電解−脱水の効率を高めるための方法並び装置
本発明の目的は、物質から水が除去される効率を高めることにより、該物質を電解-脱水して、同一のエネルギー投入量および表面積によって、該物質がより高い乾燥度を達成することを可能とし、あるいはより少ないエネルギー投入量およびより小さな表面積により、該物質が同様な乾燥度を達成することを可能とする、改良法を提供することにある。この方法は、物質を、少なくとも2つの電極間に配置する工程、ここで該電極の少なくとも一つは、流体を排出するのに適しており;該物質と該電極の一方との間の界面に電解質を堆積させる段階、ここでこれら2つの段階は、任意の順序で行うことができ;および該物質の該電解質による含浸が起る前に、該物質を、圧力および電流の組合せによる作用に付して、該物質から液体を除去する工程を含み、ここで、該電解質は、少なくとも一つの該電極の近傍において起る電圧降下を実質的に減じ、あるいは防止するのに十分な量で、かつ該物質の全表面に渡り該電解質を分布させるのに十分な体積にて添加すべきである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解-脱水の分野に係り、また特に電解-脱水の効率を高めるための、新規な方法並びに装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スラッジは、廃水処理プロセスで残される、半-液体状の残留物質である。スラッジは、有機物質及び有害な生成物で高度に満たされており、また結果として元々水に影響を及ぼしていた汚染を、単に、土壌および空気等の他の媒体に戻さないことが重要である。スラッジの体積は、人口の増大及び産業活動の進展に伴って増加するので、スラッジの処理及び廃棄は、公的および私的な廃水処理プラント(WWTP)両者にとって、不変の課題の一つである。かつてないほどに厳しい規制及び予算状況において、WWTPオペレータは、効率的かつ経済的なスラッジの廃棄または再利用を可能とする、新規かつ実行可能な代替法を見出す必要性に駆られている。
例えば、都市または産業水処理プラント等における大量のスラッジ製造を含む、多くの状況において、多大な努力が、該スラッジからの水分の除去に向けられている。その主な理由は、プラントが、典型的に、該スラッジを除くための質量基準での廃棄料を支払っていることであり、また本来的に水を含む物質を移動するため支払うことは、賢明なことではない点にある。廃棄費用は、埋立て容量に逆比例しまた環境に係る自覚と直接比例している。従って、最終的に廃棄する前に、該スラッジから可能な限り多量の水を抜き取ることが極めて望ましい。
【0003】
該スラッジの乾燥度を高める方法の一つは、廃物活性汚泥(Waste Activated Sludge: WAS)化および機械的な脱水段階(例えば、ベルトプレス、フィルタプレス、遠心分離、スクリュープレス)間に、高分子電解質凝集剤の添加を含んでいる。凝集剤は、極周知のものであり、また機械的な脱水工程の効率を高めるために一般的に利用されており、このことは、何故、殆どのプラントが、機械的脱水に先立って、凝集剤の添加を容易にする目的で、混合チャンバーを持つように設計されているかに係る理由を説明している。最適の効率を得るために、混合チャンバーは、該スラッジ内で凝集剤の均質な混合物を生成するのに適している。凝集剤の物理化学的特性および作用様式は、機械的な脱水に抵抗するフロックを生成するその能力が、その分散係数と密に関連しているというものである。
電流の助けを借りて、ある物質から水を除去するプロセスである、電解-脱水(EDW)は、PCT公開WO2007/143840に記載されているように、スラッジの乾燥度を高めるための手段として、広い範囲に及ぶ関心を得ている。事実、電解-脱水は、低いエネルギー消費にて、高い乾燥度の値をもたらすその能力、並びに土壌用途としての農業における再利用に関する最も厳密な基準を満たすスラッジを生成する能力の点で、他の方法を越える多くの利点を有している。
【0004】
カナダ特許第2,179,476号において、デルマウン(Dermoune)は、電極の極近傍において増大し、該装置の性能における低下を生じる電気抵抗のために、土壌内の該電極の電気的透過率を改善する必要性を教示している。この特許において、電解質を添加する目的は、新たな間隙物質を構成するであろう電解質で、間隙水を置換することによって、該土壌の機械的な抵抗性を高めることにある。電解質は、該土壌の電気的な透過率を改善するために、管状の孔開き電極から該電解質を電気注入することにより土壌に添加される。該デルマウンの電極は、土壌中に垂直に挿入され、これは該プロセス中移動されることはない。
米国特許第5,230,809号において、ラスロンスキー(Raslonski)は、脱水ベルトにおいて電気浸透を開始する前に、電解質とスラッジとの適切な混合を保証するために、混合チャンバー内での該電解質の添加を可能とする、電解-脱水装置を教示している。また、ラスロンスキーは、該スラッジに添加すべき電解質の量を決定するための、導電率測定デバイスをも教示している。
【0005】
コンドウ(Kondo)(日本特許公開No 60-114315)は、スラッジを、その土壌成分に対して10%を越える濃度にて、塩化ナトリウムで含浸することにより、電解-脱水の効率を高める方法を教示している。コンドウの該教示において、大量のスラッジの電解質による含浸は、電解質に乏しいスラッジの導電率を高め、結果として電解-脱水の効率を高めている。
物質を電解-脱水する作用は、電気エネルギーを消費するので、より低いエネルギー消費によって高い電解-脱水容量達成し、またはより小さな処理表面積によって、同様な脱水容量を達成する、新たな方法並びに装置を開発することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的の一つは、ある物質からの水の除去効率を高めることによって、結果として同一のエネルギー消費および表面積により、該物質のより高い乾燥度レベルの達成を可能とし、あるいはより低いエネルギー消費またはより小さな表面積により、同様な乾燥度レベルの達成を可能とする、該物質の改良電解-脱水法を提供することにある。この方法は、該物質を、少なくとも2つの電極間に配置する段階、ここで該電極の少なくとも一つは、流体を排出するのに適しており;該物質と該電極の一方との間の界面において電解質を堆積させる段階、ここでこれら2つの段階は、任意の順序で行うことができ;および該物質を、圧力および電流の組合せによる作用に付して、該物質から液体を除去する段階を含む。
本発明のもう一つの目的は、ある物質の乾燥度を高めるための装置を提供することにあり、該装置は、該物質を受取るための入口、該物質を電流および圧力の作用下に置くのに適した少なくとも2つの電極、および電極-物質界面において電解質を分布させて、電気浸透による処理中に起る電圧の損失を減じ、あるいは防止する送出しメカニズムを含む。該装置は、更にコントローラーを含み、該コントローラーは、該電解質の添加直後に、該処理を開始して、該電解質による該物質の含浸または該物質への該電解質の浸透の回避を保証している。
【0007】
本発明の目的の一つは、単一の電解質または異なる特性を持つ電解質の混合物を与えることにより、電解-脱水の効率を高めることにある。例えば、電解質をアノード-物質界面に堆積させた場合、該電解質のより小さなカチオン性部分、例えば水素((H+)またはナトリウム(Na+)をより迅速に該物質中に移動させて、該物質全体の導電率を高めることができ、また電解質の他の大きなカチオン性部分、例えばCa2+を、より緩慢に該物質内に移動させ、その結果特異的にアノード-物質界面において起る電位降下を低下または防止するのを助ける。その上、幾つかのカチオン、例えばカルシウムイオンがより多くの溶媒和を必要とし、また結果的にこれらが該カソードに向かって移動するにつれて、これらイオンと共により多くの水を引きずる。様々な産業および廃水処理プラント由来の有機スラッジは、相互におよび経時で著しく多様であるので、該電解-脱水プロセスにおける最適な電解質の組合せまたはその添加時期も、またpH、導電率、抵抗率、密度、温度、有孔度、含水率、細菌および微小植物群の含有率、スラッジの型(嫌気性、好気性または消化済み)、厚み、処理時間およびスラッジの滞留時間並びに汚物集合タンク内での経過時間を含むがこれらに限定されない、物質の諸特性に従って変動するであろう。
【0008】
本発明の更なる目的は、アノード-物質界面において起る電圧降下を減じまたは防止することを可能とする方法を提供することにあり、該方法は、該アノード-物質界面の極近傍において過剰量のカチオンを供給することによって、該物質を介するカチオンの移動による電気浸透排液を助長し、一方同時に、アニオンは既に該アノードの近傍に存在するので、該物質における該アニオンの逆効果を持つ移動を最小化し、また該水は、該カソードに達した後に、一般的には重力の作用により排除される。
【0009】
電解-脱水技術の主な欠点の一つは、アノードにおいて起る電位降下である。このアノードにおける電位降下は、該アノードに隣接する該物質(土壌またはスラッジまたはその他)の含水率の低下によって説明することができる。これは、またイオンの該アノードから遠方への移動およびこのプロセス中に発生したガスのために、間隙水の導電率が低下することによっても説明される。更に、また電位降下は、該アノードと脱水すべき該物質との間の不適切な接触によって説明することもできる。従って、該物質(土壌、スラッジまたは固体および液体成分両者を含む任意の物質)に直接適用される電圧勾配は、電極に印加された電圧の一部のみであり得る。従って、アノードにおける電位降下を防止する方法および装置を手に入れることが極めて望ましいことである。この電位降下を防止または低下するための一方法は、電極と該物質との間に適切な接触状態を確保することであり、これは該電極を介して圧力を適用することによって実現できる。該電位降下を更に減じ、あるいは更に防止さえもするもう一つの方法は、該物質の導電率を高めるであろう電解質を添加することである。最後に、高い電気抵抗を持つ物質層の除去も、該電圧降下を防止しあるいは減じる。
本発明の一態様によれば、該電解質は、該物質の全水平表面(即ち、X-およびY-軸)に渡り分散されるが、最大の効率を達成するためには、該電解質は、他の方法、例えばスラッジ凝集法、スラッジ凝固法、ライム添加法等に対して必要とされるであろう如き、該物質の厚み(即ち、Z-軸)(図2を参照のこと)全体に渡って、該電解質を含浸または混合すべきではない。
【0010】
本発明の更なる目的は、物質の処理方法を提供することにあり、該方法は、少なくとも一つのアノードと少なくとも一つのカソードとを含む、少なくとも2つの電極を含む電解-脱水装置に、処理すべき該物質を添加し;該少なくとも2つの電極の一方の界面に、電解質を均一に添加し(噴霧、蒸発、展開、ロール塗布、液体または固体状態での堆積または電気注入)、ここで電解質は、処理の開始時点において、または該装置またはプロセス全体の任意の場所または時点において添加することができ;電流を該物質を通して流して、電気浸透により該物質を処理および/または脱水し、ここで圧力を該物質に適用して、各電極と該物質との間に実質的に一定の接触を維持し、かくしてより乾燥状態にある物質と少なくとも一つの廃物を生成し;コントローラーが、電解質を該物質に添加する時期を調節し、ここで該コントローラーは、物質-電極界面に対する実際の電解質の添加量に関する入力、例えば貯槽における電解質の体積における減少量を測定するプローブからの入力を受取り、またコントローラーの出力が、該物質を横切る特定の電圧を発生させ、かつ特定の圧力を該電極の一方を介して印加することにより、該電解-脱水プロセスを開始させることを特徴とする。
【0011】
本出願人は、電極と脱水すべき物質との間の界面において、該電極の近傍において起る電圧の喪失を排除する目的で、液体または固体形状の何れかにある電解質を堆積させることにより、該電解-脱水プロセスが著しく増強されることを見出した。電解質添加の最大の効率を得るために、該電解-脱水プロセスを電解質添加後に開始して、圧力および電流を印加する前に、該電解質が、該スラッジ内に浸透しあるいはこれを含浸しないようにする必要がある。該電解質は、該処理の開始時点において、あるいは該処理の活動中のゾーンにおいて、任意の時点および場所において添加することができる。但し、不必要なエネルギーの消費および温度の上昇を引起す恐れのある、優先的な電流チャンネルの形成を回避するために、該電解質が、電流の作用を受けるであろう該物質の領域に均一に分散されることを条件とする。該表面(混合されていない)における電解質の添加は、出願人が、極めて高い程度で電解-脱水の効率を高めることを可能とする。幾つかの場合において、効率は、該物質-電極界面において単に電解質を分散させるだけで、50%程度まで高められた。
物質は、本明細書全体を通じて、任意の液体-担持物質と互換的に使用され、また都市スラッジ、産業スラッジ、土壌富栄養化(agro-alimentary)スラッジ、例えば豆腐、トマトペーストおよびジュース由来のもの、飼料スラッジ、鉱山残渣、浚渫スラッジ、例えば港湾及び運河由来のもの、製薬スラッジ、藻類脱水、パルプおよび製紙業に係るリグニン溶液、精油の抽出、またはあらゆる液体担持物質、または固/液分離を必要とするあらゆる材料が、その例として含まれるが、これらに限定されない。
【0012】
実験は、予想に反して、該電極-物質界面(表面)においてのみ分散された電解質を用いた電解-脱水の開始、即ち該界面のみにおける電解質に富む層の形成は、該物質と均一に混合された電解質を用いて電解-脱水を開始した場合よりも、より一層効率的であることを示している。更に、実験および遡及的分析は、以下の事実を明らかにしている。即ち、最適の構成は、あらゆる電解質を該電極-物質界面に添加すべきことを支持している。電解質が電解-脱水プロセスを増強する理由は、脱水すべき幾つかの物質が、電解質に乏しい物質であるか、あるいはより容易に利用できる電解質を必要としていることにある。該物質が、電解質に乏しい物質でない場合であっても、該電解-脱水プロセスは、内因性の電解質を含む該物質を枯渇させる。事実、カチオンはカソードに向かって移動し、またアニオンはアノードに向かって移動するので、実質上、より一層イオンに欠乏することになる。利用可能な電解質の量を高めるもう一つの方法は、該プロセスが、イオンを利用可能なものとする溶液(例えば、酸)の使用により、該物質を可溶化することである。電気浸透は、過剰量の対イオンが存在する相においてのみ起るであろう。より多くの同符号のイオンがこの相に侵入するほど、より大きな逆の引張り込みが水に対して及ぼされ、結果として正味の電気浸透流れは、より小さなものとなるであろう。このことにより、該電極-物質界面に対する電解質の添加が有益な効果を持つ理由を、説明することができる。カチオンが、物質の全厚みに渡り移動して、カソードに達し、それに対してアニオンは既にアノード近傍にある。
【0013】
該電極-物質(アノード-スラッジ)界面における電解質の分散は、電流チャンネルの形成を防止するために、実質的に均一でなければならず、また十分な量および/または体積の電解質が、該物質の全表面上に分散されている必要がある。電流チャンネルの形成は望ましくない。というのは、該チャンネルが形成された場合、電流は該処理すべき物質の表面上に適切に分配されず、また該電気エネルギーの大部分が、イオンの移動を助ける電場を発生するのではなく、寧ろ熱となってしまうので、最適な効率は実現されない。その上、最大の効率を実現するためには、十分な量でのみ電解質を添加して、電気浸透処理中の電圧降下を実質的に低下し、または防止することが重要である。事実、多すぎる電解質の添加は、より大きなエネルギーの消費および該電解質を購入するためのより高いコストへと導き、結果として該処理の全体としての効率を減じてしまう。
【0014】
本発明の目的の一つは、電解-脱水装置を提供することにあり、該装置は、適切な量の電解質を、該物質-アノード界面の適切な位置に与えるように設計されている。米国を選択し、また2007年12月21日付で、WO2007/143840として公開された、PCT/CA2007/001052において記載されているように、出願人は、物質が該脱水プロセスに伴って移動するにつれて、電解-脱水条件の変動を可能とするように、最適の脱水装置には、数個の孤立した電解-脱水ブロック/段階を含めるべきことを見出した。この特許出願は、また該脱水装置が、電解質を該スラッジに適用するためのシステムを含み得ることを開示している。上記特許出願PCT/CA2007/001052およびその優先権の基礎となる特許出願、即ち2006年6月14日付の米国特許出願第60/804,703号および2006年10月20日付の同第60/862,294号の全内容を、ここに完全に開示されているものとして、参考のために本明細書に組入れる。
圧力、電流、電圧等におけるブロック間の「連続的」変化量に加えて、[不連続な]巨視的変化のための手段が与えられており、そこでは、各孤立したブロックは、独立に稼働され、また電解質の添加すべき最適量の決定を補助する上で重要なパラメータを測定するプローブによって、制御されている。
【0015】
重要なパラメータ、例えば導電率および電圧を測定するプローブからの入力情報は、コントローラーに送られ、そこで少なくとも一つの電解-脱水ブロックまたは処理段階各々からのこれらデータが処理される。一段階またはモジュールの端部において得られたこれらの測定値は、次の処理段階またはモジュールにおける処理を開始する前に、該物質に対する電解質の添加量を決定するであろう。この方法は、多段プロセスの各段階に、あるいはモジュール装置の各モジュールへの電解質の最適量の添加を、保証するであろう。該コントローラーにより受取られた全ての入力は、処理され、また電解質を添加すべき最適時間、該電解質の量およびその添加すべき位置の決定を可能とする。湿度、厚み、温度、電流、電圧を測定する他のプローブも、入力情報を該コントローラーに送ることができ、該コントローラーは、同様に電解-脱水性能においてある役割を演じていることが知られている、これらの測定値に基いて、添加すべき電解質の量、その添加時期および添加場所を調節するであろう。あるいはまた、一段階の処理プロセスまたはモノ-モジュール装置において、電解質は、先ずプローブの入力情報または物質の諸特性に基いて添加することができ、部分的処理後のプローブの測定値に応じて、電解質を再度添加することができる。
【0016】
コンドウは、日本国特許公開第60-114315号において、スラッジの導電率を高めるために電解質を添加する方法を教示している。該コンドウの特許と本発明との間には、以下のような3つの基本的な違いがある:1. 電解質と該物質とを混合するのではなく、寧ろ電極-物質界面において該電解質を堆積させる必要性;2. 電解-脱水の効率における増大を実現するために必要とされる電解質の濃度;および3. 使用される電解質の型。コンドウの技術において、電解質(これは、単に塩化ナトリウムまたは海水である)は、本発明において使用される量よりも著しく大量に添加され、またその理由は、コンドウの技術では電解質で該スラッジを含浸し、またはこれらを混合する必要があり、従って該材料の抵抗率が低下し、しかも電流が増大することにある。更に、コンドウの技術では、高度に液体状態にある(99.4%なる含水率)、初期スラッジを使用しており、これは、該電極-物質界面においてのみ電解質を適用することを不可能にしている。出願人は、ここで予備濃厚化されたスラッジを使用しており、この方法は、該スラッジ表面への電解質の適用を可能とし、また電解-脱水処理を開始するまで、電解質を該表面上に短期間に渡り維持することを可能とする。
【0017】
更に、出願人は、ここで、より高い電解質濃度の使用が、電解質に富む物質を脱水するのに要する、より高いエネルギー投入量のために、電解-脱水プロセスをより効率の低いプロセスへと導く恐れがあることを、明確に立証している。事実、電解質に富む物質(これは大量の電解質を含む)は、より多くの電気を伝導するが、全体としては、アノードにおける電圧損失が防止される、最小量の電解質を含む物質よりも低効率となるであろう。本発明は、電解-脱水効率を改善するのに必要とされるイオンの、必要量のみを添加することによって、アノード近傍の電圧損失のみを補償することを可能とする。通電が、電解質の添加直後で、しかもかなりの程度の電解質による該物質の含浸が起る前において開始される限りにおいて、電解質は、処理の直前または連続する処理段階間の中断中に添加される。
電解質溶液は、以下に列挙する電解質の少なくとも1種またはその任意の組合せを含むことができるが、これらに限定されるものではない:CaCl2、NaCl、Ca(NO3)2、NaPO4、K2CO3、Na2CO3、NaHCO3、HCl、H2SO4、C6H8O7(クエン酸)、Na2SiO3、CaCO3、CaO、KCl、Ca(CH2COO)2、K2PO4。本質的に、該カチオン部分は、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、水素(または元素周期律表の第IA族または第IIA族の任意の構成員)の任意の一種またはこれらの組合せであり得、また該アニオン部分は、クロライド、ニトレート、カーボネート、サルフェートおよび/または酸素(あるいは任意の負に帯電した原子または分子)の任意の一種またはこれらの組合せであり得る。
【0018】
更に別の本発明の目的は、該物質および抽出される液体内部のpH値を低下するための、酸性特性を持つ電解質を提供することにあり、そこでは、水素イオンが該電気浸透プロセスに関与しており、また十分な量で存在する場合には、典型的に該カソードにおいておよび/またはその近傍に形成される堆積物の除去および水の蒸発の阻止に寄与し得る。例えば、炭酸カルシウム残渣は、該カソード近傍に蓄積される。従って、そのpHを下げるための酸の添加は、その可溶化を有利にし、結果としてカルシウムを、濾液または抽出液体中に放出する。更に、該物質のpH低下は、該物質の液体部分から、金属を析出させる上で役立つ可能性があり、ここで電流は、該金属を該カソードに向けて移動させる。
本発明の目的の一つは、本質的に該電極-物質界面での、電解質の堆積を可能とし、その添加直後に該電解-脱水プロセスを開始するようにプログラムされている、方法並びに装置を提供することにある。コントローラーは、該電解-脱水プロセスの効率を最大にするために、プローブのシグナルに応答することができる。
【0019】
本発明の目的の一つは、電解-脱水すべき物質の表面に効率的に電解質を添加するための装置を提供することにある。電解質の添加は、電極により、あるいは電極に隣接する構造により直接実施することができる。該電解質を、脱水すべき該物質上に分散し得る限りにおいて、該電解質は、該スラッジ上に蒸着することができ、あるいは該電解質は、液体、固体、気体またはプラズマ形状で、該スラッジ上に堆積することができる。該装置は、更に該物質上に該電解質を噴霧するためのノズル、該物質上に該電解質を堆積するのに適した電極、制御された電解質の貯槽としての役割を果たすのに適した電極の何れか一つまたはその組合せをも含むことができ、ここで該貯槽は、電解質で飽和された吸収材料を含み、そのため連続する処理段階間で電極を持ち上げている際の電解質の損失は、防止され、更に該装置は、該物質上に電解質を電気注入するのに適した電極、該物質上に電解質を噴霧するのに適した電極、該物質を展開し、また同時にまたは同時でなしに、該電解質を添加するのに適したロール装置、電解質で含浸され、かつ該電極と該物質との間に配置されたフィルタクロスをも含むことができる。
本発明は、添付図面を参照しつつ以下に与えられる、本発明の態様に関する以下の詳細な説明によって、より一層十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、3つの時間点に対する、2つの電極間の距離の関数としての、電圧を模式的に示した図であり、電解質に乏しい物質を電解-脱水処理に掛けた結果を強調して表示してある。
【図2】図2は、アノード-物質界面において電解質を堆積し、2つの電極間に圧力および電流を印加するための装置の一態様を模式的に示した図である。インセットは、様々な軸により、該電解質および物質の層を3-D表示した図である。
【図3】図3は、テストした3種の電解-脱水条件:即ち、電解質の不在下(なし);該電極-物質界面に堆積させた電解質の存在下(表面);および該物質と混合された電解質を含む状態(混合)において実現された、最終的な乾燥度を示すグラフである。
【図4】図4は、添加された電解質の関数として、電解質の不在下(なし);該電極-物質界面に堆積させた電解質の存在下(表面);および該物質と混合された電解質を含む(混合)条件下で、抽出された液体1トン(TLEx)当たりのエネルギー消費量(kWh)を示すグラフである。
【図5】図5は、テストした3種の電解-脱水条件:即ち、電解質の不在下(なし);該電極-物質界面に堆積させた電解質の存在下(表面);および該物質と混合された電解質を含む状態(混合)における、時間の関数としての電流密度を示すグラフである。
【図6】図6は、電解質を脱水すべき物質の表面に添加した場合における、電解質濃度の関数としての、最終的な乾燥度を示すグラフである。
【図7】図7は、物質の表面に添加した電解質の存在下および電解質の不在下なる実験条件に対する、印加された電圧の関数としての、最終的な乾燥度を示すグラフである。
【図8】図8は、電極-物質界面に電解質を添加するように設計された装置の幾つかの可能な態様を示す図である。
【図9】図9は、電解質としての塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸および電解質を使用しないコントロールに関して、時間の関数として達成された乾燥度レベルを示す図である。
【図10】図10は、電解質としての塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸および電解質を使用しないコントロールの全体としての効率を示す、ヒストグラムである。
【図11】図11は、様々な界面活性剤および電解質を比較した、時間の関数としての乾燥度レベルを示す図である。
【図12】図12は、スラッジのヘドニックトーンと乾燥度のレベルとの間の関連性に関する電解質の効果を示す図である。
【図13】図13は、入口スラッジの流量(図13A)および投資額に対する利益(図13B)の関数としての、スラッジの乾燥度を示すグラフである。
【図14】図14は、電解質の存在下または不在下での、実験的条件に対する、時間の関数としての有効電圧(図14A)および乾燥度(図14B)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
電解-脱水装置は当分野において公知であり、また刊行物:WO2007/143840においてより完全に説明されている。本件特許出願を参照すると、図1は、電解質の不在下(実線)または存在下(破線)での、3つの時間点に対する、2つの電極間の距離の関数としての、電圧を模式的に示した図であり、電解質に乏しい物質を電解-脱水処理に掛けた結果を強調して表示してある。この像は、従来技術の欠点を示しており、それによって多孔質液体担持物質を介して発生する電流が、時間の関数としての、およびアノードからの距離の関数としての、迅速な電圧における降下へと導く。増大した抵抗を持つゾーンがアノード近傍に現れる主な理由は、アノードからカソードに向かうカチオンの流出であり、そのために水がカソードまで引張られ、またアノード近傍において堅くて脆い物質が生成される。この堅くて脆い物質は、この物質を流通し得る電流の量を著しく制限する特性を持つ。幾つかの技術が、この問題を回避すべく開発されており、またアノードおよびカソードを横切る電位が、電解-脱水の開始時点において有意となるが、該プロセスが継続されるにつれて、該電位は、ある点において取るに足りない大きさとなるまで、経時に伴って低下し、そのため効率の悪い脱水条件を生成する。該電位がゼロに近づくと、電気エネルギーは、該物質中でイオンの強制的な移動を起こす電場の発生を誘発(即ち、効率的なエネルギー)するのではなく、寧ろ熱に転化される。電解質の添加は、該アノード近傍で起る電位における降下を減じもしくは防止し、結果として電解質の存在は、電解質が、依然としてTnにおける効果を示すのに十分な量で存在する限り、テストした全ての時点において、実質的にT0(破線参照)に近い曲線TiおよびTnを生じるであろう。
【0022】
図2は、アノード-物質界面において電解質33を堆積し、2つの電極32および35間に電流および圧力30を印加するための装置の一態様を模式的に示したものである。この場合においてはアノードである、第一の電極32に組込んだ白抜きの矩形は、ノズル31を含み、該ノズルは、この場合には廃水スラッジである処理すべき物質34上に、電解質33を均等に分配することができる。この場合にはカソードである、下方の電極35上の白抜きの矩形は、この場合には水36の抽出を可能とする貫通穴37である、流体36の排出を可能とするのに適した形状を表す。該物質上に該電解質を添加する段階と、該電解-脱水プロセス(即ち、電流および圧力)を開始する段階との間で、混合が全く起らないことが、本発明の重要な局面の一つである。図2のインセットは、様々な軸により、該電解質および物質の層を3-D表示した図であり、それによって該x-軸およびy-軸は、該展開された物質34の水平表面に本質的に対応し、またそのz-軸は、該展開された物質の厚みに相当する。
【0023】
図3は、テストした3種の実験条件:即ち、添加電解質の不在下(なし);該電極-物質界面にのみ堆積させた電解質の存在下(表面);および該物質と均一に混合された電解質を含む状態(混合)において、同等な10分間の処理中に実現された、最終的な乾燥度を示すグラフである。全ての実験は、米国特許出願公開第2005/0016870号においてより詳しく説明されている、実験室規模の脱水チャンバーで実施した。簡単に言えば、カナダ国、ビクトリアビルの下水処理プラント由来の廃水スラッジである実験物質を、3つの等しい部分に分割した。その第一の部分(なし)に関しては、スラッジを十分に混合し、該チャンバーに入れ、標準的な該電解-脱水プロトコールに付した。その第二の部分に関しては、スラッジを十分に混合し、該チャンバーに入れ、体積10mLの10%電解質溶液を、該スラッジの全上部表面上に堆積させ、次いで有意な含浸または混合が起る前に、上記の標準的な該電解-脱水プロトコールに付した。最後に、残りの第三の部分においては、10%の電解質溶液(体積:10mL)を該スラッジに添加し、これらを十分に混合し、次いで該チャンバーに投入し、この時点において、標準的な該電解-脱水プロトコールを開始した。図3は、これら3つの実験条件において達成された最終的な乾燥度レベルを示すものである。他の条件全てを同一とした場合、混合または含浸なしに、該スラッジの表面に対して電解質を添加することは、テストしたこれら3つの実験条件の中で、最高の最終的な乾燥度レベルを与え、それは50%なる乾燥度レベルに達しており、これに対して混合された電解質に関する最終乾燥度レベルは39%であり、また電解質不在下なる条件に対する該レベルは33%である。乾燥度は、標準的なテストを利用して評価するが、そのために該物質は、2回の連続する秤量値が有意な変化を示さなくなるまで、即ち全ての水が蒸発されるまで、高温度(105oC)条件下に置かれる。誤差バーは、2回の独立した実験の標準偏差を表す。
【0024】
図4は、添加電解質の不在下(なし);該電極-物質界面のみに堆積させた電解質の存在下(表面);および該物質と均一に混合された電解質を含む条件下(混合)で、乾燥度30%までの、抽出された液体1トン(tLEx)当たりのエネルギー消費量(kWh)を示すグラフである。図3において使用したものと同一の3種の実験条件が、極めて異なる最終的乾燥度レベルに導くことから、また水の第一の減少量を除去するに要するエネルギーが、第二の減少量を除去するに要するエネルギーよりも低いことから、本出願人は、共通の最低水準の乾燥度レベルに達するに要するエネルギーを算出した。全ての実験は、米国特許出願公開第2005/0016870号においてより詳しく説明されている、実験室規模の脱水チャンバーで行った。簡単に言えば、カナダ国、ビクトリアビルの下水処理プラント由来の廃水スラッジである実験物質を、3つの等しい部分に分割し、電解質を添加した後または添加せずに、電解-脱水処理に付した。その第一の部分(なし)に関しては、スラッジを十分に混合し、該チャンバーに入れ、図3について記載したものと同様な標準的な該電解-脱水プロトコールに付した。その第二の部分に関しては、スラッジを十分に混合し、該チャンバーに入れ、1gの電解質を、該スラッジの全上部/水平表面上に堆積させ、次いで有意な含浸または混合が起る前に、上記の標準的な該電解-脱水プロトコールに付した。最後に、残りの第三の部分においては、該部分2と同様な電解質の量を、該スラッジに添加し、該電解質が該スラッジと均一に混ざるまで、5分間に渡り、これらを十分に混合し、次いで該チャンバーに投入し、この時点において、標準的な該電解-脱水プロトコールを開始した。図4は、上記3種の実験条件において達成された、抽出された水1トン当たりのエネルギー消費量を示すものである。当分野において、電解質の単なる存在は、物質の導電率を増大し、結果として該物質を通過する電流を高めることは周知であるので、本出願人は、該物質表面への電解質の添加(292 kWh/TLEx)が、電解質を含まないコントロール(311 kWh/TLEx)よりも僅かに低いエネルギー消費に導くことに気付き、驚いた。しかし、より一層驚いたことに、均質に混合された電解質条件は、他の2つの実験条件よりもかなり高いエネルギー消費量(573 kWh/TLEx)を示した。これらの結果は、ここに記載する本発明の有利な特徴に関する極めて強力な事例となる。誤差バーは、2回の独立した実験の標準偏差を表す。
【0025】
図5は、上記3種の電解-脱水条件:即ち、電解質の不在下(なし);該電極-物質界面に堆積させた電解質の存在下(表面);および該物質と混合された電解質を含む状態(混合)における、時間の関数としての電流密度を示すグラフである。この図から、これら3つの実験条件全てに対して、該電流密度は、電解-脱水の開始時点において極めて急速に増大するが、該表面に堆積させた電解質の存在下および電解質不在の条件下では、該電流密度は迅速に減少し、また該均一に混合された電解質の存在条件下での電流密度よりも低くなることを理解することができる。この図は、図4におけるエネルギー消費量が、該混合電解質条件に対して、テストされた他の2つの条件に対する値よりも高い理由を、うまく説明している。事実、該混合電解質条件において、該電解質は、該物質全体に渡り均一に分散されているので、該電流密度は、電解-脱水の開始時点において最大となり得る。しかし、アノード近傍において見られる該電解質の絶対量は低いので、電解質の有利な効果は迅速に低下する。該電解質の全量が、該アノード-物質界面に直接配置された場合(表面堆積)には、カソードにおける電解質濃度は最初に低下するとしても、該アノードにおける十分な量の電解質が、電解-脱水の効率を低下する電位の降下を補償するであろう。
【0026】
図6は、電解質を脱水すべき物質の表面に添加した場合における、電解質濃度の関数としての、最終的な乾燥度を示すグラフである。ここにおける実験条件は、前の図3-5において使用したものと同様であるが、最適な電解質添加法を使用して、最終的に実現される乾燥度レベルに関して、電解-脱水の効率を最も高いものとすることを可能とする、電解質の濃度範囲を評価した。このグラフから、該電極-物質界面において堆積された低い電解質濃度(10%)が、夫々最終的な乾燥度の値43、43、42%TSSを示す、電解質濃度20、40および50%と比較して、同様な最終的乾燥度レベル(41%TSS)を生じることを理解することができる。これらの結果は、テストした濃度の中で、最も効果的な濃度が10%であることを示唆している。事実、10%を越える何れも、同様な乾燥度レベルを与え、また同様なエネルギー消費量を示しており、これは、過剰量の電解質が、該電解-脱水に対して有意な方法で関与していないことを示唆している。実際に、10%を越える、電解質の表面堆積濃度を使用した場合、該過剰量の電解質は、該電極-物質界面に残されており、また該電解-脱水プロセスには関与しておらず、従ってより大きな電流が該物質を通過することを可能としない。これらの結果は、より少量の電解質が、より多量の電解質よりもより高効率であることを強力に示唆している。というのは、より高い電解質濃度の場合には、過剰の電解質が単に浪費されるに過ぎないからである。更に、電解-脱水の終了時点において、該電極表面の界面にまたはその近傍に残されている電解質は、該スラッジの最終的な質量に寄与するであろう。殆どの電解-脱水プロセスおよびプラントは、そのスラッジに対して重量基準の廃棄料金を支払っているので、該電解-脱水プロセスにおいて機能しないであろう電解質材料を添加するための過剰な料金、および更に該過剰な電解質の量が、該電解-脱水された物質の最終的な重量に寄与するので、これを除くために再度過剰な支払いをすることは、極めて非効率なことである。最後に、テストした全ての電解質濃度が、如何なる電解質も添加されてない場合よりも、大幅に高い最終的な乾燥度の値を与えた。
【0027】
図7は、物質の表面に添加された電解質の存在下および電解質の不在下なる実験条件に対する、印加された電圧の関数としての、最終的な乾燥度を示すグラフである。40〜60Vなる範囲の電圧を、電解質の存在下およびその不在下でテストした。この図から、テストした全ての電圧において、電解質の存在が、有利な効果を有しており、これら両実験夫々における40V、45V、50Vおよび60Vなる電圧に対する、25%、27%、30%および33%という電解質の不在下での最終的な乾燥度の値と比較して、41%、42%、43%および41%という最終的な乾燥度の値をもたらした。最終的な乾燥度における差が、電圧を高めるにつれてより小さくなることから、電解質添加のこの有利な効果は、テストした電圧のより低い範囲において、より顕著であるものと考えられる。この観測は、幾分かは工業的に利用し得ないであろう、極めて高い電圧においては、アノードにおいて観測される電位降下は解消され、また堅くて脆い物質の存在にも拘らず、十分な電流が該物質を流れて、該物質を脱水し得るという事実によって説明することができる。しかし、工業的な設定およびエネルギー消費量に著しい費用がかかる設定において、そのエネルギーコストおよびこのような高い電圧において発生する熱は、電解-脱水プロセスを、全体として非効率的なプロセスとするであろう。
【0028】
図8は、電極-物質界面に電解質を添加するのに適した、電解-脱水装置およびそのメカニズムの幾つかの例を示す図である。図8Aは一態様を示し、これにより該電解質19がノズル20によって、あるいは充填チャンバー26を介して添加され、ここで該ノズルは、供給装置21と該電解-脱水ゾーンとの間に置かれている。スラッジ入口22および出口23は、その上方にアノード24およびその下方にカソード25を持つように図示されている。脱水すべき該物質27は、重力に係る理由から該カソード25に隣接して示されているが、処理中は、該アノードは下げられて、物質に対して一定の接触および圧力を設定する。絶縁プレート28も図示されており、これはアノード24と整流器(図示せず)との間の電気的な絶縁のために重要である。図8Bも一態様を示しており、ここで該アノード24と隣接する該絶縁プレート28は、電解質19を維持し、また必要に際してこれを分配するのに適しており、従ってフィルタクロスをも含むことのできる電解質貯槽29として作用する。該貯槽29への電解質19の添加は、充填チャンバー26を介して行われ、また該電解質は、噴霧機、ノズル、滴下装置、電気注入器または電解-脱水すべき該物質の全表面に渡り該電解質を実質的に均一に分配することを可能とする任意の方法によって、該物質に添加される。
【0029】
図9は、様々な電解質を用いて達成した、乾燥度レベルを示すグラフである。テストした3種全ての電解質は、電解質を使用しないコントロールよりも極めて有意に良好にその機能を果たした。即ち、硫酸、硝酸カルシウムおよび塩化カルシウムの添加は、21.0%なる最終的な乾燥度レベルを与えた、電解質を使用しないコントロールと比較して、夫々35.6%、38.2%および37.4%なる、60秒後の最終的な乾燥度レベルをもたらした。図9にグラフトして示された乾燥度(%)は、実験室用の装備によって秤量された、抽出された水の量から、外挿法により求めたものである。しかし、該物質を、図4において説明したような、標準的な乾燥度テストに付した場合、該処理の終了時点において実現された該最終的な乾燥度レベルは、僅かに22.9%なる最終的な乾燥度レベルを与えた、電解質を含まないコントロールと比較して、硫酸に対して47.3%、硝酸カルシウムに対して45.2%およびリン酸カルシウムに対して46.4%であった。図9に示された実験において、添加された電解質の量は、約0.009mL(6N H2SO4)/cm2(アノード表面)である。
【0030】
図10は、電解質としての塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸および電解質を使用しないコントロールの全体としての効率を示す、ヒストグラムである。結果は、電解質の不在下での電解-脱水の全体としての効率を、テストした3種の電解質の存在下での該処理の全体的効率と比較して示すものである。ここで、該電解質は、該スラッジの表面に適用され、また該電解-脱水プロセスは、該電解質の該物質への含浸が起り得る前に、開始される。図10から、硫酸が、テストされたカルシウム塩両者よりも一層効率的であることを理解することができる。全体的な効率は、電解質のコスト、該プロセスに関与するエネルギーコスト、スラッジが該プロセスに投入される量および速度および電解-脱水プロセス後に残されるスラッジの量に基いて決定される。従って、効率は、[スラッジ]inトン数で割り、[スラッジ]outトン数を乗じた、1時間当たりのコストの逆数として計算される。実験は、本質的に図3-7および9において示されたものと同様な、実験プロトコールに従って行った。
【0031】
図11は、様々な界面活性剤を用いて得た、電解-脱水時間の関数としての、全液体喪失量によって測定した乾燥度の結果を示す図である。この図から、テストしたマグノール(Magnor)界面活性剤の中で、イオン性界面活性剤のみが、脱水効率の改善性を示したことを理解することができる。事実、界面活性剤マグノール(Magnor) 571080(アニオン性)およびマグノール(Magnor) 574563(カチオン性)両者は、使用した実験条件において、EDWを大幅に高めた。他方、ノニオン性界面活性剤であるマグノール(Magnor) 573462は、界面活性剤の存在しない条件下での結果と比較して、殆どまたは全く乾燥度における増大を示さなかった。このことは、ノニオン性界面活性剤が、水分子と結合できず、その結果水がその輸送能力の助けを享受し得ないことを示唆している。これらの結果は、電解質が電解-脱水の効率を高めるメカニズムにおける、イオンの重要性を支持している。
【0032】
アニオン性およびカチオン性界面活性剤両者は、EWD効率を高めた。また図11に示された全ての実験結果は、低導電率の都市廃水スラッジについて行われた。結果は、イオン性界面活性剤が、硫酸よりも有効性が低かったが、界面活性剤についての最適化の研究は行わなかった。界面活性剤等の電解質の効率のレベルは、元々のスラッジの導電率に依存する可能性があり、従って電解質の添加は、電流強度にとって有利に作用し、また一方の電極において観測される電圧の損失を防止する。
テストしたカチオン性界面活性剤の幾つかは、四級型のものであり、また正の消毒特性を持つことが立証された。界面活性剤は、一般に殺菌特性を持つが、カチオン性界面活性剤は、より一層高い殺菌特性を示す。
【0033】
両性界面活性剤化合物を使用することが有利である。というのは、これらが酸性またはアルカリ性溶液の何れにも溶解し得るからである。これは、電解-脱水にとって極めて興味深いことである。というのは、該スラッジの「アノード」表面が、酸性となり、かつその「カソード」表面がアルカリ性となるからである。両性界面活性剤は、両電極表面において発生する液体を、潜在的に緩衝し、またカソードにおける破壊屑の蓄積を防止するのに役立ち得る。
図12および表1は、電解質の型の関数としてのヘドニックトーンを示す。ヘドニックトーンは、匂いの相対的な快適さ/不快さの尺度であり、また臭いが持つと思われる不快さの指標を与える。これは、電解-脱水によって達成されるような、停止前後の臭いを格付けするのに使用できる。ヘドニックトーンは、電解質の存在下またはその不在下での、電解-脱水処理前後の、様々なスラッジサンプルの匂いを嗅がせた、予備知識を持たない対象を用いて測定した。表1は、より定量的に詳しい、7種の実験条件、即ち1種のコントロールサンプル(非-電解-脱水)および様々な乾燥度まで電解-脱水された6種のスラッジサンプルを示す。対象は、予め決められた測定尺度に基いて、各スラッジの臭いを定性的に評価することを依頼された。
【0034】
【表1】
【0035】
香り付きの電解質を添加して、ヘドニックトーンを更に高めることも有用であった。例えば、リンゴの香りを持つスラッジは、無臭のスラッジよりも、ヘドニックトーン指数について高くランク付けされるであろう。添加された香は、農業において再利用するためのスラッジの価値を更に高めることができる。
当業者は、幾つかの電解質が、電解-脱水プロセス中の臭気の排除効率を高めるのに極めて適していることを理解するであろう。事実、例えば電解質としての塩化ナトリウムの使用は、該スラッジ中に酸化性の塩素-含有化合物を生成することができる。その上、該電極における水の電解によって(外部からの電解質の添加なしに)当然生成される酸化性化合物は、バクテリアの一集団を殺傷でき、また病原体の発生する臭気を排除できる。一方で、一種の電解質の添加は、用量依存性の様式で、同一集団の2種以上を殺傷し得るが、他方では、他の電解質は、「非線形の」濃度範囲、即ち該電解質の増減が病原体の破壊に影響を与えない濃度において、バクテリアの新たな集団全体を殺傷することができる。従って、幾つかの酸化性化合物は、相加的様式で作用でき、一方他の化合物は相乗的に作用するであろう。
【0036】
本質において、幾つかの電解質は、より多くの病原体の排除を助けることができ、また結果として電解-脱水の正常な臭気排除効果を高める上で寄与し得る。電解-脱水技術における多くの現象が、スラッジの「消毒」に寄与し得るものと理解される。このような現象としては、電極における酸化性化合物の発生、高温度、高圧および電解質がある。表1および図12には、ヘドニックトーンに対して有利な効果を示す、僅か1種のみの電解質が示されている。他の電解質もテストしたが、同様な結果を示さなかった。ヘドニックトーンに対する有利な効果は、ヘドニックトーンと乾燥度との間に確立される傾向線からの正のズレを意味するものと理解すべきである。電解質を用いない電解-脱水も、またヘドニックトーンに対して効果を持ち、その結果明確な関連性を、乾燥度と臭気との間に確立することができることが理解されよう。
上に述べたように、電解-脱水されたスラッジ由来の水は、それと共に分子/ガスを含有する臭気をもたらす。例えば、アンモニア化合物としての窒素は、バクテリアから、その電解的な破壊過程中に遊離される。これら窒素化合物は、水に対して溶解性であり得、また該脱水プロセスを通して排出される。多くのその他の揮発性および臭気発生ガスは、水成分と共に排出され、またこれらの液体は、典型的には上記廃水処理プラントの入口に送り返される。
【0037】
図13は、入口スラッジの流量(図13A)および投資額に対する利益(ROI)(図13B)の関数としての、スラッジの乾燥度を示すグラフである。この実験的プロトコールは、電解-脱水プロセス中の多くの電解-脱水パラメータを測定し、これにより10-15%なる範囲内の初期乾燥度値を持つスラッジを、20%、25%、30%および35%という最終的な乾燥度値まで電解-脱水するように工夫された。当業者は、多くの廃水処理プラントが、標準的な機械的脱水装置、例えばフィルタプレス、スクリュープレスおよびベルトプレスを使用して乾燥度15%までのスラッジを与えることができることを理解するであろう。更に、幾つかの型のスラッジは、電解質の添加なしに35%を越えるより高い乾燥度値を達成することはできない。図13Aは、少量の電解質の添加により、EDW装置が、電解質の添加なしでは1時間当たり1.0トンなる速度であるのに対して、乾燥度15%のスラッジを、1時間当たり2.2トンなる速度にて、乾燥度20%まで高める得ることを示している。この効率における極めて高い112%という増加は、スラッジの乾燥度が更に増大するにつれて僅かに減少し、その結果72%という効率における増加が、35%なるスラッジ乾燥度を達成する際に観測される。
【0038】
図13Bのグラフをプロットするのに使用する該ROIの計算は、出願人の電解-脱水装置の販売価格、設備およびインフラ構造のコスト、電解質およびエネルギー(電気)を含む稼働コスト、スラッジの輸送/廃棄コスト、メンテナンススタッフおよび作業員のコストを考慮している。y-軸は、回収すべきこのような投下資本に関する、年単位で表した時間、即ち投資額に対する利益(ROI)を表す。再度、電解質は、このような装置に対する資本回収が、電解質を使用しない場合の6.3年と比較して、電解質を用いた場合には、2.8年であることから、スラッジを最終的乾燥度20%まで電解-脱水する場合に、最高の効率を示す。興味深いことに、電解-脱水されたおよび電解-脱水されていないスラッジ両者に関するROIは、両者の曲線は平行であると考えられるが、百分率での増加率は、乾燥度に伴って減少する如く、要求されるスラッジの乾燥度と共に増大する。これらの計算は、電解質のコストを含むので、電解質添加の多大な利益は、それにも拘らず当業者並びにその他の人々により理解されるであろう。
【0039】
図14は、時間の関数としての有効電圧および乾燥度を示すグラフである。図14Aにおいて、該データは、電解質の添加が、該電解-脱水プロセスの期間(この場合は700秒)中ずっと、該電圧および電流(図示せず)に対して深遠な効果を有しており、このことは、電解質が、如何にして典型的にはアノードにおいて観測されるような、観測された電圧降下に対して保護作用をもたらすかを立証している。該電圧降下は、主として物質を介する電気の移動を妨害する、堅く脆い物質の形成によるものである。一連の電解質を用いない実験において観測された該電圧降下は、その期間が著しく長く、またその大きさも著しく大きい。電解質の作用に帰せられる乾燥度における増加は、この場合には該処理における約25秒という、該電解-脱水プロセスの極初期の段階において観測されることを、図14B(図14Aにおける実験と同様な実験に係る)において観測することができる。これは、同様に一連の電解質を用いない実験において観測される、電圧降下により説明することができる。
図13及び14において使用した電解質は、硝酸カルシウムであり、また該電解質は、0.0004%(w/w)(即ち、0.03g電解質/73.5gスラッジ)なる量で添加された。この量はまたアノード表面1cm2当たり、0.00027gの電解質(即ち、0.03gの硝酸カルシウムおよび111cm2なるアノード表面積)に相当する。
【0040】
図9および10において使用した電解質は硫酸であり、また該電解質は、0.0004%(w/w)(即ち、0.03g電解質/73.5gスラッジ)なる量で添加された。この量はまたアノード表面1cm2当たり、0.00027gの電解質(即ち、0.03gの硝酸カルシウムおよび111cm2なるアノード表面積)に相当する。
添加される電解質の量は、該EDWプロセスの効率を最大にするためには、予め定められた処理時間に対して、または予め定められた乾燥度値を達成するために、できる限り少量の電解質を使用する必要がある。更に、電解質は、処理すべき物質上に均等に展開/分散する必要がある。多過ぎる電解質を添加した場合、電解質のより高いコストおよびより高いエネルギーコストが必要となり、また該電解質が均等に分散されていない場合には、該スラッジの幾分かの領域に電流チャンネルが形成され、結果として該スラッジの他の領域を不利な立場に追いやり、しかもエネルギーの浪費をもたらすであろう。
塩を主成分とする電解質は、塩に特徴的な化学的形状を持つ任意の電解質を意味するものと理解される。酸を主成分とする電解質は、酸に特徴的な化学的形状を持つ任意の電解質を意味するものと理解される。界面活性剤を主成分とする電解質は、任意のイオン性(カチオン性またはアニオン性)界面活性剤を意味するものと理解される。
【符号の説明】
【0041】
19・・電解質
20・・ノズル
21・・供給装置
22・・スラッジ入口
23・・スラッジ出口
24・・アノード
25・・カソード
26・・充填チャンバー
27、34・・処理すべき物質
28・・絶縁プレート
29・・電解質貯槽
30・・圧力
31・・ノズル
32、35・・電極
33・・電解質
36・・流体(水)
37・・貫通穴
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解-脱水の分野に係り、また特に電解-脱水の効率を高めるための、新規な方法並びに装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スラッジは、廃水処理プロセスで残される、半-液体状の残留物質である。スラッジは、有機物質及び有害な生成物で高度に満たされており、また結果として元々水に影響を及ぼしていた汚染を、単に、土壌および空気等の他の媒体に戻さないことが重要である。スラッジの体積は、人口の増大及び産業活動の進展に伴って増加するので、スラッジの処理及び廃棄は、公的および私的な廃水処理プラント(WWTP)両者にとって、不変の課題の一つである。かつてないほどに厳しい規制及び予算状況において、WWTPオペレータは、効率的かつ経済的なスラッジの廃棄または再利用を可能とする、新規かつ実行可能な代替法を見出す必要性に駆られている。
例えば、都市または産業水処理プラント等における大量のスラッジ製造を含む、多くの状況において、多大な努力が、該スラッジからの水分の除去に向けられている。その主な理由は、プラントが、典型的に、該スラッジを除くための質量基準での廃棄料を支払っていることであり、また本来的に水を含む物質を移動するため支払うことは、賢明なことではない点にある。廃棄費用は、埋立て容量に逆比例しまた環境に係る自覚と直接比例している。従って、最終的に廃棄する前に、該スラッジから可能な限り多量の水を抜き取ることが極めて望ましい。
【0003】
該スラッジの乾燥度を高める方法の一つは、廃物活性汚泥(Waste Activated Sludge: WAS)化および機械的な脱水段階(例えば、ベルトプレス、フィルタプレス、遠心分離、スクリュープレス)間に、高分子電解質凝集剤の添加を含んでいる。凝集剤は、極周知のものであり、また機械的な脱水工程の効率を高めるために一般的に利用されており、このことは、何故、殆どのプラントが、機械的脱水に先立って、凝集剤の添加を容易にする目的で、混合チャンバーを持つように設計されているかに係る理由を説明している。最適の効率を得るために、混合チャンバーは、該スラッジ内で凝集剤の均質な混合物を生成するのに適している。凝集剤の物理化学的特性および作用様式は、機械的な脱水に抵抗するフロックを生成するその能力が、その分散係数と密に関連しているというものである。
電流の助けを借りて、ある物質から水を除去するプロセスである、電解-脱水(EDW)は、PCT公開WO2007/143840に記載されているように、スラッジの乾燥度を高めるための手段として、広い範囲に及ぶ関心を得ている。事実、電解-脱水は、低いエネルギー消費にて、高い乾燥度の値をもたらすその能力、並びに土壌用途としての農業における再利用に関する最も厳密な基準を満たすスラッジを生成する能力の点で、他の方法を越える多くの利点を有している。
【0004】
カナダ特許第2,179,476号において、デルマウン(Dermoune)は、電極の極近傍において増大し、該装置の性能における低下を生じる電気抵抗のために、土壌内の該電極の電気的透過率を改善する必要性を教示している。この特許において、電解質を添加する目的は、新たな間隙物質を構成するであろう電解質で、間隙水を置換することによって、該土壌の機械的な抵抗性を高めることにある。電解質は、該土壌の電気的な透過率を改善するために、管状の孔開き電極から該電解質を電気注入することにより土壌に添加される。該デルマウンの電極は、土壌中に垂直に挿入され、これは該プロセス中移動されることはない。
米国特許第5,230,809号において、ラスロンスキー(Raslonski)は、脱水ベルトにおいて電気浸透を開始する前に、電解質とスラッジとの適切な混合を保証するために、混合チャンバー内での該電解質の添加を可能とする、電解-脱水装置を教示している。また、ラスロンスキーは、該スラッジに添加すべき電解質の量を決定するための、導電率測定デバイスをも教示している。
【0005】
コンドウ(Kondo)(日本特許公開No 60-114315)は、スラッジを、その土壌成分に対して10%を越える濃度にて、塩化ナトリウムで含浸することにより、電解-脱水の効率を高める方法を教示している。コンドウの該教示において、大量のスラッジの電解質による含浸は、電解質に乏しいスラッジの導電率を高め、結果として電解-脱水の効率を高めている。
物質を電解-脱水する作用は、電気エネルギーを消費するので、より低いエネルギー消費によって高い電解-脱水容量達成し、またはより小さな処理表面積によって、同様な脱水容量を達成する、新たな方法並びに装置を開発することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的の一つは、ある物質からの水の除去効率を高めることによって、結果として同一のエネルギー消費および表面積により、該物質のより高い乾燥度レベルの達成を可能とし、あるいはより低いエネルギー消費またはより小さな表面積により、同様な乾燥度レベルの達成を可能とする、該物質の改良電解-脱水法を提供することにある。この方法は、該物質を、少なくとも2つの電極間に配置する段階、ここで該電極の少なくとも一つは、流体を排出するのに適しており;該物質と該電極の一方との間の界面において電解質を堆積させる段階、ここでこれら2つの段階は、任意の順序で行うことができ;および該物質を、圧力および電流の組合せによる作用に付して、該物質から液体を除去する段階を含む。
本発明のもう一つの目的は、ある物質の乾燥度を高めるための装置を提供することにあり、該装置は、該物質を受取るための入口、該物質を電流および圧力の作用下に置くのに適した少なくとも2つの電極、および電極-物質界面において電解質を分布させて、電気浸透による処理中に起る電圧の損失を減じ、あるいは防止する送出しメカニズムを含む。該装置は、更にコントローラーを含み、該コントローラーは、該電解質の添加直後に、該処理を開始して、該電解質による該物質の含浸または該物質への該電解質の浸透の回避を保証している。
【0007】
本発明の目的の一つは、単一の電解質または異なる特性を持つ電解質の混合物を与えることにより、電解-脱水の効率を高めることにある。例えば、電解質をアノード-物質界面に堆積させた場合、該電解質のより小さなカチオン性部分、例えば水素((H+)またはナトリウム(Na+)をより迅速に該物質中に移動させて、該物質全体の導電率を高めることができ、また電解質の他の大きなカチオン性部分、例えばCa2+を、より緩慢に該物質内に移動させ、その結果特異的にアノード-物質界面において起る電位降下を低下または防止するのを助ける。その上、幾つかのカチオン、例えばカルシウムイオンがより多くの溶媒和を必要とし、また結果的にこれらが該カソードに向かって移動するにつれて、これらイオンと共により多くの水を引きずる。様々な産業および廃水処理プラント由来の有機スラッジは、相互におよび経時で著しく多様であるので、該電解-脱水プロセスにおける最適な電解質の組合せまたはその添加時期も、またpH、導電率、抵抗率、密度、温度、有孔度、含水率、細菌および微小植物群の含有率、スラッジの型(嫌気性、好気性または消化済み)、厚み、処理時間およびスラッジの滞留時間並びに汚物集合タンク内での経過時間を含むがこれらに限定されない、物質の諸特性に従って変動するであろう。
【0008】
本発明の更なる目的は、アノード-物質界面において起る電圧降下を減じまたは防止することを可能とする方法を提供することにあり、該方法は、該アノード-物質界面の極近傍において過剰量のカチオンを供給することによって、該物質を介するカチオンの移動による電気浸透排液を助長し、一方同時に、アニオンは既に該アノードの近傍に存在するので、該物質における該アニオンの逆効果を持つ移動を最小化し、また該水は、該カソードに達した後に、一般的には重力の作用により排除される。
【0009】
電解-脱水技術の主な欠点の一つは、アノードにおいて起る電位降下である。このアノードにおける電位降下は、該アノードに隣接する該物質(土壌またはスラッジまたはその他)の含水率の低下によって説明することができる。これは、またイオンの該アノードから遠方への移動およびこのプロセス中に発生したガスのために、間隙水の導電率が低下することによっても説明される。更に、また電位降下は、該アノードと脱水すべき該物質との間の不適切な接触によって説明することもできる。従って、該物質(土壌、スラッジまたは固体および液体成分両者を含む任意の物質)に直接適用される電圧勾配は、電極に印加された電圧の一部のみであり得る。従って、アノードにおける電位降下を防止する方法および装置を手に入れることが極めて望ましいことである。この電位降下を防止または低下するための一方法は、電極と該物質との間に適切な接触状態を確保することであり、これは該電極を介して圧力を適用することによって実現できる。該電位降下を更に減じ、あるいは更に防止さえもするもう一つの方法は、該物質の導電率を高めるであろう電解質を添加することである。最後に、高い電気抵抗を持つ物質層の除去も、該電圧降下を防止しあるいは減じる。
本発明の一態様によれば、該電解質は、該物質の全水平表面(即ち、X-およびY-軸)に渡り分散されるが、最大の効率を達成するためには、該電解質は、他の方法、例えばスラッジ凝集法、スラッジ凝固法、ライム添加法等に対して必要とされるであろう如き、該物質の厚み(即ち、Z-軸)(図2を参照のこと)全体に渡って、該電解質を含浸または混合すべきではない。
【0010】
本発明の更なる目的は、物質の処理方法を提供することにあり、該方法は、少なくとも一つのアノードと少なくとも一つのカソードとを含む、少なくとも2つの電極を含む電解-脱水装置に、処理すべき該物質を添加し;該少なくとも2つの電極の一方の界面に、電解質を均一に添加し(噴霧、蒸発、展開、ロール塗布、液体または固体状態での堆積または電気注入)、ここで電解質は、処理の開始時点において、または該装置またはプロセス全体の任意の場所または時点において添加することができ;電流を該物質を通して流して、電気浸透により該物質を処理および/または脱水し、ここで圧力を該物質に適用して、各電極と該物質との間に実質的に一定の接触を維持し、かくしてより乾燥状態にある物質と少なくとも一つの廃物を生成し;コントローラーが、電解質を該物質に添加する時期を調節し、ここで該コントローラーは、物質-電極界面に対する実際の電解質の添加量に関する入力、例えば貯槽における電解質の体積における減少量を測定するプローブからの入力を受取り、またコントローラーの出力が、該物質を横切る特定の電圧を発生させ、かつ特定の圧力を該電極の一方を介して印加することにより、該電解-脱水プロセスを開始させることを特徴とする。
【0011】
本出願人は、電極と脱水すべき物質との間の界面において、該電極の近傍において起る電圧の喪失を排除する目的で、液体または固体形状の何れかにある電解質を堆積させることにより、該電解-脱水プロセスが著しく増強されることを見出した。電解質添加の最大の効率を得るために、該電解-脱水プロセスを電解質添加後に開始して、圧力および電流を印加する前に、該電解質が、該スラッジ内に浸透しあるいはこれを含浸しないようにする必要がある。該電解質は、該処理の開始時点において、あるいは該処理の活動中のゾーンにおいて、任意の時点および場所において添加することができる。但し、不必要なエネルギーの消費および温度の上昇を引起す恐れのある、優先的な電流チャンネルの形成を回避するために、該電解質が、電流の作用を受けるであろう該物質の領域に均一に分散されることを条件とする。該表面(混合されていない)における電解質の添加は、出願人が、極めて高い程度で電解-脱水の効率を高めることを可能とする。幾つかの場合において、効率は、該物質-電極界面において単に電解質を分散させるだけで、50%程度まで高められた。
物質は、本明細書全体を通じて、任意の液体-担持物質と互換的に使用され、また都市スラッジ、産業スラッジ、土壌富栄養化(agro-alimentary)スラッジ、例えば豆腐、トマトペーストおよびジュース由来のもの、飼料スラッジ、鉱山残渣、浚渫スラッジ、例えば港湾及び運河由来のもの、製薬スラッジ、藻類脱水、パルプおよび製紙業に係るリグニン溶液、精油の抽出、またはあらゆる液体担持物質、または固/液分離を必要とするあらゆる材料が、その例として含まれるが、これらに限定されない。
【0012】
実験は、予想に反して、該電極-物質界面(表面)においてのみ分散された電解質を用いた電解-脱水の開始、即ち該界面のみにおける電解質に富む層の形成は、該物質と均一に混合された電解質を用いて電解-脱水を開始した場合よりも、より一層効率的であることを示している。更に、実験および遡及的分析は、以下の事実を明らかにしている。即ち、最適の構成は、あらゆる電解質を該電極-物質界面に添加すべきことを支持している。電解質が電解-脱水プロセスを増強する理由は、脱水すべき幾つかの物質が、電解質に乏しい物質であるか、あるいはより容易に利用できる電解質を必要としていることにある。該物質が、電解質に乏しい物質でない場合であっても、該電解-脱水プロセスは、内因性の電解質を含む該物質を枯渇させる。事実、カチオンはカソードに向かって移動し、またアニオンはアノードに向かって移動するので、実質上、より一層イオンに欠乏することになる。利用可能な電解質の量を高めるもう一つの方法は、該プロセスが、イオンを利用可能なものとする溶液(例えば、酸)の使用により、該物質を可溶化することである。電気浸透は、過剰量の対イオンが存在する相においてのみ起るであろう。より多くの同符号のイオンがこの相に侵入するほど、より大きな逆の引張り込みが水に対して及ぼされ、結果として正味の電気浸透流れは、より小さなものとなるであろう。このことにより、該電極-物質界面に対する電解質の添加が有益な効果を持つ理由を、説明することができる。カチオンが、物質の全厚みに渡り移動して、カソードに達し、それに対してアニオンは既にアノード近傍にある。
【0013】
該電極-物質(アノード-スラッジ)界面における電解質の分散は、電流チャンネルの形成を防止するために、実質的に均一でなければならず、また十分な量および/または体積の電解質が、該物質の全表面上に分散されている必要がある。電流チャンネルの形成は望ましくない。というのは、該チャンネルが形成された場合、電流は該処理すべき物質の表面上に適切に分配されず、また該電気エネルギーの大部分が、イオンの移動を助ける電場を発生するのではなく、寧ろ熱となってしまうので、最適な効率は実現されない。その上、最大の効率を実現するためには、十分な量でのみ電解質を添加して、電気浸透処理中の電圧降下を実質的に低下し、または防止することが重要である。事実、多すぎる電解質の添加は、より大きなエネルギーの消費および該電解質を購入するためのより高いコストへと導き、結果として該処理の全体としての効率を減じてしまう。
【0014】
本発明の目的の一つは、電解-脱水装置を提供することにあり、該装置は、適切な量の電解質を、該物質-アノード界面の適切な位置に与えるように設計されている。米国を選択し、また2007年12月21日付で、WO2007/143840として公開された、PCT/CA2007/001052において記載されているように、出願人は、物質が該脱水プロセスに伴って移動するにつれて、電解-脱水条件の変動を可能とするように、最適の脱水装置には、数個の孤立した電解-脱水ブロック/段階を含めるべきことを見出した。この特許出願は、また該脱水装置が、電解質を該スラッジに適用するためのシステムを含み得ることを開示している。上記特許出願PCT/CA2007/001052およびその優先権の基礎となる特許出願、即ち2006年6月14日付の米国特許出願第60/804,703号および2006年10月20日付の同第60/862,294号の全内容を、ここに完全に開示されているものとして、参考のために本明細書に組入れる。
圧力、電流、電圧等におけるブロック間の「連続的」変化量に加えて、[不連続な]巨視的変化のための手段が与えられており、そこでは、各孤立したブロックは、独立に稼働され、また電解質の添加すべき最適量の決定を補助する上で重要なパラメータを測定するプローブによって、制御されている。
【0015】
重要なパラメータ、例えば導電率および電圧を測定するプローブからの入力情報は、コントローラーに送られ、そこで少なくとも一つの電解-脱水ブロックまたは処理段階各々からのこれらデータが処理される。一段階またはモジュールの端部において得られたこれらの測定値は、次の処理段階またはモジュールにおける処理を開始する前に、該物質に対する電解質の添加量を決定するであろう。この方法は、多段プロセスの各段階に、あるいはモジュール装置の各モジュールへの電解質の最適量の添加を、保証するであろう。該コントローラーにより受取られた全ての入力は、処理され、また電解質を添加すべき最適時間、該電解質の量およびその添加すべき位置の決定を可能とする。湿度、厚み、温度、電流、電圧を測定する他のプローブも、入力情報を該コントローラーに送ることができ、該コントローラーは、同様に電解-脱水性能においてある役割を演じていることが知られている、これらの測定値に基いて、添加すべき電解質の量、その添加時期および添加場所を調節するであろう。あるいはまた、一段階の処理プロセスまたはモノ-モジュール装置において、電解質は、先ずプローブの入力情報または物質の諸特性に基いて添加することができ、部分的処理後のプローブの測定値に応じて、電解質を再度添加することができる。
【0016】
コンドウは、日本国特許公開第60-114315号において、スラッジの導電率を高めるために電解質を添加する方法を教示している。該コンドウの特許と本発明との間には、以下のような3つの基本的な違いがある:1. 電解質と該物質とを混合するのではなく、寧ろ電極-物質界面において該電解質を堆積させる必要性;2. 電解-脱水の効率における増大を実現するために必要とされる電解質の濃度;および3. 使用される電解質の型。コンドウの技術において、電解質(これは、単に塩化ナトリウムまたは海水である)は、本発明において使用される量よりも著しく大量に添加され、またその理由は、コンドウの技術では電解質で該スラッジを含浸し、またはこれらを混合する必要があり、従って該材料の抵抗率が低下し、しかも電流が増大することにある。更に、コンドウの技術では、高度に液体状態にある(99.4%なる含水率)、初期スラッジを使用しており、これは、該電極-物質界面においてのみ電解質を適用することを不可能にしている。出願人は、ここで予備濃厚化されたスラッジを使用しており、この方法は、該スラッジ表面への電解質の適用を可能とし、また電解-脱水処理を開始するまで、電解質を該表面上に短期間に渡り維持することを可能とする。
【0017】
更に、出願人は、ここで、より高い電解質濃度の使用が、電解質に富む物質を脱水するのに要する、より高いエネルギー投入量のために、電解-脱水プロセスをより効率の低いプロセスへと導く恐れがあることを、明確に立証している。事実、電解質に富む物質(これは大量の電解質を含む)は、より多くの電気を伝導するが、全体としては、アノードにおける電圧損失が防止される、最小量の電解質を含む物質よりも低効率となるであろう。本発明は、電解-脱水効率を改善するのに必要とされるイオンの、必要量のみを添加することによって、アノード近傍の電圧損失のみを補償することを可能とする。通電が、電解質の添加直後で、しかもかなりの程度の電解質による該物質の含浸が起る前において開始される限りにおいて、電解質は、処理の直前または連続する処理段階間の中断中に添加される。
電解質溶液は、以下に列挙する電解質の少なくとも1種またはその任意の組合せを含むことができるが、これらに限定されるものではない:CaCl2、NaCl、Ca(NO3)2、NaPO4、K2CO3、Na2CO3、NaHCO3、HCl、H2SO4、C6H8O7(クエン酸)、Na2SiO3、CaCO3、CaO、KCl、Ca(CH2COO)2、K2PO4。本質的に、該カチオン部分は、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、水素(または元素周期律表の第IA族または第IIA族の任意の構成員)の任意の一種またはこれらの組合せであり得、また該アニオン部分は、クロライド、ニトレート、カーボネート、サルフェートおよび/または酸素(あるいは任意の負に帯電した原子または分子)の任意の一種またはこれらの組合せであり得る。
【0018】
更に別の本発明の目的は、該物質および抽出される液体内部のpH値を低下するための、酸性特性を持つ電解質を提供することにあり、そこでは、水素イオンが該電気浸透プロセスに関与しており、また十分な量で存在する場合には、典型的に該カソードにおいておよび/またはその近傍に形成される堆積物の除去および水の蒸発の阻止に寄与し得る。例えば、炭酸カルシウム残渣は、該カソード近傍に蓄積される。従って、そのpHを下げるための酸の添加は、その可溶化を有利にし、結果としてカルシウムを、濾液または抽出液体中に放出する。更に、該物質のpH低下は、該物質の液体部分から、金属を析出させる上で役立つ可能性があり、ここで電流は、該金属を該カソードに向けて移動させる。
本発明の目的の一つは、本質的に該電極-物質界面での、電解質の堆積を可能とし、その添加直後に該電解-脱水プロセスを開始するようにプログラムされている、方法並びに装置を提供することにある。コントローラーは、該電解-脱水プロセスの効率を最大にするために、プローブのシグナルに応答することができる。
【0019】
本発明の目的の一つは、電解-脱水すべき物質の表面に効率的に電解質を添加するための装置を提供することにある。電解質の添加は、電極により、あるいは電極に隣接する構造により直接実施することができる。該電解質を、脱水すべき該物質上に分散し得る限りにおいて、該電解質は、該スラッジ上に蒸着することができ、あるいは該電解質は、液体、固体、気体またはプラズマ形状で、該スラッジ上に堆積することができる。該装置は、更に該物質上に該電解質を噴霧するためのノズル、該物質上に該電解質を堆積するのに適した電極、制御された電解質の貯槽としての役割を果たすのに適した電極の何れか一つまたはその組合せをも含むことができ、ここで該貯槽は、電解質で飽和された吸収材料を含み、そのため連続する処理段階間で電極を持ち上げている際の電解質の損失は、防止され、更に該装置は、該物質上に電解質を電気注入するのに適した電極、該物質上に電解質を噴霧するのに適した電極、該物質を展開し、また同時にまたは同時でなしに、該電解質を添加するのに適したロール装置、電解質で含浸され、かつ該電極と該物質との間に配置されたフィルタクロスをも含むことができる。
本発明は、添付図面を参照しつつ以下に与えられる、本発明の態様に関する以下の詳細な説明によって、より一層十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、3つの時間点に対する、2つの電極間の距離の関数としての、電圧を模式的に示した図であり、電解質に乏しい物質を電解-脱水処理に掛けた結果を強調して表示してある。
【図2】図2は、アノード-物質界面において電解質を堆積し、2つの電極間に圧力および電流を印加するための装置の一態様を模式的に示した図である。インセットは、様々な軸により、該電解質および物質の層を3-D表示した図である。
【図3】図3は、テストした3種の電解-脱水条件:即ち、電解質の不在下(なし);該電極-物質界面に堆積させた電解質の存在下(表面);および該物質と混合された電解質を含む状態(混合)において実現された、最終的な乾燥度を示すグラフである。
【図4】図4は、添加された電解質の関数として、電解質の不在下(なし);該電極-物質界面に堆積させた電解質の存在下(表面);および該物質と混合された電解質を含む(混合)条件下で、抽出された液体1トン(TLEx)当たりのエネルギー消費量(kWh)を示すグラフである。
【図5】図5は、テストした3種の電解-脱水条件:即ち、電解質の不在下(なし);該電極-物質界面に堆積させた電解質の存在下(表面);および該物質と混合された電解質を含む状態(混合)における、時間の関数としての電流密度を示すグラフである。
【図6】図6は、電解質を脱水すべき物質の表面に添加した場合における、電解質濃度の関数としての、最終的な乾燥度を示すグラフである。
【図7】図7は、物質の表面に添加した電解質の存在下および電解質の不在下なる実験条件に対する、印加された電圧の関数としての、最終的な乾燥度を示すグラフである。
【図8】図8は、電極-物質界面に電解質を添加するように設計された装置の幾つかの可能な態様を示す図である。
【図9】図9は、電解質としての塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸および電解質を使用しないコントロールに関して、時間の関数として達成された乾燥度レベルを示す図である。
【図10】図10は、電解質としての塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸および電解質を使用しないコントロールの全体としての効率を示す、ヒストグラムである。
【図11】図11は、様々な界面活性剤および電解質を比較した、時間の関数としての乾燥度レベルを示す図である。
【図12】図12は、スラッジのヘドニックトーンと乾燥度のレベルとの間の関連性に関する電解質の効果を示す図である。
【図13】図13は、入口スラッジの流量(図13A)および投資額に対する利益(図13B)の関数としての、スラッジの乾燥度を示すグラフである。
【図14】図14は、電解質の存在下または不在下での、実験的条件に対する、時間の関数としての有効電圧(図14A)および乾燥度(図14B)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
電解-脱水装置は当分野において公知であり、また刊行物:WO2007/143840においてより完全に説明されている。本件特許出願を参照すると、図1は、電解質の不在下(実線)または存在下(破線)での、3つの時間点に対する、2つの電極間の距離の関数としての、電圧を模式的に示した図であり、電解質に乏しい物質を電解-脱水処理に掛けた結果を強調して表示してある。この像は、従来技術の欠点を示しており、それによって多孔質液体担持物質を介して発生する電流が、時間の関数としての、およびアノードからの距離の関数としての、迅速な電圧における降下へと導く。増大した抵抗を持つゾーンがアノード近傍に現れる主な理由は、アノードからカソードに向かうカチオンの流出であり、そのために水がカソードまで引張られ、またアノード近傍において堅くて脆い物質が生成される。この堅くて脆い物質は、この物質を流通し得る電流の量を著しく制限する特性を持つ。幾つかの技術が、この問題を回避すべく開発されており、またアノードおよびカソードを横切る電位が、電解-脱水の開始時点において有意となるが、該プロセスが継続されるにつれて、該電位は、ある点において取るに足りない大きさとなるまで、経時に伴って低下し、そのため効率の悪い脱水条件を生成する。該電位がゼロに近づくと、電気エネルギーは、該物質中でイオンの強制的な移動を起こす電場の発生を誘発(即ち、効率的なエネルギー)するのではなく、寧ろ熱に転化される。電解質の添加は、該アノード近傍で起る電位における降下を減じもしくは防止し、結果として電解質の存在は、電解質が、依然としてTnにおける効果を示すのに十分な量で存在する限り、テストした全ての時点において、実質的にT0(破線参照)に近い曲線TiおよびTnを生じるであろう。
【0022】
図2は、アノード-物質界面において電解質33を堆積し、2つの電極32および35間に電流および圧力30を印加するための装置の一態様を模式的に示したものである。この場合においてはアノードである、第一の電極32に組込んだ白抜きの矩形は、ノズル31を含み、該ノズルは、この場合には廃水スラッジである処理すべき物質34上に、電解質33を均等に分配することができる。この場合にはカソードである、下方の電極35上の白抜きの矩形は、この場合には水36の抽出を可能とする貫通穴37である、流体36の排出を可能とするのに適した形状を表す。該物質上に該電解質を添加する段階と、該電解-脱水プロセス(即ち、電流および圧力)を開始する段階との間で、混合が全く起らないことが、本発明の重要な局面の一つである。図2のインセットは、様々な軸により、該電解質および物質の層を3-D表示した図であり、それによって該x-軸およびy-軸は、該展開された物質34の水平表面に本質的に対応し、またそのz-軸は、該展開された物質の厚みに相当する。
【0023】
図3は、テストした3種の実験条件:即ち、添加電解質の不在下(なし);該電極-物質界面にのみ堆積させた電解質の存在下(表面);および該物質と均一に混合された電解質を含む状態(混合)において、同等な10分間の処理中に実現された、最終的な乾燥度を示すグラフである。全ての実験は、米国特許出願公開第2005/0016870号においてより詳しく説明されている、実験室規模の脱水チャンバーで実施した。簡単に言えば、カナダ国、ビクトリアビルの下水処理プラント由来の廃水スラッジである実験物質を、3つの等しい部分に分割した。その第一の部分(なし)に関しては、スラッジを十分に混合し、該チャンバーに入れ、標準的な該電解-脱水プロトコールに付した。その第二の部分に関しては、スラッジを十分に混合し、該チャンバーに入れ、体積10mLの10%電解質溶液を、該スラッジの全上部表面上に堆積させ、次いで有意な含浸または混合が起る前に、上記の標準的な該電解-脱水プロトコールに付した。最後に、残りの第三の部分においては、10%の電解質溶液(体積:10mL)を該スラッジに添加し、これらを十分に混合し、次いで該チャンバーに投入し、この時点において、標準的な該電解-脱水プロトコールを開始した。図3は、これら3つの実験条件において達成された最終的な乾燥度レベルを示すものである。他の条件全てを同一とした場合、混合または含浸なしに、該スラッジの表面に対して電解質を添加することは、テストしたこれら3つの実験条件の中で、最高の最終的な乾燥度レベルを与え、それは50%なる乾燥度レベルに達しており、これに対して混合された電解質に関する最終乾燥度レベルは39%であり、また電解質不在下なる条件に対する該レベルは33%である。乾燥度は、標準的なテストを利用して評価するが、そのために該物質は、2回の連続する秤量値が有意な変化を示さなくなるまで、即ち全ての水が蒸発されるまで、高温度(105oC)条件下に置かれる。誤差バーは、2回の独立した実験の標準偏差を表す。
【0024】
図4は、添加電解質の不在下(なし);該電極-物質界面のみに堆積させた電解質の存在下(表面);および該物質と均一に混合された電解質を含む条件下(混合)で、乾燥度30%までの、抽出された液体1トン(tLEx)当たりのエネルギー消費量(kWh)を示すグラフである。図3において使用したものと同一の3種の実験条件が、極めて異なる最終的乾燥度レベルに導くことから、また水の第一の減少量を除去するに要するエネルギーが、第二の減少量を除去するに要するエネルギーよりも低いことから、本出願人は、共通の最低水準の乾燥度レベルに達するに要するエネルギーを算出した。全ての実験は、米国特許出願公開第2005/0016870号においてより詳しく説明されている、実験室規模の脱水チャンバーで行った。簡単に言えば、カナダ国、ビクトリアビルの下水処理プラント由来の廃水スラッジである実験物質を、3つの等しい部分に分割し、電解質を添加した後または添加せずに、電解-脱水処理に付した。その第一の部分(なし)に関しては、スラッジを十分に混合し、該チャンバーに入れ、図3について記載したものと同様な標準的な該電解-脱水プロトコールに付した。その第二の部分に関しては、スラッジを十分に混合し、該チャンバーに入れ、1gの電解質を、該スラッジの全上部/水平表面上に堆積させ、次いで有意な含浸または混合が起る前に、上記の標準的な該電解-脱水プロトコールに付した。最後に、残りの第三の部分においては、該部分2と同様な電解質の量を、該スラッジに添加し、該電解質が該スラッジと均一に混ざるまで、5分間に渡り、これらを十分に混合し、次いで該チャンバーに投入し、この時点において、標準的な該電解-脱水プロトコールを開始した。図4は、上記3種の実験条件において達成された、抽出された水1トン当たりのエネルギー消費量を示すものである。当分野において、電解質の単なる存在は、物質の導電率を増大し、結果として該物質を通過する電流を高めることは周知であるので、本出願人は、該物質表面への電解質の添加(292 kWh/TLEx)が、電解質を含まないコントロール(311 kWh/TLEx)よりも僅かに低いエネルギー消費に導くことに気付き、驚いた。しかし、より一層驚いたことに、均質に混合された電解質条件は、他の2つの実験条件よりもかなり高いエネルギー消費量(573 kWh/TLEx)を示した。これらの結果は、ここに記載する本発明の有利な特徴に関する極めて強力な事例となる。誤差バーは、2回の独立した実験の標準偏差を表す。
【0025】
図5は、上記3種の電解-脱水条件:即ち、電解質の不在下(なし);該電極-物質界面に堆積させた電解質の存在下(表面);および該物質と混合された電解質を含む状態(混合)における、時間の関数としての電流密度を示すグラフである。この図から、これら3つの実験条件全てに対して、該電流密度は、電解-脱水の開始時点において極めて急速に増大するが、該表面に堆積させた電解質の存在下および電解質不在の条件下では、該電流密度は迅速に減少し、また該均一に混合された電解質の存在条件下での電流密度よりも低くなることを理解することができる。この図は、図4におけるエネルギー消費量が、該混合電解質条件に対して、テストされた他の2つの条件に対する値よりも高い理由を、うまく説明している。事実、該混合電解質条件において、該電解質は、該物質全体に渡り均一に分散されているので、該電流密度は、電解-脱水の開始時点において最大となり得る。しかし、アノード近傍において見られる該電解質の絶対量は低いので、電解質の有利な効果は迅速に低下する。該電解質の全量が、該アノード-物質界面に直接配置された場合(表面堆積)には、カソードにおける電解質濃度は最初に低下するとしても、該アノードにおける十分な量の電解質が、電解-脱水の効率を低下する電位の降下を補償するであろう。
【0026】
図6は、電解質を脱水すべき物質の表面に添加した場合における、電解質濃度の関数としての、最終的な乾燥度を示すグラフである。ここにおける実験条件は、前の図3-5において使用したものと同様であるが、最適な電解質添加法を使用して、最終的に実現される乾燥度レベルに関して、電解-脱水の効率を最も高いものとすることを可能とする、電解質の濃度範囲を評価した。このグラフから、該電極-物質界面において堆積された低い電解質濃度(10%)が、夫々最終的な乾燥度の値43、43、42%TSSを示す、電解質濃度20、40および50%と比較して、同様な最終的乾燥度レベル(41%TSS)を生じることを理解することができる。これらの結果は、テストした濃度の中で、最も効果的な濃度が10%であることを示唆している。事実、10%を越える何れも、同様な乾燥度レベルを与え、また同様なエネルギー消費量を示しており、これは、過剰量の電解質が、該電解-脱水に対して有意な方法で関与していないことを示唆している。実際に、10%を越える、電解質の表面堆積濃度を使用した場合、該過剰量の電解質は、該電極-物質界面に残されており、また該電解-脱水プロセスには関与しておらず、従ってより大きな電流が該物質を通過することを可能としない。これらの結果は、より少量の電解質が、より多量の電解質よりもより高効率であることを強力に示唆している。というのは、より高い電解質濃度の場合には、過剰の電解質が単に浪費されるに過ぎないからである。更に、電解-脱水の終了時点において、該電極表面の界面にまたはその近傍に残されている電解質は、該スラッジの最終的な質量に寄与するであろう。殆どの電解-脱水プロセスおよびプラントは、そのスラッジに対して重量基準の廃棄料金を支払っているので、該電解-脱水プロセスにおいて機能しないであろう電解質材料を添加するための過剰な料金、および更に該過剰な電解質の量が、該電解-脱水された物質の最終的な重量に寄与するので、これを除くために再度過剰な支払いをすることは、極めて非効率なことである。最後に、テストした全ての電解質濃度が、如何なる電解質も添加されてない場合よりも、大幅に高い最終的な乾燥度の値を与えた。
【0027】
図7は、物質の表面に添加された電解質の存在下および電解質の不在下なる実験条件に対する、印加された電圧の関数としての、最終的な乾燥度を示すグラフである。40〜60Vなる範囲の電圧を、電解質の存在下およびその不在下でテストした。この図から、テストした全ての電圧において、電解質の存在が、有利な効果を有しており、これら両実験夫々における40V、45V、50Vおよび60Vなる電圧に対する、25%、27%、30%および33%という電解質の不在下での最終的な乾燥度の値と比較して、41%、42%、43%および41%という最終的な乾燥度の値をもたらした。最終的な乾燥度における差が、電圧を高めるにつれてより小さくなることから、電解質添加のこの有利な効果は、テストした電圧のより低い範囲において、より顕著であるものと考えられる。この観測は、幾分かは工業的に利用し得ないであろう、極めて高い電圧においては、アノードにおいて観測される電位降下は解消され、また堅くて脆い物質の存在にも拘らず、十分な電流が該物質を流れて、該物質を脱水し得るという事実によって説明することができる。しかし、工業的な設定およびエネルギー消費量に著しい費用がかかる設定において、そのエネルギーコストおよびこのような高い電圧において発生する熱は、電解-脱水プロセスを、全体として非効率的なプロセスとするであろう。
【0028】
図8は、電極-物質界面に電解質を添加するのに適した、電解-脱水装置およびそのメカニズムの幾つかの例を示す図である。図8Aは一態様を示し、これにより該電解質19がノズル20によって、あるいは充填チャンバー26を介して添加され、ここで該ノズルは、供給装置21と該電解-脱水ゾーンとの間に置かれている。スラッジ入口22および出口23は、その上方にアノード24およびその下方にカソード25を持つように図示されている。脱水すべき該物質27は、重力に係る理由から該カソード25に隣接して示されているが、処理中は、該アノードは下げられて、物質に対して一定の接触および圧力を設定する。絶縁プレート28も図示されており、これはアノード24と整流器(図示せず)との間の電気的な絶縁のために重要である。図8Bも一態様を示しており、ここで該アノード24と隣接する該絶縁プレート28は、電解質19を維持し、また必要に際してこれを分配するのに適しており、従ってフィルタクロスをも含むことのできる電解質貯槽29として作用する。該貯槽29への電解質19の添加は、充填チャンバー26を介して行われ、また該電解質は、噴霧機、ノズル、滴下装置、電気注入器または電解-脱水すべき該物質の全表面に渡り該電解質を実質的に均一に分配することを可能とする任意の方法によって、該物質に添加される。
【0029】
図9は、様々な電解質を用いて達成した、乾燥度レベルを示すグラフである。テストした3種全ての電解質は、電解質を使用しないコントロールよりも極めて有意に良好にその機能を果たした。即ち、硫酸、硝酸カルシウムおよび塩化カルシウムの添加は、21.0%なる最終的な乾燥度レベルを与えた、電解質を使用しないコントロールと比較して、夫々35.6%、38.2%および37.4%なる、60秒後の最終的な乾燥度レベルをもたらした。図9にグラフトして示された乾燥度(%)は、実験室用の装備によって秤量された、抽出された水の量から、外挿法により求めたものである。しかし、該物質を、図4において説明したような、標準的な乾燥度テストに付した場合、該処理の終了時点において実現された該最終的な乾燥度レベルは、僅かに22.9%なる最終的な乾燥度レベルを与えた、電解質を含まないコントロールと比較して、硫酸に対して47.3%、硝酸カルシウムに対して45.2%およびリン酸カルシウムに対して46.4%であった。図9に示された実験において、添加された電解質の量は、約0.009mL(6N H2SO4)/cm2(アノード表面)である。
【0030】
図10は、電解質としての塩化カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸および電解質を使用しないコントロールの全体としての効率を示す、ヒストグラムである。結果は、電解質の不在下での電解-脱水の全体としての効率を、テストした3種の電解質の存在下での該処理の全体的効率と比較して示すものである。ここで、該電解質は、該スラッジの表面に適用され、また該電解-脱水プロセスは、該電解質の該物質への含浸が起り得る前に、開始される。図10から、硫酸が、テストされたカルシウム塩両者よりも一層効率的であることを理解することができる。全体的な効率は、電解質のコスト、該プロセスに関与するエネルギーコスト、スラッジが該プロセスに投入される量および速度および電解-脱水プロセス後に残されるスラッジの量に基いて決定される。従って、効率は、[スラッジ]inトン数で割り、[スラッジ]outトン数を乗じた、1時間当たりのコストの逆数として計算される。実験は、本質的に図3-7および9において示されたものと同様な、実験プロトコールに従って行った。
【0031】
図11は、様々な界面活性剤を用いて得た、電解-脱水時間の関数としての、全液体喪失量によって測定した乾燥度の結果を示す図である。この図から、テストしたマグノール(Magnor)界面活性剤の中で、イオン性界面活性剤のみが、脱水効率の改善性を示したことを理解することができる。事実、界面活性剤マグノール(Magnor) 571080(アニオン性)およびマグノール(Magnor) 574563(カチオン性)両者は、使用した実験条件において、EDWを大幅に高めた。他方、ノニオン性界面活性剤であるマグノール(Magnor) 573462は、界面活性剤の存在しない条件下での結果と比較して、殆どまたは全く乾燥度における増大を示さなかった。このことは、ノニオン性界面活性剤が、水分子と結合できず、その結果水がその輸送能力の助けを享受し得ないことを示唆している。これらの結果は、電解質が電解-脱水の効率を高めるメカニズムにおける、イオンの重要性を支持している。
【0032】
アニオン性およびカチオン性界面活性剤両者は、EWD効率を高めた。また図11に示された全ての実験結果は、低導電率の都市廃水スラッジについて行われた。結果は、イオン性界面活性剤が、硫酸よりも有効性が低かったが、界面活性剤についての最適化の研究は行わなかった。界面活性剤等の電解質の効率のレベルは、元々のスラッジの導電率に依存する可能性があり、従って電解質の添加は、電流強度にとって有利に作用し、また一方の電極において観測される電圧の損失を防止する。
テストしたカチオン性界面活性剤の幾つかは、四級型のものであり、また正の消毒特性を持つことが立証された。界面活性剤は、一般に殺菌特性を持つが、カチオン性界面活性剤は、より一層高い殺菌特性を示す。
【0033】
両性界面活性剤化合物を使用することが有利である。というのは、これらが酸性またはアルカリ性溶液の何れにも溶解し得るからである。これは、電解-脱水にとって極めて興味深いことである。というのは、該スラッジの「アノード」表面が、酸性となり、かつその「カソード」表面がアルカリ性となるからである。両性界面活性剤は、両電極表面において発生する液体を、潜在的に緩衝し、またカソードにおける破壊屑の蓄積を防止するのに役立ち得る。
図12および表1は、電解質の型の関数としてのヘドニックトーンを示す。ヘドニックトーンは、匂いの相対的な快適さ/不快さの尺度であり、また臭いが持つと思われる不快さの指標を与える。これは、電解-脱水によって達成されるような、停止前後の臭いを格付けするのに使用できる。ヘドニックトーンは、電解質の存在下またはその不在下での、電解-脱水処理前後の、様々なスラッジサンプルの匂いを嗅がせた、予備知識を持たない対象を用いて測定した。表1は、より定量的に詳しい、7種の実験条件、即ち1種のコントロールサンプル(非-電解-脱水)および様々な乾燥度まで電解-脱水された6種のスラッジサンプルを示す。対象は、予め決められた測定尺度に基いて、各スラッジの臭いを定性的に評価することを依頼された。
【0034】
【表1】
【0035】
香り付きの電解質を添加して、ヘドニックトーンを更に高めることも有用であった。例えば、リンゴの香りを持つスラッジは、無臭のスラッジよりも、ヘドニックトーン指数について高くランク付けされるであろう。添加された香は、農業において再利用するためのスラッジの価値を更に高めることができる。
当業者は、幾つかの電解質が、電解-脱水プロセス中の臭気の排除効率を高めるのに極めて適していることを理解するであろう。事実、例えば電解質としての塩化ナトリウムの使用は、該スラッジ中に酸化性の塩素-含有化合物を生成することができる。その上、該電極における水の電解によって(外部からの電解質の添加なしに)当然生成される酸化性化合物は、バクテリアの一集団を殺傷でき、また病原体の発生する臭気を排除できる。一方で、一種の電解質の添加は、用量依存性の様式で、同一集団の2種以上を殺傷し得るが、他方では、他の電解質は、「非線形の」濃度範囲、即ち該電解質の増減が病原体の破壊に影響を与えない濃度において、バクテリアの新たな集団全体を殺傷することができる。従って、幾つかの酸化性化合物は、相加的様式で作用でき、一方他の化合物は相乗的に作用するであろう。
【0036】
本質において、幾つかの電解質は、より多くの病原体の排除を助けることができ、また結果として電解-脱水の正常な臭気排除効果を高める上で寄与し得る。電解-脱水技術における多くの現象が、スラッジの「消毒」に寄与し得るものと理解される。このような現象としては、電極における酸化性化合物の発生、高温度、高圧および電解質がある。表1および図12には、ヘドニックトーンに対して有利な効果を示す、僅か1種のみの電解質が示されている。他の電解質もテストしたが、同様な結果を示さなかった。ヘドニックトーンに対する有利な効果は、ヘドニックトーンと乾燥度との間に確立される傾向線からの正のズレを意味するものと理解すべきである。電解質を用いない電解-脱水も、またヘドニックトーンに対して効果を持ち、その結果明確な関連性を、乾燥度と臭気との間に確立することができることが理解されよう。
上に述べたように、電解-脱水されたスラッジ由来の水は、それと共に分子/ガスを含有する臭気をもたらす。例えば、アンモニア化合物としての窒素は、バクテリアから、その電解的な破壊過程中に遊離される。これら窒素化合物は、水に対して溶解性であり得、また該脱水プロセスを通して排出される。多くのその他の揮発性および臭気発生ガスは、水成分と共に排出され、またこれらの液体は、典型的には上記廃水処理プラントの入口に送り返される。
【0037】
図13は、入口スラッジの流量(図13A)および投資額に対する利益(ROI)(図13B)の関数としての、スラッジの乾燥度を示すグラフである。この実験的プロトコールは、電解-脱水プロセス中の多くの電解-脱水パラメータを測定し、これにより10-15%なる範囲内の初期乾燥度値を持つスラッジを、20%、25%、30%および35%という最終的な乾燥度値まで電解-脱水するように工夫された。当業者は、多くの廃水処理プラントが、標準的な機械的脱水装置、例えばフィルタプレス、スクリュープレスおよびベルトプレスを使用して乾燥度15%までのスラッジを与えることができることを理解するであろう。更に、幾つかの型のスラッジは、電解質の添加なしに35%を越えるより高い乾燥度値を達成することはできない。図13Aは、少量の電解質の添加により、EDW装置が、電解質の添加なしでは1時間当たり1.0トンなる速度であるのに対して、乾燥度15%のスラッジを、1時間当たり2.2トンなる速度にて、乾燥度20%まで高める得ることを示している。この効率における極めて高い112%という増加は、スラッジの乾燥度が更に増大するにつれて僅かに減少し、その結果72%という効率における増加が、35%なるスラッジ乾燥度を達成する際に観測される。
【0038】
図13Bのグラフをプロットするのに使用する該ROIの計算は、出願人の電解-脱水装置の販売価格、設備およびインフラ構造のコスト、電解質およびエネルギー(電気)を含む稼働コスト、スラッジの輸送/廃棄コスト、メンテナンススタッフおよび作業員のコストを考慮している。y-軸は、回収すべきこのような投下資本に関する、年単位で表した時間、即ち投資額に対する利益(ROI)を表す。再度、電解質は、このような装置に対する資本回収が、電解質を使用しない場合の6.3年と比較して、電解質を用いた場合には、2.8年であることから、スラッジを最終的乾燥度20%まで電解-脱水する場合に、最高の効率を示す。興味深いことに、電解-脱水されたおよび電解-脱水されていないスラッジ両者に関するROIは、両者の曲線は平行であると考えられるが、百分率での増加率は、乾燥度に伴って減少する如く、要求されるスラッジの乾燥度と共に増大する。これらの計算は、電解質のコストを含むので、電解質添加の多大な利益は、それにも拘らず当業者並びにその他の人々により理解されるであろう。
【0039】
図14は、時間の関数としての有効電圧および乾燥度を示すグラフである。図14Aにおいて、該データは、電解質の添加が、該電解-脱水プロセスの期間(この場合は700秒)中ずっと、該電圧および電流(図示せず)に対して深遠な効果を有しており、このことは、電解質が、如何にして典型的にはアノードにおいて観測されるような、観測された電圧降下に対して保護作用をもたらすかを立証している。該電圧降下は、主として物質を介する電気の移動を妨害する、堅く脆い物質の形成によるものである。一連の電解質を用いない実験において観測された該電圧降下は、その期間が著しく長く、またその大きさも著しく大きい。電解質の作用に帰せられる乾燥度における増加は、この場合には該処理における約25秒という、該電解-脱水プロセスの極初期の段階において観測されることを、図14B(図14Aにおける実験と同様な実験に係る)において観測することができる。これは、同様に一連の電解質を用いない実験において観測される、電圧降下により説明することができる。
図13及び14において使用した電解質は、硝酸カルシウムであり、また該電解質は、0.0004%(w/w)(即ち、0.03g電解質/73.5gスラッジ)なる量で添加された。この量はまたアノード表面1cm2当たり、0.00027gの電解質(即ち、0.03gの硝酸カルシウムおよび111cm2なるアノード表面積)に相当する。
【0040】
図9および10において使用した電解質は硫酸であり、また該電解質は、0.0004%(w/w)(即ち、0.03g電解質/73.5gスラッジ)なる量で添加された。この量はまたアノード表面1cm2当たり、0.00027gの電解質(即ち、0.03gの硝酸カルシウムおよび111cm2なるアノード表面積)に相当する。
添加される電解質の量は、該EDWプロセスの効率を最大にするためには、予め定められた処理時間に対して、または予め定められた乾燥度値を達成するために、できる限り少量の電解質を使用する必要がある。更に、電解質は、処理すべき物質上に均等に展開/分散する必要がある。多過ぎる電解質を添加した場合、電解質のより高いコストおよびより高いエネルギーコストが必要となり、また該電解質が均等に分散されていない場合には、該スラッジの幾分かの領域に電流チャンネルが形成され、結果として該スラッジの他の領域を不利な立場に追いやり、しかもエネルギーの浪費をもたらすであろう。
塩を主成分とする電解質は、塩に特徴的な化学的形状を持つ任意の電解質を意味するものと理解される。酸を主成分とする電解質は、酸に特徴的な化学的形状を持つ任意の電解質を意味するものと理解される。界面活性剤を主成分とする電解質は、任意のイオン性(カチオン性またはアニオン性)界面活性剤を意味するものと理解される。
【符号の説明】
【0041】
19・・電解質
20・・ノズル
21・・供給装置
22・・スラッジ入口
23・・スラッジ出口
24・・アノード
25・・カソード
26・・充填チャンバー
27、34・・処理すべき物質
28・・絶縁プレート
29・・電解質貯槽
30・・圧力
31・・ノズル
32、35・・電極
33・・電解質
36・・流体(水)
37・・貫通穴
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質の乾燥度を高めるための方法であって、以下の工程
a)物質を、少なくとも2つの電極間に配置する工程であって、該電極の少なくとも一つは、流体を排出するのに適する工程、
b)該物質の一表面に電解質を添加する工程であって、該表面は、該物質と該電極の一方との間の界面に位置しており、ここで該工程a)およびb)は、任意の順序で行うことができる工程、
c)該物質への該電解質による含浸が起る前に、該物質を、圧力および電流の組合せによる作用に付して、該物質から液体を除去する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記少なくとも一つの電極近傍で起る、電圧降下を実質的に減じまたは防止するのに十分な量で、前記電解質を添加する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記物質がスラッジであり、かつ前記十分な量が、湿潤スラッジ1g当たり約0.4mgの硝酸カルシウムである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記物質がスラッジであり、かつ前記十分な量が、湿潤スラッジ1g当たり約6μLの6N硫酸である、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記物質がスラッジであり、かつ前記十分な量が、アノード表面積1cm2当たり約0.27mgの硝酸カルシウムである、請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記物質がスラッジであり、かつ前記十分な量が、アノード表面積1cm2当たり約9μLの6N硫酸である、請求項2記載の方法。
【請求項7】
前記物質の全表面に渡り分散させるのに十分な体積で、前記電解質を添加する、請求項1または6記載の方法。
【請求項8】
流体を排出させるのに適した少なくとも一つの前記電極が、カソードであり、かつ前記電解質と接触している少なくとも一つの前記電極が、アノードである、請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
同一のエネルギー投入量で、乾燥度の実質的な増大を実現するのに十分な量で、前記電解質を添加する、請求項1〜8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記添加された電解質のカチオン性部分が、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムおよび/または水素の少なくとも1種またはこれらの組合せを含む、請求項1〜9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記添加された電解質のアニオン性部分が、クロライド、ニトレート、カーボネート、サルフェートおよび/または酸素の内の少なくとも1種またはこれらの任意の組合せを含む、請求項1〜9の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記処理すべき物質が、有機スラッジである、請求項1〜11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記電解質が、酸性電解質であり、前記物質および/または抽出された液体のpHを下げ、結果として前記カソードの近傍において生成する堆積物を除去し、または該堆積物の蓄積を減じる、請求項1〜12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記電解質を、ノズルを通して噴霧する、請求項1〜13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記電解質を、前記電極に含浸させる、請求項1〜13の何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記電解質が一方の電極から吹付けられる、請求項1〜13の何れか1項に記載の方法。
【請求項17】
処理前に前記物質を展開するロールによって、前記電解質を適用する、請求項1〜13の何れか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記アノードとして機能するロールによって、前記電解質を適用する、請求項1〜13の何れか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記電極と前記物質との間に配置されたフィルタ/クロスに、前記電解質を適用する、請求項1〜13の何れか1項に記載の方法。
【請求項20】
更に、導電率および/または電圧の関数として、電解質を添加する工程を含む、請求項1〜19の何れか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記導電率および/または電圧を、処理前、多段処理における段階間および処理中の何れか一つの段階にて測定する、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記電解質を、処理前、処理の停止中および処理中の何れか一つの段階にて添加する、請求項1〜21の何れか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記電解質が硫酸である、請求項1〜22の何れか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記電解質が硝酸カルシウムである、請求項1〜22の何れか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記電解質がイオン性界面活性剤である、請求項1〜22の何れか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記イオン性界面活性剤が、マグナー(Magnor)アニオン性界面活性剤571080である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
電解質が存在しない場合に必要とされるよりも小さな電極表面積を用いて、少なくとも同等の乾燥度を実現するのに十分な量で、前記電解質を添加する、請求項1〜26の何れか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記電解質の添加が、与えられた装置内で処理できる、単位時間当たりの前記物質の量を増大する、請求項1〜26の何れか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記電解質の添加が、電解-脱水装置の収益率(ROI)を下げることによって、該電解-脱水処理効率を高める、請求項1〜26の何れか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記電解質が、香り付きの電解質であって、前記物質の価値およびヘドニックトーンの少なくとも一方を高める、請求項1〜29の何れか1項に記載の方法。
【請求項31】
更に、前記電解質に香気を付加して前記物質の価値およびヘドニックトーンの少なくとも一方を高める工程を含む、請求項1〜30の何れか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記電解質の添加により、所定の乾燥度レベルの達成に必要な時間を減じる、請求項1〜31の何れか1項に記載の方法。
【請求項33】
電解-脱水が、前記電解質が、前記スラッジを透過し、または該スラッジと混和した場合よりも、該電解質添加の直後に前記電解-脱水を開始した場合に、少なくとも20%効率的になる、請求項1〜32の何れか1項に記載の方法。
【請求項34】
電解-脱水が、前記電解質添加後10分間待機した場合よりも、該電解質添加の直後に前記電解-脱水を開始した場合に、少なくとも10%効率的になる、請求項1〜32の何れか1項に記載の方法。
【請求項35】
電気浸透処理中の、物質-電極界面における電圧降下を防止するための方法であって、該物質-電極界面において電解質を添加する工程、および該電解質の該物質への有意な含浸が起る前に、該処理を開始する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項36】
物質の乾燥度を高めるための装置であって、該装置が、該物質を電流および圧力の作用下に置くのに適した少なくとも2つの電極を含み、該装置は、電極-物質界面において電解質を送出して、電気浸透による処理中に起る電圧の損失を減じ、あるいは防止するのに適したものであり、コントローラーが、該電解質による該物質の含浸または該電解質の該物質への浸透が起る前に、該処理を開始するようにプログラムされていることを特徴とする装置。
【請求項37】
前記コントローラーが、前記処理中または多段処理の合間の何れかにおける、前記電解質の添加を制御する、請求項36記載の装置。
【請求項38】
更に、前記物質の導電率および/または電圧を測定するために、導電率および/または電圧プローブをも含む、請求項36または37記載の装置。
【請求項39】
前記物質を受取る入口が、前記物質を展開し、かつ前記電解質を該物質に添加するのに適したものである、請求項36〜38の何れか1項に記載の装置。
【請求項40】
前記電解質の送出しが、該電解質を前記物質に噴霧するためのノズルにより行われる、請求項36〜39の何れか1項に記載の装置。
【請求項41】
前記電解質の送出しが、該電解質を前記物質上に堆積させるのに適した電極により行われる、請求項36〜39の何れか1項に記載の装置。
【請求項42】
前記電解質の送出しが、制御放出式電解質貯槽として機能するのに適した、電極により行われる、請求項36〜39の何れか1項に記載の装置。
【請求項43】
前記電解質の送出しが、前記電解質を前記物質上に電気-注入するのに適した電極により行われる、請求項36〜39の何れか1項に記載の装置。
【請求項44】
前記電解質の送出しが、前記電解質を前記物質上に噴霧するのに適した電極により行われる、請求項36〜39の何れか1項に記載の装置。
【請求項45】
前記電解質の送出しが、前記物質を展開し、かつこれに付随して、または付随せずに、該電解質を添加するのに適したロール装置によって行われる、請求項36〜39の何れか1項に記載の装置。
【請求項46】
前記電解質の送出しが、前記電解質で含浸され、かつ前記電極と前記物質との間に配置された、フィルタクロスによって行われる、請求項36〜39の何れか1項に記載の装置。
【請求項47】
前記電解質のカチオン性部分が、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムおよび水素の内の少なくとも1種またはこれらの組合せを含む、請求項36〜46の何れか1項に記載の装置。
【請求項48】
前記電解質のアニオン性部分が、クロライド、ニトレート、カーボネート、スルフェートおよび酸素の内の少なくとも1種またはこれらの組合せを含む、請求項36〜47の何れか1項に記載の装置。
【請求項49】
前記電解質が酸である、請求項36〜48の何れか1項に記載の装置。
【請求項50】
前記酸が硫酸である、請求項49記載の装置。
【請求項51】
前記電解質が塩である、請求項36〜48の何れか1項に記載の装置。
【請求項52】
前記塩が、硝酸カルシウムである、請求項51記載の装置。
【請求項1】
物質の乾燥度を高めるための方法であって、以下の工程
a)物質を、少なくとも2つの電極間に配置する工程であって、該電極の少なくとも一つは、流体を排出するのに適する工程、
b)該物質の一表面に電解質を添加する工程であって、該表面は、該物質と該電極の一方との間の界面に位置しており、ここで該工程a)およびb)は、任意の順序で行うことができる工程、
c)該物質への該電解質による含浸が起る前に、該物質を、圧力および電流の組合せによる作用に付して、該物質から液体を除去する工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記少なくとも一つの電極近傍で起る、電圧降下を実質的に減じまたは防止するのに十分な量で、前記電解質を添加する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記物質がスラッジであり、かつ前記十分な量が、湿潤スラッジ1g当たり約0.4mgの硝酸カルシウムである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記物質がスラッジであり、かつ前記十分な量が、湿潤スラッジ1g当たり約6μLの6N硫酸である、請求項2記載の方法。
【請求項5】
前記物質がスラッジであり、かつ前記十分な量が、アノード表面積1cm2当たり約0.27mgの硝酸カルシウムである、請求項2記載の方法。
【請求項6】
前記物質がスラッジであり、かつ前記十分な量が、アノード表面積1cm2当たり約9μLの6N硫酸である、請求項2記載の方法。
【請求項7】
前記物質の全表面に渡り分散させるのに十分な体積で、前記電解質を添加する、請求項1または6記載の方法。
【請求項8】
流体を排出させるのに適した少なくとも一つの前記電極が、カソードであり、かつ前記電解質と接触している少なくとも一つの前記電極が、アノードである、請求項1〜7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
同一のエネルギー投入量で、乾燥度の実質的な増大を実現するのに十分な量で、前記電解質を添加する、請求項1〜8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記添加された電解質のカチオン性部分が、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムおよび/または水素の少なくとも1種またはこれらの組合せを含む、請求項1〜9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記添加された電解質のアニオン性部分が、クロライド、ニトレート、カーボネート、サルフェートおよび/または酸素の内の少なくとも1種またはこれらの任意の組合せを含む、請求項1〜9の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記処理すべき物質が、有機スラッジである、請求項1〜11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記電解質が、酸性電解質であり、前記物質および/または抽出された液体のpHを下げ、結果として前記カソードの近傍において生成する堆積物を除去し、または該堆積物の蓄積を減じる、請求項1〜12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記電解質を、ノズルを通して噴霧する、請求項1〜13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記電解質を、前記電極に含浸させる、請求項1〜13の何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記電解質が一方の電極から吹付けられる、請求項1〜13の何れか1項に記載の方法。
【請求項17】
処理前に前記物質を展開するロールによって、前記電解質を適用する、請求項1〜13の何れか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記アノードとして機能するロールによって、前記電解質を適用する、請求項1〜13の何れか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記電極と前記物質との間に配置されたフィルタ/クロスに、前記電解質を適用する、請求項1〜13の何れか1項に記載の方法。
【請求項20】
更に、導電率および/または電圧の関数として、電解質を添加する工程を含む、請求項1〜19の何れか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記導電率および/または電圧を、処理前、多段処理における段階間および処理中の何れか一つの段階にて測定する、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記電解質を、処理前、処理の停止中および処理中の何れか一つの段階にて添加する、請求項1〜21の何れか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記電解質が硫酸である、請求項1〜22の何れか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記電解質が硝酸カルシウムである、請求項1〜22の何れか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記電解質がイオン性界面活性剤である、請求項1〜22の何れか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記イオン性界面活性剤が、マグナー(Magnor)アニオン性界面活性剤571080である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
電解質が存在しない場合に必要とされるよりも小さな電極表面積を用いて、少なくとも同等の乾燥度を実現するのに十分な量で、前記電解質を添加する、請求項1〜26の何れか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記電解質の添加が、与えられた装置内で処理できる、単位時間当たりの前記物質の量を増大する、請求項1〜26の何れか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記電解質の添加が、電解-脱水装置の収益率(ROI)を下げることによって、該電解-脱水処理効率を高める、請求項1〜26の何れか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記電解質が、香り付きの電解質であって、前記物質の価値およびヘドニックトーンの少なくとも一方を高める、請求項1〜29の何れか1項に記載の方法。
【請求項31】
更に、前記電解質に香気を付加して前記物質の価値およびヘドニックトーンの少なくとも一方を高める工程を含む、請求項1〜30の何れか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記電解質の添加により、所定の乾燥度レベルの達成に必要な時間を減じる、請求項1〜31の何れか1項に記載の方法。
【請求項33】
電解-脱水が、前記電解質が、前記スラッジを透過し、または該スラッジと混和した場合よりも、該電解質添加の直後に前記電解-脱水を開始した場合に、少なくとも20%効率的になる、請求項1〜32の何れか1項に記載の方法。
【請求項34】
電解-脱水が、前記電解質添加後10分間待機した場合よりも、該電解質添加の直後に前記電解-脱水を開始した場合に、少なくとも10%効率的になる、請求項1〜32の何れか1項に記載の方法。
【請求項35】
電気浸透処理中の、物質-電極界面における電圧降下を防止するための方法であって、該物質-電極界面において電解質を添加する工程、および該電解質の該物質への有意な含浸が起る前に、該処理を開始する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項36】
物質の乾燥度を高めるための装置であって、該装置が、該物質を電流および圧力の作用下に置くのに適した少なくとも2つの電極を含み、該装置は、電極-物質界面において電解質を送出して、電気浸透による処理中に起る電圧の損失を減じ、あるいは防止するのに適したものであり、コントローラーが、該電解質による該物質の含浸または該電解質の該物質への浸透が起る前に、該処理を開始するようにプログラムされていることを特徴とする装置。
【請求項37】
前記コントローラーが、前記処理中または多段処理の合間の何れかにおける、前記電解質の添加を制御する、請求項36記載の装置。
【請求項38】
更に、前記物質の導電率および/または電圧を測定するために、導電率および/または電圧プローブをも含む、請求項36または37記載の装置。
【請求項39】
前記物質を受取る入口が、前記物質を展開し、かつ前記電解質を該物質に添加するのに適したものである、請求項36〜38の何れか1項に記載の装置。
【請求項40】
前記電解質の送出しが、該電解質を前記物質に噴霧するためのノズルにより行われる、請求項36〜39の何れか1項に記載の装置。
【請求項41】
前記電解質の送出しが、該電解質を前記物質上に堆積させるのに適した電極により行われる、請求項36〜39の何れか1項に記載の装置。
【請求項42】
前記電解質の送出しが、制御放出式電解質貯槽として機能するのに適した、電極により行われる、請求項36〜39の何れか1項に記載の装置。
【請求項43】
前記電解質の送出しが、前記電解質を前記物質上に電気-注入するのに適した電極により行われる、請求項36〜39の何れか1項に記載の装置。
【請求項44】
前記電解質の送出しが、前記電解質を前記物質上に噴霧するのに適した電極により行われる、請求項36〜39の何れか1項に記載の装置。
【請求項45】
前記電解質の送出しが、前記物質を展開し、かつこれに付随して、または付随せずに、該電解質を添加するのに適したロール装置によって行われる、請求項36〜39の何れか1項に記載の装置。
【請求項46】
前記電解質の送出しが、前記電解質で含浸され、かつ前記電極と前記物質との間に配置された、フィルタクロスによって行われる、請求項36〜39の何れか1項に記載の装置。
【請求項47】
前記電解質のカチオン性部分が、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウムおよび水素の内の少なくとも1種またはこれらの組合せを含む、請求項36〜46の何れか1項に記載の装置。
【請求項48】
前記電解質のアニオン性部分が、クロライド、ニトレート、カーボネート、スルフェートおよび酸素の内の少なくとも1種またはこれらの組合せを含む、請求項36〜47の何れか1項に記載の装置。
【請求項49】
前記電解質が酸である、請求項36〜48の何れか1項に記載の装置。
【請求項50】
前記酸が硫酸である、請求項49記載の装置。
【請求項51】
前記電解質が塩である、請求項36〜48の何れか1項に記載の装置。
【請求項52】
前記塩が、硝酸カルシウムである、請求項51記載の装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2012−511424(P2012−511424A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540320(P2011−540320)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【国際出願番号】PCT/IB2009/055723
【国際公開番号】WO2010/067340
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(311015159)ジーエル アンド ヴィー カナダ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【国際出願番号】PCT/IB2009/055723
【国際公開番号】WO2010/067340
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(311015159)ジーエル アンド ヴィー カナダ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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