説明

露光条件切替ユニットおよびカメラユニット

【課題】外形寸法を小さくすることができると共に、光軸方向の寸法の大幅な短縮を図ることのできる露光条件切替ユニットを提供する。
【解決手段】光路2を形成する開口部12、32を有し、光路の前後にレンズユニットと撮像素子ユニットが装着される平面視略正方形のケースと、光路に対して抜き差しされることで、レンズから撮像素子に入射する露光の条件を切り替えるフィルタ50と、フィルタを駆動するアクチュエータ100と、アクチュエータとフィルタを連携する回動レバー70とを具備し、フィルタはケースの第1角部K1の支持ピン21に回動可能に取り付けられ、アクチュエータは第1角部の隣りの第2角部K2に配設され、回動レバーは、第2角部と対角の位置にある第3角部K3の支持ピン22に回動可能に取り付けられ、回動レバーの中心部に、ケース内部に挿入されるレンズユニットのレンズ部との干渉を避けるための逃げ穴74が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ用の露光条件切替ユニット、および、その露光条件切替ユニットを主要部として構成したカメラユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ノートパソコンや携帯電話あるいは車両や監視用機器などに、小型のカメラユニット(スチルカメラやビデオカメラユニット)が広く搭載されるようになってきており、それらのカメラユニットに、フィルタを抜き差しすることで露光条件を切り替える露光条件切替ユニットが装備されることも多くなってきた。
【0003】
例えば、特許文献1に、ケースに、露光用の光路を横切る方向に回動自在にフィルタを組み付けると共に、そのフィルタを駆動するための揺動式のアクチュエータを組み込んだ露光条件切替ユニットが開示されている。この露光条件切替ユニットでは、フィルタの回動支点とアクチュエータを、平面視四角形のケースの対角の位置に配置することで、簡素な構成での小型化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−92866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、アクチュエータをフィルタの回動支点と対角の位置に配置した場合、フィルタを動かす機構は簡素にできるものの、フィルタとアクチュエータの取り合いに応じた配置スペース上の関係から、対角方向のケース寸法が大きくなってしまい、ケースの外形サイズの小型化に限界が生じやすくなる。また、フィルタの動作を大きくして、大きな有効径の光路に対応できるようにするためには、アクチュエータの揺動角度を大きくしたり、揺動半径を大きくしたりしなくてはならず、それによっても、ケースの外形が大きくなってしまいやすいという問題がある。
【0006】
また、フィルタの動作を大きくするためにアクチュエータの揺動アームの長さを大きくすると、それだけ揺動アームとの干渉を避ける領域を広く確保しなくてはならず、コンパクトな設計をする上での制限が生じる問題があった。
【0007】
また一方で、フィルタをレンズと撮像素子の間で抜き差しする際に、レンズと撮像素子を非常に近接させて配置し、そのレンズと撮像素子の間の僅かな隙間でフィルタを動作させることで、カメラユニットの光軸方向の寸法をできるだけ小さく制限したいという要望が出てくるようになってきたが、従来の構造のままであると、対応が非常に難しいという問題があった。
【0008】
本発明は、上記事情を考慮し、外形寸法を小さくすることができると共に、レンズユニットや撮像素子ユニットと組み合わせてカメラユニットを構成した場合に、光軸方向の寸法の大幅な短縮を図ることのできる露光条件切替ユニット、および、その露光条件切替ユニットを主要部として含むカメラユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための構成は以下の通りである。
(1) 外光の入射する前後方向に貫通した光路を中心部に形成するための開口部を備えると共に、前後方向から見た外形が第1〜第4の4つの角部を持つ略正方形状に形成され、前面側にレンズ部を持つレンズユニットが装着されると共に、後面側に撮像素子を持つ撮像素子ユニットが装着されるケースと、
該ケースの内部に移動自在に設けられ、前記光路に対して抜き差しされることで、前記レンズ部から前記光路を通して前記撮像素子に入射する露光の条件を切り替えるフィルタと、
該フィルタを駆動するために前記ケースの内部に収容された揺動式のアクチュエータと、
該アクチュエータの揺動出力を前記フィルタに伝えるために前記ケースの内部に収容された中間伝達部材とを具備し、
前記フィルタは、前記ケースの第1角部に配された第1回動支点に基端が支持されることで、該第1回動支点を中心に前記光路を横切る方向に回動可能に設けられ、
前記アクチュエータは、前記フィルタの回動方向と平行な面内で揺動する揺動アームを有し、前記ケースの第1角部に隣接する第2角部に配設され、
前記中間伝達部材は、前記アクチュエータの揺動アームの揺動出力端と前記フィルタとの間に連結され、前記光路が形成される前記ケースの中心部分の所定領域を逃げるように設けられていることを特徴とする露光条件切替ユニット。
(2) 上記(1)の構成において、
前記中間伝達部材が、前記ケースの第2角部と対角の位置にある第3角部に配された第2回動支点に基端が支持されることで、該第2回動支点を中心に前記フィルタの回動方向および前記揺動アームの揺動方向と平行な面内で回動する回動レバーにより構成され、
該回動レバーの先端と前記アクチュエータの揺動アームの揺動出力端との間に、前記アクチュエータの揺動運動を前記回動レバーの回動運動として伝える、長孔と該長孔にスライド自在に係合するピンとの組よりなる第1係合手段が設けられ、
前記回動レバーの基端と先端との中間部分と前記フィルタの基端に近い部分との間に、前記回動レバーの回動運動をフィルタの回動運動として伝える、長孔と該長孔にスライド自在に係合するピンとの組よりなる第2係合手段が設けられていることを特徴とする露光条件切替ユニット。
(3) 上記(2)の構成において、
前記回動レバーが、当該回動レバーの基端と先端の間の中間部に、前記ケースの内部に挿入される前記レンズ部との干渉を避けるための逃げ穴を持つ略環状の板体として形成されていることを特徴とする露光条件切替ユニット。
(4) 上記(1)〜(3)のいずれかの構成において、
前記アクチュエータが、
後端側にマグネットを収容したマグネットホルダ部を有すると共に先端側に揺動出力端を有し、前記ケースの第2角部に配された第3回動支点に支持されて、該第3回動支点を中心に前記光路と直交する面内で揺動可能に支持された前記揺動アームと、
該揺動アームが挿通され、通電により発生する磁力により、前記マグネットとの間に駆動力を生じさせて、前記揺動レバーを揺動させる空芯コイルと、からなり、
前記空芯コイルは、予め定められた基準平面内で巻回されることで、一方の一対の対向辺が他方の一対の対向辺よりも長いロ字状のコイルとして形成され、且つ、長い方の一対の対向辺がその長さ方向の中間点を屈曲点として前記基準平面に垂直な方向にへ字状に曲げられた形状をなし、前記長い方の一対の対向辺を前記揺動アームの揺動面に沿わせた状態で配置されると共に、前記光路と直交し且つ前記ケースの中心部に向かう方向に貫通方向および前記長い方の一対の対向辺の凸側を向けた姿勢で前記ケースに固定されており、
また、前記空芯コイルの長い方の一対の対向辺の凹側に前記第3回動支点が配置され、該第3回動支点が、前記ケースの前後方向における内面と該ケースの内面に対向する前記揺動アームのマグネットホルダ部の外面との一方に設けた凹部と他方に設けた凸部を嵌合させることにより構成されていることを特徴とする露光条件切替ユニット。
(5) 上記(4)の構成において、
前記空芯コイルへの非通電時に、前記揺動アームを、前記マグネットとの間に発生する磁力によって定位置に保持する保持手段が設けられていることを特徴とする露光条件切替ユニット。
(6) 上記(5)の構成において、
前記ケースが、
中央部分に前記光路を形成するための前記開口部を有した平面視略正方形状をなし、下面側に前記撮像素子を搭載した撮像素子ユニットが固定される下部ベースと、
中央部分に前記レンズユニットのレンズ部の挿入可能な前記開口部を有し、前記下部ベースの上面を覆った状態で、該下部ベースに固定される上部カバーと、から構成され、
前記下部ベースの上面に、前記フィルタの回動支点である前記第1回動支点を構成する凸部または凹部と、前記回動レバーの回動支点である前記第2回動支点を構成する凸部または凹部と、前記揺動アームの回動支点である第3回動支点を構成する凸部または凹部とが設けられていることを特徴とする露光条件切替ユニット。
(7) 上記(1)〜(6)のいずれかの構成において、
前記フィルタの代わりに、前記開口部の開度を調整する絞り部材またはシャッタ部材を設けたことを特徴とする露光条件切替ユニット。
(8) 上記(1)〜(7)のいずれかの露光条件切替ユニットの前記ケースの後面側に前記撮像素子を搭載した撮像素子ユニットを固定し、露光条件切替ユニットの前記ケースの前面側に前記レンズユニットを配置し、該レンズユニットに一体形成してある枠部の内周を、前記露光条件切替ユニットのケースの外周に嵌めることで、前記レンズユニットと撮像素子ユニットと露光条件切替ユニットとを一体化していなることを特徴とするカメラユニット。
【発明の効果】
【0010】
上記(1)の構成の露光条件切替ユニットによれば、平面視略正方形状のケースの第1角部にフィルタの回動支点(第1回動支点)を配し、フィルタをその回動支点を中心に回動させることにより、光路に対してフィルタを抜き差しさせるようにしているので、外形サイズが制限されたケースの内部で、フィルタを大きく動作させることができ、有効径の大きな光路の露光条件を当該フィルタの抜き差し動作によって切り替えることができる。
また、第1角部に隣接する第2角部にフィルタの駆動手段であるアクチュエータを配置しているので(つまり、第1角部と対角の位置である第4角部ではなく、第1角部と隣接する第2角部にアクチュエータを配置しているので)、外形サイズが制限されたケースの内部の比較的余裕を持った空間を利用しながらアクチュエータを配置することができ、それだけケースの小型化に貢献することができる。
つまり、第1角部と対角の位置にある第4角部にアクチュエータを配置した場合は、第1角部の回動支点(第1回動支点)に支持されたフィルタとの取り合いに応じたアクチュエータの配置スペース上の関係から、第1角部と第4角部を結ぶ対角線方向のケース寸法が大きくなる可能性があり、ケースの外形サイズの小型化に制限が生じやすくなるが、本発明では、第1角部に対し、対角の位置である第4角部ではなく、隣接する位置である第2角部にアクチュエータを配置しているので、ケースの外形寸法の小型化が図れる。しかも、ケースの中央部ではなく、角部にアクチュエータを配置しているので、ケースの中心部分にアクチュエータに邪魔されない空きスペースを確保することができる。
また、アクチュエータの動作を中間伝達部材を介してフィルタに伝えるようにしているので、アクチュエータとフィルタの配置関係に拘わらず(つまり、フィルタの回動支点とアクチュエータが隣り合う角部に配置されているにも拘わらず)、アクチュエータの動きを無理なく有効にフィルタに伝えることができる。また、フィルタとアクチュエータの間に中間伝達部材が介在するので、それだけ外力(外的ショック)が加わった際にフィルタが不用意に動きにくくなる。
また、中間伝達部材を、光路が形成されるケースの中心部分を避けるように設けている
ので、ケースの中心部分に、アクチュエータばかりでなく中間伝達部材によっても邪魔されない空きスペースを確保することができる。従って、この空きスペースに、レンズユニットのレンズ部を挿入することによって、レンズ部と撮像素子の距離をできるだけ小さく設定することができ、そのレンズ部と撮像素子の間の小さな隙間においてフィルタを抜き差しすることができるようになる。その結果、撮像素子からレンズユニットまでの光軸方向の寸法をできるだけ小さくすることができ、外形寸法ばかりでなく、高さ寸法(厚さ)も小さい、コンパクトなカメラユニットを構成することが可能になる。
上記(2)の構成の露光条件切替ユニットによれば、中間伝達部材として、アクチュエータの揺動出力を受けて回動する回動式の回動レバーを設け、その回動レバーの回動によりフィルタを回動させるようにしているので、フィルタとアクチュエータの揺動出力端とを単純にリンク等で結ぶ場合と比べて、フィルタの動きを安定させることができる。また、回動レバーの回動支点(第2回動支点)を、アクチュエータの配置された第2角部と対角の位置にある第3角部に配しているので、回動支点とアクチュエータにより力が加えられる力点(先端)との間の距離を大きくとることができる。従って、アクチュエータが弱い力の場合にも、回動レバーをスムーズに回動させることができる。また、回動レバーの基端(回動支点の存在する部分)と先端(アクチュエータからの力が加わる部分)の中間部分と、フィルタの基端に近い部分との間に、回動レバーからの力をフィルタに伝える第2係合手段を設けているので、無理なくスムーズにアクチュエータからの力を回動レバーを介してフィルタに伝えることができ、アクチュエータの負担を小さくすることができる。また、回動レバーの回動支点を第3角部に配置しているので、外形サイズが制限されたケースの内部の中心部分(光路が形成される部分)に、回動レバーの回動支点に邪魔されない空きスペースを確保することに貢献できる。
上記(3)の構成の露光条件切替ユニットによれば、回動レバーの基端と先端の間の中間部に逃げ穴を設け、その逃げ穴によって、ケースの内部に挿入されるレンズ部との干渉を避けるようにしており、それにより、回動レバーを強度的に無理のない形状である略環状の板体として構成しているので、回動レバーの強度を維持(環状に連続していることで十分な強度が保てる)しながら、ケースの中心部分(光路が形成される部分)に、回動レバーの回動支点に邪魔されない空きスペースを確保することに貢献できる。従って、この空きスペースに、レンズユニットのレンズ部を挿入することによって、レンズ部と撮像素子の距離をできるだけ小さく設定することができ、そのレンズ部と撮像素子の間の小さな隙間においてフィルタを抜き差しすることができるようになる。その結果、撮像素子からレンズユニットまでの高さ(距離)をできるだけ小さく設定することができ、外形寸法ばかりでなく、高さ寸法(厚さ)も小さい、コンパクトなカメラユニットを構成することが可能になる。
上記(4)の構成の露光条件切替ユニットによれば、へ字状に曲げた空芯コイルの中に揺動アームを挿入し、空芯コイルの凹側に揺動アームの回動支点を配置しているので、揺動アームの回動支点を空芯コイルの外側に配置しながら、コイルの両側(短い対向辺部分)をマグネットに近く配置できることから、空芯コイルで発生する磁力をマグネットに効果的に及ぼすようにすることができる。従って、コイルをボビンに巻き付けて、ボビンの内側に揺動アームの回動支点を設ける場合と違って、アクチュエータの動作性能を維持しながら、ボビンレスにすることによって、空芯コイルを、高さ(短い対向辺の長さ)の小さな扁平なロ字状に形成することができ、それにより、アクチュエータの全高の低減を図ることができて、ケースの薄型化に貢献することができる。
上記(5)の構成の露光条件切替ユニットによれば、空芯コイルへの非通電時にも揺動アームを定位置に保持しておくことができるので、非通電時のフィルタの無用の動きを止めることができる。特に、保持手段(例えば、マグネットとの間に磁気力を発生する磁性片や磁石など)を設ける位置によって、揺動アームが両端のいずれに振れたときにも、その位置に揺動アームを保持できるようにすることができるので、フィルタを切り替えた後で通電を停止することにより、外的ショックが作用するような使用状況であっても、自動的に切り替えた位置にフィルタを確実に保持しておくことができる。
上記(6)の構成の露光条件切替ユニットによれば、ケースを、下部ベースと、その上面を覆う上部カバーにより構成し、下部ベースの上面にフィルタや回動レバーならびに揺動アームの各回動支点を構成するための凹部または凸部を設けているので、それら凹部または凸部にフィルタや回動レバーならびに揺動アームを組み付けた上で、上部カバーを被せるだけで、簡単に露光条件切替ユニットを構成することができる。
上記(7)の構成の露光条件切替ユニットによれば、フィルタの代わりに絞り部材やシャッタ部材を設けたので、上記の作用とは別に、絞り機能やシャッタ機能を発揮させることができる。
上記(8)の構成のカメラユニットによれば、レンズユニットに形成してある枠部の内周を露光条件切替ユニットのケースの外周に嵌めることで一体に組み立てているので、レンズユニットと露光条件切替ユニットと撮像素子ユニットの一体性を高めることができると共に、露光条件切替ユニットや撮像素子ユニットを目立たなくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態の露光条件切替ユニットの内部構成を示す斜視図である。
【図2】実施形態の露光条件切替ユニットとレンズユニットの関係を下から見て示す図で、フィルタがON(差し込み)位置にある時の状態を示す斜視図である。
【図3】実施形態の露光条件切替ユニットとレンズユニットの関係を下から見て示す図で、フィルタがOFF(非差し込み)位置にある時の状態を示す斜視図である。
【図4】実施形態の露光条件切替ユニットの前面側にレンズユニットを装着し、後面側に撮像素子ユニットを装着して構成したカメラユニットの断面図である。
【図5】前記露光条件切替ユニットの内部構成を示す図で、フィルタがON(差し込み)位置にある時の状態を示す平面図である。
【図6】図5において、回動レバーを取り除いた状態を示す平面図である。
【図7】前記露光条件切替ユニットの内部構成を示す図で、フィルタがOFF(非差し込み)位置にある時の状態を示す平面図である。
【図8】図7において、回動レバーを取り除いた状態を示す平面図である。
【図9】前記露光条件切替ユニットの構成要素の1つである下部ベースの構成を示す斜視図である。
【図10】前記露光条件切替ユニットの構成要素の1つであるフィルタの構成を示す分解斜視図である。
【図11】前記露光条件切替ユニットの構成要素の1つである回動レバーの構成を示す斜視図である。
【図12】(a)は前記露光条件切替ユニットの構成要素の1つである空芯コイルの構成を示す斜視図、(b)は平面図である。
【図13】前記露光条件切替ユニットの構成要素の1つである揺動アームの構成を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は実施形態の露光条件切替ユニットの内部構成を示す斜視図、図2は同露光条件切替ユニットとレンズユニットの関係を下から見て示す図で、フィルタがON(差し込み)位置にある時の状態を示す斜視図、図3はフィルタがOFF(非差し込み)位置にある時の状態を示す図2と同様の斜視図、図4は露光条件切替ユニットの前面側にレンズユニットを装着し後面側に撮像素子ユニットを装着して構成したカメラユニットの断面図、図5は露光条件切替ユニットの内部構成を示す図で、フィルタがON(差し込み)位置にある時の状態を示す平面図、図6は図5の回動レバーを取り除いた状態を示す平面図、図7はフィルタがOFF(非差し込み)位置にある時の状態を示す図5と同様の平面図、図8は図7の回動レバーを取り除いた状態を示す平面図である。また、図9は露光条件切替ユニットの構成要素の1つである下部ベースの構成を示す斜視図、図10はフィルタの構成を
示す分解斜視図、図11は回動レバーの構成を示す斜視図、図12の(a)はアクチュエータの空芯コイルの構成を示す斜視図、(b)は平面図、図13は揺動アームの構成を示す分解斜視図である。
【0013】
図1〜図4に示すように、この実施形態の露光条件切替ユニット1は、まず、筐体であるケース7と、そのケース7の内部に収容されたフィルタ50と、このフィルタ50を駆動するための揺動式のアクチュエータ100と、アクチュエータ100の揺動出力をフィルタ50に伝えるための回動レバー(中間伝達部材)70とからなる。ケース7は、下部ベース10と上部カバー30とを合体することで形成されている。
【0014】
ケース7(下部ベース10および上部カバー30)は、外光の入射する前後方向(図1〜図4では上下方向として示してある)に貫通した光路2を中心部に形成するための開口部12、32を備え、前後方向から見た外形が、第1〜第4の4つの角部K1〜K4を持つ略正方形状に形成されている。そして、図2〜図4に示すように、レンズユニット200および撮像素子ユニット300と共にカメラユニットを構成する場合には、前面側(図1〜図4の上側)の上部カバー30に、レンズ部202を持つレンズユニット200が装着されると共に、後面側(図1〜図4の下側)の下部ベース10の底面に、撮像素子310を持つ撮像素子ユニット300が装着される。
【0015】
光路2は、図5〜図8に示すように、ケース7の中心部に確保された所定断面積を持つ領域であり、レンズユニット200のレンズ部202を通った外光が撮像素子310に入射する光の経路である。ここでは、主にレンズ部202の形状から、仮想的に円形の光路2が確保されている。この光路2の中心が光軸LCであり、この光軸LCは正方形状のケース7の中心に一致している。
【0016】
この場合のレンズユニット200は、図2〜図4に示すように、正方形ドーム形の枠部201の中心部にレンズ部202を一体に形成した透光性樹脂の成形体よりなるもので、レンズ部202は、ドーム形の枠部201の頂面に相当する球面状の外側レンズ面214と、レンズユニット200を撮像素子ユニット300と共に露光条件切替ユニット1に装着したときに、撮像素子310の受光面に対面する内側レンズ面215とを有している。内側レンズ面215は、枠部201の内面側に突出した階段状の円柱部210の端面中央に形成されている。
【0017】
この階段状の円柱部210は、レンズユニット200を露光条件切替ユニット1に装着したときに一番撮像素子310側となる小径の第1円柱部211と、その上の中径の第2円柱部212と、その上の大径の第3円柱部213とからなり、小径の第1円柱部211の下端の、内側レンズ面215の周囲の環状部210Tが、撮像素子310に最接近する部分となっている(以下、この環状部210Tを単に「レンズ部202の最下端210T」という)。従って、このレンズ部202の最下端210Tと撮像素子310の僅かな隙間においてフィルタ50を駆動しなければならない。
【0018】
下部ベース10は、図9に詳細を示すように、平面視略正方形状の枠部11の中央部分に、光路を形成するための開口部12を確保したものであり、下面側に撮像素子ユニット300の撮像素子310を位置決めする矩形の嵌合部11Aが設けられている。この下部ベース10の上面には、第1角部K1に位置させて、フィルタ50を回動自在に支持するための支持ピン21(第1回動支点を構成する凸部)が立設され、第1角部K1に隣接する第2角部K2にはアクチュエータ取付部13が設けられ、第2角部K2と対角の位置にある第3角部K3には、回動レバー70を回動自在に支持するための支持ピン22(第2回動支点を構成する凸部)が立設されている。
【0019】
アクチュエータ取付部13には、後述する揺動アーム80を回動自在に支持する支持凹部14(第3回動支点を構成する凹部)が設けられ、その支持凹部14よりも下部ベース10の中心側の位置にはコイル取付部15が設けられている。また、コイル取付部15よりも下部ベース10の中心側の位置には、支持凹部14から下部ベース10の中心を見た場合に左右対称となるように揺動アーム80の移動範囲を制限するストッパピン17が設けられている。また、支持凹部14の背後(下部ベース10の第2角部K2の先端側の位置)には、非通電時に揺動アーム80を定位置に保持するための保持手段の機能を果たす磁性片96(図1参照)の取付部16が設けられている。また、枠部11の周縁部の適当箇所には、上部カバー30(図1参照)を被せたときに上部カバー30に周縁部にロックして、上部カバー30が外れないようにするロック爪18が設けられている。また、下部ベース10の上面には、支持ピン21を中心にしてフィルタ50が回動するときに、フィルタ50との間の摺動摩擦を軽減してフィルタ50の動きをスムーズにするための摺動レール23が円弧状に設けられている。
【0020】
また、この下部ベース10の上面を覆った状態で下部ベース10に固定される上部カバー30は、図1に示すように、平面視略正方形状の板体31の中央部に円形の開口部32を有している。この円形の開口部32は、レンズユニット200のレンズ部202の階段状の円柱部210のうち中径の円柱部212が挿入される部分であり、該円柱部212よりやや大きめのサイズに形成されている。また、この上部カバー30の内面側には、下部ベース10側の支持ピン21、22や支持凹部14あるいはコイル取付部15に対応させて、図示しない凹部や凸部などが設けられている。そして、下部カバー10上にフィルタ50、回動レバー70、アクチュエータ100などを組み付けた上で、その上に上部カバー30を適正位置に被せて固定することにより、下部ベース10と上部カバー30で構成されるケース7の内部に、フィルタ50や回動レバー70やアクチュエータ100などの部品が所定の機能を発揮できる状態で収容されている。
【0021】
次にフィルタ50、回動レバー70、アクチュエータ100の構成について説明する。
フィルタ50は、ケース7の内部に収容され、光路2に対して抜き差しされることで、レンズ部202から光路2を通して撮像素子310に入射する露光の条件を切り替えるものであり、ケース7の第1角部K1に配された支持ピン(第1回動支点を構成する凸部)21に基端52(図10)が支持されることで、支持ピン21を中心に光路2を横切る方向(図1中矢印R3方向)に回動可能に設けられている。
【0022】
図10に示すように、フィルタ50は、剛性を確保するための相応の肉厚を有する略帯板状のフィルタ枠51と、そのフィルタ枠51に取り付けられた赤外光カット特性等を持つ透明ガラス板製あるいは透明樹脂板製のフィルタ板(フィルタ本体)65と、フィルタ板65をフィルタ枠51に脱落止めする小片状の止め板69とからなるものである。フィルタ枠51の基端52には、下部ベース10の支持ピン21に嵌まるピン挿入孔53(第1回動支点を構成する凹部)が形成され、フィルタ枠51の基端52と先端54の中間領域には、長方形状のフィルタ板65を組み付けるための略長方形の凹所55が形成されている。
【0023】
この凹所55の長手方向の両側には、フィルタ板65を載せる受部56が形成され、凹所55の長手方向の一端にはフィルタ板65の端縁を差し込み係合させる係合爪58が形成され、凹所55の長手方向の他端には、フィルタ板65を凹所55に嵌め込んだ上で止め板69を装着して抜け止めする止め板装着部59が設けられている。
【0024】
この場合、フィルタ板65を嵌め込む凹所55は、フィルタ枠51の幅方向の一側に肉厚部を残し、他側を肉薄状に切り欠くことで形成されており、肉厚部は平面視略C字状に残され、特にレンズ部202の最下端210Tと干渉する可能性のある部分には、干渉を
避けるための円弧状の切欠61が設けられている。また、凹所55の底部の受部56は、凹所55の長手方向の両側にだけ設けられており、それら受部56の中間部には、光路を確保するための開口部57が設けられている。この開口部57は、片側の側部が開放し、反対側の側部がフィルタ枠51で閉じられており、帯板状のフィルタ枠51を側方から切り欠いた形になっている。
【0025】
また、フィルタ枠51の基端52のピン挿入孔53とフィルタ枠51の先端54の間のうち、基端52に近い位置の上面には、回動レバー70と係合するための係合ピン60が突設されている。
【0026】
このフィルタ70を組み立てる場合は、フィルタ板65の長手方向の一端を、一方の受部56に載せながら係合爪58の下側に差し込んで係合させ、フィルタ枠65の他端を他方の受部56に載せ、その状態で止め板69を止め板装着部59に装着する。そうすることで、フィルタ板65の長手方向の両端をフィルタ枠51に固定することができ、組立品のフィルタ50を得ることができる。このように構成されたフィルタ50は、基端52のピン挿入孔53(凹部)を、下部ベース10の支持ピン21(凸部)に嵌め込むことで、下部ベース10上に支持ピン21を中心に回動できるように設けられている。この場合、支持ピン21とピン挿入孔53の組み合わせにより第1回動支点が構成されている。
【0027】
次に回動レバー70は、アクチュエータ100の揺動アーム80の揺動出力端(後述する揺動アーム80の先端の駆動ピン86)とフィルタ50との間に連結され、ケース7の第2角部K2と対角の位置にある第3角部K3に配された支持ピン22(第2回動支点を構成する凸部)に基端71が支持されることで、支持ピン22を中心にフィルタ50の回動方向(図1中矢印R3方向)および揺動アーム80の揺動方向(図1中矢印R1方向)と平行な面内で、図1中矢印R2方向に回動するように設けられている。
【0028】
また、図11に示すように、回動レバー70は、基端71と先端75の間の中間部に、ケース7の内部に挿入されるレンズ部202の最下端210Tとの干渉を避けるための逃げ穴74を持つ略環状の板体として形成され、基端71に、下部ベース10の第3角部K3にある支持ピン22に嵌まるピン挿入孔72(凹部)を有し、先端75に、揺動アーム80の駆動ピン86とスライド係合する第1の長孔76を有し、基端71と先端75の中間に、フィルタ50の係合ピン60とスライド係合する第2の長孔78を有している。そして、図5〜図8に示すように、フィルタ50の係合ピン60に第2の長孔78がスライド自在に係合することにより、回動レバー70の回動運動をフィルタ50の回動運動として伝える第2の係合手段が構成されている。
【0029】
また、回動レバー70の先端には、アクチュエータ100の揺動範囲を規定するストッパピン17に当たる凸部75Aが設けられている。この凸部75Aが、揺動アーム80が一方に振れたときに一方のストッパピン17に当たり、揺動アーム80が他方に振れたときに他方のストッパピン17に当たることで、揺動アーム80の移動範囲や回動レバー70の移動範囲が規定される。
【0030】
次にアクチュエータ100は、図5〜図8に示すように、ケース7の第1角部K1に隣接する第2角部K2に配設されており、フィルタ50の回動方向(図1中矢印R3)および回動レバー70の回動方向(図1中矢印R2)と平行な面内で揺動する揺動アーム80と、揺動アーム80が挿入された空芯コイル90とから構成されている。
【0031】
揺動アーム80は、図13に示すように、後端側に直方体ボックス形のマグネットホルダ部81を有し、先端側にアーム部85を延ばした樹脂成形品よりなるアーム本体80Aと、マグネットホルダ部81の収容室82内に挿入されたネオジム磁石等のマグネット8
8とからなる。アーム部85の先端には、回動レバー70に駆動力を伝える駆動ピン86(揺動出力端)が下向きに突設されている。また、マグネットホルダ部81に収容されたマグネット88は、アーム部85を延ばした方向と直交する左右方向(揺動アーム0の揺動方向)の両端に磁極(N極とS極)を持つもので、収容室82の入口にある爪部84により抜け止めされている。
【0032】
マグネットホルダ部81の上壁と下壁の外面には、互いに同軸にそれぞれ回動ピン83が突設されており、これらの回動ピン83を、図9に示すように下部ベース10の上面に形成した支持凹部14と、上部カバー30の下面(内面)に形成した支持凹部(不図示)に嵌めることにより、揺動アーム80が揺動自在に支持されており、回動ピン83と支持凹部14の組み合わせにより、揺動アーム80の第3回動支点が構成されている。
【0033】
空芯コイル90は、図12に示すように、予め定められた基準平面(後述するXY平面)内で巻回されることで、一方の一対の対向辺91(以下、「長辺部」という)が他方の一対の対向辺92(以下、「短辺部」という)よりも長いロ字状のコイルとして形成され、且つ、長い方の一対の対向辺(長辺部)91が、その長さ方向の中間点XCを屈曲点として、基準平面に垂直な方向にへ字状に曲げられた形状をなしている。
【0034】
具体的には、例えば、第1の方向をX方向、第2の方向をX方向と直交するY方向、第3の方向をX方向およびY方向と直交するZ方向とした場合、まず、X方向に長辺部91、Y方向に短辺部92が平行となるように、XY平面を基準平面としてコイルが巻されており(初期の形状を90Aで示す)、次に長辺部91の長さ方向の中間点XCを屈曲点として、その両側(短辺部92側)がZ方向に曲げられることで、一対の長辺部91がへ字状に曲げられている。つまり、空芯コイル90の貫通方向(Z方向)の幅寸法の初期の中心線をL1とすると、中間点XCの両側の中心線L2が、元の中心線L1に対して、角度θ(例えば、15°くらい)を持つように長辺部91がへ字状に曲げられている。
【0035】
そして、このように曲げられた空芯コイル90が、図1および図5〜図8に示すように、長辺部91を揺動アーム80の揺動面に沿わせた状態で、ケース10のコイル取付部15に配置されると共に、光路2と直交し且つケース7の中心部に向かう方向に貫通方向および長辺部91の凸側を向けた姿勢でケース7に固定されており、空芯コイル90の外側の長辺部91の凹み側(凹側)に、第3回動支点である回動ピン83および支持凹部14が位置している。
【0036】
また、空芯コイル90を貫通してケース7の中心方向に延びる揺動アーム80のアーム部85の先端の駆動ピン86は、回動レバー70の先端の第1の長孔76にスライド自在に係合しており、これら駆動ピン86と長孔76の組により、アクチュエータ100の揺動アーム80の揺動運動を回動レバー70の回動運動として伝える第1係合手段が構成されている。
【0037】
また、揺動アーム80のマグネットホルダ部81の背後に位置する磁性片取付部16には、空芯コイル90への非通電時に、揺動アーム80を、マグネット88との間に発生する磁力によって定位置に保持する磁性片(保持手段)96が取り付けられている。
【0038】
このように構成された露光条件切替ユニット1は、ケース7の後面側に撮像素子310を搭載した撮像素子ユニット300を固定し、ケース7の前面側にレンズユニット200を配置して、レンズユニット200に一体形成してある枠部201の内周を、露光条件切替ユニット1のケース7の外周に嵌めることにより、カメラユニットを構成することができる。そして、カメラユニットを組み立てた状態では、図4に示すように、レンズユニット200のレンズ部202の最下端210Tが、上部ケース30の円形の開口部32およ
び回動レバー70の逃げ穴74を通して、ケース7の内部のフィルタ板65のごく近くまで挿入されることになり、それにより、内側レンズ面215と撮像素子310が非常に近い位置で対面し、内側レンズ面215と撮像素子310の間の僅かの隙間で、フィルタ板65が光路2に対して抜き差しされるようになる。
【0039】
次に作用を述べる。
まず、空芯コイル90に一方の方向で電流を流すと、図5および図6に示すように、空芯コイル90によって生成される磁力とマグネット88の磁力との協働作用により、アクチュエータ100の揺動アーム80が図中矢印R1A方向に揺動する。揺動アーム80が揺動すると、駆動ピン86と長孔76の作用により、回動レバー70が図中矢印R2A方向に回動し、回動レバー70が回動すると、係合ピン60と長孔78の作用により、フィルタ50が図中矢印R3A方向に回動する。そして、この動きによってフィルタ50のフィルタ板65が光路2に差し込まれることにより、フィルタ板65を通した露光が撮像素子310(図4参照)に入射する。
【0040】
反対に、空芯コイル90に他方の方向で電流を流すと、図7および図8に示すように、アクチュエータ100の揺動アーム80が図中矢印R1B方向に揺動する。揺動アーム80が揺動すると、駆動ピン86と長孔76の作用により、回動レバー70が図中矢印R2B方向に回動し、回動レバー70が回動すると、係合ピン60と長孔78の作用により、フィルタ50が図中矢印R3B方向に回動する。そして、この動きによってフィルタ50のフィルタ板65が光路2から外されることにより、フィルタ板65を介しない露光が撮像素子310に入射する。
【0041】
また、フィルタ50をいずれかの揺動端に切り替えて、その状態で空芯コイル90への通電を切った場合は、磁性片96に対してマグネット88のいずれかの磁極(N極またはS極)が近接することになるので、磁性片96とマグネット88の間に発生する磁気吸引力により、揺動アーム80をそのままの位置に保持することができる。
【0042】
以上の構成の実施形態の露光条件切替ユニット1では、平面視略正方形状のケース7の第1角部K1にフィルタ50の回動支点(第1回動支点:支持ピン21およびピン挿入孔53)を配し、フィルタ50をその回動支点を中心に回動させることにより、光路2に対してフィルタ50を抜き差しさせるようにしているので、外形サイズが制限されたケース7の内部で、フィルタ50を大きく動作させることができ、有効径の大きな光路2の露光条件を当該フィルタ50の抜き差し動作によって切り替えることができる。
【0043】
また、第1角部K1に隣接する第2角部K2にフィルタ50の駆動手段であるアクチュエータ100を配置しているので(つまり、第1角部K1と対角の位置である第4角部K4ではなく、第1角部K1と隣接する第2角部K2にアクチュエータ100を配置しているので)、外形サイズが制限されたケース7の内部の比較的余裕を持った空間を利用しながらアクチュエータ100を配置することができ、それだけケース7の小型化に貢献することができる。
【0044】
つまり、第1角部K1と対角の位置にある第4角部K4にアクチュエータ100を配置した場合は、第1角部K1の回動支点(第1回動支点:支持ピン21およびピン挿入孔53)に支持されたフィルタ50との取り合いに応じたアクチュエータ100の配置スペース上の関係から、第1角部K1と第4角部K4を結ぶ対角線方向のケース寸法が大きくなる可能性があり、ケース7の外形サイズの小型化に制限が生じやすくなるが、本実施形態の露光条件切替ユニット1では、第1角部K1に対し、対角の位置である第4角部K4ではなく、隣接する位置である第2角部K2にアクチュエータ100を配置しているので、ケース7の外形寸法の小型化が図れる。しかも、ケース7の中央部ではなく、角部にアク
チュエータ100を配置しているので、ケース7の中心部分にアクチュエータ100に邪魔されない空きスペースを確保することができる。
【0045】
また、アクチュエータ100の動作を中間伝達部材である回動レバー70を介してフィルタ50に伝えるようにしているので、アクチュエータ100とフィルタ50の配置関係に拘わらず〔つまり、フィルタ50の回動支点(第1回動支点:支持ピン21およびピン挿入孔53)とアクチュエータ100が隣り合う角部に配置されているにも拘わらず〕、アクチュエータ100の動きを無理なく有効にフィルタ50に伝えることができる。また、フィルタ50とアクチュエータ100の間に中間伝達部材である回動レバー70が介在するので、それだけ外力(外的ショック)が加わった際にフィルタ50が不用意に動きにくくなる。
【0046】
また、回動レバー70を、光路2が形成されるケースの7中心部分を避けるように設けているので、ケース7の中心部分に、アクチュエータ100ばかりでなく回動レバー70によっても邪魔されない空きスペースを確保することができる。従って、この空きスペースに、図4に示すように、レンズユニット200のレンズ部202の最下端210Tを挿入することによって、レンズ部202の内側レンズ面215と撮像素子310の距離をできるだけ小さく設定することができ、その内側レンズ面210Tと撮像素子310の間の小さな隙間においてフィルタ50を抜き差しすることができるようになる。その結果、撮像素子310からレンズユニット200までの光軸方向の寸法をできるだけ小さくすることができ、外形寸法ばかりでなく、高さ寸法(厚さ)も小さい、コンパクトなカメラユニットを構成することが可能になる。
【0047】
また、中間伝達部材が、アクチュエータ100の揺動出力を受けて回動する回動式の回動レバー70であるから、フィルタ50とアクチュエータ100の揺動出力端とを単純にリンク等で結ぶ場合と比べて、フィルタ50の動きを安定させることができる。
【0048】
また、回動レバー70の回動支点(第2回動支点:支持ピン22およびピン挿入孔72)を、アクチュエータ100の配置された第2角部K2と対角の位置にある第3角部K3に配しているので、回動支点(第2回動支点:支持ピン22およびピン挿入孔72)とアクチュエータ100により力が加えられる力点(先端75)との間の距離を大きくとることができる。従って、アクチュエータ100が弱い力の場合にも、回動レバー70をスムーズに回動させることができる。
【0049】
また、回動レバー70の基端71(回動支点の存在する部分)と先端75(アクチュエータからの力が加わる部分)の中間部分と、フィルタ50の基端に近い部分との間に、回動レバー70からの力をフィルタ50に伝える第2係合手段(係合ピン60および長孔78)を設けているので、無理なくスムーズにアクチュエータ100からの力を回動レバー70を介してフィルタ50に伝えることができ、アクチュエータ100の負担を小さくすることができる。また、回動レバー70の回動支点(第2回動支点:支持ピン22およびピン挿入孔72)を第3角部K3に配置しているので、外形サイズが制限されたケース7の内部の中心部分(光路2が形成される部分)に、回動レバー70の回動支点(第2回動支点:支持ピン22およびピン挿入孔72)に邪魔されない空きスペースを確保することに貢献できる。
【0050】
また、本実施形態の露光条件切替ユニット1では、回動レバー70の基端71と先端75の間の中間部に逃げ穴74を設け、その逃げ穴74によって、ケース7の内部に挿入されるレンズ部202の円柱部210との干渉を避けるようにしており、それにより、回動レバー70を無理のない形状である略環状の板体として構成しているので、回動レバー70の強度を維持(環状に連続していることで十分な強度が保てる)しながら、ケース7の
中心部分(光路2が形成される部分)に、回動レバー70の回動支点(第2回動支点:支持ピン22およびピン挿入孔72)に邪魔されない空きスペースを確保することに貢献できる。
【0051】
また、本実施形態の露光条件切替ユニット1では、へ字状に曲げた空芯コイル90の中に揺動アーム80を挿入し、空芯コイル90の凹側に揺動アーム80の回動支点(第3回動支点:回動ピン83および支持凹部14)を配置しているので、揺動アーム80の回動支点(第3回動支点:回動ピン83および支持凹部14)を空芯コイル90の外側に配置しながら、コイル90の両側(短辺部92)をマグネット88に近く配置でき、そのことで、空芯コイル90で発生する磁力をマグネット88に効果的に及ぼすようにすることができる。従って、コイルをボビンに巻き付けて、ボビンの内側に揺動アームの回動支点を設ける場合と違って、アクチュエータ100の動作性能を維持しながら、ボビンレスにすることによって、空芯コイル90を高さ(短辺部92の長さ)の小さな扁平なロ字状に形成することができ、それにより、アクチュエータ100の全高の低減を図ることができて、ケース7の薄型化に貢献することができる。
【0052】
また、磁性片96の働きにより、空芯コイル90への非通電時にも揺動アーム80を定位置に保持しておくことができるので、非通電時のフィルタ50の無用の動きを止めることができる。特に、揺動アーム80が両端のいずれに振れたときにも、その位置に揺動アーム80を保持することができるので、フィルタ50を切り替えた後で通電を停止することにより、外的ショックが作用するような使用状況であっても、自動的に切り替えた位置にフィルタ50を確実に保持しておくことができる。
【0053】
また、ケース7を、下部ベース10と、その上面を覆う上部カバー30により構成し、下部ベース10の上面にフィルタ50や回動レバー70ならびに揺動アーム80の各回動支点を構成するための凹部または凸部を設けているので、それら凹部または凸部にフィルタ50や回動レバー70ならびに揺動アーム80を組み付けた上で、上部カバー30を被せるだけで、簡単に露光条件切替ユニット1を構成することができる。
【0054】
また、上記のように構成したカメラユニットによれば、レンズユニット200に形成してある枠部201の内周を露光条件切替ユニット1のケース7の外周に嵌めることで一体に組み立てるようにしているので、レンズユニット200と露光条件切替ユニット1と撮像素子ユニット300の一体性を高めることができると共に、露光条件切替ユニット1や撮像素子ユニット300を目立たなくすることができる。
【0055】
なお、上記実施形態では、フィルタ50や回動レバー70側にピン挿入孔53、72を設け、下部ベース10側に支持ピン21、22を設けたが、反対に設けてもよい。即ち、フィルタ50や回動レバー70側にピン(凸部)を設け、下部ベース10側にピン支持孔(凹部)を設けてもよい。
【0056】
揺動アーム80の回動支点(第3回動支点:回動ピン83および支持凹部14)の場合も同様で、ピン(凸部)をケース7側に設け、揺動アーム80側にピンの嵌まる凹部を設けてもよい。
【0057】
また、上記実施形態の露光条件切替ユニット1の場合、フィルタ50の切り替えを行う場合について述べたが、フィルタ50の代わりに、絞り部材やシャッタ部材を設けることも可能である。このように、フィルタの代わりに絞り部材やシャッタ部材を設けた場合は、絞り機能やシャッタ機能を発揮させることができる。
【0058】
また、上記実施形態では、回動レバー70を、中心部に逃げ穴74を有する環状の板体
として形成した場合を示したが、光路2が形成されるケース7の中心部分の所定領域を逃げるように回動レバーの形状を決めれば、必ずしも実施形態のものに限定されるものではない。
【0059】
また、上記実施形態では、中間伝達部材を、基端を中心に回動する回動レバー70で構成した場合を示したが、両端を揺動アーム80の揺動出力端とフィルタ50とに連結したリンクで中間伝達部材を構成することも可能である。その場合も、光路2が形成されるケース7の中心部分の所定領域を逃げるようにリンクを配設すればよい。
【符号の説明】
【0060】
1 露光条件切替ユニット
2 光路
7 ケース
10 下部ベース
12 開口部
14 支持凹部(揺動アームの回動支点、第3回動支点)
21 支点ピン(フィルタの回動支点、第1回動支点、凸部)
22 支持ピン(回動レバーの回動支点、第2回動支点、凸部)
30 上部カバー
32 開口部
50 フィルタ
52 基端
53 ピン挿入孔(フィルタの回動支点、第1回動支点、凹部)
54 先端
60 係合ピン(第2係合手段)
70 回動レバー(中間伝達部材)
71 基端
72 ピン挿入孔(回動レバーの回動支点、第2回動支点、凹部)
74 逃げ穴(レンズ部との干渉を避ける)
75 先端
76 長孔(第1係合手段)
78 長孔(第2係合手段)
80 揺動アーム
81 マグネットホルダ部
83 回動ピン(揺動アームの揺動支点、第3回動支点、凸部)
86 駆動ピン(第1係合手段)
88 マグネット
90 空芯コイル
91 長辺部
92 短辺部
100 アクチュエータ
200 レンズユニット
201 枠部
202 レンズ部
210 階段状の円柱部
210T 環状部、最下端
300 撮像素子ユニット
310 撮像素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外光の入射する前後方向に貫通した光路を中心部に形成するための開口部を備えると共に、前後方向から見た外形が第1〜第4の4つの角部を持つ略正方形状に形成され、前面側にレンズ部を持つレンズユニットが装着されると共に、後面側に撮像素子を持つ撮像素子ユニットが装着されるケースと、
該ケースの内部に移動自在に設けられ、前記光路に対して抜き差しされることで、前記レンズ部から前記光路を通して前記撮像素子に入射する露光の条件を切り替えるフィルタと、
該フィルタを駆動するために前記ケースの内部に収容された揺動式のアクチュエータと、
該アクチュエータの揺動出力を前記フィルタに伝えるために前記ケースの内部に収容された中間伝達部材とを具備し、
前記フィルタは、前記ケースの第1角部に配された第1回動支点に基端が支持されることで、該第1回動支点を中心に前記光路を横切る方向に回動可能に設けられ、
前記アクチュエータは、前記フィルタの回動方向と平行な面内で揺動する揺動アームを有し、前記ケースの第1角部に隣接する第2角部に配設され、
前記中間伝達部材は、前記アクチュエータの揺動アームの揺動出力端と前記フィルタとの間に連結され、前記光路が形成される前記ケースの中心部分の所定領域を逃げるように設けられていることを特徴とする露光条件切替ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の露光条件切替ユニットであって、
前記中間伝達部材が、前記ケースの第2角部と対角の位置にある第3角部に配された第2回動支点に基端が支持されることで、該第2回動支点を中心に前記フィルタの回動方向および前記揺動アームの揺動方向と平行な面内で回動する回動レバーにより構成され、
該回動レバーの先端と前記アクチュエータの揺動アームの揺動出力端との間に、前記アクチュエータの揺動運動を前記回動レバーの回動運動として伝える、長孔と該長孔にスライド自在に係合するピンとの組よりなる第1係合手段が設けられ、
前記回動レバーの基端と先端との中間部分と前記フィルタの基端に近い部分との間に、前記回動レバーの回動運動をフィルタの回動運動として伝える、長孔と該長孔にスライド自在に係合するピンとの組よりなる第2係合手段が設けられていることを特徴とする露光条件切替ユニット。
【請求項3】
請求項2に記載の露光条件切替ユニットであって、
前記回動レバーが、当該回動レバーの基端と先端の間の中間部に、前記ケースの内部に挿入される前記レンズ部との干渉を避けるための逃げ穴を持つ略環状の板体として形成されていることを特徴とする露光条件切替ユニット。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の露光条件切替ユニットであって、
前記アクチュエータが、
後端側にマグネットを収容したマグネットホルダ部を有すると共に先端側に揺動出力端を有し、前記ケースの第2角部に配された第3回動支点に支持されて、該第3回動支点を中心に前記光路と直交する面内で揺動可能に支持された前記揺動アームと、
該揺動アームが挿通され、通電により発生する磁力により、前記マグネットとの間に駆動力を生じさせて、前記揺動レバーを揺動させる空芯コイルと、からなり、
前記空芯コイルは、予め定められた基準平面内で巻回されることで、一方の一対の対向辺が他方の一対の対向辺よりも長いロ字状のコイルとして形成され、且つ、長い方の一対の対向辺がその長さ方向の中間点を屈曲点として前記基準平面に垂直な方向にへ字状に曲げられた形状をなし、前記長い方の一対の対向辺を前記揺動アームの揺動面に沿わせた状態で配置されると共に、前記光路と直交し且つ前記ケースの中心部に向かう方向に貫通方
向および前記長い方の一対の対向辺の凸側を向けた姿勢で前記ケースに固定されており、
また、前記空芯コイルの長い方の一対の対向辺の凹側に前記第3回動支点が配置され、該第3回動支点が、前記ケースの前後方向における内面と該ケースの内面に対向する前記揺動アームのマグネットホルダ部の外面との一方に設けた凹部と他方に設けた凸部を嵌合させることにより構成されていることを特徴とする露光条件切替ユニット。
【請求項5】
請求項4に記載の露光条件切替ユニットであって、
前記空芯コイルへの非通電時に、前記揺動アームを、前記マグネットとの間に発生する磁力によって定位置に保持する保持手段が設けられていることを特徴とする露光条件切替ユニット。
【請求項6】
請求項5に記載の露光条件切替ユニットであって、
前記ケースが、
中央部分に前記光路を形成するための前記開口部を有した平面視略正方形状をなし、下面側に前記撮像素子を搭載した撮像素子ユニットが固定される下部ベースと、
中央部分に前記レンズユニットのレンズ部の挿入可能な前記開口部を有し、前記下部ベースの上面を覆った状態で、該下部ベースに固定される上部カバーと、から構成され、
前記下部ベースの上面に、前記フィルタの回動支点である前記第1回動支点を構成する凸部または凹部と、前記回動レバーの回動支点である前記第2回動支点を構成する凸部または凹部と、前記揺動アームの回動支点である第3回動支点を構成する凸部または凹部とが設けられていることを特徴とする露光条件切替ユニット。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の露光条件切替ユニットであって、
前記フィルタの代わりに、前記開口部の開度を調整する絞り部材またはシャッタ部材を設けたことを特徴とする露光条件切替ユニット。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の露光条件切替ユニットの前記ケースの後面側に前記撮像素子を搭載した撮像素子ユニットを固定し、露光条件切替ユニットの前記ケースの前面側に前記レンズユニットを配置し、該レンズユニットに一体形成してある枠部の内周を、前記露光条件切替ユニットのケースの外周に嵌めることで、前記レンズユニットと撮像素子ユニットと露光条件切替ユニットとを一体化してなることを特徴とするカメラユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−17801(P2011−17801A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161267(P2009−161267)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000231590)日本精密測器株式会社 (64)
【Fターム(参考)】