説明

電線被覆切具及びその取扱方法

【課題】簡単に製造可能な工具で、従来方式に比べて小さい力で電線の被覆を長手方向に切ることができるようにする。
【解決手段】被覆電線の被覆を切る電線被覆切具において、支点軸を有して、一端に作用部が設けられ、他端に把持部が設けられた本体1と、支点軸に係合された受け軸を有して、一端に作用部が設けられ、他端に把持部が設けられた本体2と、本体1の作用部に回転自在に係合され、被覆電線の一方の面の被覆を長手方向に切る円形カッター4と、本体2の作用部に回転自在に係合され、円形カッター4に従動して被覆電線を他方の面から押圧するローラー5とを備えるものである。この構成によって、従来方式に比べて小さい力で被覆電線の被覆を長手方向に切れるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、変圧器コイルの終端部の紙巻平角電線の被覆を長手方向に切る工具に適用可能な電線被覆切具及びその取扱方法に関する。
【0002】
詳しくは、支点軸を有して、一端に作用部が設けられ、他端に把持部が設けられた第1の本体の作用部に回転自在に係合され、被覆電線の一方の面の被覆を長手方向に切る円形カッターと、上述の支点軸に係合された受け軸を有して、一端に作用部が設けられ、他端に把持部が設けられた第2の本体の作用部に回転自在に係合され、円形カッターに従動して被覆電線を他方の面から押圧するローラーとを備え、固定して作業できない被覆電線、例えば変圧器コイルの終端部の紙巻平角電線の被覆を剥ぐとき、従来方式に比べて小さい力で電線の被覆を長手方向に切ることができるとともに、容易に押圧を加減し、電線に付く不要な傷を最小限に抑えることができるようにしたものである。
【背景技術】
【0003】
従来、被覆電線の被覆を剥いで電線を露出させる際には、ワイヤーストリッパー、ニッパー等の工具を用いて被覆剥ぎ作業を行っている。しかし、被覆を剥いで露出したい電線の長さが一定長さを越えると、それらの工具を用いた被覆剥ぎ作業ができなくなる。その際には、例えばカッターナイフを用いて長手方向に被覆を切って、その切れ目を手で開くようにして電線を露出させ、開かれて不要となった部分の被覆を更にカッターナイフで切り取って被覆剥ぎ作業を行っている。このようなカッターナイフ等を用いた被覆電線の被覆剥ぎ作業は、例えば3mm〜12mmといった幅の違う被覆電線や、平角、円形等断面形状の違う被覆電線に対しても、柔軟に対応することが可能である。
【0004】
一方で、変圧器コイルの紙巻平角電線の被覆を剥ぐ際にも一般にカッターナイフが用いられている。変圧器コイルに用いられる紙巻平角電線は、始端部から終端部へ螺旋状に紙が巻かれて被覆されており、被覆の終端部では紙を手で容易に剥ぎ取ることができるが、被覆の始端部では手で剥ぎ取ることが困難である。変圧器の組立工程では、被覆の始端部、終端部共に被覆を長く剥ぐ必要があり、特に被覆の始端部における被覆剥ぎ作業にカッターナイフが用いられる。
【0005】
それに関連して、特許文献1に示すような電線被覆カッターも提案されている。この電線被覆カッターによれば、電線の被覆を電線端から長く除去しようとする際に、電線把持部により把持した電線を、案内路に沿って長手方向へ移動させることにより、刃部が電線の被覆に長手方向へ延びる切り込みを付すようになされる。従って、電線被覆を一度に長く除去できるというものである。
【0006】
【特許文献1】特開2004−337434号公報(第3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、カッターナイフを用いた被覆剥ぎ方法によれば、特に幅の狭い被覆電線に対して被覆剥ぎ作業を行う際に、電線からカッターナイフが逸れて、手を切る危険性が高いほか、カッターナイフに加える力の加減が難しく、電線に不用な傷を付けてしまったり、電線を切断してしまうことも多い。また、特許文献1に係る電線被覆カッターによれば、電線把持部を把持して長手方向に引く際に、刃部と被覆電線の接触抵抗が大きく感じられる他、カッターの構造が複雑である。
【0008】
そこで、本発明は上述の問題に鑑み創作されたものであり、簡単に製造可能な工具で、従来方式に比べて小さい力で電線の被覆を長手方向に切ることができるようにした電線被覆切具及びその取扱方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る電線被覆切具は、支点軸を有して、一端に作用部が設けられ、他端に把持部が設けられた第1の本体部材と、支点軸に係合された受け軸を有して、一端に作用部が設けられ、他端に把持部が設けられた第2の本体部材と、第1の本体部材の作用部に回転自在に係合され、被覆電線の一方の面の被覆を長手方向に切る円形状の切刃部材と、第2の本体部材の作用部に回転自在に係合され、切刃部材に従動して被覆電線を他方の面から押圧する従動部材とを備え、切刃部材と従動部材とで被覆電線を挟み、第1、第2の本体部材の把持部で押圧を加減して、被覆電線の長手方向に第1、第2の本体部材を移動させて、被覆電線の被覆を長手方向に切るように構成されることを特徴とするものである。
【0010】
この発明に係る電線被覆切具によれば、固定して作業できない被覆電線、例えば変圧器コイルの終端部の紙巻平角電線の被覆を剥ぐとき、切刃部材と従動部材とで被覆電線を挟み、第1、第2の本体部材の把持部で押圧を加減しながら長手方向に移動させて切るようになる。これにより、従来方式に比べて小さい力で電線の被覆を長手方向に切ることができるとともに、容易に押圧を加減して電線に付く不要な傷を最小限に抑えることができる。また、これらの効果を構造が簡単な工具により実現できる。従って、変圧器の製造におけるコイル終端加工作業の効率が上がる。
【0011】
この発明に係る電線被覆切具の取扱方法は、支点軸を有して、一端に作用部が設けられ、他端に把持部が設けられた第1の本体部材と、支点軸に係合された受け軸を有して、一端に作用部が設けられ、他端に把持部が設けられた第2の本体部材と、第1の本体部材の作用部に回転自在に係合され、被覆電線の一方の面の被覆を長手方向に切る円形状の切刃部材と、第2の本体部材の作用部に回転自在に係合され、切刃部材に従動して被覆電線を他方の面から押圧する従動部材とを備える電線被覆切具の取扱方法において、切刃部材と従動部材とで被覆電線を挟む工程と、第1、第2の本体部材の把持部で押圧を加減する工程と、被覆電線の長手方向に第1、第2の本体部材を移動させて被覆電線の被覆を切る工程とを有することを特徴とするものである。
【0012】
本発明に係る電線被覆切具の取扱方法によれば、固定して作業できない被覆電線、例えば変圧器コイルの終端部の紙巻平角電線の被覆を剥ぐとき、従来方式に比べて小さい力で電線の被覆を長手方向に切ることができる。
【発明の効果】
【0013】
この発明に係る電線被覆切具によれば、支点軸を有して、一端に作用部が設けられ、他端に把持部が設けられた第1の本体部材の作用部に回転自在に係合され、被覆電線の一方の面の被覆を長手方向に切る円形状の切刃部材と、上述の支点軸に係合された受け軸を有して、一端に作用部が設けられ、他端に把持部が設けられた第2の本体部材の作用部に回転自在に係合され、切刃部材に従動して被覆電線を他方の面から押圧する従動部材とを備えるようになされる。この構成によって、切刃部材と従動部材とで被覆電線を挟み、第1、第2の本体部材の把持部で押圧を加減しながら長手方向に移動させて、再現性よく被覆を切ることができるので、固定して作業できない被覆電線、例えば変圧器コイルの終端部の紙巻平角電線の被覆を剥ぐとき、従来方式に比べて小さい力で電線の被覆を長手方向に切ることができる。
【0014】
また、この発明に係る電線被覆切具の取扱方法によれば、切刃部材と従動部材とで被覆電線を挟み、第1、第2の本体部材の把持部で押圧を加減して、被覆電線の長手方向に移動させて被覆電線の被覆を切ることができる。この構成によって、固定して作業できない被覆電線、例えば変圧器コイルの終端部の紙巻平角電線の被覆を剥ぐとき、従来方式に比べて小さい力で電線の被覆を長手方向に切ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
続いて、この発明に係る電線被覆切具及びその取扱方法について、図面を参照しながら説明をする。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明に係る第1の実施例としての電線被覆切具100の構成例を示す斜視図である。図1に示す電線被覆切具100は、電線被覆切具の一例を構成し、変圧器コイルの終端部の紙巻平角電線の被覆を一定長さ以上剥ぐ際に、電線の被覆を長手方向に切るようになされる。この電線被覆切具100は、本体1及び2、円形カッター4、ローラー5を備えて構成される。
【0017】
本体1は、第1の本体部材の一例を構成し、支点軸を有して、一端に作用部が設けられ、他端に把持部が設けられるようになされる。本体1の把持部の端部は、はさみのグリップのように指を入れられる形状になされる。本体2は、第2の本体部材の一例を構成し、上述の支点軸に係合された受け軸を有して、一端に作用部が設けられ、他端に把持部が設けられようになされる。本体2の把持部の端部も、本体1と同様に指を入れられる形状になされる。例えば、本体1及び2は鉄やアルミ合金等の充分丈夫な素材で構成される。作業者は、両把持部を片手で把持して操作することで、両作用部で紙巻平角電線を加減よく挟んだり、本体を移動させたりできるようになる。本体1の作用部には、円形切刃部材の一例を構成する円形カッター4が回転自在に係合され、変圧器コイルの終端部の紙巻平角電線の被覆を長手方向に切るようになされる。例えば円形カッター4は、鉄、アルミ合金等の充分丈夫な素材で構成され、係合される本体1の移動に伴い紙巻平角電線の上面を回転して、電線の被覆を切るように動作する。本体2の作用部には、従動部材の一例を構成するローラー5が回転自在に係合され、円形カッター4に従動するようになされる。例えばローラー5はプラスチック樹脂やセラミック樹脂等の充分丈夫な素材で構成され、係合される本体2の移動に伴い紙巻平角電線の下面を回転して、電線に下から力を加えるように動作する。このように、電線被覆切具100が構成される。以下で電線被覆切具100の製造(組立)例について説明する。
【0018】
図2は、実施例としての電線被覆切具100の部材例及び組立例を示す斜視図である。図1に示した電線被覆切具を製造する(組み立てる)場合、まず、本体1を準備する。例えば本体1は、所定の型枠に鉄やアルミ合金を流し込んで固めて形成される。所定の型枠は以下のように製造するとよい。
【0019】
一端に作用部1aを、他端に把持部1bを形成でき、作用部1aと把持部1bとの間に支点軸1cを形成できるようにする。ここで把持部1bは、作用部1aの開口幅や押圧加減を操作しやすい長さを備えるようにする。また、開口操作に便利なように、端部をはさみのグリップのように指を入れられる形状にするとよい。作用部1aは様々な形状、太さの被覆電線を挟める長さを備えるようにする。例えば、3mm〜12mm幅の紙巻平角電線を把持する場合、最大幅である12mm幅の紙巻平角電線を充分把持できる長さにする。またこの実施例で、作用部1aには、紙巻平角電線を外周方向から揺動自在に把持できる外周切り用の凹部1eを備えるようにする。この凹部1eの幅は紙巻平角電線の最大幅を揺動自在に挟める程度、例えば最大で12mm幅の紙巻平角電線が想定される場合、16mm程度に設定するとよい。凹部1eの深さは想定される被覆の厚さに充分余裕を持たせた値、例えば5mmくらいあればよい。更に作用部1aには、上述の凹部1eの開口方向の延長線上に、回転軸を通す孔部1dを開口するようにする。上述のように製造した型枠に、鉄やアルミ合金等を流し込んで固めて、本体1を製造する。本体1を製造後、支点軸1cの中心部に固定螺子20を螺合する為の螺子穴1fを開口する。また、孔部1dには、軸10を螺合する為の螺子切りをする。
【0020】
本体1の支点軸1cには、本体2の受け軸2cが係合される。本体2も本体1と同様にして、所定の型枠に鉄やアルミ合金を流し込んで固めて製造するとよい。本体2は、本体1と同素材で構成されているものが好ましいが、それに限られることはなく、本体1と異素材で構成されたものであってもよい。所定の型枠は以下のようにする。
【0021】
一端に作用部2aを、他端に把持部2bを形成でき、作用部2aと把持部2bとの間に受け軸2cを形成できる型枠を用意する。把持部2bは、作業者が把持部1bと共に片手で把持できるように、把持部1bと同じ長さにするとよい。把持部2bも把持部1bと同様に、端部をはさみのグリップのように指を入れられる形状にすると作用部を開口しやすい。作用部2aは、作業者が作用部1aと共に紙巻平角電線を挟めるように、通常、作用部1aと同じ長さにする。作用部2aには、作用部1aと対向する位置に回転軸を通す孔部2dを開口するようにする。上述のように製造した型枠に、鉄やアルミ合金等を流し込んで固めて、本体2を製造する。本体2を製造後、孔部2dには、軸11を螺合する為の螺子切りをする。
【0022】
本体1の作用部1aに係合される円形カッター4には、鉄、アルミ合金等の充分丈夫な素材からなり、紙巻平角電線の被覆を回転しながら切るのに好適な半径を備えたカッターが使用される。円形カッター4は、回転しながら効率よく被覆を切ることができるので、円周の刃が通常の直線カッターに使われる刃先ほどに鋭利な形状である必要はなく、例えば紙製の被覆だけを切る場合は人体が切れない程度に鈍い刃先のものでよい。
【0023】
本体2の作用部2aに係合されるローラー5には、プラスチック樹脂やセラミック樹脂等からなり、紙巻平角電線を下面から円形カッター4に押圧するのに好適な半径と厚みを備えたローラーが使用される。
【0024】
上述の部材を準備したら、以下のように組み立て作業を行う。まず、本体1の作用部1aの孔部1dに、端部を螺子切りされた軸10を用いて円形カッター4を回転自在に係合する。軸10は第1の軸の一例を構成し、支点軸1cに平行になるようになされる。軸10は紙巻平角電線の幅に合わせて軸方向の張り出し長さを変えられるようにするとよい。張り出し長さを変える方法としては、例えば円形カッター4と作用部1aの間に、適宜ワッシャーを挟んで調節を行う方法が挙げられる。次に、本体2の作用部2aの孔部2dに、端部を螺子切りされた軸11を用いてローラー5を回転自在に係合する。軸11は第2の軸の一例を構成し、受け軸2cに平行になるようになされる。軸11も紙巻平角電線の幅に合わせて長さを変えられるようにするとよい。最後に受け軸2cに支点軸1cを差し込み、固定螺子20を用いて抜けないように固定し、本体1と本体2とを係合する。その際には、紙巻平角電線を把持するのに好適な範囲で互いの作用部が開口/閉口自在なようにする。また、本体1及び2の作用部が最も閉口した状態において、円形カッター4とローラー5とが最小厚の紙巻平角電線を充分に挟める程度の距離、例えば1mm程度離れるようにすると、互いの接触による摩耗を防ぐことができる。これにより、図1に示す電線被覆切具100を製造する(組み立てる)ことができる。
【0025】
以下、図面を参照しながら、電線被覆切具100の取扱方法について説明する。図3A、図4及び5は、電線被覆切具100の取扱方法を示した斜視図である。この実施例では、変圧器コイル7の終端部を加工する際に、電線被覆切具100を用いて紙巻平角電線8の被覆8aを長手方向に長く剥ぐ場合を例に挙げる。紙巻平角電線8は、断面が平角形状の電線8bを、紙製の被覆8aにより被覆したものである。
【0026】
まず、図3Aに示すように、電線被覆切具100の把持部1b、2bにより作用部1a、2aの開口幅を操作し、変圧器コイル7終端部の紙巻平角電線8を円形カッター4とローラー5とで挟む。その際には、被覆8aを剥ぎたい始点を挟むようにする。図3Bは、図3Aで点線で囲った部分を仮想X−Y平面で切断し、把持部側から見た拡大断面図である。図3Bに示すように、円形カッター4が紙巻平角電線8の中心付近にあたるようにするとよい。次に、本体1及び2の把持部で、紙巻平角電線8の被覆8aだけが切れるように作用部の押圧を加減する。次に図4に示すように、本体1及び2を剥ぎたい終点である終端部へと長手方向に移動させて円形カッター4で被覆8aの上面を切る。
【0027】
以上の作業により長手方向の切れ目を入れたら、図5に示すように外周切り用の凹部1eを利用して、被覆8aを切った始点を外周方向から揺動自在に把持する。本体1及び2の把持部を操作して適度な押圧を加えながら外周方向で回転させ、円形カッター4により被覆8aの外周を切り、不要になった端部の被覆8aを除去する。これにより、変圧器コイル7の終端部を加工する際の紙巻平角電線8の被覆剥ぎ作業が終了する。
【0028】
このように、本発明に係る第1の実施例としての電線被覆切具100及びその取扱方法によれば、変圧器コイル7の終端部の紙巻平角電線の被覆を剥ぐとき、回転自在に係合された円形カッター4を電線の被覆上で回転させて、従来方式に比べて小さい力で電線の被覆を長手方向に切ることができる。また、把持部の握り強さを調節することで容易に押圧を加減し、電線に付く不要な傷を最小限に抑えて被覆を切ることができ、変圧器の製造におけるコイル終端加工作業の効率が上がる。
【実施例2】
【0029】
図6Aは、本発明に係る第2の実施例としての電線被覆切具101の構成例を示す正面図である。図6Bは、図6Aで点線で囲った部分を把持部側から見たX1−X1矢視断面図である。図6Aに示す電線被覆切具101は、本体1及び13、円形カッター4及び9を備えて構成される。
【0030】
本体13は、第2の本体部材の一例を構成し、受け軸13cを有して、一端に作用部13aが設けられ、他端に把持部13bが設けられるようになされる。ここで、本体13の受け軸13cは、係合される支点軸の位置を変更可能な形状を有するようになされる。例えば受け軸13cは、図6Aに示すように、幾つかの円形の受け軸がオーバーラップして結合された形状になされる。そのオーバーラップ部を通って、支点軸1cが各受け軸間を移動できるようになされた場合、作業者は、本体1及び13を完全に分離させることなく互いの支点の位置を変更できるようになる。また、作用部13aには、紙巻平角電線を外周方向から揺動自在に把持できる外周切り用の凹部13eを備えるようになされる。凹部13eの開口方向の延長線上には、回転軸を通す孔部を開口するようにする。作用部13aの孔部には、円形切刃部材の一例を構成する円形カッター9が回転自在に係合される。円形カッター9は、本体1の円形カッター4に従動して被覆電線の下面の被覆を長手方向に切るようになされる。円形カッター9には、通常円形カッター4と同じ形状のものが使用される。このように、電線被覆切具101が構成される。
【0031】
電線被覆切具101を製造する(組み立てる)場合、支点軸1cを受け軸13cの何れかの位置に係合する。どの位置に係合するかは、被覆電線のサイズに合わせて決定する。本体13の作用部13aの孔部には、円形カッター9を回転自在に係合する。円形カッター9は図6Bに示すように、円形カッター4と上下方向から同一線上で被覆電線を挟めるような位置に係合するとよい。このようにして、電線被覆切具101を製造する(組み立てる)ことができる。
【0032】
以下で電線被覆切具101の取扱方法について説明する。図7A及び図8Aは、電線被覆切具101の取扱方法を示した正面図である。図7B及び図8Bは、X2−X2矢視断面図及びX3−X3矢視断面図である。この第2の実施例では、電線被覆切具101を用いて、すでに長手方向に切り込みを入れられた紙巻平角電線8の外周を切って、不要な被覆8aを切り離す場合を例に挙げる。
【0033】
まず図7Aに示すように、電線被覆切具101の円形カッター4及び9で紙巻平角電線8を外周方向から挟む。その際には、両作用部の凹部を利用して、紙巻平角電線8を揺動自在に挟むようにする。図7Bに示すように、円形カッター4及び9が紙巻平角電線8の上下から同一線上で被覆電線にあたるようにする。次に、本体1及び13の把持部で紙巻平角電線8の被覆8aだけが切れるように作用部の押圧を加減しながら、円形カッターを円周方向で回転させるようにして、紙巻平角電線8の上下両面の被覆8aを切る。
【0034】
次に図8A、Bに示すように、本体1及び13を90度回転させ、同じようにして紙巻平角電線8の両側面の被覆8aを切るようにする。これにより、外周の全ての面の被覆8aを切ることができ、不要な被覆8aを切り離すことができるようになる。
【0035】
このように、本発明に係る第2の実施例としての電線被覆切具101及びその取扱方法によれば、被覆電線のサイズに合わせて、受け軸13cと支点軸1cとが係合される位置を変更できるようになる。従って、被覆を切るとき両作用部が平行になるように調整して、円形カッター4及び9が被覆電線に垂直にあたるようにできるとともに、外周切り用の凹部も互いに平行にできる。また、円形カッター9で、被覆を下面からも切るので、一度の動作で効率よく2つの切り込みを入れることができ、特に外周方向の被覆を切る際に、本体を90度回転させることで被覆を切り離せるようになる。
【実施例3】
【0036】
図9Aは、本発明に係る第3の実施例としての電線被覆切具102の構成例を示す正面図である。図9Bは、図9Aで点線で囲った部分を把持部側から見たX4−X4矢視断面図である。図9Aに示す電線被覆切具102は、本体1及び14、円形カッター4及び9、ガイド12を備えて構成される。
【0037】
本体14は、第2の本体部材の一例を構成し、受け軸14cを有して、一端に作用部14aが設けられ、他端に把持部14bが設けられるようになされる。ここで、作用部14aには、ガイド12が例えば脱着自在に結合される。ガイド12は、案内部材の一例を構成し、電線の被覆を長手方向に切る際に所定の面を沿わせて案内するようになされる。ガイド12は、プラスチック樹脂やセラミック樹脂等で構成され、電線の側面の断面形状に合わせた溝部12aを備えるようになされる。このように電線被覆切具102が構成される。
【0038】
電線被覆切具102を製造する(組み立てる)場合、本体14にガイド12を脱着できる凹部、凸部等の機構を有するようにするとよい。その際に、被覆電線を沿わせて案内するのに好適な位置にガイド12が結合できるようにする。例えば作用部14aに係合される円形カッター9の刃先付近にガイド12を結合させるようにすると、被覆を切る時に電線がずれにくい。ガイド12は被覆を切る電線の種類に合わせて幾つか用意するとよい。特に断面が円形状の電線は、長手方向に安定して切ることが難しいので、その側面を沿わせるのに好適な形状のガイド12を備えると有効である。例えば、図9に示すような断面が弧型の溝部12aを備えるようにするとよい。またガイド12は本体14に脱着できる機構を有してもよい。その場合、本体14側は脱着用の機構を備えなくてもよい。ガイド12を脱着させる必要がないと認められる場合には、本体14の案内部位としてガイド12を結合させてもよい。このようにして、電線被覆切具102を製造する(組み立てる)ことができる。
【0039】
以下で電線被覆切具102の取扱方法について説明する。この第3の実施例では、断面形状が円形の電線の被覆を長手方向に切る場合を例に挙げる。
【0040】
まず電線被覆切具102の円形カッター4及び9で円形電線を長手方向から挟む。次に本体1及び14の把持部で作用部の押圧を加減する。次に円形電線をガイド12に沿わせるようにして、本体1及び14を長手方向に移動させ、円形カッター4及び9で被覆の上下面を切る。
【0041】
このように、本発明に係る第3の実施例としての電線被覆切具102及びその取扱方法によれば、ガイド12に被覆電線の側面を沿わせ、被覆電線を長手方向に安定して直線的に切れるようになる。なお、本体1又は/及び14を製造する工程において、本体1又は/及び14が案内部位を備えるように形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、変圧器コイルの終端部の紙巻平角電線の被覆を長手方向に切る工具に適用して極めて好適である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】第1の実施例としての電線被覆切具100の構成例を示す斜視図である。
【図2】第1の実施例としての電線被覆切具100の部材例及び組立例を示す斜視図である。
【図3】(A)及び(B)は、電線被覆切具100の取扱例(その1)を示す斜視図及び断面図である。
【図4】電線被覆切具100の取扱例(その2)を示す斜視図である。
【図5】電線被覆切具100の取扱例(その3)を示す斜視図である。
【図6】(A)及び(B)は、第2の実施例としての電線被覆切具101の構成例を示す正面図及び断面図である。
【図7】(A)及び(B)は、電線被覆切具101の取扱例(その1)を示す正面図及び断面図である。
【図8】(A)及び(B)は、電線被覆切具101の取扱例(その2)を示す正面図及び断面図である。
【図9】(A)及び(B)は、第3の実施例としての電線被覆切具102の構成例を示す正面図及び断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1、2、13、14・・・本体、1a、2a、13a、14a・・・作用部、1b、2b、13b、14b・・・把持部、1c・・・支点軸、2c、13c、14c・・・受け軸、4、9・・・円形カッター、5・・・ローラー、7・・・変圧器コイル、8・・・紙巻平角電線、10、11・・・軸、12・・・ガイド、20・・・固定螺子、100、101、102・・・電線被覆切具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆電線の被覆を切る電線被覆切具において、
支点軸を有して、一端に作用部が設けられ、他端に把持部が設けられた第1の本体部材と、
前記支点軸に係合された受け軸を有して、一端に作用部が設けられ、他端に把持部が設けられた第2の本体部材と、
前記第1の本体部材の作用部に回転自在に係合され、前記被覆電線の一方の面の被覆を長手方向に切る円形状の切刃部材と、
前記第2の本体部材の作用部に回転自在に係合され、前記切刃部材に従動して前記被覆電線を他方の面から押圧する従動部材とを備え、
前記切刃部材と前記従動部材とで前記被覆電線を挟み、
前記第1、第2の本体部材の把持部で押圧を加減して、
前記被覆電線の長手方向に前記第1、第2の本体部材を移動させて、
前記被覆電線の被覆を長手方向に切るように構成されることを特徴とする電線被覆切具。
【請求項2】
前記第1又は/及び第2の本体部材には、
前記被覆電線の所定の面を沿わせて案内する案内部位が設けられることを特徴とする請求項1記載の電線被覆切具。
【請求項3】
前記第1又は/及び第2の本体部材には、
前記被覆電線の所定の面を沿わせて案内する案内部材が脱着自在に結合されることを特徴とする請求項1記載の電線被覆切具。
【請求項4】
前記第1の本体部材の作用部に、前記支点軸に平行な第1の軸を備え、
前記第1の軸で前記切刃部材が回転自在に係合され、
前記第2の本体部材の作用部に、前記受け軸に平行な第2の軸を備え、
前記第2の軸で前記従動部材が回転可能に係合されることを特徴とする請求項1記載の電線被覆切具。
【請求項5】
前記第1又は/及び第2の軸には、
被覆電線の径サイズに合わせて軸方向の張り出し長さを調整する機構を有していることを特徴とする請求項4記載の電線被覆切具。
【請求項6】
前記従動部材には、
円形状の切刃部材が使用され、
前記第1の本体部材に係合された切刃部材に従動して、
前記被覆電線の他方の面の被覆を切ることを特徴とする請求項1記載の電線被覆切具。
【請求項7】
前記第1、第2の本体部材は、
その作用部の各々に所定形状の外周切り用の凹部を有し、
両凹部の接合部で被覆電線を外周方向から揺動自在に挟んで、
前記第1、第2の本体部材の把持部で押圧を加減して、
前記被覆電線の外周方向に前記第1、第2本体部材を回転させて、
前記被覆電線の被覆の外周を切ることを特徴とする請求項6記載の電線被覆切具。
【請求項8】
前記第1、第2の本体部材は、
互いに係合される支点の位置を調整される機構を備え、
前記被覆電線の径サイズに応じて、当該第1、第2の本体部材の間をなす開口幅が調整可能となされていることを特徴とする請求項1記載の電線被覆切具。
【請求項9】
支点軸を有して、一端に作用部が設けられ、他端に把持部が設けられた第1の本体部材と、
前記支点軸に係合された受け軸を有して、一端に作用部が設けられ、他端に把持部が設けられた第2の本体部材と、
前記第1の本体部材の作用部に回転自在に係合され、前記被覆電線の一方の面の被覆を長手方向に切る円形状の切刃部材と、
前記第2の本体部材の作用部に回転自在に係合され、前記切刃部材に従動して前記被覆電線を他方の面から押圧する従動部材とを備える電線被覆切具の取扱方法において、
前記切刃部材と前記従動部材とで前記被覆電線を挟む工程と、
前記第1、第2の本体部材の把持部で押圧を加減する工程と、
前記被覆電線の長手方向に前記第1、第2の本体部材を移動させて前記被覆電線の被覆を長手方向に切る工程とを有することを特徴とする電線被覆切具の取扱方法。
【請求項10】
前記第1、第2の本体部材は、
その作用部の各々に所定形状の外周切り用の凹部を有し、
両凹部の接合部で被覆電線を外周方向から揺動自在に挟む工程と、
前記第1、第2の本体部材の把持部で押圧を加減する工程と、
前記被覆電線の外周方向で前記第1、第2の本体部材を回転させて前記被覆電線の被覆の外周を切る工程とを有することを特徴とする請求項9記載の電線被覆切具の取扱方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−79433(P2008−79433A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−256125(P2006−256125)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(000211293)中国電機製造株式会社 (69)
【Fターム(参考)】