説明

露光ヘッド、画像形成装置

【課題】像担持体の表面(被露光面)の位置変動によらず、収束光の大きさの変動を抑制して、良好な露光を実現可能とする技術を提供する。
【解決手段】波長λ11の光および波長λ12の光を発光する第1の発光素子と、第1の方向に光軸を向けて配設されて第1の発光素子からの光を第1の方向に射出して収束させる第1の結像光学系と、を有する露光ヘッドと、露光ヘッドの第1の方向に配設された像担持体と、を備え、第1の結像光学系は、結像位置P11に波長λ11の光を結像するとともに、結像位置P11に対して第1の方向に距離Δ1離れた結像位置P12に波長λ12の光を結像し、距離Δ1は、第1の結像光学系の光軸上での像担持体の表面の変動幅以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光素子からの光を結像光学系により収束させて露光を行なう露光ヘッドおよび該露光ヘッドを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような露光ヘッドとしてのラインヘッドが特許文献1に記載されている。つまり、同文献の露光ヘッド(ラインヘッド)は、発光素子と結像光学系とを備えており、結像光学系によって発光素子からの光が被露光面に収束される。こうして、被露光面に収束された光により、該被露光面が露光される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−221790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、被露光面の位置は安定しているとは限らず、変動することがある。例えば、特許文献1にも記載のとおり、所定方向に回転するドラム状の像担持体(同特許文献の感光体ドラム)の表面を被露光面として露光することが一般に行なわれているが、像担持体のドラム形状は真円とはならず、公差の範囲で誤差がある。このような場合、像担持体の回転に伴なって、像担持体の表面位置が結像光学系の光軸上で変動することとなる。あるいは、像担持体の中心(ドラム形状の中心)が回転中心から偏心してしまい、この偏心に起因して、像担持体の回転に伴なって、像担持体の表面位置が結像光学系の光軸上で変動する場合もある。そして、このように像担持体の表面(被露光面)の位置が結像光学系の光軸上で変動すると、像担持体表面に投影された収束光の大きさが変動して、良好な露光が行えない場合があった。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、像担持体の表面(被露光面)の位置変動によらず、収束光の大きさの変動を抑制して、良好な露光を実現可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するために、波長λ11の光および波長λ12の光を発光する第1の発光素子と、第1の方向に光軸を向けて配設されて第1の発光素子からの光を第1の方向に射出して収束させる第1の結像光学系と、を有する露光ヘッドと、露光ヘッドの第1の方向に配設された像担持体と、を備え、第1の結像光学系は、結像位置P11に波長λ11の光を結像するとともに、結像位置P11に対して第1の方向に距離Δ1離れた結像位置P12に波長λ12の光を結像し、距離Δ1は、第1の結像光学系の光軸上での像担持体の表面の変動幅以上であることを特徴としている。
【0007】
この発明にかかる露光ヘッドは、上記目的を達成するために、波長λ11の光および波長λ12の光を発光する第1の発光素子と、第1の方向に光軸を向けて配設されて第1の発光素子からの光を第1の方向に射出して被露光面に収束させる第1の結像光学系と、を備え、第1の結像光学系は、結像位置P11に波長λ11の光を結像するとともに、結像位置P11に対して第1の方向に距離Δ1離れた結像位置P12に波長λ12の光を結像し、距離Δ1は、第1の結像光学系の光軸上での被露光面の変動幅以上であることを特徴としている。
【0008】
このように構成された発明(画像形成装置、露光ヘッド)は、波長λ11の光および波長λ12の光を発光する第1の発光素子を備え、第1の結像光学系は、結像位置P11に波長λ11の光を結像するとともに、結像位置P11に対して該第1の結像光学系の光軸方向(第1の方向)に距離Δ1離れた結像位置P12に波長λ12の光を結像する。つまり、第1の結像光学系は、その光軸方向へ距離Δ1だけ離れた2つの結像位置P11、P12に第1の発光素子からの光を結像し、これにより、第1の結像光学系の焦点深度が見かけ上拡大したような作用が得られる。しかも、距離Δ1は、第1の結像光学系の光軸上での像担持体表面(被露光面)の変動幅以上である。したがって、像担持体の表面(被露光面)の位置変動によらず、収束光の大きさの変動を抑制して、良好な露光が実現可能となっている。
【0009】
また、第1の発光素子は波長λ11および波長λ12でピークを持つ発光スペクトルを有するように構成しても良い。なぜなら、上述した見かけ上の焦点深度拡大の作用が効果的に奏されて、より良好な露光が実現可能となるからである。
【0010】
ところで、この発明は、上記距離Δ1を、第1の結像光学系の光軸上での被露光面の変動幅以上とすることで、収束光の大きさの変動を抑制できるという利点を備えるものである。しかし、この距離Δ1を余りに大きくすると、収束光の収差が大きくなって結像性能が悪くなるため、露光ムラや解像力の低下を招く場合がある。そこで、第1の結像光学系に設けられた第1の開口絞りを備え、第1の発光素子の直径Dと、第1の結像光学系の倍率mと、第1の結像光学系について像点から入射瞳の直径に張る角の半分の角である像側開口角uとが、関係式
Δ1≦|m|×D/tan(u)
を満たすように構成しても良い。これにより、収差等の結像性能への影響を抑制して、より良好な露光を行なうことができる。
【0011】
また、2つの結像光学系を有する露光ヘッドに対して、本発明を適用することもできる。すなわち、露光ヘッドは、波長λ21の光および波長λ22の光を発光する第2の発光素子と、第1の方向に光軸を向けて配設されて第2の発光素子からの光を第1の方向に射出して収束させる第2の結像光学系とを有し、第2の結像光学系は、結像位置P21に前記波長λ21の光を結像するとともに、結像位置P21に対して第1の方向に距離Δ2離れた結像位置P22に前記波長λ22の光を結像し、距離Δ2は、第2の結像光学系の光軸上での像担持体の表面の変動幅以上であるように構成しても良い。このように構成することで、像担持体の表面(被露光面)の位置変動によらず、第2の結像光学系による収束光の大きさの変化を抑制して、良好な露光が実現可能となっている。
【0012】
ところで、このような構成では、第1の結像光学系は、その光軸が像担持体に交わる交点IS1の近傍に光を収束させるとともに、第2の結像光学系は、その光軸が像担持体に交わる交点IS2の近傍に光を収束させる。ただし、像担持体が有限の曲率を有するような際には、これら交点IS1、IS2の位置は第1の方向に距離dずれる場合があり、このような場合、交点IS1近傍に形成される第1の結像光学系による収束光と、交点IS2近傍に形成される第2の結像光学系による収束光とで大きさが異なってしまう場合があった。そこで、第1の結像光学系の光軸が像担持体に交わる交点IS1と第2の結像光学系の光軸が像担持体に交わる交点IS2との第1の方向への距離dだけ、結像位置P11と結像位置P21が第1の方向に離れているように構成しても良い。つまり、距離dだけ、第1の像光学系の結像位置と第2の結像光学系の結像位置とをシフトさせることで、上述の収束光の大きさの差異を抑制することが可能となる。
【0013】
また、第1の結像光学系および第2の結像光学系を含む3以上の結像光学系が、光軸を第1の方向に向けて配設されている構成に対しても、本発明を適用することができる。この際、第1の結像光学系および第2の結像光学系のうちの一方の光軸が3以上の結像光学系のなかで像担持体の曲率中心から最も近く、第1の結像光学系および第2の結像光学系のうちの一方とは異なる他方の光軸が3以上の結像光学系のなかで像担持体の曲率中心から最も遠いように構成しても良い。ただし、このように、像担持体の曲率中心と光軸との距離が最も近い結像光学系と最も遠い結像光学系との間では、上記結像位置間距離dが比較的大きくなる。しかしながら、あまりにこの距離dが大きいと、第1の結像光学系と第2の結像光学系とで光学的な構成をを大きく変える必要があるが、このような光学的構成で所望の結像性能を得るのは簡単ではない。
【0014】
そこで、第1の結像光学系および第2の結像光学系を含む(2N+2)の結像光学系(Nは1以上の整数)が間隔をおいて配設され、第1の結像光学系および第2の結像光学系のうちの一方は、(2N+2)の結像光学系の端から(N+1)番目あるいは(N+2)番目に位置するように構成しても良い。これにより、距離dが小さく抑えられるため、簡便に所望の結像特性を得ることが可能となる。
【0015】
また、第1の結像光学系および第2の結像光学系を含む(2N+1)の結像光学系(Nは1以上の整数)が間隔をおいて配設され、第1の結像光学系および第2の結像光学系のうちの一方は、(2N+1)の結像光学系の端から(N+1)番目に位置するように構成しても良い。これにより、距離dが小さく抑えられるため、簡便に所望の結像特性を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】収束光の大きさの変動の発生原因と対策を説明するための図。
【図2】本発明の本発明を適用可能な画像形成装置の一例を示す図。
【図3】図2の画像形成装置が備える電気的構成を示すブロック図。
【図4】ラインヘッドの概略を示す斜視図。
【図5】厚さ方向からヘッド基板を平面視した部分平面図。
【図6】第1実施形態でのラインヘッドのA−A線における階段断面図。
【図7】本発明の結像光学系の結像動作を説明する図。
【図8】感光体の振れデータを極座標で示した図。
【図9】第2実施形態でのラインヘッドのA−A線における階段断面図。
【図10】第2実施形態が備える光学的構成を説明するための図。
【図11】第3実施形態でのラインヘッドの構成を示す図。
【図12】第4実施形態でのラインヘッドの構成を示す図。
【図13】本発明にかかる画像形成装置の変形例を示す図。
【図14】本発明にかかる画像形成装置の別の変形例を示す図。
【図15】実施例の上流側・下流側結像光学系のレンズデータを示す図。
【図16】上流側・下流側結像光学系のS4面の面形状を示す図。
【図17】上流側・下流側結像光学系のS7面の面形状を示す図。
【図18】実施例の中央結像光学系のレンズデータを示す図。
【図19】中央結像光学系のS4面の面形状を示す図。
【図20】中央結像光学系のS7面の面形状を示す図。
【図21】主走査方向断面における上流側・下流側結像光学系の光線図を示す図。
【図22】副走査方向断面における上流側・下流側結像光学系の光線図を示す図。
【図23】光学系諸元を示す図。
【図24】2波長の光それぞれの結像位置をシミュレーションで求めた結果を示す図。
【図25】2波長の光それぞれの結像位置をシミュレーションで求めた結果を示す図。
【図26】上流側・下流側結像光学系の焦点深度拡大の様子を示す図。
【図27】上流側・下流側結像光学系の焦点深度拡大の様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上述したとおり、像担持体の表面(被露光面)の位置が結像光学系の光軸上で変動すると、収束光の大きさが変動して、良好な露光が行えない場合があった。そこで、以下では、まず収束光の大きさの変動の発生原因とその対策について説明した後、より具体的な実施形態について説明する。
【0018】
A.収束光の大きさの変動の発生原因と対策
図1は、収束光の大きさの変動の発生原因と対策を説明するための図であり、副走査方向SDに対して直交する主走査方向MDから見た場合に相当する。被露光面ESは、副走査方向SDに有限の曲率を有しており、換言すれば、副走査方向SDの断面において有限の曲率半径を有している。また、結像光学系OSαが光軸OAαを方向Doa(光軸方向)に向けて配設されている。そして、結像光学系OSαは、該結像光学系OSαの光軸OAαと被露光面ESとが交わる交点ISαの近傍に、発光素子Eαからの光を収束させる。
【0019】
しかしながら、被露光面ESの位置は安定しているとは限らず、変動することがある。図1では、被露光面ESが位置ESjと位置ESkとの間で変動している。そして、このように被露光面ESの位置が結像光学系OSα光軸上で変動すると、収束光(スポット)の大きさが変動して、良好な露光が行えない場合があった。
【0020】
そこで、かかる問題への対策として、次のような構成を備えることができる。つまり、図1に示す構成では、波長λα1の光および波長λα2の光を発光する発光素子Eαを備え、結像光学系OSαは、結像位置Pα1に波長λα1の光を結像するとともに、結像位置Pα1に対して光軸方向Doa(第1の方向)に距離Δα離れた結像位置Pα2に波長λα2の光を結像する。つまり、結像光学系OSαは、その光軸OAαの方向へ距離Δαだけ離れた2つの結像位置Pα1、Pα2に発光素子Eαからの光を結像し、これにより、結像光学系OSαの焦点深度が見かけ上拡大したような作用が得られる。しかも、距離Δαは、結像光学系OSαの光軸OAα上での被露光面ESの変動幅hα以上である。したがって、被露光面ESの位置変動によらず、収束光の大きさの変動を抑制して、良好な露光が実現可能となっている。
【0021】
以下、具体的な実施形態について説明を行なうが、その前に、結像光学系の光軸について説明を行なっておく。つまり、結像光学系の光軸は次のようにして求めることができる。副走査方向SD(第2の方向)に垂直な対称面に関して面対称(鏡映対称)であり、かつ、主走査方向MD(第3の方向)に垂直な対称面に関して面対称(鏡映対象)である結像光学系の場合は、該結像光学系は、第2の方向に垂直な第2の対称面および該第2の方向と直交する第3の方向に垂直な第3の対称面を有しており、これら第2の対称面と第3の対称面との交線を光軸として求めることができる。特に、結像光学系が回転対称である場合には、これら第2の対称面と第3の対称面との交線が回転対称軸と一致するため、この回転対称軸を光軸として求めることができる。
【0022】
B−1.第1実施形態
図2は本発明を適用可能な画像形成装置の一例を示す図である。また、図3は図2の画像形成装置が備える電気的構成を示すブロック図である。この装置は、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能な画像形成装置である。なお図2は、カラーモード実行時に対応する図である。この画像形成装置では、ホストコンピューターなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリーなどを有するメインコントローラーMCに与えられると、このメインコントローラーMCはエンジンコントローラーECに制御信号などを与えるとともに画像形成指令に対応するビデオデータVDをヘッドコントローラーHCに与える。このとき、メインコントローラーMCは、ヘッドコントローラーHCから水平リクエスト信号HREQを受け取る毎に、主走査方向MDに1ライン分のビデオデータVDをヘッドコントローラーHCに与える。また、このヘッドコントローラーHCは、メインコントローラーMCからのビデオデータVDとエンジンコントローラーECからの垂直同期信号Vsyncおよびパラメータ値とに基づき各色のラインヘッド29を制御する。これによって、エンジン部ENGが所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどのシートに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0023】
画像形成装置が有するハウジング本体3内には、電源回路基板、メインコントローラーMC、エンジンコントローラーECおよびヘッドコントローラーHCを内蔵する電装品ボックス5が設けられている。また、画像形成ユニット7、転写ベルトユニット8および給紙ユニット11もハウジング本体3内に配設されている。また、図2においてハウジング本体3内右側には、2次転写ユニット12、定着ユニット13、シート案内部材15が配設されている。なお、給紙ユニット11は、装置本体1に対して着脱自在に構成されている。そして、該給紙ユニット11および転写ベルトユニット8については、それぞれ取り外して修理または交換を行うことが可能な構成になっている。
【0024】
画像形成ユニット7は、複数の異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーションY(イエロー用)、M(マゼンダ用)、C(シアン用)、K(ブラック用)を備えている。また、各画像形成ステーションY,M,C,Kは、主走査方向MDに所定長さの表面を有する円筒形の感光体ドラム21を設けている。そして、各画像形成ステーションY,M,C,Kそれぞれは、対応する色のトナー像を、感光体ドラム21の表面に形成する。感光体ドラム21は、軸方向が主走査方向MDに平行もしくは略平行となるように配置されている。また、各感光体ドラム21はそれぞれ専用の駆動モーターに接続され図中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。これにより感光体ドラム21の表面が、主走査方向MDに直交もしくは略直交する副走査方向SDに搬送されることとなる。また、感光体ドラム21の周囲には、回転方向に沿って帯電部23、ラインヘッド29、現像部25および感光体クリーナー27が配設されている。そして、これらの機能部によって帯電動作、潜像形成動作及びトナー現像動作が実行される。したがって、カラーモード実行時は、全ての画像形成ステーションY,M,C,Kで形成されたトナー像を転写ベルトユニット8が有する転写ベルト81に重ね合わせてカラー画像を形成するとともに、モノクロモード実行時は、画像形成ステーションKで形成されたトナー像のみを用いてモノクロ画像を形成する。なお、図2において、画像形成ユニット7の各画像形成ステーションは構成が互いに同一のため、図示の便宜上一部の画像形成ステーションのみに符号をつけて、他の画像形成ステーションについては符号を省略する。
【0025】
帯電部23は、その表面が弾性ゴムで構成された帯電ローラーを備えている。この帯電ローラーは帯電位置で感光体ドラム21の表面と当接して従動回転するように構成されており、感光体ドラム21の回転動作に伴って感光体ドラム21に対して従動方向に周速で従動回転する。また、この帯電ローラーは帯電バイアス発生部(図示省略)に接続されており、帯電バイアス発生部からの帯電バイアスの給電を受けて帯電部23と感光体ドラム21が当接する帯電位置で感光体ドラム21の表面を帯電させる。
【0026】
ラインヘッド29は感光体ドラム21に対して離間して配置されており、ラインヘッド29の長手方向は主走査方向MDに平行もしくは略平行であるとともに、ラインヘッド29の幅方向は副走査方向SDに平行もしくは略平行である。このラインヘッド29は複数の発光素子を備えており、各発光素子はヘッドコントローラーHCからのビデオデータVDに応じて発光する。そして、帯電した感光体ドラム21表面に発光素子からの光が照射されることで、感光体ドラム21表面に静電潜像が形成される。
【0027】
現像部25は、その表面にトナーを担持する現像ローラー251を有する。そして、現像ローラー251と電気的に接続された現像バイアス発生部(図示省略)から現像ローラー251に印加される現像バイアスによって、現像ローラー251と感光体ドラム21とが当接する現像位置において、帯電トナーが現像ローラー251から感光体ドラム21に移動してラインヘッド29により形成された静電潜像が顕在化される。
【0028】
このように上記現像位置において顕在化されたトナー像は、感光体ドラム21の回転方向D21に搬送された後、転写ベルト81と各感光体ドラム21が当接する1次転写位置TR1において転写ベルト81に1次転写される。
【0029】
また、この実施形態では、感光体ドラム21の回転方向D21の1次転写位置TR1の下流側で且つ帯電部23の上流側に、感光体ドラム21の表面に当接して感光体クリーナー27が設けられている。この感光体クリーナー27は、感光体ドラムの表面に当接することで1次転写後に感光体ドラム21の表面に残留するトナーをクリーニング除去する。
【0030】
転写ベルトユニット8は、駆動ローラー82と、図2において駆動ローラー82の左側に配設される従動ローラー83(ブレード対向ローラー)と、これらのローラーに張架され図示矢印D81の方向(搬送方向)へ循環駆動される転写ベルト81とを備えている。また、転写ベルトユニット8は、転写ベルト81の内側に、感光体カートリッジ装着時において各画像形成ステーションY,M,C,Kが有する感光体ドラム21各々に対して一対一で対向配置される、4個の1次転写ローラー85Y,85M,85C,85Kを備えている。これらの1次転写ローラー85は、それぞれ1次転写バイアス発生部(図示省略)と電気的に接続される。そして、カラーモード実行時は、図2に示すように全ての1次転写ローラー85Y,85M,85C,85Kを画像形成ステーションY,M,C,K側に位置決めすることで、転写ベルト81を画像形成ステーションY,M,C,Kそれぞれが有する感光体ドラム21に押し遣り当接させて、各感光体ドラム21と転写ベルト81との間に1次転写位置TR1を形成する。そして、適当なタイミングで上記1次転写バイアス発生部から1次転写ローラー85に1次転写バイアスを印加することで、各感光体ドラム21の表面上に形成されたトナー像を、それぞれに対応する1次転写位置TR1において転写ベルト81表面に転写してカラー画像を形成する。
【0031】
一方、モノクロモード実行時は、4個の1次転写ローラー85のうち、カラー1次転写ローラー85Y,85M,85Cをそれぞれが対向する画像形成ステーションY,M,Cから離間させるとともにモノクロ1次転写ローラー85Kのみを画像形成ステーションKに当接させることで、モノクロ画像形成ステーションKのみを転写ベルト81に当接させる。その結果、モノクロ1次転写ローラー85Kと画像形成ステーションKとの間にのみ1次転写位置TR1が形成される。そして、適当なタイミングで前記1次転写バイアス発生部からモノクロ1次転写ローラー85Kに1次転写バイアスを印加することで、各感光体ドラム21の表面上に形成されたトナー像を、1次転写位置TR1において転写ベルト81表面に転写してモノクロ画像を形成する。
【0032】
さらに、転写ベルトユニット8は、モノクロ1次転写ローラー85Kの下流側で且つ駆動ローラー82の上流側に配設された下流ガイドローラー86を備える。また、この下流ガイドローラー86は、モノクロ1次転写ローラー85Kが画像形成ステーションKの感光体ドラム21に当接して形成する1次転写位置TR1での1次転写ローラー85Kと感光体ドラム21との共通内接線上において、転写ベルト81に当接するように構成されている。
【0033】
駆動ローラー82は、転写ベルト81を図示矢印D81の方向に循環駆動するとともに、2次転写ローラー121のバックアップローラーを兼ねている。駆動ローラー82の周面には、厚さ3mm程度、体積抵抗率が1000kΩ・cm以下のゴム層が形成されており、金属製の軸を介して接地することにより、図示を省略する2次転写バイアス発生部から2次転写ローラー121を介して供給される2次転写バイアスの導電経路としている。このように駆動ローラー82に高摩擦かつ衝撃吸収性を有するゴム層を設けることにより、駆動ローラー82と2次転写ローラー121との当接部分(2次転写位置TR2)へのシートが進入する際の衝撃が転写ベルト81に伝達しにくく、画質の劣化を防止することができる。
【0034】
給紙ユニット11は、シートを積層保持可能である給紙カセット77と、給紙カセット77からシートを一枚ずつ給紙するピックアップローラー79とを有する給紙部を備えている。ピックアップローラー79により給紙部から給紙されたシートは、レジストローラー対80において給紙タイミングが調整された後、シート案内部材15に沿って2次転写位置TR2に給紙される。
【0035】
2次転写ローラー121は、転写ベルト81に対して離当接自在に設けられ、2次転写ローラー駆動機構(図示省略)により離当接駆動される。定着ユニット13は、ハロゲンヒータ等の発熱体を内蔵して回転自在な加熱ローラー131と、この加熱ローラー131を押圧付勢する加圧部132とを有している。そして、その表面に画像が2次転写されたシートは、シート案内部材15により、加熱ローラー131と加圧部132の加圧ベルト1323とで形成するニップ部に案内され、該ニップ部において所定の温度で画像が熱定着される。加圧部132は、2つのローラー1321,1322と、これらに張架される加圧ベルト1323とで構成されている。そして、加圧ベルト1323の表面のうち、2つのローラー1321,1322により張られたベルト張面を加熱ローラー131の周面に押し付けることで、加熱ローラー131と加圧ベルト1323とで形成するニップ部が広くとれるように構成されている。また、こうして定着処理を受けたシートはハウジング本体3の上面部に設けられた排紙トレイ4に搬送される。
【0036】
また、この装置では、ブレード対向ローラー83に対向してクリーナー部71が配設されている。クリーナー部71は、クリーナーブレード711と廃トナーボックス713とを有する。クリーナーブレード711は、その先端部を転写ベルト81を介してブレード対向ローラー83に当接することで、2次転写後に転写ベルトに残留するトナーや紙粉等の異物を除去する。そして、このように除去された異物は、廃トナーボックス713に回収される。
【0037】
図4は、ラインヘッドの概略を示す斜視図である。同図では、ラインヘッド29の厚さ方向TKDの構成を理解しやすくするために、ラインヘッド29の一部が断面で示されている。ここで、厚さ方向TKDは、長手方向LGDおよび幅方向LTDに垂直もしくは略垂直な方向であり、後述する発光素子Eが光を射出する側(つまり、ラインヘッド29から感光体ドラム21に向う側)を向いた方向とする。ラインヘッド29は、長手方向LGDに長尺なヘッドフレーム291を備えており、このヘッドフレーム291の厚さ方向TKDの一方側で、第1レンズアレイLA1および第2レンズアレイLA2が保持されるとともに、ヘッドフレーム291の厚さ方向TKDの他方側でヘッド基板293が保持される。また、ヘッドフレーム291の内部には遮光部材297が配設されている。このように、ラインヘッド29は、ヘッド基板293、遮光部材297、第1レンズアレイLA1および第2レンズアレイLA2をこの順番で厚さ方向TKDに配置した概略構成を備えている。次に、各部材の詳細な構成について、図4、図5および図6を用いつつ説明する。なお、実施形態の説明において、厚さ方向TKDの下流側(図4の上側)を「(厚さ方向TKDの)一方側」と称し、厚さ方向TKDの上流側(図4の下側)を「(厚さ方向TKDの)他方側」と称する。また、基板あるいは平板の一方側の面を表面と称し、基板あるいは平板の他方側の面を裏面と称することとする。
【0038】
図5は、厚さ方向TKDからヘッド基板293を平面視した部分平面図であり、厚さ方向TKDの下流側(図4の上側)からヘッド基板293の裏面293−tを透視した場合に相当する。図6は、第1実施形態でのラインヘッドのA−A線における階段断面図であり、該断面を長手方向LGD(主走査方向MD)から見た場合に相当する。
【0039】
図5では、ヘッド基板293に形成された発光素子グループEG、第1レンズアレイLA1に形成された第1レンズLS1a、LS1b、LS1c(図4では符号LS1で示されている)および第2レンズアレイLA2に形成された第2レンズLS2a、LS2b、LS2c(図4では符号LS2で示されている)の位置関係を示すために、第1レンズLS1a、LS1b、LS1cおよび第2レンズLS2a、LS2b、LS2cがそれぞれ一点鎖線で併記されている。ちなみに、第1レンズLS1a、LS1b、LS1cおよび第2レンズLS2a、LS2b、LS2cについての図中記載は、これらの位置関係を示すためのものであり、第1レンズLS1a、LS1b、LS1cおよび第2レンズLS2a、LS2b、LS2cがヘッド基板裏面293−t(図6)に形成されていることを示すものではない。
【0040】
ヘッド基板293は光を透過するガラス基板で構成されており、ヘッド基板裏面293−tではボトムエミッション型の有機EL(Electro-Luminescence)素子である発光素子Eが複数形成されるとともに、封止部材294により封止されている(図6)。これら複数の発光素子Eは、互いに同一の発光スペクトルを有しており、光ビームを感光体ドラム21表面へ向けて射出する。また、図5に示すように、ヘッド基板裏面293−tに形成された複数の発光素子Eの配置態様は、グループ構造を有している。つまり、15個の発光素子Eが長手方向LGDに2行千鳥で配置されて1個の発光素子グループEGが構成されており、さらに複数の発光素子グループEGが長手方向LGDに3行千鳥で離散的に配置されている。
【0041】
より詳しくは、この配置態様は次のように説明することができる。つまり、各発光素子グループEG内では、15個の発光素子Eが長手方向LGDの互いに異なる位置に配置されており、しかも長手方向LGDにおける位置が隣り合う2つの発光素子E、Eの長手方向LGDへの距離は素子間距離Pelとなっている(言い換えれば、各発光素子グループEG内では、15個の発光素子EがピッチPelで長手方向LGDに配置されている)。そして、素子間距離Pelよりも長いグループ間距離Pegを空けて複数の発光素子グループEGが長手方向LGDに沿って離散的に並んで、1行の発光素子グループ行GRa等が構成されている。さらに、3行の発光素子グループ行GRa、GRb、GRcが距離Dtだけ空けて幅方向LTDの異なる位置に離散的に配置されており、しかも、発光素子グループ行GRa、GRb、GRcのそれぞれは、長手方向LGDに距離Dgだけ相互にシフトされている。
【0042】
ここで、素子間距離Pelは、対象となる2個の発光素子Eの幾何重心間の長手方向LGDにおける距離として求めることができる。また、グループ間距離Pegは、対象となる2個の発光素子グループEGのうち、長手方向LGDの一方側の発光素子グループEGの他方側端部にある発光素子Eの幾何重心と、長手方向LGDの他方側の発光素子グループEGの一方側端部にある発光素子Eの幾何重心との長手方向LGDにおける距離として求めることができる。また、距離Dgは、長手方向LGDにおける位置が隣り合う2個の発光素子グループEGそれぞれの幾何重心間の長手方向LGDにおける距離として求めることができる。また、距離Dtは、幅方向LGDにおける位置が隣り合う2個の発光素子グループEGそれぞれの幾何重心間の幅方向LTDにおける距離として求めることができる。
【0043】
このようにヘッド基板293の裏面293−tには、複数の発光素子グループEGが離散的に配置されている。一方、ヘッド基板293の表面293−hは、ヘッドフレーム291の厚さ方向TKDの他方側に、当接した状態で接着材により固定されているとともに、ヘッドフレーム291内部に配置された遮光部材297に当接している。なお、遮光部材297の厚さ方向TKDの他方側は、ヘッド基板表面293−hに接着剤により固定されている。遮光部材297には厚さ方向TKDに貫通する導光孔2971が形成されており、この導光孔2971は厚さ方向TKDからの平面視において円形状を有しており、その内壁には黒色メッキが施されている。この導光孔2971は、発光素子グループEG毎に1個づつ形成されており、すなわち、1個の発光素子グループEGに対して1個の導光孔2971が開口している。こうして、遮光部材297は、導光孔2971を発光素子グループEGに開口させた状態でヘッド基板表面293−hに当接して固定されている。
【0044】
このような遮光部材297を設ける目的は、いわゆる迷光がレンズLS1、LS2に入射するのを抑制するためである。つまり、各発光素子グループEGには、レンズ対LS1、LS2の対からなる結像光学系がそれぞれ専用に設けられている。このような構成では、光ビームは、それ自身の射出源である発光素子グループEGに対応して設けられた結像光学系LS1、LS2にのみ入射して結像されることが望ましい。しかしながら、光ビームの一部には、その射出源である発光素子グループEGに設けられた結像光学系LS1、LS2に向わずに迷光となってしまうものもある。そして、このような迷光が、それ自身の射出源でない発光素子グループEGに対応して設けられた結像光学系LS1、LS2に入射してしまうと、いわゆるゴーストが発生してしまうおそれがある。これに対して、この実施形態では、発光素子グループEGと結像光学系LS1、LS2との間に遮光部材297が設けられている。この遮光部材297には、内壁に黒色メッキが施された導光孔2971が発光素子グループEGに開口して設けられている。したがって、迷光の多くは、導光孔2971の内壁で吸収されることとなる。その結果、先ほどのゴーストを抑制して、良好な露光動作の実現が図られる。
【0045】
遮光部材297の厚さ方向TKDの一方側では、略平板形状を有する第1レンズアレイLA1が、ヘッドフレーム291の幅方向LTDにおける両辺部291A、291Bに架設されている。この第1レンズアレイLA1の裏面には、第1レンズLS1(LS1a、LS1b、LS1c)が、各発光素子グループEGに対して1枚づつ形成されており、すなわち1個の発光素子グループEGに対して1枚の第1レンズLS1が対向している。こうして、第1レンズアレイLA1では、複数の第1レンズLS1が3行千鳥で並んでおり、換言すれば、主走査方向MD(長手方向LGD)における位置が隣り合う3枚の第1レンズLS1(LS1a、LS1b、LS1c)は、副走査方向SD(幅方向LTD)における位置が互いに異なる。そこで、図5、図6においては、第1レンズLS1を副走査方向SDの位置に応じて区別して記載している。つまり、副走査方向SDにおいて最上流にある第1レンズLS1に対しては符号LS1aが付され、副走査方向SDにおいて中央にある第1レンズLS1に対しては符号LS1bが付され、副走査方向SDにおいて最下流にある第1レンズLS1に対しては符号LS1cが付されている。
【0046】
さらに、この第1レンズアレイLA1の厚さ方向TKDの一方側では、略平板形状を有する第2レンズアレイLA2が、ヘッドフレーム291の幅方向LTDにおける両辺部291A、291Bに架設されている。この第2レンズアレイLA2の裏面には、第2レンズLS2(LS2a、LS2b、LS2c)が、各発光素子グループEGに対して1枚づつ形成されており、すなわち1個の発光素子グループEGに対して1枚の第2レンズLS2が対向している。こうして、第2レンズアレイLA2では、複数の第2レンズLS2が3行千鳥で並んでおり、換言すれば、主走査方向MD(長手方向LGD)における位置が隣り合う3枚の第2レンズLS2(LS2a、LS2b、LS2c)は、副走査方向SD(幅方向LTD)における位置が互いに異なる。そこで、図5、図6においては、第2レンズLS2を副走査方向SDの位置に応じて区別して記載している。つまり、副走査方向SDにおいて最上流にある第2レンズLS2に対しては符号LS2aが付され、副走査方向SDにおいて中央にある第2レンズLS2に対しては符号LS2bが付され、副走査方向SDにおいて最下流にある第2レンズLS2に対しては符号LS2cが付されている。
【0047】
なお、レンズアレイLA1、LA2は、いずれもガラス製の光透過性レンズアレイ基板SBを備えており、このレンズアレイ基板SBの裏面SB−tに樹脂製のレンズLS1、LS2が形成される。つまり、樹脂製の第1レンズLS1(LS1a、LS1b、LS1c)が、いずれも第1レンズアレイLA1の基板SBの裏面(同一平面)に形成される。また、樹脂製の第2レンズLS2(LS2a、LS2b、LS2c)が、いずれも第2レンズアレイLA2の基板SBの裏面(同一平面)に形成される。このようなレンズアレイLA1、LA2は従来から提案されている種々の方法で作成可能であり、例えば、金型を用いた方法で作成することができる。この方法では、レンズLS1、LS2の形状に応じた凹部を有する金型がレンズアレイ基板SBの裏面SB−tに当接した状態で、金型とレンズアレイ基板SBとの間に光硬化性樹脂が充填される。そして、光硬化性樹脂に光が照射されると、該樹脂が硬化して、レンズアレイ基板SBにレンズLS1、LS2が形成される。
【0048】
こうして、3個の結像光学系、すなわち、上流側結像光学系LS1a、LS2a、中央結像光学系LS1b、LS2bおよび下流側結像光学系LS1c、LS2cが、副走査方向SDに異なる位置に配設される。これら結像光学系LS1a、LS2a等それぞれの光軸OAa、OAb、OAcは互いに平行であり、図6等に示す光軸方向Doaを向いている。ここで、光軸方向Doaは、各光軸OAa、OAb、OAcに平行であって発光素子Eからの光が進行する方向を向く方向であり、上述した厚さ方向TKDに平行である。また、これら上流側結像光学系LS1a、LS2a、中央結像光学系LS1b、LS2bおよび下流側結像光学系LS1c、LS2cの副走査方向SDへの間隔は距離Llsで互いに等しい。ここで、結像光学系LS1a、LS2a等の間隔は、これらの光軸OAa、OAb、OAcの間の距離として求めることができる。
【0049】
そして、このように配設された、上流側結像光学系LS1a、LS2a、中央結像光学系LS1b、LS2bおよび下流側結像光学系LS1c、LS2cのそれぞれが、発光素子Eからの光を感光体ドラム21周面に収束させる。これらの結像光学系は、それぞれの光軸OAa、OAb、OAcと感光体ドラム21周面との交点ISa、ISb、IScの近傍に光を収束し(図6)、これによって、副走査方向SDに互いに異なる位置に収束光(スポットSP)が形成される。なお、本実施形態の結像光学系は、反転した縮小像を形成するものであり、その倍率は負であるとともに1未満の絶対値を有している。
【0050】
ところで、このような構成では、上流側結像光学系LS1a、LS2aによるスポットの位置(交点ISaの近傍)と、中央結像光学系LS1b、LS2bによるスポットの位置(交点ISbの近傍)とが、光軸方向Doaに距離diだけ互いにずれる。また同様に、下流側結像光学系LS1c、LS2cによるスポットの位置(交点IScの近傍)と、中央結像光学系LS1b、LS2bによるスポットの位置(交点ISbの近傍)とが、光軸方向Doaに距離diだけ互いにずれる。このような場合、上流側結像光学系LS1a、LS2aによるスポットと、中央結像光学系LS1b、LS2bによるスポットとで大きさが異なってしまう場合があった。また、同様に、下流側結像光学系LS1c、LS2cと中央結像光学系LS1b、LS2bとについても、スポットの大きさの差異が発生する場合があった。そこで、これに対応するために、上流側結像光学系LS1a、LS2aの結像位置と中央結像光学系LS1b、LS2bの結像位置とが光軸方向Doaに距離d(距離diに相当する距離)だけ互いにシフトしている(図7)。また、下流側結像光学系LS1c、LS2cと中央結像光学系LS1b、LS2bとも同様に構成されている。つまり、距離dだけ、結像位置をシフトさせることで、上述のスポットの大きさの差異を抑制しているのである。
【0051】
図7は、本発明の結像光学系の結像動作を説明する図であり、主走査方向MDから見た場合に相当する。ちなみに、下流側結像光学系の結像動作は上流側結像光学系の結像動作と同様であるので、同図では、下流側結像光学系の結像動作の記載が省略されている。また、同図では、結像位置近傍を拡大して示すために、結像光学系の記載は省略されており、結像光学系の光軸のみが示されている。
【0052】
また、上述したとおり、感光体ドラム21が真円でないこと、あいるは感光体ドラム21が回転中心に対して偏心していることに起因して、感光体ドラム21の周面位置が変動する場合がある。そこで、図7では、感光体ドラム21周面が位置21jと位置21kとの間を、感光体ドラム21の回転周期で往復移動する様子が破線で示されている。
【0053】
同図に示すように、上流側結像光学系LS1a、LS2aは、結像位置Pa1に波長λ1の光を結像するとともに、結像位置Pa1から光軸方向Doaに距離Δ1だけ離れた結像位置Pa2に波長λ2の光を結像する。これにより、上流側結像光学系LS1a、LS2aの焦点深度が見かけ上拡大したような作用が得られる。そして、距離Δ1は、上流側結像光学系LS1a、LS2aの光軸OAa上での感光体ドラム21周面の変動幅h1以上である。こうして、感光体ドラム21周面は、その位置変動に依らず、常に結像位置Pa1と結像位置Pa2との間に存在する。したがって、感光体ドラム21周面の位置変動によらず、上流側結像光学系LS1a、LS2aによるスポットの大きさの変動を抑制して、良好な露光が実現可能となっている。
【0054】
また、中央結像光学系LS1b、LS2bは、結像位置Pb1に波長λ1の光を結像するとともに、結像位置Pb1から光軸方向に距離Δ2だけ離れた結像位置Pb2に波長λ2の光を結像する。これにより、中央結像光学系LS1b、LS2bの焦点深度が見かけ上拡大したような作用が得られる。そして、距離Δ2は、中央結像光学系LS1b、LS2bの光軸OAb上での感光体ドラム21周面の変動幅h2以上である。こうして、感光体ドラム21周面は、その位置変動に依らず、常に結像位置Pb1と結像位置Pb2との間に存在する。したがって、感光体ドラム21周面の位置変動によらず、中央結像光学系LS1b、LS2bによるスポットの大きさの変動を抑制して、良好な露光が実現可能となっている。
【0055】
ちなみに、感光体ドラム21周面の位置変動は、感光体の振れデータとして求めることができる。図8は、感光体の振れデータを極座標で示した図である。この振れデータは次のようにして求めることができる。まず、感光体ドラム21周面に距離センサーを対向させた状態で、感光体ドラム21を回転させる。この距離センサーは周知のものを使用することができる。こうして、感光体ドラム21周面と距離センサーとの距離(ドラム・センサー間距離)を、感光体ドラム21の1周分について取得して、メモリーに記憶する。そして、ドラム・センサー間距離の変動量(つまり、各角度でのドラム・センサー間距離と、ドラム・センサー間距離の最小値との差分)をプロットすることで、図8に示す感光体振れデータを求めることができる。そして、図8のデータの最大値が変動幅となる。
【0056】
また、第1実施形態では、発光素子Eは、波長λ1および波長λ2でピークを持つ発光スペクトルを有している。これにより、上述した見かけ上の焦点深度拡大の作用が効果的に奏されて、より良好な露光が実現可能となっている。
【0057】
B−2.第2実施形態
ところで、第1実施形態では、波長λ1の光の結像位置と波長λ2の光の結像位置との光軸方向Doaへの距離Δ1、Δ2を、感光体ドラム21周面の変動幅h1、h2以上とすることで、スポットSPの大きさの変動を抑制できるという利点を備えるものである。しかしながら、かかる距離Δ1、Δ2を余りに大きくすると、スポットの収差が大きくなって結像性能が悪くなるため、露光ムラや解像力の低下を招く場合がある。そこで、第2実施形態では、第1実施形態と同様の構成を備えた上で、さらに次のような構成を備える。なお、第2実施形態は、第1実施形態と共通する構成を備えることで、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができることは言うまでも無い。
【0058】
図9は、第2実施形態でのラインヘッドのA−A線における階段断面図であり、該断面を長手方向LGD(主走査方向MD)から見た場合に相当する。図9に示すように、第2実施形態のラインヘッドは、第1レンズアレイLA1と遮光部材297との間に絞り平板295が設けられており、この絞り平板295には、各結像光学系に対して開口絞りAa(Ab、Ac)が形成されている。したがって、結像光学系LS1a、LS2a等に入射する光量は、開口絞りAaにより制限される。そして、第2実施形態では、この開口絞りAa等を設けた上で、次のような光学的構成を備える。
【0059】
図10は、第2実施形態が備える光学的構成を説明するための図である。波長λ1(第1の波長)の光の結像面IP1における、第2の波長λ2の光の収差の影響が、像面での発光素子像の大きさ程度になると、解像度の低下が顕著となる。したがって、精細な画像形成を実現しようとするような場合には、かかる解像度の低下を抑制することが望ましい。そこで、第2実施形態の各結像光学系では、主走査方向MDへの発光素子Eの直径Dと、主走査方向MDへの結像光学系の横倍率mと、像点から入射瞳の直径に張る角の半分の角である像側開口角uとが、関係式
Δ≦|m|×D/tan(u) …式1
を満たしている。なお、式1では、距離Δ1、Δ2を距離Δとして表記している。このように構成することで、収差等の結像性能への影響を抑制して、より良好な露光を行なうことが可能となっている。
【0060】
なお、結像面は光軸OAに直交する方向であり、図10では、波長λ1の光の結像面IP1の他に波長λ2の光の結像面IP2が併記されている。
【0061】
B−3.第3実施形態
図11は、第3実施形態でのラインヘッドの構成を示す図であり、主走査方向MDから見た場合に相当する。第3実施形態と第1実施形態との主な差異点は、中央結像光学系LS1b、LS2bの光軸OAbが、感光体ドラム21の曲率中心CT21から外れている点である。その結果、距離Ba、Bb、Bcの大小関係が、Ba>Bc>Bb(距離Baが最大で、距離Bbが最小)となっている。ここで、距離Baは上流側結像光学系の光軸OAaと曲率中心CT21との距離であり、距離Bbは中央結像光学系の光軸OAbと曲率中心CT21との距離であり、距離Bcは下流側結像光学系の光軸OAcと曲率中心CT21との距離である。
【0062】
このような構成では、曲率中心CT21と光軸との距離が最も近い結像光学系と最も遠い結像光学系との間で、上記結像位置間距離d(図11では符号dmx)が比較的大きくなる。しかしながら、あまりにこの距離dmxが大きいと、曲率中心CT21と光軸との距離が最も近い結像光学系と最も遠い結像光学系とで光学的な構成を大きく変える必要があるが、このような光学的構成で所望の結像性能を得るのは簡単ではない。特に、上述したような、上流側・中央・下流側のレンズLSが一体的に形成されたレンズアレイLA1、LA2を使うためには、レンズ面の位置を大きく変えることは難しく、距離dmxが大きくなるほど光学設計で良好な結像性能を得るのが困難となる。
【0063】
これに対して、第3実施形態のラインヘッド29は、(2N+1)の結像光学系(Nは1以上の整数であり、第3実施形態ではN=1)が副走査方向SDに等間隔Llsで配設され、曲率中心CT21からの距離が最短の結像光学系LS1b、LS2bが、(2N+1)の結像光学系の端から(N+1)番目に位置している。これにより、距離dmxが小さく抑えられるため、簡便に所望の結像特性を得ることが可能となる。
【0064】
B−4.第4実施形態
図12は、第4実施形態でのラインヘッドの構成を示す図であり、主走査方向MDから見た場合に相当する。第4実施形態と第1実施形態との主な差異点は、レンズアレイLA1、LA2でレンズが4行千鳥で配置されている点であり、このような配置の結果、図12に示すように、4個の結像光学系(つまり、結像光学系LS1a、LS2a、結像光学系LS1b、LS2b、結像光学系LS1c、LS2cおよび結像光学系LS1d、LS2d)が、副走査方向SDに等間隔Llsで配設されている。
【0065】
同図に示すように、第4実施形態では、距離Ba、Bb、Bc、Bdの大小関係が、Bd>Ba>Bc>Bb(距離Bdが最大で、距離Bbが最小)となっている。ここで、距離Baは結像光学系LS1a、LS2aの光軸OAaと曲率中心CT21との距離であり、距離Bbは結像光学系LS1b、LS2bの光軸OAbと曲率中心CT21との距離であり、距離Bcは結像光学系LS1c、LS2cの光軸OAcと曲率中心CT21との距離であり、距離Bdは結像光学系LS1d、LS2dの光軸OAdと曲率中心CT21との距離である。
【0066】
そして、第3実施形態で説明した通り、このような構成では、曲率中心CT21と光軸との距離が最も近い結像光学系と最も遠い結像光学系との間では、上記結像位置間距離d(図11では符号dmx)が比較的大きくなる。しかしながら、あまりにこの距離dmxが大きいと、曲率中心CT21と光軸との距離が最も近い結像光学系と最も遠い結像光学系とで光学的な構成をを大きく変える必要があるが、このような光学的構成で所望の結像性能を得るのは簡単ではない。
【0067】
これに対して、第4実施形態のラインヘッド29は、(2N+2)の結像光学系(Nは1以上の整数であり、第4実施形態ではN=1)が副走査方向SDに等間隔Llsで配設され、曲率中心CT21からの距離が最小の結像光学系LS1b、LS2bが(2N+2)の結像光学系の端から(N+1)番目あるいは(N+2)番目に位置している。これにより、距離dmxが小さく抑えられるため、簡便に所望の結像特性を得ることが可能となる。
【0068】
C.その他
以上のように、上記実施形態では、ラインヘッド29が本発明の「露光ヘッド」に相当し、感光体ドラム21が本発明の「像担持体」に相当し、光軸方向Doaが本発明の「第1の方向」に相当している。また、「収束光の大きさの変動の発生原因と対策」の欄での説明では、発光素子Eαが本発明の「第1の発光素子」に相当し、波長λα1が本発明の「波長λ11」に相当し、波長λα2が本発明の「波長λ12」に相当し、結像光学系OSαが本発明の「第1の結像光学系」に相当し、結像位置Pα1が本発明の「結像位置P11」に相当し、結像位置Pα2が本発明の「結像位置P12」に相当する。また、上記第1実施形態では、上流側結像光学系LSa1、LSa2を本発明の「第1の結像光学系」とすると、中央決像光学系LSb1、LSb2が本発明の「第2の結像光学系」に相当する。
【0069】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。図13は、本発明にかかる画像形成装置の変形例を示す図である。この変形例が第1実施形態と大きく相違する点は、感光体の態様である。すなわち、この変形例では、感光体ドラム21の代わりに感光体ベルト21Bが用いられている。なお、その他の構成は上記実施形態と同様であるため、同一構成については同一または相当符号を付して構成説明を省略する。
【0070】
この実施形態では、主走査方向MDに伸びる2本のローラー28に感光体ベルト21Bが張架されている。この感光体ベルト21Bは図示を省略する駆動モータによって所定の回転方向D21に回転移動される。また、この感光体ベルト21Bの周囲には、回転方向D21に沿って帯電部23、ラインヘッド29、現像部25および感光体クリーナー27が配設されている。そして、これらの機能部によって帯電動作、潜像形成動作及びトナー現像動作が実行される。
【0071】
この実施形態では、ラインヘッド29は、感光体ベルト21Bのローラー28への巻き掛け部に対して対向配置されている。ローラー28は円筒形である。したがって、感光体ベルト21Bの巻き掛け部は有限の曲率を有する。このようにラインヘッド29を巻き掛け部に対して対向配置する理由は、次の通りである。つまり、感光体ベルト21Bの張り面は、ローラー28への巻き掛け部と比較してばたつきが大きい。そこで、感光体ベルト21Bの表面のうち比較的ばたつきが少ないローラー28への巻き掛け部にラインヘッド29を対向配置することで、ラインヘッド29と感光体ベルト21Bの表面との距離を安定化させている。ただし、ローラー28が真円でないこと、あいるはローラー28が回転中心に対して偏心していることに起因して、感光体ベルト21bの表面位置が変動する場合がある。このような場合には、ラインヘッド29に対して本発明を適用することが好適である。
【0072】
図14は、本発明にかかる画像形成装置の別の変形例を示す図である。この別の変形例が第1実施形態と大きく相違する点は、中間転写ベルト81を用いない点である。すなわち、この実施形態では、感光体ドラム21に形成されたトナー像が、転写ローラー85によって直接シートに転写された後、定着器13によって定着される。ただし、感光体ドラム21が真円でないこと、あいるは感光体ドラム21が回転中心に対して偏心していることに起因して、感光体ドラム21の周面位置が変動する場合がある。このような場合には、ラインヘッド29に対して本発明を適用することが好適である。
【0073】
また、上記実施形態では、波長λ1、λ2での発光素子のピーク強度については特に触れなかった。しかしながら、波長λ1、λ2でのピーク強度が、発光スペクトルの最大値の半分よりも強いように構成しても良い。これにより、焦点深度拡大の作用がより効果的に奏される。
【0074】
また、上記実施形態の結像光学系は、反転した縮小像を形成するものであり、その倍率は負であるとともに1未満の絶対値を有していたが、結像光学系の倍率はこれに限られず、正であっても良く、1以上の絶対値を有していても良い。
【0075】
また、上記実施形態では、各レンズアレイLA1、LA2において3行千鳥あるいは4行千鳥でレンズが並んでいたが、レンズの配置態様はこれに限られない。
【0076】
また、上記第3・第4実施形態では、整数Nが1の場合について説明したが、整数Nは1に限られず、2以上であっても良い。
【0077】
また、上記実施形態では、各結像光学系は副走査方向SDに等間隔Llsで配置されていたが、結像光学系の配置間隔は等間隔でなくても良い。
【0078】
また、上記実施形態では、レンズアレイLA1、LA2の裏面にレンズLS1、LS2が形成されていた。しかしながら、例えば、レンズアレイLA1、LA2の表面にレンズLS1、LS2が形成されても良い。
【0079】
また、上記実施形態では、レンズアレイLA1、LA2ガラス製の光透過性基板SB1、SB2に樹脂製のレンズLSa1、LSa2等を形成したものであった。しかしながら、レンズアレイLA1、LA2を1つの材料で一体的に構成することもできる。
【0080】
また、上記第1実施形態では、複数の発光素子グループEGは3行千鳥で配置されていたが、複数の発光素子グループEGの配置態様はこれに限られない。
【0081】
また、上記実施形態では、15個の発光素子Eから発光素子グループEGが構成されている。しかしながら、発光素子グループEGを構成する発光素子Eの個数はこれに限られない。
【0082】
また、上記実施形態では、発光素子グループEG内において、複数の発光素子Eが2行千鳥で配置されていたが、発光素子グループEG内での複数の発光素子Eの配置態様はこれに限られない。
【0083】
また、上記実施形態では、発光素子Eとしてボトムエミッション型の有機EL素子が用いられている。しかしながら、トップエミッション型の有機EL素子を発光素子Eとして用いても良く、あるいは有機EL素子以外のLED(Light Emitting Diode)等を発光素子Eとして用いても良い。
【0084】
また、上記実施形態では、波長λ1、λ2にピークを持つ発光スペクトルを有する発光素子Eが用いられた。しかしながら、波長λ1、λ2にピークを持つことは必須ではなく、要は、波長λ1の光および波長λ2の光を射出する発光素子Eを用いることで、焦点深度拡大を図ることが可能となる。
【実施例】
【0085】
次に本発明の実施例を示すが、本発明はもとより下記の実施例によって制限を受けるものではなく、前後記の趣旨に適合しうる範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0086】
以下では、第2実施形態で図9等を用いて示したような、副走査方向SDに異なる位置に3個の結像光学系を配設したラインヘッドに適用される、より具体的な実施例について説明する。図15は、実施例の上流側・下流側結像光学系のレンズデータを表として示す図である。図16は、上流側・下流側結像光学系のS4面の面形状を示すデータをまとめた図である。図17は、上流側・下流側結像光学系のS7面の面形状を示すデータをまとめた図である。図18は、実施例の中央結像光学系のレンズデータを表として示す図である。図19は、中央結像光学系のS4面の面形状を示すデータをまとめた図である。図20は、中央結像光学系のS7面の面形状を示すデータをまとめた図である。
【0087】
この実施例では、中央結像光学系LS2b、LS1bの光軸OAbは感光体ドラム21の曲率中心CT21を通り(図9)、感光体ドラム21の曲率半径Rは39[mm](感光体径φ78[mm])であり、感光体ドラム21周面の変動幅は約25[μm]である(図8)。また、結像光学形間距離Llsは、1.77[mm]である(図9)。さらに、レンズ射出面S9と像面S10との距離を上流側・下流側結像光学系と中央結像光学系とで40[μm]異ならせており、距離d≒40[μm]となっている。
【0088】
図21は、主走査方向断面における上流側・下流側結像光学系の光線図を示した図である。図22は、副走査方向断面における上流側・下流側結像光学系の光線図を示した図である。図23は、図21および図22の光線図を求める際に用いた光学系諸元を表として示す図である。この図23に示すように、物体側画素グループ主方向全幅(図21の幅Wm)を0.885[mm]、物体側画素グループ副方向全幅(図22のWs)を0.150[mm]、発光素子の直径Dを28.6[μm]、物体側開口角(半角)を12.6[°]、像側開口角u(半角)を17.6[°]、結像光学系の倍率mを−0.7056として、図21および図22の光線図は求められた。
【0089】
図15〜図17のレンズデータおよび図21、図22の光線図に示すように、上流側・下流側結像光学系は2枚のレンズで構成されている。そして、これら2枚のレンズは、アッベ数の小さな(νd=30)レンズ材料(樹脂)で構成されており、その結果、上流側・下流側結像光学系は比較的大きな色収差を有する。そして、2つの波長(波長λ1、λ2)でピークを持った発光スペクトルを有する発光素子からの光を、この色収差の大きな結像光学系によって結像する。これにより、図21中の拡大図に示すように、光軸方向に距離Δだけ離れた2つの結像位置P1、P2にそれぞれの波長の光が結像される。
【0090】
図24および図25は、2波長(波長λ1、λ2)の光それぞれの結像位置をシミュレーションで求めた結果を示す図である。具体的には、図24では、実施例にかかる結像光学系によって波長λ1=610[nm]の光をスポットとして収束させた場合のスポット径(同図グラフの破線曲線)と、実施例にかかる結像光学系によって波長λ2=670[nm]の光をスポットとして収束させた場合のスポット径(同図グラフの実線の曲線)とが併記されている。また、図25では、実施例にかかる結像光学系によって波長λ1=565[nm]の光をスポットとして収束させた場合のスポット径(同図グラフの破線の曲線)と、実施例にかかる結像光学系によって波長λ2=715[nm]の光をスポットとして収束させた場合のスポット径(同図グラフの実線の曲線)とが併記されている。なお、同図とも、横軸にピントずれ[μm]が、縦軸にスポット径[μm]が示されている。つまり、スポットSPの形成位置の光軸方向への変位量(ピントずれ)に対する、スポットSPの径(主走査方向への径)の変動を、これらの図は表している。そして、各曲線の極小位置が該曲線に対応する波長の光の結像位置に相当する。
【0091】
図24に示すように、波長λ1(=610[nm])の結像位置と波長λ2(=670[nm])の結像位置とは、光軸方向Doaに距離30[μm]だけシフトしている。すなわち、波長610[nm]と波長670[nm]の2波長成分の光を発光する光源を採用することで、これらの結像位置間の距離Δが30[μm]となり、これに対応して結像光学系の焦点深度が見かけ上拡大するといった作用が得られる。また、図25に示すように、波長λ1(=565[nm])の結像位置と波長λ2(=715[nm])の結像位置とは、光軸方向Doaに距離60[μm]だけシフトしている。すなわち、波長565[nm]と波長715[nm]の2波長成分の光を発光する光源を採用することで、これらの結像位置間の距離Δが60[μm]となり、これに対応して結像光学系の焦点深度が見かけ上拡大するといった作用が得られる。
【0092】
図26および図27は、結像光学系の焦点深度拡大の様子をシミュレーションで求めた結果を示す図である。同図とも、横軸にピントずれ[μm]が、縦軸にスポット径[μm]が示されている。つまり、スポットSPの形成位置の光軸方向への変位量(ピントずれ)に対する、スポットSPの径(主走査方向への径)の変動を、これらの図は表している。また、図26では、610[nm]と670[nm]の2波長成分を有する光を結像して形成されるスポットと、640[nm]の単一波長の光を結像して形成されるスポットとが比較して示されており、図27では、565[nm]と715[nm]の2波長成分を有する光を結像して形成されるスポットと、640[nm]の単一波長の光を結像して形成されるスポットとが比較して示されている。
【0093】
波長610[nm]の光の結像位置と波長670[nm]の光の結像位置は、光軸方向に30[μm](=距離Δ)ずれるため、図26に示すように、単一波長640[nm]の光を結像した場合と比べて、2波長成分を有する光を結像した場合の方が、スポットSPの変動が小さく、焦点深度が見かけ上拡大されているのが判る。
【0094】
また、同様に、波長565[nm]の光の結像位置と波長715[nm]の光の結像位置は、光軸方向に60[μm](=距離Δ)ずれるため、図27に示すように、単一波長640[nm]の光を結像した場合と比べて、2波長成分を有する光を結像した場合の方が、スポットSPの変動が小さく、焦点深度が見かけ上拡大されているのが判る。
【0095】
しかも、図26、図27(図24、図25)のいずれにおいても、結像位置間の距離Δ(=30[μm]、60μ[μm])は両方とも感光体ドラム21周面の変動幅(=25[μm])以上である。したがって、感光体ドラム21周面の位置変動によらず、スポットの大きさの変動を抑制して、良好な露光を行なうことが可能となっている。
【0096】
さらには、この距離Δは、上記式1も満たしており、収差等の結像性能への影響を抑制して、より良好な露光を行なうことが可能となっている。つまり、式1の右辺は、
|−0.7056|×28.6μm/tan(17.6°)=63.6μm
であり、図26、図27(図24、図25)で示した結像位置間の距離Δ(=30[μm]、60[μm])はいずれも63.6[μm]より短い。
【0097】
なお、中央結像光学系に対しても、上流側・下流側結像光学系と同様に、見かけ上の焦点深度が拡大されているとともに式1を満たすように構成されており、上流側・下流側結像光学系の効果と相当する効果を奏する。
【符号の説明】
【0098】
21…感光体ドラム、 29…ラインヘッド、 E,Eα,Eβ…発光素子、 OSα,OSβ…結像光学系、 OAα,OAβ…光軸、 Doa…光軸方向、 Doa…光軸方向(第1の方向)、SD…副走査方向、 MD…主走査方向、 CT,CT21…曲率中心、 Pα1,Pα2,Pβ1,Pβ2…結像位置、 ISα,ISβ…交点、 Δ,Δα,Δβ…距離、 d,dmx…距離、 LS1a,LS2a…レンズ(結像光学系)、 LS1b,LS2b…レンズ(結像光学系)、 LS1c,LS2c…レンズ(結像光学系)、 LS1d,LS2d…レンズ(結像光学系)、 Aa,Ab,Ac…開口絞り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長λ11の光および波長λ12の光を発光する第1の発光素子と、第1の方向に光軸を向けて配設されて前記第1の発光素子からの光を前記第1の方向に射出して収束させる第1の結像光学系と、を有する露光ヘッドと、
前記露光ヘッドの前記第1の方向に配設された像担持体と、
を備え、
前記第1の結像光学系は、結像位置P11に前記波長λ11の光を結像するとともに、前記結像位置P11に対して前記第1の方向に距離Δ1離れた結像位置P12に前記波長λ12の光を結像し、
前記距離Δ1は、前記第1の結像光学系の光軸上での前記像担持体の表面の変動幅以上であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1の発光素子は、前記波長λ11および前記波長λ12でピークを持つ発光スペクトルを有する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1の結像光学系に設けられた第1の開口絞りを備え、前記第1の発光素子の径Dと、前記第1の結像光学系の倍率mと、前記第1の結像光学系について像点から入射瞳の径に張る角の半分の角である像側開口角uとが、関係式
Δ1≦|m|×D/tan(u)
を満たす請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記露光ヘッドは、波長λ21の光および波長λ22の光を発光する第2の発光素子と、前記第1の方向に光軸を向けて配設されて前記第2の発光素子からの光を前記第1の方向に射出して収束させる第2の結像光学系とを有し、
前記第2の結像光学系は、結像位置P21に前記波長λ21の光を結像するとともに、前記結像位置P21に対して前記第1の方向に距離Δ2離れた結像位置P22に前記波長λ22の光を結像し、
前記距離Δ2は、前記第2の結像光学系の光軸上での前記像担持体の表面の変動幅以上である請求項1ないし3のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1の結像光学系の光軸が前記像担持体に交わる交点IS1と前記第2の結像光学系の光軸が前記像担持体に交わる交点IS2との前記第1の方向への距離dだけ、前記結像位置P11と前記結像位置P21が前記第1の方向に離れている請求項4記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1の結像光学系および前記第2の結像光学系を含む3以上の結像光学系が、光軸を前記第1の方向に向けて配設されて、
前記第1の結像光学系および前記第2の結像光学系のうちの一方の光軸が前記3以上の結像光学系のなかで前記像担持体の曲率中心から最も近く、前記第1の結像光学系および前記第2の結像光学系のうちの前記一方とは異なる他方の光軸が前記3以上の結像光学系のなかで前記像担持体の曲率中心から最も遠い請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記第1の結像光学系および前記第2の結像光学系を含む(2N+2)の結像光学系(Nは1以上の整数)が間隔をおいて配設され、
前記第1の結像光学系および前記第2の結像光学系のうちの前記一方は、前記(2N+2)の結像光学系の端から(N+1)番目あるいは(N+2)番目に位置する請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記第1の結像光学系および前記第2の結像光学系を含む(2N+1)の結像光学系(Nは1以上の整数)が間隔をおいて配設され、
前記第1の結像光学系および前記第2の結像光学系のうちの前記一方は、前記(2N+1)の結像光学系の端から(N+1)番目に位置する請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項9】
波長λ11の光および波長λ12の光を発光する第1の発光素子と、
第1の方向に光軸を向けて配設されて前記第1の発光素子からの光を前記第1の方向に射出して被露光面に収束させる第1の結像光学系と、
を備え、
前記第1の結像光学系は、結像位置P11に前記波長λ11の光を結像するとともに、前記結像位置P11に対して前記第1の方向に距離Δ1離れた結像位置P12に前記波長λ12の光を結像し、
前記距離Δ1は、前記第1の結像光学系の光軸上での前記被露光面の変動幅以上であることを特徴とする露光ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2011−863(P2011−863A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147863(P2009−147863)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】