説明

電線用テープ

【課題】耐熱性、難燃性、耐摩耗性を高め、高温環境下に配索される電線群結束用として好適に用いられるテープを提供する。
【解決手段】高機能繊維素線11と汎用繊維素線12とからなる同一の糸条10を縦糸3と横糸4として用いて編成しており、前記高機能繊維素線は汎用繊維素線よりも耐熱性、難燃性および耐摩耗性が優れたものであり、該高機能繊維素線として、パラ系アラミド繊維、ポリアレート繊維、超高分子ポリエチレン繊維、ガラス繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維から選択される少なくとも一種を用い、前記汎用繊維素線として、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンから選択される少なくとも一種を用いている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電線用テープに関し、特に、車両に配索されるワイヤハーネスの電線群の外周に巻き付ける結束用テープとして好適に用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に配索されるワイヤハーネスの電線群の結束、保護および外部干渉材による干渉防止のために、特開2003−272447号公報(特許文献1)等に開示されたテープが用いられている。該テープは一面に粘着剤が塗布されており、ワイヤハーネスW/Hの外周面に螺旋状に巻き付けて電線群を結束している。
また、近時、前記テープに代えて、コルゲートチューブ等のチューブに電線群を挿通してワイヤハーネスの電線群を結束、保護している場合も多い。
【0003】
前記コルゲートチューブは比較的硬く、かつ、重量があるため、前記テープよりも車両でのワイヤハーネスの配索作業が容易でない。かつ、コルゲートチューブ等のチューブ類は軸線方向にスリットを設け、該スリットから電線群を横入れした後、スリットを閉鎖するためにコルゲートチューブの外周にさらにテープ巻きしているため、作業工数も増加する問題がある。
よって、コルゲートチューブ等のチューブ類よりも従来用いられていたテープが見直されつつある。
【0004】
ワイヤハーネス結束用のテープとしては、通常、塩化ビニルテープが用いられている。しかしながら、塩化ビニルテープは、車両に配索するワイヤハーネスの結束用としては、難燃性、耐熱性、耐摩耗性の点で改善の余地があった。
【0005】
前記観点から、耐熱性を有するテープとして、ポリエステル系繊維を編み込んだテープも用いられているが、該テープは難燃性、耐摩耗性は低く、かつ、該ポリエステル系の布テープは加水分解を起こす可能性があり、エンジンルーム内での使用は不適となっている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−272447号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記問題に鑑みてなされたもので、エンジンルームに配索されるワイヤハーネスの結束用としても用いることができる耐熱性、難燃性、耐摩耗性を備え、さらに、加水分解を生じにくい電線用テープを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、高機能繊維素線と汎用繊維素線とからなる同一の糸条を縦糸と横糸として用いて編成しており、前記高機能繊維素線は汎用繊維素線よりも耐熱性、難燃性および耐摩耗性が優れたものであり、該高機能繊維素線として、パラ系アラミド繊維、ポリアレート繊維、超高分子ポリエチレン繊維、ガラス繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維から選択される少なくとも一種を用い、前記汎用繊維素線として、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンから選択される少なくとも一種を用いていることを特徴とする電線用テープを提供している。
なお、前記高機能繊維素線および汎用繊維素線として樹脂糸を用いる場合、導電性成分を含まない樹脂としている。かつ、ノンハロゲン系樹脂を用いることが好ましい。
【0009】
前記のように、従来用いられているポリエステル系繊維を編み込んだテープと比較して難燃性、耐摩耗性が優れた前記高機能繊維素線を用い、前記ポリエステル系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系等の汎用繊維素線を補助的に配合した糸条を用いている。このように、本発明で用いる糸条は汎用繊維の糸条より難燃性、耐摩耗性を向上させており、かつ、加水分解を起こす可能性を従来のポリエステル系繊維を織り込んだテープより大幅に低減している。よって、車両内において、テープの使用環境としては最も厳しいエンジンルーム内に配索するワイヤハーネスの結束用テープとしても用いることができる。
【0010】
前記高機能繊維素線として用いる種類によって若干相違するが、前記ポリエステル系繊維を織り込んだテープと比較して、耐熱性を高めることができ、かつ、難燃性を付与することができる。
【0011】
前記高機能繊維素線:汎用繊維素線との配合比は、10〜50%:90〜50%であることが好ましい。
前記配合比は、高機能繊維素線を20〜30%とすることが好ましい。
前記のように、高機能繊維素線の配合割合を10%以上としているのは、10%未満とすると、難燃性、耐摩耗性の向上を余り図れないこととなり、また、50%を越えると、テープの伸び、引張力、可撓性が低下し、かつ、重量が大となると共にコスト高になる。
【0012】
前記各糸条は、複数本の前記高機能繊維素線と汎用繊維素線とを同一方向に引き揃えたものからなり、前記高機能繊維素線と汎用繊維素線が1本ずつ、または複数本ずつ交互に並列している。
高機能繊維素線と汎用繊維素線とを1本ずつ交互に引き揃えることが好ましいが、高機能繊維素線の割合が少ない場合には、複数本の汎用繊維素線を高機能繊維素線で挟むように配列することが好ましい。
【0013】
さらに、前記汎用繊維素線の耐熱性、耐摩耗性を高めるために、テープとした後に、電離性放射線を照射して汎用繊維素線を架橋することが好ましい。
なお、汎用繊維素線を予め電離性放射線で照射して架橋しておき、該汎用繊維素線を前記高機能繊維素線と編成してもよい。
【0014】
前記汎用繊維素線を電離性放射線で架橋するために、前記ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂成分に架橋性モノマーを配合しておき、電離性放射線100kGy以上400kGy以下で照射してゲル分率(架橋率)を50%以上に架橋させることが好ましい。
【0015】
本発明のテープは、加水分解が起こりにくく、よって、エンジンルーム内に配索するワイヤハーネスの電線群結束用として用いることができる。
【0016】
本発明のテープは、その一面に粘着剤が塗布されて粘着テープとされている。
粘着剤はテープの一面の全面に塗布しても良いし、長さ方向の一端縁または両端縁に沿って連続的に塗布してもよい。
さらに、必要に応じて、両面に粘着剤を塗布してもよい。
【0017】
本発明の電線用テープは、前記のように、自動車に配索されるワイヤハーネスの電線群結束用テープとして最も好適に用いられるが、使用条件が自動車用ワイヤハーネスに類似する電線群の結束用テープとしても好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0018】
前述したように、本発明の電線用テープは、耐熱性、難燃性、耐摩耗性に優れたものとし、かつ、加水分解が殆ど発生しないものとしているため、車両に配索するワイヤハーネス、特に、エンジンルーム内に配索するワイヤハーネスの電線群の結束用テープとして好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の電線用テープの第一実施形態を説明する。
本発明の電線用のテープ1は図1(A)に示すように、自動車に配索される電線群Wからなるワイヤハーネス2の外周面に図1(B)に示すようにテープの幅半分を重ねながら巻き付けるハーフラップ巻き、あるいは、荒巻き等の螺旋状に巻き付けて結束するために用いている。なお、電線群の長さ方向に部分的に巻き付ける部分巻きにも用いることができ、従来汎用されている電線用テープと同様の使用箇所に用いられるものである。
【0020】
前記テープ1は図2(A)に拡大して示すように、縦糸3と横糸4とを編成して形成した布テープからなり、図2(C)の概略斜視図に示すように、その一面全面に粘着剤5を塗布している。
【0021】
前記縦糸3と横糸4は図2(B)に示す同一糸条からなり、横方向(コース方向)および縦方向(ウエール方法)とも1ピッチ毎に編成した平織りで編成している。
【0022】
前記縦糸3と横糸4を構成する糸条10は、それぞれ、太実線で示す高機能繊維素線11の両側を汎用繊維素線12とを同一方向に引き揃えており、本実施形態では、2本の汎用繊維素線12a、12bを高機能繊維素線11aで挟んだ1組を引き揃え、高機能繊維素線11:汎用繊維素線12を1:2の割合で配列しており、よって、配合比は高機能繊維素線11が33% 汎用繊維素線12を66%としている。
かつ、1本の糸条10は高機能繊維素線11を9〜11本、汎用繊維素線12を19〜21本とし、合計28〜32本としている。
【0023】
前記高機能繊維素線11は汎用繊維素線12よりも耐熱性、難燃性および耐摩耗性が優れたものを用いている。該高機能繊維素線の素材としては、パラ系アラミド繊維、ポリアレート繊維、超高分子ポリエチレン繊維、ガラス繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維が挙げられ、これらの内の1種を用いているが複数種類を用いてもよい。本実施形態では、パラ系アラミド繊維を用いている。
前記汎用繊維素線12として、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンから選択される一種を用いているが、複数種類を用いてもよい。本実施形態ではポリエステル繊維を用いている。
【0024】
前記糸条10からなる縦糸3と横糸4とを編成してテープ1は、加水分解が発生しにくいものとなる。
また、溶融温度を120℃以上として車両のエンジンルーム内に配索し得る耐熱性を付与している。
難燃性は難燃性規格のUL−94でV−0相当で、かつ、酸素指数(OI値)23.5以上を有するものとしている。
耐磨耗性については、テープ磨耗試験(150番テープを使用し、荷重4.5Nを負荷した状態で)1000mm以上を有するものとしている。
【0025】
このように、テープ1は、ポリエステル等の汎用繊維素線12のみではなく、該汎用繊維素線より耐熱性、難燃性、耐摩耗性が優れた高機能繊維素線11を汎用繊維素線12に配合した糸状10を縦糸3、横糸4として編成しているため、高温環境下に配索されるワイヤハーネス、さらに、トランクリッド、サイドドア、スライドシート等の摺動されるワイヤハーネスの電線群の結束用テープとして用いることができる。
さらに、加水分解が殆ど発生しないため、エンジンルーム内のワイヤハーネスの電線群の結束用テープとして好適に用いることができる。
特に、テープ1は縦糸3と横糸4を平織りしているシンプルな形状であるため、既存設備を利用して簡単に製造でき、さらに、高機能繊維素線11の配合量を調整することにより、求められる耐熱性、難燃性、耐摩耗性を容易に付与することができる。
このように、従来汎用されている塩化ビニルテープに代えてコルゲートチューブ等のチューブ類やシート類が用いられていたワイヤハーネスの配索箇所に、テープ1を用いることができる。よって、部品点数が削減しコスト削減を図ることできると共に、外装材を含めたワイヤハーネス全体の軽量化が図れ、燃費を高めて、車両維持コストの低減を図ることもできる。
【0026】
次に、第二実施形態を説明する。
第二実施形態のテープは、前記縦糸と横糸とを編成してテープを形成した後に、電離性放射線を照射して、ポリエステル繊維からなる汎用繊維素線を架橋して第一実施形態のテープ1より耐熱性を高め、溶融温度を120℃としている。
【0027】
前記汎用繊維素線として用いるポリエステル繊維素線を、ポリエステル100質量部に対して架橋性モノマーとしてトリアリルイソシアヌレートまたはトリアリルシアヌレートを1〜3重量部配合した混練物より形成している。
前記汎用繊維素線を第一実施形態と同様の高機能繊維素線とで糸条を設け、該糸条を縦糸および横糸として用いて編成している。
編成してテープとした後に、電離性放射線を100〜400kGy照射し、ポリエステル繊維素線の架橋率を50%以上としている。
他の構成は第一実施形態と同一であるため、説明を省略する。
【0028】
第二実施形態のテープは、汎用繊維素線の融点がエンジンルームの温度条件下では形状保持力を有しない場合に、電離性放射線を照射して架橋し、融点を高めて、形状保持力を付与し、加水分解の発生をなくしているため、エンジンルーム内に配索するワイヤハーネスの電線結束用テープとしてより有用なテープとすることができる。
【0029】
なお、汎用繊維素線とする樹脂成分に架橋化学開始剤を配合しておき、架橋を発生させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第一実施形態を示し、(A)はワイヤハーネスに本発明のテープを巻き付けた状態を示す全体概略図、(B)は部分拡大図である。
【図2】(A)は前記テープの部分拡大平面図、(B)は糸条を示す拡大図、(C)は概略斜視図である。
【符号の説明】
【0031】
1 テープ
2 ワイヤハーネス
3 縦糸
4 横糸
10 糸条
11 高機能繊維素線
12 汎用繊維素線
W 電線群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高機能繊維素線と汎用繊維素線とからなる同一の糸条を縦糸と横糸として用いて編成しており、前記高機能繊維素線は汎用繊維素線よりも耐熱性、難燃性および耐摩耗性が優れたものであり、該高機能繊維素線として、パラ系アラミド繊維、ポリアレート繊維、超高分子ポリエチレン繊維、ガラス繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維から選択される少なくとも一種を用い、前記汎用繊維素線として、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンから選択される少なくとも一種を用いていることを特徴とする電線用テープ。
【請求項2】
前記高機能繊維素線:汎用繊維素線との配合比は、10〜50%:90〜50%である請求項1に記載の電線用テープ。
【請求項3】
前記各糸条は、複数本の前記高機能繊維素線と汎用繊維素線とを同一方向に引き揃えたものからなり、前記高機能繊維素線と汎用繊維素線が1本ずつ、または複数本ずつ交互に並列している請求項1または請求項2に記載の電線用テープ。
【請求項4】
前記汎用繊維素線は電離性放射線で照射されて架橋されている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の電線用テープ。
【請求項5】
一面に粘着剤が塗布されて粘着テープとされている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の電線用テープ。
【請求項6】
自動車に配索されるワイヤハーネスの電線群結束用テープとして用いられる請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の電線用テープ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−154634(P2010−154634A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−329236(P2008−329236)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】