説明

電線ストリップ装置

【課題】電線末端の絶縁被覆をストリップに必要な工程時間を短縮できる電線ストリップ装置を提供する。
【解決手段】切断刃2とストリップ刃31,32を前後方向にオフセットして配置するとともに、ストリップした絶縁被覆の屑を吸引する吸引管41,42の先端部分に電線の先端を横方向に受け入れ可能な開口41a,42aを設けたので、電線の先端を吸引管41,42の内部に挿入するため電線をその軸線方向に前後動させる工程を省略できることになり、ストリップ作業に必要な工程時間を短縮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送給された電線を切断するとともに切断した電線末端の絶縁被覆をストリップして芯線を露出させる電線ストリップ装置に関し、より詳しくは、ストリップの際に必要な電線の前後方向の移動量を減少させて工程時間を短縮する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電線末端の芯線を露出させて端子を圧着するために、送給された電線を切断するとともに切断した電線の末端の絶縁被覆をストリップして芯線を露出させ、かつストリップした絶縁被覆の屑を吸引管で吸引して除去する電線ストリップ装置が用いられている。
【0003】
この電線ストリップ装置の全体構造について図12を参照して概説すると、電線送給手段1によって前方(図示下方)に送給された電線Wは、切断刃2によって切断された後、その後側部分W1の前端および前側部分W2の後端がそれぞれ電線保持手段3,4によって保持されつつ、搬送手段5,6によって搬送されてストリップ刃7,8に対向する。
電線保持手段3,4とストリップ刃7,8との協働によってストリップされた絶縁被覆の屑は、図示されないバキューム手段に接続されて負圧が供給されている吸引管によって吸引されて除去される。
そして、 芯線が露出した後側部分W1の前端および前側部分W2の後端は、それぞれ搬送手段5,6によってさらに搬送されて端子圧着機11,12に対向し、それぞれ端子が圧着される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このとき、図12に示した従来の電線ストリップ装置においては、切断刃2およびストリップ刃7,8が、電線Wの送給方向に対して垂直な延びる直線上で一列に並んでいる。
【0005】
このため、切断刃2によって切断された電線Wの後側部分W1および前側部分W2は、図13中に矢印Aで示したように前後方向に移動させて切断刃2から離間させた後、矢印Bで示したように横方向に移動させてストリップ刃7,8にそれぞれ対向させ、次いで図14中に矢印Cで示したように前後動させてその末端部分を吸引管9,10の内部に挿入する必要がある。
そして、ストリップ刃7,8が絶縁被覆に切り込んだ状態で、図15中に矢印Dで示したように電線Wの後側部分W1および前側部分W2をそれぞれ前後動させると、絶縁被覆H1,H2がストリップされて吸引管9,10に吸引されて除去される。
【0006】
すなわち、図12に示した従来の電線ストリップ装置においては、電線Wの後側部分W1および前側部分W2の前後方向の移動量が大きく、電線末端の絶縁被覆をストリップするために必要な工程時間を短縮することが困難となっている。
【0007】
そこで本発明の目的は、上述した従来技術が有する問題点を解消し、電線末端の絶縁被覆をストリップするために必要な工程時間を短縮することができる電線ストリップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための請求項1に記載した手段は、
送給された電線を切断するとともに切断した電線末端の絶縁被覆をストリップして芯線を露出させる電線ストリップ装置であって、
前記電線を切断する切断刃と、
切断した前記電線の末端の絶縁被覆に切り込むストリップ刃と、
前記電線をその軸線方向に前後動させるとともに前記切断刃に対向する位置と前記ストリップ刃に対向する位置との間で前記電線を横方向に移動させる電線移動手段と、
を備え、
前記切断刃が前記電線を切断した後、前記電線移動手段が、ストリップ長に応じた距離だけ前記切断刃から離間するように前記電線をその軸線方向に移動させ、次いで前記電線を前記ストリップ刃に対向する位置へと横方向に移動させたときに、前記電線のうち前記ストリップ刃を切り込ませる箇所が前記ストリップ刃と上下方向に一致するように、前記切断刃に対する前記ストリップ刃の前後方向の位置が定められていることを特徴とする。
【0009】
すなわち、請求項1に記載した電線ストリップ装置においては、従来の装置のように切断刃とストリップ刃とが横方向に一直線に並んでいるのではなく、電線末端の絶縁被覆を除去するために電線を移動させる方向にオフセットして配置されている。
これにより、送給された電線を切断刃によって切断した後、所望のストリップ長に応じた距離だけ切断刃から離間するように電線をその軸線方向に移動させ、次いで切断刃に対向する位置からストリップ刃に対向する位置へと電線の末端部分を横方向に移動させると、電線のうちストリップ刃を切り込ませる箇所がストリップ刃と上下方向に一致するので、直ちにストリップ刃を駆動して絶縁被覆に切り込みを入れることができる。
したがって、従来の装置のようにストリップ刃に対向する位置へと電線の末端部分を横方向に移動させた後、ストリップ刃に向かってさらに電線をその軸線方向に移動させる工程が不要となるから、ストリップ作業に必要な工程時間を短縮することができる。
【0010】
また、請求項2に記載した手段は、請求項1に記載の電線ストリップ装置において、 前記切断刃および前記ストリップ刃が、刃駆動手段によって駆動されて上下方向に互いに接離する上刃および下刃をそれぞれ有しており、
前記刃駆動手段は、
前記切断刃の上刃および下刃と前記ストリップ刃の上刃および下刃とが共に上下方向に離間した第1の位置と、
前記切断刃の上刃および下刃が互いに交差して前記電線を切断するが、前記ストリップ刃の上刃および下刃は上下方向に離間して前記電線の末端を横方向に受け入れ可能な第2の位置と、
前記切断刃の上刃および下刃と前記ストリップ刃の上刃および下刃とが共に互いに交差して前記ストリップ刃が前記電線の絶縁被覆に切り込む第3の位置と、
の間で前記切断刃および前記ストリップ刃を一体に上下方向に駆動するように構成されていることを特徴とする。
【0011】
すなわち、請求項2に記載した電線ストリップ装置においては、刃駆動手段が切断刃およびストリップ刃を3つの位置の間で上下動させる。
具体的に説明すると、第1の位置では、切断刃の上刃および下刃とストリップ刃の上刃および下刃が共に上下方向に離間しているので、電線を所定の長さだけ前方に送給することができる。
第2の位置では、切断刃の上刃および下刃が互いに交差して電線を切断するが、ストリップ刃の上刃および下刃が上下方向に離間しているので、切断した電線を切断刃に対向する位置からストリップ刃に対向する位置へと横方向に移動させても電線の末端部分とストリップ刃とが干渉することはない。
第3の位置では、切断刃の上刃および下刃がさらに深く交差するとともに、ストリップ刃の上刃および下刃が互いに交差して電線の絶縁被覆に食い込むので、電線を前後動させることにより電線末端の絶縁被覆をストリップして除去することができる。
これにより、電線を切断する第2の位置から第1の位置へと戻ることなく、第2の位置から直接第3の位置へと進むことができるので、切断刃およびストリップ刃の上下動の無駄な動きを無くし、ストリップ作業に必要な工程時間を短縮することができる。
【0012】
また、請求項3に記載した手段は、請求項1または2に記載の電線ストリップ装置において、
前記電線末端からストリップした絶縁被覆の屑を吸引して除去する、前記ストリップ刃に並設された吸引管をさらに備え、
前記吸引管の先端部分には、前記切断刃に対向する位置から前記ストリップ刃に対向する位置へと横方向に移動する前記電線の末端部分を前記吸引管の内側に受け入れるための開口が設けられていることを特徴とする。
【0013】
すなわち、従来の装置においては、電線の末端を吸引管の内部に挿入するために、電線の末端を吸引管に対向させた後、電線を軸線方向に移動させる必要があった。
これに対して、請求項3に記載したストリップ装置においては、切断した電線の末端をストリップ刃に対向させるために横方向に移動させると、電線の末端が吸引管に設けた開口からその内部に入り込むため、電線を軸線方向に移動させる必要がない。
これにより、ストリップ作業に必要な工程時間を短縮することができる。
【0014】
また、請求項4に記載した手段は、請求項3に記載の電線ストリップ装置において、
前記電線の末端の絶縁被覆をストリップするときに、前記吸引管に設けられている開口を閉鎖する開口閉鎖手段をさらに備えることを特徴とする。
【0015】
すなわち、吸引管にはバキューム装置からの負圧が供給されて、ストリップした絶縁被覆の屑を吸引するようになっている。
そのため、吸引管の先端部分に設けた開口が開いていると吸引力が低下し、絶縁被覆の屑をスムーズに吸引できなくなるおそれがある。
このとき、請求項4に記載したストリップ装置においては、電線の末端をストリップするときに吸引管の開口を閉鎖手段によって閉鎖するので、吸引力が低下することはなく、絶縁被覆の屑を確実に吸引して除去することができる。
【0016】
また、請求項5に記載した手段は、請求項4に記載の電線ストリップ装置において、
前記開口閉鎖手段が、前記ストリップ刃の上下動に連動して前記開口を開閉する蓋部材であることを特徴とする。
【0017】
すなわち、電線末端の絶縁被覆をストリップする際には、ストリップ刃の上刃および下刃を互いに接近させて絶縁被覆に切り込ませるために刃駆動手段が作動する。
このとき、ストリップ刃に連動して上下動する蓋部材をストリップ刃あるいは刃駆動手段に固定しておくことにより、ストリップ作業に連動させて吸引管の開口を開閉することができる。
【0018】
また、請求項6に記載した手段は、請求項4に記載の電線ストリップ装置において、前記開口閉鎖手段が、ストリップのときに軸線方向に移動する電線に連動して前記開口を開閉する蓋部材であることを特徴とする。
【0019】
すなわち、電線末端の絶縁被覆をストリップする際には、ストリップ刃が絶縁被覆に切り込んでいる状態のときに電線を軸線方向に移動させる。
このとき、電線を軸線方向に移動させる電線移動手段に蓋部材を固定しておくことにより、ストリップ作業に連動させて吸引管の開口を開閉することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電線末端の絶縁被覆をストリップするために必要な工程時間を短縮できる電線ストリップ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図1乃至図11を参照し、本発明に係る電線ストリップ装置の一実施形態について詳細に説明する。
なお、以下の説明においては、前述した従来技術を含めて同一の部分には同一の符号を用いて重複した説明を省略するとともに、電線送給手段1が電線Wを送給する方向を前方と言う。
【0022】
まず最初に図1を参照し、本実施形態の電線ストリップ装置の全体構造について説明すると、この電線ストリップ装置100は、図12に示した従来の電線ストリップ装置に対してストリップ刃31,32の前後方向位置を変更するとともに、吸引管41,42の構造を変更したものとなっている。
具体的に説明すると、ストリップ刃31,32が切断刃2に対して距離Lだけ前後方向(図示上下方向)にそれぞれオフセットされている。
また、吸引管41,42の先端部分には、電線Wの後側部分W1および前側部分W2の末端部分を横方向から受け入れ可能な開口が設けられている。
【0023】
次に、図2〜図4を参照し、切断刃2、ストリップ刃31,32、刃駆動手段20、および吸引管41,42の構造について説明する。
【0024】
切断刃2は上刃2a,下刃2b、ストリップ刃31は上刃31a,下刃31b、ストリップ刃32は上刃32a,下刃32bをそれぞれ有している。
また、刃駆動手段20は、上下方向に接離自在に支持された上側保持部材21および下側保持部材22を有している。
そして、各上刃2a,31a,32aは上側保持部材21に固定され、各下刃2b,31b,32bは下側保持部材22に固定されている。
これにより、上側保持部材21と下側保持部材22が上下方向に接近すると、各上刃および各下刃が互いに交差して電線Wを切断し、かつ電線Wの末端部分の絶縁被覆に切り込むようになっている。
【0025】
なお、刃駆動手段20の上側保持部材21および下側保持部材22は、例えば本願出願人の先願である特開2005−224007号公報に記載された駆動機構を用いて上下方向に駆動することができるが、図4(a)に示した第1の位置と、図5(b),図6(b),図7(b)に示した第2の位置と、図8(b),図9(b)に示した第3の位置とを取ることができるようになっている。
【0026】
吸引管41,42は、図示されない支持手段によって電線ストリップ装置100の基板に支持されるとともに、やはり図示されないバキューム手段に接続されて負圧が供給され、ストリップした絶縁被覆の屑を吸引して除去するようになっている。
また、吸引管41,42の先端部分は、ストリップ刃31,32に隣接して配置されるとともに、その側壁には開口41a,42aがそれぞれ設けられている。
【0027】
刃駆動手段20の上側保持部材21には、吸引管41,42の開口41a,42aを開閉するための蓋部材43,44が固定されている。
これらの蓋部材43,44は、鋼板をL字形に折り曲げたもので、上側保持部材21が第3の位置まで降下したときに吸引管41,42の開口41a,42aを開閉する部分43a,44aと、ボルト43b,44bによって上側保持部材21に固定された部分とを有している。
【0028】
次に、図4〜図9を参照し、本実施形態の電線ストリップ装置100の作動について説明する。
【0029】
図4には、電線送給手段1を用いて電線Wを所定の長さだけ前方(図示下方)に送給した状態が描かれている。
このとき、刃駆動手段20の上側保持部材21および下側保持部材22は、切断刃2,ストリップ刃31,32の各上刃および各下刃を上下方向に大きく離間させる第1の位置にあり、切断刃2の上刃2aと下刃2bとの間の隙間に電線Wを挿通して所定の長さだけ前方に送給できるようにしている。
【0030】
図5には、切断刃2を用いて電線Wを切断した状態が描かれている。
このとき、刃駆動手段20の上側保持部材21および下側保持部材22は、切断刃2の上刃2a,下刃2bが互いに交差して電線Wを切断するが、ストリップ刃31,32の上刃31a,32aおよび下刃31b,32bは上下方向に離間して電線の末端部分を横方向に受け入れ可能な第2の位置にある。
【0031】
図6には、電線Wを切断して得られた後側部分W1および前側部分W2が、矢印Aで示したように、それぞれストリップ長さに応じた距離Sだけ切断刃2から離間するように前後方向に移動させた状態が描かれている。
このとき、電線Wの後側部分W1および前側部分W2を前後方向に移動させる量Sは、例えばストリップ刃31,32の切断刃2に対するオフセット量Lの値が10ミリメートルであり、かつ所望のストリップ長が7ミリメートルである場合には、3ミリメートルとなる。
また、刃駆動手段20の上側保持部材21および下側保持部材22は、切断刃2の上刃2a,下刃2bのみが互いに交差する第2の位置に保たれている。
【0032】
図7には、電線Wの後側部分W1および前側部分W2を、切断刃2に対向する位置からストリップ刃31,32にそれぞれ対向する位置へと、矢印Bで示したように横方向に移動させた状態が描かれている。
このとき、吸引管41,42の先端部分の側壁のうち切断刃2に対向する部分に開口41a,42aがそれぞれ設けられているので、電線Wの後側部分W1および前側部分W2り末端部分が吸引管41,42の内部に横方向から入り込むことを妨げることはない。
また、切断刃2とストリップ刃31,32の前後方向のオフセット量Lは、電線Wの後側部分W1および前側部分W2がそれぞれストリップ刃31,32に対向したときに、後側部分W1および前側部分W2の絶縁被覆のうちストリップ刃31,32を切り込ませる箇所がストリップ刃31,32と上下方向に一致するように設定されている。
これにより、図13および図14に示した従来の装置にように、電線Wの後側部分W1および前側部分W2を矢印Bで示したように横方向に移動させた後、矢印Cで示したようにさらに前後方向に移動させる必要がない。
【0033】
図8に描かれている刃駆動手段20の上側保持部材21および下側保持部材22は、切断刃2の上刃2a,下刃2bがさらに深く交差するとともに、ストリップ刃31,32の上刃31a,32aと下刃31b,32bが交差して電線Wの後側部分W1および前側部分W2の絶縁被覆に切り込んだ状態となる第3の位置にある。
このとき、刃駆動手段20の上側保持部材21にそれぞれ固定されている蓋部材43,44の開閉部分43a,44aは、ストリップ刃31,32と一体に降下して、吸引管41,42の開口41a,42aを閉鎖している。
【0034】
図9には、電線Wの後側部分W1および前側部分W2を矢印Dで示したように前後動させることにより、その末端部分の絶縁被覆をストリップした状態が描かれている。
このとき、蓋部材43,44の開閉部分43a,44aが吸引管41,42の開口41a,42aを閉鎖しているので、吸引管41,42に供給されている負圧が低下することはなく、絶縁被覆の屑H1,H2を確実に吸引して除去することができる。
【0035】
すなわち、本実施形態の電線ストリップ装置100においては、切断刃2とストリップ刃31,32とが前後方向に距離Lだけオフセットして配置されている。
これにより、図5に示したように送給された電線Wを切断刃2によって切断した後、所望のストリップ長に応じた距離Sだけ切断刃から離間するように電線をその軸線方向に移動させ、次いで図7に示したように切断刃2に対向する位置からストリップ刃31,32に対向する位置へと電線Wの後側部分W1および前側部分W2をそれぞれ横方向に移動させると、後側部分W1および前側部分W2の絶縁被覆のうちストリップ刃31,32を切り込ませる箇所がストリップ刃31,32と上下方向に一致するので、直ちにストリップ刃31,32を駆動して絶縁被覆に切り込みを入れることができる。
したがって、図13および図14に示した従来の装置のように、矢印Bで示したようにストリップ刃に対向する位置へと電線の末端部分を横方向に移動させた後、矢印Cで示したようにストリップ刃に向かってさらに電線をその軸線方向に前後動させる工程が不要となるから、ストリップ作業に必要な工程時間を短縮することができる。
【0036】
また、本実施形態の電線ストリップ装置100においては、刃駆動手段20が、切断刃2およびストリップ刃31,32を第1の位置から第2の位置を経由して第3の位置へと移動させた後、第3の位置から第1の位置へと復帰させる。
これにより、電線Wを切断した第2の位置から第1の位置に戻ることなく、第2の位置から直接第3の位置へと進ませることができるので、刃駆動手段20の上側保持部材21および下側保持部材22の無駄な動きを無くし、ストリップ作業に必要な工程時間を短縮することができる。
【0037】
また、本実施形態の電線ストリップ装置100においては、電線Wの後側部分W1および前側部分W2の末端部分を横方向に受け入れるための開口41a,42aが各吸引管41,42の先端部分に設けられている。
これにより、電線Wの後側部分W1および前側部分W2の末端部分を吸引管41,42の内部に挿入するためにその軸線方向に移動させる必要がないから、ストリップ作業に必要な工程時間を短縮することができる。
【0038】
さらに、本実施形態の電線ストリップ装置100においては、各吸引管41,42の先端部分に設けた開口41a,42aが、ストリップ刃31,32と一体に降下する蓋部材43,44の開閉部分43a,44aによって閉鎖されるから、吸引管41,42に供給されている負圧が低下することはなく、絶縁被覆の屑H1,H2を確実に吸引して除去することができる。
【0039】
以上、本発明に係る電線ストリップ装置の一実施形態について詳しく説明したが、本発明は上述した実施形態によって限定されるものではなく、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態においては、吸引管41,42の先端部分に設けた開口41a,42aを、ストリップ刃31,32と一体に上下動する蓋部材43,44によって開閉する構造であった。
これに対して、図10に示した第1変形例の電線ストリップ装置110のように、吸引管41に外嵌する断面形状C字形の蓋部材50をスライド自在に設けるとともに、電線末端の絶縁被覆をストリップする際に電線の軸線方向に後退する電線保持手段3,4と連動させることによって開口部分41aを閉鎖することも可能である。
さらに、図11に示した第2変形例の電線ストリップ装置120の吸引管60のように、その先端部分を上下一対の部材61,62に分割するとともに、図示されないヒンジによって開閉自在とし、ストリップ刃31,32の上下動に連動して開閉する構造とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】一実施形態の電線ストリップ装置の全体構造を示す平面図。
【図2】刃駆動手段を示す(a)平面図および(b)正面図。
【図3】図2に示した刃駆動手段を示す斜視図。
【図4】刃駆動手段の作動を示す(a)平面図および(b)正面図。
【図5】刃駆動手段の作動を示す(a)平面図および(b)正面図。
【図6】刃駆動手段の作動を示す(a)平面図および(b)正面図。
【図7】刃駆動手段の作動を示す(a)平面図および(b)正面図。
【図8】刃駆動手段の作動を示す(a)平面図および(b)正面図。
【図9】刃駆動手段の作動を示す(a)平面図および(b)正面図。
【図10】第1変形例の吸引管の作動を示す斜視図。
【図11】第2変形例の吸引管の作動を示す斜視図。
【図12】従来の電線ストリップ装置の全体構造を示す平面図。
【図13】図12に示した電線ストリップ装置の作動を示す平面図。
【図14】図12に示した電線ストリップ装置の作動を示す平面図。
【図15】図12に示した電線ストリップ装置の作動を示す平面図。
【符号の説明】
【0041】
L 切断刃とストリップ刃のオフセット量
S 電線の前後方向移動量
1 電線送給手段
2 切断刃
3,4 電線保持手段
5,6 電線搬送手段
7,8 ストリップ刃
9,10 吸引管
11,12 端子圧着機
20 刃駆動手段
21 上側保持部材
22 下側保持部材
31,32 ストリップ刃
41,42 吸引管
50 開閉部材
60 吸引管
100 一実施形態の電線ストリップ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送給された電線を切断するとともに切断した電線末端の絶縁被覆をストリップして芯線を露出させる電線ストリップ装置であって、
前記電線を切断する切断刃と、
切断した前記電線の末端の絶縁被覆に切り込むストリップ刃と、
前記電線をその軸線方向に前後動させるとともに、前記切断刃に対向する位置と前記ストリップ刃に対向する位置との間で前記電線を横方向に移動させる電線移動手段と、
を備え、
前記切断刃が前記電線を切断した後、前記電線移動手段が、ストリップ長に応じた距離だけ前記切断刃から離間するように前記電線をその軸線方向に移動させ、次いで前記電線を前記ストリップ刃に対向する位置へと横方向に移動させたときに、前記電線のうち前記ストリップ刃を切り込ませる箇所が前記ストリップ刃と上下方向に一致するように、前記切断刃に対する前記ストリップ刃の前後方向の位置が定められていることを特徴とする電線ストリップ装置。
【請求項2】
前記切断刃および前記ストリップ刃が、刃駆動手段によって駆動されて上下方向に互いに接離する上刃および下刃をそれぞれ有しており、
前記刃駆動手段は、
前記切断刃の上刃および下刃と前記ストリップ刃の上刃および下刃とが共に上下方向に離間した第1の位置と、
前記切断刃の上刃および下刃が互いに交差して前記電線を切断するが、前記ストリップ刃の上刃および下刃は上下方向に離間して前記電線の末端を横方向に受け入れ可能な第2の位置と、
前記切断刃の上刃および下刃と前記ストリップ刃の上刃および下刃とが共に互いに交差して前記ストリップ刃が前記電線の絶縁被覆に切り込む第3の位置と、
の間で前記切断刃および前記ストリップ刃を一体に上下方向に駆動するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載した電線ストリップ装置。
【請求項3】
前記電線の末端からストリップした絶縁被覆の屑を吸引して除去する、前記ストリップ刃に並設された吸引管をさらに備え、
前記吸引管の先端部分には、前記切断刃に対向する位置から前記ストリップ刃に対向する位置へと横方向に移動する前記電線の末端部分を前記吸引管の内側に受け入れるための開口が設けられている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載した電線ストリップ装置。
【請求項4】
前記電線の末端の絶縁被覆をストリップするときに、前記吸引管に設けられている開口を閉鎖する開口閉鎖手段をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載した電線ストリップ装置。
【請求項5】
前記開口閉鎖手段は、前記ストリップ刃の上下動に連動して前記開口を開閉する蓋部材であることを特徴とする請求項4に記載した電線ストリップ装置。
【請求項6】
前記開口閉鎖手段は、ストリップのときに後方に移動する電線に連動して前記開口を開閉する蓋部材であることを特徴とする請求項4に記載した電線ストリップ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2009−44885(P2009−44885A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208005(P2007−208005)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(000228257)日本オートマチックマシン株式会社 (39)
【Fターム(参考)】