説明

電荷のバランスをとるための有機イオン含む粘土及びそれを含むナノコンポジット物質

本発明は、電荷のバランスをとるための有機イオンを含む粘土であって、該有機イオンはロジンをベースとするイオンであるところの粘土に関する。本発明は、ポリマーマトリックス及び有機イオンの少なくとも一部がロジンをベースとするイオンである電荷のバランスをとるための有機イオンを含む粘土を含むハイブリッド有機−無機コンポジット物質にもまた関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電荷のバランスをとるための有機イオンを含む粘土及びその使用方法に関する。本発明はこれらの粘土を含むハイブリッド有機−無機コンポジット物質及びその使用方法さらに関する。
【背景技術】
【0002】
電荷のバランスをとるためのイオンを有する粘土は先行技術において公知である。例えば国際公開第99/35186号は、ポリマー状マトリックス及び層状複水酸化物(LDH)を含むナノコンポジット物質を開示している。ここでLDHはアニオン、例えば6〜22の炭素原子を有するアルキル又はアルキルフェニル基を含むカルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、及びサルフェート酸(sulfate acid)で変性されている。
【0003】
国際公開第00/09599号は、ポリマー状マトリックス及びLDHを含むコンポジット材料を記載する。例えばLDHは、無置換の又は置換の、脂肪族又は芳香族カルボン酸又はそれらのアルカリ塩から選択されたイオンを有するハイドロタルサイトである。国際公開第00/09599号は、特に6〜35の炭素原子を有するモノカルボン酸並びにジカルボン酸及びそれらのエステルを挙げている。
【0004】
欧州特許出願公開第0 780 340号は、インターカレートされた層状物質、例えばスメクタイト粘土鉱物を開示する、ここでインターカレートするためのイオンは、ヒドロキシル、ポリヒドロキシル、カルボニル、カルボン酸、アミン、アミド、エーテル、エステル、フェニル、及びそれらの混合物からなる群から選択された官能基を含むモノマー状の有機化合物である。これらのモノマー状有機化合物の多くの例が与えられている。欧州特許出願公開第0 780 340は、これらのインターカレートされた層状物質がナノコンポジット物質において使用されることができることをもまた記載する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電荷のバランスをとるための有機イオンを含む新しい種類の粘土及びこれらの粘土を含むハイブリッドの有機−無機コンポジット物質を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、その少なくとも一部がロジンをベースとする電荷のバランスをとるための有機イオンを含む、アニオン性粘土、スメクタイトタイプの粘土、及びバーミキュライトから選択された粘土で達成される。
【0007】
電荷のバランスをとるための有機イオンで処理された粘土は、一般的に「有機粘土」と呼ばれる。従って本発明に従う粘土もまた有機粘土と呼ばれる。
【0008】
本発明の有機粘土は親有機性かつ有機物質と相溶性であり、そのことが、ハイブリッドの有機−無機コンポジット物質を得るために有機媒体に粘土が分散されるべきであるところの用途にとって、本発明の有機粘土を適切にする。本発明に従うと、有機イオンの少なくとも一部はロジンをベースとしている。ロジンの化学的性質及び物理的性質は、広い多様性の用途及び広い多様性の有機媒体、例えばポリマにおける使用にとって、本発明の有機粘土を適切にする。対照的に、慣用の有機粘土は一般的にはより制限された多様性の用途及び/又は有機媒体に適する。ロジンのさらなる利点は、それが安価であり、容易に入手可能であり、容易に変性されることである。
【0009】
本出願の文脈において、用語「電荷のバランスとるための有機イオン」は、結晶性粘土シートの静電気の電荷の欠乏を補償する有機イオンを意味する。粘土は典型的には層状の構造を有するので、電荷のバランスをとるための有機イオンは、積み重ねられた粘土の層の層間に、端に、又は外表面上に置かれ得る。積み重ねられた粘土の層の層間に置かれたそのような有機イオンはインターカレートするためのイオンと呼ばれる。
【0010】
そのような積み重ねられた粘土又は有機粘土は、例えばポリマーマトリックスにおいて脱ラミネート化(delaminated)又は剥離もまたされ得る。本明細書の文脈内において、用語「脱ラミネート化」は、粘土構造を少なくとも部分的に脱層化(delayering)し、そうすることにより、有意により多くの体積当たり個別粘土シートを含む物質を生成することによる粘土粒子の平均スタッキング度の低下として定義される。用語「剥離」は、完璧な脱ラミネート化、即ち媒体中における個々の層のランダムな分散をもたらし、そうすることによりスタッキングの秩序を全く残さない、粘土シートに垂直な方向における周期性の消失として定義される。
【0011】
粘土の膨潤又は膨張(粘土のインターカレーションともまた呼ばれる)はX線回折(XRD)で観察されることができる。なぜなら基底面反射(basal reflection)、即ちd(001)反射、はインターカレーションするとその距離が増大する層間の距離を示すからである。
【0012】
平均スタッキング度の減少が、XRD反射の(消失するまでの)幅広化として、又は基底面反射(001)の増加する非対称性により観察されることができる。
【0013】
完全な脱ラミネート化、即ち剥離、の特徴は、依然として分析の挑戦であるが、一般的には、元の粘土からの非(hk0)反射の完全な消失から結論付けられ得る。
【0014】
層の秩序化、従って脱ラミネート化の程度は、透過型電子顕微鏡(TEM)でさらに視覚化されることができる。
【0015】
本発明に従う粘土は、スメクタイト型の粘土及びバーミキュライトの場合アニオン性であることができ、あるいはカチオン性であることができる。アニオン性粘土は、アニオン性の電荷のバランスをとるイオンを有する粘土である;カチオン性粘土はカチオン性の電荷のバランスを取るためのイオンを有する粘土である。
【0016】
本発明において、アニオン性粘土が最も好ましいタイプの粘土である。
【0017】
スメクタイト型の粘土の例は、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、サポナイト、及びソーコナイトである。これらのスメクタイト及びそれらの製造方法は、米国特許第4,695,402号、 米国特許第3,855,147号、米国特許第3,852,405号、米国特許第3,844,979号、米国特許第3,844,978号、米国特許第3,671,190号、米国特許第3,666,407号、米国特許第3,586,478号、 及び米国特許第3,252,757号に記載されている。好ましいスメクタイトはモンモリロナイト、ヘクトライト、及びサポナイトである。最も好ましいスメクタイトはモンモリロナイトである。
【0018】
他のカチオン性粘土、例えばカオリナイト、ハロイサイト、イライト及びクロライトに比較して、スメクタイト型の粘土及びバーミキュライトは、より高いカチオン交換容量を有している。好ましくは、スメクタイト型の粘土は、50〜200meq/100gの範囲のカチオン交換容量を有する。このカチオン交換容量は一般的に公知の方法により容易に決定される。
【0019】
カチオン性粘土をベースとする有機粘土における個々の粘土層間の距離は、ロジンをベースとするイオンを含まなかった元のカチオン性粘土の層間の距離より一般的に大きい。好ましくは、本発明に従うカチオン性粘土における層間の距離は少なくとも1.0nm、より好ましくは少なくとも1.5nm、最も好ましくは少なくとも2nmである。個々の層間の距離は、前に概要が示されたようにX線回折を使用して決定されることができる。
【0020】
アニオン性粘土は、アニオン性の電荷のバランスをとるためのイオン及び下記一般式に対応する層状の構造を含む粘土である。

ここでM2+は2価の金属イオン、例えばZn2+,Mn2+,Ni2+,Co2+,Fe2+,Mg2+であり、M3+は3価の金属イオン、例えばAl3+,Cr3+,Fe3+,Co3+,及びGa3+であり、m及びnは、m/n=1〜10であるような値を有し、bは、0〜10の範囲の値を有する。Xは、電荷のバランスをとるためのイオンであり、ヒドロキシド、カーボネート、バイカーボネート、ナイトレート、クロリド、ブロミド、スルホネート、サルフェート、バイサルフェート、バナデート、タングステート、ボレート、ホスフェート、ピラー化アニオン例えばHVO4-,V2O74-,HV2O124-,V3O93-,V10O286-,Mo7O246-,PW12O403-,B(OH)4-,B4O5(OH)42-,[B3O3(OH)4]-,[B3O3(OH)5]2-,HBO42-,HGaO32-,CrO42-,及びケギンイオン(Keggin-ion)であり得る。
好ましい無機のアニオン性粘土は、層間にカーボネート,ナイトレート,サルフェート及び/又はヒドロキシドを含む、なぜならこれらは最も容易に入手可能であり、最も安価な無機のアニオン性粘土だからである。この明細書の目的のために、カーボネート及びバイカーボネートアニオンは、無機性であると定義される。
【0021】
本発明に従うアニオン性粘土をベースとする有機粘土は、上述のように定義されたアニオン性粘土であって、電荷のバランスをとるためのイオンの少なくとも一部がロジンをベースとするアニオン性粘土である。
【0022】
用語「アニオン性粘土」は、ハイドロタルサイト及びハイドロタルサイト様のアニオン性粘土(層状複水酸化物(LDH)ともまた呼ばれる)を含む。ハイドロタルサイト様物質の例は、ミックスネライト(meixnerite)、メネサイト(manasseite)、パイロオーライト、ショグレン石、スティッヒト石、バーベロナイト(barberonite)、タコバイト、リーベサイト、及びデソーテルサイトである。好ましいのは、下記一般式に相当する層状構造を有するアニオン性粘土である。

ここでm及びnは、m/n=1〜10,好ましくは1〜6,より好ましくは2〜4,最も好ましくは3に近い値となるような値を有する;bは、0〜10の範囲の値,一般的には2〜6の範囲の値,しばしば約4の値を有する。Xは電荷のバランスをとるためのイオンであって、ヒドロキシド,カーボネート,バイカーボネート,ナイトレート,クロリド,ブロミド,スルホネート、サルフェート、バイサルフェート、バナデート、タングステート、ボレート、ホスフェート、ピラー化アニオン、例えばHVO4-,V2O74-,HV2O124-,V3O93-,V10O286-,Mo7O246-,PW12O403-,B(OH)4-,B4O5(OH)42-,[B3O3(OH)4]-,[B3O3(OH)5]2-、HBO42-,HGaO32-,CrO42-,及びケギンイオンであり得る。
【0023】
アニオン性粘土は、先行技術において公知である任意の結晶形、例えばCavaniらにより記載された結晶形(Catalysis Today,第11巻(1991年)、173〜301ページ)、又はBookinらにより記載された結晶形(Clays and Clay Minerals,(1993年) ,第41巻(第5号)、558〜564ページ)、例えば3H1,3H2,3R1,又は3R2スタッキングを有し得る。
【0024】
アニオン性粘土をベースとする有機粘土の個々の粘土層間の距離は、ロジンをベースとするイオンを含まない元のアニオン性粘土の層間の距離より一般的に大きい。好ましくは、本発明に従うアニオン性粘土をベースとする有機粘土の層間の距離は、少なくとも1.0 nm、より好ましくは少なくとも1.5 nm、最も好ましくは少なくとも2 nmである。個々の層間の距離は、前に概要が述べられたように、X線回折を使用して決定されることができる。
【0025】
本発明に従う有機粘土において電荷のバランスをとるための有機イオンの少なくとも一部は、ロジンをベースとする。ロジンは自然源から誘導され、容易に入手可能であり、合成の有機アニオンに比較されて相対的に安価である。ロジンの自然源の典型的な例は、ガムロジン、ウッドロジン、及びトール油ロジンである。ロジンは、通常約20の炭素原子を含むモノカルボン酸三環ロジン酸の幅広い多様性の種々の異性体の混合物である。種々のロジン酸の三環構造は、主に二重結合の位置において相違する。典型的には、ロジンは、レボピマル酸、ネオアビエチン酸、パルストリン酸(palustric acid)、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、セコデヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸、ジヒドロアビエチン酸、ピマリン酸、及びイソピマリン酸を含む物質の混合物である。自然源から誘導されるロジンは、ロジン、即ち重合、異性化、不均化、水添、及びアクリル酸、無水物、及びアクリル酸エステルとのジールスアルダー反応により顕著に変性されたロジン混合物をもまた含む。これらの方法により得られた生成物は、変性ロジンと呼ばれる。天然のロジンもまた、先行技術において公知の任意の方法、例えばロジン石鹸又は塩(いわゆるロジネート)を形成するためのロジンのカルボキシル基と金属酸化物、金属水酸化物、又は塩との反応により化学的に変化され得る。そのような化学的に変化されたロジンは、ロジン誘導体と呼ばれる。
【0026】
ロジンは有機基、アニオン基、又はカチオン基を導入することにより変性される又は化学的に変化されることができる。有機基は、1〜40の炭素原子を有する置換又は無置換の脂肪族又は芳香族炭化水素であってもよい。アニオン基は、当業者に公知の任意のアニオン基、例えばカルボキシレート又はスルホネートであってもよい。カチオン基は、「オニウム」基、例えばスルホニウム、ホスホニウム、及び4級アンモニウム基であってもよく、ここで「オニウム」基は、ロジンに直接結合されているか、又は1〜40の炭素原子を有する置換又は無置換の脂肪族又は芳香族炭化水素を介してロジンに結合されている。好ましくは、オニウム基は4級アンモニウム基である。4級アンモニウム基を含むロジンは、カチオン性粘土において電荷のバランスをとるための有機イオンとして特に適切である。そのようなロジンの適切な例はWang Hengshan,Tang Lidong,Pan Yingming,Liang Minによる論文(「ロジンからの新規なキラルな4級アンモニウム塩の合成」,Chemical Journal on Internet,8月1日,2004年,第6巻,第8号,56ページ)、米国特許第2,510,295号、米国特許第2,686,776号、及び米国特許第2,623,870号に見られることができる。しかし、ロジン酸から誘導された脂肪族モノ、ジ、及びポリアミンがカチオン性粘土をベースとする有機粘土に存在することは、それらの価格、低い市販入手可能性、相対的に低い純度、従ってそのようなロジンをベースとする物質の相対的に低い機能のためにあまり好ましくない。
【0027】
これらのロジンをベースとする物質のさらなる詳細は、D. F. Zinkel及びJ. Russell(松脂における生産−化学−使用、1989年、ニューヨーク、第2部、第9章)、及びJ.B. Class(「樹脂、天然」、第1章:「ロジン及び変性されたロジン」、カーク−オスマー、化学大辞典、オンライン投稿の日付、2000年12月4日)から見つけられることができる。
【0028】
本明細書において、用語「ロジンをベースとするイオン」はロジン、変性ロジン、及びロジン誘導体の上述されたタイプの任意のものを指す。
【0029】
ロジンをベースとするイオンとは異なる1以上の有機イオンを使用することも考えられる。これらの有機イオンは所望されるように粘土の物理的及び化学的性質を変え得る。ロジンをベースとするイオンとは異なる有機イオンは、先行技術、例えば欧州特許出願公開第0 780340号及び国際公開第00/09599号に記載された公知の任意の有機アニオンであり得る。好ましくは、有機アニオンは、6〜35の炭素原子を有するアルキル又はアルキルフェニル基を含むカルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、及びサルフェート酸からなる群から選択されたアニオンであり得る。特に好ましい有機アニオンは、8〜22の炭素原子を有する脂肪酸である。そのような脂肪酸の適する例はカプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、デセン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、及びそれらの混合物である。ロジンをベースとする、脂肪酸をベースとする電荷のバランスとるためのイオンを含む粘土、特にアニオン性粘土は、ハイブリッド有機−無機コンポジット物質において、特にポリマー粘土ナノコンポジット物質において適切に使用されることに留意されたい。これらのインターカレートされた粘土はポリオレフィンのホモポリマー、又はコポリマーにおいて好ましくは使用される。特に好ましいポリオレフィンはポリエチレン及びポリプロピレンである。
【0030】
代替的に又は追加的に、ロジンをベースとするイオンとは異なる有機イオンは、先行技術において公知である任意の有機カチオンであり得る。好ましくは、有機カチオンは4級アンモニウム基を含む炭化水素、例えば欧州特許出願公開第0 780 340号に記載されているものである。
【0031】
有機アニオンはアニオン性粘土において好ましく使用され、有機カチオンはカチオン性粘土において好ましく使用されることに留意されたい。
【0032】
一般的に、本発明に従う有機粘土における電荷のバランスをとるためのイオンの合計量の少なくとも10%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも60%、最も好ましくはインターカレートするためのイオンの合計量の少なくとも90%はロジンをベースとするイオンである。
【0033】
本発明に従う有機粘土は先行技術の有機粘土の製造のための公知の方法に類似の方法で製造されることができる。そのような方法の例は、アニオン性粘土をベースとする有機粘土の場合、国際公開第00/09599号において、カチオン性粘土をベースとする有機粘土の場合、欧州特許出願公開第0 780 340号において見られることができる。本発明に従う有機粘土の製造のための適切な方法は、
a.ロジンをベースとするイオンとのイオン交換:
b.ロジンをベースとするイオンの存在下での粘土の合成;
c.粘土の焼成及び続いて行われるロジンをベースとするイオンの存在下での再水和(rehydration);
d.粘土のカーボネートイオンと鉱酸との交換、及び続いて行われるロジンをベースとするイオンとのイオン交換
を含む。
【0034】
さらなる方法については、Carlino(Solid State Ionics、1996年、第98巻、73〜84ページ)を参照されたい。この論文において、方法、例えば熱又は溶融反応法及びグリセロールで実行される交換法が記載されている。熱又は溶融反応法に従うと、粘土及びロジンをベースとするイオンは高められた温度において、好ましくは該イオンの溶融温度より上の温度において緊密に混合される。グリセロールで実行される交換法に従うと、グリセロールによる粘土の中程度の膨潤があり、その後ロジンをベースとするイオンは導入され、続くインターカレーションが起きる。この方法はグリセロール以外の膨潤剤、例えばエタノール、2−プロパノール、ブタノール、トリエチレングリコール等を使用して実行されることもできることに留意されたい。
【0035】
代替的に、本発明の有機粘土は、ロジン及び粘土を溶融混合することにより製造されることができる。
【0036】
本発明の有機粘土は、コーティング組成物、(印刷用)インク配合物、接着剤の粘着化剤、樹脂をベースとする組成物、ゴム組成物、クリーニング配合物、掘削流動体及びセメント、プラスター配合物、不織布、繊維、フォーム、膜、整形外科のギブス(orthoplastic cast)、(プレ)セラミック物質、及びハイブリッド有機−無機コンポジット物質、例えばポリマーをベースとするナノコンポジットにおける成分として使用されることができる。本発明の有機粘土は、重合反応、例えば溶液重合、エマルジョン重合、及び懸濁重合においてさらに使用されることができる。有機粘土は、半結晶性ポリマー、例えばポリプロピレンにおける結晶化助剤としてもさらに機能し得る。有機粘土は、粘土及びロジンをベースとするイオンの別々の機能が組み合わされ得るところの用途、例えば製紙工程又は洗剤産業においてさらに使用されることができる。追加的に本発明の有機粘土は、医薬品、殺虫剤、及び/又は肥料のための制御された放出用途において、及び有機化合物、例えば汚染物質、着色剤等の吸着剤として使用されることができる。
【0037】
本発明は、ポリマーマトリックス及び本発明に従う有機粘土を含むハイブリッド有機−無機コンポジット物質にもまた関する。コンポジット物質に存在する粘土は、ポリマーの重合において使用された添加剤又は開始剤の副生物を吸着し得る。先行技術において使用された有機のアニオン又はカチオンに比較して、ロジンは安価であり、容易に入手可能であり、容易に変性される。
【0038】
ロジンをベースとするイオンの有機的性質のために、本発明の有機粘土は疎水性であり、一般的にポリマーマトリックスと相溶性であり、ポリマーマトリックス中によく分散され得る。ハイブリッド有機−無機コンポジット物質はその成分の組成及びサイズに関して変動し得る。そのようなハイブリッド有機−無機コンポジット物質の好ましい例は、ナノコンポジット物質である。用語「ナノコンポジット物質」は、少なくとも1の成分が、少なくとも0.1〜100ナノメートルの範囲の少なくとも1の寸法を有する無機相を含むコンポジット物質を指す。ポリマーをベースとするナノコンポジット(PNC)の一つの種類は、高いアスペクト比の非常に細いナノメートルサイズの無機粒子の小量をポリマーマトリックスへ取り込むことから誘導されたハイブリッド有機−無機物質を含む。本発明に従うナノコンポジット物質は、慣用の鉱物フィラーを含むマイクロコンポジットに比較して、改良された性質、例えば改良された熱安定性、よりよい寸法安定性、増加された耐炎性、及び改良された強さ:重量比を有する。
【0039】
ある条件下で、ハイブリッド物質に存在する粘土は、該ハイブリッド物質内で、単独の、変性された粘土シートの剥離まで、さらに脱ラミネート化し得る。十分に脱ラミネートされた、又は剥離さえされた粘土シートの均一な分布は一般的に、そのようにして得られたナノコンポジット物質に、その類似体、即ちマイクロメートルサイズを有する変性されていない粘土を含むマイクロコンポジット物質に比較して改良された性質を有せしめる。
【0040】
本発明のハイブリッド有機−無機コンポジット物質における使用に特に適するのは、ポリマーマトリックスとより相溶性であるように又は反応性であるように化学的に変性された、電荷のバランスをとるためのロジンをベースとするイオンを含む粘土である。これは粘土及びポリマーマトリックス間の相互作用の改善をもたらし、改良された機械的及び/又は粘弾性をもたらす。より相溶性のあるロジンをベースとするイオンは、1〜40の炭素原子を有する置換又は無置換の脂肪族又は芳香族炭化水素を含み得る。代替的に又は追加的に、ロジンをベースとするイオンは、ヒドロキシ、アミノ、アンモニウム、ニトロ、スルホニック、スルフィニック、スルホネート、スルホニウム、ホスホネート、ホスホニウム、エポキシ、ビニル、イソシアネート、カルボキシ、カルボン酸、ヒドロキシフェニル、及び酸無水物からなる群から選択された反応性基を含み得る。
【0041】
ロジンをベースとするイオンとは異なる電荷のバランスをとるための有機イオンを1以上使用することもまた考えられる。有機イオンは、所望されるようにナノコンポジットの物理的及び化学的性質を変化させるようにもまた機能し得る。
【0042】
そのような有機イオンは、ポリマーマトリックスと相溶性又は反応性であり得る。第二の電荷のバランスをとるための有機イオンは、先行技術において公知の任意の有機イオンであり得る。好ましくは、第二のイオンは6〜35の炭素原子を有するアルキル又はアルキルフェニル基を含むカルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、及びサルフェート酸のアニオンから選択され得る。
【0043】
ハイブリッド有機−無機コンポジット物質を形成するためのポリマーは、先行技術において公知である任意のポリマーであることができる。本明細書において、用語「ポリマー」は少なくとも2のビルディングブロック(即ちモノマー)の有機物質を指し、即ちオリゴマー、コポリマー、及びポリマー状樹脂を含む。ポリマーマトリックスにおける使用のための適するポリマーは、重付加物及び重縮合物の両者である。ポリマーは、ホモポリマー又はコポリマーでさらにあり得る。
【0044】
好ましくは、ポリマー状マトリックスは、少なくとも20、好ましくは少なくとも50の重合度を有する。これに関しては、PJ. Floryのポリマー化学の原則(Principles of Polymer Chemistry)、ニューヨーク、1953年、を参照されたい。
【0045】
適するポリマーの例は、ポリオレフィン、例えばポリエチレン又はポリプロピレン、ビニルポリマー、例えばポリスチレン、ポリメチルメタクリレート,ポリビニルクロリド,ポリビニリデンクロリド又はポリビニリデンフロライド、飽和ポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、又はポリ(ε−カプロラクトン),不飽和ポリエステル樹脂,アクリレート樹脂,メタクリレート樹脂,ポリイミド,エポキシ樹脂,フェノールホルムアルデヒド樹脂、ウレアホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアリールエーテル,ポリスルホン,ポリスルフィド,ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエステル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエステルケトン、ポリシロキサン、ポリウレタン、ポリエポキシド、及び2以上のポリマーの混合物である。好ましく使用されるのはポリオレフィン、ビニルポリマー、ポリエステルポリカーボネート、ポリアミド、ポリウレタン、又はポリエポキシドである。
【0046】
本発明に従う有機粘土は、熱可塑性ポリマー、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、及びアセタール(コ)ポリマー、例えばポリオキシメチレン(POM)において、及びゴム、例えば天然ゴム(NR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソブチレン(IIR)、ハロゲン化ポリイソブチレン、ブタジエンニトリルゴム(NBR)、水添ブタジエンニトリル(HNBR)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)、及び類似のスチレン性ブロックコポリマー、ポリ(エピクロルヒドリン)ゴム(CO,ECO,GPO)、シリコンゴム(Q)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、ポリスルフィドゴム(T)、フロリンゴム(FKM)、エテン−ビニルアセテートゴム(EVA)、ポリアクリルゴム(ACM)、ポリノルボルネン(PNR)、ポリウレタン(AU/EU)、及びポリエステル/エーテル熱可塑性エラストマーにおける使用に特に適する。
【0047】
特に好ましいのは、少なくとも1のエチレン性不飽和モノマーの重合により得られ得るポリマー又はコポリマーである。そのようなポリマーの例は、当業者に公知であるポリオレフィン及び変性されたポリオレフィンである。ポリオレフィン又は変性されたポリオレフィンはホモポリマー又はコポリマーであることができる。そのような変性されたポリオレフィンの適する例は、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリブチレン,ポリスチレン,ポリビニルクロリド,ポリビニリデンクロリド,及びエチレン−プロピレンゴム,プロピレン−ブテンコポリマー,エチレン−ビニルクロリドコポリマー,エチレン−ビニルアセテートコポリマー,アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー(ABS) ,アクリロニトリル−アクリレート−スチレンコポリマー(AAS),メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレンコポリマー(MBS),塩化ポリエチレン,塩化ポリプロピレン,エチレン−アクリレートコポリマー,ビニルクロリド−プロピレンコポリマー,及びそれらの混合物である。さらにより好ましいポリマーは、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリスチレン,及びポリビニルクロリドである。
【0048】
ポリエチレンの具体的な例は高密度ポリエチレン,低密度ポリエチレン,直鎖低密度ポリエチレン,超低密度ポリエチレン,及び超高分子量ポリエチレンである。エチレンをベースとするコポリマーの例は、エチレン−ビニルアセテートコポリマー(EVA),エチレン−エチルアクリレートコポリマー(EEA),エチレン−メチルアクリレートコポリマー(EMA),及びエチレン−アクリル酸コポリマー(EAA)である。
【0049】
最も好ましいポリマーは、ポリプロピレンである。先行技術において公知である任意のポリプロピレンが本発明に存在する使用に適する。ポリプロピレンの例はカーク−オスマー化学大辞典におけるR.B. Liebermanによる「ポリプロピレン」、第1章:「性質」(オンラインの投稿日付、2000年12月4日)において与えられている。本発明のポリプロピレンの特定及び好ましい種類は、いわゆる熱可塑性ポリオレフィン(TPO)により形成され,ポリプロピレン及びEPRゴムの混合物又は反応器級(reactor grade)を含む。
【0050】
もし、ハイブリッド有機−無機コンポジット物質がゴムマトリックス及び本発明の有機粘土を含むならば、物質の強さは本発明の有機粘土を含まないニートのゴム物質に比較して改良される。その上、ハイブリッド有機−無機コンポジット物質は、一定の力における動的変形の間、高められた温度においてより低いタンデルタを示し、即ち改良された弾性的性質を示し、一般的にゴム物質を含むタイヤに、より低い耐ローリング性を有せしめる。用語「タンデルタ」は当業者に公知であり、損失弾性率(G'):貯蔵弾性率(G")の比として定義される。
【0051】
本発明のハイブリッド有機−無機コンポジット物質は、先行技術において一般的に使用される添加剤をさらに含み得る。そのような添加剤の例は、顔料、染料、UV安定化剤、熱安定化剤、抗酸化剤、フィラー(例えばハイドロキシアパタイト、シリカ、カーボンブラック、ガラス繊維、及び他の無機物質)、難燃化剤、核形成剤、衝撃改質剤、可塑剤、レオロジー改質剤、架橋剤、及び脱ガス化剤である。
【0052】
これらの任意の添加剤及びそれらの対応する量は、必要に応じて選択されることができる。
【0053】
ハイブリッド有機−無機コンポジット物質における有機粘土の量は、混合物の合計重量に基づいて好ましくは0.01〜75重量%,より好ましくは0.05〜50重量%,さらにより好ましくは0.1〜30重量%である。
【0054】
10重量%未満,好ましくは1〜10重量%,より好ましくは1〜5重量%の粘土の量が,ポリマーをベースとするナノコンポジット、即ち、剥離された状態まで脱ラミネート化された、ロジンをベースとする有機粘土を含む本発明に従うポリマー含有組成物の製造に特に有利である。
【0055】
10〜70重量%,より好ましくは10〜50重量%の粘土の量は,いわゆるマスターバッチ、即ち例えばポリマーコンパウンド化のための高度に濃縮された添加剤プレミックス、の製造に特に有利である。そのようなマスターバッチ中の粘土は一般に完全には脱ラミネート化されていないが、さらなる脱ラミネート化は、もしそのように所望されるならば、より後の段階において、マスターバッチをさらなるポリマーと混合して真のポリマーをベースとするナノコンポジットを得るときに、到達されてもよい。
【0056】
本発明のハイブリッド有機−無機コンポジット物質は、当業者に公知である任意の方法に従って製造されることができる。当業者はポリマーマトリックス及び本発明に従う有機粘土を、例えば溶融混合テクニックを使用することにより緊密に混合してもよい。この方法は、それが簡単であり、費用効果的であり、現存するプラントにおいて容易に適用可能であるから好ましい。モノマー及び/又はオリゴマーが重合されてポリマーマトリックスを形成する間又はその後に、ポリマーマトリックスの存在下で、又はモノマー及び/又はオリゴマーの存在下で、本発明の粘土を製造することもまた想定される。ポリプロピレンの製造及び加工のさらなる詳細は、カーク−オスマー化学大辞典におけるR.B. Liebermanによる「ポリプロピレン」,第2章:「製造」及び第3章:「加工」(オンライン投稿の日付、2000年12月4日)において見られることができる。
【0057】
10〜70重量%の粘土量を含むマスターバッチ、即ち高度に濃縮された添加剤プレミックスは、該マスターバッチを(さらなる)ポリマーと混合して真のポリマーをベースとするナノコンポジットを得ることによりナノコンポジット物質の製造のために有利に使用されることができる。
【0058】
本発明のハイブリッド有機−無機コンポジット物質は、これらのコンポジット物質が慣用的に使用されるところの任意の用途において使用されることができる。コンポジット物質は、絨毯、自動社部品、容器閉鎖体(container closure)、弁当箱、閉鎖体(closure)、医療器具、家庭用品、食料品容器、食器洗浄機、屋外家具、ブロー成形されたボトル、使い捨ての不織布、ケーブル及びワイヤ及び包装容器において適切に使用されることができる。ポリプロピレンのさらなる詳細については、カーク−オスマー化学大辞典におけるR.B. Liebermanによる「ポリプロピレン」,第5章:「使用」(オンライン投稿の日付、2000年12月4日)、及び「ポリプロピレン:織物、堅い包装容器、消費者、フィルム、自動車、電気/電子、及び家庭用電気製品」と題されるバーゼルの022 PPe 10/01のパンフレットにおいて見られることができる。
本発明は下記の実施例においてさらに説明される。
【0059】
図面の説明
図1は、市販のMg−Alアニオン性粘土(カーボネートの形態、線A)、実施例1に記載されたロジンをベースとするイオンを含む有機粘土(線B)、85重量%のSBR及びロジンをベースとするイオンを含むアニオン性粘土を15重量%含むSBRコンパウンド(実施例2、線C)、及び85重量%のNR及びロジンをベースとするイオンを含むアニオン性粘土を15重量%含むNRコンパウンド(実施例3、線D)のXRDパターンを示す。
【0060】
図2は、実施例2に記載されたように製造されたSBRゴム−ナノコンポジットのTEM画像である。
【0061】
図3は、市販のMg−Alアニオン性粘土(カーボネートの形態、線A)、実施例4に記載されたロジンをベースとするイオンを含むアニオン性粘土(線B)、88重量%のPP及びロジンをベースとするイオンを含むアニオン性粘土を12重量%含むPPフィルム(実施例5、線C)のXRD反射を示す。
【0062】
図4は実施例5において記載されたように製造されたPP−ナノコンポジットのTEM画像である。
【実施例】
【0063】
下記の実施例において、市販入手可能な、合成のハイドロタルサイト様の粘土、即ち日本の協和化学工業株式会社の子会社であるKisuma Chemicals BVにより供給されるDHT−6(CAS番号11097−59−9)及びDHT−4A(CAS番号11097−59−9)が使用された。これらの物質は受領されたまま使用された。Rondis(商標)DRS−S70、固体の不均化されたロジンナトリウム石鹸の70%水性溶液、がAkzo−Nobel Chemicalsの会社であるInk and Adhesive Resins BVにより供給された。Pinerez(商標)9010は固体の不均化されたロジンであり、Akzo−Nobel Chemicalsの会社であるInk and Adhesive Resins BVにより供給された。
【0064】
実施例1
機械式攪拌装置、温度計/サーモスタット、還流冷却器、及び窒素フラッシュを備えられた500mlの4ツ口丸底フラスコにおいて、20グラムのハイドロタルサイト様の粘土(DHT−6)が250mlの脱イオン化水に分散された。
【0065】
混合物は電気加熱マントルを使用して80℃まで加熱された。4のpHが得られるまでおよそ40mlの硝酸(65%)が滴下ロート使用して混合物にゆっくり添加された。次に、8〜9のpHが得られるまで、200gのロジン石鹸(Rondis(商標)DRS−S70)及び約10gのNaOHが添加された。該混合物は攪拌しながら80℃において終夜保たれた。沈殿された物質は、4,000rpmにおいて20分間遠心分離を使用して水性相から分離された。物質は次に脱鉱物化された水で2回、エタノールで3回洗浄された。得られた物質は、真空オーブン中において70℃において、減圧下3時間乾燥された。得られた、ロジンをベースとするイオンを含むハイドロタルサイト様の粘土は、X線回折で分析され、ギャラリー間の間隔、又はd−間隔(d−spacing)を決定した。
【0066】
不均化されたロジンをベースとするイオンを含むハイドロタルサイト様の粘土のXRDパターン(図1、線B)は、ハイドロタルサイトに関連する非(hk0)反射をわずかに示す。これはアニオン性粘土のインターカレーションを示す。インターカレートは24Å(元のハイドロタルサイト様粘土及び硝酸化されたハイドロタルサイト様粘土の7.6Å又は8.0Åのd−間隔よりずっと大きい)の特徴的なd(00l)を示し、XRDパターンはずっと高いオーダーの反射を示す。
【0067】
実施例2
ゴムをベースとするナノコンポジットが、ブラベンダー(Brabender)混合チャンバー(30 cm3)を使用して、実施例1のロジンをベースとするイオンを含むハイドロタルサイト様粘土をSBRゴム(Buna SB1502、ダウケミカル)と15/85の重量比で溶融混合することにより製造された。約20グラムのゴムが3gのインターカレートされた粘土と共に、50rpmの回転速度、110℃の温度において20分間攪拌された。ナノコンポジットはXRD及びTEMで分析され、剥離の程度を決定した。
【0068】
SBRナノコンポジット(図1、線C)は、34Åのd間隔においてわずかな反射のみを示し、これはスタックのさらなる膨潤及び粘土シートの剥離さえの証拠である。その上、24Åにおける反射は消失し、これは粘土シートの規則的なスタッキングの消失の追加的な証拠である。ナノコンポジット物質の形成はさらにTEM画像(図2)により、及び得られたゴム混合物が混合工程の間に透明になったという事実により確認される。
【0069】
実施例3
実施例1で得られたハイドロタルサイト様粘土の7.5グラムが50 cm3の混合チャンバー中で42.5グラムのNR(SMR5)と混合された。ローター速度は50rpmに設定され、混合時間は110℃において20分であった。第二の混合工程において、4phr(即ち100重量部のゴム当たりの重量部)の過酸化物、Perkadox(商標)BC−ff(アクゾノーベルケミカルズ)が、インターカレートされた粘土を含む100phrのNRと実験室用2本ロールミル上で約10分間、混合された。次に、該物質は加熱された液圧プレス(Fontijne)で170℃において加硫された。加硫されたナノコンポジットもまたXRDで分析された。
【0070】
NRナノコンポジット(図1、線D)は、広いNRの信号及び試料に残された過酸化物の分解生成物に帰属されるいくつかの小さな信号を示すのみである。ロジンインターカレートのすべての信号は消失し、変性されたハイドロタルサイトシートの完全な剥離を示し、インターカレート種としてロジンを使用することの明らかな利点を例示する。
【0071】
実施例4
機械式攪拌装置、温度計/サーモスタット、還流冷却器、及び窒素フラッシュを備えられた3,000mlの4ツ口丸底フラスコにおいて、100グラムのハイドロタルサイト様の粘土(DHT−4A)が、脱イオン化された1,000mlの水及び400mlのエタノールに分散された。
【0072】
混合物は電気加熱マントルを使用して75℃まで加熱された。4のpHが得られるまでおよそ90mlの硝酸(65%)が滴下ロートから混合物にゆっくり添加された。次に、8〜9のpHが得られるまで、200gの不均化されたロジン(Pinerez(商標)9010)及び約25gのNaOHがゆっくり添加された。該混合物は攪拌しながら75℃において終夜保たれた。沈殿された物質は、4,000rpmにおいて20分間遠心分離を使用して水性相から分離された。物質は次に脱鉱物化された水で2回、エタノールで3回洗浄された。得られた物質は70℃において真空オーブン中において、減圧下3時間乾燥された。得られた、ロジンをベースとするイオンを含むハイドロタルサイト様の粘土はX線回折で分析され、平面間の間隔、又はd−間隔(d−spacing)を決定した。
【0073】
不均化されたロジンをベースとするイオンを含むハイドロタルサイト様の粘土のXRDパターン(図3、線B)は、ハイドロタルサイトに関連する非(hk0)反射をわずかに示し、アニオン性粘土のインターカレーションを示す。インターカレートは24Åの幅広い特徴的なd(00l)値、及び元のハイドロタルサイト様粘土(図3A)及び硝酸化されたハイドロタルサイト様粘土の7.6Å又は8.0Åにおけるいくらかの残存している信号を示す。
【0074】
実施例5
ポリプロピレンをベースとするナノコンポジットは、5ccのマイクロ押出機を使用して、実施例4からのロジンをベースとするイオンを含むハイドロタルサイト様粘土をポリプロピレン(Stamylan(商標)P17M10、DSM製)と12/88の重量比で溶融混合することにより製造された。200rpmの回転速度において200℃の温度において、およそ3.2グラムのPPが0.4gのインターカレートされた粘土と60分間混合され、次に170℃に冷却され、追加の25分間混合された。ナノコンポジットはXRD及びTEMで解析され、剥離の程度を決定した。
【0075】
PPナノコンポジット(図3、線C)は、24Åのd間隔において反射を示さない。これは有機粘土が剥離されていることを裏付ける。ナノコンポジット物質の形成は、さらにTEM画像(図4)により、及び得られたポリプロピレンをベースとするナノコンポジットが混合工程の間にほとんど透明になったという事実により確認される。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】市販のMg−Alアニオン性粘土(カーボネートの形態、線A)、実施例1のロジンをベースとするイオンを含む有機粘土(線B)、SBR及びロジンをベースとするイオンを含むアニオン性粘土を含むSBRコンパウンド(実施例2、線C)、及びNR及びロジンをベースとするイオンを含むアニオン性粘土を含むNRコンパウンド(実施例3、線D)のXRDパターン。
【図2】実施例2のSBRゴム−ナノコンポジットのTEM画像。
【図3】市販のMg−Alアニオン性粘土(カーボネートの形態、線A)、実施例4のロジンをベースとするイオンを含むアニオン性粘土、PP及び実施例5のアニオン性粘土を含むPPフィルムのXRD反射。
【図4】実施例5のPP−ナノコンポジットのTEM画像。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電荷のバランスをとるための有機イオンを含む、アニオン性粘土、スメクタイトタイプの粘土、及びバーミキュライトから選択された粘土において、該有機イオンの少なくとも一部がロジンをベースとするものであるところの粘土。
【請求項2】
粘土がアニオン性粘土である、請求項1に記載の粘土。
【請求項3】
粘土が、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、サポナイト、及びソーコナイトからなる群から選択されたスメクタイト粘土である、請求項1に記載の粘土。
【請求項4】
電荷のバランスをとるためのイオンの少なくとも10重量%がロジンをベースとする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粘土。
【請求項5】
ポリマーマトリックス中に請求項1〜4のいずれか1項に記載の粘土を含むハイブリッド有機−無機コンポジット物質。
【請求項6】
ポリマーマトリックスが少なくとも1のエチレン性不飽和モノマーの重合により得られ得る(コ)ポリマーを含む、請求項5に記載のコンポジット物質。
【請求項7】
ポリマーがポリエチレン又はポリプロピレンである、請求項6に記載のコンポジット物質。
【請求項8】
ロジンをベースとするイオンが、1〜40の炭素原子を有する置換又は無置換の、脂肪族又は芳香族炭化水素で置換されている、請求項5〜7のいずれか1項に記載のコンポジット物質。
【請求項9】
ロジンをベースとするイオンが、ヒドロキシ、アミノ、アンモニウム、ニトロ、スルホニック、スルフィニック、スルホネート、スルホニウム、ホスホネート、ホスホニウム、エポキシ、ビニル、イソシアネート、カルボキシ、カルボン酸、ヒドロキシフェニル、及び酸無水物からなる群から選択された反応性基を含む、請求項5〜7のいずれか1項に記載のコンポジット物質。
【請求項10】
粘土が、ロジンをベースとするイオンとは異なる有機イオンの1以上をさらに含む、請求項5〜9のいずれか1項に記載のコンポジット物質。
【請求項11】
コンポジット物質の合計重量に基づいて1〜10重量%の粘土を含む、請求項5〜10のいずれか1項に記載のコンポジット物質。
【請求項12】
粘土の少なくとも一部が脱ラミネート化されている又は剥離されている、請求項5〜11のいずれか1項に記載のコンポジット物質。
【請求項13】
コンポジット物質がナノコンポジット物質である、請求項5〜12のいずれか1項に記載のコンポジット物質。
【請求項14】
コンポジット物質の合計重量に基づいて10〜70重量%の粘土を含む、請求項5〜10のいずれか1項に記載のコンポジット物質。
【請求項15】
コーティング組成物、インク配合物、接着剤の粘着化剤、樹脂をベースとする組成物、ゴム組成物、クリーニング配合物、掘削流動体、セメント、プラスター配合物、不織布、フォーム、膜、整形外科のギブス、セラミック物質、重合反応、紙、洗剤、医薬のための制御された放出用途、殺虫剤、及び/又は肥料、又は有機化合物の吸着剤において請求項1〜4のいずれか1項に記載の粘土を使用する方法。
【請求項16】
絨毯、自動社部品、容器閉鎖体、弁当箱、閉鎖体、医療器具、家庭用品、食料品容器、食器洗浄機、屋外家具、ブロー成形されたボトル、使い捨ての不織布、ケーブル及びワイヤ又は包装容器において、請求項5〜14のいずれか1項に記載のコンポジット物質を使用する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−521748(P2008−521748A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−543828(P2007−543828)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【国際出願番号】PCT/EP2005/056041
【国際公開番号】WO2006/058846
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(390009612)アクゾ ノーベル ナムローゼ フェンノートシャップ (132)
【氏名又は名称原語表記】Akzo Nobel N.V.
【Fターム(参考)】