説明

電線位置決め部材及びそれを用いた差込プラグ

【課題】電線の余長が短い場合でも電線を端子装置に接続する作業の作業性を向上させた電線位置決め部材及びそれを用いた差込プラグを提供する。
【解決手段】差込プラグは、複数の栓刃41,42と、それぞれ対応する栓刃41,42に電気的に接続された複数のねじ端子装置10A,10Bと、複数のねじ端子装置10A,10Bを保持して、シェル内部に収納されるボディブロック26と、外部からシェル内部に導入される多芯ケーブル70が備える複数本の被覆電線72を、対応するねじ端子装置10A,10Bの位置に位置決めした状態で保持する電線位置決め部材30を備える。電線位置決め部材30は、外側を覆うシース71が剥かれることによって外部に露出した複数本の被覆電線72を、対応するねじ端子装置10A,10Bの位置に位置決めした状態でそれぞれ保持する引掛片32を複数備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線位置決め部材及びそれを用いた差込プラグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、コンセントに差し込んで使用される電源プラグとして例えば特許文献1に開示されるものがあった。特許文献1に開示された電源プラグでは、外被覆体の内部に収納される把持部本体に複数本の栓刃が保持され、外被覆体の内部に導入された電源ケーブルの各内部電線が、各栓刃に対応して設けられた端子に接続されている。ここで、各栓刃に対応して設けられた端子に内部電線を結線する場合、作業者は、電源ケーブルのシースを剥いて複数本の内部電線を取り出した後、各内部電線の先端側の絶縁被覆を切除し、対応する接続端子に結線していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−35597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の電源プラグでは、シースを剥いて露出させた内部電線が、余長分として外被覆体の内部に収納されるため、余長を収納する分だけ外被覆体が大型化するという問題があった。また電源プラグを小型にするために、余長分を外被覆体の外に出した場合、シースで覆われていない複数本の内部電線が外被覆体の外側に露出するため見栄えが悪く、また内部電線がシースで覆われていないため、内部電線の保護が不十分になるという問題があった。そのため、電源プラグを小型化するためには、内部電線の余長をなるべく短くすることが好ましいが、余長を短くした場合、複数の接続端子が間隔を開けて配置されていると、電線を接続端子に接続する作業がやりにくく、作業効率が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、電線の余長が短い場合でも電線を端子装置に接続する作業の作業性を向上させた電線位置決め部材及びそれを用いた差込プラグを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の電線位置決め部材は、外側を覆うシースが剥かれることによって外部に露出し対応する端子装置にそれぞれ接続される複数本の被覆電線を、それぞれ対応する端子装置の位置に位置決めした状態で保持する第1位置規制部を備えたことを特徴とする。
【0007】
この電線位置決め部材において、第1位置規制部が第1規制部と第2規制部を備えることも好ましい。第1規制部は、各々の被覆電線において複数本の被覆電線を覆うシースから露出する根元側の部位を位置決めする。第2規制部は、各々の被覆電線において対応する端子装置に接続される先端側の部位を位置決めする。
【0008】
この電線位置決め部材において、第1位置規制部が設けられた本体に、端子装置が取り付けられたボディブロック側に突出する突起部が設けられることも好ましい。
【0009】
この電線位置決め部材において、第1位置規制部が設けられた本体に、複数本の被覆電線を覆うシースが所定位置を越えて端子装置側に押し込まれないように規制する第2位置規制部が設けられることも好ましい。
【0010】
本願の差込プラグは、複数の栓刃と、複数の端子装置と、ボディブロックと、上述した何れかの電線位置決め部材とを備えたことを特徴とする。複数の端子装置は、それぞれ対応する栓刃に電気的に接続される。ボディブロックは複数の端子装置を保持して、シェル内部に収納される。電線位置決め部材は、外部からシェル内部に導入される多芯ケーブルが備える複数本の被覆電線を、対応する端子装置の位置に位置決めした状態で保持する。
【0011】
この差込プラグにおいて、電線位置決め部材は、第1位置規制部が設けられた本体を備え、ボディブロック側に突出する突起部が本体に設けられることも好ましい。この場合、ボディブロックには、突起部と当接することで電線位置決め部材を位置決めする位置決め部が設けられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電線の余長が短い場合でも電線を端子装置に接続する作業の作業性を向上させた電線位置決め部材及びそれを用いた差込プラグを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態の差込プラグを示し、(a)はボディブロックに電線位置決め部材を載置した状態の斜視図、(b)はボディブロックに電線位置決め部材を載置する前の状態の斜視図である。
【図2】同上の差込プラグを示し、(a)は正面図、(b)は上面図、(c)は右側面図である。
【図3】同上の差込プラグの外観斜視図である。
【図4】同上の差込プラグを前側から見た分解斜視図である。
【図5】同上の差込プラグを後側から見た分解斜視図である。
【図6】同上の差込プラグに用いられるねじ端子装置を示し、(a)は分解斜視図、(b)は表側から見た外観斜視図、(c)は裏側から見た外観斜視図である。
【図7】同上の差込プラグを示し、(a)はボディブロックを後側から見た斜視図、(b)はボディを後側から見た斜視図である。
【図8】(a)〜(e)は同上の差込プラグの組立手順を説明する説明図である。
【図9】同上の差込プラグの他例を示し、(a)はボディブロックに電線位置決め部材を載置した状態の斜視図、(b)はボディブロックに電線位置決め部材を載置する前の状態の斜視図、(c)は電線位置決め部材を下側から見た斜視図である。
【図10】(a)〜(d)は同上の差込プラグに用いられる電線位置決め部材の他例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本願の電線位置決め部材及びそれを用いた差込プラグの実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の差込プラグは、例えば電気自動車(ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車を含む)の充電ケーブルに使用され、電気自動車を充電する際に店舗や事業所などに設置された充電スタンドのコンセントや、住戸の壁コンセントに接続される。尚、以下の説明では特に断りがないかぎり、図2(a)の上下を上下方向、左右を前後方向、図2(b)の上下を左右方向として説明を行うが、この方向は差込プラグ1の使用時の方向を限定するものではない。
【0015】
差込プラグ1は、3組のねじ端子装置10A,10A,10Bと、プラグ本体20と、電線位置決め部材30と、電圧極(W極、L極)の2本の栓刃41と、接地極の栓刃42と、電線止め部50と、ゴムバンド60を主要な構成として備える。
【0016】
3組のねじ端子装置10A,10A,10Bはプラグ本体20の内部に収納される。ねじ端子装置10Aには電圧極の栓刃41が設けられ、ねじ端子装置10Bには接地極の栓刃42が設けられている。これらの栓刃41,42はプラグ本体20の前面から外側に突出し、図示しないプラグ受け(例えばコンセントやテーブルタップなど)に差込接続される。尚、ねじ端子装置10Bは、U字形の栓刃42を備える点でねじ端子装置10Aと相違するが、栓刃以外の構成はねじ端子装置10Aと同様であるので、ねじ端子装置10Bについての説明は省略し、ねじ端子装置10Aについて図6を参照して説明する。
【0017】
ねじ端子装置10Aは、端子ねじ11を通す挿通孔12aが設けられた端子板12と、挿通孔12aに通された端子ねじ11が締結されるねじ孔13aが設けられた締め付け板13とを備える。端子板12には、より線からなる被覆電線を複数束ねた多芯ケーブル70の各被覆電線72が接続されており、多芯ケーブル70はプラグ本体20から外部に導出されている。
【0018】
締め付け板13は、金属板にプレス加工を施して形成され、平面視の形状が略矩形状に形成されており、図6(a)中の左右両側面の中央部には突起13bが設けられている。
【0019】
端子板12は、導電性の良好な金属板にプレス加工を施すことによって平面視の形状が略矩形状に形成されており、図6(a)中の下側縁からは下側に向かって延びる平形の栓刃41が一体に形成されている。端子板12において図6(a)中の左右両側面には、上側部及び下側部からそれぞれ締め付け板13側に突出して、突起13bを上下両側から挟む係止片12bが設けられている。また端子板12の左右の側面には、2個ずつ設けられた係止片12b,12bの間の部位から、左右方向における外側へ突出する突起12cが設けられている。この突起12cは、左右方向において突起13bよりも外側まで突出しており、左右方向において突起13bは突起12cの内側に位置している。ここにおいて、端子板12の係止片12bと締め付け板13の突起13bとで、端子板12と締め付け板13との相対的な回転を規制する回転規制部が構成される。尚、本実施形態では挿通孔12aの両側に回転規制部が設けられているが、挿通孔12aの片側のみに回転規制部が設けられていてもよい。
【0020】
ここで、端子板12の挿通孔12aに通された端子ねじ11が締め付け板13のねじ孔13aにねじ込まれ、端子ねじ11が締め付け方向に回転させられると、端子ねじ11と共に締め付け板13が回転する。締め付け板13が、端子ねじ11の回転に応じて回転すると、締め付け板13の突起13bが端子板12の係止片12bに当接することで、締め付け板13の回転が規制される。この状態から端子ねじ11を締め付け方向へさらに回転させると、締め付け板13の回転は規制されているので、端子ねじ11がねじ孔13aにねじ込まれていき、規定の締め付けトルクに達すると、作業者は端子ねじ11のねじ込みを終了する。而して、端子板12と締め付け板13の間に被覆電線72の導体や導体にかしめ固定された圧着端子73が挿入されていれば、端子板12と締め付け板13の間で導体や圧着端子73が挟持されることで、導体や圧着端子73がねじ端子装置10Aに接続される。また端子ねじ11を用いて端子板12と締め付け板13とが締結された状態では、突起13bが係止片12bに当接することによって、端子ねじ11が緩められる方向への締め付け板13の回転が規制されている。したがって、電線接続状態で被覆電線72が引っ張られ、端子ねじ11が緩められる方向の回転力が圧着端子73に加わったとしても、締め付け板13の突起13bが係止片12bに当接しているから、締め付け板13の回転が規制される。よって、圧着端子73と共に締め付け板13が端子ねじ11の緩む方向へ回転しにくくなり、端子ねじ11が緩む方向へ回転するのを抑制できる。尚、締め付け状態において端子ねじ11が締め付け方向と逆向きに回転させられると、端子ねじ11と共に締め付け板13が回転する。締め付け板13が、端子ねじ11の回転に応じて回転すると、締め付け板13の突起13bが端子板12の係止片12bに当接することで、締め付け板13の回転が規制される。この状態から端子ねじ11が緩む方向へさらに回されると、締め付け板13の回転は規制されているので、端子ねじ11が緩み方向に回転し、締め付け板13と端子板12との間に導体が接続された状態が解除される。
【0021】
次にプラグ本体20について説明する。プラグ本体20は、図1〜図5及び図7に示すように、それぞれ合成樹脂成形品からなるボディ21及びカバー22からなるボディブロック26と、合成樹脂成形品からなるシェル23とを組み合わせて構成される。
【0022】
シェル23は、ボディブロック26(ボディ21及びカバー22からなる)を内部に収納する円筒部23aと、円筒部23aの後側の端部に設けられた後壁23bとを一体に備えている。後壁23bの中央には、ねじ端子装置10A,10A,10Bに結線された多芯ケーブル70を通すための丸穴23cが形成されている。後壁23bの後面には、挿通孔23dを有するボス部23eが丸穴23cの左右両側にそれぞれ設けられている。また円筒部23aの外周面には、接地極の栓刃42に対応する位置に、栓刃42の位置を示す突起23fが設けられている。
【0023】
ボディ21は、図1〜図5及び図7に示すように略円盤状であって、シェル23の前側の開口を塞ぐようにしてシェル23に取り付けられる。ボディ21には、電圧極の平形栓刃(以下、栓刃と略称する。)41がそれぞれ挿通される2個の挿通孔21aと、接地極のU型栓刃(以下、栓刃と略称する。)42が挿通される挿通孔11bが、それぞれボディ21を前後方向に貫通するように設けられている。このボディ21には、電圧極のねじ端子装置10A,10Aと接地極のねじ端子装置10Bとが、各々の栓刃41,41,42を対応する挿通孔11a,11a,11bに挿通させた状態で保持される。ボディ21の後面中央にはカバー22をねじ固定するためのねじ穴21cが設けられている。またボディ21には、ボディ21をシェル23にねじ固定するための固定ねじ25をそれぞれ挿通させる2個の挿通孔21dが、ボディ21を前後方向に貫通して設けられている。またボディ21の前面には、各挿通孔21dの周縁部に固定ねじ25のねじ頭を逃がす凹部21eが設けられている。
【0024】
カバー22は、図1、図4及び図5に示すように略円盤状であって、ボディ21の後面側に配置され、略中央の段付き穴22aに通した固定ねじ24がボディ21のねじ穴21cにねじ込まれることで、ボディ21にねじ固定されてボディブロック26を構成する。カバー22には、3組のねじ端子装置10A,10A,10Bに対応する部位に、ねじ端子装置10A,10A,10Bとの干渉を避けるために、U字形に窪んだ凹溝22bが設けられている。またカバー22には、ボディ21の挿通孔21dにそれぞれ対応する位置にねじ挿通用の挿通孔22cが設けられ、カバー22の後面において挿通孔22cの周縁部にはシェル23の内部に設けられたボス部が入り込む凹部22dが設けられている。なお、ボディ21とカバー22とが結合された状態では、各凹溝22bから、ねじ端子装置10A,10Bの端子板12及び締め付け板13が露出しているので、凹溝22bを通して端子板12と締め付け板13の間に圧着端子や導線を差し込むことができる。また、各ねじ端子装置10A,10Bの端子ねじ11は、ボディ21及びカバー22の周面に設けられた凹部から露出しているので、ドライバーなどの工具を用いて端子ねじ11を締め付けたり、緩めたりすることができる。
【0025】
次に、電線位置決め部材30について図1、図4及び図5を参照して説明する。電線位置決め部材30は合成樹脂成形品からなり、略円筒状に形成された円筒部31と、円筒部31の円周面から径方向に突出する3本の引掛片32とを一体に備えている。3本の引掛片32はL字形に形成され、カバー22の3箇所の凹溝22bにそれぞれ対応する位置に設けられている。円筒部31の周面には、3本の引掛片32がそれぞれ突設された位置から後端部にかけてスリット33が設けられている。また円筒部31の後端側の内周面には、後端側に比べて内径が小さくなるように、中心方向に張り出した段部39が設けられており、シース71の先端が段部39と当接することによって、多芯ケーブル70の円筒部31内への押し込み量が制限されている。また円筒部31の前部には、円周面の3箇所に平面部34が形成されており、カバー22の後面に設けられた3つの突起22eに対応する平面部34が当接することによって、円筒部31がカバー22に位置決めされる。
【0026】
電線止め部50は、図2〜図5に示すように、突き合わせた状態で円柱状となり両者の間で多芯ケーブル70を保持する保持体51,52と、保持体51,52を結合する各2個の固定ねじ53及びナット54で構成される。保持体51,52は、回転軸を含む平面で円柱が2分割されたような形状に形成されており、外周面にはゴムバンド60が嵌まる凹溝51a,52aがそれぞれ形成されている。保持体51,52の突き合わせ面には、それぞれ、保持体51,52からなる円柱の中心付近に、多芯ケーブル70のシース71に食い込むことによって多芯ケーブル70の張力止めを行う突片51b,52bが前後方向に間隔をおいて複数形成されている。
【0027】
差込プラグ1は上記のような構成を有しており、この差込プラグ1は以下のようにして組み立てられる。
【0028】
先ず作業者は、ボディ21の挿通孔21a,21aに電圧極の栓刃41,41を、挿通孔21bに接地極の栓刃42をそれぞれ挿通させることによって、3組のねじ端子装置10A,10A,10Bをボディ21に保持させる(図7(b)参照)。次に作業者は、ボディ21の後面にカバー22を重ねて配置し、カバー22の段付き穴22aに通した固定ねじ24をボディ21のねじ穴21cにねじ込むことによって、カバー22をボディ21に固定する(図7(a)参照)。この時、ねじ端子装置10A,10A,10Bはボディ21とカバー22との間で挟持され、ボディブロック26によって保持される。
【0029】
次に作業者は、多芯ケーブル70をシェル23の丸穴23cに通し、シース71の先端部分を剥いて露出させた各被覆電線72の先端にそれぞれ圧着端子73をかしめ固定する。3本の被覆電線72は、図8(a)に示すようにシース71の出口付近で三つ叉に略直角に折り曲げられた後、さらに中間部で略直角に折り曲げられ、各被覆電線72にかしめ固定された圧着端子73が同じ方向を向くように形が整えられる。この多芯ケーブル70が、図8(b)に示すようにスリット33を上向きにした電線位置決め部材30の上側から被せられると、電線位置決め部材30の3本の引掛片32にそれぞれ対応する被覆電線72が保持される。3本の引掛片32は、ねじ端子装置10A,10A,10Bの配置間隔と同じ間隔で設けられているので、引掛片32にそれぞれ保持された被覆電線72は、対応するねじ端子装置10A,10A,10Bの位置に合致した位置に整列させられる。一方、作業者は各ねじ端子装置10A,10A,10Bの端子ねじ11を緩め、端子板12と締め付け板13との間に隙間を設けておく。そして作業者が電線位置決め部材30をボディブロック26に近付けると、図8(c)に示すように各被覆電線72にかしめ固定された圧着端子73が、カバー22の凹溝22bを通して対応する端子板12と締め付け板13の間に挿入される。この状態ではシース71の端部と電線位置決め部材30の上端との間に隙間C1が残っているので、この隙間C1をなくすように作業者が多芯ケーブル70を電線位置決め部材30に押し付けると、円筒部31の内側までシース71が挿入される(図8(d)参照)。この時、シース71の先端が円筒部31の内周面に設けられた段部39に当接することで、シース71が所定位置を越えて内側(端子装置側)まで押し込まれないように規制されているので、シース71の先端の位置を略一定にすることができる。その後、作業者が端子ねじ11を締め付け方向に回転させ、所望の締め付けトルクまで締め付けると、端子板12と締め付け板13との間で各被覆電線72の圧着端子73が挟持される(図8(e)参照)。尚、この状態では電線位置決め部材30の平面部34がカバー22の突起22eと当接することによって、円筒部31がカバー22(すなわちボディブロック26)に対して正確な位置に配置されることになる。
【0030】
各ねじ端子装置10A,10A,10Bへの結線作業が終了すると、作業者は、電線位置決め部材30及びボディブロック26にシェル23を被せ、挿通孔21d,22cに通した固定ねじ25を、シェル23の内側に設けられたねじ穴(図示せず)にねじ込むことによって、ボディブロック26をシェル23の開口部に固定する。次に作業者は、シェル23のボス部23eを挟むようにして保持体51,52を突き合わせ状態で、保持体51,52の挿通孔51c,52cとボス部23eの挿通孔23dとに固定ねじ53を通してナット54にねじ込むことによって、保持体51,52をシェル23の後部に結合する。この時、2つの保持体51,52の間に多芯ケーブル70のシース71が挟持されることによって、多芯ケーブル70の張力止めが行われる。尚、固定ねじ53の頭部及びナット54は、それぞれ、保持体51,52の周面に形成された凹部内に納められ、保持体51,52の周面から外側に突出しないようになっている。最後に保持体51,52の凹溝51a,52aにゴムバンド60が嵌められると、差込プラグ1の組み立てが完了する。
【0031】
以上説明したように、電線位置決め部材30は第1位置規制部(本実施形態ではスリット33の周縁部及び引掛片32からなる)を備えている。第1位置規制部は、外側を覆うシース71が剥かれることによって外部に露出する複数本の被覆電線72を、それぞれ対応する対応する端子装置(本実施形態ではねじ端子装置10A,10Bからなる)の位置にそれぞれ位置決めした状態で保持している。
【0032】
このように、電線位置決め部材30の第1位置規制部が、複数本の被覆電線72を、それぞれ対応する端子装置の位置に位置決めした状態で保持しているので、シース71を剥いた長さ(すなわち余長)が短い場合であっても、各被覆電線72を対応する端子装置に接続する作業が容易になり、作業性が向上する。
【0033】
また、電線位置決め部材30の第1位置規制部は第1規制部と第2規制部とを備えている。第1規制部(本実施形態ではスリット33の周縁部からなる)は、各々の被覆電線72において複数本の被覆電線72を覆うシース71から露出する根元側の部位を位置決めする。第2規制部(本実施形態では引掛片32からなる)は、各々の被覆電線72において対応する端子装置に接続される先端側の部位を位置決めする。
【0034】
これにより、各被覆電線72の根元(シース71から露出する部位)と先端側(対応する端子装置に接続される側)とが両方共に位置決めされるから、各被覆電線72の位置が安定し、被覆電線72を対応する端子装置に接続する作業がさらに容易になる。尚、本実施形態では被覆電線72が第2規制部を構成する引掛片32によって先端側のみで保持されているが、第1規制部によって根元側のみで保持されてもよいし、第1規制部及び第2規制部によって根元側及び先端側の両方で保持されていてもよい。
【0035】
また電線位置決め部材30は、円筒部31の円周面に平面部34が設けられており、この平面部34にカバー22の突起22eを当接させることで、電線位置決め部材30がカバー22(すなわちボディブロック26)に対して位置決めされている。
【0036】
これにより、電線位置決め部材30がボディブロック26に対して正確に位置決めされるので、電線位置決め部材30に保持された被覆電線72と端子装置の位置をより正確に位置決めできる。
【0037】
なお本実施形態では、電線位置決め部材30の平面部34と当接する突起22eがカバー22に設けられているが、図9(c)に示すように電線位置決め部材30の円筒部31にボディブロック26側に突出する突起部35が設けられていてもよい。この場合、ボディブロック26を構成するカバー22には、図9(b)に示すように突起部35が嵌まる凹溝22gが設けられていればよく、突起部35が凹溝22gに嵌まることで、電線位置決め部材30がボディブロック26に対して位置決めされる。
【0038】
このように、電線位置決め部材30には、第1位置規制部が設けられた本体(本実施形態では円筒部31)に、端子装置が取り付けられたボディブロック26側に突出する突起部35が設けられている。一方、ボディブロック26には、突起部35と当接することで電線位置決め部材30を位置決めする位置決め部(本実施形態では凹溝22g)が設けられている。
【0039】
これにより、電線位置決め部材30がボディブロック26(カバー22)に対して正確に位置決めされるので、電線位置決め部材30に保持された被覆電線72と端子装置の位置をより正確に位置決めできる。
【0040】
また電線位置決め部材30の円筒部31には、内部に押し込まれたシース71の先端が当接することで、それ以上の押し込みを規制する段部39が内周面の複数箇所に設けられている。すなわち、第1位置規制部が設けられた本体(本実施形態では円筒部31)に、複数本の被覆電線72を覆うシース71が所定位置を越えて端子装置側に押し込まれないように規制する第2位置規制部(本実施形態では段部39からなる)が設けられている。
【0041】
このように、第2位置規制部によってそれ以上の押し込みが規制される所定位置までシース71が押し込まれることで、シース71の先端の位置を略一定にできる。したがって、電線位置決め部材が端子装置と共にシェル内部に収納される場合には、シェル内部に被覆電線の余長分を確実に収納できる。
【0042】
また本実施形態の差込プラグ1は、複数の栓刃と、複数の端子装置と、ボディブロック26と、上記の電線位置決め部材30とを備える。複数の端子装置(本実施形態ではねじ端子装置10A,10B)は、それぞれ対応する栓刃(本実施形態では栓刃41,42)に電気的に接続されている。ボディブロック26は、複数の端子装置を保持して、シェル23内部に収納される。電線位置決め部材30は、外部からシェル23内部に導入される多芯ケーブル70が備える複数本の被覆電線72を、対応する端子装置の位置に位置決めした状態で保持している。
【0043】
このように、電線位置決め部材30の第1位置規制部が、複数本の被覆電線72を、それぞれ対応する端子装置の位置に位置決めした状態で保持しているので、シース71を剥いた長さ(すなわち余長)が短い場合であっても、各被覆電線72を対応する端子装置に接続する作業が容易になり、作業性が向上する。また余長分を短くできるから、差込プラグ1の全長を短くできる。
【0044】
さらに、電線位置決め部材30は第1位置規制部が設けられた円筒部31を備え、この円筒部31にボディブロック26側に突出する突起部35が設けられることも好ましい。この場合、ボディブロック26には、突起部35と当接することで電線位置決め部材30を位置決めする位置決め部(本実施形態ではカバー22に設けられた凹溝22gからなる)が設けられる。
【0045】
これにより、電線位置決め部材30がボディブロック26に対して正確に位置決めされるので、電線位置決め部材30に保持された被覆電線72と端子装置の位置をより正確に位置決めできる。
【0046】
尚、上述の実施形態では電線位置決め部材30の第1位置規制部が、被覆電線72の根元側を保持する第1規制部と、被覆電線72の先端側を保持する第2規制部を両方共に備えているが、先端側を保持する第2規制部のみを備えたものでもよい。図10(a)に示す電線位置決め部材30Aでは、平板状に形成された本体36の外縁には、それぞれ被覆電線72の先端側を保持するL字状の引掛片32(第2規制部)が3箇所に設けられている。また、図10(b)に示す電線位置決め部材30Bでは、合成樹脂製の円板37の3箇所にそれぞれ被覆電線72を通すための貫通孔38が形成されており、各貫通孔38により被覆電線72の先端側を保持する第2規制部が構成されている。なお貫通孔38は、被覆電線72にかしめ固定された圧着端子73が挿通可能なように、細長い矩形穴の一辺中央に丸穴をつなげたような形状に形成されている。
【0047】
また上述の実施形態では電線位置決め部材30が3本の被覆電線72を保持しているが、被覆電線72の数は2本でも4本以上でもよい。図10(c)(d)は2本の被覆電線72を保持する電線位置決め部材30C,30Dを示し、電線位置決め部材30C,30Dでは、円筒部31の周面の2箇所に被覆電線72の先端側を保持する引掛片32が設けられている。尚、電線位置決め部材30Cでは2つの引掛片32が同じ向きに設けられ、電線位置決め部材30Dでは2つの引掛片32が逆向きに設けられている。
【符号の説明】
【0048】
1 差込プラグ
10A,10B ねじ端子装置(端子装置)
13 シェル
26 ボディブロック
30 電線位置決め部材
31 円筒部(本体)
32 係止片(第1位置規制部、第2規制部)
33 スリット(第1位置規制部、第1規制部)
41,42 栓刃
70 多芯ケーブル
71 シース
72 被覆電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側を覆うシースが剥かれることによって外部に露出し対応する端子装置にそれぞれ接続される複数本の被覆電線を、それぞれ対応する端子装置の位置に位置決めした状態で保持する第1位置規制部を備えたことを特徴とする電線位置決め部材。
【請求項2】
前記第1位置規制部が、各々の前記被覆電線において複数本の前記被覆電線を覆うシースから露出する根元側の部位を位置決めする第1規制部と、各々の前記被覆電線において対応する端子装置に接続される先端側の部位を位置決めする第2規制部とを有することを特徴とする請求項1記載の電線位置決め部材。
【請求項3】
前記第1位置規制部が設けられた本体に、前記端子装置が取り付けられたボディブロック側に突出する突起部が設けられたことを特徴とする請求項1又は2記載の電線位置決め部材。
【請求項4】
前記第1位置規制部が設けられた本体に、複数本の前記被覆電線を覆うシースが所定位置を越えて前記端子装置側に押し込まれないように規制する第2位置規制部が設けられたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の電線位置決め部材。
【請求項5】
複数の栓刃と、
それぞれ対応する前記栓刃に電気的に接続された複数の端子装置と、
前記複数の端子装置を保持して、シェル内部に収納されるボディブロックと、
外部から前記シェル内部に導入される多芯ケーブルが備える複数本の被覆電線を、対応する前記端子装置の位置に位置決めした状態で保持する請求項1乃至4の何れか1項に記載の電線位置決め部材と、を備えたことを特徴とする差込プラグ。
【請求項6】
前記電線位置決め部材は、前記第1位置規制部が設けられた本体を備え、前記ボディブロック側に突出する突起部が前記本体に設けられ、
前記ボディブロックには、前記突起部と当接することで前記電線位置決め部材を位置決めする位置決め部が設けられたことを特徴とする請求項5記載の差込プラグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−20807(P2013−20807A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153123(P2011−153123)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】