説明

電線絶縁保護管の端末固定具

【課題】小型で簡単な構成であって取り扱い易く、しかも、成形が容易で製作コストも低廉になしえ、作業の能率化も図れる電線絶縁保護管の端末固定具を提供する。
【解決手段】基体部1と基体部1から延設される固定バンド2及び係留バンド3とからなり、前記基体部1に挿通孔4,5を貫設し、固定バンド2と係留バンド3との側面にそれぞれ噛合部6,7を設けると共に前記各挿通孔4,5の内側面に挿通された固定バンド2または係留バンド3の抜脱を阻止する弾性噛合部8,9を設け、前記固定バンド2と係留バンド3とを互いに延長線上で直交するように設け、また、前記弾性噛合部8,9の一側と前記基体部1の一側とに前記噛合部6,7と弾性噛合部8,9との係合を外すことができる摘み片11,12を突設した構成からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架設される電線に被着した電線絶縁保護管をその電線に固定させるための電線絶縁保護管の端末固定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電柱間等に架設された電線は、樹木や建造物に近接した個所にあると、風により揺れる樹木や飛来する建造物の一部である破片等が接触したり、或いは、架設工事等に際し誤ってクレーン車のクレーンが接触したりして損傷し易く、これにより感電事故等が発生するおそれがあることから、これを防止するために電線に電線絶縁保護管を被着するようにしている。その際、電線絶縁保護管を電線にしっかり固定しておかないと、電線絶縁保護管が電線上を移動して所期の目的を達することができず、例えば、電線絶縁保護管に設けられた孔に引掛具を係止させ該引掛具に紐やゴムバンド等を掛止すると共にこれら紐やゴムバンド等を電線に結束させたり、または粘着性を有する帯状片を直接電線絶縁保護管と電線とに共に巻き付けるようにして電線絶縁保護管を固定するようにしていた。しかしながら、このような従来の固定手段は、すべて面倒な手作業でしかも高所で行なわれていたため、作業に手間が掛かるばかりかともすると感電事故を惹起するおそれがあって極めて危険であった。この点を考慮し、作業が簡単にしかも安全に行なえるようにした固定具がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】実開平7−39234号公報(第1頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記固定具は、一対の挟持片の内面に弾性挟持部材を回動自在に装着した電線挟持部が形成され、また、各挟持片の幅方向下端部には、その一方に係合片、他方に係合孔がそれぞれ形成された構成からなり、全体に大型化ししかも複雑な構造からなることから、取扱いが容易でないばかりか成形が面倒であり、また、保管にも場所を取るなど商品管理が煩雑になると言った課題がある。
【0005】
そこで、本発明は上記課題に鑑みなされたもので、小型でしかも簡単な構成であることから取り扱い易く、また、合成樹脂により成形すれば、成形が容易で製作コストも低廉になしえ、更には作業の能率化を図ることができる電線絶縁保護管の端末固定具を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本発明に係る電線絶縁保護管の端末固定具は、基体部と、前記基体部の一側から延設され電線に固定するための固定バンドと、前記基体部の他側から延設され電線絶縁保護管に係留するための係留バンドと、からなり、前記基体部に前記固定バンドと係留バンドがそれぞれ挿通される二個の挿通孔を貫設し、前記固定バンドと係留バンドとの側面にそれぞれ噛合部を設けると共に該各噛合部と対応する前記各挿通孔の内側面に該各噛合部と互いに噛合して挿通された固定バンドまたは係留バンドの抜脱を阻止する弾性噛合部を設け、前記固定バンドと係留バンドとを互いに延長線上で直交するように設け、また、前記弾性噛合部と前記基体部とに、それぞれ外側へ突出しかつ互いに指先で摘むことにより前記噛合部と弾性噛合部との係合を外すことができる摘み片を突設した構成からなる。
【0007】
前記端末固定具は、合成樹脂の一体成形により成形されることが好ましい。
【0008】
そこで、電線に所定本数の電線絶縁保護管を被着して接続する。そして、その一端側の大径の被押し込み部にあっては、基体部を電線の上方でかつ該電線に沿って平行に配置し、下側から延設される固定バンドを電線に巻回すると共にその先端部を対向する挿通孔に挿通して引き締める。一方、前記被押し込み部と対向する一側から延設される係留バンドを前記被押し込み部の上端部に沿って設けられた環状の把手部に挿通すると共にその先端を対向する挿通孔に挿通して引き締める。また、他端側の小径の押し込み部にあっては、基体部を電線の下方でかつ該電線に沿って平行に配置し、上側から延設される固定バンドを電線に巻回すると共にその先端部を対向する挿通孔に挿通して引き締める。一方、前記押し込み部と対向する一側から延設される係留バンドを、前記押し込み部の下部に延設される脚辺部に開設された透孔に挿通すると共にその先端部を対向する挿通孔に挿通して引き締める。
【0009】
これにより、電線に前記電線絶縁保護管がずれること無くしっかりと固定される。しかも、固定バンドと係留バンドとは延長線上で直交するように設けられていることから、電線に対する電線絶縁保護管の固定が簡単に行なえることになる。また、電線絶縁保護管を取外す場合が生じたときは、弾性噛合部の一側と基体部の一側とに突設した摘み片を互いに摘むことにより、噛合部と弾性噛合部との係合をはずして固定バンドまたは係留バンドを挿通孔から抜くようにする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電線絶縁保護管の端末固定具は、基体部と該基体部の一側から延設され電線に固定するための固定バンドと基体部の他側から延設され電線絶縁保護管に係留するための係留バンドといった全体に小型で簡単な構成からなるので、取り扱いが非常に楽であり、特に、合成樹脂の一体成形により成形すれば、その成形が容易であって製作コストも低廉になし得るという効果がある。
【0011】
また、基体部から延設される固定バンドと係留バンドとを互いに延長線上で直交するように設けたので、電線に対する電線絶縁保護管の固定が簡単に行なえることになる。
【0012】
更に、弾性噛合部の一側と基体部の一側とに、固定バンド又は係留バンドの噛合部と弾性噛合部との係合を外すことができる摘み片を突設したので、電線絶縁保護管を取外す場合は、金属製の切断工具を使用せずに端末固定具が取り外しでき、これにより電線が活線状態でも安全に作業できることとなり、作業の能率化が図られるという効果も有る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る電線絶縁保護管の端末固定具(以下、単に端末固定具という。)の実施の形態を図面と共に説明する。図1は本発明に係る端末固定具の斜視図、図2は同平面図、図3は図2におけるV−V線拡大断面図である。この端末固定具Aはポリエチレン樹脂からなり、略方形の平板状に成形される基体部1と、この基体部1の一側面1aから延設され後記する電線Tに固定するための固定バンド2と、基体部1の隣接する他側面1bから延設され後記する電線絶縁保護管20に係留するための係留バンド3と、からなる。
【0014】
前記固定バンド2は、可撓性を有し、幅が例えば7mmであって長さが例えば約160mmに成形されている。また、係留バンド3も、可撓性を有し、幅が例えば7mmであって長さが例えば約250mmに成形されている。固定バンド2と係留バンド3は、いずれもその平坦な面が同一方向を向き平行に配置され、しかも、互いに延長線上で直交するように設けられている。
【0015】
そして、基体部1には、前記固定バンド2と対向して該固定バンド2が挿通される挿通孔4が貫設されている。同様に、基体部1に、係留バンド3と対向して該係留バンド3が挿通される挿通孔5が貫設されている。前記固定バンド2と係留バンド3における同じ向きの側面2a,3aに、その長手方向に沿ってそれぞれ断面鋸歯状の噛合部6,7が設けられている。また、各噛合部6,7と対向する前記各挿通孔4,5の内側面には、前記各噛合部6,7と互いに噛合して挿通された固定バンド2または係留バンド3の抜脱を阻止する弾性噛合部8,9が設けられている。弾性噛合部8は爪が3個、弾性噛合部9は爪が1個である。前記固定バンド2の噛合部6は、係留バンド3の噛合部7よりピッチ間隔が狭く形成されており、電線Tに巻回したときの緩みの発生を少なくしている。
【0016】
前記各挿通孔4,5の挿入側にあっては、各挿通孔4,5の内周面と連なると共に基体部1の外周面から突設して、固定バンド2,係留バンド3を前記挿通孔4,5へ案内して挿入し易くするためのガイド片10が設けられている。一方、各挿通孔4,5の引出側にあっては、各弾性噛合部8,9から突出するようにして摘み片11が一体に設けられている。また、固定バンド2の基端部側には、基体部1の一側面1aであって挿通孔4を挟んだ両側に、前記摘み片11と同方向を向く固定された一対の摘み片12が所定の間隔離して突設されている。同様に、係留バンド3の基端部側には、基体部1の他側面1bであって挿通孔5、すなわち摘み片11、と同じ位置に所定の間隔離して一個の固定された摘み片12が突設されている。各弾性噛合部8,9から突出する摘み片11は、それぞれ基体部1の一側面1aまたは他側面1bに突設された摘み片12よりも長く形成されている。
【0017】
そこで、各挿通孔4,5に固定バンド2と係留バンド3を挿通した後、図4に示すように固定バンド3側では、3本の指を各摘み片11,12に宛がい互いに強く摘むと、中央の弾性噛合部8がその弾性に抗して撓み、固定バンド2の噛合部6と弾性噛合部8との係合を外すことができるようになっている。また、係留バンド3側では、2本の指を各摘み片11,12に宛がい互いに強く摘むと、弾性噛合部9がその弾性に抗して撓み、係留バンド3の噛合部7と弾性噛合部9との係合を外すことができるようになっている。このように、固定バンド2および係留バンド3を挿通孔4,5から抜くことにより端末固定具Aが取り外しできるようにしているのは、電線が活線状態で電線絶縁保護管20を取外す場合があり、この場合は安全上前記固定・係留バンド2,3を切断するための金属製の工具が使用できないためである。
【0018】
本発明の端末固定具Aは上記構成からなり、次に図5乃至図8に基づきその使用方法について説明する。図中、20は電線絶縁保護管であって、耐摩耗ポリエチレン樹脂により成形される。この電線絶縁保護管20は、略円筒状の本体部20aの下側が長手方向に沿って切断され開口できるようになっており、その切断部両縁に長手方向に沿って下方へ延出された一対の脚辺部21,21が設けられている。本体部20aの一端側は押込み部20bとなり、その先端外周面に環状鍔部22が周設され、また、両脚辺部21,21の側端部に透孔23が貫設されている。また、本体部20aの他端側は被押込み部20cとなり、前記本体部20aの押込み部20bを押し込んで環状鍔部22が係合できるようになっている。すなわち、被押し込み部20cには、他方の押込み部20bが挿通されるように大径に成形され、その内側に前記環状鍔部22が嵌入して係合する環状凹部24が周設されている。また、被押込み部20cの外周面には、その上端部に沿って手を通して持つための環状の把手部25が設けられている。
【0019】
前記電線絶縁保護管20は、押込み部20bを被押込み部20cに挿入することにより、電線Tを被覆する個所に合わせて複数本を接続して使用される。そして、その一端側に押込み部20bが現れ、他端側には被押込み部20cが現れる。そこで、押込み部20bを電線Tに固定するには、図5に示すように電線Tの下方でかつ該電線Tに沿って基体部1を平行に配置する。この際、固定バンド2は電線Tに対し直交状に配置され、係留バンド3は電線絶縁保護管20の中心軸線と平行に配置される。そして、図6(イ)に示すように上側の一側面1aから延設される固定バンド2を電線Tに巻回すると共にその先端部を対向する挿通孔4に挿通して引き締める。一方、図6(ロ)に示すように前記押込み部20bと対向する側、すなわち他側面1bから延設される係留バンド3を押込み部20bの下部に延設される脚辺部21に開設された透孔23に挿通すると共にその先端部を対向する挿通孔5に挿通して引き締める。
【0020】
また、被押込み部20cにあっては、図7に示すように電線Tの上方でかつ該電線Tに沿って基体部1を平行に配置する。この際、固定バンド2は電線Tに対し直交状に配置され、係留バンド3は電線絶縁保護管20の中心軸線と平行に配置される。そして、図8(イ)に示すように下側の一側面1aから延設される固定バンド2を電線Tに巻回すると共にその先端部を対向する挿通孔4に挿通して引き締める。一方、図8(ロ)に示すように前記被押込み部20cと対向する側、すなわち他側面1bから延設される係留バンド3を被押込み部20cの上縁部に沿って設けられた環状の把手部25に挿通すると共にその先端部を対向する挿通孔5に挿通することにより引き締める。
【0021】
このようにして、電線絶縁保護管20が電線Tにしっかりと固定される。また、係留バンド3が電線Tの外周面に強く巻き付くので、ほとんど緩みがなく電線絶縁保護管20が電線Tに沿ってずれるようなことはない。電線Tから電線絶縁保護管20を取外す場合は、作業者が絶縁手袋をして摘み片11,12を指で摘むことにより、各挿通孔4,5から固定バンド2及び係留バンド3を簡単に抜くことができ、ニッパ等金属製の工具を使用せずに作業ができるので、電線Tが活線状態のままでも安全に作業が行なえ、周囲の停電処置をする必要がないことから、作業の能率化が図られる。
【0022】
本発明によれば、固定バンド2と係留バンド3が延長線上で直交するようにして設けられているので、電線Tと電線絶縁保護管20とに容易に巻回でき、電線絶縁保護管20が電線Tにしっかりと固着されることになる。また、端末固定具Aは、小型化して構成も簡単であることから高所作業が行ない易く、作業も安全に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る端末固定具の斜視図。
【図2】同平面図。
【図3】図2のV−V線拡大断面図。
【図4】同固定バンドを引き抜く状態を示す断面図。
【図5】端末固定具により電線保護管を固定する方法を示す使用状態図。
【図6】(イ)は図5のW−W線断面図、(ロ)は図5のX−X線断面図。
【図7】端末固定具により電線保護管を固定する方法を示す使用状態図。
【図8】(イ)は図7のY−Y線断面図、(ロ)は図7のZ−Z線断面図。
【符号の説明】
【0024】
1 基体部
2 固定バンド
3 係留バンド
4 挿通孔
5 挿通孔
6 噛合部
7 噛合部
8 弾性噛合部
9 弾性噛合部
11 摘み片
12 摘み片
20 電線絶縁保護管
A 端末固定具
T 電線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体部と、前記基体部の一側から延設され電線に固定するための固定バンドと、前記基体部の他側から延設され電線絶縁保護管に係留するための係留バンドと、からなり、前記基体部に前記固定バンドと係留バンドがそれぞれ挿通される挿通孔を貫設し、前記固定バンドと係留バンドとの側面にそれぞれ噛合部を設けると共に該各噛合部と対応する前記各挿通孔の内側面に該各噛合部と互いに噛合して挿通された固定バンドまたは係留バンドの抜脱を阻止する弾性噛合部を設け、前記固定バンドと係留バンドとを互いに延長線上で直交するように設け、また、前記弾性噛合部と前記基体部とに、それぞれ外側へ突出しかつ互いに指先で摘むことにより前記噛合部と弾性噛合部との係合を外すことができる摘み片を突設したことを特徴とする電線絶縁保護管の端末固定具。
【請求項2】
合成樹脂の一体成形により成形される請求項1記載の電線絶縁保護管の端末固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−95106(P2009−95106A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−261669(P2007−261669)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(000243939)名伸電機株式会社 (38)
【Fターム(参考)】