説明

露点計用センサ部構造、露点計

【課題】大型化や性能劣化を回避しつつ、高い露点測定精度を確保することのできる露点計を提供する。
【解決手段】露点計を、所定径かつ所定長を有する一端が有底の筒状体内に、冷却体と、加熱体と、温度センサとが内蔵された構成とした。そして、少なくとも筒状体の先端が測定対象のガス中に露出された状態で、冷却体の冷却動作と加熱体の加熱動作とを交互に行わせ、冷却期間中及び加熱期間中において、或るタイミングにおいて、水蒸気と露との間の相変化に起因して、温度変化の程度が一時的に小さくなる不連続点A,Bが生じることを用いて、この不連続点A,Bに対応する温度を露点とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスの露点を検出する露点計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスの露点を検出する装置が種々提案されている(例えば後述する特許文献1〜3)。
【0003】
特許文献1には、ガス(試料)の流通通路中に、該ガス中に含まれる蒸気の凝縮物を付着させるための凝縮表面を備えた熱伝導性本体を設置するとともに、前記凝縮表面に熱流を発生させるヒータ、冷却ブロック、該冷却ブロックを冷却するための冷却コイル及び前記熱流を検出する熱流センサをそれぞれ所定位置に設置し、前記熱流が減少(ガスの露点が低下)すると前記ヒータを用いて前記凝縮表面の温度を低下させる一方、前記熱流が増加(前記露点が上昇)すると前記凝縮表面の温度を上昇させることにより、前記凝縮表面に発生する熱流が予め定められた熱流に維持されるように、凝縮表面を常に露点より僅かに低い温度に保持する技術が開示されている。また、この特許文献1には、前記凝縮表面に凝縮物が形成されたときの該凝縮表面の温度が、その凝縮表面を通過する熱流が零のとき(断熱状態を形成する)ときに露点温度に近似するという関係に基づいて、露点温度を算出することが記載されている。
【0004】
特許文献2には、一定温度に制御された部屋に反射鏡を設置するとともに、前記反射鏡の鏡面にレーザ光を投射する光源と、前記鏡面からの反射光を受光する受光器と、前記鏡面からの散乱光を受光する受光器と、前記反射鏡を冷却及び加熱する温度制御機構とを備え、前記部屋に測定対象のガスを導入し、前記温度制御機構により前記反射鏡を冷却及び加熱させたときに前記反射面に形成される露の形成状態に起因する各受光器の検出信号の変化に基づいて、前記ガスの露点を検出する装置が開示されている。
【0005】
特許文献3には、ペルチェ冷却器に取付けられたシリコンチップと、該シリコンチップ上に設置されたコンデンサ及び温度センサとを備え、ペルチェ冷却器により温度制御を受けるコンデンサ上での水の凝縮と蒸発とに起因する静電容量の変化を利用してコンデンサの温度を露点付近に維持する露点センサが開示されている。
【0006】
また、前記特許文献1〜3の技術とは別に、2本の温度センサと、水を含んだガーゼ等の給水体と、該給水体へ水を供給する水供給回路とを備え、大気中に設置された前記2本の温度センサのうち一方に前記給水体を取付け、該給水体から水が蒸発する際に該給水体が取り付けられた方の温度センサから気化熱が奪われることにより両温度センサから得られる温度検出信号が示す温度に差が生じ、この温度差が測定環境(大気)の湿度に依存することを利用して湿度を測定する技術が広く知られている。
【特許文献1】特開平7−190971号公報
【特許文献2】特開平8−211001号公報
【特許文献3】特表平10−508096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1,2の技術にあっては、装置全体の構成が大型化するという問題がある。すなわち、特許文献1では、前記凝縮表面に熱流を発生させるための冷却コイルや冷却ブロックが、特許文献2では、光源や受光器等の部材や機構がそれぞれ必要であり、これらの機構によって装置全体の構成が比較的大型なものとなる。その結果、装置の設置スペースが限定される。
【0008】
また、2本の温度センサと給水体とを用いて湿度を検出する技術にあっては、給水体や水供給回路等が必要であり、前記と同様に装置全体の構成が大型化して、設置スペースが限定されることに加え、給水体が経年変化し易く、高い交換頻度が要求されるとともに、水の蒸発態様は大気の流速によって変化することにより、測定結果が大気の流速の影響を受けたものとなるため、高い測定精度を確保することが困難である。
【0009】
また、特許文献3の技術にあっては、コンデンサがガス中に露出されるため、ガスに含まれる諸成分によりコンデンサの一部又は全部が変質し延いてはコンデンサの静電容量が変化(コンデンサの性能が劣化)する虞がある。
【0010】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、大型化や性能劣化を回避しつつ、高い露点測定精度を確保することのできる露点計用センサ部構造及び露点計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、被熱供給体と、前記被熱供給体の表面に実質的に熱を供給する熱発生源と、前記被熱供給体の表面の温度を実質的に測定する温度センサとを備えた露点計用センサ部構造である。
【0012】
この発明によれば、被熱供給体と、前記被熱供給体の表面に実質的に熱を供給する熱発生源と、前記被熱供給体の表面の温度を実質的に測定する温度センサとを備えて露点計用センサ部構造を構成したので、露点を検出するための構成が比較的簡単であり、従来技術のような冷却コイル、光源、受光器、水供給回路等の部材や機構が不要となるため、露点計用センサ部構造を従来に比して簡素化・小型化できる。
【0013】
また、給水体を用いて湿度を検出する技術に比して、ガスの流れの影響を受けにくく、また、メンテナンスの必要性が低減される。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の露点計用センサ部構造において、前記被熱供給体は、伝熱材料からなる中空体を有し、該中空体の内部に前記熱発生源及び温度センサが内蔵されていることを特徴とするものである。
【0015】
この発明によれば、前記被熱供給体は、伝熱材料からなる中空体を有し、該中空体の内部に前記熱発生源及び温度センサを内蔵したので、露点計用センサ部構造が小型化され、設置スペースの自由度が増す。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載の露点計用センサ部構造において、前記中空体は、一端が有底の筒状体であり、前記熱発生源及び温度センサは、前記一端部分に内蔵されていることを特徴とするものである。
【0017】
この発明によれば、前記中空体は、一端が有底の筒状体であり、前記熱発生源及び温度センサを、前記一端部分に内蔵したので、前記中空体の前記一端が測定対象のガス中に露出されていれば、該ガスの露点を検出することができる。したがって、露点の検出場所が制限されている場合であっても、該露点の検出を行うことができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の露点計用センサ部構造において、前記熱発生源は、冷熱を発生する冷却部と、加熱のための熱を発生する加熱部の少なくとも一方からなることを特徴とするものである。
【0019】
この発明によれば、前記熱発生源は、冷熱を発生する冷却部と、加熱のための熱を発生する加熱部の少なくとも一方からなるので、前記被熱供給体の表面で結露及び蒸発の少なくとも一方を発生させることができる。
【0020】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の露点計用センサ部構造と、前記熱発生源に定量的な熱発生の動作を行わせる熱発生源駆動部と、前記熱発生源駆動部の動作中に、前記温度センサからの温度検出信号を経時的に取り込む温度監視部と、前記温度監視部で取り込んだ温度検出信号から経時方向における温度変化の不連続点を露点温度として検出する露点検出部とを備えてなる露点計である。
【0021】
この発明によれば、熱発生源に定量的な熱発生の動作を行わせ、前記熱発生源駆動部の動作中に、前記温度センサからの温度検出信号を経時的に取り込み、取り込んだ温度検出信号から経時方向における温度変化の不連続点を露点温度として検出するようにしたので、露点が正確に検出される。
【0022】
すなわち、温度センサから出力された温度検出信号が示す温度の変化の程度が相対的に小さくなっているときは、前記被熱供給体の表面で気体と液体との間で相変化(結露又は蒸発)が発生し、冷却の場合は、一時的に多くの熱量が被熱供給体に供給される一方、加熱の場合は、一時的に多くの熱量が被熱供給体から奪われるときである。一方、露点は、ガス中の水蒸気が飽和水蒸気量に達する温度であり、この温度のときに前記相変化が発生する。したがって、前記温度の変化の程度が相対的に小さくなっている時点の温度を露点とすることで、比較的簡単な原理・方法で正確な露点の検出が行われる。
【0023】
また、前記特許文献2,3の技術のように電気や光の検知媒体を用いて間接的に露点を検出する方式ではなく、結露及び蒸発が発生する部材(被熱供給体)の温度から露点を検出する直接的な検出方式を採用するため、検出誤差が生じにくくなり、高い検出精度で露点が検出される。
【0024】
請求項6に記載の発明は、請求項5記載の露点計において、前記熱発生源は、冷熱を発生する冷却部と加熱のための熱を発生する加熱部とからなり、前記熱発生源駆動部は、前記冷却部と前記加熱部とに対して少なくとも1回交互に熱発生動作を行わせるものであり、前記露点検出部は、前記冷却部と前記加熱部の各熱発生動作中に検出された複数の温度変化の不連続点から露点温度を検出することを特徴とするものである。
【0025】
この発明によれば、前記冷却部と前記加熱部とに対して少なくとも1回交互に熱発生動作を行わせ、冷却部と前記加熱部の各熱発生動作中に検出された複数の温度変化の不連続点から露点温度を検出するようにしたので、前記加熱期間及び冷却期間の一方の期間で得られた不連続点のみから露点温度を検出する場合に比して、正確な露点が導出される。
【0026】
すなわち、前記加熱期間及び冷却期間の一方の期間で得られた不連続点に誤差が含まれていたとしても、本発明のように、前記加熱期間及び冷却期間のそれぞれの期間で得られた不連続点の平均をとることで、前記誤差の影響が小さくなり、その結果、正確な露点が導出される。
【発明の効果】
【0027】
請求項1〜3に記載の発明によれば、簡素化・小型化された露点計用センサ部構造を実現することができる。
【0028】
請求項4〜6記載の発明によれば、正確な露点検出が可能な小型の露点計を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1は、本発明に係る露点計1を構成するセンサ部構造の一実施形態を示す部分縦断面図である。図1において、露点計用センサ部構造は、中空体、ここでは所定径かつ所定長を有する一端が有底の筒状体2と、この筒状体2の内部、好ましくは有底側である先端部分に内蔵される熱発生源としての冷却体3、加熱体4及び温度センサ5を備えている。筒状体2は、冷却体3及び加熱体4から熱の供給を受ける被熱供給体として作用するもので、伝熱材料から形成されている。
【0030】
冷却体3は、例えばペルチェ素子を含んでなり、好ましくは筒状体2の先端部分に接し、少なくとも前記筒状体2の前記先端部分を冷却するためのものである。加熱体4は、例えば電熱線を含んでなり、好ましくは筒状体2の先端部分に接し、少なくとも前記筒状体2の前記先端部分を加熱するためのものである。温度センサ5は、例えば熱電対を含んでなり、好ましくは筒状体2の先端部分に接し、前記筒状体2の前記先端部分の温度を検出するためのものである。なお、冷却体3や加熱体4はパイプ状をなし、内部に冷熱用エア、加熱用のスチームが供給され得る構造のものでもよい。
【0031】
このような構成を有する露点計用センサ部構造は、露点の検出時、少なくとも筒状体2の先端が測定対象のガス中に露出される。
【0032】
図2は、露点計1の全体構成を示すブロック図である。
【0033】
図2に示すように、露点計1は、冷却体3と、加熱体4と、温度センサ5と、電力供給部31,41と、制御部6とを備える。冷却体3及び加熱体4は、前記冷却部及び加熱部を構成するものである。また、温度センサ5は、制御部6に温度検出信号を出力する。電力供給部31,41は、冷却体3及び加熱体4に電力を供給する電力源を含むものである。
【0034】
制御部6は、露点計1の制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)61、一時的に処理データを保管するRAM(Random Access Memory)62、及び上記制御プログラム等をROM61から読み出して実行するマイクロコンピュータ等からなり、温度制御部7と、温度監視部8と、露点検出部9とを機能的に備える。
【0035】
温度制御部7は、電力供給部31,41の動作を制御することにより、筒状体2の先端部分の温度を変化させるものである。すなわち、図3に示すように、温度制御部7は、電力供給部31による一定電力の電力供給動作と、電力供給部41による一定電力の電力供給動作とを交互に行わせることにより、筒状体2の先端部分の温度を予め定められた設定温度範囲内で変化させるものである。
【0036】
温度監視部8は、前記冷却体3による冷却期間及び加熱体4による加熱期間において、前記温度センサ5から出力される温度検出信号を、一定の周期で温度検出データとして前記RAM62に格納するものである。また、温度監視部8は、温度センサ5から逐次得られる温度検出データが示す温度が前記設定温度範囲外となったか否かを判断し、温度が前記設定温度範囲外となると、冷却体3及び加熱体4のうち現在動作中のものの動作を停止し、他方を動作させるべく、その旨を前記温度制御部7に報知する。
【0037】
露点検出部9は、前記冷却体3による冷却動作及び加熱体4による加熱動作が終了すると、RAM62に格納した各温度検出データが示す温度の変化に基づき露点を検出するものである。以下、露点検出部9による露点検出方法について説明する。
【0038】
図3は、冷却体3の冷却動作と加熱体4の加熱動作とを交互に行わせた場合の、前記温度センサ5から得られる温度検出データが示す温度の変化を表したグラフである。
【0039】
図3に示すように、冷却体3により冷却動作が行われた場合、全体的に見ると、筒状体2の温度は、経過時間に伴って低下していくが、矢印Aで示すように、或るタイミングにおいて、一時的に温度低下の程度が小さくなる。これは、前記筒状体2の表面で気体から液体への相変化すなわち結露が発生する際に、筒状体2がその表面に付着する露から熱を吸収することにより発生したものである。
【0040】
また、加熱体4により加熱動作が行われた場合、全体的に見ると、筒状体2の温度は経過時間に伴って上昇していくが、矢印Bで示すように、或るタイミングにおいて、一時的に温度上昇の程度が小さくなる。これは、前記筒状体2の表面で液体から気体への相変化すなわち蒸発が発生する際に、蒸気が筒状体2の表面から熱を奪うことにより発生したものである。
【0041】
露点検出部9は、図3の矢印A,Bで示すような、温度変化の程度が一時的に変化した不連続点(不連続部)を検出することで露点を検出する。図4は、前記不連続点A,Bに対応する期間に温度センサ5から得られた温度検出データについて、時間的に隣り合う2つの温度検出データが示す温度の差分(絶対値)の時間変化を示すグラフであり、図4に示すように、前記不連続点A,Bにおいては、前記差分が一時的にΔTm1まで小さくなる。
【0042】
露点検出部9は、冷却期間において、時間的に隣り合う2つの温度検出データが示す温度の差分(絶対値)ΔTmcを算出し、そのうち最小の差分ΔTmc1を導出するとともに、この差分ΔTmc1と、差分が変化する直前のタイミングで検出された温度T1とに基づき、例えば次式(1)を用いて冷却期間時露点TMCを導出する。
【0043】
TMC=T1−ΔTmc1 ・・・(1)
また、同様に、露点検出部9は、加熱期間において、時間的に隣り合う2つの温度検出データが示す温度の差分(絶対値)ΔTmhを算出し、そのうち最小の差分ΔTmh1を導出するとともに、この差分ΔTmh1と、差分が変化する直前のタイミングで検出された温度T2とに基づき、例えば次式(2)を用いて加熱期間時露点TMHを導出する。
【0044】
TMH=T2−ΔTmh1 ・・・(2)
そして、露点検出部9は、次式(3)を用いて冷却期間時露点TMCと加熱期間時露点TMHとの平均を算出し、この平均値を露点TMとする。
【0045】
TM=(TMC+TMH)/2 ・・・(3)
図5は、制御部6による露点検出動作を示すフローチャートである。なお、図3では、冷却体3による冷却動作と加熱体4による加熱動作とを交互にそれぞれ2回行ったものを示しているが、ここでは、それらを1回ずつ行って露点を検出するものとする。
【0046】
図5に示すように、制御部6は、冷却体3による冷却動作を開始させ(ステップ♯1)、温度センサ5から温度検出信号を取り込んで記憶する(ステップ♯3)。そして、制御部6は、温度センサ5から得られた温度検出データが示す温度が予め設定された設定温度範囲外となるまでステップ♯3,♯5の処理を繰り返し実行し(ステップ♯5でNO)、前記温度検出データが示す温度が予め設定された設定温度範囲外となると(ステップ♯3でYES)、冷却体3による冷却動作を停止させる(ステップ♯7)。
【0047】
次に、制御部6は、加熱体4による加熱動作を開始させ(ステップ♯9)、温度センサ5から温度検出信号を取り込んで記憶する(ステップ♯11)。そして、制御部6は、温度センサ5から得られた温度検出データが示す温度が予め設定された設定温度範囲外となるまでステップ♯11,♯13の処理を繰り返し実行し(ステップ♯13でNO)、前記温度センサ5から得られた温度検出データが示す温度が予め設定された設定温度範囲外となると(ステップ♯13でYES)、加熱体4による加熱動作を停止させる(ステップ♯15)。
【0048】
次に、制御部6は、温度センサ5から出力された一連の温度検出データから前記不連続点A,B(図3参照)を検出し(ステップ♯17))、該不連続点A,Bに対応する2つの温度(冷却期間時露点TMCと加熱期間時露点TMH)の平均を算出し、この平均を露点とする(ステップ♯19)。
【0049】
以上のように、本実施形態では、筒状体2、冷却体3、加熱体4及び温度センサ5を備えて露点計用センサ部構造を構成したので、露点を検出するための構成を比較的簡単な構成とすることができ、従来技術のような冷却コイル、光源、受光器、水供給回路等の部材や機構が不要となるため、露点計用センサ部構造を従来に比して簡素化・小型化することができる。また、給水体を用いて湿度を検出する技術に比して、ガスの流れの影響を受けにくく、また、メンテナンスの必要性を低減することができる。
【0050】
また、筒状体2の内部に冷却体3、加熱体4及び温度センサ5を内蔵したので、露点計用センサ部構造を小型化することができ、特に本実施形態では、前記筒状体2を先端が有底の部材とし、冷却体3、加熱体4及び温度センサ5を前記先端部分に内蔵することにより、筒状体2の前記先端が測定対象のガス中に露出されていれば、該ガスの露点を検出することができるため、露点の検出場所が制限されている場合であっても、該露点の検出を行うことができる。
【0051】
また、筒状体2に対し冷却体3による冷却動作と加熱体4による加熱動作とを交互に行い、このときの筒状体2の温度を検出して、該温度変化の程度が一時的に変化した不連続点を検出することで露点を検出するようにしたので、比較的簡単な原理・方法で露点を検出することができ、露点を検出するためのプログラムを比較的簡単に設計することができる。
【0052】
また、従来技術のように電気や光の検知媒体を介して露点を検出する方式ではなく、結露及び蒸発が発生する筒状体2の温度から露点を検出する直接的な検出方式を採用するため、従来技術に比して検出誤差が生じにくく、高い検出精度で露点を検出することができる。
【0053】
また、冷却期間について導出した冷却期間時露点TMCと加熱期間について導出した加熱期間時露点TMHとの平均を露点TMとしたので、冷却期間時露点TMC及び加熱期間加熱期間時露点TMHの少なくとも一方に誤差が含まれる場合であっても、該誤差による影響を小さくし、出来るだけ正確な露点を検出することができる。
【0054】
本件は、前記実施形態に加えて、あるいは前記実施形態に代えて次の変形形態も含むものである。
【0055】
(1)前記第1の実施形態では、露点の検出精度の向上のため、冷却期間において導出した冷却期間時露点TMCと加熱期間において導出した加熱期間時露点TMHとの平均を露点TMとしたが、本件は、冷却期間時露点TMC又は加熱期間時露点TMHのいずれか一方をそのまま露点TMとする形態も含む。
【0056】
また、本件は、冷却動作及び加熱動作を交互に複数回繰り返し行わせ、複数の冷却期間についてそれぞれ得られた冷却期間時露点TMCの平均を露点とする形態や、複数の加熱期間についてそれぞれ得られた加熱期間時露点TMHの平均を露点とする形態、さらには、冷却期間時露点TMCの平均と加熱期間時露点TMHとの平均を露点とする形態も含むものである。
【0057】
また、測定対象であるガスの雰囲気温度に応じて、冷却動作及び加熱動作のいずれか一方を行わせるようにしてもよい。すなわち、ガスの雰囲気温度が相対的に高い場合には、冷却体3に冷却動作を実行させる一方、ガスの雰囲気温度が相対的に低い場合には、加熱体4に加熱動作を実行させ、その冷却期間又は加熱期間で検出された冷却期間時露点TMC又は加熱期間時露点TMHを前記ガスの露点としてもよい。
【0058】
(2)被熱供給体の形状は、前述の筒状に限られるものではなく、球等でもよく、設置場所に応じて適宜設計するとよい。
【0059】
(3)熱源は、冷却体3及び加熱体4のうちいずれか一方であってもよい。
【0060】
(4)筒状体2の先端部分の温度を設定温度範囲内で、電力供給部31,41による電力供給動作の切替えを行うようにしたが、電力供給部31,41による電力供給動作の動作時間を前記筒状体2の温度変化から経験的に導出し、この時間に基づいて、電力供給部31,41による電力供給動作の切替えを行うようにしてもよい。
【0061】
(5)温度センサ5から出力される一連の温度検出信号を温度検出データとしてRAM62に一旦格納し、各温度検出データに基づいて露点を検出する形態に代えて、温度センサ5から得られた温度検出データに基づいてリアルタイムで露点を検出する形態でもよい。この場合、検出した露点に基づいてガスの湿度をコントロールするシステムを想定したとき、このコントロールをリアルタイムで行うことができる。
【0062】
(6)前記不連続点の検出精度は、筒状体2の比熱、熱容量や時間当たりの供給熱量に応じて差分ΔTmc1や差分ΔTmhのレベルが変化することで異なるものとなる。そこで、差分ΔTmc1や差分ΔTmhのレベルがより大きなレベルとなるように、前述の要因を設定するとよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る露点計は、空調や環境試験など目的に応じて空間の湿度をコントロールする恒温・恒湿槽や恒温・恒湿室、工場の生産ラインなどの供給するガスの湿度をコントロールする装置など、湿度を測定する分野で広く利用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る露点計の第1の実施形態を示す図である。
【図2】露点計の全体構成を示すブロック図である。
【図3】冷却体の冷却動作と加熱体の加熱動作とを交互に行わせた場合の、温度センサから得られる検出信号が示す温度の変化を表したグラフである。
【図4】図3に示す不連続点A,Bに対応する期間に温度センサから得られた温度検出信号について、時間的に隣り合う2つの温度検出信号が示す温度の差分(絶対値)の時間変化を示すグラフである。
【図5】露点検出動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0065】
1 露点計
2 筒状体
3 冷却体
4 加熱体
5 温度センサ
6 制御部
7 温度制御部
8 温度監視部
9 露点検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被熱供給体と、前記被熱供給体の表面に実質的に熱を供給する熱発生源と、前記被熱供給体の表面の温度を実質的に測定する温度センサとを備えた露点計用センサ部構造。
【請求項2】
前記被熱供給体は、伝熱材料からなる中空体を有し、該中空体の内部に前記熱発生源及び温度センサが内蔵されていることを特徴とする請求項1記載の露点計用センサ部構造。
【請求項3】
前記中空体は、一端が有底の筒状体であり、前記熱発生源及び温度センサは、前記一端部分に内蔵されていることを特徴とする請求項2記載の露点計用センサ部構造。
【請求項4】
前記熱発生源は、冷熱を発生する冷却部と、加熱のための熱を発生する加熱部の少なくとも一方からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の露点計用センサ部構造。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の露点計用センサ部構造と、前記熱発生源に定量的な熱発生の動作を行わせる熱発生源駆動部と、前記熱発生源駆動部の動作中に、前記温度センサからの温度検出信号を経時的に取り込む温度監視部と、前記温度監視部で取り込んだ温度検出信号から経時方向における温度変化の不連続点を露点温度として検出する露点検出部とを備えてなる露点計。
【請求項6】
前記熱発生源は、冷熱を発生する冷却部と加熱のための熱を発生する加熱部とからなり、前記熱発生源駆動部は、前記冷却部と前記加熱部とに対して少なくとも1回交互に熱発生動作を行わせるものであり、前記露点検出部は、前記冷却部と前記加熱部の各熱発生動作中に検出された複数の温度変化の不連続点から露点温度を検出することを特徴とする請求項5記載の露点計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−285885(P2007−285885A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−113623(P2006−113623)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(000108797)エスペック株式会社 (282)
【Fターム(参考)】