説明

電解水生成噴霧システム

【課題】 消費期限のある中性電解水を適切に管理することができる電解水生成噴霧システムを提供する。
【解決手段】 電解水生成装置1は、中性電解水を生成し、中性電解水を識別情報が記憶された二次元コード10が付された電解水タンク8に充填する。その際に、消費期限に関する情報もICカード4に記憶させる。電解水タンク8は、ICカード4と共に、電解水噴霧装置2の設置している場所まで搬送される。電解水噴霧装置2には、搬送された電解水タンク8を収納し、ICカード4を読み込ませる。電解水噴霧装置2は、消費期限に関する情報に基づいて、中性電解水の消費期限が到来したか否かを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解水生成装置で生成した電解水を、電解水タンクに充填して複数の電解水噴霧装置まで搬送し、電解水噴霧装置で噴霧して除菌を行う電解水生成噴霧システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザなどの流行に伴い、除菌を行う重要性が見直されており、簡便な方法で除菌を行う技術の開発が進んでいる。1つの方法として、原水として水道水を用いて、電気分解により次亜塩素酸の濃度を高めて得られる中性の電解水(以下、「中性電解水」という。)を噴霧して除菌を行う電解水噴霧装置が知られている[例えば、特開2008−132443号公報(特許文献1)]。なお「中性電解水」とは、水道水を電気分解することにより次亜塩素酸の濃度を高めたもので、強酸性電解水と同等の除菌効果を有しながらpH値が6.8〜8.0の概ね中性で、強酸性電解水よりも除菌効果を持続できる特徴を有するものである。
【0003】
特許文献1に示された電解水噴霧装置は、電解水生成部と噴霧部とから構成されている。しかしながら電解水生成部には、水道水を供給する必要があるために、水道管との接続工事が必要となる上、コストが高い。そのため設置する電解水噴霧装置すべてに電解水生成部を設けることは、電解水噴霧装置の導入コストを高いものとする。
【0004】
特開2009−208801号公報(特許文献2)には、電解水噴霧装置ではないが、次亜塩素酸を主殺菌化学種とする殺菌剤を充填した容器を、サーバーに交換可能に装着した殺菌剤供給装置が開示されている。殺菌剤は別途生成され、殺菌剤を充填した容器を交換することにより、殺菌剤の補充が可能になっている。利用者は、分取用蛇口を操作し任意の必要量の殺菌剤を入手する。この殺菌剤供給装置のように、殺菌を行う場所に、電解水を充填した電解水タンクと噴霧部(サーバー)を備えた電解水噴霧装置を設置し、電解水が無くなった場合に電解水タンクを交換するようにすれば、水道管工事が不要になる上、すべての電解水噴霧装置に電解水生成部を設ける必要がないため、多数台の電解水噴霧装置を導入する場合の導入コストを大幅に下げることができる。なお電解水生成部を備えた電解水生成装置は、物流コストを無視すれば、1台で足りる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−132443号公報
【特許文献2】特開2009−208801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電気分解により生成されて次亜塩素酸の濃度を高めて得られる中性電解水は、次亜塩素酸の濃度が徐々に低下するという性質を有している。そのため長期間放置された中性電解水は、次亜塩素酸の濃度が、十分な除菌効果を得られない濃度まで低下している。そのため電解水生成装置で生成した中性電解水の消費期限を、電解水噴霧装置側で管理して、消費期限が過ぎた中性電解水が使用されないことが望まれている。
【0007】
本発明の目的は、電解水生成装置と電解水噴霧装置が分かれて設置されているシステムにおいて、電解水生成装置で生成した中性電解水の消費期限を電解水噴霧装置で管理することが可能な電解水生成噴霧システムを提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、予め定めた消費期限が到来した中性電解水を噴霧できないようにして、常に除菌効果を得られる中性電解水を噴霧できる電解水生成噴霧システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電解水生成噴霧システムは、電解水生成装置と複数の電解水噴霧装置とを組み合わせたシステムである。電解水生成装置は、中性電解水を生成して電解水タンク内に中性電解水を充填し、生成した中性電解水の消費期限に関する情報を電解水タンクと一緒に搬送できるように作成する。複数の電解水噴霧装置は、電解水タンクを収納する電解水タンク収納部と、電解水タンク収納部に電解水タンクが収納されているときに、電解水生成装置により作成されて電解水タンクと一緒に搬送された消費期限に関する情報を取得する消費期限情報取得部と、駆動指令に応じて電解水タンク内の中性電解水を噴霧する噴霧部と、噴霧指令の入力の有無を判定し、噴霧指令が入力されたことを判定すると噴霧部に駆動指令を出力する制御部とを備えている。そして各電解水噴霧装置は、消費期限情報取得部で取得した消費期限に関する情報に基づいて、制御部が中性電解水の消費期限が到来したことを判定する。このように構成することで、電解水生成装置で生成した中性電解水の消費期限を電解水噴霧装置側で確実且つ適切に管理することができる。また、消費期限のある中性電解水が消費期限の到来を知ることなく使用されてしまうことを防止することができる。
【0010】
中性電解水の消費期限の決め方は任意である。例えば、発明者は、水道水を電気分解して得られる中性電解水は、条件によるが、生成してから三週間程度で次亜塩素酸の濃度が除菌効果のある値を下回ることを見い出した。そこで、中性電解水を生成した日(または日時)を基準に算出した消費期限(年月日)を、消費期限に関する情報として制御部に入力すれば、制御部で消費期限の到来を日時で判定することができる。なお、消費期限に関する情報として、電解水の生成日の情報を電解水噴霧装置の制御部で受け取り、制御部で消費期限を算出し、消費期限の到来を判定するようにしてもよいのは勿論である。
【0011】
また、消費期限に関する情報に基づいた制御部における消費期限到来の判定方法は、これらの例に限定されるものではない。
【0012】
消費期限が到来した場合に、電解水噴霧装置側でどのように対処するかは任意である。例えば、中性電解水の消費期限が到来したことを判定すると、噴霧指令が入力されても、駆動指令を出力しないように制御部を構成してもよい。このように電解水生成装置と複数の電解水噴霧装置とを組み合わせて電解水生成噴霧システムを構築すると、電解水タンク内の中性電解水の消費期限が過ぎると、制御部は噴霧指令が入力されたとしても駆動指令を出力しない状態になるため、消費期限切れの中性電解水が噴霧されることを確実に阻止することができる。したがって電解水生成噴霧システムの信頼性を高めることができる。その他には、消費期限が到来したことを判定した場合に、交換を促すために、音、光または文字等により警報を発するようにしてもよい。
【0013】
電解水生成装置で生成した中性電解水の消費期限に関する情報を、電解水噴霧装置に伝達するための方法は任意である。しかしながら、適切に消費期限を管理するために、消費期限に関する情報が誤って伝わらないようにする手段が必要である。1つの手段として、電解水タンクには、他のタンクと区別するための識別情報を記憶した識別情報記憶手段を装着し、電解水タンクとは別に、識別情報と一緒に消費期限に関する情報を記憶する消費期限情報記憶手段を用意する。そして、電解水生成装置には、電解水タンクを区別するための識別情報を判別する識別情報読み取り部と、識別情報と一緒に消費期限に関する情報を作成して消費期限情報記憶手段に記憶させる識別情報作成記憶部を備える。そして複数の電解水噴霧装置には、識別情報記憶手段から識別情報を読み取る識別情報読み取り手段を更に備える。そして消費期限情報取得部を、消費期限情報記憶手段から識別情報と一緒に消費期限に関する情報を読み取るように構成し、制御部が識別情報読み取り手段が読み取った識別情報と消費期限情報取得部が取得した識別情報とが一致する場合にのみ消費期限を判定するようにしてもよい。このように識別情報読み取り手段が読み取った識別情報と消費期限情報取得部が取得した識別情報とが一致する場合にのみ、消費期限判定部が消費期限を判定するようにすると、消費期限情報記憶手段に複数の電解水タンクの消費期限が記憶されている場合において、誤った消費期限が消費期限情報取得部により取得された場合に、誤った消費期限の判定がなされることを防止できる。識別情報読み取り手段が読み取った識別情報と消費期限情報取得部が取得した識別情報とが一致しないことを判定した場合には、警報を発するようにしておけば、誤った識別情報が取得されたことが原因で噴霧ができないことを直ぐに確認できる。
【0014】
消費期限に関する情報が誤って伝わらないようにするもう1つの手段として、電解水タンクに消費期限情報記憶手段を装着し、消費期限取得部で消費期限情報記憶手段から消費期限に関する情報を取得するようにしてもよい。特に電解水タンクに消費期限情報記憶手段を装着すると、電解水タンクが交換されたときに、必ず消費期限の情報を読み取ることができるので、情報の読み取り間違いを確実に防止することができる。
【0015】
なお、消費期限情報記憶手段や識別情報記憶手段としては、例えば、光学的に読み取り可能なバーコード、二次元コードや、電気的に読み取り可能な記憶媒体や、磁気的に読み取り可能な磁気テープや磁気カード等を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の電解水生成噴霧システム全体の概念図である。
【図2】本発明の一部を構成する電解水生成装置の実施の形態の一例の構成を示す概略図である。
【図3】本発明の一部を構成する電解水噴霧装置の実施の形態の一例の構成を示す概略図である。
【図4】図2の電解水生成装置で電解水タンクに中性電解水を貯留するまでの流れを示すフローチャートである。
【図5】図3の電解水噴霧装置で中性電解水を噴霧するまでの流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の電解水生成噴霧システムの実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の電解水生成噴霧システム全体の概念図である。図2は、本実施の形態で使用する、電気分解により生成されて次亜塩素酸の濃度を高めて得られる中性電解水を生成するための電解水生成装置の構成の一例を示す図であり、図3は、本実施の形態で使用する電解水噴霧装置の構成の一例を示す図である。
【0018】
図1に示す通り、本実施の形態で用いる電解水噴霧装置2は、電解水生成装置1で生成した中性電解水が充填された電解水タンク8が搬送されてきたものを交換可能に収納して中性電解水の噴霧を行うものである。図1には、電解水噴霧装置2を1つのみ描いてあるが、電解水噴霧装置2は同じ場所または異なる場所に複数台設置される。電解水噴霧装置2の使用者は、自分で所有する又は他人が所有する電解水生成装置1で生成した中性電解水が充填された電解水タンク8の供給を受ける。なお、後述するように、本実施の形態では、中性電解水の消費期限を管理するために、ICカード4を利用している。したがって電解水噴霧装置2に電解水タンク8を搬送する際には、ICカード4もセットで搬送する。
【0019】
図2を参照して、電解水噴霧装置用の中性電解水を生成するための電解水生成装置1を説明する。電解水生成装置1は、入力部3からの入力信号に基づいて装置を制御する制御部5、中性電解水を生成する中性電解水生成部7、中性電解水の消費期限及び電解水タンク8のシリアル番号(識別情報)を記憶するICカード4に情報を記録するためのカードリーダ/ライタ9、電解水タンク8に付された二次元コード10によって記憶されたシリアル番号(識別情報)を読み取るための二次元コードリーダ11、電解水タンク8に分配する中性電解水の流量を計測する流量計測部13及び流量を調整する弁制御部15からなる。生成された中性電解水は、可搬性のある電解水タンク8に充填されて、電解水噴霧装置2に搬送される。中性電解水を電解水タンク8に分配する行程については後述する。
【0020】
電解水生成装置1の中性電解水生成部7は、原水として水道水を使用し、入力部3から生成指令が入力された制御部5からの制御指令によって駆動される生成制御部16によって電解層17内の電極19,21に電圧を印加し、電気分解により中性電解水を生成する。なおこの装置の詳細については、特開2008−132443号公報などに詳しく開示されているので説明を省略する。カードリーダ/ライタ9は、電解水生成装置1に中性電解水を入れる空の電解水タンク8を設置するときに挿入されたICカード4に、電解水タンク8のシリアル番号と一緒に消費期限を書き込む。消費期限は、中性電解水を生成した日時から例えば三週間とする。消費期限の演算は、制御部5内で実施される。二次元コードリーダ11は、電解水タンク8に付された二次元コード10を読み取る。制御部5は、二次元コード10を読み取ることで電解水タンク8が適切な位置に設置されているかの判定を行い、且つ、電解水タンク8のシリアル番号を読み取る。流量計測部13は、中性電解水生成部7と弁制御部15との間に配置されている。制御部5から開弁指令により弁制御部15が弁14を開くと、弁14を通して電解水タンク8内に供給される中性電解水の流量を流量計測部13が計測する。流量計測部13の計測結果は制御部5に送られ、制御部5は予め定めた量の中性電解水が弁14を通して流れると、弁制御部15に閉弁指令を出力する。中性電解水を電解水タンク8に充填した後、前述のカードリーダ/ライタ9は、ICカード4に電解水タンク8のシリアル番号と中性電解水の消費期限(年月日または年月日と時間)を内蔵するカレンダ(時刻を含む)情報に関連付けて書き込む。なお電解水タンク8内に前回の中性電解水が残っている可能性がある。そこで、中性電解水が残っていることを検知する重量検知器を備えて、残っている中性電解水を検知した場合には、警告を出して、排水を促すようにしてもよい。
【0021】
図3に示した電解水噴霧装置2は、中性電解水を貯留した電解水タンク8を収納して、中性電解水を噴霧する装置である。この電解水噴霧装置2は、電解水生成装置1とは離れて、例えば除菌が必要な、人が通る場所に設置される。電解水噴霧装置2は、入力部23、制御部25、噴霧部29、消費期限情報取得部を構成するカードリーダ/ライタ33、識別情報読み取り手段を構成する二次元コードリーダ35、警報発生部37及び交換ランプ39を備えている。本実施の形態では、制御部25内に、駆動指令発生部27と、消費期限判定部31と重量計測部36とを備えている。
【0022】
入力部23は、電解水噴霧装置2の外装ケースの外表面に設置されたスイッチによって構成され、除菌を必要とするユーザによって操作されると噴霧指令を出力する。入力部23から噴霧指令が、制御部25の駆動指令発生部27に入力されると、駆動指令発生部27は駆動指令を噴霧部29に発生する。噴霧部29は、図示しない電動ポンプを備えており、駆動指令が入力されると電動ポンプを所定時間駆動して、電解水タンク8内から吸い出した中性電解水をノズル30から噴霧する。
【0023】
制御部25の消費期限判定部31は図示しないカレンダ情報を含むリアルタイムクロックが内蔵されており、カードリーダ/ライタ33及び二次元コードリーダ35が読み取った情報(消費期限に関する情報と識別情報)に基づいて、電解水タンク8に貯留されている中性電解水の消費期限を判定する。カードリーダ/ライタ33は、ICカード4に記憶された中性電解水の消費期限を読み取り、二次元コードリーダ35は、電解水タンク8に付された二次元コード10から電解水タンク8のシリアル番号を読み取る。消費期限判定部31は、電解水タンク8のシリアル番号とICカード4から読み取った消費期限情報に含まれるシリアル番号とが一致しているか否かを判断し、一致していないときには、ICカード4から入力された消費期限情報が使用できない情報であることを示す指令を警報発生部37に与える。警報発生部37は、この指令を受けると、交換ランプ39の点灯によりICカード4から入力された消費期限情報が使用できないことを電解水タンク8を交換する作業者に知らせる。電解水タンク8のシリアル番号とICカード4から読み取った消費期限情報に含まれるシリアル番号とが一致している場合、消費期限判定部31は、消費期限が到来しているか否かを判定する。消費期限判定部31は、消費期限が到来していないことを判定すると、駆動指令発生部27に停止指令は出力しない。駆動指令発生部27は、停止指令が入力されていないときにだけ、噴霧指令が入力されたときに駆動指令を出力する。消費期限判定部31は、消費期限が到来したことを判定すると、停止指令を出力するとともに、警報発生部37に消費期限が到来していることを示す警報指令を出力する。警報発生部37は、消費期限が到来していることを示す警報指令を受信すると、交換ランプを点灯して、電解水タンク8の交換が必要であることを表示する。
【0024】
なお、本実施の形態では、電解水生成装置1で消費期限を演算し、ICカード4に記憶させ、この情報に基づいて電解水噴霧装置2で消費期限の到来を判定するように構成した。しかしながら、電解水生成装置1では、消費期限に関する情報として電解水の生成日(または生成日時)のみをICカード4に記憶させるようにしてもよい。その場合には、電解水の生成日(または日時)に基づいて、電解水噴霧装置2の制御部25で消費期限を演算し、その結果を判定のために利用するようにしてもよい。さらに、温度情報など、電解水噴霧装置の設置環境に関する情報も加味して消費期限を設定すれば、電解水噴霧装置ごとに適切な消費期限を設定することもできる。
【0025】
重量計測部36は、例えば力センサ等を利用して構成される重量検出センサにより電解水タンク8の総重量を計測し、計測した総重量から電解水タンク8内の中性電解水の残量が予め定めた量以下になると、警報発生部37に警報発生指令を出力する。警報発生部37は、警報発生指令を受信すると、交換ランプ39を点灯して、電解水タンク8の交換時期が近づいていることを警告する。
【0026】
図4は、電解水タンク8に中性電解水を分配するまでの工程を示すフローチャートである。まず、カードリーダ/ライタ9にICカード4を挿入し(ステップST1)、電解水生成装置1に中性電解水を入れる空の電解水タンク8を設置する(ステップST2)。電解水タンク8の上の二次元コード10は、電解水タンク8を適切な位置に設置すると二次元コード10を二次元コードリーダ11で読み取れるように配置されている。そのため、二次元コード10を読み取ることで電解水タンク8が適切な位置に設置されているかの判定を行い、且つ、電解水タンク8のシリアル番号を読み取ることができる(ステップST3)。次に、入力部3が操作されると制御部5によって中性電解水生成部7が起動され、中性電解水が生成され(ステップST4)、電解水タンク8に中性電解水を貯留する(ステップST5)。予め定めた貯留量を流量計測部13が計測すると、弁制御部15が弁14を閉じる。本実施の形態では、生成される中性電解水の除菌効果が持続する期間を三週間と定めている。そこで、本実施の形態では、中性電解水を電解水タンクに充填した後、ICカード4に電解水タンク8のシリアル番号と中性電解水の消費期限(年月日)を関連付けて記憶させる(ステップST6)。最後に、中性電解水で満たした電解水タンク8を密封し(ステップST7)、ICカード4とセットで電解水噴霧装置2が設置してある場所まで搬送する。本実施の形態では、電解水の生成と貯留を同時に行っているが、電解水生成装置1に、生成した電解水の消費期限を記憶しておく記憶手段を設けておき、電解水タンク8に電解水を貯留する際、消費期限をICカード4に記憶させるようにすれば、電解水の生成と貯留は同時に行わなくてもよい。
【0027】
図5は、電解水噴霧装置2の動作フローチャートの一例を示している。まず、ICカード4をカードリーダ/ライタ33に挿入する(ステップST11)。次にICカード4とセットで電解水噴霧装置2の設置場所まで運ばれた電解水タンク8の密封を解いて、電解水噴霧装置2内の所定の位置に電解水タンク8を設置する(ステップST12)。なおステップST11とステップST12とを逆にしてもよい。電解水生成装置1と同様に、二次元コード10を読み取ることで電解水タンク8が適切な位置に設置されているかの判定を行い、同時に電解水タンク8のシリアル番号を読み取る(ステップST13)。電解水タンク8のシリアル番号及び消費期限に関する情報に基づいて、消費期限判定部31は、消費期限が到来しているか否か確認を行い(ステップST14)、噴霧指令が入力部23から入力されるまで一定間隔で消費期限が到来しているか否かを判定しながら待機する(ステップST14〜ステップST15)。本実施の形態では、消費期限を年月日で管理しているため、消費期限の確認は、1日1回になるように上記間隔を定めてある。噴霧指令は、使用者が入力部23を用いて手動で入力する場合だけでなく、人感センサや一定間隔で自動的に入力部から噴霧指令が出力されるように構成しておくことが考えられる。消費期限が到来していない状態で入力部23から噴霧指令が入力されると、駆動指令発生部27が駆動指令を噴霧部29に出力し、中性電解水の噴霧が行われる(ステップ16)。その後、中性電解水の残量を確認し(ステップST17)、残量があれば、ステップST15に戻って待機状態に戻る。フローには描いていないが、消費期限を、日時を用いて管理している場合には、ステップST14に戻って消費期限を確認してから、噴霧指令の待機状態(ステップST15)に戻るようにしてもよい。
【0028】
なお、中性電解水の残量確認の方法は任意であり、本実施の形態では重量計測部36が電解水タンク8の重量を計測し、一定値(電解水タンク8そのものの重量程度)を下回った場合に電解水タンク8の残量がなくなったとして取り扱っている。電解水タンク8の残量が一定値を下回った場合には、警報発生部37に警報指令を送り、交換ランプ39を点灯させる(ステップST18)。重量を計測する以外に、液面計測センサを設けて、電解水タンク8内の液面を計測して残量を計測する方法も採用することができる。
【0029】
ステップST14において、消費期限判定部31が中性電解水の消費期限が到来したことを判定した場合には、消費期限判定部31が駆動指令発生部27に対して停止指令を出して駆動指令が出力されないようにし(ステップST19)、同時に警報発生部37に警報指令を送って、交換ランプ39を点灯させる(ステップST20)。
【0030】
上記フローチャートの動作によれば、電解水タンク8の残量がなくなった場合及び消費期限が到来した場合に、使用者に電解水タンク(中性電解水)の交換を促すことができる。
【0031】
なお、消費期限が到来して突然噴霧ができなくなると、電解水タンク8の交換が間に合わない場合がある。そのため、例えば交換ランプ39を青(消費期限まで余裕あり)、黄(消費期限3日前)、赤(消費期限到来)の三段階に色分けして消費期限の到来を示すようにしてもよい。
【0032】
また、電解水タンク8の消費期限までの残り期限を示す表示装置(インジケータ)を備えるようにしてもよい。このように構成すれば、噴霧ができなくなる事態が発生する前に、前もって電解水タンク8の交換が可能になる。
【0033】
中性電解水の次亜塩素酸濃度の低下速度は、環境温度によって変動する傾向を示す。そこで、電解水噴霧装置に温度センサを設け、環境温度が基準温度(例えば、20℃)より高い場合には消費期限が短くなるように、基準温度から低い場合には消費期限が長くなるように温度補正を行うようにしてもよい。なお基準温度及び消費期限の温度補正方法は、
電解水噴霧装置の設置環境や、次亜塩素酸濃度の初期値に応じて、適宜に定めればよい。
【0034】
本実施の形態では、一枚のICカード4に1つの電解水タンク8についての情報を記憶させているが、電解水タンクにはシリアル番号が付与されているため、シリアル番号と一緒に一枚のICカード4に複数の電解水タンク8の消費期限情報を記憶させておくことも可能である。
【0035】
本実施の形態では、消費期限情報記憶手段としてICカード4を用いているが、消費期限情報記憶手段は情報を記憶することができる媒体であれば足りるため、USBメモリ、非接触式カードなどの他の記憶媒体を用いてもよいのはもちろんである。
【0036】
また、本実施の形態で使用している二次元コードはQRコード(登録商標)であるが、情報を記憶しておくことができるコードであれば足りるため、他のコードや電気的に読み取り可能なICタグ(この場合には、二次元コードリーダの代わりにICタグリーダを用いる。)にしてもよい。
【0037】
本実施の形態では、ICカード4に消費期限情報と電解水タンクについての識別情報を記憶させ、上記のように照合を行うことで電解水タンク8の取り違えまたは消費期限に関する情報の取得ミスを防止している。しかしながら、これは、例えば、電解水タンク8に付す二次元コード10に電解水タンク8のシリアル番号だけでなく、消費期限情報も記憶させ、電解水タンク8にすべての情報を集約させるような形態を排除するものではない。本発明の他の実施の形態では、電解水生成装置1で電解水タンク8に中性電解水を分配する際に、二次元コードを電解水タンク8に直接印字したり、プリントアウトした二次元コードを貼付することにより、電解水タンク8に消費期限情報記憶手段を装着するようにしてもよい。このようにすると、ICカード4及びカードリーダ/ライタ9及び33が不要になるという利点がある。なお、この場合でも、電解水タンク8に装着する消費期限情報記憶手段としては、二次元コードの代わりに電気的に読み取り可能なICタグ等のその他の記憶手段を用いてもよいのはもちろんである。なお電解水タンク8に消費期限情報記憶手段を装着する場合には、図3の電解水噴霧装置2の二次元コードリーダ35が消費期限情報取得部を兼ねることになり、カードリーダ/ライタ33は不要になる。
【0038】
使用者が電解水タンク8に電解水生成装置1で生成した中性電解水以外の液体を入れてしまった場合には、除菌効果が得られない。そこで、このような場合を排除するために、不正監視システムを電解水噴霧装置2に組み込んでもよい。最も簡単な不正監視システムとしては、電解水タンクが外された後、次に設置される電解水タンクのシリアル番号が前の電解水タンクのシリアル番号と同じであれば、不正が行われたと判定するシステムを導入する。なおこのシステムを導入する場合には、すべての電解水タンクに別個のシリアル番号を付与しておく必要がある。また上記実施の形態では、制御部25には重量計測部36が備えられているため、電解水タンク8が設置後に取り外された場合には、その時の重量を一時的に記憶しておく。そして同じシリアル番号(識別情報)の電解水タンクが装着されたときには、従前の重量よりも重量が増えている場合に、不正な操作(水の混入など)が行われたと見なして、停止指令を出力するようにしてもよい。また液面計測センサを用いて電解水タンク8の残量を計測している場合には、電解水タンクを交換していないときに液面が上昇した場合に、不正な操作が行われたと見なしてもよい。不正監視システムは、これらの方法に限られるものではない。
【0039】
上記実施の形態では、電解水噴霧装置は、消費期限の到来を判定すると、中性電解水の噴霧ができないようにしているので、消費期限の管理を最も確実に実行できる。しかしながら噴霧を停止させずに、ブザーの発音、ランプの点灯または表示画面上への表示により、消費期限が到来していることをユーザに知らせるようにしてもよいのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、電解水生成装置で生成した中性電解水の消費期限を電解水噴霧装置側で適切に管理し、消費期限切れの中性電解水が使用されないようにすることを可能にする電解水生成噴霧システムを得ることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 電解水生成装置
2 電解水噴霧装置
3 入力部
4 ICカード
5 制御部
7 中性電解水生成部
8 電解水タンク
9 カードリーダ/ライタ
10 二次元コード
11 二次元コードリーダ
13 流量計測部
15 弁制御部
16 生成制御部
17 電解層
19,21 電極
23 入力部
25 制御部
27 駆動指令発生部
29 噴霧部
31 消費期限判定部
33 カードリーダ/ライタ
35 二次元コードリーダ
36 重量計測部
37 警報発生部
39 交換ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中性電解水を生成して電解水タンク内に前記中性電解水を充填し、生成した前記中性電解水の消費期限に関する情報を前記電解水タンクと一緒に搬送できるように作成する電解水生成装置と、
前記電解水タンクを収納する電解水タンク収納部と、前記電解水タンク収納部に前記電解水タンクが収納されているときに、前記電解水生成装置により作成されて前記電解水タンクと一緒に搬送された前記消費期限に関する情報を取得する消費期限情報取得部と、駆動指令に応じて前記電解水タンク内の前記中性電解水を噴霧する噴霧部と、噴霧指令の入力の有無を判定し、前記噴霧指令が入力されたことを判定すると前記噴霧部に前記駆動指令を出力する制御部とを備え、前記消費期限情報取得部で取得した前記消費期限に関する情報に基づいて、前記制御部が前記中性電解水の消費期限が到来したことを判定する複数の電解水噴霧装置との組み合わせからなる電解水生成噴霧システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記中性電解水の消費期限が到来したことを判定すると、前記噴霧指令が入力されても、前記駆動指令を出力しないように構成されている請求項1に記載の電解水生成噴霧システム。
【請求項3】
前記電解水タンクには、他のタンクと区別するための識別情報を記憶した識別情報記憶手段が装着されており、
前記電解水タンクとは別に、前記識別情報と一緒に前記消費期限に関する情報を記憶する消費期限情報記憶手段が用意され、
前記電解水生成装置は、前記電解水タンクを区別するための前記識別情報を判別する識別情報読み取り部と、前記識別情報と一緒に前記消費期限に関する情報を作成して前記消費期限情報記憶手段に記憶させる識別情報作成記憶部を備えており、
前記複数の電解水噴霧装置は、前記識別情報記憶手段から前記識別情報を読み取る識別情報読み取り手段を更に備え、
前記消費期限情報取得部は、前記消費期限情報記憶手段から前記識別情報と一緒に前記消費期限に関する情報を読み取るように構成され、
前記制御部は、前記識別情報読み取り手段が読み取った前記識別情報と前記消費期限情報取得部が取得した前記識別情報とが一致する場合にのみ前記消費期限を判定する請求項1または2に記載の電解水生成噴霧システム。
【請求項4】
前記電解水タンクには、前記消費期限に関する情報を記憶する消費期限情報記憶手段が装着されており、
前記消費期限情報取得部が、前記消費期限情報記憶手段から前記消費期限に関する情報を取得する請求項1または2に記載の電解水生成噴霧システム。
【請求項5】
前記消費期限情報記憶手段が、光学的に読み取り可能なバーコード、二次元コードまたは電気的に読み取り可能な記憶媒体である請求項3または4に記載の電解水生成噴霧システム。
【請求項6】
前記識別情報記憶手段が、光学的に読み取り可能なバーコード、二次元コードまたは電気的に読み取り可能な記憶媒体である請求項3に記載の電解水生成噴霧システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−50950(P2012−50950A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197162(P2010−197162)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000154152)株式会社富永製作所 (44)
【Fターム(参考)】