説明

電線防護シートのクリップ装置

【課題】 電線防護シートのクリップ装置の操作性を向上する。
【解決手段】 複数の挿通孔12a,12b;13a,13bが形成される把持部4a,4bに連結部5a,5bの長手方向一端部が連なり、各連結部5a,5bの長手方向他端部に操作部6a,6bが連なり、各操作部6a,6bは捩りばね7によって各把持部4a,4bが相互に近接する方向にばね付勢され、各操作部6a,6bの押さえ面9a,9bがヒンジピン23から離反するにつれて相互に近接する方向に傾斜するように、位置決め用当接部8a,8bを形成して、各連結部5a,5bの当接位置を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧配電線路の活線工事における間接活線作業において、電気絶縁性の電線防護シートを電線に固定する際に使用する電線防護シートのクリップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術のクリップ装置は、たとえば特許文献1に記載されている。この先行技術では、クリップ装置であるシートクリップは、電線防護シートを把持する一対の把持部と、把持部に連なって形成され、把持部を操作する操作部とを有する。この先行技術に係るシートクリップは、把持部がばね力によって相互に近接する方向にばね付勢され、これによってクリップは閉じた状態において、各操作部の各挟着面がほぼ平行になるように形成し、さらに操作部の表面に滑り止め加工して、操作棒の先端部に設けられる絶縁ヤットコなどとも称される挟着具によってシートクリップの各操作部の挟着面を把持し易いように構成されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−27209号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような先行技術では、クリップの各把持部によって電線防護シートを把持し、挟着具によって挟着される各操作部の各挟着面がほぼ平行に形成されているため、電線防護シートが長期の使用によって、剛性が低下して、柔軟性が高くなると、前記クリップのばね力によって、各把持部は、電線防護シートを介在させた状態で、より近接した位置まで変位し、各操作部の各挟着面は、前記ほぼ平行な位置から相互に離反する方向へ変位し、いわば「ハ」の字状に開いてしまい、作業者が操作棒の基端部を把持した状態で、先端部に設けられる挟着具を大きく開いてクリップの各操作部を挟着しなければならず、操作性が悪いという問題がある。
【0005】
したがって本発明の目的は、電線防護シートのクリップ装置の操作性を向上することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、電線に装着された電気絶縁性の電線防護シートを挟着して把持するための2つの把持部と、
長手方向一端部に前記把持部がそれぞれ設けられ、各把持部が相互に近接および離反する方向に角変位自在に連結される2つの連結部と、
一方の把持部と他方の把持部とが相互に近接した状態で、前記各連結部の長手方向他端部に相互に離間して設けられる2つの操作部と、
各把持部が相互に近接する方向に、各操作部をばね付勢するばねとを含み、
前記各連結部には、各操作部が最も離れた状態において、各操作部が前記連結部から長手方向に離反するにつれて相互に近接する方向に傾斜して配置されるように位置決めする位置決め用当接部が形成されることを特徴とする電線防護シートのクリップ装置である。
【0007】
本発明に従えば、角変位自在に連結された2つの連結部の長手方向一端部には、把持部がそれぞれ設けられ、各連結部の長手方向他端部には、操作部がそれぞれ設けられ、各操作部は、ばねによって各把持部が相互に近接する方向にばね付勢される。
【0008】
このようなばねによって各操作部がばね付勢されるが、各連結部には位置決め用当接部が形成されるので、前記ばねのばね力によって、各把持部が、相互に近接する方向に最も近接した状態、すなわち各操作部が最も離れた状態であっても、各位置決め用当接部が相互に当接して、各操作部は長手方向に連結部から離反するにつれて相互に近接する方向に傾斜して配置されるように位置決めされ、前記従来の技術のように、いわば「ハ」の字状に拡開して配置されることはなく、これによって間接工法において、作業者が操作棒の先端部に設けられる挟着具を、前記従来の技術のように大きく開く必要がなくなり、クリップ装置の挟着作業を容易かつ確実に行うことが可能となる。
【0009】
また本発明は、前記各操作部は、前記長手方向に垂直な断面が相互に離反する方向に向けて開放した凹状部と、前記凹状部内に突出する係合爪とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明に従えば、各操作部は凹状部と係合爪とを有するので、挟着具の各操作部を凹状部に嵌合させた状態で、各操作部が挟着具のばね力によって係合爪に係合し、挟着具が各操作部の各凹状部から相互に離反する方向に変位することが防がれ、作業者が操作棒の基端部を把持しない状態で操作を行っても、各操作部から挟着具が容易に離脱してしまうことが防がれ、作業中に挟着具を各操作部に装着し直す手間を少なくして、作業性を向上することができる。
【0011】
さらに本発明は、前記各把持部には、棒状体を挿通するための挿通孔が形成されることを特徴とする。
【0012】
本発明に従えば、各把持部には挿通孔が形成されるので、各挿通孔に棒状体を挿通することによって、電線防護シートを、電線の延在方向に沿う幅方向に、広い範囲にわたって把持することが可能となり、電線防護シートの幅方向のずれを防ぎ、より確実な電線防護シートの電線への装着状態を達成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、各連結部に位置決め用当接部が形成されるので、各操作部がばねによってばね付勢されて、各把持部が相互に近接する方向にばね付勢された状態であっても、各位置決め用当接部が相互に当接し、各操作部は、連結部から長手方向に離反するにつれて相互に近接する方向に傾斜した状態に位置決めされ、これによって操作棒の先端部に設けられる挟持具を容易かつ確実に装着して挟着することができ、クリップ装置の各操作部に対する挟着時の操作性を向上することができる。
【0014】
また本発明によれば、各操作部は長手方向に垂直な断面が凹状の凹状部と、この凹状部内に突出する係合爪とを有するので、各操作部に挟着具を装着した状態で、挟着具が各操作部から不用意に離脱することが防がれる。
【0015】
さらに本発明によれば、各把持部に挿通孔が形成されるので、各挿通孔に棒状体を挿通することによって、電線防護シートを電線の延在方向に広い範囲にわたって把持することができ、これによって電線防護シートを電線に対して、より大きな強度で挟着することができ、電線防護シートの電線からのずれや脱落を、より確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は本発明の実施の一形態の電線防護シートのクリップ装置1を示す正面図であり、図2は図1の右側から見たクリップ装置1の側面図である。なお、図1および図2において、クリップ装置1は電線2に装着された電線防護シート3を把持した状態を示す。高圧配電線路の活線工事では、配電線、引下げ線およびジャンパ線などを含む電線2へ通電した状態で作業を行うため、作業中の感電事故、転落事故などが起こる危険性を伴い、このような事故の発生を未然に防止するため、電線2には電線防護シート3を装着して被覆し、この電線防護シート3の脱落防止のために、本実施の形態のクリップ装置1によって電線防護シート3が把持される。前記クリップ装置1は、電線2に装着された電線防護シート3を挟着して把持するための2つの把持部4a,4bと、長手方向一端部に前記把持部4a,4bがそれぞれ設けられ、各把持部4a,4bが相互に近接および離反する方向に角変位自在に連結される2つの連結部5a,5bと、一方の把持部4aと他方の把持部4bとが相互に近接した状態で、各連結部5a,5bの長手方向他端部に相互に離間して設けられる2つの操作部6a,6bと、各把持部4a,4bが相互に近接する方向に、各操作部6a,6bはばね付勢するばねである捩りばね7とを含む。
【0017】
各連結部5a,5bには、相互に近接する方向に突出する位置決め用当接部8a,8bがそれぞれ形成される。各位置決め用当接部8a,8bによって、各操作部6a,6bが最も離れた状態において、各操作部6a,6bが各連結部5a,5bから長手方向に離反するにつれて相互に近接する方向に、各操作部6a,6bに形成される各押さえ面9a,9bが傾斜して配置されるように、位置決めされる。各押さえ面9a,9bは、後述の図3に示す挟着具10の各挟着片11a,11bによって挟着され、クリップ装置1を開閉操作するために用いられる。
【0018】
各把持部4a,4bには、各複数(本実施例では2)の挿通孔12a,13a;12b,13bがそれぞれ形成され、一方の把持部4aには、一方の挿通孔12aに棒状体14aが挿通され、他方の把持部4bには、他方の挿通孔13bに棒状体14bが挿通される。これらの棒状体14a,14bは直円柱状であって、各一対の挿通孔12a,13a;12b,13bに挿通された状態では相互に平行である。これらの棒状体14a,14bを各挟着片11a,11bの挿通孔12a,13bに位置を違えて挿通することによって、電線防護シート3の棒状体挿入用ポケット15a,15bに挿入して、電線防護シート3の電線2に沿う幅方向(図2の左右方向)両端部間にほぼ全長にわたって保持し、電線防護シート3の挿入開口を緊張状態に維持して、確実な挟着状態を実現することができる。
【0019】
各把持部4a,4bは、各連結部5a,5bの長手方向一端部に一体的に連なって形成される。各連結部5a,5bは、相互に離反する方向に湾曲した湾曲アーム部21a,21bと、各湾曲アーム部21a,21bに連なって一体的に形成される直線アーム部22a,22bとを有し、各湾曲アーム部21a,21bと各直線アーム部22a,22bとの連結部分付近に、前記位置決め用当接部8a,8bが一体的に形成される。各直線アーム部22a,22bの前記長手方向他端部は、ヒンジピン23によって各把持部4a,4bが相互に近接および離反する方向に角変位自在に連結される。
【0020】
電線防護シート3は、展開形状が矩形のシート本体25と、シート本体25の折畳み状態において内側となる内面に一側面部が接着される補強シート26a,26bと、シート本体25の一端部の内面に垂直に立設するように接着される断面略V字状の第1リブ27と、シート本体25の他端部に第1リブ27よりも内側で相互に対向する側に突出して接着される断面略V字状の第2リブ28と、シート本体25の一端部に第1リブ27よりも第2リブ28寄りに隣接して接着される断面略V字状の第3リブ29とを有する。
【0021】
シート本体25は、ポリプロピレン、EVA樹脂、ポリエチレン、ゴム、塩化ビニル樹脂、ポリプデン、またはポリエチレンから成り、展開状態で図1の紙面に垂直な幅方向に長手の長方形の可撓性シートによって実現され、その厚みは、たとえば1.0〜2.5mmに選ばれる。各補強シート26a,26bは、EVA樹脂から成り、展開形状が図1の紙面に垂直な幅方向を長手とする長方形の可撓性シートから成り、その厚みは、たとえば0.3〜1.5mmに選ばれる。これらの補強シート26a,26bは、長辺側の一方の端部が前記シート本体25の長辺側の両端部と平行に第1および第3リブ28・29に隣接して固着され、長辺側の他端部はシート本体25に対して固着されておらず、シート本体25の短辺方向中央部近傍で相互に近接して配置され、図1に示すように、電線防護シート3が電線2に略V字状に掛止められた状態では、クリップ装置1の各位置決め用当接部8a,8bの当接位置を越えて、シート本体25の短辺方向中央部の近傍まで垂下し、電線2がシート本体25に直接接触して、シート本体25が損傷することを防止している。
【0022】
図3は、クリップ装置1を把持するための挟着具10を示す斜視図である。挟着具10は、2つの挟着片11a,11bがピン32によって角変位自在に連結され、一方の挟着片11aには電気絶縁性を有する合成樹脂製の操作棒33の長手方向一端部が固定される。この操作棒33の長手方向他端部には、ブラケット34が固定され、このブラケット34には作業者が把持する操作レバー35がピン36によって角変位自在に連結される。操作レバー35には、電気絶縁性を有する合成樹脂製の作動棒37の長手方向一端部がピン38によって角変位自在に連結され、作動棒37の長手方向他端部には、前記他方の挟着片11bがピン39によって角変位自在に連結される。
【0023】
このような挟着具10において、作業者が操作棒33の長手方向他端部を把持して、操作レバー35を挟持し、またはその挟持状態を解除することによって、操作レバー30はピン36の軸線まわりに角変位し、作動棒37を介して他方の挟着片11bが一方の挟着片11aに近接または離反させて、前記クリップ装置1の各操作棒6a,6bを挟着し、クリップ装置1を電線防護シート3に装着し、または離脱することができる。
【0024】
図4はクリップ装置1の断面図であり、図5はクリップ装置1を図4の右側から見た側面図である。前記クリップ装置1は、長手方向(図4の上下方向)に垂直な断面が相互に離反する方向に向けて開放した凹状部40a,40bと、凹状部40a,40b内に突出する係合片41a,41bとを有する。各凹状部40a,40bには、前述した挟着具10の各挟着片11a,11bがそれぞれ嵌まり込み、各係止片41a,41bによって抜け止めされ、作業中に各凹状部40a,40bから各挟着片11a,11bが離脱して、挟着具10がクリップ装置1から離脱してしまうことが防がれる。したがって電線防護シート3にクリップ装置1を装着し、または取外す際に、不用意にクリップ装置1を落下させてしまうという不具合が防がれ、作業性が向上される。
【0025】
このように構成されるクリップ装置1において、各操作部6a,6bが捩りばね7によってばね付勢されるが、各連結部5a,5bには位置決め用当接部8a,8bがそれぞれ形成されるので、前記捩りばね7のばね力によって各把持部4a,4bが相互に近接する方向に最も近接した状態、すなわち各操作部6a,6bが最も離れた状態によっても、各位置決め用当接部8a,8bが相互に当接して、各操作部6a,6bには長手方向に連結部5a,5bから離反するにつれて、相互に近接する方向に傾斜して配置され、前記従来技術のように拡開せず、これによって間接工法による活線作業時に、作業者が挟着具10の各挟着片11a,11bを大きく開く必要がなくなり、クリップ装置1の電線防護シート3への装着作業を容易かつ確実に行うことが可能となる。
【0026】
また、各把持部4a,4bには挿通孔12a,13a;12b,13bが形成されるので、各挿通孔12a,13a;12b,13bに位置を違えて選択的に棒状体14a,14bを挿通し、電線防護シート3を電線2の延在方向に沿う幅方向に広い範囲にわたって把持することができ、これによって電線防護シート3の電線2に対するずれを防ぎ、より確実な装着状態を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の一形態の電線防護シートのクリップ装置1を示す正面図である。
【図2】図1の右側から見たクリップ装置1の側面図である。
【図3】クリップ装置1を把持するための挟着具10を示す斜視図である。
【図4】クリップ装置1の断面図である。
【図5】クリップ装置1を図4の右側から見た側面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 クリップ装置
2 電線
3 電線防護シート
4a,4b 把持部
5a,5b 連結部
6a,6b 操作部
7 捩りばね
8a,8b 位置決め用当接部
9a,9b 押さえ面
10 挟着具
11a,11b 挟着片
12a,12b;13a,13b 挿通孔
14a,14b 棒状体
15a,15b 棒状体挿入用ポケット
25 シート本体
26a,26b 補強シート
40a,40b 凹状部
41a,41b 係合片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線に装着された電気絶縁性の電線防護シートを挟着して把持するための2つの把持部と、
長手方向一端部に前記把持部がそれぞれ設けられ、各把持部が相互に近接および離反する方向に角変位自在に連結される2つの連結部と、
一方の把持部と他方の把持部とが相互に近接した状態で、前記各連結部の長手方向他端部に相互に離間して設けられる2つの操作部と、
各把持部が相互に近接する方向に、各操作部をばね付勢するばねとを含み、
前記各連結部には、各操作部が最も離れた状態において、各操作部が前記連結部から長手方向に離反するにつれて相互に近接する方向に傾斜して配置されるように位置決めする位置決め用当接部が形成されることを特徴とする電線防護シートのクリップ装置。
【請求項2】
前記各操作部は、前記長手方向に垂直な断面が相互に離反する方向に向けて開放した凹状部と、前記凹状部内に突出する係合爪とを有することを特徴とする請求項1記載の電線防護シートのクリップ装置。
【請求項3】
前記各把持部には、棒状体を挿通するための挿通孔が形成されることを特徴とする請求項1記載の電線防護シートのクリップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−207280(P2009−207280A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−46865(P2008−46865)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000219820)株式会社トーエネック (51)
【出願人】(000115382)ヨツギ株式会社 (20)
【Fターム(参考)】