説明

電解採取により金属粉末を生成するための装置

【課題】電解採取により金属粉末を生成するための装置を提供すること。
【解決手段】本発明は、貫流式電解採取用電解槽において、従来の電解採取かまたは代替アノード反応化学を使用し、金属粉末生成物を生成するための装置に関連する。貫流式アノードおよび貫流式カソードの両方を使用する貫流式電解採取用電解槽の新規の設計を記載する。本発明は、従来の電解採取プロセス、直接電解採取、または代替アノード反応化学を使用した、金属含有溶液からの高品質の金属粉末(銅粉末を含む)の生成を可能とする。電解採取により金属粉末を生成するための装置であって:少なくとも1つの貫流式アノード、少なくとも1つの貫流式カソード、および電解質流動システムを含む少なくとも1つの電解採取用電解槽を含む、装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、電解採取を使用して、金属粉末を生成するための装置に関する。特に本発明は、従来の電解採取化学か、または貫流式(flow−through)電解採取用電解槽における代替アノード反応化学を使用して、銅粉末生成物を生成するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
従来の銅電解採取プロセスは、銅カソード薄膜を生成する。しかしながら、銅粉末が、固体銅カソード薄膜の代替物である。銅カソード薄膜と比較すると、銅粉末の生成は、多くの点で有利であり得る。例えば、相対的に重くて嵩張る銅カソード薄膜の取り扱いとは対照的に、電解採取用電解槽からの銅粉末の除去および取り扱いが、潜在的に容易である。銅カソード薄膜を生成する従来の電解採取作業において、採取が、典型的に5日〜8日毎(電解採取用装置の運転パラメータによる)に行われる。しかしながら、銅粉末生成は、連続的または半連続的プロセスとなる潜在性を有するため、採取が実質的に連続的に実施され、したがって、従来の銅カソード生成設備と比較し、「仕掛品」在庫量を減少させ得る。また、銅粉末を生成する場合、銅カソード薄膜を生成する従来の電解採取プロセスを用いる場合よりも高い電流密度で銅電解採取プロセスを運転する可能性があり、電解採取用電解槽設備についての資本費が生産量1単位当たりベースで縮小し得、かつ、そのようなプロセスを用いて運転費を低下させる可能性もあり得る。また、従来の電解採取を使用するよりも低い濃度の銅を含む溶液から受容可能な効率で、効果的に銅を電解採取することも可能である。さらに、銅粉末は、銅カソード薄膜よりも優れた融解特性を示し、銅粉末は、従来の銅カソード薄膜よりも広い範囲で種々の製品に使用され得る。例えば、銅粉末から直接的に、ロッド、型材、ならびに他の銅製品および銅合金製品を形成することが可能であり得る。
【0003】
従来の電解採取用電解槽で使用される従来のカソードは、電解質にカソードを貫流させず、カソード表面における物質伝達は、電解採取用電解槽中のカソード間の電解質の混合効率に依存する。貫流式カソード設計は、電解採取用電解槽を通る流れ全体の特性を改善させることにより、カソードとアノードとの間を行き来する関連種の物質伝達を大きく増加させ、特に銅粉末生成プロセスにとって好都合であることを、本発明者は認識する。特に、電解採取用電解槽中で、1つ以上の貫流式カソードを、1つ以上の貫流式アノードと組み合わせて利用する場合、アノード表面とカソード表面との間を行き来するイオン種の物質伝達に大いなる改善を達成し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要旨)
本発明は、貫流式アノードおよび貫流式カソードの両方を収容する、新規の貫流式電解採取用電解槽を提供する。これは、従来の電解採取化学プロセス(すなわちアノードにおける酸素発生)、直接電解採取プロセス(すなわち溶媒抽出を使用せずに、または溶液中の銅の濃度についての他の方法(例えば、イオン交換、イオン選択膜技術、溶液再循環、エバポレーションおよび他の方法)を使用せずに、銅含有溶液から銅を電解採取すること)、ならびに代替アノード反応電解採取プロセス(すなわち、アノードにおける第一鉄イオンから第二鉄イオンへの酸化)を使用して、銅含有溶液からの高品質の銅粉末の生成を可能とする。さらに、本発明は、相対的に希釈な銅含有溶液(例えば、1リットル当たり約20g未満の銅を含む溶液および種々の溶液の混合)から銅を電解採取するための選択肢を提供する。
【0005】
本発明の種々の実施形態に従い、銅粉末を生成するための装置は(i)1つ以上の貫流式アノード、(ii)1つ以上の貫流式カソード、および(iii)適切な電解質流動シ
ステムを有する電解採取用電解槽を含む。貫流式設計は、アノードとカソードとの間を行き来する関連イオン種の物質伝達を改善する。また、この貫流式設計は、従来の電解採取用電解槽と同じ流動速度であるが、電解槽を通る電解質流動速度に従来の銅電解採取、直接電解採取、または代替アノード反応化学に使用される流動速度を大きく上回ることも可能とする。
【0006】
本発明の種々の局面に従い、銅含有溶液から銅粉末を電解採取するためのプロセスおよび装置を、銅粉末粒径および他の物質特性(例えば、見かけ密度および表面積)を最適化し、電解槽運転電圧、電流効率、および全体的な電力需要を最適化し、カソードからの銅粉末採取の容易さを最大化し、そして電解採取作業を出て行く希薄な電解質流中の銅濃度を最適化するように構成される。さらに、本発明の種々の局面は、改善されたプロセスの経済学を達成する一方で、プロセスの人間工学およびプロセスの安全性を改善させる。
【0007】
本発明は、以下を提供する。
(項目1)
電解採取により金属粉末を生成するための装置であって:
少なくとも1つの貫流式アノード、
少なくとも1つの貫流式カソード、および
電解質流動システム
を含む少なくとも1つの電解採取用電解槽を含む、装置。
(項目2)
項目1に記載の装置であって、さらに、金属粉末を回収するためのベース部分を含む、装置。
(項目3)
項目2に記載の装置であって、前記ベース部分が、円錐形である、装置。
(項目4)
項目1に記載の装置であって、前記少なくとも1つの電解採取用電解槽または電解採取用電解槽の一部が、約4個〜80個の貫流式アノード、および約4個〜約80個の貫流式カソードを含む、装置。
(項目5)
項目1に記載の装置であって、前記少なくとも1つの貫流式アノードが、金属、メタルウール、メタルファブリック、非メタリック物質、多孔性金属構造、メタルメッシュ、少なくとも1つの金属細長片、少なくとも1つの金属ワイヤーもしくはロッド、および有孔もしくは多孔性金属薄膜のうちの少なくとも1つを含む、装置。
(項目6)
項目1に記載の装置であって、前記少なくとも1つの貫流式アノードが、多平面幾何構造で構成される、装置。
(項目7)
項目1に記載の装置であって、前記少なくとも1つ以上の貫流式アノードが、実質的に無鉛である、装置。
(項目8)
項目1に記載の装置であって、前記少なくとも1つの貫流式アノードが、チタン、タンタル、ジルコニウム、ニオブ、ニッケル、ステンレススチール、金属合金、金属間混合物、セラミックもしくは1種以上のバルブ金属を含むサーメット、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、装置。
(項目9)
項目1に記載の装置であって、前記少なくとも1つの貫流式アノードが、電気化学的に活性な被覆を含む、装置。
(項目10)
項目10に記載の装置であって、前記被覆が、白金、ルテニウム、イリジウム、他のVIII族金属、VIII族金属酸化物、チタンの酸化物および化合物、モリブデンの酸化物および化合物、タンタルの酸化物および化合物、またはそれらの組み合わせを含む、装置。
(項目11)
項目1に記載の装置であって、前記少なくとも1つの貫流式カソードが:多重平行金属ワイヤーもしくはロッド、多重平行金属細長片、メタルメッシュ、エキスパンドメタル構造、メタルウール、メタルファブリック、導電性ポリマー、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、装置。
(項目12)
項目1に記載の装置であって、前記少なくとも1つの貫流式カソードが:銅、銅合金、ステンレススチール、他の特殊スチール合金、チタン、アルミニウム、亜鉛、またはそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、装置。
(項目13)
項目1に記載の装置であって、前記金属粉末が、銅粉末である、装置。
(項目14)
項目1に記載の装置であって、さらに、前記少なくとも1つの貫流式カソードと接触して該カソードからの前記金属粉末の遊離を促進する、少なくとも1つの採取機序を含む、装置。
(項目15)
項目15に記載の装置であって、前記採取機序が、振動器、衝撃デバイス、パルス流動システム、パルス電力源、超音波発生器、気泡発生器、またはそれらの組み合わせである、装置。
(項目16)
項目1に記載の装置であって、過剰電解質溶液から金属粉末粒子が重力で分離される、前記ベースと接続した沈殿槽をさらに含む、装置。
(項目17)
項目1に記載の装置であって、さらに、酸ミストを回収するように構成された少なくとも1つの電解採取用電解槽に隣接して据え付けられたデバイスを含む、装置。
(項目18)
電解採取により銅粉末を生成するための装置であって:
各電解採取用電解槽が、少なくも1つの貫流式アノード、および少なくとも1つの貫流式カソードを含む、複数の電解採取用電解槽;
該少なくとも1つの電解採取用電解槽に接続した電解質流動システムであって、少なくとも1つの入り口および少なくとも1つの出口を含み、そして、電解質溶液を該入り口に注入し、該出口を通じて除去する、電解質流動システム;
該少なくとも1つの貫流式カソードからの該銅粉末の放出を促進するための、少なくとも1つの採取機序;および
銅粉末を回収するための少なくとも1つのベース部分
を含む、装置。
(項目19)
項目19に記載の装置であって、さらに、前記ベースに接続した沈殿槽を含み、銅粉末粒子が、過剰電解質溶液から重力により分離される、装置。
(項目20)
項目19に記載の装置であって、前記少なくとも1つの貫流式アノードが、実質的に無鉛である、装置。
(項目21)
項目19に記載の装置であって、前記少なくとも1つの貫流アノードが、ステンレススチールまたは他の特殊スチールを含む、装置。
(項目22)
項目19に記載の装置であって、前記少なくとも1つの貫流式アノードが、チタンを含む、装置。
(項目23)
項目19に記載の装置であって、前記少なくとも1つの貫流式アノードが、非金属材料を含む、装置。
(項目24)
項目19に記載の装置であって、前記少なくとも1つの貫流式カソードが、複数のロッ
ドを含む、装置。
(項目25)
項目19に記載の装置であって、前記少なくとも1つの貫流式カソードが;銅、銅合金、ステンレススチール、チタン、アルミニウム、亜鉛、またはこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、装置。
(項目26)
項目19に記載の装置であって、前記少なくとも1つの貫流式カソードが、電解研磨したステンレススチール、または化学的に不動態化したステンレススチールである、装置。
(項目27)
項目19に記載の装置であって、さらに、酸ミストを処理するように構成された前記少なくとも1つの電解採取用電解槽に隣接して据え付けられたデバイスを含む、装置。
(項目28)
項目19に記載の装置であって、前記採取機序が、振動機、衝撃デバイス、パルス流動システム、パルス電力源、超音波発生器、気泡発生器、またはこれらの組み合わせである、装置。
【0008】
本発明の種々の局面および実施形態に従う電解採取による銅粉末を生成するための装置のこれらの利点および他の利点は、付随する図を参照して以下の詳細な説明を読み、理解することにより、当業者に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本発明の主題は、明細書の末尾部分において詳しく指摘され、明白に主張される。しかしながら、本発明のより完全な理解は、図と関連して考慮される場合に、詳細な説明および特許請求の範囲を参照することにより、最もうまく得られ得る。図中および詳細な説明中の同じ数字は、同じ要素を表す。
【図1】図1は、本発明の1つの典型的な実施形態に従った、電解採取用電解槽を含むプロセスの流れ図である。
【図2】図2は、本発明の1つの典型的な実施形態に従った、貫流式電解採取用電解槽を図示している。
【図3】図3は、本発明の別の典型的な実施形態の種々の局面に従った、貫流式アノードの構造を図示している。
【図4】図4は、本発明の別の典型的な実施形態の種々の局面に従った、貫流式カソードの構造を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、先行する装置からの大きな進歩を示し、銅生成物品質およびプロセス効率に関して大きく改善し得る。さらに、従来の電解採取用装置を利用する既存の銅回収プロセスを、多くの場合、本発明が提供する多くの商業的利益を開発するように改造し得る。
【0011】
最初の問題として、本発明の種々の実施形態が、従来の電解採取化学(すなわちアノードにおける酸素発生)を使用し、続いて溶媒抽出法および/または溶液中の銅の濃度についての他の方法(例えば、イオン交換、イオン選択膜技術、溶液再循環、エバポレーションおよび他の方法)、直接電解採取(すなわち、溶媒抽出技術を使用せずに、あるいは溶液中の銅の濃度についての他の方法(例えば、イオン交換、イオン選択膜技術、溶液再循環、エバポレーションおよび他の方法)を使用せずに銅含有溶液から銅を電解採取ること)、ならびに代替アノード反応電解採取化学(すなわち、アノードにおける第一鉄イオンから第二鉄イオンへの酸化)を使用して、銅含有溶液から高品質の銅粉末を生成するためにうまく使用され得ることが理解されるべきである。従来の銅電解採取は、以下の反応により行われる。
【0012】
【化1】

従来のいわゆる銅電解採取化学および電解採取用装置は、当該技術分野において公知である。従来の電解採取作業は、典型的に活性カソード1平方メートル当たり約220A〜約400A(20A/ft〜35A/ft)、最も典型的には、約300A/m〜約350A/m(28A/ft〜32A/ft)の範囲の電流密度にて運転する。さらに電解質循環および/または電解槽への空気噴射を使用することにより、より高い電流密度を達成し得る(例えば、400A/m〜500A/m)。
【0013】
他方で、代替アノード反応電解採取は、以下の反応により行われる。
【0014】
【化2】

この電解槽全体の反応の結果としてアノードで生成された第二鉄を、以下のように、二酸化硫黄を使用して還元し、第一鉄に戻し得る:
【0015】
【化3】

代替アノード反応化学を使用した本発明の種々の実施形態は、約1100A/mまでの電流密度、あるいはそれより高い電流密度にて、効果的に作動し、高品質の銅粉末を生成し得ることが期待される。例えば、2003年7月28日出願の米国特許出願シリアル番号第10/629,497号「Method and Apparatus for Electrowinning Copper Using the Ferrous/Ferric Anode Reaction」は、第二鉄/第一鉄アノード反応を利用した電解採取のためのプロセスを開示しており、該出願の開示内容を、本明細書中で参考として援用する。
【0016】
まず図1を参照して、典型的な電解採取用装置100を、本発明の1つの実施形態の種々の局面に従って提供する。電解採取用装置100は、連続して構成されるか、あるいは電気的に接続される多重電解槽106を含み、アノードとカソードとを交互にした一連の電極102を含む各電解槽が、図1に示される。典型的な実施形態の1つの局面に従い、各電解採取用電解槽または電解採取用電解槽の各部分は、約4個〜約80個のアノード、および約4個〜約80個のカソードを含む。別の典型的な実施形態の1つの局面に従い、各電解採取用電解槽または電解採取用電解槽の各部分は、約15個〜約40個のアノード、および約16個〜約41個のカソードを含む。しかしながら、本発明に従い、任意の数のアノードおよび/またはカソードを利用し得るということが理解されるべきである。各電解採取用電解槽または各電解採取用電解槽の一部は、好ましくは、回収構造を有するベース部分(例えば、円錐形またはトレンチ形のベース部分など)で構成され得、このベース部分は、カソードから採取された銅粉末生成物を電解採取用電解槽から除去するために回収する。本発明の好ましい実施形態の詳細な説明のために、用語「カソード」は、完全な負電極の集合体(典型的に単一の極棒に接続される)をいう。例えば、極棒から吊り下げられた複数の細いロッドを含むカソードアセンブリにおいて、用語「カソード」は、単一のロッドを表すためではなく、細いロッドの群を表すために使用される。
【0017】
電解採取用装置100の運転において、銅含有溶液101は、(好ましくは、一端から、および/または電解質注入マニフォールドシステムを通って)電解採取用装置に入り、この装置を貫流し(従って電極を通り過ぎ)、その間、銅は溶液から電解採取されて銅粉末を形成する。銅粉末生成物およびいくらかの電解質を含む銅粉末スラリー流104は、装置のベース部分103に集まり、その後に除去され、その一方で、希薄電解質流105は、装置の側部または上端部から、好ましくは、銅含有溶液の装置への入り口とほぼ反対側から装置を出て行く。
【0018】
本発明の典型的な実施形態の1つの局面に従い、少なくとも一部の希薄電解質流105を、電解採取用電解槽101に戻し得る。さらに、この電解質流を電解採取用装置へと再導入する前に、電解質と共に電解槽を通じて運ばれる微細銅粉末を、適切な濾過、沈降分離、または他の微粒子除去/回収システムにより除去することが好ましい。
【0019】
さらに図1を参照して、本発明の典型的な実施形態の別の局面に従い、電解採取用装置100を出た後、銅粉末スラリー流は、任意の沈殿槽1010に入るか、または銅粉末粒子が過剰な電解質から重力により分離されるように構成される他の装置に入る。好ましくは、過剰な電解質107を、側部または上端部を通じて沈殿槽1010から徐去し、過剰な電解質107の少なくとも一部を、電解採取用装置100に戻し得る。濃縮した銅粉末スラリー108は、沈殿槽1010を出て行き、好ましくは、最終銅粉末生成物を生成するためにさらなる処理が施される。
【0020】
図1には図示していないが、本発明の典型的な実施形態の必要に応じて成される局面に従い、フード(hood)、カバー、ブラシ構造または他のデバイスを、電解採取用装置の上に据え付けて、従来の電解採取反応から得られる酸ミストを除去および/または回収する。
【0021】
(アノード特性)
本発明の1つの典型的な実施形態に従い、貫流アノード(例えば、図3に図示されるアノード300)を、図2に示されるような電解槽(すなわちアノード201)に組み込む。本明細書中で使用される場合、用語「貫流式アノード」は、電解質が通過し得るように構成された任意のアノードをいう。電解質流動マニフォールドからの流体流が電解質に動きを与える一方で、電解採取プロセス中、貫流式アノードは、電気化学的電池中の電解質がアノードを貫流することを可能とする。任意の現在公知であるかまたはこれから先に考案される貫流式アノードを、本発明の種々の局面に従って利用し得る。可能な構造としては、これらに限定されないが、金属、メタルウール、メタルファブリック、他の適切な伝導性非金属材料(例えば、炭素材料)、多孔性エキスパンドメタル構造物、メタルメッシュ、エキスパンドメタルメッシュ、コルゲートメタルメッシュ、多数の金属細長片、多数の金属ワイヤもしくは金属ロッド、織金網(woven wire cloth)、有孔金属板など、またはこれらの組み合わせが挙げられる。さらに適切なアノード構造は、平面構造に限定されず、任意の適切な多平面(multiplanar)幾何構造を含み得る。
【0022】
従来の電解採取作業に使用されるアノードは、典型的に、鉛または鉛合金(例えば、Pb−Sn−Caなど)を含む。そのようなアノードを使用することの1つの重大な不都合は、電解採取作業中に、少量の鉛がアノードの表面から放出され、望ましくない沈殿物、「スラッジ」、電解質中に懸濁する微粒子、他の腐食生成物、または電解採取用電解槽中の他の物理的分解生成物の発生、および銅生成物の汚染を、最終的に引き起こす。例えば、鉛含有アノードを使用する作業において生成される銅は、典型的に、約0.5ppm〜約15ppmのレベルで鉛混入物を含む。本発明の好ましい実施形態の1つの局面に従い、アノードは、実質的に無鉛である。したがって、アノードからの鉛による鉛含有沈殿物、「スラッジ」、電解質中に懸濁する微粒子、または他の腐食生成物もしくは物理的分解生成物の発生、および結果として生ずる銅粉末の汚染が、避けられる。そのような鉛アノードを使用する従来の電解採取プロセスにおいて、別の不都合は、アノードの表面腐食特性を制御するため、酸化鉛の形成を制御するため、および/またはシステム中のマンガンの有害効果を妨げるためにコバルトを必要とすることである。
【0023】
本発明の典型的な実施形態の1つの局面に従い、アノードは、いわゆる「バルブ」金属(チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、またはニオブ(Nb)を含む)のうちの1つから形成される。アノードはまた、電解採取用電解槽におけるプロセス化学に適する場合、他の金属(例えば、ニッケル(Ni)、ステンレススチール(例えば、316型、316L型、317型、310型など)、もしくは金属合金(例えば、ニッケル−クロム合金)、金属間混合物、またはセラミックもしくは1種以上のバルブ金属を含むサーメット)からも形成され得る。例えば、チタンをニッケル、コバルト(Co)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、または銅(Cu)との合金にして、適切なアノードを形成し得る。とりわけチタンは丈夫であり、耐腐食性であるので、1つの典型的な実施例に従い、アノードは、チタンを含むことが好ましい。チタンアノードは、例えば、本発明の種々の実施形態に従って使用される場合、潜在的に、15年以上に至る耐用年数を有する。
【0024】
アノードはまた、必要に応じ、任意の電気化学的に活性な被覆を含み得る。典型的な被覆としては、白金、ルテニウム、イリジウム、または他のVIII族金属、VIII族金属酸化物もしくはVIII族金属を含む化合物、ならびにチタン、モリブデン、タンタルの酸化物および化合物、そして/あるいはそれらの混合物および組み合わせから与えられる被覆が挙げられる。酸化ルテニウムおよび酸化イリジウムは、チタンアノード上の電気化学的に活性な被覆としての使用に好ましい2つの化合物である。
【0025】
本発明の典型的な実施形態の別の局面に従い、アノードは、チタンメッシュ(あるいは、上記に提示した、他の金属、金属合金、金属間混合物、またはセラミックもしくはサーメット)を含み、その上に、炭素、グラファイト、炭素およびグラファイトの混合物、貴金属酸化物、またはスピネル型被覆を含む被覆を適用する。好ましくは、1つの典型的な実施形態に従い、アノードは、カーボンブラックパウダーおよびグラファイトパウダーの混合物からなる被覆を有するチタンメッシュを含む。
【0026】
本発明の典型的な実施形態に従い、アノードは、炭素複合体、または金属−グラファイト焼結物質を含む。本発明の他の実施形態に従い、アノードを、炭素複合体物質、グラファイトロッド、グラファイト−炭素で被覆したメタリックメッシュなどから形成し得る。さらに、メタリックメッシュ中の金属または金属−グラファイトを焼結させた典型的な実施形態中の金属を、本明細書中に記載し、チタンを使用する実施例により示す;しかしながら、任意の金属が、本発明の範囲から逸脱することなく使用され得る。
【0027】
1つの典型的な実施形態に従い、ワイヤーメッシュを伝導体ロッドに溶接し得、これらのワイヤーメッシュおよび伝導体ロッドは、アノードについて上記されるような物質を含み得る。1つの典型的な実施形態において、ワイヤーメッシュは、1平方インチ当たり80×80ストランドを有する金網スクリーンからなるが、種々のメッシュ構造(例えば、1平方インチ当たり30×30ストランドなど)を使用し得る。さらに、種々の規則的な幾何メッシュ構造および不規則的な幾何メッシュ構造を使用し得る。さらに別の典型的な実施形態に従い、貫流式アノードは、複数の垂直に吊り下げられたステンレススチールロッド、またはグラファイトチューブもしくはグラファイトリングを取り付けたステンレススチールロッドを含み得る。典型的な実施形態の別の局面に従い、アノード本体が取り付けられている吊極棒(hanger bar)は、銅もしくは適切な導電性銅合金、アルミニウム、または他の適切な導電性物質を含む。
【0028】
次に図3を参照し、本発明の実施形態の1つの局面に従った使用に適した典型的な貫流アノード300は、ブスバー302から吊り下げられる貫流式本体部分301を、一般的に含む。図3に図示されるように、ブスバー302は、実質的に一直線であり、電解採取用電解槽中に平行に配置されるように構成されている。しかしながら他の構造は、例えば、「ステアホーン」構造、マルチアングル構造などを使用し得る。使用中は実質的に全ての本体部分301を、電解質中に(すなわち電解質表面303より下に)浸すことが好ましい。
【0029】
(カソード特性)
従来の銅電解採取作業は、カソードとして始動用銅薄膜か、またはステンレススチール「ブランク」もしくはチタン「ブランク」を使用する。しかしながら、これらの従来のカソードは、電解質を貫流させず、したがって、本発明の種々の局面に関連した銅粉末の生成には適さない。本発明の典型的な実施形態の1つの局面に従い、電解採取用装置100中のカソードは、カソードを通る電解質の流れを可能とするように構成される。本発明の1つの典型的な実施形態に従い、貫流式カソード(例えば、図4に図示したカソード400)を、図2に示すように電解槽に組み込む(例えば、カソード202)。本明細書中で使用される場合、用語「貫流式カソード」は、電解質が通過し得るように構成される任意のカソードをいう。電解質流動マニフォールドからの流体流が、電解質に動きを与える一方で、貫流式カソードは、電解採取プロセス中、電解採取用電解槽中の電解質が、カソードを貫流することを可能とする。
【0030】
種々の貫流式カソード構造が適し得る。その適切な貫流式構造としては:(1)多重平行金属ワイヤー、細いロッド(六角ロッドまたは他の幾何構造を含む)、(2)電解質流動と一直線に並ぶかもしくは流れの方向に対し一定の角度で傾いた、多重平行金属細長片、(3)メタルメッシュ、(4)多孔性エキスパンドメタル構造物、(5)メタルウールもしくはメタルファブリック、ならびに/または(6)導電性ポリマーが挙げられる。このカソードを、銅、銅合金、ステンレススチール、チタン、アルミニウム、あるいは任意の他の金属または金属および/もしくは他の物質の組み合わせから形成し得る。カソードの表面仕上げ(例えば、研磨されているか非研磨であるか)が、銅粉末の採取能を影響し得る。研磨もしくは他の表面仕上げ、表面被覆、表面酸化層(もしくは複数の表面酸化層)、または任意の他の適切なバリヤー層を、好都合に使用し、採取能を高め得る。代替的に、非研磨の表面も利用し得る。
【0031】
本発明の種々の実施形態に従い、カソードを、現在公知であるかまたは当業者によってこれから先に考案される任意の方法で構成し得る。図4を参照して、本発明の実施形態の1つの局面に従った使用に適した典型的な貫流式カソード400は、一般的に貫流式本体部分404を含み、この貫流式本体部分は、ブスバー401から吊り下げられた多数の細いロッド402を含む。多数の細いロッド402は、好ましくは、ほぼ同じ長さ、直径、および構成材料であり、そして、好ましくは、ブスバー401の長さに従ってほぼ等しく間隔をあける。図4に図示されるように、ブスバー401は、実質的に一直線であり、電解採取用電解槽中に平行して配置される。しかしながら、例えば、「ステアホーン(steerhorn)」構造、マルチアングル構造など、他の構造を利用し得る。さらに、(図4に示すように)カソード400を枠から外すか、(図2中にカソード202と共に示すように)枠にはめ得、細いロッド402の先端に絶縁体を含むか、または任意の他の適切な構造形態を有し得る。細いロッド402は、任意の適切な断面幾何形状(例えば、円形、六角形、四角形、矩形、八角形、卵形(oval)、楕円形(elliptical)または任意の他の所望の幾何形状)を有し得る。細いロッド402の望ましい断面幾何形状を、銅粉末の採取能を最適化し、および/または電解採取用装置中の電解質の流動および/もしくは物質伝達特性を最適化するように選択し得る。
【0032】
電気化学電解槽の運転中に電解質中に浸かるカソード部分の表面積の全てもしくは実質的に全てを、本明細書中および一般的に文献中で、カソードの「活性」表面積という(図4中の領域404、電解質表面403より下のカソード400の部分により指定される)。これは、電解採取中にその上に銅粉末が形成されるカソードの一部分である。本発明の典型的な実施形態に従い、電解採取用電解槽中のアノードおよびカソードを、電解槽中に等間隔にして並べ、電極間の電流の電気的短絡を最小限にしながら、電力消費および物質伝達を最適化するために、できる限り電極間の間隔を接近させて維持する。従来の電解採取用電解槽中のアノード/カソードの間隔は、典型的に、アノードからカソードまで約2インチ以上であるが、本発明の種々の局面に従って構成される電解採取用電解槽は、約0.5インチ〜約4インチ、好ましくは約2インチ未満のアノード/カソード間隔を示すことが好ましい。より好ましくは、本発明の種々の局面に従って構成される電解採取用電解槽は、約1.5インチ以下のアノード/カソード間隔を示す。本明細書中で使用される場合、「アノード/カソード間隔」は、アノード吊極棒の中心線から、隣接するカソード吊極棒の中心線までを測定される。
【0033】
(電解質流動特性)
一般的に述べると、本明細書中に記載されるプロセスの詳細事項が実用的となるような電解採取用電解槽中で電極間の電解質の十分な流動および循環を維持し得る任意の電解質ポンプ輸送、循環、または攪拌システムを、本発明の種々の実施形態に従って使用し得る。
【0034】
本発明の典型的な実施形態に従い、電解質流動速度を、活性カソード1平方フィート当たり約0.05ガロン/分〜活性カソード1平方フィート当たり約30ガロン/分のレベルで維持する。好ましくは、電解質流動速度を、活性カソード1平方フィート当たり約0.1ガロン/分〜活性カソード1平方フィート当たり約0.75ガロン/分のレベルで維持する。本発明に従って有用な、実施可能である最適電解質流動速度は、プロセス装置の特有の構造および使用される電解質化学に依存し、したがって、活性カソード1平方フィート当たり約30ガロン/分を上回る流動速度、または活性カソード1平方フィート当たり約0.05ガロン/分未満の流動速度は、本発明の種々の実施形態に従って、最適となり得ることが認識されるべきである。さらに、電解槽中の電解質の動きを攪拌により(例えば、機械的攪拌および/または気体/溶液注入デバイスの使用による攪拌により)増大して、物質伝達を向上させ得る。
【0035】
電解採取用電解槽への電解質の注入速度は、電解質が電解採取用電解槽に入る際に通る穴部またはスロットの大きさおよび/または形状を変更することにより変わり得る。例えば、図2を参照すると、電解質供給は、多数の注入口を有するように構成される分配板(distributor plate)203を通じて送られ、注入口の直径が減少すると、電解質の注入速度が増加し、とりわけ電解質の攪拌を増大させることになる。さらに、電解採取用電解槽への電解質の注入の電解槽壁および電極に対する角度を、あらゆる電解槽壁を通して、望ましい任意の方向に構成し得る。ほぼ水平な電解質注入構造が、図2に参照のために図示されているが、異なる向きおよび間隔の注入口のあらゆる構造が可能である。例えば、図2で示された注入口は、互いにほぼ平行で、同様な方向を有するが、複数の対向する注入流または交差する注入流を含む構造は、本発明の種々の実施形態に従い、有益であり得る。分配板203を、好ましくは、電解槽内部表面および電極表面全体にわたり実質的に等しく流動が分配されるように構成する。本発明の典型的な実施形態の1つの局面に従い、分配板の上端部近くの注入口の直径は、分配板の底部近くの注入口より小さく、好ましくは、分配板の上端部から分配板の底部へと、注入口の直径が増加する。本発明の別の典型的な実施形態の局面に従い、分配板中の注入口を、板の中央近くの穴部の直径が、板の縁部近くの穴部よりも小さくなるように構成し得、さらに、注入口の直径は、分配板の中央から分配板の縁部へと、増加し得る。分配板(もしくは複数の分配板)中の注入口の直径を調節することにより、電解槽を通る電解質流動速度および流速を最適化し得る。さらに、機械的攪拌(例えば、攪拌デバイスまたは注入デバイスの使用を通じて)により物質伝達を向上させて、電解槽中の電解質の動きを増大し得る。
【0036】
(槽電圧)
本発明の典型的な実施形態に従い、約0.75V〜約3.0Vの総槽電圧、好ましくは、約1.9V未満、より好ましくは、約1.7V未満の総槽電圧を達成する。代替アノード反応化学の使用を通じ、一般的に従来の電解採取反応化学を通じて達成し得るよりもかなり小さな総槽電圧(例えば、0.5V〜1.5V)を利用し得る。そのようなものとして、電解採取用電解槽内の総電圧を最適化するための機序は、本発明の種々の典型的な局面および実施形態に従い、選択される電解採取反応化学に応じて変化する。
【0037】
さらに、達成し得る総槽電圧は、あらゆる他の相互に関連する要因(電極間隔、電極の構造および構成材料、電解質中の酸濃度および銅濃度、電流密度、電解質温度、電解質の導電性、ならびに(それらよりも低い程度で)電解採取プロセスへの任意の添加剤(例えば、凝集剤、界面活性剤など)の性質および量を含む)に依存している。
【0038】
さらに、電圧の過電圧の管理と共に、アノードおよびカソードの電流密度の独立制御が、総槽電圧および電流効率の効果的な制御を可能とするために利用され得ることを、本発明者らは認識した。例えば、電解採取用電解槽のハードウェアの構造(これに限定されないが、カソード表面積とアノード表面積との比率を含む)を、本発明に従って修正し、電解槽運転条件、電流効率、および電解槽全体の効率を最適化し得る。
【0039】
(電流密度)
電解採取用電解槽の運転電流密度は、銅粉末生成物の形態に影響し、直接的に、電解槽中の銅粉末の生成速度に影響する。一般に、電流密度が高くなると、銅粉末のかさ密度および粒径が縮小し、銅粉末の表面積が増大するが、電流密度を下げると、銅粉末のかさ密度は拡大する(電流電圧が低すぎると、一般的に望ましくないカソード銅を生ずる場合がある)。例えば、電解採取用電解槽による銅粉末の生成速度は、その電解槽に適用される電流にほぼ比例する。つまり、活性カソード1平方フィート当たり100Aで運転している電解槽は、他の全ての運転条件(活性カソード面積を含む)が変わらなければ、活性カソード1平方フィート当たり20Aで運転している電解槽の約5倍の銅粉末を所定時間に生成する。しかしながら、電解槽の備品の電流容量が、1つの制限要因である。また、高電流密度で電解採取用電解槽を運転する場合、電解槽を通る電解質の流動速度を、電解採取に利用可能な電解質中の銅を枯渇させないように調節する必要があり得る。さらに、高電流密度で運転する電解槽は、低電流密度で運転する電解槽よりも電力需要が増大し得、そのようなものとして、経済学もまた、運転パラメータの選択、および個々のプロセスの最適化に役割を果たす。
【0040】
本発明の典型的な実施形態に従い、電解採取用装置の運転電流密度は、活性カソード1平方フィート当たり約10A〜約200Aの範囲に及び、従来の電解採取反応化学を電解採取用装置中で利用する場合、活性カソード1平方フィート当たり約100Aであることが好ましい。代替アノード反応化学(例えば、非酸素発生反応化学)の使用は、従来の電解採取反応化学を通じて達成し得る700A/ftかまたはそれよりも高い電流密度を可能とし得る。そのようなものとして、電解採取用電解槽内の運転電流密度を最適化するための機序は、本発明の種々の典型的な局面および実施形態に従い、選択された電解採取反応化学に応じて変化する。
【0041】
(温度)
本発明の典型的な実施形態の1つの局面に従い、電解採取用電解槽中の電解質温度を、約40°F〜約150°Fで維持する。1つの好ましい実施形態に従い、電解質を、約90°F〜約140°Fの温度で維持する。しかしながら、より高い温度を好都合に使用し得る。例えば、直接電解採取の作業において、140°Fよりも高い温度を利用し得る。あるいは、特定の用途において、より低い温度を好都合に使用し得る。例えば、希薄銅含有溶液の直接電解採取が望ましい場合、85°F未満の温度を利用し得る。
【0042】
電解採取用電解槽中の電解質の運転温度を、当該技術分野において周知の種々の方法(例えば、熱交換、浸漬発熱体(immersion heating element)、インライン加熱デバイス(例えば、熱交換器)を含む)のうち任意の1つ以上の手段により、好ましくは効率のよいプロセス制御のために1つ以上のフィードバック温度制御手段と連結して制御し得る。
【0043】
(酸濃度)
本発明の典型的な実施形態に従い、電解採取のための電解質中の酸濃度を、電解質1リットル当たり約5g〜約250gの酸のレベルで維持し得る。本発明の好ましい実施形態の1つの局面に従い、電解質中の酸濃度を、上流プロセスに応じ、電解質1リットル当たり約150g〜約205gの酸のレベルに好都合に維持し得る。
【0044】
(銅濃度)
本発明の典型的な実施形態に従い、電解採取のための電解質中の銅濃度を、電解質1リットル当たり約5g〜約40gの銅のレベルに好都合に維持する。好ましくは、銅濃度を約10g/L〜約30g/Lのレベルに維持する。しかしながら、本発明の種々の局面を、これらのレベルよりも高い銅濃度および/または低い銅濃度を使用するプロセスに有益に適用し得、場合により、約0.5g/L〜約5g/Lの上記より低い銅濃度レベル、および約40g/L〜約50g/Lの上記より高い銅濃度レベルを適用し得る。
【0045】
(鉄濃度)
本発明の典型的な実施形態に従い、電解質中の合計鉄濃度を、従来の電解採取化学を利用する場合、電解質1リットル当たり約0.01g〜約3.0gの鉄のレベルに維持し、代替アノード反応化学を利用する場合、約20g/L〜約50g/Lのレベルに維持する。しかしながら、電解質中の合計鉄濃度は、電解質中の鉄の溶解度に依存する性質のものであるため、本発明の種々の実施形態に従って変化し得ることが留意される。電解質中の鉄の溶解度は、他のプロセスパラメータ(例えば、酸濃度、銅濃度、および温度など)により変化する。本発明の典型的な実施形態の1つの局面に従い、従来の電解採取用化学を電解採取用電解槽に利用する場合、電解質中の鉄濃度を、可能な限り低いレベルで維持する。この場合、電極表面を「被覆」し、槽電圧に不利益な影響を及ぼす傾向を有する電解質中のマンガンの影響を、減殺するのに十分な鉄のみを電解質中に維持する。
【0046】
(銅粉末の採取)
インサイチュでの採取形態は、カソードの動きを最小限にし、継続的に銅粉末の除去を促進することが望ましいが、本発明の種々の局面に従い、カソードから銅粉末生成物を採取するためのあらゆる機序を利用し得る。カソード表面から電解採取用装置のベース部分へと銅粉末の放出を促進する機能を果たし、本発明の他の局面に従う銅粉末の回収およびさらなる処理を可能とする、現在公知であるかまたはこれから先に考案される任意のデバイスを使用し得る。本発明の特定の実施形態にとって最適な採取機序は、多数の相互に関係する要因、主に電流密度、電解質中の銅濃度、電解質流動速度、電解質温度、カソード基板材料、および関連する表面状態に大いに依存する。寄与する他の要因としては、電解採取用装置中の混合レベル、採取方法の頻度および継続時間、および任意のプロセス添加剤(例えば、凝集剤、界面活性剤など)の存在および量が挙げられる。
【0047】
インサイチュでの採取形態は、自動採取(下記)によるかまたは他のインサイチュデバイスにより、電解採取用電解槽からの銅粉末の除去を促進するために、カソードを取り出して処理する必要性を最小限にすることが望ましい。さらに、インサイチュでの採取形態は、固定電極電解槽の設計の使用を好都合に許容し得る。そのようなものとして、あらゆる機序および形態を利用し得る。
【0048】
可能な採取機序の例としては、振動(例えば、所定の時間間隔でカソード表面から銅粉末をはずすために1つ以上のカソードに取り付けられた1つ以上の振動および/または衝撃デバイス)、パルス流動システム(例えば、カソード表面から銅粉末をはずすために短時間で劇的に上昇させた電解質流動速度)、電解槽へのパルス電力源の使用、超音波の使用、およびカソード表面から銅粉末を除去するための他の機械的な取り外し手段(例えば、断続的または連続的な気泡)の使用が挙げられる。あるいは、ある条件下において、電解質流動速度が、銅粉末が形成されると同時に、すなわち析出および結晶成長が起こった直後にカソード表面から銅粉末をはずすのに十分である場合に、「自動採取」または「動的採取」を達成し得る。
【0049】
上述のように、カソードの表面仕上げは、銅粉末の採取能を影響し得る。したがって、研磨もしくは他の表面仕上げ、表面被覆、表面酸化層(もしくは複数の表面酸化層)、または任意の他の適切なバリヤー層を、採取能を高めるために好都合に使用し得る。
【0050】
本発明の1つの実施形態の局面に従い、電解質と共に電解槽を通じて運ばれる微細銅粉末を、適切な濾過、沈降分離、または他の微粒子除去/回収システムにより除去する。
【0051】
本発明を、多数の典型的な実施形態を参照して上記した。本明細書中に示され、説明される特定の実施形態は、本発明およびその最良の形態の実例となり、いかなる場合も、特許請求の範囲に提示されるような本発明の範囲を限定することを意図しないということが理解されるべきである。この開示内容を読んだ当業者は、典型的な実施例に対する変更および改変を、本発明の範囲から逸脱することなく成し得ることを認識する。例えば、本発明の種々の局面および実施形態を、銅以外の金属(例えば、ニッケル、亜鉛、コバルトなど)の電解採取に適用し得る。本発明の特定の好ましい局面を、典型的な実施形態によって本明細書中に記載するが、本発明のそのような局面を、現在公知であるかまたはこれから先に考案される、あらゆる適切な手段によって達成し得る。したがって、これらの変更もしくは改変、および他の変更もしくは改変を、本発明の範囲内に含むことを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−163699(P2010−163699A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107777(P2010−107777)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【分割の表示】特願2007−522580(P2007−522580)の分割
【原出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(503036221)フェルプス ドッジ コーポレイション (8)
【Fターム(参考)】