露光走査装置
【課題】彫刻により発生するガス、アブレーションカスを吸込フードに誘導し、回収効率を上げることができる。
【解決手段】吹付ノズル80は、一列に並んだ吹き出し口80aからの空気を吹き出し、略四角錐台形のエアーフローA1を形成する。吹付ノズル80は、エアーフロー中心面AM1が、光軸Lと露光面FAとの交点Iにおけるドラム50の接線と平行となるように、かつエアーフローA1の方向がドラムの回転方向Rと同方向となるように配設される。エアーフローA1の延長上には、エアーフローA1を覆う大きさで形成された吸込フード81が配設される。これにより、ガス、アブレーションカスを含むエアーフローA1を吸込フード81から確実に吸い込むことができる。
【解決手段】吹付ノズル80は、一列に並んだ吹き出し口80aからの空気を吹き出し、略四角錐台形のエアーフローA1を形成する。吹付ノズル80は、エアーフロー中心面AM1が、光軸Lと露光面FAとの交点Iにおけるドラム50の接線と平行となるように、かつエアーフローA1の方向がドラムの回転方向Rと同方向となるように配設される。エアーフローA1の延長上には、エアーフローA1を覆う大きさで形成された吸込フード81が配設される。これにより、ガス、アブレーションカスを含むエアーフローA1を吸込フード81から確実に吸い込むことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は露光走査装置に係り、特にフレキソ版などの印刷版の製造に好適な露光走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜3には、ドラムに感光材料を装着し、ドラムを回転させながらレーザを感光材料に照射することにより、感光材料に描画(彫刻)を行う描画装置が開示されている。この描画装置では、レーザ被照射位置の斜め上からレーザ被照射位置に向けて空気を噴出して、描画により発生するガス、ゴミを拡散させる。そして、レーザ被照射位置の斜め下から拡散させたガス、ゴミを吸引することにより、レーザ照射用の露光ヘッドや描画装置内にガス、ゴミ等が飛散し、付着することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−295985号公報
【特許文献2】特開2004−294740号公報
【特許文献3】特開2004−16013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の方法では、レーザ被照射位置に向けて空気を噴出するため、描画により発生するガス、アブレーションカスは、様々な方向に拡散される。そのため、レーザ被照射位置の斜め下以外の方向に飛散したガス、ゴミは吸引されず、レーザ照射用の露光ヘッドに付着してしまい、画質が劣化するという問題がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、彫刻により発生するガス、アブレーションカスを吸込フードに誘導し、回収効率を上げる露光走査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明に係る露光走査装置は、記録媒体が表面に固定され、所定の方向に回転自在な略円筒形の主走査ドラムと、前記主走査ドラムに対向して配設され、前記記録媒体に向けて光ビームを照射して前記記録媒体の表面を彫刻する露光ヘッドと、前記主走査ドラムと前記露光ヘッドとの間に形成された空間に空気を吹き付ける第1の吹付ノズルであって、前記露光ヘッドの光軸と前記主走査ドラムとの交点における前記主走査ドラムの接線方向に沿った空気の流れを生成する第1の吹付ノズルと、前記第1の吹付ノズルにより吹き付けられた空気を吸い込む吸込手段であって、前記第1の吹付ノズルにより生成された空気の流れの延長上に開口部が配設された吸込手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る露光走査装置によれば、記録媒体が表面に固定され、所定の方向に回転自在な略円筒形の主走査ドラムと、主走査ドラムに対向して配設され、記録媒体に向けて光ビームを照射して記録媒体の表面を彫刻する露光ヘッドとの間に形成された空間に空気を吹きつける第1の吹付ノズルは、露光ヘッドの光軸と主走査ドラムとの交点における主走査ドラムの接線方向に沿った空気の流れを生成する。吸込手段は、開口部がこの空気の流れの延長上に位置し、第1の吹付ノズルにより吹き付けられた空気を吸い込む。これにより、彫刻により発生するガス、アブレーションカスを空気と共に開口部に導き、ガス、アブレーションカスを回収することができる。
【0008】
本発明に係る露光走査装置は、前記第1の吹付ノズルは、前記主走査ドラムの回転方向に沿って空気を吹き付けることが望ましい。これにより、ガス、アブレーションカスの飛散方向に逆らわないような空気の流れを生成することができる。
【0009】
本発明に係る露光走査装置は、前記露光ヘッドは、前記光ビームを出射する出射部であって、所定の方向に並んで配置された複数の出射部を有し、前記第1の吹付ノズルには、前記所定の方向に並んで配設された複数の吹き出し口を有し、前記複数の吹き出し口から空気が吹き出されることにより、前記所定の方向に並んだ複数の出射部の幅より大きい幅を有する略四角錐台形の空気の流れが生成されることが望ましい。
【0010】
本発明に係る露光走査装置によれば、光ビームを出射する出射部の配設方向と同じ方向に複数の吹き出し口が並んで配設され、複数の吹き出し口から空気が吹き出されることにより、並んで配置された複数の出射部の幅より大きい幅を有する略四角錐台形の空気の流れが生成される。これにより、彫刻により発生するガス、アブレーションカスを空気の流れに乗せることができる。
【0011】
本発明に係る露光走査装置は、前記吸込手段は、前記開口部の前記露光ヘッド側の壁の先端が前記露光ヘッドの光軸に隣接するように配設されたことが望ましい。これにより、空気が壁に案内され、空気の流れを開口部に誘導することができる。
【0012】
本発明に係る露光走査装置は、前記第1の吹付ノズルにより生成された空気の流れを打ち消す方向の空気の流れを生成する第2の吹付ノズルを備え、前記吸込手段は、前記第1の吹付ノズル及び前記第2の吹付ノズルにより吹き付けられた空気を吸い込むことが望ましい。
【0013】
本発明に係る露光走査装置によれば、第2の吹付ノズルにより、第1の吹付ノズルにより生成された空気の流れを打ち消す方向の空気の流れが生成され、この空気が吸い込まれる。これにより、摩擦抗力等によりガス、アブレーションカスが主走査ドラムの表面に絡みついたとしても、ガス、アブレーションカスを空気と共に開口部に導き、ガス、アブレーションカスを回収することができる。そのため、ガス、アブレーションカスの装置内への飛散が防止され、アブレーションカスの回収効率を上げることができる。
【0014】
本発明に係る露光走査装置は、前記第2の吹付ノズルは、前記主走査ドラムの接線方向とのなす角度が鋭角となる空気の流れを生成することが望ましい。これにより、主走査ドラムの表面に絡みついたガス、アブレーションカスを主走査ドラムの表面から剥離することができる。
【0015】
本発明に係る露光走査装置は、前記第2の吹付ノズルは、前記主走査ドラムと前記吸込手段との間に配設されたことが望ましい。これにより、第1の吹付ノズルと第2の吹付ノズルとが吸込手段を挟んで対向するように配設される。したがって、より効率的にガス、アブレーションカスを主走査ドラムの表面から剥離することができる。
【0016】
本発明に係る露光走査装置は、前記吸込手段は、空気の流れを誘導する誘導板を有し、前記誘導板は、前記第1の吹付ノズルにより生成された空気の流れが誘導される第1の開口部と、前記第2の吹付ノズルにより生成された空気の流れが誘導される第2の開口部とが形成されるように、前記開口部近傍に配設されたことが望ましい。
【0017】
本発明に係る露光走査装置によれば、開口部近傍には、第1の吹付ノズルにより生成された空気の流れが誘導される第1の開口部と、第2の吹付ノズルにより生成された空気の流れが誘導される第2の開口部とが形成されるように誘導板が配設される。これにより、第1の吹付ノズル、第2の吹付ノズルのそれぞれにより生成された空気の流れに含まれるガス、アブレーションカスを第1の開口部、第2の開口部から回収することができる。
【0018】
本発明に係る露光走査装置は、前記吸込手段は、前記開口部の前記主走査ドラム側の壁の先端が前記第2の吹付ノズルに隣接するように配設されたことが望ましい。これにより、第2の吹付ノズルから吹きつけられた空気が壁に案内され、空気の流れを開口部に誘導することができる。
【0019】
本発明に係る露光走査装置は、前記吸込手段の空気の吸い込み量が、前記第1の吹付ノズル及び前記第2の吹付ノズルの空気の吹き付け量より多くなるように制御する制御手段を備えたことが望ましい。これにより、ガス、アブレーションカスを含む空気を確実に吸い込むことができる。
【0020】
本発明に係る露光走査装置は、前記吸込手段は、断面積が略一定となる管状の部材を有することが望ましい。これにより、流速が一定となり、ガス、アブレーションカスが管内に付着することを防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、彫刻により発生するガス、アブレーションカスを吸込フードに誘導し、回収効率を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るマルチビーム露光走査装置を適用した製版装置の構成図
【図2】露光ヘッド内に配置される光ファイバーアレイ部の構成図
【図3】光ファイバーアレイ部の光出射部の拡大図
【図4】光ファイバーアレイ部の結像光学系の概要図
【図5】光ファイバーアレイ部における光ファイバーの配置例と走査線の関係を示す説明図
【図6】製版装置における走査露光系の概要を示す平面図
【図7】製版装置における走査露光系と、吹付ノズル、吸込フードとの位置関係を示す側面図。
【図8】第1の実施形態の吹付ノズルの斜視図
【図9】第1の実施形態の吹付ノズルにより生成されるエアーフローを説明する図であり、(a)は吹付ノズル及びエアーフローの模式的に示した斜視図、(b)はエアーフローの寸法を示す正面図
【図10】製版装置における制御系の構成を示すブロック図
【図11】第1の実施形態の吹付ノズル、吸込フードの変形例を示す図
【図12】ガス、アブレーションカスの飛散を説明する図
【図13】本発明の第2の実施形態に係る製版装置における走査露光系と、吹付ノズル、吸込フードとの位置関係を示す側面図
【図14】第2の実施形態の吸込フードの斜視図
【図15】第2の実施形態の吸込フードの変形例
【図16】本発明の第3の実施形態に係る製版装置における走査露光系と、吹付ノズル、吸込フードとの位置関係を示す側面図
【図17】第3の実施形態の吸込フードの斜視図
【図18】第3の実施形態の吸込フードの変形例
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0024】
[第1の実施形態]
<露光走査装置の構成>
図1は、本発明の実施形態に係る露光走査装置を適用した製版装置11Aの構成図である。図示の製版装置11Aは、円筒形を有するドラム50の外周面にシート状の版材(「記録媒体」に相当)を固定し、該ドラム50を図1中の矢印R方向(主走査方向)に回転させると共に、版材Fに向けてレーザ記録装置10Aの露光ヘッド30から、該版材Fに彫刻(記録)すべき画像の画像データに応じた複数のレーザビームを射出し、露光ヘッド30を主走査方向と直交する副走査方向(図1矢印S方向)に所定ピッチで走査させることで、版材Fの表面に2次元画像を高速で彫刻(記録)するものである。ここでは、フレキソ印刷用のゴム版又は樹脂版を彫刻する場合を例に説明する。
【0025】
本例の製版装置11Aに用いられるレーザ記録装置10Aは、複数のレーザビームを生成する光源ユニット20と、光源ユニット20で生成された複数のレーザビームを版材Fに照射する露光ヘッド30と、レーザビームを版材Fに照射する時に空気を吹き付ける吹付ノズル80(図1では図示せず)と、吹付ノズル80からの空気吹き付け時に空気を吸い込む吸込フード81(図1では図示せず)と、露光ヘッド30、吹付ノズル80及び吸込フード81を副走査方向に沿って移動させる露光ヘッド移動部40と、を含んで構成されている。
【0026】
光源ユニット20は、複数の半導体レーザ21A、21B(ここでは合計64個)を備えており、各半導体レーザ21A、21Bの光は、それぞれ個別に光ファイバー22A、22B、70A、70Bを介して露光ヘッド30の光ファイバーアレイ部300へと伝送される。
【0027】
本例では、半導体レーザ21A、21Bとしてブロードエリア半導体レーザ(波長:915nm)が用いられ、これら半導体レーザ21A、21Bは光源基板24A、24B上に並んで配置されている。
【0028】
各半導体レーザ21A、21Bは、それぞれ個別に光ファイバー22A、22Bの一端部にカップリングされ、光ファイバー22A、22Bの他端はそれぞれSC型光コネクタ25A、25Bのアダプタに接続されている。
【0029】
SC型光コネクタ25A、25Bを支持するアダプタ基板23A、23Bは、光源基板24A、24Bの一方の端部に垂直に取り付けられている。また、光源基板24A、24Bの他方の端部には、半導体レーザ21A、21Bを駆動するLDドライバー回路(図1中不図示、図10の符号26)を搭載したLDドライバー基板27A、27Bが取り付けられている。各半導体レーザ21A、21Bは、それぞれ個別の配線部材29A、29Bを介して、対応するLDドライバー回路に接続されており、各々の半導体レーザ21A、21Bは個別に駆動制御される。
【0030】
なお、本実施の形態では、レーザビームを高出力とするために、コア径の比較的大きな、多モード光ファイバーを光ファイバー70A、70Bに適用している。具体的には、本実施形態においては、コア径が105μmの光ファイバーが用いられている。また、半導体レーザ21A、21Bには、最大出力が10W程度のものを使用している。具体的には、例えば、JDSユニフェーズ社から販売されているコア径105μmで出力10W(6398-L4)のものなどを採用することができる。
【0031】
一方、露光ヘッド30には、複数の半導体レーザ21A、21Bから射出された各レーザビームを取り纏めて射出する光ファイバーアレイ部300が備えられている。光ファイバーアレイ部300の光出射部(図1中不図示、図2の符号280)は、各半導体レーザ21A、21Bから導かれた64本の光ファイバー70A、70Bの出射端が32個ずつ2列に並んで配置された構造となっている(図3参照)。
【0032】
また、露光ヘッド30内には、光ファイバーアレイ部300の光出射部側より、コリメータレンズ32、開口部材33、及び結像レンズ34が、順番に並んで配設されている。コリメータレンズ32と結像レンズ34の組合せによって結像光学系が構成されている。開口部材33は、光ファイバーアレイ部300側から見て、その開口がファーフィールド(Far Field)の位置となるように配置されている。これによって、光ファイバーアレイ部300から射出された全てのレーザビームに対して同等の光量制限効果を与えることができる。
【0033】
露光ヘッド移動部40には、長手方向が副走査方向に沿うように配置されたボールネジ41及び2本のレール42が備えられており、ボールネジ41を回転駆動する副走査モータ(図1中不図示、図の符号43)を作動させることによってボールネジ41上に配置された露光ヘッド30をレール42に案内された状態で副走査方向に移動させることができる。また、ドラム50は主走査モータ(図1中不図示、図の符号51)を作動させることによって、図1の矢印R方向に回転駆動させることができ、これによって主走査がなされる。
【0034】
図2は光ファイバーアレイ部300の構成図であり、図3はその光出射部280の拡大図(図2のA矢視図)である。図3に示すように、光ファイバーアレイ部300の光出射部280は、上下2段に組み合わされた光ファイバーアレイユニット300A、300Bで構成され、上段と下段とにそれぞれ同じコア径105μmの光ファイバー70A、70Bが32本ずつ2列に並んで配置されている。
【0035】
光ファイバーアレイ部300は、2枚の基台(V溝基板)302A、302Bを有している。基台302A、302Bには各々片面に半導体レーザ21A、21Bと同数、すなわち夫々32個のV字溝282A、282Bが所定の間隔で隣接するように形成されている。そして、基台302A、302Bは、V字溝282A、282Bが対向するように配置されている。
【0036】
基台302Aの各V字溝282Aには、光ファイバー70Aの他端部の光ファイバー端部71Aが1本ずつ嵌め込まれている。同様に基台302Bの各V字溝282Bに各光ファイバー70Bの他端部の光ファイバー端部71Bが1本ずつ嵌め込まれている。すなわち、本実施の形態の光ファイバーアレイ部300は、複数(本実施形態では32本×2=合計64個)の光ファイバー端部71A、71Bが所定方向に沿った直線状に配置されて構成された光ファイバー端部群301A、301Bが、上記所定方向と直交する方向に平行に2列設けられて構成されている。
【0037】
したがって、光ファイバーアレイ部300の光出射部280からこれら複数本(32本×2)のレーザビームが同時に射出される。
【0038】
図4は、光ファイバーアレイ部300の結像系の概要図である。図4に示すように、コリメータレンズ32及び結像レンズ34で構成される結像手段によって、光ファイバーアレイ部300の光出射部280を所定の結像倍率で版材Fの露光面(表面)FAの近傍に結像させる。これにより、光軸Lと露光面(表面)FAとの交点Iが彫刻(画像記録)される。本実施形態では、結像倍率は1/3倍とされており、これにより、コア径105μmの光ファイバー端部71A、71Bから出射されたレーザビームLAのスポット径は、φ35μmとなる。
【0039】
このような結像系を有する露光ヘッド30において、図3で説明した光ファイバーアレイユニット300A、300Bの上段と下段の間隔(図3中のL1)と列方向の相対的位置(図3中のL2)、列内の隣接ファイバー間隔(図3中のL3)及び光ファイバーアレイ部300を固定するときの光ファイバー端部群301A、301Bの配列方向(アレイ方向)の傾斜角度(図5中の角度θ)を適宜設計することにより、図5に示すように、アレイ上段(光ファイバー端部群301A)及びアレイ下段(光ファイバー端部群301B)の各列内で隣り合う位置に配置される光ファイバー端部71A、71Bから射出されるレーザビームで露光する走査線(記録ライン)Kの間隔P1と、アレイ上段の右端の光ファイバー端部71ATとアレイ下段の左端の光ファイバー端部71BTで露光する走査線Kの間隔P2をそれぞれ等しく10.58μm(副走査方向の解像度2400dpi相当)に設定することができる。なお、図5では、図示の便宜上、光ファイバーの数を減じて示した。つまり、光ファイバーアレイ部300の設計により、64チャンネルで副走査方向解像度2400dpiの走査線間隔(P1=P2≒10.6μm)を実現できる。
【0040】
上記構成の露光ヘッド30を用いることにより、光ファイバーアレイ部300の光ファイバー端部群301A、301Bの2列で64ラインの範囲(1スワス分)を同時に走査して露光することができる。
【0041】
図6は、図1に示した製版装置11Aにおける走査露光系の概要を示す平面図である。露光ヘッド30は、ピント位置変更機構60と、副走査方向への間欠送り機構90を備えている。
【0042】
ピント位置変更機構60は、露光ヘッド30をドラム50面に対して前後移動させるモータ61とボールネジ62を有し、モータ61の制御により、ピント位置を約0.1秒で約300μm移動させることができる。間欠送り機構90は、図1で説明した露光ヘッド移動部40を構成するものであり、図6に示すように、ボールネジ41とこれを回転させる副走査モータ43を有する。露光ヘッド30は、ボールネジ41上のステージ44に固定されており、副走査モータ43の制御により、露光ヘッド30をドラム50の軸線52方向すなわち副走査方向に、約0.1秒で1スワス分(640μm)と隣り合うスワス分まで間欠送りできる。
【0043】
なお、図6において、符号46、47は、ボールネジ41を回動自在に支持するベアリングブロックである。符号55はドラム50上で版材Fをチャックするチャック部材である。このチャック部材55の位置は、露光ヘッド30による露光(記録)を行わない非記録領域である。
【0044】
ドラム50を回転させながら、この回転するドラム50上の版材Fに対し、露光ヘッド30から64チャンネルのレーザビームを照射することで、64チャンネル分(1スワス分)の露光範囲92を隙間なく露光し、版材Fの表面に1スワス幅の彫刻(画像記録)を行う。そして、ドラム50の回転により、露光ヘッド30の前をチャック部材55が通過するときに(版材Fの非記録領域のところで)、副走査方向に間欠送りを行い、次の1スワス分を露光する。このような副走査方向の間欠送りによる露光走査を繰り返すことにより、版材Fの全面に所望の画像を形成する。
【0045】
本例では、シート状の版材F(記録媒体)を用いているが、円筒状記録媒体(スリーブタイプ)を用いることも可能である。
【0046】
版材Fの表面に1スワス幅の彫刻(画像記録)を行う時に、吹付ノズル80から空気を吹き付けると共に、吸込フード81から空気を吸い込む。図7は、製版装置11Aにおける走査露光系と、吹付ノズル80、吸込フード81との位置関係を示す側面図である。
【0047】
吹付ノズル80及び吸込フード81は、露光ヘッド30とドラム50との間に配設される。吹付ノズル80は、露光ヘッド30とドラム50との間に形成された空間にエアーフローA1を生成する。吹付ノズル80から吹き付けられた空気を吸込フード81から吸い込めるように、吹付ノズル80及び吸込フード81は対向して配設される。
【0048】
吹付ノズル80は、図8に示すように吹き出し口80aが一列に並んで配設され、各吹き出し口80aから空気が噴出される。これにより、図9(a)に示すように、吹付ノズル80全体からは、略四角錐台形のエアーフローA1が生成される。図9(b)は、この略四角錐台形のエアーフローA1を吹付ノズル80の正面側から見た図であり、エアーフローA1の大きさの具体例を示す。
【0049】
エアーフローA1は、吹き出し口80aからの距離が30mmの位置では幅が54mmとなり、吹き出し口80aからの距離が150mmの位置では幅が100mmとなり、吹き出し口80aからの距離が300mmの位置では幅が160mmとなる。また、エアーフローA1の奥行きは、広がりを抑え、フラットな形状となるように調整される。エアーフローA1の速さは、レーザビームの出力やドラム50の回転速度に応じて適切な値が実験的に定められる。
【0050】
吹付ノズル80は、図7に示すように、吹き出し口80aの配列方向がドラム50の軸線52と略平行となるように、すなわち吹き出し口80aの配列方向は、光ファイバー端部71A、71Bの配置方向と同じとなるように配設される。また、吹付ノズル80は、吹き出し口80aからの空気の吹き出し方向がドラム50の回転方向Rと同じとなり、かつ吹き出し口80aを通り、吹き出し口の80aの配列方向と直交する面Mにおけるエアーフロー(以下、エアーフロー中心面という)AM1(図9(a)参照)が、光軸Lと露光面FAとの交点Iにおけるドラム50の接線と平行となるように配設される。これにより、光軸Lと露光面FAとの交点Iの位置では、図9における略下向きの空気の流れが生成される。したがって、彫刻により発生するガス、アブレーションカスを下方向へ搬送し、それ以外の方向へのガス、アブレーションカスの飛散が防止される。
【0051】
また、光ファイバーアレイ部300の光出射部280よりエアーフローA1の幅が大きくなるように、吹き出し口80aからの距離が略51mmの位置に光出射部280が位置するように、吹付ノズル80が配設される。これにより、彫刻により発生するガス、アブレーションカスをエアーフローA1に乗せることができる。なお、吹付ノズル80と光出射部280との関係はこれに限定されるものではなく、光出射部280よりエアーフローA1の幅が大きくなるような様々な位置関係とすることができる。
【0052】
吸込フード81は、略長方形の開口部81aを有する断面略長方形の管状の部材であり、開口部81a以外の開口部に接続されたポンプ(図示せず)等により、開口部81aからは空気が吸い込まれる(図7矢印参照)。吸込フード81からの空気の吸い込み量は、吹付ノズル80からの空気の吹き付け量よりも多くなるように設定される。
【0053】
エアーフローA1の延長上に開口部81aが配設される。開口部81aは、その位置におけるエアーフローA1の大きさより大きくなるように形成される。本実施の形態では、吸込フード81は、吹き出し口80aからの距離が略150mmの位置に配設されるため、吸込フード81の開口部81aの幅が100mm以上となるように形成される。これにより、ガス、アブレーションカスを含むエアーフローA1を吸込フード81から確実に吸い込むことができる。
【0054】
吸込フード81は、断面積が略一定となるように形成される。これにより、吸込フード81内の流速を一定にし、吸い込んだガス、アブレーションカスが吸込フード81内に付着することを防止し、付着量を低減させることができる。
【0055】
<制御系の構成>
図10は、製版装置11Aの制御系の構成を示すブロック図である。図10に示すように、製版装置11Aは、彫刻すべき2次元の画像データに応じて各半導体レーザ21A、21Bを駆動するLDドライバー回路26と、ドラム50を回転させる主走査モータ51と、主走査モータ51を駆動する主走査モータ駆動回路101と、副走査モータ43を駆動する副走査モータ駆動回路102と、制御回路100と、を備えている。制御回路100は、LDドライバー回路26、及び各モータ駆動回路(101、102)を制御する。
【0056】
制御回路100には、版材Fに彫刻(記録)する画像を示す画像データが供給される。制御回路100は、この画像データに基づき、主走査モータ51及び副走査モータ43の駆動を制御するとともに、各半導体レーザ21A、21Bについて個別にその出力(レーザビームのパワー制御)を制御する。なお、レーザビームの出力を制御する手段としては、半導体レーザ21A、21Bの発光量を制御する態様に限らず、これに代えて、又はこれと組み合わせて、音響光変調器(AOM:Acoustic OpticalModulator)ユニットなどの光変調手段を用いてもよい。
【0057】
次に、マルチビーム露光系によって印刷版を製造する際の露光走査工程について説明する。露光走査工程は、主として制御回路100によって制御される。本実施の形態では、同一走査線を複数回走査露光するマルチビーム露光系において、記録媒体の露光表面に残すべき平面形状およびその傾斜部の大枠を第1ビーム群で形成し(粗彫刻工程)、この粗彫刻工程で上昇した版材Fの温度が所定温度まで下がった後に、第1ビーム群から記録媒体へ照射されるエネルギーよりも低いエネルギーの第2ビーム群で同一走査線上を露光走査し、最終形状(目的とする表面形状および傾斜部)を精密に微細彫刻する(微細彫刻工程)複数回露光走査方式を採用する。
【0058】
制御回路100に画像データが供給されると、制御回路100は、彫刻を開始する前に、吹付ノズル80から空気を吹き付けてエアーフローA1を発生させるとともに、吸込フード81から空気の吸い込みを開始する。その後、以下のようにして彫刻を開始する。
【0059】
ドラム50を一定速度で回転させながら、露光ヘッド30から出射する第1ビーム群(64チャンネル)で版材F上を露光走査して、第1形状を彫刻する。この第1ビーム群による1回目の走査露光工程は、最終的に凸平面部として残す表面形状及びその傾斜部の形状まで到達しない粗彫刻を行う工程である。ドラム50が1回転すると64チャンネル幅で粗彫刻が行われる。その後、同じ副走査位置で(露光ヘッド30を移動させずに)、ドラム50の2回転目で同じ場所の同じライン上を、より低パワーの第2ビーム群(第1ビーム群と同チャンネル)で走査露光を行い、最終形状(第2形状)を形成する。
【0060】
こうして、ドラム50の2回転で1スワス分の彫刻を完成させた後、非記録領域たるチャック部材55が露光ヘッド30の前を横切るときに、露光ヘッド30を副走査方向(図1において右方向)に間欠送りし、隣接する次の1スワス分の彫刻を行う位置に移動させる。そして、当該位置において、第1ビーム群による粗彫刻及び微細彫刻の露光走査を行う。
【0061】
以後、上記の工程を繰り返し、版材F上の全面を露光する。なお、使用する版材(フレキソ感材)の感度(光への反応性)によって、パワー制御の具体的な制御態様は異なる。版材の種類等に応じて適切な出力条件が実験的に定められる。
【0062】
彫刻が終了したら、吹付ノズル80からの空気の吹き付けを停止させ、その後吸込フード81から空気の吸い込みを停止する。
【0063】
本実施の形態によれば、彫刻により発生するガス、アブレーションカスをエアーフローと共に吸込フードへ導くことができる。そのため、ガス、アブレーションカスの回収効率を上げることができる。これにより、ガス、アブレーションカスの製版装置内への飛散が防止される。
【0064】
なお、本実施の形態では、略長方形の開口部81aを有する吸込フード81を用いたが、吸込フード81の形状はこれに限られない。例えば、図11(a)に示すように、開口部81aの露光ヘッド30側に壁81bを配設してもよい。この壁81bは、最も高い位置が光軸Lより下に位置するように形成されている。 また、壁81bの上端部には、壁81bがレーザ光と干渉しないようにするための孔81d’が形成される。これにより、エアーフローA1を下方向へ流れるように案内する位置が吹き出し口80aに近い位置となり、ガス、アブレーションカスの吸引効率を高くすることができる。なお、図11(a)では孔81d’の形状を略半月形状としているが、形状はこれに限られない。
【0065】
この効果を更に高めるため、図11(b)に示すように、開口部81aの露光ヘッド30側の壁81bに加え、側面に壁81cを配設してもよい。また、図11(c)に示すように、吹付ノズル80を覆う高さで形成された壁81b’及び側面の壁81c’を配設し、壁81b’にレーザ光が貫通する孔81dを形成するようにしても良い。さらに、開口部81aのドラム50側に壁81eを配設してもよい。これにより、エアーフローA1を吸込フード内へ導かれやすくなる。
【0066】
また、図11(d)に示すように、吹付ノズル80の吹き出し口80aを覆うように壁81b’’、81c’’、81eを配設し、壁81b’’にレーザ光が貫通する孔81dを形成し、81eにレーザ光が貫通する孔81fを形成するようにしても良い。この場合には、エアーフローA1が全て吸込フードに覆われるため、ガス、アブレーションカスを略全て回収することができる。
【0067】
なお、壁81c、81c’、81cc’’は、チャック部材55と干渉しないように、ドラム50の回転に伴うチャック部材55の周回ラインrから所定の距離だけオフセットされた位置で略長方形の一部が除かれた形状となるように形成される。また、壁81eは、周回ラインrの半径にオフセットの距離を加えた長さの半径を有する円弧状の面で形成される。
【0068】
なお、図11(c)、(d)では、レーザ光が貫通する孔81d、孔81f’が形成されているが、この孔は直径数mm程度の丸孔 であり大きさが小さいため、エアーフローA1により、孔81d、81f’からはエアーフローA1以上の流速で空気が吸込フード81’’’、81’’’’内へ吸い込まれる。したがって、これらの孔が吸込フードを吹付ノズル80を覆う高さとしたことによる効果を失わせるものではなく、逆に結像レンズ34等の汚れを低減することができる。
【0069】
また、本実施の形態では、吹き出し口80aからの空気の吹き出し方向がドラム50の回転方向Rと同じとなるように吹付ノズル80を配設したが、吹き出し口80aからの空気の吹き出し方向がドラム50の回転方向Rと逆向きとなるように吹付ノズル80を配設するようにしてもよい。ただし、ガス、アブレーションカスは、図12の矢印Xに示すように、露光により版材Fに形成された壁により、ドラム50の回転方向Rに対し副走査方向Sと逆方向に所定の角度を持った方向に飛散する傾向がある。そのため、ガス、アブレーションカスの飛散方向に逆らわないように、吹き出し口80aからの空気の吹き出し方向がドラム50の回転方向Rと同じ方向となるように吹付ノズル80を配設することが望ましい。
【0070】
[第2の実施形態]
本発明の第1の実施の形態は、吹付ノズル80と吸込フード81とを対向して配設し、吹付ノズル80から空気を吹き付けると共に、吸込フード81から空気を吸い込むことにより、彫刻により発生するガス、アブレーションカスを回収したが、吸込フードはチャック部材55の周回ラインrの外側にしか配設できないという物理的な制限より、全てのガス、アブレーションカスが吸込フード81に回収されない虞がある。
【0071】
特に、ドラム50の回転速度等によっては、ドラム50(版材F)からの摩擦抗力等により、ドラム50の回転に伴ってガス、アブレーションカスがドラム50(版材F)の表面に絡みつく(巻きつく)ように流れる場合がある。このような場合には、さらに回収効率が低下する。
【0072】
本発明の第2の実施の形態は、ドラム50(版材F)の表面に絡みついたガス、アブレーションカスをエアーフローにより吸込フードへ搬送する形態である。以下、第2の実施形態に係る製版装置11Bについて説明する。なお、第1の実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0073】
製版装置11Bは、円筒形を有するドラム50の外周面にシート状の版材(「記録媒体」に相当)を固定し、該ドラム50を矢印R方向(主走査方向)に回転させると共に、版材Fに向けてレーザ記録装置10Bの露光ヘッド30から、該版材Fに彫刻(記録)すべき画像の画像データに応じた複数のレーザビームを射出し、露光ヘッド30を主走査方向と直交する副走査方向(矢印S方向)に所定ピッチで走査させることで、版材Fの表面に2次元画像を高速で彫刻(記録)するものである。
【0074】
製版装置11Bに用いられるレーザ記録装置10Bは、複数のレーザビームを生成する光源ユニット20と、光源ユニット20で生成された複数のレーザビームを版材Fに照射する露光ヘッド30と、レーザビームを版材Fに照射する時に空気を吹き付ける吹付ノズル80、82と、吹付ノズル80からの空気吹き付け時に空気を吸い込む吸込フード83と、露光ヘッド30、吹付ノズル80、82及び吸込フード83を副走査方向に沿って移動させる露光ヘッド移動部40と、を含んで構成されている。
【0075】
図13は、製版装置11Bにおける走査露光系と、吹付ノズル80、82、吸込フード83との位置関係を示す側面図である。
【0076】
吹付ノズル80及び吸込フード83は、露光ヘッド30とドラム50との間に配設される。吹付ノズル80から吹き付けられた空気を吸込フード81から吸い込めるように、吹付ノズル80及び吸込フード83は対向して配設される。
【0077】
吹付ノズル82は、ドラム50と吸込フード83との間に配設される。吹付ノズル82は、吹付ノズル80と同様に吹き出し口が一列に並んで配設され、各吹き出し口から空気が噴出されることで、略四角錐台形のエアーフローA2が生成される。エアーフローA2の幅は、エアーフローA1の幅以下であり、エアーフローA2の量は、エアーフローA1の量より小さくなるように制御される。本実施の形態では、エアーフローA1の量とエアーフローA2の量との比が約5対1となるように設定されるが、ドラム50の回転速度により具体的な制御態様は異なる。適切な条件が実験的に定められる。
【0078】
吹付ノズル82は、図13に示すように、吹き出し口からの空気の吹き出し方向がドラム50の回転方向Rと反対となり、かつエアーフロー中心面AM2と、エアーフロー中心面AM2と版材Fとの交点における接線とがなす角度θが鋭角となるように配設される。これにより、ドラム50(版材F)の表面に絡みついたガス、アブレーションカスをドラム50(版材F)の表面から剥離することができる。
【0079】
吹付ノズル80と吹付ノズル82とが吸込手段を挟んで対向するように配設される。そのため、吹付ノズル80からより遠い位置でガス、アブレーションカスをドラム50(版材F)から剥離できる。したがって、効率よくガス、アブレーションカスの剥離をすることができる。
【0080】
吸込フード83は、図14に示すように、露光ヘッド30側の壁83aの先端が光軸に隣接し、ドラム50側の壁83bの先端及び両側の壁83cの先端がチャック部材55の周回ラインrに略沿って形成された管状の部材であり、その幅がエアーフローA1の幅以上となるように形成される。
【0081】
壁83a、83b、83cにより略長方形の開口部が形成される。この開口部には、空気の流れを誘導する誘導板83dが配設される。誘導板83dは、吸込フード83の幅と略同一の幅で形成され、吸込フード83の両側の壁に一体形成さる。この誘導板83dにより、図13に示すように、エアーフローA1が誘導される第1の開口部83Aと、エアーフローA2が誘導される第2の開口部83Bとが形成される(図13参照)。
【0082】
誘導板83dは、ドラム50の回転に伴うチャック部材55の周回ラインrと接し、第1の開口部83Aの面積d1と第2の開口部83Bの面積d2とが吸込フード83の他端近傍の面積d3と略同一となる位置に配設される。これにより、吸込フード83内の空気の流速が一定になり、吸込フード83内にアブレーションカスが付着することが防止し、付着量を低減させることができる。
【0083】
吸込フード83の他端にはポンプ(図示せず)が接続され、第1の開口部83A及び第2の開口部83Bからは空気が吸い込まれる(図13矢印(4)参照)。第1の開口部83A及び第2の開口部83Bの空気の吸い込み量は、吹付ノズル80、82からの空気の吹き付け量の総和よりも多くなるように設定される。
【0084】
ガス、アブレーションカスを含んだエアーフローA1の大部分は、第1の開口部83Aから吸い込まれる(図13の矢印(1)参照)。ただし、誘導板83dの物理的な制限(誘導板83dがチャック部材55の周回ラインrの外側となること)及びドラム50(版材F)の表面にガス、アブレーションカスを含むエアーフローが絡みつくため、エアーフローA1の一部は、誘導板83dとドラム50(版材F)との間を下方向に流れる(図13の矢印(2)参照)。
【0085】
誘導板83dとドラム50(版材F)との間を下方向に流れたエアーフローは、エアーフローA2によりドラム50(版材F)から引き剥がされ、上方向に巻き上げられる(図13の矢印(3)参照)。エアーフローA2により巻き上げられた空気は、第2の開口部83Bから吸い込まれる。これにより、エアーフローA1、A2と共に送られてきたガス、アブレーションカスを吸込フード83から確実に吸い込むことができる。
【0086】
次に、マルチビーム露光系によって印刷版を製造する際の露光走査工程について説明する。露光走査工程は、主として制御回路100によって制御される。本実施の形態では、粗彫刻工程、微細彫刻工程を連続して行う複数回露光走査方式を採用する。
【0087】
制御回路100に画像データが供給されると、制御回路100は、彫刻を開始する前に、吹付ノズル80、82から空気を吹き付けてエアーフローA1、A2を発生させるとともに、吸込フード83から空気の吸い込みを開始する。その後、彫刻を開始する。彫刻については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0088】
版材F上の全面を露光が終了したら、吹付ノズル80、82からの空気の吹き付けを停止させ、その後吸込フード83から空気の吸い込みを停止する。
【0089】
本実施の形態によれば、ドラム(版材)からの摩擦抗力等により、ドラム50の回転に伴ってガス、アブレーションカスがドラム(版材)の表面に絡みついたとしても、ガス、アブレーションカスを吸込フードから確実に吸い込むことができる。そのため、ガス、アブレーションカスの装置内への飛散が防止され、アブレーションカスの回収効率を上げることができる。
【0090】
なお、本実施の形態では、露光ヘッド30側の壁83aの先端が光軸に隣接し、ドラム50側の壁83bの先端及び両側の壁83cの先端がチャック部材55の周回ラインrに略沿って形成された管状の部材を有する吸込フード83を用いたが、吸込フード83の形状はこれに限られない。例えば、図15に示すように、吹付ノズル80を覆う高さで形成された壁83a’及び側面の壁83c’(図15では図示せず)を配設し、先端が吹付ノズル82の吹き出し口に隣接する壁83b’を配設し、壁83a’、83b’ 、83c’により形成される開口部がエアーフローA1、A2全体を覆うようにしてもよい。これにより、エアーフローA1、A2が吸込フード83に導かれやすくなり、ガス、アブレーションカスの吸引効率を高くすることができる。
【0091】
[第3の実施形態]
本発明の第2の実施の形態は、吹付ノズル80と吸込フード81とを対向して配設し、吹付ノズル80から空気を吹き付けると共に、ドラム50(版材F)の表面に絡みついたガス、アブレーションカスをエアーフローにより吸込フードへ搬送することにより、彫刻により発生するガス、アブレーションカスを回収したが、ドラム50の回転速度が所定速度以上である場合にはガス、アブレーションカスの大部分がドラム50(版材F)の表面に絡みつくように流れるため、吹付ノズル80からの空気の吹き付けは必須ではない。
【0092】
本発明の第3の実施の形態は、ドラム50(版材F)の表面に絡みついたガス、アブレーションカスをエアーフローにより吸込フードへ搬送する形態である。以下、第3の実施形態に係る製版装置11Cについて説明する。なお、第1の実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0093】
製版装置11Cは、円筒形を有するドラム50の外周面にシート状の版材(「記録媒体」に相当)を固定し、該ドラム50を矢印R方向(主走査方向)に回転させると共に、版材Fに向けてレーザ記録装置10Cの露光ヘッド30から、該版材Fに彫刻(記録)すべき画像の画像データに応じた複数のレーザビームを射出し、露光ヘッド30を主走査方向と直交する副走査方向(矢印S方向)に所定ピッチで走査させることで、版材Fの表面に2次元画像を高速で彫刻(記録)するものである。
【0094】
製版装置11Cに用いられるレーザ記録装置10Cは、複数のレーザビームを生成する光源ユニット20と、光源ユニット20で生成された複数のレーザビームを版材Fに照射する露光ヘッド30と、レーザビームを版材Fに照射する時に空気を吹き付ける吹付ノズル84と、吹付ノズル84からの空気吹き付け時に空気を吸い込む吸込フード85と、露光ヘッド30、吹付ノズル84及び吸込フード85を副走査方向に沿って移動させる露光ヘッド移動部40と、を含んで構成されている。
【0095】
図16は、製版装置11Cにおける走査露光系と、吹付ノズル84、吸込フード85との位置関係を示す側面図である。
【0096】
吹付ノズル84は、ドラム50と吸込フード85との間に配設される。吹付ノズル82は、吹き出し口が一列に並んで配設され、各吹き出し口から空気が噴出されることで、略四角錐台形のエアーフローA3が生成される。
【0097】
吹付ノズル84は、光ファイバーアレイ部300の幅より広い幅のエアーフローA3を生成する。エアーフローA3の風速はドラム50の回転速度により異なるが、適切な条件が実験的に定められる。
【0098】
吹付ノズル84は、図16に示すように、吹き出し口からの空気の吹き出し方向がドラム50の回転方向Rと反対となり、かつエアーフロー中心面AM3と、エアーフロー中心面AM3と版材Fとの交点における接線とがなす角度が鋭角となるように配設される。これにより、ドラム50(版材F)の表面に絡みついたガス、アブレーションカスをドラム50(版材F)の表面から引き剥がし、上側へ巻き上げることができる(図15の矢印(2)参照)。
【0099】
吸込フード85は、図17に示すように、露光ヘッド30側の壁85aの先端が光軸に隣接し、ドラム50側の壁85bの先端及び両側の壁85cの先端がチャック部材55の周回ラインrに略沿って形成された管状の部材である。これにより、吸込フード85は、各壁の先端85a、85b、85cにより形成される略長方形の開口部85Aが、ドラム50(版材F)の表面を覆うように配設される。
【0100】
ドラム50側の壁85bの先端がチャック部材55の周回ラインrに略沿って形成されることにより、壁85bの先端は、光軸Lと露光面(表面)FAとの交点I、すなわち彫刻点の真下よりもドラム50側に位置することとなる。そのため、アブレーションカスが交点Iから真下に落下したとしても、アブレーションカスは吸込フード85内へ誘導される。
【0101】
彫刻により発生したガス、アブレーションカスは、ドラム50の回転に伴ってドラム50(版材F)に沿って下方向へ流れる(図13矢印(1)参照)。また、吸込フード85の他端にはポンプ(図示せず)が接続され、開口部85Aからは空気が吸い込まれる(図13矢印(4)参照)。
【0102】
下方向へ流れたガス、アブレーションカスはエアーフローA3により、ドラム50(版材F)の表面から引き剥がされ、上側へ巻き上げられる(図15の矢印(2)参照)。ドラム50側の壁の先端85bは、エアーフロー中心面AM3と版材Fとの交点Jより吹付ノズル84側に位置している。このため、エアーフローA3により巻き上げられたガス、アブレーションカスが、確実に吸込フード85内へ誘導される。
【0103】
また、下方向へ流れたガス、アブレーションカスの一部は、ドラム50(版材F)から剥離する(図15の矢印(4)参照)。しかしながら、ガス、アブレーションカスが剥離する領域は、各壁の先端85a、85b、85cにより覆われた空間内であるため、この剥離したガス、アブレーションカスも確実に吸込フード85内へ誘導される。
【0104】
これにより、ガス、アブレーションカスを吸込フード85から確実に吸い込むことができる。
【0105】
次に、マルチビーム露光系によって印刷版を製造する際の露光走査工程について説明する。露光走査工程は、主として制御回路100によって制御される。本実施の形態では、粗彫刻工程、微細彫刻工程を連続して行う複数回露光走査方式を採用する。
【0106】
制御回路100に画像データが供給されると、制御回路100は、彫刻を開始する前に、吹付ノズル84から空気を吹き付けてエアーフローA3を発生させるとともに、吸込フード85から空気の吸い込みを開始する。その後、彫刻を開始する。彫刻については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0107】
版材F上の全面を露光が終了したら、吹付ノズル84からの空気の吹き付けを停止させ、その後吸込フード85から空気の吸い込みを停止する。
【0108】
本実施の形態によれば、ドラム(版材)からの摩擦抗力等により、ドラム50の回転に伴ってガス、アブレーションカスがドラム(版材)の表面に絡みついたとしても、ガス、アブレーションカスを吸込フードから確実に吸い込むことができる。そのため、ガス、アブレーションカスの装置内への飛散が防止され、アブレーションカスの回収効率を上げることができる。
【0109】
なお、本実施の形態では、露光ヘッド30側の壁85aの先端が光軸に隣接し、ドラム50側の壁85bの先端及び両側の壁85cの先端がチャック部材55の周回ラインrに略沿って形成された管状の部材を有する吸込フード85を用いたが、吸込フード85の形状はこれに限られない。例えば、図18に示すように、吹付ノズル80を覆う高さで形成された壁85a’及び側面の壁85c’(図17では図示せず)を配設し、先端が吹付ノズル84の吹き出し口に隣接する壁5b’を配設し、壁85a’、85b’、85c’により形成される開口部85A’がエアーフローA3全体を覆うようにしてもよい。これにより、ガス、アブレーションカスの吸引効率を高くすることができる。図18に示す場合においても、壁85b’の先端が光軸Lと露光面(表面)FAとの交点I、すなわち彫刻点の真下よりもドラム50側に位置するように吸込フード85’が形成される。そのため、アブレーションカスが交点Iから真下に落下したとしても、アブレーションカスは吸込フード85’内へ誘導される。
【0110】
本発明の実施の形態では、吸込フードの開口部が略長方形に形成されているが、開口部の形状は略長方形には限定されない。光ファイバーアレイ部300の光出射部280の大きさ、ドラム50と露光ヘッド30距離によっては、略正方形となる場合もある。また、吸込フードの開口部吸込フードの開口部は、略長方形、略正方形等の略矩形形状にも限定されない。対向する2つの面(露光ヘッド30側、ドラム50側)が平行であればよく、例えば他の2つの面が円弧形状で形成された略小判形状の開口部を採用してもよい。
【0111】
本発明の実施の形態では、副走査方向の間欠送りによる走査露光方式を用いた場合を例に説明したが、ドラム回転中に副走査方向に一定速度で露光ヘッド30を移動させて版材Fの表面をスパイラル(らせん)状に走査するスパイラル露光方式を採用してもよい。
【符号の説明】
【0112】
10A、10B、10C…レーザ記録装置、11A、11B、11C…製版装置、20…光源ユニット、21A,21B…半導体レーザ、22A,22B,70A,70B…光ファイバー、30…露光ヘッド、40…露光ヘッド移動部、50…ドラム、80、82、84…吹付ノズル、81、83、85…吸込フード、90…制御回路、300…光ファイバーアレイ部、512…インターレース領域、514…ノンインターレース領域、A1、A2、A3…エアーフロー、F…版材、K…走査線、L…光軸
【技術分野】
【0001】
本発明は露光走査装置に係り、特にフレキソ版などの印刷版の製造に好適な露光走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1〜3には、ドラムに感光材料を装着し、ドラムを回転させながらレーザを感光材料に照射することにより、感光材料に描画(彫刻)を行う描画装置が開示されている。この描画装置では、レーザ被照射位置の斜め上からレーザ被照射位置に向けて空気を噴出して、描画により発生するガス、ゴミを拡散させる。そして、レーザ被照射位置の斜め下から拡散させたガス、ゴミを吸引することにより、レーザ照射用の露光ヘッドや描画装置内にガス、ゴミ等が飛散し、付着することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−295985号公報
【特許文献2】特開2004−294740号公報
【特許文献3】特開2004−16013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1〜3に記載の方法では、レーザ被照射位置に向けて空気を噴出するため、描画により発生するガス、アブレーションカスは、様々な方向に拡散される。そのため、レーザ被照射位置の斜め下以外の方向に飛散したガス、ゴミは吸引されず、レーザ照射用の露光ヘッドに付着してしまい、画質が劣化するという問題がある。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、彫刻により発生するガス、アブレーションカスを吸込フードに誘導し、回収効率を上げる露光走査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明に係る露光走査装置は、記録媒体が表面に固定され、所定の方向に回転自在な略円筒形の主走査ドラムと、前記主走査ドラムに対向して配設され、前記記録媒体に向けて光ビームを照射して前記記録媒体の表面を彫刻する露光ヘッドと、前記主走査ドラムと前記露光ヘッドとの間に形成された空間に空気を吹き付ける第1の吹付ノズルであって、前記露光ヘッドの光軸と前記主走査ドラムとの交点における前記主走査ドラムの接線方向に沿った空気の流れを生成する第1の吹付ノズルと、前記第1の吹付ノズルにより吹き付けられた空気を吸い込む吸込手段であって、前記第1の吹付ノズルにより生成された空気の流れの延長上に開口部が配設された吸込手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明に係る露光走査装置によれば、記録媒体が表面に固定され、所定の方向に回転自在な略円筒形の主走査ドラムと、主走査ドラムに対向して配設され、記録媒体に向けて光ビームを照射して記録媒体の表面を彫刻する露光ヘッドとの間に形成された空間に空気を吹きつける第1の吹付ノズルは、露光ヘッドの光軸と主走査ドラムとの交点における主走査ドラムの接線方向に沿った空気の流れを生成する。吸込手段は、開口部がこの空気の流れの延長上に位置し、第1の吹付ノズルにより吹き付けられた空気を吸い込む。これにより、彫刻により発生するガス、アブレーションカスを空気と共に開口部に導き、ガス、アブレーションカスを回収することができる。
【0008】
本発明に係る露光走査装置は、前記第1の吹付ノズルは、前記主走査ドラムの回転方向に沿って空気を吹き付けることが望ましい。これにより、ガス、アブレーションカスの飛散方向に逆らわないような空気の流れを生成することができる。
【0009】
本発明に係る露光走査装置は、前記露光ヘッドは、前記光ビームを出射する出射部であって、所定の方向に並んで配置された複数の出射部を有し、前記第1の吹付ノズルには、前記所定の方向に並んで配設された複数の吹き出し口を有し、前記複数の吹き出し口から空気が吹き出されることにより、前記所定の方向に並んだ複数の出射部の幅より大きい幅を有する略四角錐台形の空気の流れが生成されることが望ましい。
【0010】
本発明に係る露光走査装置によれば、光ビームを出射する出射部の配設方向と同じ方向に複数の吹き出し口が並んで配設され、複数の吹き出し口から空気が吹き出されることにより、並んで配置された複数の出射部の幅より大きい幅を有する略四角錐台形の空気の流れが生成される。これにより、彫刻により発生するガス、アブレーションカスを空気の流れに乗せることができる。
【0011】
本発明に係る露光走査装置は、前記吸込手段は、前記開口部の前記露光ヘッド側の壁の先端が前記露光ヘッドの光軸に隣接するように配設されたことが望ましい。これにより、空気が壁に案内され、空気の流れを開口部に誘導することができる。
【0012】
本発明に係る露光走査装置は、前記第1の吹付ノズルにより生成された空気の流れを打ち消す方向の空気の流れを生成する第2の吹付ノズルを備え、前記吸込手段は、前記第1の吹付ノズル及び前記第2の吹付ノズルにより吹き付けられた空気を吸い込むことが望ましい。
【0013】
本発明に係る露光走査装置によれば、第2の吹付ノズルにより、第1の吹付ノズルにより生成された空気の流れを打ち消す方向の空気の流れが生成され、この空気が吸い込まれる。これにより、摩擦抗力等によりガス、アブレーションカスが主走査ドラムの表面に絡みついたとしても、ガス、アブレーションカスを空気と共に開口部に導き、ガス、アブレーションカスを回収することができる。そのため、ガス、アブレーションカスの装置内への飛散が防止され、アブレーションカスの回収効率を上げることができる。
【0014】
本発明に係る露光走査装置は、前記第2の吹付ノズルは、前記主走査ドラムの接線方向とのなす角度が鋭角となる空気の流れを生成することが望ましい。これにより、主走査ドラムの表面に絡みついたガス、アブレーションカスを主走査ドラムの表面から剥離することができる。
【0015】
本発明に係る露光走査装置は、前記第2の吹付ノズルは、前記主走査ドラムと前記吸込手段との間に配設されたことが望ましい。これにより、第1の吹付ノズルと第2の吹付ノズルとが吸込手段を挟んで対向するように配設される。したがって、より効率的にガス、アブレーションカスを主走査ドラムの表面から剥離することができる。
【0016】
本発明に係る露光走査装置は、前記吸込手段は、空気の流れを誘導する誘導板を有し、前記誘導板は、前記第1の吹付ノズルにより生成された空気の流れが誘導される第1の開口部と、前記第2の吹付ノズルにより生成された空気の流れが誘導される第2の開口部とが形成されるように、前記開口部近傍に配設されたことが望ましい。
【0017】
本発明に係る露光走査装置によれば、開口部近傍には、第1の吹付ノズルにより生成された空気の流れが誘導される第1の開口部と、第2の吹付ノズルにより生成された空気の流れが誘導される第2の開口部とが形成されるように誘導板が配設される。これにより、第1の吹付ノズル、第2の吹付ノズルのそれぞれにより生成された空気の流れに含まれるガス、アブレーションカスを第1の開口部、第2の開口部から回収することができる。
【0018】
本発明に係る露光走査装置は、前記吸込手段は、前記開口部の前記主走査ドラム側の壁の先端が前記第2の吹付ノズルに隣接するように配設されたことが望ましい。これにより、第2の吹付ノズルから吹きつけられた空気が壁に案内され、空気の流れを開口部に誘導することができる。
【0019】
本発明に係る露光走査装置は、前記吸込手段の空気の吸い込み量が、前記第1の吹付ノズル及び前記第2の吹付ノズルの空気の吹き付け量より多くなるように制御する制御手段を備えたことが望ましい。これにより、ガス、アブレーションカスを含む空気を確実に吸い込むことができる。
【0020】
本発明に係る露光走査装置は、前記吸込手段は、断面積が略一定となる管状の部材を有することが望ましい。これにより、流速が一定となり、ガス、アブレーションカスが管内に付着することを防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、彫刻により発生するガス、アブレーションカスを吸込フードに誘導し、回収効率を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るマルチビーム露光走査装置を適用した製版装置の構成図
【図2】露光ヘッド内に配置される光ファイバーアレイ部の構成図
【図3】光ファイバーアレイ部の光出射部の拡大図
【図4】光ファイバーアレイ部の結像光学系の概要図
【図5】光ファイバーアレイ部における光ファイバーの配置例と走査線の関係を示す説明図
【図6】製版装置における走査露光系の概要を示す平面図
【図7】製版装置における走査露光系と、吹付ノズル、吸込フードとの位置関係を示す側面図。
【図8】第1の実施形態の吹付ノズルの斜視図
【図9】第1の実施形態の吹付ノズルにより生成されるエアーフローを説明する図であり、(a)は吹付ノズル及びエアーフローの模式的に示した斜視図、(b)はエアーフローの寸法を示す正面図
【図10】製版装置における制御系の構成を示すブロック図
【図11】第1の実施形態の吹付ノズル、吸込フードの変形例を示す図
【図12】ガス、アブレーションカスの飛散を説明する図
【図13】本発明の第2の実施形態に係る製版装置における走査露光系と、吹付ノズル、吸込フードとの位置関係を示す側面図
【図14】第2の実施形態の吸込フードの斜視図
【図15】第2の実施形態の吸込フードの変形例
【図16】本発明の第3の実施形態に係る製版装置における走査露光系と、吹付ノズル、吸込フードとの位置関係を示す側面図
【図17】第3の実施形態の吸込フードの斜視図
【図18】第3の実施形態の吸込フードの変形例
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0024】
[第1の実施形態]
<露光走査装置の構成>
図1は、本発明の実施形態に係る露光走査装置を適用した製版装置11Aの構成図である。図示の製版装置11Aは、円筒形を有するドラム50の外周面にシート状の版材(「記録媒体」に相当)を固定し、該ドラム50を図1中の矢印R方向(主走査方向)に回転させると共に、版材Fに向けてレーザ記録装置10Aの露光ヘッド30から、該版材Fに彫刻(記録)すべき画像の画像データに応じた複数のレーザビームを射出し、露光ヘッド30を主走査方向と直交する副走査方向(図1矢印S方向)に所定ピッチで走査させることで、版材Fの表面に2次元画像を高速で彫刻(記録)するものである。ここでは、フレキソ印刷用のゴム版又は樹脂版を彫刻する場合を例に説明する。
【0025】
本例の製版装置11Aに用いられるレーザ記録装置10Aは、複数のレーザビームを生成する光源ユニット20と、光源ユニット20で生成された複数のレーザビームを版材Fに照射する露光ヘッド30と、レーザビームを版材Fに照射する時に空気を吹き付ける吹付ノズル80(図1では図示せず)と、吹付ノズル80からの空気吹き付け時に空気を吸い込む吸込フード81(図1では図示せず)と、露光ヘッド30、吹付ノズル80及び吸込フード81を副走査方向に沿って移動させる露光ヘッド移動部40と、を含んで構成されている。
【0026】
光源ユニット20は、複数の半導体レーザ21A、21B(ここでは合計64個)を備えており、各半導体レーザ21A、21Bの光は、それぞれ個別に光ファイバー22A、22B、70A、70Bを介して露光ヘッド30の光ファイバーアレイ部300へと伝送される。
【0027】
本例では、半導体レーザ21A、21Bとしてブロードエリア半導体レーザ(波長:915nm)が用いられ、これら半導体レーザ21A、21Bは光源基板24A、24B上に並んで配置されている。
【0028】
各半導体レーザ21A、21Bは、それぞれ個別に光ファイバー22A、22Bの一端部にカップリングされ、光ファイバー22A、22Bの他端はそれぞれSC型光コネクタ25A、25Bのアダプタに接続されている。
【0029】
SC型光コネクタ25A、25Bを支持するアダプタ基板23A、23Bは、光源基板24A、24Bの一方の端部に垂直に取り付けられている。また、光源基板24A、24Bの他方の端部には、半導体レーザ21A、21Bを駆動するLDドライバー回路(図1中不図示、図10の符号26)を搭載したLDドライバー基板27A、27Bが取り付けられている。各半導体レーザ21A、21Bは、それぞれ個別の配線部材29A、29Bを介して、対応するLDドライバー回路に接続されており、各々の半導体レーザ21A、21Bは個別に駆動制御される。
【0030】
なお、本実施の形態では、レーザビームを高出力とするために、コア径の比較的大きな、多モード光ファイバーを光ファイバー70A、70Bに適用している。具体的には、本実施形態においては、コア径が105μmの光ファイバーが用いられている。また、半導体レーザ21A、21Bには、最大出力が10W程度のものを使用している。具体的には、例えば、JDSユニフェーズ社から販売されているコア径105μmで出力10W(6398-L4)のものなどを採用することができる。
【0031】
一方、露光ヘッド30には、複数の半導体レーザ21A、21Bから射出された各レーザビームを取り纏めて射出する光ファイバーアレイ部300が備えられている。光ファイバーアレイ部300の光出射部(図1中不図示、図2の符号280)は、各半導体レーザ21A、21Bから導かれた64本の光ファイバー70A、70Bの出射端が32個ずつ2列に並んで配置された構造となっている(図3参照)。
【0032】
また、露光ヘッド30内には、光ファイバーアレイ部300の光出射部側より、コリメータレンズ32、開口部材33、及び結像レンズ34が、順番に並んで配設されている。コリメータレンズ32と結像レンズ34の組合せによって結像光学系が構成されている。開口部材33は、光ファイバーアレイ部300側から見て、その開口がファーフィールド(Far Field)の位置となるように配置されている。これによって、光ファイバーアレイ部300から射出された全てのレーザビームに対して同等の光量制限効果を与えることができる。
【0033】
露光ヘッド移動部40には、長手方向が副走査方向に沿うように配置されたボールネジ41及び2本のレール42が備えられており、ボールネジ41を回転駆動する副走査モータ(図1中不図示、図の符号43)を作動させることによってボールネジ41上に配置された露光ヘッド30をレール42に案内された状態で副走査方向に移動させることができる。また、ドラム50は主走査モータ(図1中不図示、図の符号51)を作動させることによって、図1の矢印R方向に回転駆動させることができ、これによって主走査がなされる。
【0034】
図2は光ファイバーアレイ部300の構成図であり、図3はその光出射部280の拡大図(図2のA矢視図)である。図3に示すように、光ファイバーアレイ部300の光出射部280は、上下2段に組み合わされた光ファイバーアレイユニット300A、300Bで構成され、上段と下段とにそれぞれ同じコア径105μmの光ファイバー70A、70Bが32本ずつ2列に並んで配置されている。
【0035】
光ファイバーアレイ部300は、2枚の基台(V溝基板)302A、302Bを有している。基台302A、302Bには各々片面に半導体レーザ21A、21Bと同数、すなわち夫々32個のV字溝282A、282Bが所定の間隔で隣接するように形成されている。そして、基台302A、302Bは、V字溝282A、282Bが対向するように配置されている。
【0036】
基台302Aの各V字溝282Aには、光ファイバー70Aの他端部の光ファイバー端部71Aが1本ずつ嵌め込まれている。同様に基台302Bの各V字溝282Bに各光ファイバー70Bの他端部の光ファイバー端部71Bが1本ずつ嵌め込まれている。すなわち、本実施の形態の光ファイバーアレイ部300は、複数(本実施形態では32本×2=合計64個)の光ファイバー端部71A、71Bが所定方向に沿った直線状に配置されて構成された光ファイバー端部群301A、301Bが、上記所定方向と直交する方向に平行に2列設けられて構成されている。
【0037】
したがって、光ファイバーアレイ部300の光出射部280からこれら複数本(32本×2)のレーザビームが同時に射出される。
【0038】
図4は、光ファイバーアレイ部300の結像系の概要図である。図4に示すように、コリメータレンズ32及び結像レンズ34で構成される結像手段によって、光ファイバーアレイ部300の光出射部280を所定の結像倍率で版材Fの露光面(表面)FAの近傍に結像させる。これにより、光軸Lと露光面(表面)FAとの交点Iが彫刻(画像記録)される。本実施形態では、結像倍率は1/3倍とされており、これにより、コア径105μmの光ファイバー端部71A、71Bから出射されたレーザビームLAのスポット径は、φ35μmとなる。
【0039】
このような結像系を有する露光ヘッド30において、図3で説明した光ファイバーアレイユニット300A、300Bの上段と下段の間隔(図3中のL1)と列方向の相対的位置(図3中のL2)、列内の隣接ファイバー間隔(図3中のL3)及び光ファイバーアレイ部300を固定するときの光ファイバー端部群301A、301Bの配列方向(アレイ方向)の傾斜角度(図5中の角度θ)を適宜設計することにより、図5に示すように、アレイ上段(光ファイバー端部群301A)及びアレイ下段(光ファイバー端部群301B)の各列内で隣り合う位置に配置される光ファイバー端部71A、71Bから射出されるレーザビームで露光する走査線(記録ライン)Kの間隔P1と、アレイ上段の右端の光ファイバー端部71ATとアレイ下段の左端の光ファイバー端部71BTで露光する走査線Kの間隔P2をそれぞれ等しく10.58μm(副走査方向の解像度2400dpi相当)に設定することができる。なお、図5では、図示の便宜上、光ファイバーの数を減じて示した。つまり、光ファイバーアレイ部300の設計により、64チャンネルで副走査方向解像度2400dpiの走査線間隔(P1=P2≒10.6μm)を実現できる。
【0040】
上記構成の露光ヘッド30を用いることにより、光ファイバーアレイ部300の光ファイバー端部群301A、301Bの2列で64ラインの範囲(1スワス分)を同時に走査して露光することができる。
【0041】
図6は、図1に示した製版装置11Aにおける走査露光系の概要を示す平面図である。露光ヘッド30は、ピント位置変更機構60と、副走査方向への間欠送り機構90を備えている。
【0042】
ピント位置変更機構60は、露光ヘッド30をドラム50面に対して前後移動させるモータ61とボールネジ62を有し、モータ61の制御により、ピント位置を約0.1秒で約300μm移動させることができる。間欠送り機構90は、図1で説明した露光ヘッド移動部40を構成するものであり、図6に示すように、ボールネジ41とこれを回転させる副走査モータ43を有する。露光ヘッド30は、ボールネジ41上のステージ44に固定されており、副走査モータ43の制御により、露光ヘッド30をドラム50の軸線52方向すなわち副走査方向に、約0.1秒で1スワス分(640μm)と隣り合うスワス分まで間欠送りできる。
【0043】
なお、図6において、符号46、47は、ボールネジ41を回動自在に支持するベアリングブロックである。符号55はドラム50上で版材Fをチャックするチャック部材である。このチャック部材55の位置は、露光ヘッド30による露光(記録)を行わない非記録領域である。
【0044】
ドラム50を回転させながら、この回転するドラム50上の版材Fに対し、露光ヘッド30から64チャンネルのレーザビームを照射することで、64チャンネル分(1スワス分)の露光範囲92を隙間なく露光し、版材Fの表面に1スワス幅の彫刻(画像記録)を行う。そして、ドラム50の回転により、露光ヘッド30の前をチャック部材55が通過するときに(版材Fの非記録領域のところで)、副走査方向に間欠送りを行い、次の1スワス分を露光する。このような副走査方向の間欠送りによる露光走査を繰り返すことにより、版材Fの全面に所望の画像を形成する。
【0045】
本例では、シート状の版材F(記録媒体)を用いているが、円筒状記録媒体(スリーブタイプ)を用いることも可能である。
【0046】
版材Fの表面に1スワス幅の彫刻(画像記録)を行う時に、吹付ノズル80から空気を吹き付けると共に、吸込フード81から空気を吸い込む。図7は、製版装置11Aにおける走査露光系と、吹付ノズル80、吸込フード81との位置関係を示す側面図である。
【0047】
吹付ノズル80及び吸込フード81は、露光ヘッド30とドラム50との間に配設される。吹付ノズル80は、露光ヘッド30とドラム50との間に形成された空間にエアーフローA1を生成する。吹付ノズル80から吹き付けられた空気を吸込フード81から吸い込めるように、吹付ノズル80及び吸込フード81は対向して配設される。
【0048】
吹付ノズル80は、図8に示すように吹き出し口80aが一列に並んで配設され、各吹き出し口80aから空気が噴出される。これにより、図9(a)に示すように、吹付ノズル80全体からは、略四角錐台形のエアーフローA1が生成される。図9(b)は、この略四角錐台形のエアーフローA1を吹付ノズル80の正面側から見た図であり、エアーフローA1の大きさの具体例を示す。
【0049】
エアーフローA1は、吹き出し口80aからの距離が30mmの位置では幅が54mmとなり、吹き出し口80aからの距離が150mmの位置では幅が100mmとなり、吹き出し口80aからの距離が300mmの位置では幅が160mmとなる。また、エアーフローA1の奥行きは、広がりを抑え、フラットな形状となるように調整される。エアーフローA1の速さは、レーザビームの出力やドラム50の回転速度に応じて適切な値が実験的に定められる。
【0050】
吹付ノズル80は、図7に示すように、吹き出し口80aの配列方向がドラム50の軸線52と略平行となるように、すなわち吹き出し口80aの配列方向は、光ファイバー端部71A、71Bの配置方向と同じとなるように配設される。また、吹付ノズル80は、吹き出し口80aからの空気の吹き出し方向がドラム50の回転方向Rと同じとなり、かつ吹き出し口80aを通り、吹き出し口の80aの配列方向と直交する面Mにおけるエアーフロー(以下、エアーフロー中心面という)AM1(図9(a)参照)が、光軸Lと露光面FAとの交点Iにおけるドラム50の接線と平行となるように配設される。これにより、光軸Lと露光面FAとの交点Iの位置では、図9における略下向きの空気の流れが生成される。したがって、彫刻により発生するガス、アブレーションカスを下方向へ搬送し、それ以外の方向へのガス、アブレーションカスの飛散が防止される。
【0051】
また、光ファイバーアレイ部300の光出射部280よりエアーフローA1の幅が大きくなるように、吹き出し口80aからの距離が略51mmの位置に光出射部280が位置するように、吹付ノズル80が配設される。これにより、彫刻により発生するガス、アブレーションカスをエアーフローA1に乗せることができる。なお、吹付ノズル80と光出射部280との関係はこれに限定されるものではなく、光出射部280よりエアーフローA1の幅が大きくなるような様々な位置関係とすることができる。
【0052】
吸込フード81は、略長方形の開口部81aを有する断面略長方形の管状の部材であり、開口部81a以外の開口部に接続されたポンプ(図示せず)等により、開口部81aからは空気が吸い込まれる(図7矢印参照)。吸込フード81からの空気の吸い込み量は、吹付ノズル80からの空気の吹き付け量よりも多くなるように設定される。
【0053】
エアーフローA1の延長上に開口部81aが配設される。開口部81aは、その位置におけるエアーフローA1の大きさより大きくなるように形成される。本実施の形態では、吸込フード81は、吹き出し口80aからの距離が略150mmの位置に配設されるため、吸込フード81の開口部81aの幅が100mm以上となるように形成される。これにより、ガス、アブレーションカスを含むエアーフローA1を吸込フード81から確実に吸い込むことができる。
【0054】
吸込フード81は、断面積が略一定となるように形成される。これにより、吸込フード81内の流速を一定にし、吸い込んだガス、アブレーションカスが吸込フード81内に付着することを防止し、付着量を低減させることができる。
【0055】
<制御系の構成>
図10は、製版装置11Aの制御系の構成を示すブロック図である。図10に示すように、製版装置11Aは、彫刻すべき2次元の画像データに応じて各半導体レーザ21A、21Bを駆動するLDドライバー回路26と、ドラム50を回転させる主走査モータ51と、主走査モータ51を駆動する主走査モータ駆動回路101と、副走査モータ43を駆動する副走査モータ駆動回路102と、制御回路100と、を備えている。制御回路100は、LDドライバー回路26、及び各モータ駆動回路(101、102)を制御する。
【0056】
制御回路100には、版材Fに彫刻(記録)する画像を示す画像データが供給される。制御回路100は、この画像データに基づき、主走査モータ51及び副走査モータ43の駆動を制御するとともに、各半導体レーザ21A、21Bについて個別にその出力(レーザビームのパワー制御)を制御する。なお、レーザビームの出力を制御する手段としては、半導体レーザ21A、21Bの発光量を制御する態様に限らず、これに代えて、又はこれと組み合わせて、音響光変調器(AOM:Acoustic OpticalModulator)ユニットなどの光変調手段を用いてもよい。
【0057】
次に、マルチビーム露光系によって印刷版を製造する際の露光走査工程について説明する。露光走査工程は、主として制御回路100によって制御される。本実施の形態では、同一走査線を複数回走査露光するマルチビーム露光系において、記録媒体の露光表面に残すべき平面形状およびその傾斜部の大枠を第1ビーム群で形成し(粗彫刻工程)、この粗彫刻工程で上昇した版材Fの温度が所定温度まで下がった後に、第1ビーム群から記録媒体へ照射されるエネルギーよりも低いエネルギーの第2ビーム群で同一走査線上を露光走査し、最終形状(目的とする表面形状および傾斜部)を精密に微細彫刻する(微細彫刻工程)複数回露光走査方式を採用する。
【0058】
制御回路100に画像データが供給されると、制御回路100は、彫刻を開始する前に、吹付ノズル80から空気を吹き付けてエアーフローA1を発生させるとともに、吸込フード81から空気の吸い込みを開始する。その後、以下のようにして彫刻を開始する。
【0059】
ドラム50を一定速度で回転させながら、露光ヘッド30から出射する第1ビーム群(64チャンネル)で版材F上を露光走査して、第1形状を彫刻する。この第1ビーム群による1回目の走査露光工程は、最終的に凸平面部として残す表面形状及びその傾斜部の形状まで到達しない粗彫刻を行う工程である。ドラム50が1回転すると64チャンネル幅で粗彫刻が行われる。その後、同じ副走査位置で(露光ヘッド30を移動させずに)、ドラム50の2回転目で同じ場所の同じライン上を、より低パワーの第2ビーム群(第1ビーム群と同チャンネル)で走査露光を行い、最終形状(第2形状)を形成する。
【0060】
こうして、ドラム50の2回転で1スワス分の彫刻を完成させた後、非記録領域たるチャック部材55が露光ヘッド30の前を横切るときに、露光ヘッド30を副走査方向(図1において右方向)に間欠送りし、隣接する次の1スワス分の彫刻を行う位置に移動させる。そして、当該位置において、第1ビーム群による粗彫刻及び微細彫刻の露光走査を行う。
【0061】
以後、上記の工程を繰り返し、版材F上の全面を露光する。なお、使用する版材(フレキソ感材)の感度(光への反応性)によって、パワー制御の具体的な制御態様は異なる。版材の種類等に応じて適切な出力条件が実験的に定められる。
【0062】
彫刻が終了したら、吹付ノズル80からの空気の吹き付けを停止させ、その後吸込フード81から空気の吸い込みを停止する。
【0063】
本実施の形態によれば、彫刻により発生するガス、アブレーションカスをエアーフローと共に吸込フードへ導くことができる。そのため、ガス、アブレーションカスの回収効率を上げることができる。これにより、ガス、アブレーションカスの製版装置内への飛散が防止される。
【0064】
なお、本実施の形態では、略長方形の開口部81aを有する吸込フード81を用いたが、吸込フード81の形状はこれに限られない。例えば、図11(a)に示すように、開口部81aの露光ヘッド30側に壁81bを配設してもよい。この壁81bは、最も高い位置が光軸Lより下に位置するように形成されている。 また、壁81bの上端部には、壁81bがレーザ光と干渉しないようにするための孔81d’が形成される。これにより、エアーフローA1を下方向へ流れるように案内する位置が吹き出し口80aに近い位置となり、ガス、アブレーションカスの吸引効率を高くすることができる。なお、図11(a)では孔81d’の形状を略半月形状としているが、形状はこれに限られない。
【0065】
この効果を更に高めるため、図11(b)に示すように、開口部81aの露光ヘッド30側の壁81bに加え、側面に壁81cを配設してもよい。また、図11(c)に示すように、吹付ノズル80を覆う高さで形成された壁81b’及び側面の壁81c’を配設し、壁81b’にレーザ光が貫通する孔81dを形成するようにしても良い。さらに、開口部81aのドラム50側に壁81eを配設してもよい。これにより、エアーフローA1を吸込フード内へ導かれやすくなる。
【0066】
また、図11(d)に示すように、吹付ノズル80の吹き出し口80aを覆うように壁81b’’、81c’’、81eを配設し、壁81b’’にレーザ光が貫通する孔81dを形成し、81eにレーザ光が貫通する孔81fを形成するようにしても良い。この場合には、エアーフローA1が全て吸込フードに覆われるため、ガス、アブレーションカスを略全て回収することができる。
【0067】
なお、壁81c、81c’、81cc’’は、チャック部材55と干渉しないように、ドラム50の回転に伴うチャック部材55の周回ラインrから所定の距離だけオフセットされた位置で略長方形の一部が除かれた形状となるように形成される。また、壁81eは、周回ラインrの半径にオフセットの距離を加えた長さの半径を有する円弧状の面で形成される。
【0068】
なお、図11(c)、(d)では、レーザ光が貫通する孔81d、孔81f’が形成されているが、この孔は直径数mm程度の丸孔 であり大きさが小さいため、エアーフローA1により、孔81d、81f’からはエアーフローA1以上の流速で空気が吸込フード81’’’、81’’’’内へ吸い込まれる。したがって、これらの孔が吸込フードを吹付ノズル80を覆う高さとしたことによる効果を失わせるものではなく、逆に結像レンズ34等の汚れを低減することができる。
【0069】
また、本実施の形態では、吹き出し口80aからの空気の吹き出し方向がドラム50の回転方向Rと同じとなるように吹付ノズル80を配設したが、吹き出し口80aからの空気の吹き出し方向がドラム50の回転方向Rと逆向きとなるように吹付ノズル80を配設するようにしてもよい。ただし、ガス、アブレーションカスは、図12の矢印Xに示すように、露光により版材Fに形成された壁により、ドラム50の回転方向Rに対し副走査方向Sと逆方向に所定の角度を持った方向に飛散する傾向がある。そのため、ガス、アブレーションカスの飛散方向に逆らわないように、吹き出し口80aからの空気の吹き出し方向がドラム50の回転方向Rと同じ方向となるように吹付ノズル80を配設することが望ましい。
【0070】
[第2の実施形態]
本発明の第1の実施の形態は、吹付ノズル80と吸込フード81とを対向して配設し、吹付ノズル80から空気を吹き付けると共に、吸込フード81から空気を吸い込むことにより、彫刻により発生するガス、アブレーションカスを回収したが、吸込フードはチャック部材55の周回ラインrの外側にしか配設できないという物理的な制限より、全てのガス、アブレーションカスが吸込フード81に回収されない虞がある。
【0071】
特に、ドラム50の回転速度等によっては、ドラム50(版材F)からの摩擦抗力等により、ドラム50の回転に伴ってガス、アブレーションカスがドラム50(版材F)の表面に絡みつく(巻きつく)ように流れる場合がある。このような場合には、さらに回収効率が低下する。
【0072】
本発明の第2の実施の形態は、ドラム50(版材F)の表面に絡みついたガス、アブレーションカスをエアーフローにより吸込フードへ搬送する形態である。以下、第2の実施形態に係る製版装置11Bについて説明する。なお、第1の実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0073】
製版装置11Bは、円筒形を有するドラム50の外周面にシート状の版材(「記録媒体」に相当)を固定し、該ドラム50を矢印R方向(主走査方向)に回転させると共に、版材Fに向けてレーザ記録装置10Bの露光ヘッド30から、該版材Fに彫刻(記録)すべき画像の画像データに応じた複数のレーザビームを射出し、露光ヘッド30を主走査方向と直交する副走査方向(矢印S方向)に所定ピッチで走査させることで、版材Fの表面に2次元画像を高速で彫刻(記録)するものである。
【0074】
製版装置11Bに用いられるレーザ記録装置10Bは、複数のレーザビームを生成する光源ユニット20と、光源ユニット20で生成された複数のレーザビームを版材Fに照射する露光ヘッド30と、レーザビームを版材Fに照射する時に空気を吹き付ける吹付ノズル80、82と、吹付ノズル80からの空気吹き付け時に空気を吸い込む吸込フード83と、露光ヘッド30、吹付ノズル80、82及び吸込フード83を副走査方向に沿って移動させる露光ヘッド移動部40と、を含んで構成されている。
【0075】
図13は、製版装置11Bにおける走査露光系と、吹付ノズル80、82、吸込フード83との位置関係を示す側面図である。
【0076】
吹付ノズル80及び吸込フード83は、露光ヘッド30とドラム50との間に配設される。吹付ノズル80から吹き付けられた空気を吸込フード81から吸い込めるように、吹付ノズル80及び吸込フード83は対向して配設される。
【0077】
吹付ノズル82は、ドラム50と吸込フード83との間に配設される。吹付ノズル82は、吹付ノズル80と同様に吹き出し口が一列に並んで配設され、各吹き出し口から空気が噴出されることで、略四角錐台形のエアーフローA2が生成される。エアーフローA2の幅は、エアーフローA1の幅以下であり、エアーフローA2の量は、エアーフローA1の量より小さくなるように制御される。本実施の形態では、エアーフローA1の量とエアーフローA2の量との比が約5対1となるように設定されるが、ドラム50の回転速度により具体的な制御態様は異なる。適切な条件が実験的に定められる。
【0078】
吹付ノズル82は、図13に示すように、吹き出し口からの空気の吹き出し方向がドラム50の回転方向Rと反対となり、かつエアーフロー中心面AM2と、エアーフロー中心面AM2と版材Fとの交点における接線とがなす角度θが鋭角となるように配設される。これにより、ドラム50(版材F)の表面に絡みついたガス、アブレーションカスをドラム50(版材F)の表面から剥離することができる。
【0079】
吹付ノズル80と吹付ノズル82とが吸込手段を挟んで対向するように配設される。そのため、吹付ノズル80からより遠い位置でガス、アブレーションカスをドラム50(版材F)から剥離できる。したがって、効率よくガス、アブレーションカスの剥離をすることができる。
【0080】
吸込フード83は、図14に示すように、露光ヘッド30側の壁83aの先端が光軸に隣接し、ドラム50側の壁83bの先端及び両側の壁83cの先端がチャック部材55の周回ラインrに略沿って形成された管状の部材であり、その幅がエアーフローA1の幅以上となるように形成される。
【0081】
壁83a、83b、83cにより略長方形の開口部が形成される。この開口部には、空気の流れを誘導する誘導板83dが配設される。誘導板83dは、吸込フード83の幅と略同一の幅で形成され、吸込フード83の両側の壁に一体形成さる。この誘導板83dにより、図13に示すように、エアーフローA1が誘導される第1の開口部83Aと、エアーフローA2が誘導される第2の開口部83Bとが形成される(図13参照)。
【0082】
誘導板83dは、ドラム50の回転に伴うチャック部材55の周回ラインrと接し、第1の開口部83Aの面積d1と第2の開口部83Bの面積d2とが吸込フード83の他端近傍の面積d3と略同一となる位置に配設される。これにより、吸込フード83内の空気の流速が一定になり、吸込フード83内にアブレーションカスが付着することが防止し、付着量を低減させることができる。
【0083】
吸込フード83の他端にはポンプ(図示せず)が接続され、第1の開口部83A及び第2の開口部83Bからは空気が吸い込まれる(図13矢印(4)参照)。第1の開口部83A及び第2の開口部83Bの空気の吸い込み量は、吹付ノズル80、82からの空気の吹き付け量の総和よりも多くなるように設定される。
【0084】
ガス、アブレーションカスを含んだエアーフローA1の大部分は、第1の開口部83Aから吸い込まれる(図13の矢印(1)参照)。ただし、誘導板83dの物理的な制限(誘導板83dがチャック部材55の周回ラインrの外側となること)及びドラム50(版材F)の表面にガス、アブレーションカスを含むエアーフローが絡みつくため、エアーフローA1の一部は、誘導板83dとドラム50(版材F)との間を下方向に流れる(図13の矢印(2)参照)。
【0085】
誘導板83dとドラム50(版材F)との間を下方向に流れたエアーフローは、エアーフローA2によりドラム50(版材F)から引き剥がされ、上方向に巻き上げられる(図13の矢印(3)参照)。エアーフローA2により巻き上げられた空気は、第2の開口部83Bから吸い込まれる。これにより、エアーフローA1、A2と共に送られてきたガス、アブレーションカスを吸込フード83から確実に吸い込むことができる。
【0086】
次に、マルチビーム露光系によって印刷版を製造する際の露光走査工程について説明する。露光走査工程は、主として制御回路100によって制御される。本実施の形態では、粗彫刻工程、微細彫刻工程を連続して行う複数回露光走査方式を採用する。
【0087】
制御回路100に画像データが供給されると、制御回路100は、彫刻を開始する前に、吹付ノズル80、82から空気を吹き付けてエアーフローA1、A2を発生させるとともに、吸込フード83から空気の吸い込みを開始する。その後、彫刻を開始する。彫刻については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0088】
版材F上の全面を露光が終了したら、吹付ノズル80、82からの空気の吹き付けを停止させ、その後吸込フード83から空気の吸い込みを停止する。
【0089】
本実施の形態によれば、ドラム(版材)からの摩擦抗力等により、ドラム50の回転に伴ってガス、アブレーションカスがドラム(版材)の表面に絡みついたとしても、ガス、アブレーションカスを吸込フードから確実に吸い込むことができる。そのため、ガス、アブレーションカスの装置内への飛散が防止され、アブレーションカスの回収効率を上げることができる。
【0090】
なお、本実施の形態では、露光ヘッド30側の壁83aの先端が光軸に隣接し、ドラム50側の壁83bの先端及び両側の壁83cの先端がチャック部材55の周回ラインrに略沿って形成された管状の部材を有する吸込フード83を用いたが、吸込フード83の形状はこれに限られない。例えば、図15に示すように、吹付ノズル80を覆う高さで形成された壁83a’及び側面の壁83c’(図15では図示せず)を配設し、先端が吹付ノズル82の吹き出し口に隣接する壁83b’を配設し、壁83a’、83b’ 、83c’により形成される開口部がエアーフローA1、A2全体を覆うようにしてもよい。これにより、エアーフローA1、A2が吸込フード83に導かれやすくなり、ガス、アブレーションカスの吸引効率を高くすることができる。
【0091】
[第3の実施形態]
本発明の第2の実施の形態は、吹付ノズル80と吸込フード81とを対向して配設し、吹付ノズル80から空気を吹き付けると共に、ドラム50(版材F)の表面に絡みついたガス、アブレーションカスをエアーフローにより吸込フードへ搬送することにより、彫刻により発生するガス、アブレーションカスを回収したが、ドラム50の回転速度が所定速度以上である場合にはガス、アブレーションカスの大部分がドラム50(版材F)の表面に絡みつくように流れるため、吹付ノズル80からの空気の吹き付けは必須ではない。
【0092】
本発明の第3の実施の形態は、ドラム50(版材F)の表面に絡みついたガス、アブレーションカスをエアーフローにより吸込フードへ搬送する形態である。以下、第3の実施形態に係る製版装置11Cについて説明する。なお、第1の実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0093】
製版装置11Cは、円筒形を有するドラム50の外周面にシート状の版材(「記録媒体」に相当)を固定し、該ドラム50を矢印R方向(主走査方向)に回転させると共に、版材Fに向けてレーザ記録装置10Cの露光ヘッド30から、該版材Fに彫刻(記録)すべき画像の画像データに応じた複数のレーザビームを射出し、露光ヘッド30を主走査方向と直交する副走査方向(矢印S方向)に所定ピッチで走査させることで、版材Fの表面に2次元画像を高速で彫刻(記録)するものである。
【0094】
製版装置11Cに用いられるレーザ記録装置10Cは、複数のレーザビームを生成する光源ユニット20と、光源ユニット20で生成された複数のレーザビームを版材Fに照射する露光ヘッド30と、レーザビームを版材Fに照射する時に空気を吹き付ける吹付ノズル84と、吹付ノズル84からの空気吹き付け時に空気を吸い込む吸込フード85と、露光ヘッド30、吹付ノズル84及び吸込フード85を副走査方向に沿って移動させる露光ヘッド移動部40と、を含んで構成されている。
【0095】
図16は、製版装置11Cにおける走査露光系と、吹付ノズル84、吸込フード85との位置関係を示す側面図である。
【0096】
吹付ノズル84は、ドラム50と吸込フード85との間に配設される。吹付ノズル82は、吹き出し口が一列に並んで配設され、各吹き出し口から空気が噴出されることで、略四角錐台形のエアーフローA3が生成される。
【0097】
吹付ノズル84は、光ファイバーアレイ部300の幅より広い幅のエアーフローA3を生成する。エアーフローA3の風速はドラム50の回転速度により異なるが、適切な条件が実験的に定められる。
【0098】
吹付ノズル84は、図16に示すように、吹き出し口からの空気の吹き出し方向がドラム50の回転方向Rと反対となり、かつエアーフロー中心面AM3と、エアーフロー中心面AM3と版材Fとの交点における接線とがなす角度が鋭角となるように配設される。これにより、ドラム50(版材F)の表面に絡みついたガス、アブレーションカスをドラム50(版材F)の表面から引き剥がし、上側へ巻き上げることができる(図15の矢印(2)参照)。
【0099】
吸込フード85は、図17に示すように、露光ヘッド30側の壁85aの先端が光軸に隣接し、ドラム50側の壁85bの先端及び両側の壁85cの先端がチャック部材55の周回ラインrに略沿って形成された管状の部材である。これにより、吸込フード85は、各壁の先端85a、85b、85cにより形成される略長方形の開口部85Aが、ドラム50(版材F)の表面を覆うように配設される。
【0100】
ドラム50側の壁85bの先端がチャック部材55の周回ラインrに略沿って形成されることにより、壁85bの先端は、光軸Lと露光面(表面)FAとの交点I、すなわち彫刻点の真下よりもドラム50側に位置することとなる。そのため、アブレーションカスが交点Iから真下に落下したとしても、アブレーションカスは吸込フード85内へ誘導される。
【0101】
彫刻により発生したガス、アブレーションカスは、ドラム50の回転に伴ってドラム50(版材F)に沿って下方向へ流れる(図13矢印(1)参照)。また、吸込フード85の他端にはポンプ(図示せず)が接続され、開口部85Aからは空気が吸い込まれる(図13矢印(4)参照)。
【0102】
下方向へ流れたガス、アブレーションカスはエアーフローA3により、ドラム50(版材F)の表面から引き剥がされ、上側へ巻き上げられる(図15の矢印(2)参照)。ドラム50側の壁の先端85bは、エアーフロー中心面AM3と版材Fとの交点Jより吹付ノズル84側に位置している。このため、エアーフローA3により巻き上げられたガス、アブレーションカスが、確実に吸込フード85内へ誘導される。
【0103】
また、下方向へ流れたガス、アブレーションカスの一部は、ドラム50(版材F)から剥離する(図15の矢印(4)参照)。しかしながら、ガス、アブレーションカスが剥離する領域は、各壁の先端85a、85b、85cにより覆われた空間内であるため、この剥離したガス、アブレーションカスも確実に吸込フード85内へ誘導される。
【0104】
これにより、ガス、アブレーションカスを吸込フード85から確実に吸い込むことができる。
【0105】
次に、マルチビーム露光系によって印刷版を製造する際の露光走査工程について説明する。露光走査工程は、主として制御回路100によって制御される。本実施の形態では、粗彫刻工程、微細彫刻工程を連続して行う複数回露光走査方式を採用する。
【0106】
制御回路100に画像データが供給されると、制御回路100は、彫刻を開始する前に、吹付ノズル84から空気を吹き付けてエアーフローA3を発生させるとともに、吸込フード85から空気の吸い込みを開始する。その後、彫刻を開始する。彫刻については、第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0107】
版材F上の全面を露光が終了したら、吹付ノズル84からの空気の吹き付けを停止させ、その後吸込フード85から空気の吸い込みを停止する。
【0108】
本実施の形態によれば、ドラム(版材)からの摩擦抗力等により、ドラム50の回転に伴ってガス、アブレーションカスがドラム(版材)の表面に絡みついたとしても、ガス、アブレーションカスを吸込フードから確実に吸い込むことができる。そのため、ガス、アブレーションカスの装置内への飛散が防止され、アブレーションカスの回収効率を上げることができる。
【0109】
なお、本実施の形態では、露光ヘッド30側の壁85aの先端が光軸に隣接し、ドラム50側の壁85bの先端及び両側の壁85cの先端がチャック部材55の周回ラインrに略沿って形成された管状の部材を有する吸込フード85を用いたが、吸込フード85の形状はこれに限られない。例えば、図18に示すように、吹付ノズル80を覆う高さで形成された壁85a’及び側面の壁85c’(図17では図示せず)を配設し、先端が吹付ノズル84の吹き出し口に隣接する壁5b’を配設し、壁85a’、85b’、85c’により形成される開口部85A’がエアーフローA3全体を覆うようにしてもよい。これにより、ガス、アブレーションカスの吸引効率を高くすることができる。図18に示す場合においても、壁85b’の先端が光軸Lと露光面(表面)FAとの交点I、すなわち彫刻点の真下よりもドラム50側に位置するように吸込フード85’が形成される。そのため、アブレーションカスが交点Iから真下に落下したとしても、アブレーションカスは吸込フード85’内へ誘導される。
【0110】
本発明の実施の形態では、吸込フードの開口部が略長方形に形成されているが、開口部の形状は略長方形には限定されない。光ファイバーアレイ部300の光出射部280の大きさ、ドラム50と露光ヘッド30距離によっては、略正方形となる場合もある。また、吸込フードの開口部吸込フードの開口部は、略長方形、略正方形等の略矩形形状にも限定されない。対向する2つの面(露光ヘッド30側、ドラム50側)が平行であればよく、例えば他の2つの面が円弧形状で形成された略小判形状の開口部を採用してもよい。
【0111】
本発明の実施の形態では、副走査方向の間欠送りによる走査露光方式を用いた場合を例に説明したが、ドラム回転中に副走査方向に一定速度で露光ヘッド30を移動させて版材Fの表面をスパイラル(らせん)状に走査するスパイラル露光方式を採用してもよい。
【符号の説明】
【0112】
10A、10B、10C…レーザ記録装置、11A、11B、11C…製版装置、20…光源ユニット、21A,21B…半導体レーザ、22A,22B,70A,70B…光ファイバー、30…露光ヘッド、40…露光ヘッド移動部、50…ドラム、80、82、84…吹付ノズル、81、83、85…吸込フード、90…制御回路、300…光ファイバーアレイ部、512…インターレース領域、514…ノンインターレース領域、A1、A2、A3…エアーフロー、F…版材、K…走査線、L…光軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体が表面に固定され、所定の方向に回転自在な略円筒形の主走査ドラムと、
前記主走査ドラムに対向して配設され、前記記録媒体に向けて光ビームを照射して前記記録媒体の表面を彫刻する露光ヘッドと、
前記主走査ドラムと前記露光ヘッドとの間に形成された空間に空気を吹き付ける第1の吹付ノズルであって、前記露光ヘッドの光軸と前記主走査ドラムとの交点における前記主走査ドラムの接線方向に沿った空気の流れを生成する第1の吹付ノズルと、
前記第1の吹付ノズルにより吹き付けられた空気を吸い込む吸込手段であって、前記第1の吹付ノズルにより生成された空気の流れの延長上に開口部が配設された吸込手段と、
を備えたことを特徴とする露光走査装置。
【請求項2】
前記第1の吹付ノズルは、前記主走査ドラムの回転方向に沿って空気を吹き付けることを特徴とする請求項1に記載の露光走査装置。
【請求項3】
前記露光ヘッドは、前記光ビームを出射する出射部であって、所定の方向に並んで配置された複数の出射部を有し、
前記第1の吹付ノズルには、前記所定の方向に並んで配設された複数の吹き出し口を有し、
前記複数の吹き出し口から空気が吹き出されることにより、前記所定の方向に並んだ複数の出射部の幅より大きい幅を有する略四角錐台形の空気の流れが生成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の露光走査装置。
【請求項4】
前記吸込手段は、前記開口部の前記露光ヘッド側の壁の先端が前記露光ヘッドの光軸に隣接するように配設されたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の露光走査装置。
【請求項5】
前記第1の吹付ノズルにより生成された空気の流れを打ち消す方向の空気の流れを生成する第2の吹付ノズルを備え、
前記吸込手段は、前記第1の吹付ノズル及び前記第2の吹付ノズルにより吹き付けられた空気を吸い込むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の露光走査装置。
【請求項6】
前記第2の吹付ノズルは、前記主走査ドラムの接線方向とのなす角度が鋭角となる空気の流れを生成することを特徴とする請求項5に記載の露光走査装置。
【請求項7】
前記第2の吹付ノズルは、前記主走査ドラムと前記吸込手段との間に配設されたことを特徴とする請求項5又は6に記載の露光走査装置。
【請求項8】
前記吸込手段は、空気の流れを誘導する誘導板を有し、
前記誘導板は、前記第1の吹付ノズルにより生成された空気の流れが誘導される第1の開口部と、前記第2の吹付ノズルにより生成された空気の流れが誘導される第2の開口部とが形成されるように、前記開口部近傍に配設されたことを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の露光走査装置。
【請求項9】
前記吸込手段は、前記開口部の前記主走査ドラム側の壁の先端が前記第2の吹付ノズルに隣接するように配設されたことを特徴とする請求項5から8のいずれかに記載の露光走査装置。
【請求項10】
前記吸込手段の空気の吸い込み量が、前記第1の吹付ノズル及び前記第2の吹付ノズルの空気の吹き付け量より多くなるように制御する制御手段を備えたことを特徴とする請求項5から9のいずれかに記載の露光走査装置。
【請求項11】
前記吸込手段は、断面積が略一定となる管状の部材を有することを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の露光走査装置。
【請求項1】
記録媒体が表面に固定され、所定の方向に回転自在な略円筒形の主走査ドラムと、
前記主走査ドラムに対向して配設され、前記記録媒体に向けて光ビームを照射して前記記録媒体の表面を彫刻する露光ヘッドと、
前記主走査ドラムと前記露光ヘッドとの間に形成された空間に空気を吹き付ける第1の吹付ノズルであって、前記露光ヘッドの光軸と前記主走査ドラムとの交点における前記主走査ドラムの接線方向に沿った空気の流れを生成する第1の吹付ノズルと、
前記第1の吹付ノズルにより吹き付けられた空気を吸い込む吸込手段であって、前記第1の吹付ノズルにより生成された空気の流れの延長上に開口部が配設された吸込手段と、
を備えたことを特徴とする露光走査装置。
【請求項2】
前記第1の吹付ノズルは、前記主走査ドラムの回転方向に沿って空気を吹き付けることを特徴とする請求項1に記載の露光走査装置。
【請求項3】
前記露光ヘッドは、前記光ビームを出射する出射部であって、所定の方向に並んで配置された複数の出射部を有し、
前記第1の吹付ノズルには、前記所定の方向に並んで配設された複数の吹き出し口を有し、
前記複数の吹き出し口から空気が吹き出されることにより、前記所定の方向に並んだ複数の出射部の幅より大きい幅を有する略四角錐台形の空気の流れが生成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の露光走査装置。
【請求項4】
前記吸込手段は、前記開口部の前記露光ヘッド側の壁の先端が前記露光ヘッドの光軸に隣接するように配設されたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の露光走査装置。
【請求項5】
前記第1の吹付ノズルにより生成された空気の流れを打ち消す方向の空気の流れを生成する第2の吹付ノズルを備え、
前記吸込手段は、前記第1の吹付ノズル及び前記第2の吹付ノズルにより吹き付けられた空気を吸い込むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の露光走査装置。
【請求項6】
前記第2の吹付ノズルは、前記主走査ドラムの接線方向とのなす角度が鋭角となる空気の流れを生成することを特徴とする請求項5に記載の露光走査装置。
【請求項7】
前記第2の吹付ノズルは、前記主走査ドラムと前記吸込手段との間に配設されたことを特徴とする請求項5又は6に記載の露光走査装置。
【請求項8】
前記吸込手段は、空気の流れを誘導する誘導板を有し、
前記誘導板は、前記第1の吹付ノズルにより生成された空気の流れが誘導される第1の開口部と、前記第2の吹付ノズルにより生成された空気の流れが誘導される第2の開口部とが形成されるように、前記開口部近傍に配設されたことを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の露光走査装置。
【請求項9】
前記吸込手段は、前記開口部の前記主走査ドラム側の壁の先端が前記第2の吹付ノズルに隣接するように配設されたことを特徴とする請求項5から8のいずれかに記載の露光走査装置。
【請求項10】
前記吸込手段の空気の吸い込み量が、前記第1の吹付ノズル及び前記第2の吹付ノズルの空気の吹き付け量より多くなるように制御する制御手段を備えたことを特徴とする請求項5から9のいずれかに記載の露光走査装置。
【請求項11】
前記吸込手段は、断面積が略一定となる管状の部材を有することを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の露光走査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−209585(P2011−209585A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78482(P2010−78482)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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