al)加工が行われており、外観上味気のない鍋である。また、今日地球環境の保護が叫ばれ、省エネルギーの観点から消費電力の小さい電磁誘導加熱容器や電磁誘導加熱調理器の開発も望まれている。
【0006】
そこで、本発明は土鍋風の外観のよい電磁誘導加熱容器を提供し、かつ省エネルギーの要求も考慮した電磁誘導加熱容器、及びその電磁誘導加熱容器を内鍋に使用した電磁誘導炊飯器等の電磁誘導加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は本発明によれば、アーク溶射によって容器本体の外周面に形成された第1の金属層と、前記第1の金属層上にアーク溶射によって形成された第2の金属層と、前記第2の金属層上にセラミック塗装によって形成されたセラミック層と、前記容器本体に形成され、高周波電流による電磁誘導作用を行う磁性体とを有する電磁誘導加熱容器を提供することによって達成できる。
【0008】
また、前記第1の金属層は、例えば層厚0.3〜0.5mmの鉄であり、前記第2の金属層は、例えば層厚30〜50μmのアルミニウムである。
【0009】
上記課題は本発明によれば、アーク溶射によって容器本体の外周面に第1の金属層を形成する第1の金属層形成処理と、前記第1の金属層上にアーク溶射によって第2の金属層を形成する第2の金属層形成処理と、前記第2の金属層上にセラミック塗装を行う処理と、前記容器本体に高周波電流による電磁誘導作用に基づく磁性体を形成する処理とを行う電磁誘導加熱容器の製造方法を提供することによって達成できる。
【0010】
また、前記容器本体の周縁縁部の厚さは、該容器本体の他の部分の厚さより厚い構成である。
【0011】
さらに、前記電磁誘導加熱容器を着脱自在にセットすることが可能な電磁誘導加熱調理器を提供することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は土鍋風の外観の優れた電磁誘導加熱容器を提供し、更に省エネルギーの要求にも対応した電磁誘導加熱容器、及びその電磁誘導加熱容器を内鍋に使用した電磁誘導炊飯器等の電磁誘導加熱調理器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態1の電磁誘導加熱容器の斜視図である。
【図2】実施形態1の電磁誘導加熱容器内の容器本体の断面図である。
【図3】実施形態1の電磁誘導加熱容器内の容器本体の断面図である。
【図4】アーク溶射の構成を説明する図である。
【図5】実施形態2の電磁誘導加熱容器内の容器本体の断面図である。
【図6】実施形態3の電磁誘導加熱調理器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
(実施形態1)
図1は、本例の電磁誘導加熱容器の外観図である。
同図に示す電磁誘導加熱容器1は調理用の鍋を例にして説明するものであり、容器本体2には両側に取手3、4が設けられている。尚、以下の説明では、容器本体2の断面構成を説明する為、取手3、4は省略している。
【0015】
図2は、上記容器本体2の断面構成を示す図であり、容器本体2はアルミニウム(Al)で構成されている。尚、同図に示すように、鉄(Fe)を基材6として、周面にアルミニウム(Al)7をコーティングする構成としてもよい。また、更に焦げ付きを防止する為フッ素樹脂加工8、9が施されている。このフッ素樹脂加工は、例えばフッ素樹脂塗料8を下塗りし、更にPTFE(四フッ化エチレン樹脂(ポリテトラフルオロエチレン))9を上塗りする方法、又はフッ素樹脂塗料を下塗りし、150℃で10分間乾燥させた後、更にPFA(テトラフルオロエチレン)の粉を静電塗装する方法を使用することもできる。尚、フッ素樹脂(PTFE(ポリテトラフルオロエチレン))を1層で構成してもよい。
【0016】
一方、鉄(Fe)の基材6の外周面には、図3に示すように、先ずアルミニウム(Al)層10が形成され、更に鉄(Fe)11、アルミニウム(Al)12、セラミック13の各層が形成されている。ここで、鉄(Fe)11の層は、例えば0.3〜0.5mmであり、アルミニウム(Al)12の層は、例えば30〜50μmであり、セラミック層13は、例えば30μmである。
【0017】
ここで、鉄(Fe)11の金属層の形成は、アーク溶射によって行われる。具体的には、2本の金属ワイヤ間でアーク放電を発生させ、この放電エネルギーによりワイヤを溶融させ、溶融金属を微粉化し、容器本体2の外周面に吹き付け、上記のように、例えば0.3〜0.5mmの金属層を形成する。
【0018】
図4は、アーク溶射機によるアルミニウム(Al)層10へのアーク溶射を説明する図である。基材である容器本体2の外周面とアーク溶射機17のヘッド部を対面して配設し、アーク溶射機17は不図示の移動機構によって矢印方向に移動可能に取り付けられている。
【0019】
アーク溶射機17には、陽極が印加された鉄(Fe)の線材18と、陰極が印加された鉄(Fe)の線材19が使用され、線材18はノズル15を通してアーク部16まで伸び、線材19はノズル14を通してアーク部16まで伸び、アーク部16で電気スパークを発生させ、両線材18、19が溶融される。また、アーク部21にはノズル23を通して圧縮空気が送られ、溶融した金属を微細化し、容器本体2の外周面に溶射される。
【0020】
また、アーク溶射機17のヘッド部は前述のように矢印方向に回動し、容器本体2の外周面に均一な厚さ(例えば、前述の厚さ0.3〜0.5mm)の鉄(Fe)11の層を溶着する。
【0021】
例えば、同図に示すように、アーク溶射機17は矢印a、b方向に移動し、容器本体2の外周面に均一な溶射を行う。
【0022】
尚、アーク溶射機17のヘッド部は、不図示の制御回路によって駆動が制御され、例えばアーク溶射機17の移動速度や移動方向は、予め記憶された情報に基づいて制御され、容器本体2の外周面に均一な溶射を行う。
【0023】
上記鉄(Fe)11の金属層上には、更にアルミニウム(Al)12の層が形成されている。このアルミニウム(Al)12の層も、上記と同様、アーク溶射によって行われ、例えば30〜50μmの層が形成されている。
上記アルミニウム(Al)12の層には、更にセラミック塗装13が行われ、セラミック粒子を含む塗装がアルミニウム(Al)12の層上に行われている。したがって、電磁誘導加熱容器1の外観は、土鍋風であり、外観の優れた電磁誘導加熱容器を得ることができる。
【0024】
また、上記説明ではアーク溶射によって鉄(Fe)11やアルミニウム(Al)12の金属層を形成したが、プラズマ溶射等を使用する構成としてもよい。
(実施形態2)
【0025】
次に、本発明の実施形態2について説明する。尚、本例において、電磁誘導加熱容器1の外観構成は前述の図1と同様であり、容器本体2と蓋3で構成され、容器本体2には両側に取手3、4が設けられている。また、蓋3には持握部5が設けられている。
【0026】
図5は、本例の容器本体20の断面構成を示す図であり、前述と同様、容器本体2はアルミニウム(Al)で構成されている。尚、同図に示すように、鉄(Fe)を基材6として、周面にアルミニウム(Al)7をコーティングする構成としてもよい。また、更に焦げ付き防止のフッ素樹脂加工8、9が施されている。また、フッ素樹脂加工8、9は、前述と同様であり、例えばフッ素樹脂塗料8を下塗りし、更にPTFE(四フッ化エチレン樹脂(ポリテトラフルオロエチレン))9を上塗りする方法等で形成されている。
【0027】
一方、容器本体20の外周面も、鉄(Fe)21、アルミニウム(Al)22、セラミック23の各層で形成されている。また、鉄(Fe)21、アルミニウム(Al)22の各層の形成は前述と同様、アーク溶射が使用されている。
【0028】
本例の容器本体20は、図5に示すように、周縁縁部20aが他の部分20bに比べて厚く形成されている。通常、周縁縁部の厚さは2.0mm程度に加工されているが、本例の容器本体20の周縁縁部20aは、3.0mmに加工されている。したがって、周縁縁部20a以外の、特に容器本体20の側面部20bは、例えば1.3mmの厚さであり、熱効率の優れた構造となっている。すなわち、不図示の磁性体によって加熱された熱が従来より薄い容器本体20を通して内容物に伝達され、効率よく内容物を加熱することができる。
【0029】
また、容器本体20の周縁縁部20aが厚く形成されている為、容器本体20自体の重厚感も増し、省エネルギー及び外観の両面から効果を有する電磁誘導加熱容器を提供することができる。
また、上記説明ではアーク溶射によって鉄(Fe)11やアルミニウム(Al)12の金属層を形成したが、プラズマ溶射等を使用する構成としてもよい。
(実施形態3)
【0030】
次に、本発明の実施形態3について説明する。
本例は上記実施形態1、及び2の構成の電磁誘導加熱容器を内鍋として着脱自在に構成した電磁誘導加熱調理器の発明である。
【0031】
図6は、本実施形態で使用する電磁誘導加熱調理器の構成を示す断面図である。尚、本例は電磁誘導加熱調理器として、電磁誘導加熱炊飯器の例を説明するものである。
電磁誘導加熱炊飯器30は、本体31と蓋部32で構成され、本体30内には前述の容器本体2又は20(電磁誘導加熱容器)がセットされている。また、この容器本体2又は20の下面近傍には電磁誘導加熱用の加熱コイル34が配設されている。加熱コイル34は、スパイラル状に旋回され直列に高周波電源に接続されており、加熱コイル34に高周波電流が供給される構成であり、不図示の制御回路によって駆動制御される。
【0032】
また、加熱コイル34に近接する容器本体2又は20の底面には磁性体35が配設されている。この磁性体35としては、磁性を有する鉄系の材料、例えばステンレス(SUS430)等の材料が使用される。そして、上記加熱コイル34に電流を流すと磁性体35に渦電流が発生し、発熱して容器本体2又は20(電磁誘導加熱容器)を加熱する。
このように構成することにより、前述の省エネルギーに対応した電磁誘導加熱容器1を使用して電気炊飯器30等の電磁誘導加熱調理器を構成することができ、省エネルギーに対応した電磁誘導加熱調理器とすることもできる。特に、近年エコロジー製品への要望も高く、良いイメージの電磁誘導加熱調理器を提供することが可能となる。
【0033】
尚、上記実施形態の説明では、本発明の電磁誘導加熱調理器1として電磁誘導加熱炊飯器の例で説明したが、本発明は電磁誘導加熱炊飯器に限らず電磁誘導加熱方式を採用する調理器全てに適応できるものである。
また、金属層として、銅(Cu)や、銅の合金を使用することもでき、更に鉄の合金を使用することもできる。
【符号の説明】
【0034】
1・・・電磁誘導加熱容器
2・・・容器本体
3、4・・取手
5・・・持握部
6・・・基材
8、9・・フッ素樹脂加工
10・・アルミニウム(Al)層
11・・鉄(Fe)11
12・・アルミニウム(Al)
13・・セラミック
14、15・・ノズル
16・・アーク部
17・・アーク溶射機
18、19・・線材
20・・容器本体
20a・・周縁縁部
20b・・側面部
23・・ノズル
30・・電磁誘導加熱炊飯器
31・・本体
32・・蓋部
34・・加熱コイル
35・・磁性体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーク溶射によって容器本体の外周面に形成された第1の金属層と、
前記第1の金属層上にアーク溶射によって形成された第2の金属層と、
前記第2の金属層上にセラミック塗装によって形成されたセラミック層と、
前記容器本体に形成され、高周波電流による電磁誘導作用を行う磁性体と、
を有することを特徴とする電磁誘導加熱容器。
【請求項2】
前記第1の金属層は、層厚0.3〜0.5mmの鉄であり、前記第2の金属層は、層厚30〜50μmのアルミニウムであることを特徴とする請求項1に記載の電磁誘導加熱容器。
【請求項3】
アーク溶射によって容器本体の外周面に第1の金属層を形成する第1の金属層形成処理と、
前記第1の金属層上にアーク溶射によって第2の金属層を形成する第2の金属層形成処理と、
前記第2の金属層上にセラミック塗装を行う処理と、
前記容器本体に高周波電流による電磁誘導作用に基づく磁性体を形成する処理と、
を行うことを特徴とする電磁誘導加熱容器の製造方法。
【請求項4】
前記第1の金属層は、層厚50mmの鉄であり、前記第2の金属層は、層厚30〜50μmのアルミニウムであることを特徴とする請求項3に記載の電磁誘導加熱容器の製造方法。
【請求項5】
前記容器本体の周縁縁部の厚さは、該容器本体の他の部分の厚さより厚いことを特徴とする請求項1、又2は記載の電磁誘導加熱容器。
【請求項6】
前記容器本体の周縁縁部の厚さは、該容器本体の他の部分の厚さより厚いことを特徴とする請求項3、又4は記載の電磁誘導加熱容器の製造方法。
【請求項7】
前記請求項1乃至6に係る電磁誘導加熱容器を着脱自在にセットすることが可能な電磁誘導加熱調理器。
【請求項8】
前記調理器は、電磁誘導加熱炊飯器であることを特徴とする請求項7に記載の電磁誘導加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−30807(P2011−30807A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180247(P2009−180247)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(508353075)株式会社G.L.S (4)
【出願人】(507152659)
【Fターム(参考)】